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2024年04月20日
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【ちゅんでれを妹っぽく扱ってみた】

2010年03月08日
「娘よ、聞いた話によると、9月の6日は何でも妹の日だとか。そこで父は考えた。娘を妹として扱ってみてはどうだろうか。きっと楽しいのではないだろうか」
 最近娘が父である俺を汚物でも見るかのような目で見る。大変辛い。
「はぁ……父よ、末期症状もいいところだな。どうだ、いい病院を紹介してやろうか? ちょっと窓に鉄格子がはまってるのが難点だが、いいところだぞ」
「ふ、父を甘く見るな! そこに入ると出てこれないんだろう? ふふっ、父の頭脳に恐れをなしたならば、疾く妹になるがいい」
「恐れをなすのは非常に難しいが、父よ。戯言を言う前に、今日の日付を大きな声で言ってみるがいい」
 娘が壁にかかってるカレンダーを指したので、言われるがままに言う。
「よし、父の底力を見せてやる! 今日は9月7日! ……7日だと!?」
「そう、父が焦がれ続けた妹の日は既に終了だ。諦めるんだな」
「し、しかし! しかしだ、娘よ! このままでは父の妹欲が満たされない! 一度火がついたからには、父はもう止まらないぞ? そこで、だ! 娘よ、今日だけ妹っぽく振舞ってはどうだろうか」
「はぁ……どうしたら私が嫌がっている事を理解してくれるのだろうか」
「ははっ、これは異な事を。父が娘の嫌がる事を果たしてするだろうか、いやしない。反語」
「現にしているではないか!」
「……?」
「なぜそこで不思議そうな顔をする……」
「急に泣きだしそうな顔になっても変だろう?」
「そういう話ではないっ!」
 娘の話はややこしい。
「あー、もういい。分かった。父と頓痴気なやり取りをするのも疲れた。とにかく、妹っぽく振舞えばいいのだろう?」
「お、ようやっとその気になってくれたか、娘よ。えらいぞ。なでなで」
「む……ええい、子供ではないのだ。なでるでない」
 頭を撫でられ、不服そうな顔をしながらも少しにやける娘だった。
「小学生は子供と認識するのが一般的だと父は思うが」
「うるさい。いいから始めるぞ」
 そう言って、娘はパンと手を打ち鳴らした。
「ふむ……じゃ、そうな。どうだ、兄に耳掃除でもしてくれないか、妹よ」
「断る。そんなもの一人でやれ、兄」
 俺の呼び名が変わっただけで、いつものやりとりとまったく変わらなかった。
「ええい、まったくなってない! いいか、娘よ。妹とは、兄を愛し! 兄のために生き! そして、兄のために自らの人生を捧げし者の総称! そんな冷たい妹なぞ存在せん!」
「父が妹にどれだけ憧憬を抱いてるのか知らないが、そんな気持ち悪い妹なぞ存在せん」
「馬鹿な! し、しかし、しかしだ娘よ! このゲームやこのゲームやこのゲームには、そんな妹が潤沢に揃っているぞ! ふ、これほどの証拠が揃っているのだ……ぐうの音も出まい」
「なぜここまで誇らしげに18歳未満は禁止のゲームを掲げられるのか少々不思議に思わなくもないが、父よ。ゲームはゲーム、フィクション、虚構だ。存在しない」
「がーん!」
「がーん!? 擬音を口に出すほどの衝撃だと!?」
「ええいうるさい! 父は甘えてくる妹が欲しいのだ! 妹いもうとイモウトー!」
「はぁ……まったく、しょうがないな、……お、お兄ちゃんは」
「!!!」
「……きょ、今日だけだぞ、お、……お兄ちゃん」
「兄も妹が大好きだーっ!」
「きょわっ!?」
 感極まって娘──いや、妹を抱きしめたら変な声が出た。
「ち、ち、ち、ち、父? ななな、なにを?」
 目を白黒させて、妹が俺の胸元でわななく。
「否! 今の父は兄であり、父と言われても何のことやら!」
「あ、う……は、走りすぎだぞ、お、お兄ちゃん」
「兄も妹が大好きだーっ!」
「きょわーっ!?」
 気のせいかループしてる気が。

「ちょっと落ち着こう」
 その後、7回くらい繰り返した所で話が進まないことに気づいたので、ちょっと落ち着くことにする。
「私は落ち着いている! 父……あ、いや、お、お兄ちゃんがいちいち抱きついてくるから混乱するのだ」
「兄も妹が大好きだーっ!」
「だから、抱きつくなーっ!」
「うーむ……どうやら、兄は妹の『お兄ちゃん』という響きに反応し、つい抱きついてしまうのだろうね。これは困った事態だと言わざるを得ない。だが、妹の可愛らしさに兄はついつい抱っこしてしまうのだった」
「いいから離れろっ!」
 怒られたので、不承不承離れる。
「ふぅむ……例の言葉で抱きついてしまうのなら、兄と呼ぼう。それでいいな、兄?」
「まぁいいが……普段の父という言葉から兄に代わっただけで、劇的に変化しているとは思えない兄である」
「……態度が変化すればいいだけの話だろう?」
 そう言って、妹はぴょいんと膝の上に乗ってきた。
「膝だと! 娘自ら!?」
「娘でなく、妹、だろう?」
 そう言っていたずらっぽく笑う娘……いや、妹。
「ふふ……あまり自分から乗ることはないが、なかなかどうして、心地よいではないか」
 妹は薄く目をつむり、俺の胸元に頭を寄せた。
 こいつは困った。父性愛とか、それどころの話ではない。なんかもう頭おかしくなりそうなくらい可愛いぞこの娘。
「可愛い! 可愛いすぎだぞ娘よ!」
「きょわーっ!?」
 思考が暴走してまた抱きしめました。

「だから、いちいち抱きしめるでない! なぜ学習しないのだ……」
「はい、すいません」
 そんなわけで、怒られてます。
「それに、私の呼び方が妹から娘に戻っていたぞ。兄が考えた設定なのだ、ちゃんとするがいい」
「あー、それはもういい。充分堪能した。やはり、兄と妹ではなく、父と娘という設定が父にはあっている」
「父と娘は設定ではないだろう。まったく……」
「…………」
「ん? 父、どうした?」
「……いや、なんでもない。やはり、父と娘が性にあってる。妹に手を出したら捕まるけど、娘だと平気だしな」
「娘でも捕まるぞ!? というか、出すのか!?」
「…………」
「どうして何も言わず暗い笑みを浮かべる!?」
「冗談、冗談だ、娘よ。……さて、睡眠薬、睡眠薬と……」
「ああ父は娘である私を性欲の対象として見る。なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうか!」
「どうしていつもいつもその台詞を言う時は窓を全開にし、外に向けて言うのだ、娘よ!」
「ふふ。ただの仕返しだ、父」
 そう言ってにっこり笑う娘だった。

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