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2019年10月18日
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水2

2010年04月17日
 自習時間は楽しいな、わぁい。楽しいけど、眠いので寝る。
水「あ、あの、静かに、みんな静かに……」
 しばらく騒音に負けじといびきを奏でていたのだけど、隣から囁くような声が聞こえてきたので目を開ける。
男「んー……なにやってんだ、水っち?」
 声をかけると、水っちが俺の方を向いた。
水「え、えと、みんなに注意してたの。……ほら、わたし委員長だし」
 そういや、いつだったかHRで推薦されてたっけ。気が弱そうだけど、大丈夫か? ……ま、大きなお世話か。
男「んで、みんなに注意してたみたいだけど、効果の程は?」
水「あ、う……」
 耳を澄まさなくても、休み時間と変わらない騒音が耳に届く。効果0っぽい。
男「委員長なのにダメダメだな。委員長失格!」
水「……好きでなったんじゃないもん」
 ずびしと事実を突きつけると、水っちは下を向いて両手の人差し指をつんつんつつき出した。……言い過ぎた?
水「……推薦されただけだもん。……おっきい声だすの苦手だもん。……本当は保健委員とかがよかったもん」
 む、どんどん水っちがインナースペースに引きこもっていく。
男「ええい、過ぎたことをぐちぐち言うない! あと、もんもん言うな!」
水「……もんもんなんて、言ってないもん」
 言ってる。今まさに言ってる。
水「……みんな言うこと聞かないし、キミはいじめるし、……もうやだぁ」
男「あ、いや、いじめるとかそんなじゃなくて、その」
水「うっ、ぐすっ……」
 あれ、泣いてる? ……てーか、俺が泣かした?
男「ああいや違う怒ってるんじゃなくてそのあのごめんなさい俺が悪かったです!」
 泣かせるつもりなんてなかったのに……ああもう、自分が腹立たしい。
水「……うー」
 不満げに涙目で俺を見る水っち。
男「あー、その、……食べる?」
水「飴玉……。ばかにされてる……えぐっ」
 甘味で泣き止ませようとしたら逆効果。ほんに近頃の娘さんは難しいのぅ、ほっほっほ。
男「いや笑ってる場合じゃなくて!」
水「笑ってないもん、泣いてるもん……」
 俺の一人つっこみに律儀に反応する水っち。
男「ええと……その、そのうちいいことあるよ。はっはっは」
水「……超てきとー。……全然心こもってない」
 だって俺の語彙には泣いてる女性を慰める言葉なんて……あ、あった!
男「そんな顔しないで。泣き顔なんて君に似合わないよ? さ、涙を拭いて」
 いかん、自分で自分を殺したい。
水「……ばかみたい」
 お願い、誰か助けて。じゃなきゃ今すぐ俺を殺して。
黄「『さ、涙を拭いて』だって。きゃはははは!」
 黄に聞かれてた。もうやだ。
黄「ねーねー、さっきのも一回言って。『さ、涙を拭いて』……ぷ、ぷぷーっ!」
男「う……うわぁぁん! 貴様、女性のくせに男をいじめるねい! 泣いちゃったじゃねえか!」
水「わ、泣いてるのにいばってる」
 気がつけば水っちの涙は止まっていた。代わりに俺の双眸からとめどなく溢れているが。
黄「『さ、涙を拭いて』……ぷ、ぷぷぷーっ!」
男「うわぁぁん、黄色が俺を陵辱するー!」
黄「あ、コラ! 人聞きの悪いこと言うなーっ!」
 背後から何か聞こえるけど、気のせいだ。傷心の俺は教室から脱し、放浪の旅に出るのだった。
 すぐ教師に見つかって怒られた。戻らされた。
水「おかえり」
男「……ただいま」
 まぁなんか知らんけど水っち泣きやんでるし、いいか。
黄「ねーねーみんなー、モノマネするよー。『さ、涙を拭いて』……ぷ、ぷぷふーっ!」
 だから、黄がみんなを集めて俺を小馬鹿にするのも我慢できるような気がしないような予感がないわけでもない。
男「う、ううう……」
水「あ、また泣いてる。あはは、私以上に泣き虫さんだね、キミ」
 そう言って小さく笑う水っちだった。

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