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2019年10月15日
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【ツンデレときつねうどん】

2010年02月13日
 たまには食堂で昼食を。適当な定食を買い、どこに座ろうかと席を探してると、うどんをすすっているいずみを見つけた。
「ずずーっ、ずっ、ずずーっ……ぷはぁ」
 顔を上げ、一息ついてるところで目が合った。
「なんでうどん食うだけで死にそうになってんだ?」
「死にそうになんてなってへん! おいしいなあ思いながら食べてるだけや!」
 丁度いずみの正面の席が空いてたので、そこに座る。
「勝手に座るしい……」
「ん、ここ誰か予約入ってたか? 問題あるなら他の所に行くが」
「別にええねんけど……食べてるとこタカちゃんに見られんの、恥ずかしいやん」
 後半に行くに従ってぼしょぼしょとした声になっていったので、非常に聞き取りにくい。
「俺といずみの仲だ、気にするな」
「聞こえへんように言ってるのに、なんで聞こえてんねん!」
 いずみは顔を真っ赤にして怒った。耳のよさだけが自慢です。
「もー……タカちゃんはデリカシーなさすぎや。そんなんやと、女の子にもてへんで?」
「大丈夫。昨日だけで3人に告白された」
「ななななななんやて!? 誰や、誰に告白されたんや!?」
 テーブルに身を乗り出し、いずみは俺の胸倉を掴んでがっくんがっくん揺らした。
「いやあのその冗談冗談だから揺するな」
「3人て、まさか、全員とつきあうつもりやないやろな! そんなんウチ許さへんで!」
 俺の言葉なんて聞こえてないのか、いずみはなおも俺を揺すり続けた。
「タカちゃんは綺麗で可愛くて優しい子と一対一でお付き合いせなアカンねん! そんな爛れた恋愛、ウチ許さへん!」
「いやあの待て揺するな酔う酔うゼうぇっっっっっぷ」
「ん……? あーっ、タカちゃん顔真っ青やないの! どないしたん?」
 お前のせいだばかやろう、とも言えずにぐったり。脳を激しくシェイクされて疲労困憊です。
「大丈夫? 保健室行く?」
 首を横に振り、そのまましばらく体力回復。
「ふー。回復。まさか冗談でこんなことになるとは思いもしなかった」
「え、冗談? ……えっと、人数が?」
「告白自体」
「…………。た、タカちゃんのあほ、あほー!」
 いずみは俺の胸をぽかぽか叩いた。
「お前も俺と付き合い長いんだから気づけ。俺が告白されるわけなかろーが」
「なんで自慢げやねん。……でも、そんなことないで? タカちゃん、優しいから女の子に人気あるもん」
「いずみのくせに世辞を言うとは生意気な」
「せ、世辞とかやなくて! もー、やめてーや」
 ぐりぐりと多少乱暴になでると、いずみは迷惑そうにしながらも少し嬉しそうに目を細めた。
「さて。なんだか分からないが無駄に時間を浪費した。次の授業まで時間もないし、とっとと食っちまおう」
「タカちゃんが冗談言わへんかったら済む話やのに……」
「お前は俺に死ねと言うのか」
「死ぬんや……」
 どこか驚いた様子で俺を見つめるいずみだった。その隙をつき、いずみのうどんから油揚げをかっさらう。
「あー! ウチのあげさん取った! 返せー!」
「返して欲しくば『お兄ちゃん大好き♪』って言いながら俺に微笑みかけろ」
 箸で油揚げを弄びながら、不敵で素敵な感じに微笑む。いずみは平均的な高校生から逸脱してる身長なので、妹っぽく振舞ってくれると嬉しい。俺が。
「だっ、誰が言うか! タカちゃんのあほー! 病気、病気ー!」
「違う、罵声を浴びせるのではない。まあそれも悪くないですが!」
「本格的にタカちゃんがあかん!」
 本格的にとか言うな。
「言わないと油揚げ食う」
「あかん! それ食ったらウチのきつねうどんがすうどんになるやないの! 一大事や!」
 そこまで大事とは思わないが、好都合。
「それが嫌ならとっとと言うことだな」
「……ど、どないしても?」
「どないしても」
「……わ、分かったわ。で、でもな、ウチの本心ちゃうで? ウチはあげさんを返して欲しいから言うだけやで?」
「わーったから早く言え」
「そ、そんな急かさんでもええやん」
 いずみは2、3度深呼吸し、鋭い目つきで俺を見た。
「……た、タカちゃん。大好きやで」
 精一杯、といった様子でいずみは一言ずつ区切って言った。
「…………」
「い、言うたで! 言うたから返して!」
「……あー、いや、まあ、言ったけど、その」
 どう言ったものか思案しながら、照れ隠しに頭をガジガジかく。
「な、なんやねんな。ケチつけるん?」
「その、まさか俺を名指しで大好き言うとは。いやはや、お兄さんちょっと照れますよ」
「……? ……ッッッ!!!」
 最初は何のことか分かっていなかった様子だったが、すぐに見当がついたようで、いずみの顔がタコみたいに真っ赤になった。
「ちゃちゃちゃちゃうねん、ちゃうねん! ちょっと間違っただけやねん! 別にタカちゃんが好きとか、そーゆーのとはちゃうねんて!」
「いやはや、なんか得した気分。もぐもぐ」
「あーッ!!! な、何食うてんねん! 何ウチのあげさん食うてんねん!」
「ん? あ」
 無意識にいずみの油揚げを摂取していた。もぐもぐしていた。
「むしゃむしゃごめん。味がしみてておいしい」
「ちっともごめん思てない! あー……折角頑張って言うたのに……思てもないこと言うたのに……あほー。タカちゃんのあほー」
「そう落ち込むな。ほら、俺の飯やるから」
「……ウチはあげさんが食べたかったんや。……タカちゃんのあほー」
 あまりにあほーあほー言うので、いなり寿司を買ってやった。
「むしゃむしゃ……こんなんじゃウチの傷ついたハートは癒やせへんで。むしゃむしゃ……も一個ええ?」
「いくらでもどうぞ」
「やたっ♪ ……そ、それはそれとして、恨んでるからな! ほ、ホンマやで?」
 両手でいなり寿司を抱えたまま、いずみは付け足すように言った。
「大好きな俺に免じて許せ」
「だっ、だからそれは間違って言うただけや! もーっ、タカちゃんのあほー!」
 顔を真っ赤にしていなり寿司にかぶりつくいずみだった。

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