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2019年10月15日
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【傘を盗まれたところをツンデレに見られたら】

2012年06月23日
 今日も雨が降っている。梅雨なので毎日のことだ。というわけで傘を持ってきている。持ってきているハズなんだ。朝、傘立てに入れたんだけどなあ。
「…………」
「ちょっと、何やってんのよ」
「いやね、俺の傘がどうやら知らない間に擬人化してどこかへ出かけたようなんだ。だから、どうにか探しだしてこれから毎日家を焼……いや、これから毎日一緒に楽しく過ごす予定なんだ」
「なくなったの? 誰かにパクられた?」
「…………」
「ぷふ~っ! こういうところで日頃の行いが出るわね~♪」
「そんな放屁で揶揄しなくてもいいだろうに」
「おならじゃないわよっ! 口で言ったの!」
 誰かに後頭部を殴られた。
「痛いなあ……何すんでい」
「アンタのせいよっ!」
 探すのを一時中断し、埃を払って立ち上がる。目の前に不機嫌そうな顔をしたかなみがいた。
「で、で? どうなの? なくなったの?」
 しかし、一転して機嫌良さげに嫌なことを聞いてきた。なんて性格だこの娘。
「いや、俺の目論見だと、ようやっと九十九神になったはいいが、突然のことに物陰に隠れていると踏んでいるのだが」
「はいはい、はーい。戯言はいいから」
「ばか、俺から戯言を取ったら何も残らないぞ」
「自信満々に言うなっ!」
「付け加えるなら、雨の時にしか使われないので、少しネガティブな感じの子になってると思う。頭なでて大丈夫だよ、君は必要なんだよって言ってあげたい」
「うわっ、キモッ!」
「俺が思ったことを言うと、往々にしてそういう鳴き声が聞こえる。その鳴き方流行ってるの?」
「鳴き声じゃないわよ! 気持ち悪いって言ってるの!」
「臆病な自尊心が気づかないフリをしろと告げるんだ。あと、尊大な羞恥心も」
「どこの山月記よ……」
 かなみは思ったより博識だった。分からないネタだと思ったのに。
「……んーでっ。アンタ、傘もないのに今日はどうやって帰るの?」
「瞬間移動」
「んじゃやってみなさいよっ!」
「んなのできるわけねーじゃねーか。ばーかばーかばーか」
「…………」ギリギリ
「ぐげげぇ」
 小学生みたいな囃し声をあげたら首を締められた。このお嬢さんのツッコミは生死に関わることがあるので、もうちょっと優しい感じのでお願いしたい。
「げほっげほっ……あのさ、死ぬから。そこを締められると、死ぬから」
「早く死になさい」
「嫌です」
「まったく……で、濡れて帰るの?」
「もうしばらく探すつもりだが、見つからないならそうするしかあるまい。はぁ……なんで人のをパクったりするかなあ……」
「あはっ、とうとうパクられたって認めたわね」
「おどけてでもなけりゃ、正直やってられねえよ。ああもう、人間不信になりそうだ」
「ちょ、ちょっと。なにを大袈裟な……」
「自分でもそう思うが、やられると結構なダメージだぞ? あー、ヘコむわ……」
「…………。……じゃ、じゃあさ。ヘコむのと同じくらい嬉しいことあったら、人間不信が直るわよね?」
 どういうわけか、かなみは顔を赤くしながら何かを決意したような顔でそう言った。
「? や、別になりそうなだけで、なってるわけじゃ……」
「いいから! そうよね!?」
「は、はい」
 勢いに押されて思わず肯定する。一体何をしようというのか、このお嬢さんは。
「…………」
 固唾を飲んで様子を伺っていると、かなみは傘立てに近づいた。そして中を探り、一本の傘を抜き取った。鮮やかな赤の傘だ。
「ほ、ほら。何ぼーっとしてるのよ。帰るわよ」
「え、いや、俺は自分の傘を探さないといけないから」
「どうせ誰かにパクられてるわよ。だ、だから今日のところは、……そ、その。……わっ、私と一緒に帰ったらいいじゃない」
「や、だから傘が」
「……あ、アンタも一緒に私の傘に入ったらいいじゃない」
 視線は足元に、顔は傘に負けないくらい赤く染め、かなみが呟く。
「かっ、勘違いしないでよねっ!? アンタがヘコんだりしてたら殴っても楽しくないから嫌々傘に入れてやるってだけで、アンタと相合傘なんて生涯最後なんだからねっ!?」
 かなみは俺を見ると、ものすごい勢いでまくしたてた。あと顔が超赤いです。
「え、あ、は、はい。……はい?」
 あまりの勢いに、何がなんだか分からなくなる。
「な、なによ。……それとも、嫌なの?」
「いいえいいえいいえいいえ!」ブルブルブル
「そ、そんないっぱい否定しなくていいケド……じゃ、じゃあ、どする? もちょっと探す? それとも帰る?」
「え、ええと、帰るます」
「そ、そうね。今日のところはそうね。うん」
 何かコクコクうなずきながら、かなみは昇降口へ向かうと、こちらに振り向いた。
「ほら、何してんのよ。帰るわよ、ばか」
「あ、ああ」
 慌ててかなみの元へ向かい、隣に立つ。
「……ん、んじゃ、帰るわよ」
「あ、ああ」
 ばさりと傘を広げ、かなみはその下に入った。遅れて俺も入る。
「あ、あんまり近寄らないでよね」
「友達に噂とかされると恥ずかしいから?」
「どんな時でも気持ち悪いわねぇ……」
 呆れた様子でかなみはため息をついた。それと同時に、肩の力も抜けたようだ。うむ、よし。
「…………。……えへへっ」
「なんですか」
「なんでもないないっ♪」バシバシ
「痛い痛い」
 なんか知らんが背中をバシバシと叩かれた。痛いんですの。
「ほらほらっ、アンタの方が背高いんだから、傘持ちなさいよ」
「遠近法の関係でそう見えるだけだ。だからお前が持ってろ」
「んなわけないでしょっ! ほら持った持った!」
 無理やりに柄を持たされた。まだかなみの体温が残ってる。
「にひひっ、らっくちーん♪」
「やるェやるェ」
「なんで巻き舌!? 普通にやれやれって言いなさいよ!」
「やれやれは言いたかったが、やれやれ系主人公にはなりなくなかったので、苦肉の策だ」
「今日も変な奴ー♪」
 なんだか嬉しそうに、かなみは歩き出した。遅れて俺も続く。
「にしても、アンタもついてないわよね。傘を盗まれるなんてさ?」
「んー、まあ、なあ」
「なによ、奥歯に物が挟まったみたいな言い方して」
「ついてないのは確かだが、こうしてかなみと一緒に相合傘で帰れるので、プラマイゼロ、むしろプラスの方が大きいから、どちらかと言えば幸運じゃないかなー、と思ったので」
「な……」
 みるみるかなみの顔が赤くなっていく。忙しい奴め。
「……こっ、今回だけの特別よっ! そ、そんなの、毎回毎回なんてありえないからねっ!?」
「へーへー」
「次はちゃんと傘に名前をでっかく書いておきなさいよねっ!? 盗まれないようにっ!」
「分かった、書く。俺の名前をでっかく書いた100円のビニ傘持ってくる」
「盗まれる気マンマンじゃないのっ! ……そ、そんなに相合傘したいの?」
「う」
「そ、それなら、たまにならしてあげるから……ちゃんと普通の傘に名前書いて持って来なさい。ね?」
「は、はい」
 優しくたしなめられては、何も抵抗できない。
「よろしい♪ ……す、素直な子には、ご褒美が必要よね」ギュッ
「へ? ……はふぇ!?」
「へ、変な声出すな、ばかっ!」
 突然、かなみが傘の柄を握った。俺の手の上から。
「い、いや、その、あの、そこ俺の手がありますよ?」
「し、知ってるわよ! わざわざ言うな、ばかっ!」
「いやはや、その、なんというか、なんて言いますか!」
「よ、喜ぶな変態っ! ご、ご褒美だから! それ以外の感情なんて何もないからねっ!」
「ああもう、一年を通してずっと雨が降ればいいのに!」
「だから、喜ぶな変態っ!」
 空いてる手でぺこぽこ叩かれながらも、手に触れる感触はそのままに、一緒に楽しく帰りました。

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