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2026年03月19日
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【ラブちなみん】

2010年03月14日
 色々ありまして、ちなみと恋仲になりました。脳の血管が数本切れそうなほど、ちなみが愛しい。
「……でも、みんなには秘密。秘密のある女性……大人って感じ。……これで子供とか言われない予感」
「ばか」
「むっ。……ばかじゃない」
 そういう訳の分からん理由で、みんなには秘密らしい。
「秘密ということは、手を繋ぐのも、ほっぺぷにぷにも、頭なでなでも、抱っこも不可?」
「……不可。……まったく、タカシはすぐベタベタしようとする。……まったく、やれやれだぜー」
「むぅ……け、けど、誰も見てなけりゃいいんだよな?」
「……まぁ、タカシがどうしてもと言うなら」
「いや、どうしてもしたい訳では」
「…………」
「どうしてもイチャイチャしたいです」
 ものすごく不満そうな目で見られたので、こちらから折れる。
「……ふぅ、やれやれ。……仕方ないので、誰も見てないならイチャイチャしてもいい。……まったく、タカシは甘えん坊だ」
 言葉の上では不満そうにしながら、ちなみは口元を緩ませた。
「……じゃ、じゃあ早速なでなで、する……?」
 期待を込めた視線を向けられる。なでなですれ、と目が訴えている。ここにどうぞ、と頭が俺に向けられる。
「いや、今は別に」
「…………」
「常になでなでしないと発狂するんだ。なでずにはいられないんだ!」
 ものすごーく不満そうな目で見られたので、ぎゅっと抱きしめてからちなみの頭をなでなでする。……まったく、天邪鬼もほどほどにしないとダメだぞ、俺。
「は、はぅ……」
 頬を染めながら、ちなみは恍惚とした声を上げた。
「なんで頭なでられただけでそんな声が?」
「……う、うるさい。いーから、もっとなでなで」
 そうしてずっとなでなでした翌日、ちなみと一緒に学校へ向かう。
「……いい、秘密だからね」
「まぁいいんだけど……俺の彼女はこんな可愛いんだって自慢したかったな」
「あ、あぅ……。と、とにかく、秘密を破ったら、なでなで禁止」
「む……し、しかし、それはお前も辛いんじゃ?」
「う……え、えと、……ええと、とにかく、秘密だから。……約束」
 秘密を破っても特に罰則はないらしい。とはいえ、可愛い恋人の頼みを断るほど野暮じゃない。
「んー……了解。じゃ、学校では今まで通りタダの友達ということで」
「ん」
 満足したように頷くちなみと一緒に教室に入る。
 さて、どこまで我慢できるか分からんけど、約束は約束だ。今まで通り友達として振る舞おう。

 ちなみの手を握ったり抱きしめたり頭なでなでしたり等、ラブい行為をしたくなる欲望と戦っていると昼休みになっていた。無駄に疲れた。
「……ちょっと、来て」
 机に頭を乗せてぐったりとしてると、ちなみが俺を呼んだ。
「ん、なんか用か?」
「……いーから」
 いつになく強引に俺の手を引っ張り、ちなみは教室を出た。
「あ、あの、ちなみ? 一体どこに?」
「えーと……あ、ここなら大丈夫かな」
 ちなみは使われていない空き教室を見つけると、ずかずかと中に入って行った。手を繋がれているので、俺も一緒に入る。
「一体なんの……用、で……」
 教室に入ってドアを閉めるなり、ちなみがぎゅっと抱きついてきた。
「ち、ちなみ?」
「…………」
「お前な、学校じゃ友達のフリって……」
「……ここじゃ、誰も見てないもん」
「いや、いつ誰がやってくるか分からんし、な?」
 現に教室の壁ひとつ挟んで、生徒たちの声がここまで届いてくる。何かのはずみで誰かやってきてもおかしくないだろう。
「……我慢、できなかったんだもん」
「はい?」
「……だって、タカシとくっつきたかったんだもん。……帰るまで我慢、できないもん」
 そう言って、ちなみはふにふにと自分の顔を俺の胸にこすりつけた。
「あ、お、俺も……」
 思わず抱きしめそうになるが、ぐっと我慢。どんな些細なことでも、約束は約束だ。
「でも、学校いるときは友達のフリすんだろ? ほら、離れて離れて」
「ヤ」
「ヤ、って……子供か」
「……子供でいいもん。……いっしょにいたいもん」
 困った。すがりつくように俺に抱きつくちなみに、俺の心は陥落寸前です。あとちょっとで堕ちる。
「……はぁ。秘密のある大人な女性になるんじゃないのか?」
「……いいもん。タカシにぎゅってしてもらえないなら、子供でいいもん」
 大人どころか、幼児あたりまで退行しているようなちなみの言動に、もうにやけるのを止められなかった。
「甘えん坊とか言ってたの、誰だっけ?」
「……タカシはいじわるだ。……でも、そんなとこも……嫌いじゃない」
「……んー、まぁ嫌いじゃないでもいいんだけど、たまにゃ好きって言わない?」
「……別に、タカシなんて好きじゃないもん。……嫌いじゃないだけだもん」
 そう言って、ちなみはぎゅっと俺を抱きしめた。
「……なでなでも、嫌いじゃない」
「あー、はいはい」
 催促されたので、優しくちなみの頭をなでる。
「♪♪♪」
 ちなみはとても嬉しそうに目を細めた。
「さって、満足したらぼちぼち飯食いに行こうぜ。腹減った」
「……まだ。全然満足してない」
「え、でもあんまり時間ないし」
「……もっと、なでなで」
 飯とちなみ、天秤にかけてどっちに傾くかなんて考えるまでもない。俺はちなみの頭をなでなでした。……ま、あとちょっとなでたら満足するだろう。
 ──なんて考えながらちなみの頭をなでてたら、5限目のチャイムが鳴ったので驚いた。情けない音を出す腹を抱えながら、ちなみと一緒に教室に戻る。
「……お腹へった」
「俺も……」
「……タカシのせいだ。……私をお腹ペコペコにするだなんて……許しがたい行為」
「いやいや、ちなみがなでなでしてくれって……あ、いや、なんでもない。俺が悪かったです」
 むーっという感じの目で睨まれたので黙る。……まぁ、俺も楽しかったしいいか。

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【罰ゲームとしてツンデレを無視してみた】

2010年03月14日
 友人と賭けポーカーをしたら、盛大に負けた。
「じゃ別府、1万な」
「賭け事はよくないよ?」
「お前からもちかけたんだろーが! 今月金ないから一気に手に入れるって!」
「俺の目は明日しか見てないんだ。だから過去のことに興味はないんだ」
「いーから金。1万」
「……貸しにしといてくれ」
「ダメだ。……そうだな、罰ゲームしたらチャラにしてもいいぞ?」
 詳しく話を聞くと、明日一日ちなみを無視しろという罰らしい。無視できなければ、倍額の2万を払う、というルールとか。
「……別にいいけど、そんなのでいいのか? 簡単だぞ?」
「いいからいいから。とにかく、明日は無視しろよ」
 と、いうわけで、翌日。教室に入ると、いつもの定位置(俺の隣の席)にちなみが座っている姿が視界に入った。
「……おはよう、タカシ」
 いつものように挨拶を返そうとして、罰ゲームを思い出し無視する。
「……無視をするとは何事ですか。これこれ」
 立ち上がり、ちなみは背伸びをして俺のほっぺをぎうぎう引っ張った。
「おはよっす、別府」
「うい、はよーん」
 友人が登校してきたので挨拶する。
「……私だけ、無視? ……ふ、ふふ、いい度胸です。……目に物を見せてやります」
 ちなみの薄ら寒くなるようなつぶやきが耳に届いた。

 一時間目が終わり、休み時間になった。授業中、ちなみが隣から俺をずっと見ていたので落ち着けやしない。なんだか便所行きたくなってきた。
「……タカシ、どこに行くんですか?」
 思わず答えそうになって、慌てて口を閉じる。危ない危ない。
「……むぅ」
「あらタカシ、どこ行くの?」
「便所。一緒に行くか?」
「行くかっ!」
 かなみに声をかけられたので、軽口で応える。
「…………」
 なんだかちなみが悲しそうに俺の方を見ているような気がするけど……気のせいか。それより便所便所。
「あー……まだ始まったばっかってのに、きちーなあ」
「んじゃやめるか?」
 膀胱の中を空にしてると、いつの間にか昨日の友人が隣に来ていた。
「冗談。これで借金がチャラになるなら、やめるわけねーっての」
「ま、オレとしてもやめてほしくないんだけどな。こんな面白い見世物、そうそうないからな」
「趣味悪いな、お前……」
「いやいや、オレほど趣味がいい奴いないぞ?」
「言ってろ」
 友人を置いて教室に戻ると、ちなみが俺の席に座っていた。
「……ふふ、これぞ必殺“どいてもらうには私を無視することは不可能”の術。……恐ろしい、私の溢れんばかりの才能が恐ろしいです」
 馬鹿言ってる馬鹿はほっといて、さてどうしよう。確かにちなみの言う通り、どいてもらうには無視できない……あ、いや、できるな。
「よいっしょっと」
 ちなみの膝の上に体重を乗せないように座る、というか腰を軽く乗せる。これなら無視した上で座ることも可能。
「うわ、うわうわ、……むむむ、私の上に座り、その上で無視するとは小癪です。生意気です」
 などとやってると、チャイムが鳴った。前の扉が開き、教師が入ってきた。
「あー、華丹路。自分の席に座れ。別府、華丹路に座るな」
 華丹路とはちなみの苗字であり、かにみちと読み、変な苗字。
「……ここが私の席です」
「俺はいつも通りです。何にも座ってません。強いて言うなら空気に座ってますが、それは全ての生徒に言えることであり」
「二人とも、後で職員室来い」
 二時間目の後(根性でずっと空気椅子状態のままちなみの上に座り、授業受けた。足ガクガク)、教師にしぼられてから職員室を出る。
「……タカシのせいで私まで怒られました。……輝かしい私の軌跡に傷跡をつけるとは生意気です。えいえい」
 朝のように背伸びをしながら俺のほっぺをひっぱるちなみをそのまま放って、教室に戻る。無表情に頬を引っ張られる俺を見て、みんな驚いていた。
 そして3時間目、4時間目は特に何も起きないまま、昼休みになった。いつもはちなみと一緒に飯を食うのだけど、今日は別。
「……タカシ、今日のお弁当は玉子焼きです」
 中庭にでも行こうかと準備してると、そんな声が耳に届いた。玉子焼きは俺の大好物であり、普段は俺の菓子パンとトレードするのだけど、今日は我慢。
「……偶然にも、今日は私が焼いてきました」
 ちなみが作る玉子焼きは絶品であり、垂涎の品であり、俺の大好物だ。普段なら手に入れるためには土下座も辞さないが、今日は、今日だけはダメだ。1万……いや、2万がかかっているんだ!
「き、今日はいい天気だなー。たまには外で食うかあ」
 心の中でこんな罰ゲームを仕組んだ友人を毒づきながら、教室を出る。
「……たまには外もいいです」
 どういうことか、ちなみがついてきた。二人並んで木陰に座り、一緒に食事する。……と言っても、無視しないといけないので黙って食うだけなんだけど。
 ……いや、今なら友人も教室だろうし、喋っても大丈夫か?
「ちな……」
 口を開いた瞬間、物陰から友人がこっちを監視してるのに気づいた。慌てて口を閉じ、そっぽを向く。
「な、なに? なに?」
 ちなみが嬉しそうに何度も聞き返すが、答えることはできない。
「……もぐもぐ」
 しばらく訊ねた後、無駄と気づいたのか、ちなみは悲しそうに弁当を口にした。なんだか知らないが、ものすごく友人に腹が立つ。そして、それ以上に自分に腹が立つ。
「……けぷ。……お腹、いっぱいです。……ちょっと、残っちゃいました」
 見ると、ちなみの弁当箱に俺の大好物である玉子焼きが残っていた。
「……なんだか、眠くなってきました。……少し寝ます。……寝てる間に、玉子焼きを誰かに取られちゃうかもしれないけど、眠気には勝てません」
 そう言って、ちなみは目を閉じた。……これは、俺にくれるってことか?
 心の中でちなみに感謝しながら、玉子焼きをほうばる。
「うわ、うまっ」
 思わず漏れ出た声に、ちなみの口元が緩んだ。
「……下剤満載」
「げほっげほっげほっ!」
「……嘘。……ふふ、だーまさーれたー。ばーか」
 今すごくちなみにチョップしたいです。
「さっきのセキはむせたからであり、幻聴のせいではない、と唐突に言いたくなった」
「……無理がある、という寝言。……けど、タカシ程度の知能では仕方ない、という寝言。……ぐーぐー」
 今すごくちなみの頬を引っ張りたいです。

 昼休みも終わり、5時間目も終わった。残る6時間目をこなせば、今日はもうちなみに会うこともない。作戦成功だ!
「結構粘るな。とっとと諦めたらいいのに」
 一人静かに笑ってると、ちなみと何か喋ってた友人が寄ってきた。
「ふふ、これは俺の勝ちだな」
「さて、どうかな?」
 含み笑いをする友人に対抗し、俺も含み笑い。大変不気味な二重奏のできあがり。
「お前ら、笑ってないで早く着替えろ。施錠できないだろ」
 日直にせっつかれたので体操着に着替えて校庭に出たことから分かるように6時間目は体育であり、男女は別であり、これはもう勝利は確実だ。
「ゲッツ!」
「うわ、古っ! 死ね!」
 通りすがりの知らない人にひどい罵声を浴びせられたが、納得できるので特に恨まない。
 今日の体育はサッカー。手を使ってはいけない、ぐらいしかルールを知らないのでキーパー役だ。
「別府、いったぞ!」
「任せろ!」
 飛んできたボールを、がっちり受け止める。
「馬鹿、キーパーは手を使っていいんだよ!」
「手袋渡されたし、変とは思ってたんだ」
 両足で挟んだボールを地面に落として蹴っ飛ばしてると、なんだか体育館の方が騒がしいのに気がついた。
 なんだろうと思ってると、女生徒が二人出てきて……あれ?
「……ちなみ?」
 生徒の片割れは、ちなみのようだった。なんだかぐったりしていて、今にも倒れそうな……。
 気がつくと、俺はちなみの元に駆け出していた。
「おい別府、キーパーがサボんなあ!」
「急な腹痛でお休み!」
「全力疾走してるだろうがあ!」
 友人と会話を交わしてる間にも、俺とちなみの距離はどんどん近づいていく。
 ええい、なんで俺走ってんだ。どーせ貧血か何かだ、もう一人の生徒に任してりゃいいだろ。ここまで頑張ってきたのに、なんだってふいにしようとしてんだ。
「はぁはぁ……き、キミ、ちなみの奴どうしたんだ?」
「あ、別府君。ちなみ、急に倒れて……たぶん、貧血だと思うけど……」
 ほら見ろ、大したことない。さ、今なら何とでも言いくるめて罰ゲームを続けられる。早く戻ろう。
「あ、あの! 俺が連れて行くよ」
 何やってんだ、俺。連れて行くよ、じゃないだろ。
「でも……」
 ほら、女生徒も困ってる。もういい、やめろ。
「……タカシ?」
 ちなみが俺を見た。ああ、もう。
「……だいじょぶ。……へーき。……タカシは早く授業に戻るべき。……私は、なんともないから」
 そんな辛そうな顔で、なんともないわけないだろ。なんで無理して笑ってんだ。
「んきゃっ!?」
 そんな笑顔は見たくないので、ちなみを抱きかかえてとっとと保健室に輸送することにする。
「たた、タカシ!? あ、あの、その」
「うるさい黙れ。俺も恥ずかしいんだ。えっと、キミ」
「……お姫様抱っこ。……いいなぁ」
「キミ? 聞こえてるか?」
「あ、はははいっ! な、なんですか?」
「諸事情により、俺が連れて行く。ごめんな」
「い、いえ、それはいいんですけど……」
 女生徒はちらりと校庭を見た。つられて俺も見……うあ。
「別府殺すー!」
「別府死なすー!」
「別府2万なー!」
 なんか男子諸君が殺気立ってた。あと、2万とか聞こえたけど気のせいだ。
「キミ、悪いが彼らをなだめてくれ」
「えええっ!? むむむ、無理ですよう!」
「じゃ、そゆことで」
「あっ、別府くーん!」
 女生徒に後を任し、ちなみを抱きかかえたまま保健室へ。ちなみの容態を先生に診てもらう。
「こ、これは……」
「せ、先生! いったいちなみに何が!」
「……なんともないわ」
「……はい?」
「極めて健康体。少し成長が遅れてるけど、許容範囲よ」
「ちなみの貧乳はどうでもよくて! 貧血とか、そういうのは?」
「全然。健康よ」
「……どういうことだ、ちなみ?」
「……貧乳って言われた」
 すごんだのに、ちなみは別の箇所でショックを受けていた。
「んなことより、仮病ってどういうことだ?」
「……別に。……ちゃんと、なんともないって言った」
 ……あー、言ってたような。けど、それは強がりと思ったんだけど。
「……私が倒れたら、やっぱりタカシは心配した。……タカシの友達が言ってた通りだ」
 そういや5時間目が終わった後、俺の友達がちなみに何か吹き込んでたけど……これか。仮病で俺を心配させる、と。……なるほどな。
「ふふ、タカシは私にめろめろ。……やれやれ、もてる女はこま」
「この馬鹿!」
 保健室を震わすほどの俺の声に、ちなみは目を見開いた。
「なに考えてんだ。どんだけ俺が心配したと思ってんだ。俺を心配させて楽しいのか?」
「ち、ちが……」
「何が違うんだ。もういい、好きなだけここで寝てろ」
 そう言い残して保健室を出……
「…………」
 ようとしたのだけど、ちなみが何も言わずに大粒の涙をこぼし始めたので、動けなくなった。
「……朝から無視、されてたもん。……ずっと、寂しかったもん。……嫌われたと……ひっく、思ったんだもん」
 ぐじぐじと目をこすりながらちなみが吐露する様子に、俺は少なからず衝撃を受けた。
「……ご、ごめんね、ごめんね、タカシ。……だからって、嘘ついて心配させるなんて、ダメだよね」
「……違う」
「……タカシ?」
「悪いのは俺。馬鹿とつまんない約束して、ちなみに悲しい思いさせちった、俺が悪い。ごめんな、ちなみ」
 そっとちなみを抱きしめ、優しく頭をなでる。ちなみは小さく頭を横に振った。
「許してくんない? まあ、確かにひどいことしちゃったからなあ」
「……いっぱい優しくしてくれたら、許す」
「鋭意努力します、お姫様」
「……ぐすっ。私を悲しませた分、いっぱい、いーっぱい優しくしないと、許さない」
「んー……じゃ、とりあえずこんなのはどうだ?」
 むぎゅーっとちなみを抱きしめる。
「は、はぅ……わりと、嫌いじゃない」
「……あー、ここが保健室って覚えてる人いるかなー?」
 保険医の声で現実に戻された。慌てて離れようとしたけど、ちなみが離れない!
「ち、ちなみ、離れろ」
「……嫌。……もう離れない」
「いやー、若いっていーなー。お姉さん、も一回学生時代過ごしたくなってきたよ」
 保険医のからかい半分な言葉を聞きながら、どうにかしてちなみを引き剥がす。
「……ぶー」
「ぶーじゃない。じゃ、俺たち戻ります」
「あいあーい。避妊はしっかりねー」
「そういう関係じゃないっ!」
 俺の言葉に、ちなみが半泣きになった。
「……ぐすっ」
 いや、今すぐにでも全泣きになるやもっ!
「でででも将来的にはその可能性も否定できなくはないようなっ」
「…………」
 泣き止んだ……か?
「……手、繋いでくれたら、許す」
 で。保健室から出て、みんなの所に戻ったのだけど、ちなみが離れてくんなくて。
「別府、ボールいったぞ!」
「任せろ! とうっ!」
「……むぎゅー」
 ちなみが邪魔で動きを制限されているので、ボールがじゃんじゃんネットに突き刺さる。
「なにやってんだ、別府! 何点入れられりゃ気が済むんだ!」
「うっせー! ……こほん。ちなみ、せめて授業中は離れた方がいいんじゃ? ほら、先生も見て……」
「…………」(うるうるうる)
「こんな可愛いちなみと一時でも離れられようか! どんな運命が待ち受けているとしても、俺はもうちなみを離しはしない!」
 我ながらちなみの涙に弱すぎると思った。あと、先生(彼女いない歴=実年齢)がすごい顔してこっち来たので勘弁して。

 放課後、教室でちなみを抱っこしてると友人が俺の元にやってきた。
「おまえの負けだ、別府。ほれ、2万よこせ」
「だーかーら、金はないってずっと言って」
「……はい」
 友人と言い合ってると、俺の膝に乗っていたちなみが財布から1万円札を二枚出した。
「……私が立て替えておく。……恋人の邪魔をすると、馬に蹴られて即死ですよ」
 いつの間にか恋人になっていた。
「ちなみ、別に俺たちゃ恋人じゃ」
「…………」(うるうるうる)
「……恋人デス」
「……それでいいです。むぎゅー」
 むぎゅーと言いながらちなみがむぎゅーと抱きついたのでむぎゅーを返す。
「なんだ、この敗北感は……。し、勝負に勝ったのはオレだからなーっ! バッカヤロー!」
 なんか友人みたいなのが泣きながら出て行ったけど、どうでもいい。
「金入ったらすぐ返すからな、ちなみ」
「……別にいいです。……タカシと一緒にいられるなら、安いもんです。……こんな機会がなければ、こんな関係になるのはずっと先だったと思うのです」
「それはそれ。とはいえ、小遣いだけでは厳しい額だし……バイトでもするかな」
「……するなら、私も一緒にします」
「え、でもお前は別に金に困ってないだろ?」
「……タカシと一緒にいられないことが、私にとって最も困ることです」
「う」
「……タカシ?」
「……あまり、そういうことを真顔で言うな。嬉しくて顔がおかしくなる」
「……だいじょうぶ、いつも通り素敵です」
「おまえ、昨日まで俺のこと変質者とか性犯罪者とか言ってたくせに、すごいな」
「……それはそれ、です」
「なるほど、ね。それはそれ、か」
「……です」
 にっこり笑うちなみと一緒に、日が暮れるまで教室でどうでもいい話をしていた。

拍手[121回]

【くまさんぱんつ対いちごぱんつ】

2010年03月14日
「かなみかなみかなみーっ! パンツ買ってきたぞ! はけ!」
「朝から何の話かっ!」
 登校するなり紙袋を携えながらかなみに突進すると、見事なカウンターパンチを決められたので吹っ飛んだ。
「だから、パンツを買ってきたのでかなみにはいて欲しいという話。さ、はけ」
 むっくら起き上がって紙袋をかなみに突きつける。
「なんでもいいから鼻血拭きなさい、鼻血。だらだら垂れてるわよ」
 乱暴にハンカチで鼻を拭われた。痛い。
「はい、綺麗になったわよ」
「む、感謝。じゃ、はいて」
 スカートを捲り上げてパンツを下ろそうとしたのだけど、スカートを捲り上げた時点ですごい殴られたので断念せざるを得なかった。
「何やってんのよっ!」
「パンツ交換。かなみのはいてるくまさんぱんつを、俺の買ってきたいちごぱんつにチェンジする仕事。時給23円」
 かなみの顔が真っ赤になった。
「大丈夫、かなみが年甲斐なくくまさんパンツをはいてても、俺は馬鹿にしないぞ! しかし、くまさんの顔が前面に描いてるパンツって珍しいよね」
「忘れなさいっ! 今すぐ忘れなさいっ!」
 かなみは俺の両肩を掴み、前後にぐわんぐわん揺らした。
「……ちくわって何だっけ。新型ドーナツ?」
「何を忘れてんのよ! あたしの……その、アレを忘れなさいって言ってるの!」
「アレ……ああ、かなみのパンツな、パンツ! くまさん柄の! お前いくつ?」
 かなみは俺の両肩を掴み、前後左右にぐわんぐわんぐわんぐわん揺らした。
「忘れた? ちなみに、忘れてないと脳に電極刺す」
「忘れました」
 実験動物になるのは勘弁なので、くまさんを忘却することにする。
「かなみがどんなパンツをはいてるのかはさて置き、俺の買ってきたいちごぱんつをはいて欲しい」
「なんでそんなのはかなきゃいけないのよ。絶対イヤよ」
「俺の選んだパンツ、これすなわち俺自身の手と言っても過言ではあるまい。かなみには、いつだって俺の手に包まれていてほしいんだ」
「ちょ、ちょっと、こんなところで何言ってんのよ! ……もう」
 む、満更でもない様子! 押せばなんとかなるかも!
「つまり、かなみちゃんは別府くんの手に包まれていたいと……秘部を!」
「秘部とか言うなっ!」
 勝手な聴衆を一喝するかなみ。
「そうだ。俺が包みたいのは秘部だけでなく、尻も包みたいぞ。あ、無論乳も包みたいです。というか揉みたい」
「いらんこと言うなっ!」
 怒られた。
「まったく……これ以上放っておいたらまたいらんこと言いそうだし……分かったわ。受け取ってあげるわよ」
「よし! じゃ、早速」
 スカートを捲り上げてパンツを下ろそうとしたのだけど、スカートを捲り上げた時点ですごい殴られたので断念せざるを得なかった。
「だから、なんでスカートまくるのよ、アンタは! 普通にそのパンツ渡せばいいだけじゃないの!」
「いや、そうした場合どさくさに紛れてかなみのパンツを拝めないし」
「アンタは本当に一度死んだほうがいいわねっ!」
「おはよ……うわわ、かなみちゃんが必殺、ネックハンギングツリーを別府くんに! 登校するなり殺人事件見ちゃったよ! ラッキーなのかな?」
 楽しそうなクラスメイトの声を聞きながら、意識混濁。

拍手[13回]

【強化人間ちな姉】

2010年03月14日
「……タカくん、タカくん」
 にやにや笑いながらちなねえが近寄ってきたので、デコピンしてやった。
「うぅ~……タカくんがお姉ちゃんをいじめる」
「いや、なんかヤな予感がしたんでつい。悪気はないんだ」
「……悪気がなくても、女の子にデコピンなんかしたらダメですよ?」
「……ちなねえ、20超えてるのに自分を女の子と呼ぶのか」
 ちなねえの眉毛が不機嫌そうな八の字になった。いや、まぁ見た目は中学生みたいだけど、流石に女の子は厳しいし。
 ともあれ、ほっとくと飯作ってくれなくなるので、機嫌を直そう。
「そ、それでどうしたんだ、ちなねえ?」
「…………」(大人気なくも、ほっぺぷくー)
「あっ、アレか? また変な召還獣手に入れたとか? お、俺、見たいな~?」
「……お姉ちゃんをいじめる弟なんて、知りません。ぷいっ、です」
「はぁ……ぷいっと口に出しながら顔を背ける姉の機嫌が悪くて困る」
「……なんか、馬鹿にされてます」
「気のせいだって。だから、ほら、なんか用あるんだろ?」
「……強化」
「は?」
「……お姉ちゃんは、強化人間になりました」
 なんだか拗ねたように言うちなねえ。
「はぁ。強化人間、ですか」
「……また、馬鹿にされてます。……近頃のタカくんは、お姉ちゃんを馬鹿にするので悲しいです」
「や、馬鹿になんてしてない。ただ、ついていけないだけで」
「……弟は、姉についていかなければならないんですよ? ほら、この本にも書いてあります」
 そう言ってちなねえは懐を探り、変な本を俺に差し出した。……月刊お姉ちゃん?
「また読者が極めて限られてるような本を……ちょっと貸してみ」
「あっ……」
 それなりの厚さの本をぱらぱらとめくると、弟を振り向かせる方法、弟が喜ぶ食事100選、弟の電話を盗聴する方法、弟に彼女が出来たときの彼女討伐術……
「よっ、読んだらダメです」
 ちなねえに無理矢理奪われた。大事そうに懐に仕舞ってる。
「……犯罪系の本?」
「……趣味の本、です」
 こんな本が流通してる辺り、世も末だと思う。
「……そんなのはどうでもいいです。……お姉ちゃんの強化、とくと見てみるべきです」
「はぁ、具体的にどうなりますか?」
「……魅力が1.3倍あっぷ。……大人っぽくなる予感」
 そう言って、ちなねえはばちばちと片目を瞬かせた。
「どした、目にゴミでも入ったか?」
「ち、違うのです。これはその、ウィンクで……」
「はいはい、いーから見せてみ」
 わたわたと両手を前に出すちなねえの目を覗き込む。ぱっと見、ゴミは入ってないようだ。ただ……
「大変だちなねえ、でっけえのが入ってる」
「え、ええっ!? ……どうしましょうタカくん、お姉ちゃんは少し怖いです」
「白いのの中に、黒いのが! わぁっ、黒いのが動いた!」
「……タカくん、それって眼球のこと?」
「さっすがちなねえ、賢いなぁ」
「……弟に翻弄され、お姉ちゃんは悲しいです。……はっ、でもこれは姉を翻弄するほど弟が成長したということでしょうか……?」
「いや、単にちなねえが騙されやすいだけだよ」
「…………」
 ちなねえがいじけた。指で床にのの字を書いてる。
「……タカくんがお姉ちゃんをいじめる」
 ちらちらとこっちを窺い見るちなねえ。……ちょっといじめすぎたか? このままでは晩飯をお預けされてしまうので、もう一度ご機嫌を取ろう。
「ごめんよ、ちなねえ。……ちなねえがあんまり可愛いから、俺、ついいじわるを……」
「っ!! か、可愛いとかは、彼女さんに言うべきです。お姉ちゃんに言う言葉じゃないです。……まったく、タカくんには困ったものです」
 なんて言いながら、ちなねえはニッコニコに笑いながら俺の頭をなでた。……言っといてなんだが、ちなねえ、超簡単。
「……こ、困ったものですが、もう一度言うのもいいかもしれません。……さぁタカくん、りぴーとです」
 目を輝かせて待つちなねえに、俺は困ったものはどっちだと思いながら、さっきの言葉をもう一度繰り返した。

拍手[10回]

【ちなねえにクイズで負けました】

2010年03月13日
 部屋で漫画読んでたら、ノックもなしにちなねえが入ってきた。
「……タカくん、タカくん、お姉ちゃんと一緒にクイズしましょう」
「しない。面倒」
「……タカくん、クイズ……」
「だから、しないって」
「……くいず」(半泣き)
「だーっ! 分かった、分かったから泣くなっ! ちなねえ、いくつだよっ!」
「……にじゅうさんさい」(半泣き)
 23歳の頭をなでて泣き止ませる。
「はぁ……疲れる」
「……お疲れタカくんには、クイズが一番です。……第一問、お姉ちゃんを大好きな生き物は誰?」
 答えは分かるけど、言いたくない。
「アメフラシ」
「……ぶぶー。……答えは、タカくんです。……タカくんはお姉ちゃんが大好きで大好きで、困ったちゃんなのです」
「いや、そんなことは」
「……今日のタカくんの晩御飯は、ごましお」
「ぼく、お姉ちゃん大好きさ!」
 そんなことはないのだけど、口答えすると夕食がごま塩になるので一瞬にしてへりくだる。
「た、タカくんってば、そんな、大好きだなんて……まったく、いつまでも姉離れできない弟ですね」
 ニッコニコに笑いながら、俺の頬をちょこんとつっつくちなねえ。
「では、第二問。……タカくんは、お姉ちゃんと何をしたいでしょう? 一番、お姉ちゃんと一緒にお昼寝。二番、お姉ちゃんと一緒にお風呂。三番、お姉ちゃんと一緒に、……ち、ちゅー。……さあ、どれ?」
「四番、一人で昼寝」
「……三択の中から選んでください」
 そんなこと言われても、その中でしたいことなんてない。つーか、答えが全部やばすぎる。
「えーと、……強いて言うなら、一番?」
 一番無難な答えを選んだら、ちなねえが不満そうな顔をした。
「……正確には全部なのですが、まぁいいです。じゃあ、一緒にお昼寝しましょう」
 素早い動きで窓とカーテンを閉じて部屋の電気を消し、ちなねえが俺の隣に滑り込んだ。
「……一緒にお昼寝したいなんて、タカくんはまだまだ子供ですね」
 両手両足を俺の体に巻きつけ、ちなねえは俺の頬に自分の頬を何度も何度もこすりつけた。
「……んー、タカくん、タカくん」
「俺の名前を連呼してるところ悪いけど、ちなねえ、薄い乳が俺の胸にひっついてる」
「むっ。……薄くないです。……発展途上乳です」
「23歳で発展はしないよ」
 ちなねえの口がタコみたいになった。
「……いじわるな弟です。……一緒に寝てあげませんよ?」
「一度だって頼んでないような」
「……本当にいじわるな弟です。……そんなにごま塩が好きとは、お姉ちゃん知りませんでした」
「ちなねえなしに寝れないんだ。ずっと一緒にいてくれ、ちなねえ」
「っ!! ず、ずっと一緒だなんて……そんな、プロポーズみたいなこと言っちゃダメです。……まったく、そういうことは彼女さんを作ってから言いなさい」
 なんて言いながらも、ものすげー嬉しそうに俺にほおずりするちなねえだった。

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