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2019年10月18日
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【たこちなみん】

2010年05月12日
「……タカシ、最近元気ないね」
「財布を落としたのです。バイト代引き出したところです。俺は今月どうやって生きていけばいいのですか?」
「……ふぅん、ドジだね」
 何か考えながらちなみはどこかへ行ってしまったけど、俺はそれどころじゃない。しかたない、親父に無心でもするか。
 学校から帰宅後、電話したら「やーいばーかばーか、このドジっ子」と実父に言われた。しかも送金してくれないときた。
 親殺しの十字架を背負おうかと半泣きで考えつつぐるるると腹を鳴らしていると、ちなみが家にやってきた。
「インターホンも鳴らさず入ってくるとは膜を失う覚悟は出来てるだろうな……たこさん?」
 ちなみはたこの着ぐるみを装着していた。
「たこです。にゅるにゅる」
 その擬音語はなにか卑猥な想像を喚起させるのでやめて頂きたい。
「……えっちなことはダメ。穴という穴に突っ込むよ」
「何を!?」
 八本ある足をくねらすちなみに、思わず尻を押さえてしまう。俺に受けやら攻めの趣味はない。
「……まぁ冗談はいいとして、財布を落としたタカシはさぞひもじい思いをしていることでしょう」
「ふふ、概ね正解だ」
「……なんで威張ってるんだろ? まぁそういうわけで、ご飯を作りに来てあげました。感謝しなさい」
「そっか、ありがとう。感謝する。入信してもいい」
「……たこ教?」
 なかなかありがたくない宗教だ。
「じゃあ、たこ教の教祖として、信者にご飯を振る舞ってあげます」
「なんでもいいから早くしてくれ。腹が減ってそこのティッシュすら美味そうに見えてきた」
「……人間としてのプライドを捨ててる人にご飯を作るのは、ちょっと」
「ちなみが美味そうに見えてきた。食っていいか?」
「……カニバリズムが趣味の人にご飯を作るのは、ちょっと」
「ごめんなさいあと数分で餓死予定ですからもうちょっと優しくしてください」
「……くすり。いいよ、作るからちょっと待ってて。その間に死なないでね」
「鋭意努力します」
 かくてテレビを見たり漫画を読んだりつまみぐいに向かい刃物で牽制され半泣きになること数分、待望の料理を持ってちなみがやってきた。
「はーい、お待たせ、たこ焼きでーす」
「ヤター、いただきまーす」
「……ふふ。何も知らず、嬉しそうに(ボソリ)」
「なななななにか変なの入れましたか!?」
 不思議、声が震えてるよ。今ならきっと綺麗なビブラートが奏でられるはず。
「ふふっ、入れてないよぉ、……そんなには」
「えーとえーとえーと、俺毒殺されるほどちなみに嫌われてたのか?」
「……くすり。はい、あーん」
 俺の問いには答えず、ちなみはつまようじに刺されたたこ焼きを俺に差し出した。
「あーん」
 死ぬかもしれんが腹減ってるし可愛い娘さんにあーんってされたしまぁいいや。(0.2秒)
「……ん? これ、ネギか?」
「……正解。確かタカシって野菜嫌いだったよね。ちょっとは野菜も摂らなきゃ」
「なんだ、変なのってコレか。俺はてっきり針でも入れられたものかと」
「……お望みならしてもいいけど。すごいMっぷりだね」
 席を立とうとするちなみを必死で押し留める。死ぬのもMと思われるのも勘弁願いたい。
「しかしネギかぁ……うーん、ちなみには悪いがちょっと苦手かも」
「ほら、あーん」
「あーん」
 あーんとされると雛鳥の如く簡単に口を開く自分をどうかと思う。むぐむぐ。
「……くすり。簡単だね」
「なんだと! 俺がそんな簡単にあーん」
 小学一年生の算数よりも簡単っぽい。
「……くすり。おいしい?」
「うん」
 財布は落としたが、まぁ、いいかとちなみの笑顔を見て思った。

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