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2024年03月29日
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【雨天中止 カモ デート】

2011年04月15日
 今日はふみと遊びに行く予定だったのだけど、朝から生憎と雨模様。これはもう出るのが超めんどくせえから中止と電話でふみに告げたら、
『おにーさんとのデート、楽しみだったのに、残念です……』
 なんて寂しげに言われたもんだから、もう転がるように家を出て雨に濡れるのも構わずそのままふみの家へ直行。インターホン連打。
『はい』
「はぁはぁはぁ……お、俺。俺だ。中止は取りやめ。一緒に行こう、デートに!」
『おにーさん相手にデートとか片腹痛いです』
「え……? あれ、さっきデート楽しみとか言われて超浮かれてやってきた俺の立場は? あれぇ?」
『おにーさんのことです、どーせ私とのおでかけを楽しみにするあまり、それがデートだと思い込んだに違いありません。気持ち悪いことこの上ないです。慰謝料を請求します。一億円ください』
「いや、金はともかく、あれ? なんかついさっき電話でデート楽しみとかお前の口から聞いたんだけど?」
『おにーさんの思い込みです』
「うぅむ……」
 極めて納得がいかないが、ふみがそう言うのであれば、そうなのだろう。
『だいたい、こんな雨の中デートに行くとかありえないし、そもそもおにーさんとデートとか地球が割れてもありえないです』
「そこまで俺は嫌われているのですか」
『秘密ですよ?』
「俺以外にのみ、その頼み事は通用すると思うのですが」
『まあともかく、うちにあがってください。雨に打たれて風邪でもひかれたら困ります』
「おお。ふみの心遣いに感謝する」
『おにーさんのことです、私のせいで風邪ひいたー慰謝料よこせーいちおくえんーとか馬鹿みたいなことを言うに違いないからです。他意はないです』
「その慰謝料のくだりはお前の口からよく聞くのですが」
『ぐだぐだ言うなら、このまま帰ってもらってもいいです』
「すいません入れてください俺が悪かったです!」
『まったく……情けないおにーさんです』
 ちうわけで、ふみに入れてもらった。玄関先にタオルを持ったふみがちょこんと立っている。
「はい、おにーさん。タオルです」
「おお、サンキュ」
 受け取ったタオルで頭をガシガシ拭く。そんな長時間外にいたわけではないのに、結構濡れていた。
「ところで、親御さんは?」
「休みだというのに、今日も仕事です。……分かってて聞きましたね?」
「いやいや、いやいやいや! 分からないから聞いたの!」
「分かってるのにあえて聞き、改めて私に寂しい思いをさせるおにーさんの技術、感服します」
「この娘は本当に厄介だなあ」
「……なら、放っておいてください」
 気に障ったのか、ふみは俺に背を向けてしまった。
「それができたら苦労しないんだよなあ」
 ふみの頭に、さっき俺の身体を拭いたタオルを置く。我ながら無駄な苦労をしょいこんでる気がする。まあ、性分だから仕方ないか。
「むぅ。私の頭はタオル置き場じゃないです」
「気のせいだろ」
「気のせいじゃないです、おにーさんのばか」
「馬鹿で申し訳ない」
 タオルの上からふみの頭をなでる。
「……なでなでが遠いです」
「タオルが俺のなで力を緩和させているんだね」
「説明なんて不要です。おにーさんのばか」
「いやはや。さて、おでかけはなくなってしまったが、どういうわけだかふみの家にいる。つーわけで、今日はここで一緒に遊びましょうか」
「嫌です。遊びません。身体を拭いたのなら、おにーさんはとっとと帰ってください」
「うーん……」
 依然ご機嫌ななめモードなようで。
「困ったなあ」(なでなで)
「全然そんなこと思ってないです。ずっと私の頭をなでてばかりです。さらに言うならまたしてもタオルの上からなでてます。もうずっとなでなでが遠いです」
「やっぱ直接の方がいい?」
「……ぜ、全然。今ならなでなでが遠くて、おにーさんの体温を感じることができないので、大変心地よいです。ありがたいことこの上ないです」
「じゃあ今後はずっとこのなでなでにしようね」
「……おにーさんのばか」(半泣き)
 ええ。なんだかんだ言ったって、こちとらロリコンですから、そんなの勝てるわけないですよ。
「ああごめんなごめんなふみ。ちょっと調子乗りました。直接が一番に決まってるよね」
 タオルをぶっ飛ばし、直接ふみの頭をなでる。
「お、お、お、おにーさんっ!?」
「うん? ……あ、あー」
 それどころかふみに抱きついてる俺は、本当いつ通報されてもおかしくないよね。
「うぅ……おにーさんが興奮のあまり私に抱きついてます。これはもうこのまま犯されるに違いないです」
「犯しません」
 一瞬で冷静になったので、素直に拘束を解く。
「むぅ」
「なんで膨れてんだ」
「おにーさんの弱みを握れると思ったのに、残念です」
「そんなんで身体を許すな。ふみの貞操観念が緩くて、お兄さんは不安だよ」
「こんなことおにーさんにしかしませんから、大丈夫です」
「なんて恥ずかしいことを真顔で言いやがる、この娘は!」
「おにーさんみたいな面白いカモ、他にいません」
「…………」
 心配して損した。
「そもそも、ここまで私の心にずけずけと土足で踏み込むようなデリカシーなし人間はおにーさんだけなので、その心配は不要です」
「なんて言い様だ」
「……まあ、言い方によっては、私にここまで親身になってくれるのは、おにーさんだけ、とも取れます」
「……そ、そっか」
 ええい。無駄に恥ずかしい。ていうかふみも冷静なフリしてるが顔真っ赤だし。
「……て、てい」
「痛い」
 なんか突然ふみが俺の手を叩いてきた。
「お、おにーさんのくせに照れるとか生意気です。おにーさんはいつもみたく年上っぽく余裕しゃくしゃくな感じで振舞えばいいんです」
「そうありたいんだけど、なかなかなぁ。修行が足りないようで」
「おにーさんは異性との接触の機会が私といる時しかないので、修行のしようがないんです」
「あまり悲しい事実を突きつけるな。泣くぞ」
「……本当にそうなんですか?」
「何を意外そうな顔をしている。そんなモテそうに見えるか?」
 ものすげー首を横に振られた。畜生。
「……そっか、そうなんですか。おにーさんは、私しか異性の友人がいないんですね?」
「だから、殊更言うない。本当に泣くぞ」
「……えへへ。おにーさん、モテません♪」
「よし、もう決めた。恥も外聞もなく泣く」
「あんまりにもおにーさんが可哀想……いえ、哀れなので、今日は一緒に遊んであげます。感謝してくださいね、おにーさん?」
「本当に酷い話だ。本当に」
 ふみの不機嫌が吹き飛び上機嫌になったのはいいが、俺が悲しい休日だった。ただ、まあ、ふみはずっと楽しそうだったし、いいか。

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