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2024年04月26日
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【ツンデレサモナーと召喚された男】

2010年02月22日
 一体これはどういうことなのか。
「……また、しょぼいのを引いたのう。ハズレかの」
 よし、落ち着こう。俺の名前は別府タカシ。遅い昼飯を食ってたら急に床が抜けたような感触があり、気がつけば森の中。そして、目の前で少女が何やら残念そうに喋ってるわけで。そこから導き出される答えは──
「……分かった! ゼロの使い魔的状況だ! イヤッフーーーッ! とうとう俺にも春が!」
「……うん? 言っとる意味がよく分からんのう。まあよいわ。さあ行け我がしもべよ、敵を倒すのじゃ!」
「そう、敵を倒すのが俺の目的……てき?」
「あんぎゃーす」
「あんぎゃーす?」
 少女から視点を少し横にずらす。あんぎゃーすと鳴くでっかい恐竜みたいなのがこれまたでっかい口を開けて俺を飲み込もうとしてますよ?
「馬鹿な、きゃっきゃうふふな展開しか待ってないと思ってたのにいきなり戦闘とな! ええい、異世界からの救世主なんだから特殊能力的な何かを持ってるはず! 目からビームとか目から汁粉とか目から」
「何でそんな目に固執してるのじゃ……。いいからはよう行け」
 少女が俺の尻を蹴飛ばす。たたらを踏んで前に二、三歩踏み出すと、あんぎゃーすな恐竜は俺を敵とみなしたのか、あんぎゃーすと吼えるのでとても怖い。もう帰りたい。
「む、無理無理無理! 死んじゃう! あ、それともアレか、ここはファンタジー風味な世界だし、死んでも生き返るとかそんなオチ?」
「死んだらそれまでに決まっとるじゃろ、阿呆。分かったらとっとと戦え」
 俺の命が大変ピンチ。武器もなしに恐竜と戦えと? こちとら中型犬と戦ったとこで五分五分だってレベルだぞ? あ、猫には全面降伏です。あの可愛さには勝てっこありません。
「な、何をにやにやしとる阿呆! 前を見るのじゃ!」
「む?」
 想像の中で猫と遊んでいたら、あんぎゃーすが目の前にいまして自分の名前を言うんですの。全身鳥肌人間にクラスチェンジ。
「とても怖い!」
「あっ、こら何をするんじゃ!」
 思わずそのまま言うくらいとても怖いので少女を抱え、脱兎の如く逃げる。
「ええい離せ離せ、離さぬか! 気安く触るでない! ワシを誰だと心得ておる!」
「怖い怖い怖い! おーばーけー!」
「お化けじゃないわい! アレはアンギラスじゃ!」
 何か言ってる少女を抱きかかえたまま、しばらく遁走を続けてると、これ以上走ると肺が死ぬゼと言いだしたので、その場に倒れる。
「ぶべ! こ、こら、いきなり倒れる奴がおるか!」
「……ぜはー……ぜはー……」
「おい、顔色が紫じゃぞ? ……だ、大丈夫かの?」
 はっはっは、どこをどう見れば大丈夫だと思うんだい子猫ちゃん、と言いたいが死にそうなので呼吸をするだけで精一杯です。
「ほ、ほれ、水じゃ。飲めるかの?」
 竹筒のようなものが目の前に差し出さる。慌てて奪い取り、一気に飲み干す。
「こ、これ、急ぎすぎじゃ。そんな急ぐとむせるぞ」
「んぐっんぐっ……げほげほげほ!」
「言ったそばからか!」
「げぎゃっごがっがっがっがっかーッ!」
「それもうむせてるとかそんな話じゃないぞ!? 何に変身しとるのじゃ!?」
 怖がらせるのに満足したので、普通に飲む。
「……んっんっん、ぷはーっ! いやー生き返った。やはり幼女の尿はいいな」
「しまった、変態を召喚したか!」
「冗談です。飲尿趣味はないです。……あ、それよりあんぎゃーすは!?」
「あんぎゃーす? よく分からんが、アンギラスならもうどっかに行ったぞ。というより、ワシらが撒いたんじゃが」
「おお、やるな俺。火事場の馬鹿力とはいえ、人ひとり抱えて逃げきるとは凄いな」
「もっとも、アンギラスは足が遅いから撒くのは容易いのじゃがの」
 実は凄くないことが判明して悲しい。
「……しかし、逃げてどうするのじゃ! せっかくアンギラス退治の依頼を請け負ったというのに……意味ないではないか!」
「まあ待て慌てるな。まず俺に質問させてくれ。その1、性感帯はどこ?」
 真っ赤な顔をする少女に殴られた。
「い、いの一番に聞くのがそれか、愚か者!」
「いや全く。そうじゃなくて、俺はどうなったの? 確か家でラーメン食ってたと記憶しているのだけど、どうして気がつけばこんな森の中で恐竜と対峙していたのでしょうか」
「ふん、知れた事。ワシの召喚獣として呼び出したまでよ」
「獣ですか。ていうか召喚って、やっぱアレですか、ゼロの使い魔的流れのバヤイ、き、き、キスとかするのですよね! ね!?」
「するか阿呆。なんで貴様のようなどこの誰とも知れぬ奴と口づけせねばならんのだ阿呆。一度死ね阿呆」
「ショックのあまり耳汁が出そうだ」
「それ病気じゃぞ!?」
「まあいいや。キスできないのは耳汁が出そうなほど残念ですが、なんかここは俺の理想の世界じゃないみたいだし、元の世界に返して。戻って今まで通り二次元を愛する事にするよ」
「あ、それ無理」
 少女は事も無げに手をフリフリ振った。
「……何か愉快な台詞が聞こえたような」
「だから、無理じゃって。おぬしを呼び出すので魔力が尽きたのじゃ。ゲートを開く力がもうないのじゃ」
「ああ、MP切れね。一晩休めば回復するやつね。昨夜はお楽しみでしたね」
「うん? おぬしの言う事はイチイチ分からんが……とにかく、もう一度ゲートを開く魔力を貯めるには、あと数ヶ月は必要じゃぞ」
「へー。……えええええ! 数ヶ月!?」
「い、いきなり叫ぶな、阿呆!」
 急に叫んだことに驚いたのか、少女は耳を押さえて俺を非難した。
「え、戻れないの? アニメの録画予約してないよ?」
「また訳の分からぬことを……とにかく、そういうことじゃから達者で暮らせ」
 そう言うと少女は立ち上がり、俺に背を向けた。
「ワシは帰る。おぬしはおぬして適当にやれ。時期が来ればまた迎えに来てやるから、それまで生き延びるんじゃぞ」
「まさかの放置!? 勝手に召喚して放置するなんて……許せない、許せるものか! ちゃんと保護しろ! こんな森の中で置いとかれたら2秒で餓死するぞ!」
「どんな胃袋じゃ!」
 こっちを向いて律儀につっこむ少女。根はいい奴に違いない。今まさに置いていかれそうになってるが。
「餓死はともかく、死ぬのはたぶん間違いないし、俺も連れて行け」
「嫌じゃ。なんでおぬしのようなどこの誰とも知れぬ奴を連れて行けるか」
「連れて行け」
「い・や・じゃ」
「そろそろ泣くぞ」
「子供か! とにかく、自力で頑張るんじゃ。ワシは知らん」
 そう言って、再び少女は背を向けた。その背中に抱きつく。
「にゅわあああ!? ななな、何するんじゃ!」
「妖怪、オイテクナ。置いていこうとする優しさ知らずの人間に憑りつく妖怪。類似品にコバンザメがいる。妖怪オイテクナも実はコバンザメではないか、という説もある」
「そんなこと聞いとらんわい! いーから離れるんじゃ!」
「吸盤がはがれないんだ」
「妖怪じゃなくてコバンザメじゃ!」
 なんでコバンザメ知ってるんだ。
「まーなんだ、ここに置いてかれるくらいならこうしてコバンザメしてる方がいいな、と」
「いーから離れるのじゃ! あーうあー!」
 じたじた暴れるので、抱きつくにも一苦労。
「「あ……」」
 そりゃ手がずれて胸触っちゃったりもしますよ。
「な、な、な、何をするんじゃあっ!!」
「……ま、全くない! 女装趣味の男か! まあ最近の流行だし、それもアリか!」
「立派な女じゃっ! いーから離せ、このド変態!」
「女と聞いて乳から手を離す男がいようか、いやいない。反語。……でもやっぱり全くないように思える」
 確認のため、指をふにふに動かす。……うーん、少し、ほんの少しふくらみがあるような。しかし布地に邪魔され、正直なところよく分からない。
「も、揉むなあっ! 変態じゃ、ワシは変態を召喚してしまったのじゃ!」
「布地ごしでなく、直で触るとよく分かる気がする」
「ひいいいいっ!? わ、分かった、ワシに着いてきてもいいから、もうやめるのじゃ!」
「揉む方がいい」
 言いながらふにふにする。指先を遊ばすうち、ほんのり固い何かにぶつかった。……この指先に触れるのは……アレですか!?
「んきゅっ!? どどどどこを触ってるのじゃ、どこを!?」
「ちく」
「わーわーわー! 言うな言うな言うなあっ! 分かった、どうかワシに着いてきてほしいのじゃ! お願いなのじゃ! じゃからもうやめてほしいのじゃあ!」
「えー? うーん、どうしても?」
 布地越しに固いアレをクリクリしながら問いかける。
「きゃうっ!? ……さ、触るな、ばかぁ……」
 えーと。ダメですよ。そんな艶めかしい声を聞かされたら、俺のきかん棒が大変なことに。
「な、なんか固いのが背中に当たっとるぞ、当たっとるぞ!?」
「大丈夫、大変なのはこれからだ」
「ごめんなさい分かりました! お願いします、どうか愚かなワシの家に来てください! なんでもしますから!」
「……その言葉を待っていた! 言質は取った、いざいかん悦楽の園へ!」
 手を離すと、少女はその場にへたり込み、荒い息をついた。
「大丈夫か?」
「うぐぐぐぐ……おのれおのれおのれ! よくもワシに辱めを! もー許さん、消し炭にしてくれよう!」
「ぽちっとな」
 ポケットからレコーダーを取りだし、スイッチを押す。
『きゃうっ!? ……さ、触るな、ばかぁ……』
「……は?」
「あ、間違った。こっちだ、こっち」
 改めてスイッチを押す。
『ごめんなさい分かりました! お願いします、どうか愚かなワシの家に来てください! なんでもしますから!』
「な、なんじゃこれはあああああ!?」
「魔法」
 では勿論なくて、偶然持っていたレコーダーの力です。
「俺を消し炭にすると、俺の魔法でこの声が世界中の人に届くから不思議」
「ぐ、ぐぐぐぐぐ……そんなことをされては、ワシの威厳が……いやそれより、ワシの嬌声が……」
 当然そんなことはできないが、ここではったりをかまさないと消し炭にされるので、必死でポーカーフェイス。背中を流れる汗がすごいゼ。
「……わ、分かった。貴様を客人として我が家に招待しよう。だがいいか、もしその声を誰かに聞かせてみろ、例え世界中の者に聞かれようとも、即座に貴様を殺すからな!」
「分かった、一人で楽しむだけにする」
「たっ、楽しむな、ばかっ! いいか、魔力が貯まり次第元の世界に送り返すからな!」
 そんなわけで、しばらくこの少女と──ああ、そうだ。
「そういやお前の名前なんてーの? 俺は別府タカシと申します。気軽にタカシ、もしくはご主人様と呼べ」
「貴様なんぞに言う名前はないわい、阿呆」
「ぽちっ。『きゃうっ!? ……さ、触るな、ばかぁ……』」
「わーわーわーっ!」
 少女は真っ赤な顔で自身の嬌声を打ち消そうとした。
「お名前は?」
「ぐぐぐ……ま、まつりじゃ、馬鹿者ぉ……」
 そんなわけで、まつりという半べそをかく少女と過ごすことになりました。どうなるのでしょうね、これから先。

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