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2019年10月15日
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【ツンデレが男のモテモテな姿見てヤキモチやくとどうなるの?】

2010年05月20日
 文化祭まで日がないというのに一向に準備が進んでないらしく、どういうことか実行委員に問いかけたら「人手が足りない」という答えが返ってきた。
 折角の文化祭だ。精一杯楽しみたいと思い、放課後、俺は手伝いを申し出た。
「ありがと~。みんなやってくれないから助かった~」
「うんうん、みんなすぐサボろうとするんだもの。今日も当番の男子サボってるし」
「いやいや、困ってる女性を助けるのは当然のことですよ。にゃはははは」
 けっこう可愛い女生徒たちに感謝され、思わず笑みがこぼれる。
「…………」
 ちなみに背中をつねられる。
「痛い! なにすんでい、ちなみ!」
「……別に」
 いつもより微妙に無愛想に言って、ちなみは作業を始めた。
「なんだ……? まぁいいや、俺も手伝うぞ」
 あてがわれたでかい板に釘を打つ。打ちまくる。
「……ところで、文化祭なにすんだっけ?」
「あれ、別府君知らないの? おばけ屋敷だよ」
 女生徒に問いかけると、そんな答えが返ってきた。
「ああ、おばけ屋敷か。どんな感じにするんだ? やっぱ定番の焼きそばおばけ屋敷か?」
「な、何それ」
「知らんのか? 焼きそばおばけ屋敷とは……」
 詳しく説明すると、非常に微妙な顔をされた。面白いのに。
「それにしても、どうして別府君は手伝ってくれたの?」
「えーと、暇だから」
 本当の理由を言うのはなんだか恥ずかしいから、適当に茶を濁す。
「え~、本当に?」
「それ以外にどんな理由があるってんだよ」
「だからぁ、私たちが大変だから助けてあげよう、って思ってとか」
「は?」
「そうそう、そういうとこあるよね、別府君って。さりげなく優しいっていうか」
 別の場所で作業していたもう一人の女生徒がやって来て、話に加わる。
「気のせいだろ。買いかぶり過ぎだ」
 話の流れが嫌な感じになってきた。釘打とう、釘。
「結構人気あるよね、別府君。……ね、彼女とかいるの?」
「あー、えーと、いない、けど」
「ホント!? それじゃ私立候補しようかなー?」
「あー、久美子ずるい! 私も結構別府君のこといいかなーって思ってたのに!」
 その時、背後で破砕音がした。恐る恐る振り返ると、嫌な感じのオーラをまとったちなみが板を金槌で粉砕していた。
「……ごめん、壊しちゃった」
「き、気にしないでいいよ、ちなみ」
「そ、そうそう、失敗なんて誰にでもあるから」
 冷や汗を垂らした二人は、そのまま俺から離れて作業を再開した。残された俺は、ゆっくり近づいてくるちなみを大量の冷や汗を感じながら迎えるしかなかった。
「……よかったね、モテモテで」
 ぶら下げた金槌を小さく揺らしながら、ちなみは非常に不愉快そうに言った。
「い、いや、別にそんな……」
「……さりげなく優しいらしいね。……私にはあんまり優しくしてくれないのに」
 物凄い量の冷や汗が流れる。ちなみの目が怖い。
「いや、俺は……」
「……恋人に立候補だって。……ほんと、優しい別府君はモテモテだね」
 ゆっくりゆっくりこちらへやってくるちなみに、我知らず唾を飲む。
「い、いや、俺は別にそんなつもりは……」
「……いいけどね、別に私は別府君の彼女でもなんでもないんだし。……いいけどね」
 俺が釘を打ってた板のそばに座り、どかどか釘を打つ。
「……何してんの。……やんないなら帰ったら」
「あ、いや、やる。やらせてください」
 恐る恐るちなみのそばに座り、無言のプレッシャーに苛まされながらおばけ屋敷の壁を作った。
 
 真綿で首を絞められるような長い長い時は終わり、ちなみと一緒に帰宅の途につく。
「…………」
 しかし、学校出てからずっと無言で死ぬほど気まずい。何か話さないと、何か。
「えーっと、象さんって可愛いよな……あれ、ちなみ?」
 隣を見ても、誰もいない。慌てて振り向くと、少し離れた場所でちなみは座り込んでいた。
「ど、どした? なんかあったか?」
「……疲れた」
「……は?」
「……疲れた。……おんぶして」
「え、いや、おんぶって……」
「……嫌なら、いい」
「嫌なんかじゃない! おんぶさせてお願い待って立たないで!」
 慌ててちなみに駆け寄り、背を向けてしゃがむ。しばらく間があって、ちなみが俺の背中に乗ったのを感じた。
「の、乗った? いいかな?」
「……いい」
 ちなみを背中に乗せ、宵闇の街をゆっくり歩く。
 体の距離が近づいた分だけ、心も近づけたらいいのに、なんてらしくないことを思ったり。
「……タカシが悪いんだよ」
 道程も半ばを過ぎたころ、ぽつりとちなみが呟いた。
「え?」
「……タカシが女の子にモテていい気になってるのが、悪いんだよ」
「え、えっと……?」
「……そんな似合わないことしてるから、なんか、……イライラする」
 ぎゅっ、と俺の首に回された手に力がこもる。
「……ああ、つまり焼きもちを妬いた、ってことぐぇぇ」
 ぎゅーっ、と俺の首に回された手に力がこもる。ていうか首絞められてる。
「……焼きもちなんて妬いてない。……別にタカシのことなんて、好きじゃないし」
 力を緩め、ぼそぼそとちなみは言った。
「俺はおまえのこと、結構好きだけどな」
「ッ! ……そういうことを平気で言うとこ、嫌い。大嫌い」
「そりゃ残念」
 あとは、ずっと無言だった。けど、ちなみの暖かさに触れていたせいか、嫌な空気じゃなかった。

 しばらくして、ちなみの家に着いた。背から降ろし、別れを告げる。
「じゃな、ちなみ。お休み。また明日、学校でな」
 そのまま帰ろうとしたら、袖を掴まれた。
「ん? なんか用か?」
「……ちょっと、かがむ」
「はぁ、別にいいけど……何すんだ? キスでもしてくれんのか?」
「…………正解」
 気がつけば、目の前にちなみの顔。そして、唇に柔らかな感触。……キス、された?
 いきなりのことに、頭が真っ白になる。
「お、おま、な、なにを……」
「……印。……取られたら、面白くないし」
 暗闇でも分かるほど、ちなみの顔は赤い。そして、俺の顔も同じかそれ以上に。
「し、しるし? 何が?」
「……タカシは私のもの、っていう印。……ダメだよ、私以外のものになったら」
「も、ものって、おまえ、人のことを物扱いして……」
 ダメだ、顔がにやけして仕方がない。
「……いいの。タカシは物。タカシは私の物。……拒否権は、ないから」
 そう言って、ちなみは薄く笑った。
「そ、それって、俺のこと好きってこと、か?」
「……さあ、ね。……とにかく、あの子たちに色目使ったら……知らないから」
 色目を使った覚えはまるでないが、今の俺はちなみの所有物。所有者に逆らうわけにはいかないだろう。……そういうことにしといてくれ。
「分かった。ちなみのそばにいる」
「……ずっと?」
「ずっとだ。嫌ってくらいにな」
 ちなみは嬉しそうに微笑んで、家に入っていった。
 俺は明日の文化祭の準備を楽しみにしながら、帰途に着いた。

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