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2019年10月18日
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【鹿せんべい買って鹿に追い回されるツンデレ 】

2010年04月08日
 修学旅行で奈良の鹿が生息するという公園に連行された。
「じゃあここでしばらく自由行動にします。みんな、鹿さんと触れ合ってね♪」
「いかに童顔とはいえ、30過ぎの女性が音符マークを飛ばすのはどうかと思うぞ」
「まだ29だもん!」
「もん、とか言うな。四捨五入すると30過ぎの人」
「ううう……別府くんがいじめるぅぅぅぅぅ!」
 泣きダッシュをかます担任を尻目に、級友たちはわらわらと散っていった。
「アンタねー、先生泣かすんじゃないわよ」
 俺も鹿と戯れるかと思ってると、呆れ顔のかなみが寄ってきた。
「いつものことだ、気にするな。で、どうする? 鹿と遊ぶか?」
「んー……そうね。折角だし、鹿せんべいでもあげましょ」
 かなみと一緒に露天でせんべいを買うと、早速鹿たちが寄ってきた。
「あははっ、食べてる食べてる。アンタの方は?」
「ぱりぱりぱり……うむ、思った通りおいしくない。味しない」
「なんで自分で食べてるのよッ!」
 せんべいを食ってると怒られた。
「自分で買ったんだし、いいだろ別に。それよりかなみ、えらく鹿が寄ってきてるぞ」
「え……わっ、本当だ」
 最初は数匹の鹿が、今はもう10を越すほどの数に膨れ上がっていた。
「人間にはその暴力で敬遠されるかなみだったが、そうと知らない鹿には大人気だった」
「暴力なんてしたことないわよっ!」
 なんて言いながら俺の頬をぶつこれは暴力以外の何ですか。痛いですよ?
「そ、それより……なんか、すっごい寄ってきてるんだけど」
「うむ、鹿まみれだな」
 まるで何かに追い立てられるかのように、鹿がかなみの元に集まっていく。少しばかり怖い。
「ちょ、ちょっと、もう鹿せんべい持ってないのに……た、助けてよタカシ~」
「そんな情けない声を出すでない。いつもの暴力で鹿を振り払えばいいだろうに」
「そんな可哀想なことできるわけないでしょ! ほら、こういう時くらい役に立ちなさいよ!」
「あいにく鹿に襲われてる友人を助けるHowTo本を読んだことがなくてな。くっ……こんな時に何もできない自分が歯痒い」
「そんなHowTo本ないっ! いいから助けろ馬鹿!」
「大丈夫だって、鹿は草食だから別に食われやしないぞ」
「そ、そうだけど……やだ、ちょっと服噛まないでよ!」
 鹿にスカートの裾を噛まれ、かなみは悲鳴をあげた。
「わっ、ちょっと……もうヤダ、やめてよ!」
 どうにか鹿を振り払い、かなみはその場から逃げ出した。その後を鹿がぞろぞろ着いていく。
「羊飼いの少女のようで、一見のどかな風景ですね。いや、鹿飼いの少女か」
「何をのん気に……早く助けなさいよ、タカシ!」
「しかし、これほどのどかな光景を失うのは人類にとって大きな痛手になるかと。かなみを取るか、人類を取るか……これは極めて難しい選択だ」
「早くしろ、ばかっ!」
 叱られたので、鹿を散らす。具体的な方法を記すと政府に消されるので秘密。
「はー……怖かった」
「大丈夫か?」
 ぺたりと地面に座り込んでるかなみに手を差し伸べる。
「大丈夫じゃないわよ! なんで最初っから助けてくれないのよ!」
 俺の手をとらず、座ったままかなみは俺に疑問をぶつけた。
「なんでと言われても……ただ、鹿に追われるかなみが可愛かったから、それをできるだけ長く見たかったからとしか」
「んなっ!?」
 途端、かなみの顔に朱が射した。
「そ、そんな言い訳で私が納得するとでも……」
 ごにょごにょ口元で言われても、俺の耳まで届かない。
「とはいえ、すぐ助けないのは確かにダメだな。悪かった」
「……ま、まぁ、別に、その、謝ることないっていうか……うぅ」
「とにかく、ぼちぼち立て。この辺りは地雷が埋まってて危険だぞ」
「地雷……?」
「鹿がいるんだ、糞に決まってるだろ。……それとも糞と戯れる趣味が?」
「ないわよっ! 早く言え、馬鹿!」
 かなみは左手で俺の手を引っ張り、右手で俺のあごを打ちぬいた。
「あーもう、やっぱアンタって最低! べーっだ!」
 このままでは地雷に顔から突っ込むというのに、俺ときたら舌を出すかなみの仕草に心を奪われる体たらくだった。

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