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2019年10月18日
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【朝ご飯を作ってくれるツンデレ】

2010年03月04日
 両親が旅行に出かけた。これで俺の天下だきゃっほーと思って漫画買ったりゲーム買ったりしたら、貰っておいた生活費が尽きた。
 そんなわけで三日ほど何も食わないで腹を鳴らしていたら、見るに見かねたのか、近頃はかなみが飯を作ってくれるようになった。それはいい。とてもありがたい。だがしかし。
「朝はパン食べたいなあ」
「なに言ってんのよ、朝はご飯に決まってるでしょ。パンなんかじゃ力出ないわよ」
 かなみは椀にご飯を盛り、イスに座ってぼやーっとしてる俺に渡した。
「うちは前々から朝はパンなんだ。アンパンマンを崇拝してるんだ。愛と勇気だけが友達なんだ。おまえなんて友達でもなんでもない。帰れ帰れ、田舎者は帰れ!」
「じゃあコレいらないのね?」
「かなみだけが友達さ! どうかこれからもずっと末永くお願いします!」
 おかずの目玉焼きを人質、いや物質に取られたので、一瞬で手の平を返す。
「まったく、調子いいんだから……もうちょっとしたらお味噌汁が出来るから、少し待っててね」
「あい」
 適当に返事をして、かなみの後姿を眺める。
 かなみは学校指定の制服に身を包み、その上からエプロンをしている。機嫌よさそうに鼻歌を口ずさみながら、おたまでくるくると味噌汁をかき混ぜていた。
「……なんか、新婚さんみてえ」
「ん? タカシ、なんか言った?」
 くるりとこちらを向き、かなみは小首を傾げた。遅れてツインテールがふわっと回転する。
「なんか、サンコンさんみてえ」
「どこがよっ! 性別も人種も年齢も全部違うっ!」
 一文字間違ったせいで怒られた。間違わなくても怒られそうだが。
「変な事ばっか言って……まあ、いつものことだけど」
 ぶつぶつ言いながら、かなみは再び味噌汁の調理にかかった。
 ……んー、ここ数日ご飯ばっかで、いやもちろん作ってもらってありがたいんだけど、それでもパンが食べたいな。
 しかし、かなみにそう言っても「パン食う奴はベトコンだ! パン食べてご飯食べる奴は訓練されたベトコンだ! ホント戦場は地獄だぜ! フゥハハハーハァー」とか言うだろうしなあ……。
 どうしたものかと思案しながら視線をさ迷わせていたら、棚の上にスナックパンが置かれているのを見つけた。
 パン! 食いてえ! しかし、かなみに見つかると没収されるに違いない。
 だが、うだうだ考えていたら味噌汁が出来上がり、食う時間もなくなってしまう。どうする、どうする!
 まあいいや、食べよっと。
 手を伸ばしてスナックパンの入った袋を手に取り、封を開ける。一本手に取り、口に入れる。おいしい。
「タカシー、出来たわよ……」
 笑顔でふりむいたかなみが止まった。見つかった。
「……何してるのかしら」
「……ごくん。いや、何もしてないよ?」
「嘘つけっ! さっきごくんって何か飲み込んだでしょっ! ていうかその手に持ってる袋、思いっきり見えてるんだけど!」
 慌てて袋を背中に隠す。
「いや、違うんだ。これは散歩した時に糞を入れる排泄物袋で、パンは入ってないんだ」
「アンタ犬飼ってないでしょっ! いーから寄こしなさいっ!」
「かなみが糞を見たがる」
 とても怖い顔で睨まれたので、袋を渡す。
「ほら、やっぱりパンじゃない! もうっ、こんなの食べたらあたしの料理食べれなくなるでしょっ!」
「甘いものは別腹というし、だいじょぶだいじょぶ」
「もー……残したら承知しないわよ?」
「じゃあ認知はしてくれよな?」
「何の話よっ!」
 それは俺にも分からない。
「とにかく、パンは没収。ご飯食べなさい、ご飯」
「ちぇ。まぁいいや、一本食べたら満足した。飯を食うとします」
「そうしなさい。朝はやっぱりご飯! これで決まりよ」
 にっこり笑いながら、かなみは出来立ての味噌汁をよそってくれた。
「はい。熱いから気をつけなさいよ」
「はははっ、この俺様がそんなイージーミスをするはずがあっちぃっ!」
 受け取って口にした瞬間火傷した。
「言ったそばから……ああもう、子供みたいね、アンタ」
 かなみは俺の味噌汁を取り、ふーふー吹いた。
「はい、冷めたわよ。これでそそっかしいアンタでも大丈夫なはずよ」
「完全に子供扱いですな」
「あははっ、ふくれっ面して。なんならアーンもしてあげましょうか? なーんて」
「それはいい。是非お願いしよう」
「……え?」
「いや嬉しいな、まさかかなみが作ったものを手ずから食べさせてもらえるだなんて。俺はなんて幸せな男なんだろうか」
 無論、そんなもの本心ではない。かなみの退路を断ったまで。限界ギリギリまでいじめ、子供扱いした事を後悔させてやる!
「……あ、あの、そこまで言うなら、……してあげてもいいわよ?」
 かなみは少し頬を赤らめ、おずおずと言った。話がおかしな方向に転がりだした。
「あ、いや、でもほら、こういうのって恋人同士がすることであり、友達同士でするのって変とか思ったりする人がいたりする可能性がなきにしもあらずというか」
「べ、別に深い意味なんてないわよ? そ、その、そこまで言われたらあたしも断れないし」
「いや、でも……」
「あ、それとも……ホントは嫌、だったり?」
 かなみは少し顔を伏せ、声を落とした。
「とんでもない!」
 なんで即答してますか、俺は。
「じゃ、じゃあえっと……は、はい、あーん」
 顔をりんごみたいに真っ赤にして、かなみは震える箸でご飯を掴み、俺の前に差し出した。
「あ、あーん」
 大きく開けた俺の口に、ご飯が投入される。
「ど、どう? おいしい?」
「え、えっと、ご飯だな」
「そ、そっか。ご飯だもんね」
「そ、そうだな、ご飯だな」
 なんだ、この恋人空間。どこからこんな次元に突入してしまったのか。
「じゃ、じゃあ、次は味があるのね。はい、あーん」
 目玉焼きの白身を掴み、再び差し出してくるかなみ。
「あ、いや、もう充分だと思ったり思わなかったり」
「はい、あーん」
「……あーん」
 開けた口に目玉焼きが投入される。
「おいしい?」
「あ、うん。おいしい」
「そ、そっか。えへへっ」
 かなみはへにゃへにゃの笑みを見せた。
「…………」
 えへへっ、て。キャラ変わってますが。
「……な、なによ、その目は」
「いや、すごいなって」
「う、うるさいわねっ! 自分でも、らしくないとは思ってるわよ!」
 自覚してたのか。
「でもなんか知んないけど楽しいのよっ! 悪い!?」
「いや、悪くはないと思うけど……」
「悪くないなら続けるっ! はいっ、あーん!」
「あ、あーん」
「おいしいっ!?」
「お、おいしいです」
「……そ、そう。……えへへ」
 かなみはへにゃへにゃの笑みを見せた。
「…………」
 だから、えへへって。
「だ、だから、イチイチそんな目で見るなっ!」
「幸せそうで何よりです」
「うううっ、うるさいうるさいうるさいっ! 気づいてないかもしれないけどさ、アンタも嬉しそうよっ!」
「え?」
 自分の顔をぺたぺたさわる。なるほど、確かにずっとにやけてやがる。
「気のせいだな」
「笑ってるわよ! ずーっとにやにやしてさ、馬鹿みたい!」
「しっ、失敬な! えへえへ言ってる奴に言われたくない!」
「えへえへなんて言ってないわよっ!」
 遅刻ギリギリまでぎゃーぎゃー言い合ってました。

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