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2024年04月25日
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【ぼっちツンデレにただ一人優しい男】

2012年03月29日
 教室でぼーっとしてると、まつりが息を切らせながら教室に入ってきた。その瞬間、彼女の目が驚愕で見開かれた。
「人が必死で走ってきたというのに、どうして誰もいないのじゃ! ……って、うわ、変なのがいるのじゃ。これはいない方がよかったのじゃ」
「よかった、まつりにも教室の隅にいる名状しがたい何かが見えてたのか。俺だけかと思って一人でSAN値減らしてたよ」
「えええええっ!? えっ、えっ? なっ、何かおるのかえっ!?」
 軽い冗談だったのだけれど、まつりは俺の腕にしがみつくと、ガタガタ震えながら先程俺が言った教室の隅を凝視しだした。もちろんそこに何かがいるはずもないのだけれど。
「こっ、これっ! 嘘じゃろ、嘘じゃよな? の?」
「そうだな、そうだといいな……」(なでなで)
「なんで優しい目でわらわの頭をなでるかや!? ……え、わらわ死ぬの?」
「うん」
 まつりが震源地となってしまったので、そろそろ嘘だと告げてあげる。
「やっぱりなのじゃー! わらわは分かってたけど! 分かってたけど! もーそういう嘘は言っちゃダメなのじゃ!」
「嫌です」
「断ったらダメなのじゃっ! むぅぅ……と、ところで、どうして貴様の他に誰もいないのじゃ?」
「空気感染する致死性の病気が爆発的に流行って、みんな死んだんだ」
「もーちょっとバレにくい嘘をつくのじゃ!」
「お化けはバレにくい嘘だったのか?」
「そ……それは、その、あれじゃよ。きっ、貴様に付き合ってやったのじゃ! じゃからこれ以上その話題を続けるのは禁止なのじゃっ!」
 痛いところを付かれたのか、まつりは顔を真っ赤にしながらそう怒鳴った。
「へーへー。まあ実際のところは分からん。俺も登校したらご覧の状態だったもので」
「ぬー……一体どうしたのかのう?」
「俺が思うに、世界はもう俺とまつりを残して絶滅してしまったのではないだろうか」
 まつりが「何言ってんだコイツ」という顔をしたので、ほっぺを引っ張ってやる。
「あぅーっ! 何も言っとらんのにーっ!」
「目が口ほどに物を言ってたからな」
「ううう……あんまりなのじゃ……」
 手を離してやると、まつりは悲しそうにほっぺをさすさすした。可哀想になったので俺もさすさすしてあげる。
「ぐしゅぐしゅ……触るでない、おろかものぉ……」
「姫さまお体に触りますぞグヘヘヘ、なんちて」
「死ねばいいのじゃ」
 俺への好感度を犠牲に、まつりが元気になった。大きな代償だった。
「じゃあ次の案。まつりはクラスメイト全員に蛇蝎の如く嫌われており、教師も含め全員でボイコットをしたから誰もいないのではないか」
「酷過ぎる案なのじゃあ! それなら貴様が嫌われている方がまだ現実味があるのじゃ!」
「ばか、確かに俺は女生徒からは酷く嫌われているが、一部の男子生徒からはセクハラヒーローと崇められているのだぞ?」
「知らんっ! ああそうそう、セクハラばかりしておる貴様がどうして停学にならないのか、その理由に尾ひれがつき、最近この学校の新たな七不思議になったらしいぞ」
「非常に不名誉だ」
「そんなことはないのじゃ。そ、それより、さっきの話なのじゃ。わ、わらわ、別に嫌われておらんよな?」
「ん、ああ。俺は大好きですよ?」(なでなで)
「きっ、貴様のことはどうでもいいんじゃっ!」
 何やら顔を真っ赤にして怒鳴ってきました。そんな怒らなくていいのに。
「……そ、そじゃなくて、わらわが級友に嫌われている、という話じゃ。嘘じゃよな? の?」
「ああ、級友だけでなく教師にまで嫌われるという徹底っぷりだ」
「そこは嘘じゃなくていいのじゃようわーんっ!!!」
「ああ泣かしてしまった今日も泣くまつりは可愛いがとりあえず泣き止ませよう。ほーらアメちゃんだよー」
「思い切り子供扱いなのじゃっ! もっとしっかり泣き止まして欲しいのじゃ!」
「じゃ、いらない?」
「……ま、まあ、一応貰っとくのじゃ」
 アメの力で半分泣き止んだ。やはり子供だ。
「ころころ……ぐしゅ。そ、それで、なんでわらわは嫌われておるのじゃ? わらわ、何かした?」
「分からん。だが、俺は……俺だけは、ずっとまつりの味方だ」
「……ぬ、ぬし様……」
 がしっとまつりの手を握り、目を見つめる。うるむ瞳が小さく揺れ、やがてゆっくりと閉じられ──
「というタイミングでよもやのチャイム。そして教室に戻ってくる生徒たち」
「……? へ? ……ぬわああっ!?」
 ようやっと気づいたのか、まつりはものすごい勢いで俺から離れ、周囲をきょろきょろ見た。
「……あ、あれ? ぼいこっとは? なんでみんな普通にしてるかや?」
「なんでも何も、俺が言ったの全部嘘だから」
「えええええーっ!?」
「さっきの時間は移動教室だったからいなかっただけ。そう黒板に書いてたけど、お前の席に鞄がなかったので、急ぎ黒板の文字を消し、今回の作戦を実行したのです」
「え、じゃあ、本当はみんなわらわのこと嫌ってないのかえ?」
「当たり前だろ。俺ぐらいだよ、お前のことを死ぬほど嫌っていて、調教でもして好き勝手しようとしているのは」
「ついさっきわらわの味方だよって優しく微笑んだ者の台詞じゃないのじゃあっ! わらわのときめきを返せっ!」
「まっちぽんぷ おいしいです」
「やっぱり貴様なんて大っ嫌いなのじゃーっ!」
 軽い(重い?)冗談で涙目になり、俺をぽかぽか叩くまつりは可愛いなあ。

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