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2024年04月30日
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幼馴染「…………」クイクイ 後編

2012年04月06日
──男宅──

男「はー……疲れた」

母「よっすよっす」

男「あ、母さん。帰ってたのか、おかえり」

母「ただーま。そしておかーり、我が息子よ」

男「ん、ただいま。飯は?」

母「食ってった」

男「そか。すぐに風呂の準備するから、ちょっと待っててくれ」

母「んー。でも、早くしないと缶タワーが完成しちゃうよ?」

男「タワーって……うわ、なんつー量の空き缶だ。どんだけ飲んでんだ」

拍手[80回]

母「ビールっていいよね、特に仕事の後のって超美味いよね。アンタも飲む?」

男「未成年に勧めるな」

母「かったいねー。アタシが学生のころは、もう毎日のように呑んでたのに……アンタ、アタシの子じゃないねっ!」

男「そうだと嬉しいんだが、残念ながら子だよ。つーか、風呂入るならあんまり飲むな。溺れても知らねーぞ」

母「その時は、アンタが優しく介抱してね? 緊急時だし、おっぱい触ってもいいよ?」

男「マザコンじゃないんで触っても嬉しくねーよ」

母「結構でかいのに……あ、でもアンタちっちゃいのが好きだからダメか。お隣の幼馴染ちゃんみたいなのがいいんだよね?」

男「親殺しの時間だ」ヒョイヒョイヒョイ

母「待って待ってその缶まだ残ってるー! ごめんごめん、もうからかいませんから返してー!」

男「ったく……こんなんで優秀ってんだから世の中分かんねーな」

母「サーセンw」

男「ああ鬱陶しい。んじゃ、風呂洗ってくるからちょっと待っててくれな。いいか、あんま飲むなよ」

母「任せてっ!」プシュ

男「言ってるそばから新しい缶開けてんじゃねー!」

母「てへぺろ(・ω<)」


──男部屋──

男「だー……無駄に疲れた」

男「宿題……まあいいや。明日幼馴染に見せてもらおう」

男「……いや、無理か。アイツそういうの厳しいからなあ。しゃーねえ、自分でやるか」

男「…………」ゴソゴソ

男「ない」

男「あー、そういや教科書類全部学校に置きっぱなしだったな……」

男「……今から行くのは超めんどくさい。結論:放棄」

男「よしっ! 寝ようっ!」


男「……んぐ、ぐー……」

???「…………」ガチャ

男「ぐー……ぐあー……」

???「……やっぱ寝てる。……朝だよ?」ユサユサ

男「ん? ……んあ」

???「もう遅い時間だよ? 遅刻しちゃうよ?」ユサユサ


男「ぐー……ぐー……」

???「……起きない。困ったな」ユサユサ

男「ん、……お、幼馴染……」

???「え?」

男「……ぐー、んぐー……」

幼馴染「……ね、寝言か。なんだ」

幼馴染「……男が見てる夢に、私が出てるの?」

幼馴染「…………」

幼馴染「…………あ、朝だよ。起きないと遅刻するよ///」ユサユサ

男「ん、んー……あ、んあ?」

幼馴染「あ、起きた。おはよ、男」

男「あ、ああ、おはよ、幼馴染。……なんで俺の部屋にいるの?」

幼馴染「……いつもの場所で待ってたけど、いつまでたっても来ないから」

男「そか。わざわざ悪いな。ふああ……」

幼馴染「おっきなあくび。ご飯用意してくるから、急いで着替えてね?」


男「ん、分かった。起こしてくれてサンキュな。あ、それとな」

幼馴染「ん? なぁに?」

男「なんで顔赤いんだ?」

幼馴染「……し、知らない///」プイッ

男「……?」


──居間──

男「着替えました」

幼馴染「ん。ご飯でいいよね?」

男「ああ。でも、飯食う時間あるか?」

幼馴染「朝ご飯は遅刻してでも食べなきゃダメ。はい、目玉焼き」

男「ん、サンキュ」

幼馴染「それと、海苔。インスタントだけど、味噌汁もあるよ」

男「おお、豪勢だな」

幼馴染「ホントは味噌汁はちゃんと作りたかったんだけど、ちょっと時間ないから。ごめんね?」

男「いやいや、十分すぎるくらいだって。じゃ、いただきまーす」


幼馴染「ん、おあがりなさい。ゆっくりでもいいから、しっかり食べてね?」

男「いやいや、ゆっくりはダメだろ。もう時間ねーんだし」

幼馴染「ダメ。急いで食べたら消化に悪い。遅刻してもいいから、ゆっくり。ね?」

男「俺だけならまだしも、お前まで巻き込むわけにはいかないっつーの」

幼馴染「…………」ムーッ

男「ああもう、分かった、分かったよ。ゆっくり食うよ。だから怒るなって」

幼馴染「分かればいいの。じゃ、いっぱい食べてね?」

男「朝からいっぱいは無理だよ」

幼馴染「がんばれ、がんばれ」

男「へーへー。適度に頑張るよ」


──通学路──

男「げふっ。うー、朝から食い過ぎた」

幼馴染「おかわりしたね。偉い偉い」ナデナデ

男「はいはい。んじゃ、急いで行くぞ」

幼馴染「ん。でも、小走りでいけば間に合うくらいの時間だから、そこまで急がなくてもいいよ?」


男「んー……そか。んじゃ、普段より少し早めに歩いて、それプラス公園通って近道するか」

幼馴染「ん」


──公園──

男「おお。すごいな」

幼馴染「一面、桜吹雪だね。すごいね……」

男「これは、目を奪われるな。……あー、花見してーなー」

幼馴染「……する? お弁当、作るよ?」

男「マジか? じゃ、今度の休み、花見しよっか?」

幼馴染「ん。……お弁当、頑張る」フンス

男「いや、別にそこまで気合は入れなくても」

幼馴染「頑張る」フンス

男「……そ、そか。じゃ、よろしく頼むな」

幼馴染「ん」フンス


──校門前──

男「ふぅ……どうにか間に合ったな」

幼馴染「ん。よかった」

男「全くだ。……あ、幼馴染、ちょっと動くな」

幼馴染「?」ピタッ

男「頭に桜の花びらがついてる」サッサ

幼馴染「…………」

男「……ん。おっけー」ナデナデ

幼馴染「……ありがと。男はどう?」

男「どうだろ? ちょっと見てくれ」

幼馴染「ちょっと屈んで。……ん、ついてる」サッサ

男「んー」

幼馴染「はい、とれたよ」ナデナデ

男「サンキュ。んで、なんでなでましたか」

幼馴染「男のマネ」

男「なるほど、なら仕方ないな」ナデナデ

幼馴染「ん。仕方ない」


──昇降口──

幼馴染「男はさ、私の頭よくなでるよね」

男「ん、そうか?」

幼馴染「そうだよ」

男「んー、言われてみるとそうかもな。なんかお前をなでるの好きなんだよなあ。……あ、嫌だったか?」

幼馴染「んんん。んんん。んんん」プルプルプル

男「いや、そんな否定しなくても大丈夫だが……」

幼馴染「……怒った?」

男「怒るわけねーだろ」ナデナデ

幼馴染「……ん」コクコク


──教室──

男「あ」

幼馴染「?」

男「……完っ全に宿題のこと忘れてた」

幼馴染「はぁ……ダメだよ? ちゃんとやらないと」

男「いや、やろうとはしたんだけど、そもそも教科書の類を持って帰ってなくて」

幼馴染「はぁ……」

男「とにかく、急いでやらないと」

幼馴染「宿題って、一時間目の数学の? じゃ、もう無理だよ」

男「なぜに」

幼馴染「だって」キーンコーンカーンコーン

教師「はいはい、授業を始めますよー」ガラッ

幼馴染「……ね?」

男「なるほど」


男「あ゛ー……」

幼馴染「お疲れ様」ナデナデ

男「ああ、なでられた所から疲れがとれていく……」

幼馴染「じゃ、いっぱいなでないとね」ナデナデナデ

男「ふぃぃ……いや、よもや宿題しなかった罰で追加の宿題を出されるとは」

幼馴染「しょうがないよ」ナデナデ

男「まあな。さて、それじゃ交代だ」

幼馴染「え? 私は疲れてないよ?」

男「俺がなでたくなった」ナデナデ

幼馴染「なで男が現れた」

男「あー楽し」ナデナデ

幼馴染「……♪」


男「くああ……ふぅ。さて、授業も半分終わった」

幼馴染「お昼だよ」トテトテ

男「そだな。今日も中庭で食うか」

幼馴染「ん」


──中庭──

男「ああ、今日もいい桜だな」

幼馴染「ん。はい、お弁当」

男「ん。いつもありがとな」

幼馴染「んんん。好きだから」

男「それでもな。他人の厚意にあぐらをかくのは恥ずかしいと思っているから、出来る限り感謝はしておきたいんだ」

幼馴染「……男のそういうとこ、好きだよ?」

男「かっこつけた甲斐があった」

幼馴染「騙された」

男「騙したった」ナデナデ

幼馴染「ん。……はい、お茶だよ、照れ屋さん」

男「サンキュ。じゃ、いただきます」

幼馴染「ん。いただきます」


男「そして訪れる満足げふー。ごちそうさま」

幼馴染「ん。おいしかった?」

男「ああ。今日も大満足だ」

幼馴染「んふふ。そか。嬉しいな」

男「はぁ……あー、茶がうまい」

幼馴染「なんか、もうこれが花見みたいだね?」

男「あー、そだな」

幼馴染「でも、それとは別でちゃんと花見するよ? ……するよね?」クイクイ

男「するよ。だからそんな不安そうな顔するない」ナデナデ

幼馴染「ん。……へへへ?」

男「なんスか」

幼馴染「んんん。なんでもない」ニコニコ


男「変な奴」フニフニ

幼馴染「んふふ。あのね、今日も膝枕、する?」

男「願ったり叶ったりだ」

幼馴染「ん。じゃ、ここに頭乗せて?」

男「ほいほい。よっと」

幼馴染「ん。じゃ、寝ていいよ? チャイムが鳴ったら、起こすから」

男「んー……それもいいが、今日はあんまり眠くないから、話でもしたい気分やも」

幼馴染「そう。じゃ、何の話しよっか?」

男「ふむ。そだな、お前のスペックの話でもするか」

幼馴染「すぺっく?」

男「そ。能力というか、性能というか。基本的に高くまとまってるよな」

幼馴染「そかな? 普通だよ?」

男「何言ってんだ。テストはいつも上位にいるし、運動だって……ああ、そういや以前いくつか運動部から勧誘されてたな」

幼馴染「ん。陸上部と、水泳部と、剣道部」

男「パーフェクトソルジャーですね」


幼馴染「男と一緒だね?」

男「俺のPSはカクカクしてすぐにフリーズするPSだからな。そっちのむせるPSとは格が違うよ」

幼馴染「んふふ」スリスリ

男「そういや、なんで部活入らないんだ? お前ほどの力があるなら、どこに入ろうが活躍できるだろうに」

幼馴染「だって、部活に入ったら家事する時間がなくなっちゃう」

男「あー……でも、もしどうしてもしたいなら俺がお前んちで家事やってもいいぞ? そりゃ最初は無理かもしれんが、教えてもらえりゃ頑張るし」

幼馴染「んんん。大丈夫。ありがと」

男「いや、うーん……」

幼馴染「それに、男と過ごす時間が減っちゃうから」

男「…………」

幼馴染「そんなの、嫌だから。だから、部活は入んないの」

男「……そ、そっか。そ、それはアレだな、仕方ないな」ギクシャク

幼馴染「またcpuが熱暴走してる。直れ直れ」スリスリ

男「その両手で俺の頬をすりすりする技は、逆に熱暴走が加速します」

幼馴染「残念」スリスリ


男「俺の話聞いてる?」

幼馴染「んふふ」

男「あ、そうだ。その、非常に自惚れ発言で死にたくなるが、俺と一緒に部活入りゃ悩みは解決するのでは?」

幼馴染「んんん。特に入りたい部活もないし、大丈夫だよ」

男「ただ俺のナルシストっぷりを振りまいただけで終わってしまった」

幼馴染「んふふ。ありがとね、男」スリスリ

男「世話になりっぱなしなんで、ほんの少しでも恩を返したいと思ったんだけどな。なかなかうまくいかないもんだ」

幼馴染「世話なんてしてないよ。私が好きでやってることなんだから」

男「それはそれ。まあ、将来に期待してくれ。どかーんと恩を返しますから」

幼馴染「ん。いっぱい期待するね?」

男「いっぱいは荷が重いなあ……」

幼馴染「男なら絶対大丈夫だよ。がんばれ、がんばれ」スリスリ


男「どこからその自信が出てくるのやら」

幼馴染「昔からずっと男のことを見てきた私の言うことだもん、間違いないよ。ね?」

男「そりゃ説得力があるな。じゃあ、のせられますか」

幼馴染「ん。もしダメだったら、私が養ってあげるね?」

男「ひどいヒモ宣言を見た」

幼馴染「んふふ」スリスリ

男「やれやれ。……ふああ。んー、なんか眠くなってきたな」

幼馴染「じゃ、寝る?」

男「そだな、悪いけど少し眠らせてもらうな。お休み、幼馴染」

幼馴染「ん。お休み、男」ナデナデ


男(そして起きた俺なのだが)

幼馴染「……くぅ、くぅ」ナデナデ

男(どうやら幼馴染も寝てしまったようだ。だが、寝ている状態でどうして手が動いている。無意識か?)

幼馴染「……ん。……くぅ」ナデナデ

男(よく分からないけど、寝てる幼馴染も可愛いなあ。ちゅーしてえ)

幼馴染「……ん、んぅ。……あ、寝ちゃった」

男「おはよ」

幼馴染「あ、男が起きてる。……おはよ」ナデナデ

男「んむ。さて、そろそろ戻るか」

幼馴染「んと。……まだ時間あるから、大丈夫」

男「ん、そうか? でも、早めに戻った方が」

幼馴染「ん。……でも、もちょっとだけ」ナデ

男「……ま、そだな。急ぐ理由もないしな」

幼馴染「ん」スリスリ

男「はぁー。なんつーか、桃源郷って、こんな感じなのかな」


幼馴染「……そかもね。辺り一面桃の花が咲き乱れて、だっけ?」

男「そうそう。空気はポカポカしてて、桜は舞ってて、お腹いっぱいで、幼馴染に膝枕されて。なんか、このまま死んでも後悔しない感じだ」

幼馴染「死んじゃダメ」ポカポカ

男「例えだ、例え。叩くな」

幼馴染「例えでも。死んじゃダメ」ポカポカ

男「いたいた。だから、叩くねい」

幼馴染「……死なない?」

男「最初から例えの話だっての。痛いの苦手だし、死ぬつもりなんかないよ」

幼馴染「……ん。……ダメだよ、死んだりしたら。怒るからね。いっぱい怒るからね。ご飯も作ってあげないし」

男「わーったよ。少なくとも、お前が死ぬまでは死なないよ」スリスリ

幼馴染「ん。……約束、だよ?」ユビキリゲンマン

男「了解了解うぐぅうぐぅ」ハリセンボンノマス


幼馴染「んふふ。Kanon、だね?」

男「詳しいな……って、そっか、見たことあったか」

幼馴染「ん。前にね。一緒にアニメ見たよね」

男「そだったな……」

男(……そういえば、幼馴染のおばさん、小さい頃に病気で……)

男(……思い出させちゃったか。悪いことしたな)

幼馴染「……大丈夫だよ? 男がいるから。ね?」

男「お前、エスパーか」

幼馴染「男限定で、ね。顔見たら、何考えてるかなんとなく分かるの」

男「なんて厄介な」フニフニ

幼馴染「んふふ。ほっへひっはははひへ(ほっぺ引っ張らないで)」


男「さって、いい加減戻らないとな」ガバッ

幼馴染「ん。そだね」

男「弁当箱洗ってくるから先に」

幼馴染「んんん」プルプル

男「……戻らないよな。んじゃ、一緒に来るか?」

幼馴染「ん」コクコク


男「はー……暖かくなったとはいえ、水はまだ冷たいな」バシャバシャ

幼馴染「私が洗うよ?」

男「ダメ」

幼馴染「…………」ムーッ

男「お前飯作る人、俺洗う人。おっけー?」

幼馴染「……全部やるのに」ムスー

男「あんまり俺に楽を覚えさせるな。……はい、終わり」

幼馴染「お疲れ様。……わ、冷たいね、手」ムギュ

男「おいおい、俺の手握ったりしたらお前の手まで濡れるぞ」


幼馴染「冷たいの取れるまで。……ん、よし。……はい、ハンカチ」

男「いいよ、お前先使えよ」

幼馴染「はい、ハンカチ」

男「……本当、頑固だよな、お前」フキフキ

幼馴染「ん♪」

男「はい、拭き終わったよ。ありがとな」

幼馴染「んんん」フキフキ

男「じゃ、戻るか」

幼馴染「ん」


──教室──

男「そして教室に戻って授業を受けて放課後になったわけだが」

幼馴染「誰に説明してるの?」トコトコ

男「誰にだろう」

幼馴染「帰ろ?」

男「そだな」


──通学路──

男「そういや、明日休みだな」

幼馴染「そだね。それじゃ、花見、する?」

男「そだな。じゃ、悪いけど弁当頼むな」

幼馴染「ん。頑張る」フンス

男「そんな気合入れなくていいから。ほどほどで大丈夫だから」

幼馴染「ん」フンス

男「何も分かっちゃいねえ……」

幼馴染「んふふ。あ、そだ。今日もご飯食べていってね?」

男「いや、昨日も行ったし、今日はいいよ」

幼馴染「んんん」プルプル

男「いや、んんんじゃなくて」

幼馴染「……私の作るご飯、おいしくない?」

男「んなわけないだろ! 毎日だって食いたいくらいだ!」

幼馴染「…………」


男「ん? ……あ、いや、その」

幼馴染「…………///」

男「ち、違うぞ!? そ、そういう意味じゃなくてだな!?///」

幼馴染「う、うん、分かってる。ちょっと、びっくりしただけ///」

男「そ、そか。俺もびっくりした」

幼馴染「……でも、その、あの」

男「ん?」

幼馴染「……な、なんでもない///」

男「……そ、そうか///」

幼馴染「ん。そ、そう///」

男「……ええい、恥ずかしい///」

幼馴染「んふふ。……あ、あのね? もし嫌だったらいいんだけどね? ……ご、ごめん。やっぱいい」

男「ダメだ。ちゃんと言え。よほどでない限り断らないから」

幼馴染「よほどだもん」

男「訂正。なんでも聞く」


幼馴染「……うー。……あ、あの。……ちょ、ちょっとだけの間でいいから、その……う、うぅ。やっぱいい///」

男「だーっ! 早くしないと俺からとんでもない提案するぞ!」

幼馴染「そ、そっちの方がいい。絶対そっちの方がいい。男のいうことなら、なんでも聞くもん」

男「ああもう、いいから言ってくれ。笑ったり馬鹿にしたりしないから」

幼馴染「…………。ホント?」

男「自身に誓って」

幼馴染「……ん。……じゃあ、あの、……て、手、繋いで、いい?///」

男「へ?」

幼馴染「……や、やっぱ、いい」ジワーッ

男「違う嫌とかじゃなくてびっくりしただけ! 泣くなッ!」ナデナデ

幼馴染「……ぐしゅ。泣いてないもん」

男「えらくもったいつけるから何を言うかと思えば。それくらい普通に言えばいいだろうに。昼間それ以上すごいことしたろ?」

幼馴染「だって、膝枕はよくするから。……それに、急にそんなこと言って、変だと思われたら悲しいし」

男「思わねーよ。ほら、繋ぐんだろ?」

幼馴染「……ん。いい?」


男「いいに決まってるだろ。こっちから頼みたいくらいだ」

幼馴染「……ん。それじゃ」ギュ

男「…………」

幼馴染「…………」

男「……いかん。なんか照れる///」

幼馴染「……ん///」

男「と、とはいえこの程度で動揺するような男さんではないですよ?」

幼馴染「……あ、あの」

男「は、はいっ!?」

幼馴染「あ、明日。お弁当、頑張るね?」

男「あ、ああ」

幼馴染「そ、それだけ」

男「そ、そか」

幼馴染「…………」

男「…………」ギュ

幼馴染「…………///」ギュー

男「…………///」ギュー


──幼馴染宅 玄関前──

男(結局、あれから会話もなく、黙ったまま家に着いてしまった)

男(どうにもこうにも頬が熱くて仕方ねえ。幼馴染の方も、まあ、ちらっと見た感じ、似た感じみたいだ)

幼馴染「……着いちゃった、ね」

男「……そだな」

男(正直、手を離したくない。とはいえ、いつまでも家の前にいるわけにもいかないか)

幼馴染「……はぁ。じゃ、入ろ?」

男「……ああ、そだな」


──居間──

親父「おお、お帰り幼馴染。……と、邪魔者も一緒か」

男「しょうがないですよ、なんか知らないけどこの家に住んでるみたいだし。我慢するしかないです」

親父「だから、わしじゃねーっての! お前だっての! 昨日もやったよこのやり取り! なんか知らないってわしの家だから住んでるの! お前が邪魔者なんですぅー!」

幼馴染「それじゃ、部屋行こ?」クイクイ

男「ああ、そだな」

親父「あるェ? もう? パパともっとお喋りしよーよ? ねーねー」


男「あ、ちょっと失礼ああもう吐き気をもよおすほど気持ち悪い。あ、もう大丈夫です。……いや、まだ気持ち悪いな。どうしよう」

親父「だから、ちょっとは小声で言うそぶりを見せるとか、せめてこっちをガン見しないとか、そういうおっさんに対する気遣いをもっと! more!」

幼馴染「じゃ、行こ、男?」クイクイ

男「ん、ああ、そだな」ナデナデ

親父「Ahーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!! わしの幼馴染タンの頭をなでなでと! もう最近は触らせてもくれないのに! ずっり! ずっり! 超ずっり!」

男「ふむ。……幼馴染」

幼馴染「?」

男「えいっ」ナデナデ

親父「Ahーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!! また! まただよ! これみよがしになでなでと! こいつはメチャ許さんよなあ!?」

幼馴染「……は、はぅ///」

親父「しかも、しかもだ! あろうことかわしの幼馴染タンが頬を染めてうつむいちゃうとか! なにこの地獄絵図! 誰かわしを殺して! ころころしてェ!」

男「幼馴染、丈夫なロープとかあるかな?」

親父「あ、ごめんなさい冗談で言いました。殺さないでください」

男「違います、自殺用に使ってもらうだけですよ」

親父「何この『俺が手を下さないから経歴に傷がつかない。完全犯罪せーりーッ』って感じ。いやいや、他殺だろうが自殺だろうが死ぬつもりはじぇんじぇんないヨ? 死ぬの怖いもん」


幼馴染「……あ、あの」クイクイ

男「ん?」

幼馴染「……も、もっかい、いい?」コクビカシゲ

親 父「GYAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!! はい死んだ、今わし確実に死ーんだ!!! もういーや、お前ら勝手にキャッキャウフフしてろ ばーか! あ、幼馴染には馬鹿って言ってないよ? そこの腹立つ馬鹿にしか言ってないよ? ばーかばーか! 死ね!」ダダダダダッ

男「逃げたな。ナイスアシストだ、幼馴染」

幼馴染「?」

男「天然か。一番怖いな」

幼馴染「あ、あの、なでなで……」オズオズ

男「え、あ、はい」ナデナデ

幼馴染「……♪」


男「しかし、珍しいな。幼馴染が自分からそんなのせがむなんて」ナデナデ

幼馴染「あ、ご、ごめんね? 嫌だったら別に全然」

男「逆だ、逆。嬉しいの」ナデナデナデ

幼馴染「……えへへ。……なんかね、なんか……なんだろ。……前より、もっと一緒にいたいな、って感じがするの」

男「そ、そか。光栄だな///」ナデナデ

幼馴染「あっ、前も一緒にいたいなって思ってたんだよ? でも、それより、もっと、もっといっぱい近くに……そ、その……そのね?///」

男「……あ、う、うん。なんとなく分かるから大丈夫///」ナデナデ

幼馴染「……う、うん///」


──幼馴染部屋──

男「ということが居間であって」

幼馴染「……え、えへへ」チョコン

男「現在、幼馴染の部屋において、あぐらをかく俺の膝の上に幼馴染が乗る、という仰天体験が始まっています」

幼馴染「だ、ダメかな? ダメだよね、ダメに決まってるもん。すぐにどくから」ワタワタ

男「許さん」ギュッ

幼馴染「あぅ……」

男「ほれ、諦めたらもっと俺にやってほしいことを言え。言いまくれ」

幼馴染「……なんでも、いい?」

男「ああ、なんでもなんでもオールオッケーだ」

幼馴染「じゃ、じゃあ、じゃあね?」


幼馴染「んー♪」スリスリ

男「…………」

幼馴染「えへへ♪ えへへぇ♪」スリスリ

男「あー……あの?」

幼馴染「や、やめないもん。なんでもいいって言ったもん」スリスリスリ

男「いや、そんなこと言わないが、その」

幼馴染「……こ、こんな時くらいしか、できないもん」スリスリ

男「いや、そうじゃなくて、その、……恥ずかしいのですよ。流石にこう、向かい合わせで抱き合って、頬ずりってのは」

幼馴染「……が、がまん///」

男「なるほど」スリスリ

幼馴染「ひゃっ!?」

男「あ、失敬。俺も我慢できなくなっちゃったので」スリスリ

幼馴染「……男も、頬ずりしたかったの?」

男「頬ずりというか、なんというか、その、ああいかん思考がまとまらない」スリスリ

幼馴染「……えへへ。幸せ、だね?」スリスリ


男「それはもう疑うことなく」スリスリ

幼馴染「このままね? 一年先も、十年先も、ずっとずっとこうして一緒だと嬉しいね?」スリスリ

男「それは勘違いしちゃう台詞だなあ」スリスリ

幼馴染「……し、しちゃうといい。……かも///」スリスリ

男「えっ」

幼馴染「…………///」

男「えー……っと」

幼馴染「……い、今のナシ。うそ。全部嘘」ジワーッ

男「……いや、そんな嘘はダメだ。許さん。訂正しろ」

幼馴染「……ち、違う。嘘。嘘だもん。調子乗っちゃっただけだもん。……男は、私みたいなちんちくりんより、もっと可愛くて、優しくて、素敵な子と一緒にならないとダメだもん」

男「知らん。俺はな、お前みたいなのがいいんだよ」

幼馴染「えっ?」

男「猫好きで、料理上手で、優しくて、可愛くて、いっつも俺のことを大事にしてくれる、そういうお前みたいなのがいいんだよ!」ギュッ

幼馴染「……うー。ばか」

男「なんだ、知らなかったのか?」


幼馴染「……知らなかった。こんなばかとは思わなかった。……ばか。ばかばか」ポロポロ

男「ある程度は自覚してるさな」ナデナデ

幼馴染「……ぐしゅ。……そんなこと言って。知らないよ? 私なんかより、もっともーっと素敵な人が現れて、男に告白しても、もう男の隣には私がいるよ? ……絶対に譲らないよ?」

男「お前より素敵な女性なんかいねーよ」ナデナデ

幼馴染「……ふん。ばか。大好き」チュッ

男「奇遇だな、俺も大好きなんだ」チュッ


………
……


──公園──

幼馴染「……晴れたね?」

男「そだな。はぁ……あー、いい日和りだ」

幼馴染「シート持ってきたから。そこに敷こ?」

男「ああ、分かった」


男「ん、完成」

幼馴染「ん。それじゃ……じゃじゃーん。お弁当だよ?」

男「おお、お重。頑張ったな」ナデナデ

幼馴染「えへへ。……か、彼女の、初仕事だもん///」

男「おお。俺の彼女は可愛くて料理がうまくて可愛くて可愛いなあ」ナデナデ

幼馴染「え、えへへ、えへへぇ……♪」

男「いかん、幼馴染の顔がどれんどれんだ。緩みすぎだろ」

幼馴染「だ、だって、男にあんなに褒められたら、誰でもああなっちゃうよ」ムー


男「なんねーよ。……しっかし、お前の親父さんにはなんて説明するかなあ」

幼馴染「……もう気づいてるよ?」

男「マジか」

幼馴染「ん。今日の朝も『隣の馬鹿息子は人の大事な大事な娘を奪っておいて、挨拶もろくにしに来ん!』って」

男「うわぁ……そのうち言うつもりだったが、なんで既にバレてるかな」

幼馴染「昨日の食卓の雰囲気で、悟ったみたい」

男「マジか。結構勘が鋭いんだな、親父さん」

幼馴染「ずっとニコニコしてたもん、男」

男「……なるほど、俺が馬鹿なだけだったか」

幼馴染「……あと、私もニコニコしてた、らしい」


男「あー、そういやずっと笑ってたな。なんかもう幸せで幸せで意識が半分飛んでたから気づかなかったが」

幼馴染「……私の方が幸せだもん」ムー

男「何の勝負だ」ムニムニ

幼馴染「ふにー」

男「さて、それじゃ食うか!」

幼馴染「ん。……あのね、男?」

男「ん?」

幼馴染「……えへへ。これからも、隣にいさせてね?」

男「知らなかったのか? 俺の隣は昔からお前の指定席だぞ」

幼馴染「奇遇だね? ……私も、そうなんだよ?」


おわり
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Comment
名無し
最高でした
無題
まさかとは思うが、ハルヒSSの『ハルヒはキョンの嫁』氏と同一人物では?違っていたらすみません(´・ω・`)
無題
可愛すぎて泣いた
No title
こういう親父が絡むやり取り大好きw
No title
なんかあれだな、きゅんきゅんするな。
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