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2026年03月21日
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【後輩ちゃん】
2010年02月07日
「先輩先輩せんぱいっ!」
学校から帰ってると、聞き覚えのある甲高い声が背後から聞こえた。
「パンツ一丁で駆けてくる痴女と出くわした。コマンド?」
「私、制服ですよ? それとも、下着姿のほうがぐっときますか? 脱ぎますか?」
「脱ぐなッ!」
俺に叱られしゅんとしているこの娘っ子は俺の一つ年下の女生徒、由依という。さる事情で知り合い、それ以来なんか知らんがやけに気に入られている。
「お帰りですか?」
「レレレのレ」
「惜しいですっ、それお出かけです! そんな惜しい先輩も大好きです!」
この後輩は隙あらば告白してくるので油断ならない。
「それはそうと、先輩っ! 私、先輩と手を繋ぎたいです! 繋いでいいですか?」
「握り潰されるから嫌だ」
「そうしないよう努力しますから!」
「潰せるの!? 怖っ、由依怖あっ!」
「嘘です!」
「…………」
俺もよっぽどだが、コイツもよっぽどだと思う。
「あっ、怒りましたか? 怒らせてしまいましたか? ……嫌いになりましたか?」
「…………」
「やっ、髪が乱れます! 困ります! でもちょっと嬉しいです!」
無言で髪をくしゃくしゃっとすると、由依は嬉しそうにはにかんだ。
「えへへっ……えっとですねっ、先輩はどんな子が好きですか?」
「つるぺ……っ、え、えーと、そうな、どんな子だろうな。はっはっは」
「つるぺたですかっ! 困りました、私ちょびっとだけ胸ありますっ!」
「途中で止めたんだからそれとなく察してくれ!」
「すいません! お詫びとして胸をそぎ落としますから!」
「怖っ、お前の愛情怖あっ!」
「嘘です! 痛いの嫌ですから!」
「…………」
「あっ、ひょっとして先輩痛くするのが好きなんですか? こうなっては努力して痛みを快楽に変える練習をするしかないです!」
「ちげーよ! なんでいつも色々と微妙に間違ってんだ!」
「先輩が訂正してくれるのが好きだからですっ!」
「……ったく。困った生き物だ」
むぎゅー、と眉間を押してやる。
「わわわっ、どんな感情表現なのか分かりません! でも、なんだかちょっぴり嬉しい感じです!」
「下痢になるツボ」
「永遠に恨み続けます!」
「だから、怖いっての! にこやかに言うなッ!」
「嫌なら手を繋いでください!」
「うーん……」
俺みたいな変人と一緒にいたら、いらぬ中傷を受けるだろうに……なんでこんな好意を抱かれてるかな。
「むっ! ばってんにゃんこ!」
「ぐげっ」
自分の手を交差して、由依は俺の首にクロスチョップした。
「げほっげほっ……何すんだ!」
「その目はまた悲しいこと考えてます! ダメです! 許しません!」
「そ、そんなこと考えてないぞ? お前の裸体を想像してただけだグヒヒヒヒ」
「それはとても光栄ですが、私は騙されません! 先輩、また自分のこと卑下してましたね?」
「そっ、……そんなことないぞ」
卑下とかじゃなく、ただの事実だし。
「ほらまた! ばってんにゃんこ!」
「ぐがっ」
またしてもクロスチョップが俺の首に直撃。
「げほっげほっ……お前なぁ、いちいちクロスチョップするな。言えば分かるから」
「クロスチョップじゃないです! ばってんにゃんこです!」
「何が違うんだ」
「可愛いです!」
「…………」
「可愛いですにゃ!」
……まあ、可愛いケド。
「話を戻しますが、先輩はもっともっと自分のこと好きになってください。なんだか先輩、ご自分のこと嫌いみたいに見えます」
「……そっか?」
「そうです! ずーっと先輩見てた私が言うのだから、間違いありません!」
「うーん……そうかなあ」
「そうです! なので、代わりといっては何ですが、私が先輩を好きになります! なりました! 好きです!」
「ずっと告白されてる」
「ずっと好きですから! 先輩のこと、いっぱい甘やかして、いっぱい甘えたいです!」
「……いいのか? 変だぞ、俺?」
「私も変ですから!」
なんだかすごく納得する。
「……そこで納得されると、ちょっと傷つきます」
「ごめぬ」
「許します! 好きですから!」
「じゃあ、その、とりあえず、……よろしく、ということで」
「はい!!!」
ひまわりのような笑顔を見せる由依だった。
「で、早速ですか」
「もちろんです! 私、先輩に鬼甘えます!」
どうしても俺の部屋に来たいというので、てっきりエロ展開かと思ったが、そうではないようで、さっきから俺にべたーっと張り付いている。
「先輩!」
「うん?」
「呼んだだけです! ……なっ、なんだか恋人同士のようで素敵です!」
「なんだかじゃなくて、実際そうだろ」
「こいびと……」
にへらっ、と締まりのない笑みを浮かべる由依。
「なんだか幸せすぎです……はっ! よもや夢ではないでしょうね!」
「実は夢なんだ」
「想像通りです! こうなっては先輩の皮を被った偽者を惨殺し、この夢世界から脱出するしか!」
「助けてえ!」
ちょっとした冗談でラブコメがサイコホラーに。
「嘘です! 軽い冗談です!」
「重えよッ!」
「恋人同士の甘々トークですねっ♪」
こいつには一度甘々トークというのがどういうものか、きちんと教えないといけない。
「先輩! 甘々トークが終わったので、次は抱っこしてほしいです!」
「らっこ?」
「可愛いですよね、ラッコ!」
「そうだね」
「……? 違います、抱っこです! 先輩の巧緻極まる話術にしてやられました!」
こいつがちゃんと日常生活を送れているのか、時々心配になる。
「……あの、ひょっとして、嫌ですか?」
「んなこと言ってねーだろ。ほら、来い」
両手を広げてカムカムする。
「じゃ、じゃあ、思い切っていきます! とうっ!」
「ぐべっ」
ばってんにゃんこが飛んできた。
「あああああっ、ついやってしまいました! ごめんなさい先輩!」
「恋人が殺そうとする」
「……こ、こいびと……」
その響きに、またしてもにへらっとする由依。
「せっ、先輩! どうしましょう、私、幸せすぎて死んじゃいそうです!」
「俺は物理的に死にそうだ」
「お似合いのカップルですねっ!」
付き合うの、早まったかもしれない。俺に抱きつき、幸せそうな笑みを浮かべる由依を見ながらそう思った。
学校から帰ってると、聞き覚えのある甲高い声が背後から聞こえた。
「パンツ一丁で駆けてくる痴女と出くわした。コマンド?」
「私、制服ですよ? それとも、下着姿のほうがぐっときますか? 脱ぎますか?」
「脱ぐなッ!」
俺に叱られしゅんとしているこの娘っ子は俺の一つ年下の女生徒、由依という。さる事情で知り合い、それ以来なんか知らんがやけに気に入られている。
「お帰りですか?」
「レレレのレ」
「惜しいですっ、それお出かけです! そんな惜しい先輩も大好きです!」
この後輩は隙あらば告白してくるので油断ならない。
「それはそうと、先輩っ! 私、先輩と手を繋ぎたいです! 繋いでいいですか?」
「握り潰されるから嫌だ」
「そうしないよう努力しますから!」
「潰せるの!? 怖っ、由依怖あっ!」
「嘘です!」
「…………」
俺もよっぽどだが、コイツもよっぽどだと思う。
「あっ、怒りましたか? 怒らせてしまいましたか? ……嫌いになりましたか?」
「…………」
「やっ、髪が乱れます! 困ります! でもちょっと嬉しいです!」
無言で髪をくしゃくしゃっとすると、由依は嬉しそうにはにかんだ。
「えへへっ……えっとですねっ、先輩はどんな子が好きですか?」
「つるぺ……っ、え、えーと、そうな、どんな子だろうな。はっはっは」
「つるぺたですかっ! 困りました、私ちょびっとだけ胸ありますっ!」
「途中で止めたんだからそれとなく察してくれ!」
「すいません! お詫びとして胸をそぎ落としますから!」
「怖っ、お前の愛情怖あっ!」
「嘘です! 痛いの嫌ですから!」
「…………」
「あっ、ひょっとして先輩痛くするのが好きなんですか? こうなっては努力して痛みを快楽に変える練習をするしかないです!」
「ちげーよ! なんでいつも色々と微妙に間違ってんだ!」
「先輩が訂正してくれるのが好きだからですっ!」
「……ったく。困った生き物だ」
むぎゅー、と眉間を押してやる。
「わわわっ、どんな感情表現なのか分かりません! でも、なんだかちょっぴり嬉しい感じです!」
「下痢になるツボ」
「永遠に恨み続けます!」
「だから、怖いっての! にこやかに言うなッ!」
「嫌なら手を繋いでください!」
「うーん……」
俺みたいな変人と一緒にいたら、いらぬ中傷を受けるだろうに……なんでこんな好意を抱かれてるかな。
「むっ! ばってんにゃんこ!」
「ぐげっ」
自分の手を交差して、由依は俺の首にクロスチョップした。
「げほっげほっ……何すんだ!」
「その目はまた悲しいこと考えてます! ダメです! 許しません!」
「そ、そんなこと考えてないぞ? お前の裸体を想像してただけだグヒヒヒヒ」
「それはとても光栄ですが、私は騙されません! 先輩、また自分のこと卑下してましたね?」
「そっ、……そんなことないぞ」
卑下とかじゃなく、ただの事実だし。
「ほらまた! ばってんにゃんこ!」
「ぐがっ」
またしてもクロスチョップが俺の首に直撃。
「げほっげほっ……お前なぁ、いちいちクロスチョップするな。言えば分かるから」
「クロスチョップじゃないです! ばってんにゃんこです!」
「何が違うんだ」
「可愛いです!」
「…………」
「可愛いですにゃ!」
……まあ、可愛いケド。
「話を戻しますが、先輩はもっともっと自分のこと好きになってください。なんだか先輩、ご自分のこと嫌いみたいに見えます」
「……そっか?」
「そうです! ずーっと先輩見てた私が言うのだから、間違いありません!」
「うーん……そうかなあ」
「そうです! なので、代わりといっては何ですが、私が先輩を好きになります! なりました! 好きです!」
「ずっと告白されてる」
「ずっと好きですから! 先輩のこと、いっぱい甘やかして、いっぱい甘えたいです!」
「……いいのか? 変だぞ、俺?」
「私も変ですから!」
なんだかすごく納得する。
「……そこで納得されると、ちょっと傷つきます」
「ごめぬ」
「許します! 好きですから!」
「じゃあ、その、とりあえず、……よろしく、ということで」
「はい!!!」
ひまわりのような笑顔を見せる由依だった。
「で、早速ですか」
「もちろんです! 私、先輩に鬼甘えます!」
どうしても俺の部屋に来たいというので、てっきりエロ展開かと思ったが、そうではないようで、さっきから俺にべたーっと張り付いている。
「先輩!」
「うん?」
「呼んだだけです! ……なっ、なんだか恋人同士のようで素敵です!」
「なんだかじゃなくて、実際そうだろ」
「こいびと……」
にへらっ、と締まりのない笑みを浮かべる由依。
「なんだか幸せすぎです……はっ! よもや夢ではないでしょうね!」
「実は夢なんだ」
「想像通りです! こうなっては先輩の皮を被った偽者を惨殺し、この夢世界から脱出するしか!」
「助けてえ!」
ちょっとした冗談でラブコメがサイコホラーに。
「嘘です! 軽い冗談です!」
「重えよッ!」
「恋人同士の甘々トークですねっ♪」
こいつには一度甘々トークというのがどういうものか、きちんと教えないといけない。
「先輩! 甘々トークが終わったので、次は抱っこしてほしいです!」
「らっこ?」
「可愛いですよね、ラッコ!」
「そうだね」
「……? 違います、抱っこです! 先輩の巧緻極まる話術にしてやられました!」
こいつがちゃんと日常生活を送れているのか、時々心配になる。
「……あの、ひょっとして、嫌ですか?」
「んなこと言ってねーだろ。ほら、来い」
両手を広げてカムカムする。
「じゃ、じゃあ、思い切っていきます! とうっ!」
「ぐべっ」
ばってんにゃんこが飛んできた。
「あああああっ、ついやってしまいました! ごめんなさい先輩!」
「恋人が殺そうとする」
「……こ、こいびと……」
その響きに、またしてもにへらっとする由依。
「せっ、先輩! どうしましょう、私、幸せすぎて死んじゃいそうです!」
「俺は物理的に死にそうだ」
「お似合いのカップルですねっ!」
付き合うの、早まったかもしれない。俺に抱きつき、幸せそうな笑みを浮かべる由依を見ながらそう思った。
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【ちなねえとクイズ番組】
2010年02月07日
「……アキくん、アキくん」
座椅子に座り部屋で一人テレビを見てると、近所の幼馴染、ちなねえがノックと同時に部屋に入ってきた。
ちなみにアキくんと呼ばれているのはそう呼ばせて悦に浸っているのではなく、何度言ってもやめてくれないので諦めている彰人ですこんばんわ。なぜ挨拶になっている?
「んあ」
そんな益体もないことを考えていたため、返事が雑になった。
「……一緒にテレビ見ましょう」
こっちが返事するより前に俺の膝の間に入り込み、ちなねえは俺に体を預けた。
「……ま、いいケドさ」
「♪」
ちなねえのお腹に手を回し、そのままぼんやりテレビを見る。丁度クイズ番組が始まった。
「よしちなねえ、クイズで勝負だ」
「……お姉ちゃん、年上のプライドにかけて、負けません」
「年上の人は年下の人に抱っこされても、手放しで喜んだりしないと思う」
「……始まりますよ?」
都合の悪い話は無視し、ちなねえはテレビに意識を向けた。
『第一問。ドライアイスは何が固まったもの?』
「簡単。二酸化炭素だな」
「……ちっちっち。……アキくん、まだまだです。……気体が固まるなんて無理です。……正解は、氷をもっともっと固めたものです」
『正解は……二酸化炭素です!』
「…………」
「……お、お姉ちゃんでも、時々は間違えます。時々です。ぐーぜんです」
珍しく饒舌なちなねえだった。
『第二問。X線を発見したのは誰でしょう?』
「……エックス博士です。だから、X線って名前になったんです」
「レントゲン」
「あっ、あっ、お姉ちゃんも、お姉ちゃんもそれ」
「ダメ」
「……アキくん、いじわるです」
『正解は……レントゲンです!』
「……分かってたのに、アキくんのせいで間違えました」
「いやいや、最初にエックス博士とかとんちんかんなこと言ってたじゃん」
「……言ってないです」
ちなねえのほっぺがぷくーっと膨れた。
「怒るねい」
なんとなくちなねえのほっぺを押す。ぷにぷにして幸せ。
「……怒ってなんて、ないです」
俺にぷにぷにされたまま、ちなねえは不機嫌そうに言った。
『第三問。桃太郎が家来たちに与えた食べ物は何?』
「あっ、きびだんご! きびだんごです! お姉ちゃん、自信あります!」
「あ、俺もそれ」
「ダメです。お姉ちゃん、先に言いました。アキくんは、別の食べ物にしてください」
「そんなルールなのか?」
「……です」
「あー……じゃあ、りんご」
色々と納得いかないが、姉の言うことには逆らえないので適当な食べ物を言う。
『正解は……きびだんごです!』
だよなあ、と思いながらちなねえのつむじを眺めてると、くるりと顔がこちらを向いた。
「……むふー」
得意満面で俺を見るちなねえ。
「いや、こんな問題でそんな顔されても」
「……アキくん、間違えました。……むふー」
ムカつくのでほっぺを引っ張ってやる。
「……痛いです」
ちょっと悲しそうにちなねえの眉が八の字になった。
『第四問。世界でいちばん深い湖は?』
んなもん、知らんぞ。ちなねえはどうなんだろう。
「……え、ええと。……アキくんから先に答えさせてあげますよ? 優しいお姉ちゃんに、アキくんにっこり」
「えーと……びわ湖?」
「お姉ちゃんもそうだと思ってました。先に言われちゃったので追従する形になってしまい、残念です」
「ほほう」
『正解は……バイカル湖です!』
じーっとちなねえを見る。
「……わざとですか? わざとですね? わざと間違えて、お姉ちゃんを困らせて楽しんでますね?」(涙じわーっ)
「イチイチ泣くなッ! 俺も知らなかったんだよ……」
ちなねえの頭をわしわしなでて慰める。もう大人のはずなのに、すぐ泣くので困る。
「……うー」
うーと言いながら、ちなねえは体の向きを変えてこちらを向いた。そして、両手両足で俺に抱きついてきた。
「うーじゃねえ。てか、何をしている」
「……もーテレビ見ません。……アキくんがイカサマしてお姉ちゃんを困らせてるのは、まるっとお見通しです」
「何一つ見通せてないぞ、ちなねえ」
「……見通せてます」
「はいはい、分かった分かった」
適当にちなねえをなでながらテレビを見る。と、突然テレビが暗転した。
「あれ?」
「……ちゃんとお姉ちゃんの相手しなさい」
ちょっと口を尖らせるちなねえの手元に、テレビのリモコンが。
「勝手に切るなよ」
「……切ってません」
「嘘をつくな」
「……ついてません」
「……はぁ」
ため息ひとつついて、テレビを諦める。まあどうしても見たいワケでもないし、いっか。
「……代わりに、お姉ちゃんとクイズしましょう」
「あー、別にいいよ」
「……第一問。……お姉ちゃんは、アキくんが……好き?」
「×」
「ぴんぽんぴんぽーん。……正解です」
なんと。嫌われていたのか。予想以上にショックを受けてる自分がいる。
「……お姉ちゃんは、アキくんのことが好きではなくて、アキくんのことが、……大好きです」
「……あー、うん。そ、そか」
何と言ったらいいのか分からなくなって、そっぽを向いてぶつぶつと。
「……照れてるアキくんって、可愛いです」
調子に乗ってるちなねえのほっぺをうにうにする。
「……うにうにされました。……続いて、第二問です。……アキくんは、お姉ちゃんが……好き?」
「△」
「……そんな答え、ありません。……ちゃんと答えるべきです」
「日本語分からないんだ」
「……すっごく、日本語でしゃべってます」
「ちなねえが気づいてないだけで、これはチェンバル語なんだ」
「……お姉ちゃん、そんなのでは誤魔化されません。……それで、正解は?」
「ぐ……ど、どうしても言うのか?」
「……です」
しょうがない。意を決して、ちなねえの耳元に口を寄せ、ぼそぼそぼそ。
「……だいせいかい、です♪♪♪」
ニッコニコの笑顔で俺にむぎゅーと抱きつくちなねえだった。
座椅子に座り部屋で一人テレビを見てると、近所の幼馴染、ちなねえがノックと同時に部屋に入ってきた。
ちなみにアキくんと呼ばれているのはそう呼ばせて悦に浸っているのではなく、何度言ってもやめてくれないので諦めている彰人ですこんばんわ。なぜ挨拶になっている?
「んあ」
そんな益体もないことを考えていたため、返事が雑になった。
「……一緒にテレビ見ましょう」
こっちが返事するより前に俺の膝の間に入り込み、ちなねえは俺に体を預けた。
「……ま、いいケドさ」
「♪」
ちなねえのお腹に手を回し、そのままぼんやりテレビを見る。丁度クイズ番組が始まった。
「よしちなねえ、クイズで勝負だ」
「……お姉ちゃん、年上のプライドにかけて、負けません」
「年上の人は年下の人に抱っこされても、手放しで喜んだりしないと思う」
「……始まりますよ?」
都合の悪い話は無視し、ちなねえはテレビに意識を向けた。
『第一問。ドライアイスは何が固まったもの?』
「簡単。二酸化炭素だな」
「……ちっちっち。……アキくん、まだまだです。……気体が固まるなんて無理です。……正解は、氷をもっともっと固めたものです」
『正解は……二酸化炭素です!』
「…………」
「……お、お姉ちゃんでも、時々は間違えます。時々です。ぐーぜんです」
珍しく饒舌なちなねえだった。
『第二問。X線を発見したのは誰でしょう?』
「……エックス博士です。だから、X線って名前になったんです」
「レントゲン」
「あっ、あっ、お姉ちゃんも、お姉ちゃんもそれ」
「ダメ」
「……アキくん、いじわるです」
『正解は……レントゲンです!』
「……分かってたのに、アキくんのせいで間違えました」
「いやいや、最初にエックス博士とかとんちんかんなこと言ってたじゃん」
「……言ってないです」
ちなねえのほっぺがぷくーっと膨れた。
「怒るねい」
なんとなくちなねえのほっぺを押す。ぷにぷにして幸せ。
「……怒ってなんて、ないです」
俺にぷにぷにされたまま、ちなねえは不機嫌そうに言った。
『第三問。桃太郎が家来たちに与えた食べ物は何?』
「あっ、きびだんご! きびだんごです! お姉ちゃん、自信あります!」
「あ、俺もそれ」
「ダメです。お姉ちゃん、先に言いました。アキくんは、別の食べ物にしてください」
「そんなルールなのか?」
「……です」
「あー……じゃあ、りんご」
色々と納得いかないが、姉の言うことには逆らえないので適当な食べ物を言う。
『正解は……きびだんごです!』
だよなあ、と思いながらちなねえのつむじを眺めてると、くるりと顔がこちらを向いた。
「……むふー」
得意満面で俺を見るちなねえ。
「いや、こんな問題でそんな顔されても」
「……アキくん、間違えました。……むふー」
ムカつくのでほっぺを引っ張ってやる。
「……痛いです」
ちょっと悲しそうにちなねえの眉が八の字になった。
『第四問。世界でいちばん深い湖は?』
んなもん、知らんぞ。ちなねえはどうなんだろう。
「……え、ええと。……アキくんから先に答えさせてあげますよ? 優しいお姉ちゃんに、アキくんにっこり」
「えーと……びわ湖?」
「お姉ちゃんもそうだと思ってました。先に言われちゃったので追従する形になってしまい、残念です」
「ほほう」
『正解は……バイカル湖です!』
じーっとちなねえを見る。
「……わざとですか? わざとですね? わざと間違えて、お姉ちゃんを困らせて楽しんでますね?」(涙じわーっ)
「イチイチ泣くなッ! 俺も知らなかったんだよ……」
ちなねえの頭をわしわしなでて慰める。もう大人のはずなのに、すぐ泣くので困る。
「……うー」
うーと言いながら、ちなねえは体の向きを変えてこちらを向いた。そして、両手両足で俺に抱きついてきた。
「うーじゃねえ。てか、何をしている」
「……もーテレビ見ません。……アキくんがイカサマしてお姉ちゃんを困らせてるのは、まるっとお見通しです」
「何一つ見通せてないぞ、ちなねえ」
「……見通せてます」
「はいはい、分かった分かった」
適当にちなねえをなでながらテレビを見る。と、突然テレビが暗転した。
「あれ?」
「……ちゃんとお姉ちゃんの相手しなさい」
ちょっと口を尖らせるちなねえの手元に、テレビのリモコンが。
「勝手に切るなよ」
「……切ってません」
「嘘をつくな」
「……ついてません」
「……はぁ」
ため息ひとつついて、テレビを諦める。まあどうしても見たいワケでもないし、いっか。
「……代わりに、お姉ちゃんとクイズしましょう」
「あー、別にいいよ」
「……第一問。……お姉ちゃんは、アキくんが……好き?」
「×」
「ぴんぽんぴんぽーん。……正解です」
なんと。嫌われていたのか。予想以上にショックを受けてる自分がいる。
「……お姉ちゃんは、アキくんのことが好きではなくて、アキくんのことが、……大好きです」
「……あー、うん。そ、そか」
何と言ったらいいのか分からなくなって、そっぽを向いてぶつぶつと。
「……照れてるアキくんって、可愛いです」
調子に乗ってるちなねえのほっぺをうにうにする。
「……うにうにされました。……続いて、第二問です。……アキくんは、お姉ちゃんが……好き?」
「△」
「……そんな答え、ありません。……ちゃんと答えるべきです」
「日本語分からないんだ」
「……すっごく、日本語でしゃべってます」
「ちなねえが気づいてないだけで、これはチェンバル語なんだ」
「……お姉ちゃん、そんなのでは誤魔化されません。……それで、正解は?」
「ぐ……ど、どうしても言うのか?」
「……です」
しょうがない。意を決して、ちなねえの耳元に口を寄せ、ぼそぼそぼそ。
「……だいせいかい、です♪♪♪」
ニッコニコの笑顔で俺にむぎゅーと抱きつくちなねえだった。
【沙夜 カップ麺】
2010年02月06日
ここ数日金欠なので、昼は体にあまりよくないと知りつつ庶民に優しいカップ麺ばかり食べてる。ぺりぺりと包装を破いてたら、カップ麺に影が差した。顔を上げると、知り合い。沙夜だ。
「どした?」
「…………」
沙夜は何も言わず、じぃぃぃぃっと俺のカップ麺を見てる。
「欲しいのか? やらんぞ」
蓋を取り、職員室から拝借してきたヤカンでカップにお湯を入れ蓋をする。
「…………」
その様子をじーっと見てる沙夜。
「なんだ? ひょっとして、弁当忘れたのか?」
そう尋ねると、沙夜はぷるぷると首を横に振って自分の席に戻った。そして鞄から弁当箱を取り出し、また戻ってきた。
「…………」
そして見せ付けるようにぐいぐい俺に押し付けてくる。俺の顔に。
「お前が弁当持ってることは分かった。分かったから押すな」
満足そうに鼻息を漏らすと、沙夜は再びじぃぃぃぃっとカップ麺を見つめた。
「……繰り返すが、やらんぞ」
沙夜は弁当箱で俺の顔をぺしぺし叩いた。痛え。
「お前は弁当持ってるんだから、それ食え。これは俺の」
俺の話なんてちっとも聞かず、沙夜はなおも俺の顔を弁当箱でべしべし叩いた。痛いっての。
「……ん、3分経ったか」
蓋を取り除くと、ふわりと湯気が舞い上がった。うまそう。
「さて、いただきます」
両手を合わせていただきますを言ってたら、横から手が伸びてきてカップ麺と箸を奪われた。
「…………。いやいや、いやいやいや! 俺の飯だから! 返せ沙夜!」
沙夜はカップ麺を持ったまま走って逃げた。ていうかアイツ食いながら逃げてやがる!
「てめえ、何しやがる! てめえ!」
もう半泣きで沙夜を追いかける。あれを食われると本日の摂取カロリーが足らなくなる。
「…………♪」
あんにゃろう、ちらりとこっちを振り向いては満足そうに麺をすすってやがる! チクショウ、俺のカップ麺!
「唸れ俺の脚、輝け俺の肺、瞬け俺の生命!」
いらんこと言ってる間に距離を空けられた。ぜいぜい言いながら米粒みたいに小さくなってる沙夜を追いかける。
「ひー……たまには、運動、しねぇとな……はひー」
沙夜を追いかけ、見失い、道行く人々に尋ね、たくさん階段を上る。きしむドアを開け、屋上へ。
「はぁはぁはぁ……お、追い詰めたぞ、沙夜!」
「…………」
沙夜はカップ麺の最後の汁を飲み干してた。
「遅かったぁぁぁぁぁ……」
力なく膝から崩れ落ちる。無駄にカロリー使っちまったし、もうこのまま朽ちてしまいそう。
「…………」
沙夜は俺の肩に手を置き、ぷるぷると首を横に振った。まだまだ甘いらしい。
「おまえなあ……冗談にしては悪質だぞ。俺の飯……」
泣きそうになってる俺の視界に、布に包まれた四角い箱が。つい、と顔を上げる。
「弁当……? え、くれるの?」
沙夜はコクコクとうなずいた。
「なんで?」
尋ねると、沙夜はげふーとゲップした。
「腹いっぱいスか……」
じゃあ最初から取るな、と思ったが、そこではたと気づく。
まさか、最近カップ麺ばっか食ってたから、それじゃ栄養が偏ると思って、わざと……?
じっ、と沙夜の顔を見る。何かを察したのか、沙夜は顔を逸らした。ほんのり頬が赤い。
「……ありがとな、沙夜」
何のことか分からない、とでも言いたげにぷるぷる首を振る沙夜だったが、頬の赤みは強くなってた。
「言いたいから言っただけだ、気にするな。さってと、食うか!」
弁当箱を開ける。なんか緑まみれ。ていうかおかずが野菜。超野菜。
「……超ヘルシーですね、この弁当」
コクコク、と嬉しそうな沙夜のこめかみをぐりぐり。
「肉を入れろ、肉を! 力が出ねえよ!」
俺の手を取り、沙夜は半泣きになりながらも負けじと俺の指をがじがじかじった。
「痛い痛い痛い! いやちょっと肉が食いたかっただけで別に嫌とかそんなじゃなくてそのごめんなさい俺が悪かったです!」
あまりの痛みに許しを請うと、沙夜はぴたりと俺の指をかじるのをやめ、ちゅーちゅー吸い始めた。
「あー……許してくれる、と」
俺の指をちゅーちゅーしながら沙夜はコクコクうなずいた。
「そか。サンクス。じゃ、飯食うんで手を解放してくれると助かる」
ぷるぷるぷる。沙夜の首が横に振られる。
「……いやいや。片手じゃ飯食えないし」
ぷるぷるぷる。食えと。片手で食えと。
「……分かったよ。食うよ、食いますよ」
左手に箸、右手に沙夜の舌。どんな二刀流だ。
「でも、せめて手を交換してくれると助かります」
ぷるぷるぷる。ダメらしい。
「あははー、思いがけず両利きの訓練できてラッキー」
やけくそ気味にそう言い、震える手で飯を食う。超食いにくい。
「…………♪」
そんな俺を楽しげに眺めつつ、人の指をちうちうれろれろする沙夜だった。
「どした?」
「…………」
沙夜は何も言わず、じぃぃぃぃっと俺のカップ麺を見てる。
「欲しいのか? やらんぞ」
蓋を取り、職員室から拝借してきたヤカンでカップにお湯を入れ蓋をする。
「…………」
その様子をじーっと見てる沙夜。
「なんだ? ひょっとして、弁当忘れたのか?」
そう尋ねると、沙夜はぷるぷると首を横に振って自分の席に戻った。そして鞄から弁当箱を取り出し、また戻ってきた。
「…………」
そして見せ付けるようにぐいぐい俺に押し付けてくる。俺の顔に。
「お前が弁当持ってることは分かった。分かったから押すな」
満足そうに鼻息を漏らすと、沙夜は再びじぃぃぃぃっとカップ麺を見つめた。
「……繰り返すが、やらんぞ」
沙夜は弁当箱で俺の顔をぺしぺし叩いた。痛え。
「お前は弁当持ってるんだから、それ食え。これは俺の」
俺の話なんてちっとも聞かず、沙夜はなおも俺の顔を弁当箱でべしべし叩いた。痛いっての。
「……ん、3分経ったか」
蓋を取り除くと、ふわりと湯気が舞い上がった。うまそう。
「さて、いただきます」
両手を合わせていただきますを言ってたら、横から手が伸びてきてカップ麺と箸を奪われた。
「…………。いやいや、いやいやいや! 俺の飯だから! 返せ沙夜!」
沙夜はカップ麺を持ったまま走って逃げた。ていうかアイツ食いながら逃げてやがる!
「てめえ、何しやがる! てめえ!」
もう半泣きで沙夜を追いかける。あれを食われると本日の摂取カロリーが足らなくなる。
「…………♪」
あんにゃろう、ちらりとこっちを振り向いては満足そうに麺をすすってやがる! チクショウ、俺のカップ麺!
「唸れ俺の脚、輝け俺の肺、瞬け俺の生命!」
いらんこと言ってる間に距離を空けられた。ぜいぜい言いながら米粒みたいに小さくなってる沙夜を追いかける。
「ひー……たまには、運動、しねぇとな……はひー」
沙夜を追いかけ、見失い、道行く人々に尋ね、たくさん階段を上る。きしむドアを開け、屋上へ。
「はぁはぁはぁ……お、追い詰めたぞ、沙夜!」
「…………」
沙夜はカップ麺の最後の汁を飲み干してた。
「遅かったぁぁぁぁぁ……」
力なく膝から崩れ落ちる。無駄にカロリー使っちまったし、もうこのまま朽ちてしまいそう。
「…………」
沙夜は俺の肩に手を置き、ぷるぷると首を横に振った。まだまだ甘いらしい。
「おまえなあ……冗談にしては悪質だぞ。俺の飯……」
泣きそうになってる俺の視界に、布に包まれた四角い箱が。つい、と顔を上げる。
「弁当……? え、くれるの?」
沙夜はコクコクとうなずいた。
「なんで?」
尋ねると、沙夜はげふーとゲップした。
「腹いっぱいスか……」
じゃあ最初から取るな、と思ったが、そこではたと気づく。
まさか、最近カップ麺ばっか食ってたから、それじゃ栄養が偏ると思って、わざと……?
じっ、と沙夜の顔を見る。何かを察したのか、沙夜は顔を逸らした。ほんのり頬が赤い。
「……ありがとな、沙夜」
何のことか分からない、とでも言いたげにぷるぷる首を振る沙夜だったが、頬の赤みは強くなってた。
「言いたいから言っただけだ、気にするな。さってと、食うか!」
弁当箱を開ける。なんか緑まみれ。ていうかおかずが野菜。超野菜。
「……超ヘルシーですね、この弁当」
コクコク、と嬉しそうな沙夜のこめかみをぐりぐり。
「肉を入れろ、肉を! 力が出ねえよ!」
俺の手を取り、沙夜は半泣きになりながらも負けじと俺の指をがじがじかじった。
「痛い痛い痛い! いやちょっと肉が食いたかっただけで別に嫌とかそんなじゃなくてそのごめんなさい俺が悪かったです!」
あまりの痛みに許しを請うと、沙夜はぴたりと俺の指をかじるのをやめ、ちゅーちゅー吸い始めた。
「あー……許してくれる、と」
俺の指をちゅーちゅーしながら沙夜はコクコクうなずいた。
「そか。サンクス。じゃ、飯食うんで手を解放してくれると助かる」
ぷるぷるぷる。沙夜の首が横に振られる。
「……いやいや。片手じゃ飯食えないし」
ぷるぷるぷる。食えと。片手で食えと。
「……分かったよ。食うよ、食いますよ」
左手に箸、右手に沙夜の舌。どんな二刀流だ。
「でも、せめて手を交換してくれると助かります」
ぷるぷるぷる。ダメらしい。
「あははー、思いがけず両利きの訓練できてラッキー」
やけくそ気味にそう言い、震える手で飯を食う。超食いにくい。
「…………♪」
そんな俺を楽しげに眺めつつ、人の指をちうちうれろれろする沙夜だった。
【ツンデレと同じ家に住んでたら】
2010年02月06日
ひょんなことから、かなみと一緒に住むことになってしまった。
「冗談じゃないわよ、こんな奴!」とはかなみの談。「ああっ、よくあるギャルゲみたい! 凄い!」と言って殴られたのは俺。
そんなわけで、今日もかなみと一緒に登校。一緒に登校しないと後でママンに叱られます。
「いい? 学校ではあたしたちが一緒に住んでること秘密だからね。喋ったら殺すわよ」
「喋ったらコロ助よ? 俺、コロッケ中毒じゃな……はい、分かりました。喋りません」
とても怖い目で見られたので、途中で諦める。
「ったく。なんでアンタなんかと一緒に住まなきゃいけないのよ。あーあ、ヤだヤだ」
「俺はかなみとずっと一緒で嬉しいけどな」
「なっ……な、何言ってんのよ! は、恥ずかしい奴ねー!」
そう言いながらも、かなみの顔はみるみる赤くなっていた。
「だって、俺貧乳大好きだから! かなみの乳が平らでよかった!」
俺の顔もみるみる赤くなっていく。かなみの攻撃で流血してるからね。死にそうだよ。
「この変態!」
「いやあ、はっはっは」
「褒めてないッ! 照れるな、ばかっ!」
なぜか怒ってるかなみと一緒に、教室へ。
「おはよー、かなみちゃん。おはよ、別府く……べ、別府くん、血まみれだよっ!?」
挨拶をしてくれた顔馴染みの女生徒──犬っぽいので、俺は犬子と呼んでる──が、俺の顔を見て青ざめていた。
「急に生理が来たんだ」
「んなわけあるかっ! 仮にそうだとしても、顔から出ないっ!」
ぽんぽんっと俺に突っ込みをいれるかなみ嬢。
「ほ、保健室、保健室行かないと……」
「あ」
青ざめた顔で犬子は俺の手を取り、廊下へ連れ出した。
「犬子、なんだか俺よりお前の方が顔色が悪いように思えるが」
「血、苦手なんだ……」
苦手なのにわざわざ付き添ってくれるなんて、犬子はいい奴だな。
「犬の忠誠心が発揮されたか。伊達や酔狂で犬っぽいわけじゃないんだな」
「……別府くんが私のこと犬子犬子って言うから、みんなも私のこと本名じゃなく、犬子って呼ぶようになったんだよ?」
「そう感謝するな」
「一ミリたりともしてないのに……」
「……で、なんでお前も着いて来たんだ、かなみ?」
俺たちの一歩後ろを、なんだか気まずそうな顔をして着いてくるかなみに問いかける。
「え、えーっとぉ……ほ、ほら犬ちゃんだけじゃ危ないじゃない? いつアンタに襲われるか分かんないし」
「別府くん、私を襲うの……?」
「……ふむ。犬子の乳は平均的な女子より割と大きい。よって俺の攻略対象とは成り得ない。だがしかし、ここに甲斐甲斐しい女性的な性格が加味されることにより、その範囲は俺の攻略対象に入ってくる。故に犬子が俺に襲われる可能性はそこそこある。あと、髪型が犬っぽいのもかなりの魅力だ。ワンとか鳴け」
「しっかり考えた上での結論がそれか、この馬鹿っ!」
熟考した答えを言ったのに、かなみに蹴られた。
「か、かなみちゃん、別府くん怪我してるんだから、蹴ったりしたらダメだよぉ」
「うっさい! いーのよこんな奴! あーもう腹立つ! 何が攻略対象よ! 貧乳大好きって言ってたじゃないこの馬鹿!」
「貧乳大好き……? 何の話、かなみちゃん?」
「え? え、えっと、ち、違うのよ、犬ちゃん」
「うん?」
「なんでもいいが、そろそろ保健室に連れて行ってはくれまいか、お嬢さん方」
「わわっ、別府くんが倒れてる! わわわっ、顔色がとっても悪いよ! 保健室保健室っ!」
「ちょ、ちょっとアンタ、死ぬんじゃないわよ! 死んだら一生恨むからねっ!」
気がついたらベッドの上でした。
「気づいたか、別府」
体を起こしてきょろきょろしてたら、その様子に気づいたのか、何か書き物をしていた先生が声をかけてきた。
「あー……ここは? 保健室?」
「そうだ。まったく、何をどうやったら血まみれになれる。あまり私の仕事を増やすな」
頭に手をやると、包帯がグルグル巻かれていた。
「目が覚めたのなら教室へ戻れ。ここは休憩所ではない」
そう言って、先生は机に向き直った。
「はぁ……どうもありがとうございました?」
「なぜ疑問系だ。……ああ、そうだ。犬子と椎水に礼を言っておくんだな。あの二人、休み時間ごとにお前の様子を見に来ていたぞ。ついさっきもここにいたんだがな」
「え……」
なんとなく犬子は心配してそうだなあと思ったが、まさかかなみまで見舞いに来てたとは……。
「で、どっちが本命だ、色男?」
「まあどっちかと言うと、醤油かな」
「何の話だッ!?」
過剰に驚いてる先生にお礼を言って、保健室を出る。
礼、礼なあ……包帯取って頭から血を噴出させて水芸……いかん、それでは死んでしまう。
そんなことを思いながら廊下を歩いてたら、腹が鳴った。時計を見ると、もう昼だった。
そりゃ腹も鳴るなと思いつつ教室に入ると、俺の姿を確認した犬子が駆け寄ってきた。
「別府くん、もう大丈夫なの?」
「ん。見舞いに来てくれたらしいな。心配させて悪かったな、犬子」
感謝の意を示すため、犬子の頭をなでなでする。
「わ、わふ……」
犬子はちょっと恥ずかしそうに頬を染めた。だがそれ以上に気になることが。
「やっぱり犬っぽい」
「い、犬じゃないもん!」
「まあ犬談義はどうでもいい。おい、そこの興味ないフリしてるの」
「な、なんのことかしら?」
犬子の真後ろに立ち、偶然通りましたよーという顔をしてるかなみに話しかける。
「おまえにも一応感謝をな。まあ、俺が保健室に担ぎこまれた原因を考えると感謝するのも難しいが、それでも一応な」
「い、一応って何よ! そもそもアンタが変なこと言わなけりゃ済む話でしょうが!」
「そんなことはできない!」
「……まあ、アンタはそうよね」
理解されてるのに、どうしてだか悲しいよ。
「と、とにかく! あんなのでイチイチ気を失わないでよね! まったく、ひ弱なんだから」
血まみれで失神しない奴がいたらお目にかかりたい、とか思ってたら、犬子が耳打ちしてきた。
「……あんなこと言ってるけどね、別府くん。別府くんが気を失った時、かなみちゃんすっごく心配してたよ?」
「え、マジで?」
「うんうん、まじまじ♪」
「……ちょっと。アンタら近すぎじゃない?」
ひそひそ話をしてたら、かなみがジト目で犬子と俺を見る。
「犬子の珍しい犬耳を近くで見せてもらったんだ」
「こっ、これは犬耳じゃなくて髪型だよっ!?」
変な耳だなあ。
「まあとにかく二人とも感謝だ」
「わふっ」
最後に犬子の頭をひとなでして自分の席に戻ろうとしたら、かなみが俺の服の裾を引っ張っていることに気がついた。
「動けませんが」
「……なんであたしにはなでないのよ」
「え、だってお前は、その、……怒るじゃん」
「怒るけど! 怒るけど、……犬ちゃんばっかり、ずるいじゃない」
「う」
拗ねたように視線を逸らすかなみに、ちょっとクラクラ。
「……何よ」
ちょっと口を尖らせてるかなみの耳元に、口を寄せる。
「……帰ったら、いっぱいぎゅーってして、なでなでしてやるから。な?」
途端、かなみの顔が火がついたように赤くなった。
「ま、まあ、そういうことならいいわ。……覚悟しておきなさいよ!」
顔を真っ赤にしたまま、かなみは自分の席に戻っていった。
「……何を言ったの?」
「秘密」
「ぶー」
不満顔の犬子を置いて、俺は自分の席に戻るのだった。
で、その夜。
「かなみさん」
「な、なによ」
「邪魔なのですが」
「う、うっさいわねー。アンタがいっぱいぎゅーってするって言ったんでしょうが! 全然足りないわよ!」
「しかし、頭が邪魔でテレビが見れないのですが」
かなみを後ろから抱っこしている状態なので、かなみ頭が俺の視界を遮りテレビからは音だけをお届けしております。
「うっさいわねー、アンタはあたしだけを見てればいいのよ!」
「…………」
「か、顔を赤くするなっ、ばかっ! そ、そういう意味で言ったんじゃないわよ、ばかばかばかっ!」
俺の膝の上でじたじたするかなみたんでした。
「冗談じゃないわよ、こんな奴!」とはかなみの談。「ああっ、よくあるギャルゲみたい! 凄い!」と言って殴られたのは俺。
そんなわけで、今日もかなみと一緒に登校。一緒に登校しないと後でママンに叱られます。
「いい? 学校ではあたしたちが一緒に住んでること秘密だからね。喋ったら殺すわよ」
「喋ったらコロ助よ? 俺、コロッケ中毒じゃな……はい、分かりました。喋りません」
とても怖い目で見られたので、途中で諦める。
「ったく。なんでアンタなんかと一緒に住まなきゃいけないのよ。あーあ、ヤだヤだ」
「俺はかなみとずっと一緒で嬉しいけどな」
「なっ……な、何言ってんのよ! は、恥ずかしい奴ねー!」
そう言いながらも、かなみの顔はみるみる赤くなっていた。
「だって、俺貧乳大好きだから! かなみの乳が平らでよかった!」
俺の顔もみるみる赤くなっていく。かなみの攻撃で流血してるからね。死にそうだよ。
「この変態!」
「いやあ、はっはっは」
「褒めてないッ! 照れるな、ばかっ!」
なぜか怒ってるかなみと一緒に、教室へ。
「おはよー、かなみちゃん。おはよ、別府く……べ、別府くん、血まみれだよっ!?」
挨拶をしてくれた顔馴染みの女生徒──犬っぽいので、俺は犬子と呼んでる──が、俺の顔を見て青ざめていた。
「急に生理が来たんだ」
「んなわけあるかっ! 仮にそうだとしても、顔から出ないっ!」
ぽんぽんっと俺に突っ込みをいれるかなみ嬢。
「ほ、保健室、保健室行かないと……」
「あ」
青ざめた顔で犬子は俺の手を取り、廊下へ連れ出した。
「犬子、なんだか俺よりお前の方が顔色が悪いように思えるが」
「血、苦手なんだ……」
苦手なのにわざわざ付き添ってくれるなんて、犬子はいい奴だな。
「犬の忠誠心が発揮されたか。伊達や酔狂で犬っぽいわけじゃないんだな」
「……別府くんが私のこと犬子犬子って言うから、みんなも私のこと本名じゃなく、犬子って呼ぶようになったんだよ?」
「そう感謝するな」
「一ミリたりともしてないのに……」
「……で、なんでお前も着いて来たんだ、かなみ?」
俺たちの一歩後ろを、なんだか気まずそうな顔をして着いてくるかなみに問いかける。
「え、えーっとぉ……ほ、ほら犬ちゃんだけじゃ危ないじゃない? いつアンタに襲われるか分かんないし」
「別府くん、私を襲うの……?」
「……ふむ。犬子の乳は平均的な女子より割と大きい。よって俺の攻略対象とは成り得ない。だがしかし、ここに甲斐甲斐しい女性的な性格が加味されることにより、その範囲は俺の攻略対象に入ってくる。故に犬子が俺に襲われる可能性はそこそこある。あと、髪型が犬っぽいのもかなりの魅力だ。ワンとか鳴け」
「しっかり考えた上での結論がそれか、この馬鹿っ!」
熟考した答えを言ったのに、かなみに蹴られた。
「か、かなみちゃん、別府くん怪我してるんだから、蹴ったりしたらダメだよぉ」
「うっさい! いーのよこんな奴! あーもう腹立つ! 何が攻略対象よ! 貧乳大好きって言ってたじゃないこの馬鹿!」
「貧乳大好き……? 何の話、かなみちゃん?」
「え? え、えっと、ち、違うのよ、犬ちゃん」
「うん?」
「なんでもいいが、そろそろ保健室に連れて行ってはくれまいか、お嬢さん方」
「わわっ、別府くんが倒れてる! わわわっ、顔色がとっても悪いよ! 保健室保健室っ!」
「ちょ、ちょっとアンタ、死ぬんじゃないわよ! 死んだら一生恨むからねっ!」
気がついたらベッドの上でした。
「気づいたか、別府」
体を起こしてきょろきょろしてたら、その様子に気づいたのか、何か書き物をしていた先生が声をかけてきた。
「あー……ここは? 保健室?」
「そうだ。まったく、何をどうやったら血まみれになれる。あまり私の仕事を増やすな」
頭に手をやると、包帯がグルグル巻かれていた。
「目が覚めたのなら教室へ戻れ。ここは休憩所ではない」
そう言って、先生は机に向き直った。
「はぁ……どうもありがとうございました?」
「なぜ疑問系だ。……ああ、そうだ。犬子と椎水に礼を言っておくんだな。あの二人、休み時間ごとにお前の様子を見に来ていたぞ。ついさっきもここにいたんだがな」
「え……」
なんとなく犬子は心配してそうだなあと思ったが、まさかかなみまで見舞いに来てたとは……。
「で、どっちが本命だ、色男?」
「まあどっちかと言うと、醤油かな」
「何の話だッ!?」
過剰に驚いてる先生にお礼を言って、保健室を出る。
礼、礼なあ……包帯取って頭から血を噴出させて水芸……いかん、それでは死んでしまう。
そんなことを思いながら廊下を歩いてたら、腹が鳴った。時計を見ると、もう昼だった。
そりゃ腹も鳴るなと思いつつ教室に入ると、俺の姿を確認した犬子が駆け寄ってきた。
「別府くん、もう大丈夫なの?」
「ん。見舞いに来てくれたらしいな。心配させて悪かったな、犬子」
感謝の意を示すため、犬子の頭をなでなでする。
「わ、わふ……」
犬子はちょっと恥ずかしそうに頬を染めた。だがそれ以上に気になることが。
「やっぱり犬っぽい」
「い、犬じゃないもん!」
「まあ犬談義はどうでもいい。おい、そこの興味ないフリしてるの」
「な、なんのことかしら?」
犬子の真後ろに立ち、偶然通りましたよーという顔をしてるかなみに話しかける。
「おまえにも一応感謝をな。まあ、俺が保健室に担ぎこまれた原因を考えると感謝するのも難しいが、それでも一応な」
「い、一応って何よ! そもそもアンタが変なこと言わなけりゃ済む話でしょうが!」
「そんなことはできない!」
「……まあ、アンタはそうよね」
理解されてるのに、どうしてだか悲しいよ。
「と、とにかく! あんなのでイチイチ気を失わないでよね! まったく、ひ弱なんだから」
血まみれで失神しない奴がいたらお目にかかりたい、とか思ってたら、犬子が耳打ちしてきた。
「……あんなこと言ってるけどね、別府くん。別府くんが気を失った時、かなみちゃんすっごく心配してたよ?」
「え、マジで?」
「うんうん、まじまじ♪」
「……ちょっと。アンタら近すぎじゃない?」
ひそひそ話をしてたら、かなみがジト目で犬子と俺を見る。
「犬子の珍しい犬耳を近くで見せてもらったんだ」
「こっ、これは犬耳じゃなくて髪型だよっ!?」
変な耳だなあ。
「まあとにかく二人とも感謝だ」
「わふっ」
最後に犬子の頭をひとなでして自分の席に戻ろうとしたら、かなみが俺の服の裾を引っ張っていることに気がついた。
「動けませんが」
「……なんであたしにはなでないのよ」
「え、だってお前は、その、……怒るじゃん」
「怒るけど! 怒るけど、……犬ちゃんばっかり、ずるいじゃない」
「う」
拗ねたように視線を逸らすかなみに、ちょっとクラクラ。
「……何よ」
ちょっと口を尖らせてるかなみの耳元に、口を寄せる。
「……帰ったら、いっぱいぎゅーってして、なでなでしてやるから。な?」
途端、かなみの顔が火がついたように赤くなった。
「ま、まあ、そういうことならいいわ。……覚悟しておきなさいよ!」
顔を真っ赤にしたまま、かなみは自分の席に戻っていった。
「……何を言ったの?」
「秘密」
「ぶー」
不満顔の犬子を置いて、俺は自分の席に戻るのだった。
で、その夜。
「かなみさん」
「な、なによ」
「邪魔なのですが」
「う、うっさいわねー。アンタがいっぱいぎゅーってするって言ったんでしょうが! 全然足りないわよ!」
「しかし、頭が邪魔でテレビが見れないのですが」
かなみを後ろから抱っこしている状態なので、かなみ頭が俺の視界を遮りテレビからは音だけをお届けしております。
「うっさいわねー、アンタはあたしだけを見てればいいのよ!」
「…………」
「か、顔を赤くするなっ、ばかっ! そ、そういう意味で言ったんじゃないわよ、ばかばかばかっ!」
俺の膝の上でじたじたするかなみたんでした。
【犬子 クリスマス小ネタ】
2010年02月06日
「クリスマスだよ、彰人くん!」
「まだ早いと思うますが。それで犬子、何故にサンタの格好を?」
「えへへ。あのね、ちょっと早いクリスマスプレゼントだよ?」
「ほう、それは楽しみだ。ただ、『私がプレゼントー♪』とかだと殺す」
犬子が震えだした。
「あ、あ、あのね。ちょ、ちょーっとだけ待っててくれる?」
「断る。さあ、早くプレゼントを渡せ」
「え、ええと、ええとね、その、あのね?」
犬子の目がぐるぐるしだした。
「何だろうなあ。きっと犬子のことだ、俺が想像もつかない、かつ、もらって嬉しくて嬉しくて仕方がないものに違いない!」
「……彰人くん、分かってて言ってるでしょ?」
「うん」
「……彰人くんのいぢわる」
「犬子が拗ねた。その名に恥じぬ犬耳もしっぽもやる気なさげだ」
「しっぽも犬耳もないよっ!」
「や、しっぽはないけど、犬耳はあるじゃん」
「こ、これはそーゆー髪型だよう! 本物じゃないの!」
怪しいものだ。
「うー……そーゆーいぢわるなこと言う人には、プレゼントあげないよ?」
「ほう、くれるのか。それは楽しみだ。ただ、『私がプレゼントー♪』とかだと殺す」
「話がぐるぐるしてるよっ!」
「話だけでなく、お腹もぐるぐるしてる。先ほどお前に盛られた毒が効いてきたようだ」
「盛ってないよ、盛ってないよ!? 彰人くんのためにクッキー焼いただけだよ!」
「プレゼントが毒とは……気が、利いて、やがる……」
ばったり地面に倒れてみる。泡も吹いてみよう。
「彰人くん、彰人くん!? さっきの話だとお腹ぐるぐるだから、毒って下剤!? お薬屋さんで何買ってきたらいいの!? 正露丸!?」
「いりません」
人が死んでるのにがくがく揺すってくる犬がいるので、諦めて生き返る。クリスマスプレゼントが正露丸って何の罰ゲームだ。
「だよね。……あのね、改めてクリスマスプレゼント。……受け取ってくれる?」
犬子は自分の髪にリボンを縛り、恥ずかしげにはにかんだ。
「よし分かった、殺す」
「その話はもういいのっ! ……は、恥ずかしいんだから、とっとと受け取ってよ」
とててててーっと俺の元へ駆け寄ると、犬子は自分から俺の胸に抱きついてきた。
「えへへへへっ♪」
「サインは印鑑? 拇印でもいいか?」
「ムードぶち壊しだよっ! 彰人くん、ムードクラッシャーだよ……」
「まあそう悲しむな。その内いいことあるさ」
「ものすっごく適当だよう……」
ちょっぴりしょげてる犬子の頭をなでなでなで。
「……えへ。あのね、早速いいことあったよ。彰人くんになでられちった」
「安い良いことだなあ。一山100円程度のなでなででよければ、いくらでもしてやろう」
1000円ぶんくらいなでなでする。
「わふわふ、きゅーきゅー♪」
すると、犬子が実に犬っぽくなったので犬属性の俺としては大変喜ばしい。
「えへ、あのね、あのね、……私ね、幸せだよう♪」
「俺は腕がだるくなった。もういい?」
「ダメー。ふぁいとだよう♪」
勝手なことを言いながら俺に抱きつき、すりすりしまくる犬子だった。
「まだ早いと思うますが。それで犬子、何故にサンタの格好を?」
「えへへ。あのね、ちょっと早いクリスマスプレゼントだよ?」
「ほう、それは楽しみだ。ただ、『私がプレゼントー♪』とかだと殺す」
犬子が震えだした。
「あ、あ、あのね。ちょ、ちょーっとだけ待っててくれる?」
「断る。さあ、早くプレゼントを渡せ」
「え、ええと、ええとね、その、あのね?」
犬子の目がぐるぐるしだした。
「何だろうなあ。きっと犬子のことだ、俺が想像もつかない、かつ、もらって嬉しくて嬉しくて仕方がないものに違いない!」
「……彰人くん、分かってて言ってるでしょ?」
「うん」
「……彰人くんのいぢわる」
「犬子が拗ねた。その名に恥じぬ犬耳もしっぽもやる気なさげだ」
「しっぽも犬耳もないよっ!」
「や、しっぽはないけど、犬耳はあるじゃん」
「こ、これはそーゆー髪型だよう! 本物じゃないの!」
怪しいものだ。
「うー……そーゆーいぢわるなこと言う人には、プレゼントあげないよ?」
「ほう、くれるのか。それは楽しみだ。ただ、『私がプレゼントー♪』とかだと殺す」
「話がぐるぐるしてるよっ!」
「話だけでなく、お腹もぐるぐるしてる。先ほどお前に盛られた毒が効いてきたようだ」
「盛ってないよ、盛ってないよ!? 彰人くんのためにクッキー焼いただけだよ!」
「プレゼントが毒とは……気が、利いて、やがる……」
ばったり地面に倒れてみる。泡も吹いてみよう。
「彰人くん、彰人くん!? さっきの話だとお腹ぐるぐるだから、毒って下剤!? お薬屋さんで何買ってきたらいいの!? 正露丸!?」
「いりません」
人が死んでるのにがくがく揺すってくる犬がいるので、諦めて生き返る。クリスマスプレゼントが正露丸って何の罰ゲームだ。
「だよね。……あのね、改めてクリスマスプレゼント。……受け取ってくれる?」
犬子は自分の髪にリボンを縛り、恥ずかしげにはにかんだ。
「よし分かった、殺す」
「その話はもういいのっ! ……は、恥ずかしいんだから、とっとと受け取ってよ」
とててててーっと俺の元へ駆け寄ると、犬子は自分から俺の胸に抱きついてきた。
「えへへへへっ♪」
「サインは印鑑? 拇印でもいいか?」
「ムードぶち壊しだよっ! 彰人くん、ムードクラッシャーだよ……」
「まあそう悲しむな。その内いいことあるさ」
「ものすっごく適当だよう……」
ちょっぴりしょげてる犬子の頭をなでなでなで。
「……えへ。あのね、早速いいことあったよ。彰人くんになでられちった」
「安い良いことだなあ。一山100円程度のなでなででよければ、いくらでもしてやろう」
1000円ぶんくらいなでなでする。
「わふわふ、きゅーきゅー♪」
すると、犬子が実に犬っぽくなったので犬属性の俺としては大変喜ばしい。
「えへ、あのね、あのね、……私ね、幸せだよう♪」
「俺は腕がだるくなった。もういい?」
「ダメー。ふぁいとだよう♪」
勝手なことを言いながら俺に抱きつき、すりすりしまくる犬子だった。


