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2019年10月18日
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【階段でこけそうになった女の子を助けた男】

2010年01月25日
「やっ、ほっ……にゃっ、にゃーっ!?」
 学校でだらだら階段を上ってたら、頭上から奇声がするなあと思った瞬間に影が差した。室内なのに雲か、と思うはずもなく、誰か足を踏み外しみぎゃっ。
「あいたた……あ、あれ? あんまり痛くない」
「それは俺が下敷きになっているからであり、俺が大変痛い」
「いいっ!?」
 慌てて俺から離れる感覚。
「すっ、すま……なんだ、別府か。謝って損した」
 頭を下げかけて、潰れてるのが俺と分かるや否や頭を起こす人。こんなのでこの学校の生徒会長ってんだから、どうかと思う。
「あと、もう少しこっちに寄って来てくれるといいと思う」
「ん? なんでだ?」
「その位置だと丁度パンツが見えなくて。もう少し近寄ってくれないと困ります」
 会長はゆっくりこちらにやってくると、きゅっと俺の顔を踏んだ。
「違う、それでは足の裏しか見えない」
「全く……ほら、立てるか?」
 会長は足をどけると、スカートを気にしながら俺を起こした。
「や、どうも。あいたた……」
「いや、でも、まあ、なんだ。お前がいてくれて助かった」
 あさっての方向を見ながら、会長は頬をぽりぽりかいて珍しいことを言った。
「この世界に俺がいることに、会長が感謝の言葉を述べている」
「この、場所に、偶然、お前が、いたから、私は怪我をせずに済んだ、と言いたいだけだッ!」
 言葉が妙に途切れているのは、俺の顔を渾身の力で締め上げているからであり、もう少しでもげること請け合い。
「うろれん」
「うひゃあっ!?」
 なので、舌でうろれんっと会長の手のひらを舐めてパージを阻止する。
「なっ、なな、な、舐めーっ!?」
「妖怪手の平舐め。主に十代の女性の手の平を舐めて生活したいが、なかなかそうはいかないので50代60代の手の平を舐めては『明日こそは……!』と悔し涙を流す妖怪。可哀想だと思う」
「嘘解説はいいッ! きっ、貴様、私の手を舐めたな!?」
「だって、このままだと俺の顔が物理的に外れるから」
「だからと言って舐める奴があるかっ!」
 どうやら大変に怒っているらしい。どうしよう、と思ってたら、会長の怒鳴り声を聞きつけてか、人が集まってきた。
「う……と、とにかく! このことは後できっちり詫びてもらうからな! 放課後、生徒会室に来い!」
 言うだけ言って、会長は人ごみをかき分けどこかへ行ってしまった。会長がいなくなってしまい、群衆は興味をなくしたのか三々五々に散っていった。

 てなわけで、放課後。助けたはずなのに怒られるために生徒会室に出向く。
「……しかし、普通に入っても面白くないな。転がりながらの登場……つまらんな。ここはいっそ消火器を吹かせながら登場とか」
「したら停学だぞ」
 ドアの前で考え事をしてたら、背後から声をかけられて驚いた。
「それはもう尻が割れそうなくらい驚いた」
「誰でも割れてる!」
「恥ずかしいことを大声で言う人だなあ」
「う、うるさいっ! お前に乗せられたんだ!」
 俺のすぐ背後にいたのは、やっぱり会長だった。面白くなさそうに俺を睨んでいる。
「しかし、素直に来るとは感心だな。てっきり私の言うことなんて無視して帰ったかと思ったが」
「会長の言うことを無視なんてできないよ」
「う……そ、そうか?」
 会長は満更でもない顔ではにかんだ。
「帰ったら家が不審火でなくなってる、なんて嫌だし」
「私は何だと思われてるのかなあ?」
 ニコニコ笑いながら俺の頬を全力でつねりあげる人です。
「ほら、くだらないこと言ってないで入るぞ」
 猫のように首根っこを掴まれ、生徒会室へ入る。しかし、中には誰もいなかった。
「会長、他の人は?」
「ん? いや、今日はいないが」
「ほほう。二人っきりですな!」
「いらんことは言わんでいいっ!」
 俺を一発殴ってから、会長は椅子に座った。
「あー……その、なんだ。今日は、その、悪かった」
 俺が謝る時間のはずが、会長が謝っている。
「これはどこかで時間軸がねじれ、本来俺がいるはずでない時間──つまり、『そうなったかも』という世界に入ったに違いない」
「何を言っているのだ?」
「パラレルワールドの可能性について少し」
「……相変わらず訳が分からんな、お前は」
 会長は疲れた顔でため息を吐いた。どうやら違うらしい。
「だから、何だ。私は、階段で助けてもらった礼をしたかっただけだ」
「ああ、なんだ。そんなの、あの時ちょちょいって言えばよかったのに」
「あの時に変なことばかり言って無駄に話を長引かせたのは誰だ!?」
 どうやら怒られているようだ。
「お前はいつもそうだ。いつもふざけてばかりで……聞いているのかッ!?」
「はい、すいません」
 気がつけば正座していた。怖いよ。
「……っと。違う、怒るんじゃない、お礼だ、お礼。……え、ええとだな、あの時お前がいなかったら、私は大怪我していたかもしれない」
「はぁ」
「だ、だから、その、……あ、ありがとぅ」
 会長は消え入りそうな声で感謝の言葉を告げた。こういった場面にあまり慣れていないのか、顔が真っ赤だ。
「いやはや……会長、可愛いな」
「なっ!? ななっ、何を言ってるんだ、お前は!?」
「む、年上だから可愛いは失礼か。でも、まあ、いいか!」
「よっ、よくない! き、貴様、な、何を言って!?」
「おや、足が正座のせいでしびれあしら」
「人の話を聞けーッ!?」
 何か目がぐるぐるしてる人が叫んでました。

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