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2024年04月26日
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【ツンデレを起こしたら】

2010年05月28日
 ちなみが寝坊で困る。
「……ぐーぐー」
「ちなみに何故困るのかと言うと、ちなみを起こす役割が肉親ではなく幼なじみの俺だからだ。そして何故俺は虚空に話しかけているのか」
「……頭がおかしいから。……ぐーぐー」
「起きてやがるなコンチクショウ」
「……のっとぐーぐー」
 寝息に否定の語が入ったので、寝ているのだろう。とまれ、とっとと起こそう。
「ちなみ、起きろ。起きないと性的ないたづらを行う」
「……ぐーぐー」
「よい返事、よい寝息だ。じゃあ起こすと称しておっぱいをまさぐりますので、そのつもりで」
「…………」
 鼻歌まじりにちなみのパジャマを脱がそうとしてたら、寝息が止んでることに気づいた。どうしたのかと顔を上げたら、おはようちなみさん。おめめぱっちり素敵だね。
「……うう、朝からタカシが人を孕ませようとする」
「朝っぱらから失敬な! ちょっとおっぱいをもふもふしようとしただけだ! ほら見ろ、パジャマの上を脱がしてる最中だろ!」
「……それはそれでどうかと」
「俺もそう思ったんだけど、思春期の青年を止めることはできなかったんだ。あと、貧乳でも、もふもふという擬音を使ってよかったのかな? ぺたぺたの方がよかったか?」
「……なんでもいいけど、そろそろ悲鳴あげていい?」
「どうしてもと言うならあげてもいいが、あのおばさんのことだ、ビデオカメラ片手にやってくるだけだぞ」
「……我が親ながら、その様子がありありと想像できる。しょうがない、タカシのほっぺをつねるだけで我慢してやる」
「ありがとうございます」
 感謝の言葉を述べながら頬をつねられる。当然痛い。
「……ふう。これに懲りたらもう私のおっぱいを付け狙わないこと。やくそく」
「…………。うん、狙わない」
「……まったく信用できない」
「ちなみが可愛いから我慢できないんだ」
 無言で赤くならないで。何か言って。
「……ま、まったく。タカシは調子がよくて困る。えいえい」
 だからと言って人の鼻をふにふに押さないで。対応に困ります。
「……う、うう。何か言うべき」
「もう今日は学校休んで一日中イチャイチャしたいです」
「……きゅ、究極のえろ魔人がここに誕生した。たすけてー」
「悲鳴に危機感を感じられません」
「……も、もういいから。……あ、あっち向く。……タカシの顔を見てると、吐き気がおえーおえーだから」
「顔の赤さを見られないように、ではなく?」
「……いい加減にしないと、ちゅーするぞ」
「それは大変に困る! いやしたくないかと言うとそんなことはないのだけど、もうちょっとよい雰囲気の時とかこっちからしたいとか幼なじみという境遇が逆にしづらくしててうぬぬと色々あるんだけど、まあいいや。ちゅーしましょう」
「……恐るべき思考の混乱。……しょうがない、しよう」
 そんなわけでむいーっと顔を近づけてたら、いつまでも俺たちがやって来ないことに痺れを切らしたちなみのおばさんが部屋に乱入こんにちは。
「あらあら、朝っぱらから子作りね。ふぁいと、娘! 負けるな婿養子!」
 闖入者が雰囲気を完膚なきまで破壊してくれたので、お互い離れる。
「あらあらあら」
「おばさん、ちなみ起きました」
「……おはよう、お母さん」
「あら? 続きは?」
 自分の子供のラブシーンを見たがるおばさんを押して、台所へ。いつもの定位置の席に座り、おばさんの淹れてくれたコーヒーを飲む。
「ごめんね、タカシくん。もうちょっと後に突入してたら事後だったのにね」
「事後とか言わないでください。あと、そんな早くないと思います。思いたいです」
「……のー。タカシは早漏に違いない」
 背後から嫌な事を言う奴。これはもう奴以外ありえない。
「朝から親と子の両方からセクハラに遭う男の気持ちを考えたことあるか、ちなみ?」
 俺の隣の席に座り、テーブルの中央に置かれたパンを取ろうと一生懸命手を伸ばしてるちなみに訴える。
「……そもそも、タカシが私のおっぱいを揉もうとしなければこうならなかったはず」
「言わないで!」
「あらあら。うちの娘、朝から陵辱されたのね」
「言わないで!!」
「「やーい、えろ魔人ー」」
「ステレオで言わないで!!!」
 朝から辱めを受けた後、おばさんに見送られちなみと一緒に登校する。
「うー。……誰かに朝から揉まれ起こされたので、まだ眠い」
「酷い単語を使うな。ていうか、揉んでません。未遂です」
「……気づかなかったら、揉んでたくせに。……これも私のスレンダーな身体が持つ魔性の魅力のせいか」
「ものは言いようだな、えぐれ乳」
「……ロリコンが何か言ってる」
 勝負は痛み分けのようだ。
「……うーん。やっぱまだ眠い。……そうだ、名案を思いついた」
「自分で名案って言う奴の出す案って大概愚策だよな」
「……うるさい。……眠い私をおぶって学校へ連れて行け」
「ほら見ろ、愚策だ」
「……今なら、私をおぶった時におっぱいがもにゅもにゅ当たるさーびす付き」
「もにゅもにゅ?」
 じーっとちなみの胸元を見る。もにゅもにゅという擬音が与えるイメージからあまりにも脱却しすぎだろう。
「……もにゅもにゅ。他に適当な擬音があると?」
「ぺたぺた」
「……ないす度胸」
 頬をぐにーっと引っ張られた。
「……いーから、おんぶする。……そしたら、今日の陵辱を忘れてやる」
「してない! 未遂だってば! ていうか言葉が朝のうららかな日に、あまりに不穏当!」
「……ていせい。寝てる私の胸を揉みしだき、ぺろぺろ舐めた事を、野良犬に噛まれたと思ってやる」
「だから、未遂! 未遂って言葉を是非入れたらどうかな!? あと色々追加されてますが!」
 そして道行く生徒たちが俺とちなみの会話を聞いていたのだろう、俺を犯罪者を見る目で遠巻きに見てきます。
「ほら見ろ、お前のせいで俺が犯罪者扱いだ」
「……いつも通りの扱いに、タカシにっこり」
「無茶言うな」
「……まあそんなわけで、私をおんぶするといい」
「あーもう、分かったよ。これ以上何か言われると善意の通行人に警察呼ばれそうだし。ほい」
「……ん」
 ちなみに背を向けて座ると、軽い重みが背中にかかる。
「……ふふ、らくちんだ」
「ええい。俺は朝からどうしておんぶしているのだろう」
「……普段の行いの結果。やーいばーか」
「もういっそ我が身もろとも車道に躍り出たい気分だ」
「……私が下りてからなら、許可する」
 それではただの自殺なので、丁重に辞退する。
「……とても不満。えいえい」
「髪を引っ張るな」
「……おお、手綱のようだ。……ダメなタカシを名手綱捌きで操る私。……すごい?」
「夫婦気取りですね」
「? ……っ!? ち、違う。そんなつもりじゃない。違う」
「そんな露骨に嫌がらなくても」
「い、嫌とかじゃなくて! ……あ、ち、違う。そう。嫌なの。びっくりしたとかじゃなくて、嫌なの」
「びっくりしたのか。いや、ちなみに嫌われてなくてよかった」
「嫌いと言ってる。言ってる!」
「はいはい」
「うー!」
 がぶがぶと頭を噛まれながら、俺はちなみと一緒に登校した。

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