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2024年05月19日
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【ツンデレな妹VSデレデレな姉16】

2010年03月06日
「カナがちゅーして欲しいとせがんで困る」
「んなこと言ってないッ!」
 休日だというのに、妹のカナが俺を殴る。
「いや、違うんだ。そんな展開になったらいいな、という常日頃考えている事が口をついて出ただけだ」
「んなこと常日頃考える兄って……ものすごい迷惑だから、金輪際考えないで」
「つまり、考えずに行動に起こせと? カナが自分からちゅーしてくれとせがむよう暗躍しろと? ……よし、カナの期待に応えるべく、早速プランを練られば!」
 縄でぐるぐる巻きにされた上、物置に閉じ込められた。

 奇跡的に縄から脱出し、物置から外に出ると、お姉ちゃんが半泣きで庭をうろうろしていた。
「お姉ちゃん、なにしてるの?」
「あっ、タカくん! もうっ、どこ行ってたの!」
 なんて言いながらお姉ちゃんは俺の頭を抱きしめた。豊満な胸に顔が埋まって、気持ちいいやら呼吸できないやら気持ちいいなあ。
「まったく、一人でうろうろしてたら迷子になるでしょっ! どこか行きたい所があるなら、お姉ちゃんを呼びなさいっ!」
 小学生でも庭で迷子になったという話は聞いたことない。あと、子供ではないのでどこでも姉随伴は割と勘弁してほしい所。
「……タカくん、いっぱい怒られて、悲しくなっちゃった? ごめんね、でも全部タカくんのためだから……タカくん?」
「…………」(呼吸不能)
「あっ、タカくん白目剥いてる! 気持ち悪いけど、ちょっと可愛い! タカくんキモ可愛い! 写真撮っとこっと♪」
 お姉ちゃんがひどいこと言ってるような気がしたけど、気絶してるのでよく分かんないや。

「うーん……はっ! 目覚めた俺!」
「…………」(超凝視)
「うああっ!?」
 目を開くと、お姉ちゃんの鼻と俺の鼻がくっつくぐらい間近だったのでびっくりした。改めて周囲を見ると、居間のようだ。庭からここまで運んでくれたらしい。
「はうー……タカくん、気絶してる顔もかーいーねぇ。お姉ちゃん、いっぱい写真撮っちゃった♪」
 お姉ちゃんの撮る写真を以前見せてもらったことがあるが、ほとんど俺の写真なのはどういうことなのか。
「お姉ちゃん、膝枕しててくれたの? 足しびれなかった?」
「お姉ちゃんを気遣ってくれるなんて……なんて優しい弟なのっ!」
 お姉ちゃんは俺の顔をつかみ、嫌というほどほおずりした。
「お姉ちゃんはね、タカくんのためなら不眠不休で膝枕してあげるよ? ううん、むしろしたいよ? していい?」
 それはありがたいが、枕が痩せ衰えていく様は見たくないので丁重にお断りする。
「残念だよ……じゃ、タカくんライブラリー見る?」
 タカくんライブラリーとは、お姉ちゃんの撮った写真であり、名は体を現している上、押入れを席巻するほどの量なので、是非見たくないので丁重にお断りする。
「こんな可愛いのに……」
 しょぼーんな感じになった。
「ところでお姉ちゃん、カナはどこ?」
 人をグルグル巻きにしたお礼を是非しないといけない。
「お部屋だよ。カナちゃんと遊ぶんだったら、お姉ちゃんも混ぜて欲しいなー」
「3Pか!」
「さんぴー……? 新しいゲーム? お姉ちゃん、ゲーム弱いから手加減してね?」
 お姉ちゃんは積極的なくせに性の知識があまりないので、こんな感じになる。なに、信じられない? なら試してやる。そして俺は誰と会話してるんだ。
「お姉ちゃん、子供を作るにはどうしたらいいの?」
「えっ、ど、どうって……お、お姉ちゃんとエッチしたら……」
 すごく恥ずかしそうに明後日の方向を向いてもごもご言ってる。性の知識はあることに驚いたが、それ以上に姉限定ということに驚いた。
「た、タカくん、……子供欲しくなっちゃった?」
 お姉ちゃんは目を潤ませ、俺の顔を両手で挟んで覗き込んできた。なんだかとってもピンチな気分!
「ああっ、すごくお腹痛い! 便所へ超特急!」
「あっ、待ってタカく……ああっ、お姉ちゃん足びりびり! しびれあしら!」
 足がびりびりで動けないお姉ちゃんをその場に置いて、カナの部屋に向かう。
「カナ! よくも兄を縄でぐるぐる巻きにしてくれたな! 万死に値するが、条件によっては許してやらなくもない……ぞ?」
「着替え中よ、馬鹿兄貴ッ!」
「下だけ下着ってのはオツだよね。で、なんでその歳でくまさんぱんつ?」
 辞書が飛んできたので避難。しばらく待ってから部屋に入る。
「よう、くまさん」
「今すぐ死にたいようねッ」
 真っ赤な顔のカナが俺の首を絞めにかかったので苦しい。死ぬのは嫌なので助けを請うたら助かった。
「カナ、そこに座りなさい」
 まずは兄の威厳を見せるのが先決。そこから徐々にカナを追い詰め、最終的には謝らせてやる! ふ……なんと恐るべき計画よ!
「もう座ってるわよ」
「パンツが見えるように座りなさい」
 殴られたので、話を進める。
「どうして兄を縄でぐるぐる巻きにしましたか。兄を縄でぐるぐる巻きにしてはいけないと、学校で習わなかったのですか?」
「んなの習うわけないでしょ」
 それもそうだ。話の展開を誤った。
「とにかく、なんでもいいから謝ってください。でないと兄の矜持が保てないんですよ」
「あーもー分かったわよ。こんな兄でごめんなさい。これでいい?」
「ノー! それでは兄の存在がごめんなさいなのでノー! もっと縄について言及を!」
「兄貴、加速度的に頭悪くなってない?」
「英語使ってるのに?」
 ため息を吐かれた。なんでだ。
「謝るとかどうでもいいからさ、早く出てってくんない?」
「地球から!?」
「部屋からよッ! なんで地球から追放しなきゃいけないのよっ! そもそも脱出用シャトルとか持ってるわけ!?」
 軽いボケなのにすごいつっこまれた。
「ロケット花火くらいしか持ってません」
「じゃあもうそれで宇宙まで飛んで行きなさいよ……」
「ははっ、カナはちょっと頭が悲しい感じだから知らないかもしれないが、人はロケット花火で大気圏を突破できないぞ? そもそも、人がロケット花火程度の力で空に浮かぶこと自体が」
「知ってるわよッ! 馬鹿にしてたのよ! 誰が頭が悲しい感じかッ!」
 つっこみのたび、頭をべしべし殴られる。痛い。
「だいたいさ、兄貴が悪いんだよ」
「脳が?」
「……あー」
 あーとか言うな。
「じゃなくて、そ、その、……あたしが兄貴にちゅーしたいとか言い出すから」
「いや、しかしそんな妄想が兄の頭の中では常に渦巻いて」
「兄妹なのにそんなの、おかしいじゃん……」
 カナはなんだか寂しそうな、つまらなさそうな感じで足先を床にこすりつけた。
「おかしいのが兄です」
「言い切んなっ! じゃなくて、じゃなくてさ、……そうじゃなくて」
 なんだか、マジ話のようで。なら、俺も。
「……えーと、今から話すのは兄の妄言なので、聞き流すも可です」
「兄貴……?」
「何が一番大事か、よく考えて決めることです。そうすれば、後はただそれだけを大事にすれば簡単なのです」
「……よく、分かんないよ」
「えーと、俺を例にすると、カナとお姉ちゃん、この二人が俺の一番大事なもの。だから、その他の事柄……世間とか、常識とかは、割とどうでもいい人なんです」
「……ダメ人間だね、兄貴」
 なんて言いながらも、カナはどこか嬉しそうだった。
「あと、最終的には血が繋がってねーじゃんうへへへハーレムエンドという夢のような展開が」
「兄貴ッ!」
「じょ、冗談、冗談です。カナエンドがよかったです」
 カナが超怖い顔で詰め寄ってきたので、半泣きで謝る。
「そっ! ……そういうゲームばっかやってると、将来犯罪者になっちゃうわよ?」
 カナは照れくさそうに頬をかきながら、そっぽを向いた。
「その時は、カナが養ってくれ」
「うわ、サイテー。夫が犯罪者なんて、あたし嫌よ」
「ん? 俺は兄妹のままで、と思ったんだけど……カナは結婚したかったのか?」
 カナの頭から湯気が出た。
「ちっ、ちちち違うわよっ! なんだってあたしが馬鹿兄貴なんかとッ! そっ、そもそもあたし兄貴のこと、だいっ嫌いだし!」
「俺はカナのこと好きだよ?」
 それが家族としてか、異性としてなのか自分でも判然としないのがどうかと思うが。
「そっ、そーいうことを、さらって言うのって、どうかと思うわよ? なんか、軽い感じ?」
 カナが顔をより一層赤くしながらそう言う。
「ふむ……なら、常日頃言った方がいいか? 好きだよ、カ」
「わーわーわー! 聞こえない聞こえない聞こえなーい!」
 カナは耳を塞いでわーわー言い出した。これ幸いとスカートめくったら蹴られた。
「しまった、塞いでいるのは耳であり、目はそのままだった! 不覚! あとくまさんこんにちは」
「くまさん言うな、この馬鹿兄貴ッ!」
「見られたくないなら、はかなくてはいいんじゃなくて?」
「だ、だって……くまさん、可愛いじゃん」
 恥ずかしそうに頬を染めるカナを見て、可愛いのはおまいだ、と言いそうになるのを必死で止める。
「兄貴……そのポーズ外でしたら、兄妹の縁切るよ」
 必死で止めてたらかっこいいポーズになった俺を見て、カナが冷たいことを言う。
「中ならいいと」
「ま、まぁ、どうしてもって言うなら」
「中でそのポーズ出して、って言って」
「……? 中でそのポーズ出して」
「略して」
「中で出……な、何を言わせてるか、このエロ兄貴ッ!」
「着床」
 べこんぼこんにされた。
「あいたた……まぁなんだ、あんま色々深く考えるな。気楽にしろ。ケセラセラ、なんとかなるさ」
「兄貴、ほんとにそれを体言してるよね……」
「人を適当に生きてるみたいに言うな」
「あははっ、自覚ない人はっけーん」
 カナに笑顔が戻った。よかった、なんとかなった。
「お姉ちゃん、ふっかーつ! タカくんタカくん、さっき言ってた“さんぴー”、しよ?」
 とか思ってたら、お姉ちゃんが突然部屋に乱入してきて俺を窮地に追いやる。
「……兄貴?」
 ほら見ろ、カナが超怖い。
「カナちゃんカナちゃん、タカくんと“さんぴー”しよ? きっと楽しいだろうねぇ♪」
「ほーう……3Pねぇ。さっきまであたしのこと好きとか言ってたの、勘違いかしらねぇ……?」
 うおおお、カナが超絶怖え。
「かっ、カナ? 違うんだ、お姉ちゃんは3Pを違う遊びと勘違いしてるんだ。なっ、お姉ちゃん?」
「“さんぴー”はね、お姉ちゃんと、タカくんと、カナちゃんの三人で楽しむゲームだよ♪」
 お姉ちゃん、その発言は間違っちゃあないけど間違ってる! それでは依然俺の死亡フラグが立ったまま!
「……覚悟はいいかしら、お兄様?」
「あっ、カナの手になんだか叩かれると痛そうな棒が! あはっ、あはははっ、そ、そんなので大切なお兄様を叩かないよな、カナ?」
「……ええ、叩きませんよ。……大事なお兄様ならね。馬鹿でエロい兄貴なら叩くけどッ!」
「あっ、カナちゃんが棒でタカくんを! 可哀想だけど、ぼろ泣きのタカくん可愛い! 写真写真、ぽちっとな♪」
 棒を振り回す妹から必死で逃げる休日だった。

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【ツンデレな妹VSデレデレな姉17】

2010年02月07日
 テストが返って来たので点数を見たら驚いた。
「カナカナカナ! あ、別に急にDNAの野郎が突然変異を起こしヒグラシになったのではなく、妹の名を呼んでいるだけですから皆さんご安心を!」
 妹がつかつかと僕の席まで来て殴打します。
「誰もそんな心配してないわよ! で、何? くだらない用件だと殴るわよ」
「もう既に殴られていますが」
「それとは別で殴るの」
 妹が常に怖い。
「まあ、殴るのはとにかく、これを見てくれ」
 先ほど受け取ったテスト用紙をカナに見せる。
「……うわ、何コレ」
「そんなことも知らないのか? やれやれ、お兄ちゃんが教えてやろう。これはテスト用紙と言い、テストを受ける際に必要になる紙でげふっ」
 また殴られた。
「そんなことは知ってる! 点数の事を言ってるの!」
「俺はテスト用紙のことを言った。そして殴られた」
「うっさい! 何よこの点数! 赤点ギリギリじゃないの!」
「一点差って凄くないか? 額に入れて飾りたいよな。よしカナ、今日は帰りに額買いに行こう」
「行くかッ! あーもう、勉強よ!」
「性の?」
 殴られたので、違うみたい。

「教室から所変わって自宅へと移行したのですが、これは俺の隠されたテレポーテーション能力が発動したと考えていいのかな、お姉ちゃん」
「その通りだよタカくん! タカくんは超能力が使えてすごいねー。お姉ちゃん鼻高々だよ!」
「はい、そこの馬鹿姉弟黙る」
「「ぶーぶー」」
「ぶーぶーうるさい!」
 お姉ちゃんと二人でブーイングしたのに、やっぱり俺だけ殴られた。
「じゃ、馬鹿兄貴のために、勉強を始めます」
「そうか、頑張ってくれ。俺はみんなのために何か甘いものでも買って来よう」
「兄貴のためにやってんの!」
 そそくさと逃げようとしたら捕まった。
「お姉ちゃんねー、あんまんが食べたいなぁ♪」
 そしてお姉ちゃんはワンテンポ遅れている。こんなとろいくせに、テストは500点満点で498点とかありえない数字なので羨ましい。
「なあカナ、『あんまんならそこにあるじゃないか。胸にたわわに実っている二つの美味しそうなあんまんが!』という台詞を思いついたのだけど、そんなこと言ったらカナの貧乳を前に失礼かな?」
「失礼よッ!」
 貧乳に殴られた。
「お姉ちゃんのおっぱいは、あんまんじゃないよ?」
 そしてお姉ちゃんはずれている。
「あーもーいいから勉強するわよ!」
「めんどい。お姉ちゃん、膝枕して」
「いいよ。おいで、タカくん♪」
 ふらふらとお姉ちゃんのふとももに引き寄せられていたら、カナに阻まれた。
「勉強するの! このままじゃ兄貴留年しちゃうよ? いいの、あたしより学年下になって」
「……! それは非常にいけない! そうなったらカナと一緒の授業もカナと一緒の修学旅行もなくなってしまう!」
「え、あ、そ、そなんだ……。あ、あは、あたしは妹より下の学年は嫌なのかなーって思ったんだけど……そっか、あたしと一緒がよかったんだ。……あは」
「むー! お姉ちゃん、むー!」
 カナが嬉しそうに頬をかくと、お姉ちゃんの機嫌が悪くなって俺のほっぺが引っ張られます。
「あと、カナと一緒の体育とかカナと一緒の水泳とかカナと一緒の着替えとかなくなるのも嫌だ」
「そんなのは今もないっ!」
「じゃあ、やろうよ」
「やんないッ!」
「そうだよタカくん! タカくんはお姉ちゃんと一緒の体育でお姉ちゃんと一緒の水泳でお姉ちゃんと一緒の着替えをしないとダメなのに!」
「学年が違うからできないんだ、お姉ちゃん」
「お姉ちゃん、しょんぼり……」
 お姉ちゃんがいじけた。
「だー! もう、いーから勉強するの!」
 カナが切れたので、勉強を開始する。学園きっての秀才と天才がいるので、はかどること間違いなし。

「飽きた」
 はかどりはしたが、俺の忍耐力が根をあげた。
「まだ10分しか経ってないわよ? もっと頑張らないと」
「一問解くごとにカナとお姉ちゃんの服が一枚脱げるって方式なら頑張れる」
「そんな親父臭い方式やんないわよっ! こらそこっ、いそいそと脱がない!」
 嬉しそうに服を脱いでたお姉ちゃんがカナに叱られ、泣きそうになってた。
「まったく……自分のことなんだから、ご褒美がある方がおかしいわよ」
「正論だが、それだけで動けるほど真っ当な人間じゃないぞ、俺は」
「何を偉そうに言ってんだか……」
 カナが俺のほっぺをうにーと引っ張った。
「まめでんきう! 服を脱ぐのがダメなら、一問クリアするごとに、すりすりしていいか?」
「タカくん、まめでんきうってなぁに?」
「閃いた事を明示化したんだよ、お姉ちゃん」
「んなことはどうでもいい! すりすりって、そんなのダメに決まってるじゃない!」
「そう? お姉ちゃんは平気だよ? むしろすりすりしたい、したいよ、タカくん!」
 言いながらもすりすりするお姉ちゃん。しかし、カナは抵抗があるようで、ぶつぶつと何か呟いている。
「(ど、どうしよ……すりすりは恥ずかしいけど、ご褒美ってことならあたしからって訳じゃないから抵抗なくできるような……ああでも兄貴とすりすりなんて……あうううっ)」
「あー、あの、嫌なら別にどうしてもって訳じゃないので、その」
「いっ、嫌とは言ってないでしょ、嫌とは! 兄貴がどうしてもって言うなら、その、……やってあげてもいいわよ、……その、すりすりってのを」
 ちょっと照れたような拗ねたような口ぶりに、胸がどきりとする。
「むー! お姉ちゃん、むー!」
 それを敏感に察したお姉ちゃんが俺のほっぺを引っ張るので痛い。
「ま、まあとにかく、そういうことなら頑張ってみる」
 ……勉強中……
「……と、解けた、よ?」
 数分の格闘の後、どうにか一問解くことに成功。
「しゅーがちゃーんしゅー!」
 すかさずお姉ちゃんが俺に飛びつき、口で機械音を立てながらすりすりしまくった。
「はふー。お姉ちゃん、ちょびっと満足」
「じゃ、じゃあ、あたしも……」
 おずおずとカナもやってきて、俺の隣に座ると、ちらりと俺を見た。
「し、失礼するわよ……」
「お、おう」
 カナは俺の膝にちょこんと座り、正面から軽く抱きしめるような形で俺のくっつき、頬と頬を合わせた。
「ぷにぷにする」
「うううるさいっ! 感想言うなっ! 好きでやってるんじゃないわよ!」
 真っ赤な顔でそう言いながらも、カナは俺から離れようとしなかった。
「も、もういい? もういいわよね? 充分よね?」
「まだ。あー、至福」
 なんだか和んでしまい、思わずカナの背中に片手を回し、空いた手で頭をなでなでしてしまう。
「ひゃっ!?」
「あ、ごめん」
「……べ、別にいいケド」
 許可が出たので、ゆっくり頭をなでてみる。
「……もっと」
 ……ちょっと驚いた。まさか、さらに欲求されるとは。
「早く」
「あ、う、うん」
 ゆっくり、優しくカナの頭をなでる。気持ちいいのか、カナは猫のように目を細めた。
「んー」
「おかしい。俺へのご褒美のはずが、カナへのご褒美になっているような」
「喋る暇があったら、もっとなでなで」
「あ、はい」
 いかん、なでなで機械になっている。そして、それがちっとも悪い気がしないのがまた。
「……うー、お姉ちゃんの存在が無視されてるぅぅぅ……」
「きゃああああ!?」
 地の底から響くような恨めしそうな声に、カナが至近距離で大声を出すので鼓膜破れそう。
「お姉ちゃんは、ここにいますか……?」
「いないよ」
「やっぱりだー!!! お姉ちゃん、知らない間に死んでたー! だからお姉ちゃんほっぽいてタカくんとカナちゃんがイチャイチャイチャイチャしてたんだあああああ! うえええん!」
「姉ちゃんを騙して泣かせるな、この馬鹿兄貴!」
 カナにショートアッパーされた。
「いや、まさか騙されるとは思わなくて。ごめんね、お姉ちゃん。お姉ちゃんは生きてるよ。ただ、あえて無視したんだ」
「うえええん!!!」
 お姉ちゃんの泣きが強まった。
「だから、泣かすなって言ってるでしょうが!」
 また殴られた。いい加減頭ぐらんぐらんする。
「ぐすん。……カナちゃんも、お姉ちゃんがいるって分かってて無視したの?」
「え、あ、えーと、いや、あたしは、その、……な、なでなでに夢中になってて、気づかなかったっていうか」
「それはそれでうえええん!!!」
 お姉ちゃんがやかましい。
「お姉ちゃんもー! お姉ちゃんも前後不覚になるくらいタカくんになでなでされる!」
「ぜ、前後不覚って、そこまでされてたわけじゃ……」
「してたよ! お姉ちゃんアイでじーって見てたもん! すっごくなでなでされてたもん!」
「ちょ、ちょっと兄貴、どうにかしてよ」
 カナの困ったような視線と、お姉ちゃんの怒ったような視線が俺に突き刺さる。
「えーーーーーっと、じゃあこうしよう」

「ふにゃー……お姉ちゃん、とろけそー……」
「んー……」
 二人ともを抱っこしてなでなでする、というとても受け入れられないであろう案を出したら通ってしまい、30分以上なでりんぐなのでとても手がだるい。
「おふた方、俺の手が限界なので終了してよろしいか」
 ふたつの頭が同時にぷるぷると首を横に振った。ダメらしい。
「いや、しかし勉強もしないといけないし、その」
「ふぁいとだよー……タカくんー……」
「んー……」
 二人とも半分以上違う世界に行ってるくせに、俺を解放してくれない。しょうがないので、なでなで続行。

「はふはふはふ~。お姉ちゃん、幸福の刑に処された~」
「んー。んー。んー」
 なでられまくってぐにゃぐにゃになってるお姉ちゃんと、猫のように俺にすりすりしまくってるカナと、腕がもう動かない俺がいます。
「超疲れたのでもう寝たい俺」
「んー……?」
 カナが視線だけで悲しさを訴えてきた。
「あ、いや、もうちょっとだけなら別に構わないケド、その」
「んー♪」
 すりすり続行らしい。

 明けて翌日。いつものようにみんなで朝食を食べているのだけど、何故かカナがこっちに顔を向けてくれません。
「カナ、どした?」
「(あああああ……なんで、なんでなんでなんであんな甘えちゃったかなあ! あーもう、恥ずかしくって兄貴の顔見れないじゃないの!)」
「カナ?」
「う……うっさい、馬鹿兄貴! あたしを騙して勉強しなかった罪、受けてもらうからね!」
「えええええ!? いや俺は勉強しないとって言ったよ!?」
「う、うるさいっ! 今日こそちゃんと勉強してもらうからねっ! パンもらいっ!」
 食べてる最中のパンをもぎ取られた。
「あああああ! 俺の、俺のパンが! お姉ちゃん、カナが俺のパン取った!」
「タカくん可哀想! 代わりにお姉ちゃんとちゅーしていいよ?」
「いいえ、結構です」
「がーん!? お姉ちゃん、しょんぼり……」
 ショックを受けてるお姉ちゃんの横で、真っ赤な顔をしたままがつがつパンをむさぼるカナだった。

拍手[44回]

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