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2024年04月19日
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【お昼買いに購買に来たら財布がないのに気付いたツンデレ】

2011年05月26日
 今日はママンが寝坊したとかで、購買でパンでも買えと500円硬貨を握らされました。
 まあたまにはいいかと思ったので、昼休み、だらだら購買へ行くと、尋常ならざる人の群れ。そうだった。購買って場所はこうだった。ずっと弁当だったから忘れてた。
 しかしここで躊躇していても仕方がない。えいやっと人の波にダイブしようとしたら何者かが人の首を後ろからむンずとわしづかみするんですの。
「ぐえええ」
 昼食時に似つかわしくない声だったのか、俺を中心に蜘蛛の子を散らすように人がいなくなった。そんな人を汚物かのような目で見ないで。誰でも突然首を絞められたらそうなるんです。
「いきなり人の首を絞めるとは何事だ! なんというマナー違反!」
 なんとか首の拘束を解き、人を殺そうとした犯人に詰め寄る。
「気にするな」
 涼しい顔で俺の抗議を聞き流すこいつは、誰あろうみことだった。
「いや、する! しまくる! なぜならここで注意しないとまたいつ何時このように首を絞められ死に瀕するか分からないから!」
「うるさい黙れ」
 全く間違ったことを言ってないのだけれども、とても怖かったので簡単に黙る。
「そして金を出せ」
「はい」
 依然怖かったので財布をそのまま渡す。犯罪の現場が今ここに。誰か助けて。
「……なんだ、これっぽっちしかないのか。まあいい」
「すいません」
 俺の昼飯代を奪い、みことは涼しい顔のままパンを売るおばちゃんの元へ向かうと、数種類のパンを購入したようだった。俺の昼飯代で。
「来い」
 お腹が空いたなあ、と悲しんでいると、みことが人の首をぐいっと握りながら来いと言うのでぐえええと返事をしたら怒られた。

 購買を出て、中庭に向かう。今日はお日さまが照っていて丁度気持ちいい塩梅だ。……昼飯があるなら。
「ふむ、そこのベンチがいいな」
 などと考えていると、とあるベンチの前でみことが立ち止まった。
「ここに座れ」
「はい」
 ベンチに座り戦々恐々してると、みことは俺の隣に座り、先ほど買ったパンを袋から取り出した。
「おいしそうですね」
「とはいえ所詮は購買だ、過度な期待は酷だろう」
 それでも食べられない身としては美味しそうだなあ、と思っていたら、何やら俺の方にパンを差し出したままみことが動かなくなった。
「?」
「……ん」
「ん?」
「ん!」
 何が“ん”なのだろう。よく分からない子だなあ、という思いを込めてみことをじっと見てると、何かみこと内部で論争があったのだろう、みことの顔が何やら赤くなってきた。
「……あ、あーん」
 それは想定外だ。
 みことはパンの包装を解くと、あろうことかあーんを仕掛けてきた。それは男女仲がむつまじい関係のみにおける技だと聞いたが、友人間でもいいのだろうか。
「は、早くしろ、ばか。……あ、あーん」
「え、ええと。あ、あーん」
 もちろん俺内部でも様々な議論が繰り広げられたが、この返事がベストと判断した次第でございますハイ。だってほら、女の子にあーんとかされたいし!
 とか思ってたらパンを半分以上一気に口に詰められ呼吸困難に陥るサプライズを仕掛けられる。
「もがもがもが、ごくんっ! ……ふぅ。あのな、みこと。死ぬから。人は呼吸をしないと死ぬから」
 どうにか咀嚼→嚥下の高難度のコンボを決め、みことに説教する。
「そ、それくらい私だって知っている! ちょっと入れる量を誤っただけだ」
「次は普通の量でお願いします」
「え、ええっ!? まだこの私にあーんをさせるつもりなのか!?」
「そもそもお前から始めた事じゃねえか。ていうか、そもそもで言うなら俺の金で買った飯だし」
「借りただけだ!」
「ええっ!? 俺はてっきり強奪したのだとばかり」
「……お前は私をなんだと思っているのだ」
「蛮族」
 頬をつねられ痛い痛い。
「誰が蛮族だ、誰が! ……ちょっと財布を家に忘れただけだ。誰にでもあるだろう!?」
「それは誰にでもあるけど、購買で知り合いの首を絞めて財布を強奪することは誰にでもないぐえええ」
 先ほどの再現フィルムを見ているかのような状況に陥る。
「ふん。ばか。ふん」
「拗ねるのは大変可愛らしいのでありがたいですが、首を絞めるのはやめていただきたい。死にますので」
「だっ、誰が可愛いかっ、誰がっ!」
「痛い痛い」
 照れ隠しに殴ってくるのもまた可愛いですが、女性とは思えない膂力なので言うんじゃなかった。なんだその腰の入り方。
「うぅー……」
「人を殴ったうえに睨むな」
 鼻血が出たのでティッシュを鼻に詰めながらみことをなだめる。
「と、とにかくだ。お金は借りただけだ。また後日ちゃんと返す」
「はぁ。それはいいが、今日の俺の飯はどうなるんでしょうか」
「だ、だから、最初にお前に渡そうとしたのに、お前はちっとも受け取らないから、あんなことする羽目に……!」
 先ほどのあーんを思い出したのか、みことは赤くなりながら俺を睨んだ。
「あ、あー。あの時の“ん”はそういう意味だったのか。言ってくれないと」
「それくらい察しろ、馬鹿!」
「結果から言えば、馬鹿だったばかりにあーんしてもらって大満足です。ていうか、素朴な疑問なんだが、なんであーんを?」
「……そ、そうしないとお前の分のパンを受け取ってくれないと思ったんだ。お前は意地悪だから!」
「これはいいことを聞いた。そう、俺は超意地悪なので、あーんをしないとパンを食べないぞ」
「お前は悪魔か!?」
「人です」
「ううぅ……ど、どうしてもあーんをしないとダメか?」
「ダメではないが、一時間後に俺の席で即身仏が発見されると思う」
「一時間で餓死だと!? ……お前の消化器系はどうなっているのだ?」
 信じるな。
「……わ、分かった。分かった! やってやる!」
「いや、やっぱいいや」
「なんだと!? この私が折角やる気になったというのに、どういうことだ!?」
「いや、ほら」
 そう言うとほぼ同時に、チャイムが鳴った。
「というわけで、飯の時間は終了。教室に戻るぞ」
「……ダメだ」
「はい?」
「ダメだ! まだあーんしてない! やるぞ!」
 何か妙なスイッチが入ったのか、みことは急にやる気を出して俺にあーんを強要した。
「え、いや、あの」
「ぱっぱとしたらすぐ終わる! やるぞ、ほら!」
「え、え、え?」
「……は、はい、あーん」
「え、あ。あーん」
 訳も分からず口を開けてると、口の中にパンが入れられる。
「ど、どうだ? うまいか?」
「もぐもぐ……うまい」
「そ、そうか! うまいか!」
「じゃ、そういうわけなんで教室に」
「えと……はい。あーん」
「え」
「え、じゃなくて、あーんだ。ほら、あーん」
「いや、あの、みことさん。教室に戻らないと遅刻して」
「あーん、だ」
「……あーん」
 またしてもパンが口の中にあーんな感じで入れられる。
「どうだ? うまいか? うまいだろう?」
「もぐもぐ……うまい。じゃあ教室に」
「はい、あーん」
 どうして次弾が既に装填されているのだろうか。
「どうした? 早く口を開けないか」
「あの、あのな、みこと。早く教室へ行かないと遅刻して」
「ほら、あーん?」
「……あーん」
 どうして小首を傾げる悪魔の誘いを断れようか。
 まあ、そのような感じでパンを全部平らげていたら、そりゃ遅刻しますよ。それは分かるが、一緒に教室に入ってどうして俺だけ怒られるの。なんだよ普段の素行って。
「ちょっと女子の着替えを覗く程度ですよ!?」
 そりゃ放課後に改めて教師集団に説教されますよ。

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