忍者ブログ

[PR]

2024年04月24日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【ハナ ホワイトデー】

2010年03月12日
 さういえば、そろそろ白くてどろっとしたものをあの子に押し付ける日だ。別名、ホワイトデーだ。
 なんの冗談か知らないが恋人がいる俺なので、当然のようにバレンタインにはちょこれいとを貰った。なので、今度は俺が当然のようにお返しする番だ。
「相談なんだが、いったい何を貰えば女性というのは嬉しいのだろうか」
「……送る女性によりけりだと思います」
 そういったわけで、学校の帰り道、恋人のハナに相談してみたのだけど、どういったことかこの話題になった途端機嫌が悪くなった。
「ついさっきまで嬉しそうに彰人くん彰人くんと言っていたのが夢幻のよう。やはりこれは夢なのか。そうだな、夢と考えれば俺に恋人がいるなんてことも理解できるな。……ははっ、なんだこれ、涙?」
「な、なんだか分からないけど彰人くんがぴんちっぽいです。……こ、恋人の出番です」
 頭を抱えて滂沱していたら、ふんわりと何かに包まれた。ふと顔をあげると、優しいハナの笑顔。
「……だ、だいじょぶです。夢じゃないです。彰人くんのことを大好きな私は、ここにいます」
 ハナは両手で俺の頬を包み、にっこり笑った。
「……よし! 悪夢は消えた! あとついでにハナが可愛いのでちゅーしたい!」
「は、はや……こ、困ります。……い、家の中でならいいです。……で、でも、どしてもしたいなら、恥ずかしいの、我慢します」
 ハナは目をつむって爪先立ちになると、真っ赤な顔で口をとがらせた。悪戯心がむくむく膨らんだので、鼻をそっとつまむ。
「……彰人くん、そこは鼻です。……ちゅーは口に、ですよ?」
 うっすら目を開けると、ハナは少し不満そうに口を尖らせた。
「ハナが道端でキスをせがむ」
「私がしたいって体にされてます!? うう……相変わらず彰人くんの手練手管はすさまじーです。誰しもがめろめろになるのも致し方ないです。……それで」
「うん?」
「……誰に渡すんですか、バレンタインデーのお返し」
「?」
「い、いえ、?じゃなくて。……うう、邪気のない笑顔が素敵すぎです。心臓止まりそうです」
「ハナが死にそうだ!? 医者、医者ーっ!」
「彰人くんが半狂乱で医者を!? ま、待ってください、へーき、へーきですっ!」

 ややあって平静を取り戻した俺は、近所の公園に連れて行かれた。ベンチに腰掛け、自販機で買ったコーヒーのプルタブを押し開け、一気に飲み干す。
「ふー。落ち着いた」
「まったく……彰人くんは心配性です。そんなすぐ死にません」
「いやあ、気がついたら体が勝手に動いてた。はっはっは」
「あ、あぅ……」
「赤くなる話ではないと思いましたが」
「相変わらずの天然ジゴロです。今日も私は彰人くんにくらくらです」
 ハナは俺の胸に頭を押し当て、大きく息を吸い込んだ。
「……ふー。あの、思い切って聞きます」
「うん?」
 ハナは俺に抱きついたまま、顔だけ上げて問いかけた。
「……浮気、してますか?」
「え? いや、こんな可愛い生き物が俺の一番大切な人になっているというのに、どうしてそんなことをする必要が」
「お、おだててもダメです。証拠はあがってるんです」
 ハナはタコみたいに真っ赤になりながら俺に指を突きつけた。
「さっき、バレンタインデーのお返しに何を送ったらいいか聞かれました。これは間違いなく誰かにチョコレートを貰い、さらにはホワイトデーにお返しするつもりです。しょーめーしゅーりょーです」
「はぁ」
「……気のない返事でがっかりです」
「いや、だって、ハナに渡すものはハナに聞くのが一番かなーっと思って聞いただけだし」
「……私に?」
「いえす。ていうかだな、俺を見くびるな、ハナ。どうしてお前以外の女性にチョコを貰ったと思えるのか。はばかりながらこの符長彰人、今までの人生で貰ったチョコレートはお前以外、皆無っ!!!」
「か……かっこよすぎなぽーずです。心臓、ばくばくです」
 よく人からはタコが陸上でのたうちまわっていると言われるポーズだったが、ハナには好評だったようだ。
「あ、あの。てことは、ですね。……私の勘違い、ですか?」
「うぃ、まだむ」
「うう……あの、あのあの。……ごめんなさい、です。勝手に先走って勝手に焼き餅妬いたりして。……幻滅しました?」
「うん。もう別れよう」
「あ゛ー……」
「全力泣き!? すいません嘘です冗談です俺が悪かったですハナが大好きです!!!」
 涙も鼻水も垂らしまくりのハナに、こちらも全力で土下座するのだった。

「……ぐすぐす。……あんな冗談、こりごりです。……ちーん」
 俺の土下座力によりなんとか泣き止んだハナにティッシュを渡し、鼻をかませる。
「いや全く。久々に肝を冷やした」
「私の肝も冷えまくりです。冷凍庫でコチコチです」
「いや、よく分からん」
「怒ってるってことです。つーん、です」
 ハナはほっぺを少しだけ膨らませて、明後日の方向を見た。
「ふむ。じゃあ、ホワイトデーのお返しには奮発して機嫌を直さないとな。で、何がいい?」
「……土地」
「俺のハナが物欲に塗れている!!! 畜生、こうなったらサラ金を練り歩くしか!?」
「彰人くんが破滅の道を!? 嘘です嘘です、土地なんていらないです!」
「むぅ。じゃあ、何が欲しい?」
「……あの、なんでもいーですか?」
「やっぱ土地か! どこのサラ金から行けばいい!?」
「違いますっ! ……あの、あのですね? ……ホワイトデーには、一日、ずっと一緒がいーです」
 そう言って、ハナは俺の服の袖をきゅっと握った。
「え? いや、でも今も休日はそうやってるし」
「朝に会って、夕方にはお別れです。……朝から晩まで、ずっとずっと、ずーっと一緒にいたいです。おはようって彰人くんに最初に言って、おやすみって彰人くんに最後に言いたいです」
「う……」
 それはつまりお泊りということであり、俺の理性が試されているのか!?
「ダメ、ですか……?」
「そんな悲しそうな顔をしているハナにどうしてNOと言えようか! ああいいさ、いくらでも一緒にいさせてくださいっ!」
 花が咲いたようなハナの笑顔に、俺はどうやって理性を抑えればいいのか苦悩するのだった。

拍手[23回]

PR

【ハナ 七夕】

2010年01月27日
 この世界には奇跡という代物があるらしく、こんな俺にも彼女ができた。たぶんこれで運尽きた。
「そんなわけで、以後とんでもない災難に遭う事間違いないので、そのバヤイは俺を助けてくれると幸いです」
「はや……わ、分かりました。頑張ります。今日から筋トレします」
 などと一生懸命にコクコクうなずく彼女のハナ。
「ほう、腕立てできるようになったのか! 凄いぞ、ハナ!」
「……ま、まだです」
 やはり心配なので、もし災難に遭ったら自力で頑張ることにした。
「まあそんな戯言はどうでもよくて、ハナさん」
「は、はひ! ……はい、なんですか?」
「噛んだことをなかったことにしたハナに聞くが、七夕ですな」
 そう、今日は七夕なんだ。何日か過ぎてるような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ。ちうことで、うちの庭でハナと一緒に竹につける短冊を書いている。
「そ、そですね。……あ、あの、彰人くんは何をお願いしたんですか?」
「彰人? 誰?」
「……わ、私の大好きな人です」
 軽くボケたら、ハナったら符長彰人たる俺の腕をちょこんとつまんで顔を真っ赤にしてうつむいたりして。そんなの、俺も赤くならざるを得ないじゃないか。
「う、うー……ええい! 照れくさい! たあっ!」
「やあっ、お、おでこ出さないでくださいー!」
 ハナの前髪を両手であげ、おでこ全開にする。ハナは半泣きでじたじたした。
 ハナは普段前髪を下ろしており、おでこはおろか目の半ばまで隠している。なんだか知らないがそこを露出されるのを大変嫌がっており、こうしておでこ丸出しにされると大変恥ずかしがる。
 まあ、あまりやっても仕方ない。手を離すと、ハナはすすーっと離れて髪を整えた。
「うー……恥ずかしいからやめてほしいって言ってるのに。彰人くんのばか。嫌いです。……嘘です。好きです」
 ハナは再びこちらに寄ってきて俺の服の裾をつまみ、前髪の隙間から俺を見つめた。
「いちいち動作が可愛いのは作戦ですか」
「……? よく分かりませんが、もうおでこ出すのダメです。そんなのされたら、彰人くんを嫌いになってしまいます。……嘘です。無理です」
「えい」
「やー! おでこやー!」
 あんまりにも可愛かったので、もう一度おでことこんにちは。
 そのようなことを数回に渡ってやった結果、ようやっと満足した。
「短冊に追加しておきます。『彰人くんが私のおでこに興味をなくしますように』って」
「無理だ」
「即答ですよ……」
 なんかがっかりしてるハナの頭をなでなでしてから、改めて自分の短冊を見る。
「それで、彰人くんはどんなお願いをしたんですか?」
「ハナが俺のことを好きになってくれますようにって」
「……も、もう叶ってます」
 ハナは俺の服の裾をちょこんとつまみ、顔を伏せた。ええい。
「……? 彰人くん、どして鼻を押さえてるんですか?」
「あー、気にしないでもらうと助かる」
「はぁ……よく分からないですけど、分かりました。気にしません」
「うん、助かる。ええと……そうな。それじゃ、人前でもイチャイチャできますようにって短冊に書く」
「……む、無理です。倒れます。でででも、彰人くんがそうしたいなら頑張ります。今日から鍛えます。筋トレします」
「腕立て何回できる?」
「……ぜろ、です」
 可愛く握りこぶしを作ったと思ったら、もう意気消沈して肩を落とした。
「まあ気にするな。筋トレしても羞恥心は消えないだろうし」
「しゅ、しゅーちしーん、しゅーちしーん」
 ハナは数ヶ月前テレビでよく見た振り付けをして俺を固めた。
「……え、えと、ごめんなさい。なんでもないです」
 自分の行為がどういうものだったか俺の反応を見て悟ったのか、ハナは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「……え、あ、えーと。うん。可愛い可愛い」
 どんなリアクションが最適か分からなかったので、とりあえず適当に褒めてハナの頭をくりくりなでる。
「な、なしです。さっきのなしです。短冊に書きます、さっきのなしって」
「じゃあ俺はさっきのを未来永劫記憶に残りますようにって書く」
「あ、彰人くんひどいですあんまりですいじわるです!」
「わはは」
 ひとしきり笑ってから、ハナと一緒に短冊を竹に飾る。
「あ。彰人くん、これ」
「ん? ……うあ」
 ハナが見せてくれたのは、俺が書いた短冊のひとつだった。
「『ハナがいつも幸せでありますように』……ですか?」
「いや、俺には『ハナが巨乳になりますように』って見える」
「……どーせ小さいです。じゃなくて、あの、これ……?」
「や、まあ、そのー、願うだけならタダだし、いいじゃん。そんな掘り下げる話題じゃないからとっとと吊るすべきではなかろうか!」
 奪うようにハナから短冊を取り、竹に取り付ける。くるりと振り返ると、ハナのはにかんだような笑顔が待っていた。
「……一緒、です」
 そう言うハナの手にある短冊には、『彰人くんがずっと幸せでありますように』って──
「は、恥ずかしい奴め。ていうか、自分の幸せ願え、バカ」
「そんなの、私の幸せ願ってる彰人くんに言われたくありません」
 ぐうの音も出ずに突っ立ってる俺の横を通り過ぎ、ハナはさっき俺が吊るした短冊の隣に自分の短冊を吊るした。
「よし……っと。これで、二人一緒にずっと幸せです」
 くるっと振り返り、ハナはその名の通り花のような笑顔を咲かせた。

拍手[27回]

【ハナ 楽器】

2010年01月25日
 恋人のハナと一緒にテレビ見てたら、『どんな楽器を持ってたら一番かっこいいか』というものをやっていた。
「ハナは俺が何を持ってたらかっこいいと思う?」
「な、なんでもかっこいいです……」
 ハナは顔を赤らめながら俺の手をそっと握った。それはとても嬉しいが、話が終わってしまうのでもうちょっと掘り進める。
「じゃあ、俺がどこにでも大太鼓を持ち歩いててもかっこいいか?」
「力持ちで素敵です」
 むぅ。結構厄介だな。
「ええと、じゃあアレだ、テルミン。手をかざすだけでふぉわんふぉわん鳴るぞ? 宇宙人っぽくてダメだろう」
「未来ちっくでかっこよすぎです」
「ぬぅ。……じゃあ、いっそトライアングルとかどうだ? チーンって、辛気臭いぞ?」
「三角形なのでそこにピラミッドパワーが発生し、周囲の人々を次々と健康にするのでかっこいいです」
 楽器関係なくなってきた。そしてそれはかっこいいのか。
「ダメだ、こいつ俺を褒めてばっかだ」
「だ、だって、彰人くんには褒めるところしかないから、仕方ないんです……」
「む。……え、ええい、あまり人を喜ばせるな!」
「や、やー! おでこやー!」
 普段は前髪で覆われているハナのおでこを全開にしてやる符長彰人ですこんにちは。
「む。どうして挨拶になるのだろう」
「い、いーからおでこー!」
「うん? ああ、今日もとても可愛いおでこですよ」
「手ぇ離してくださいー!」
 半泣きになっているので手を離してやる。ハナは素早く俺から離れると、急いで前髪を下ろした。
「うー……彰人くんはいじわるです。普段の彰人くんは大好きですが、私の前髪を上げようとする彰人くんは嫌いです」
「俺はどんなハナでも好きだがな!」
「ず、ずるいです! 本当は私もどんな彰人くんでも好きです! 腐乱死体でも平気です!」
「ハナの愛情が重すぎる」
「あ。思い出しました、死体ごっこしましょう、死体ごっこ」
 そう言うと、ハナは床にごろんと転がった。お腹を上にして寝そべり、こちらの様子をうかがっている。遊んで欲しくて待ってる犬みたい。
「説明しよう! 死体ごっことは俺考案の遊びで、休みの日に二人集まったら部屋で死体の如くごろりと転がるだけの何が面白いんだかっていう遊びである!」
「彰人くんが何もない場所に向かって説明を。……介護、頑張ります」
「頑張らなくていいです」
 ハナに軽くチョップしてから、ハナの近くにごろりと転がる。すると、死体であるはずのハナがもそもそこちらに寄ってきたので、頭を押さえてこれ以上近寄れなくする。
「うー。……彰人くんいじわるです。そっちにいけません」
「しっ、死体が喋ったあああああ!?」
「喋る系なのでしょうがないです」
 そんな系統の死体見たことない、と思ってたら手がお留守になっていたのか、俺の防御をかいくぐり、ハナは俺のお腹にあごを乗せた。
「ふー。……侵略成功、です」
 褒めて欲しそうな顔でこちらをじーっと見ているので、頭をなでてやる。
「んー」
 ハナは目を細ませて、気持ちよさそうに俺になでられている。
「ほふー。……このまま極楽浄土に行きそうです」
「死体が成仏を開始した」
「彰人くんがゴーストスイーパーに」
 お互いなんだこりゃっていう感じの会話を繰り広げてしまう。でも、この空気は、嫌いじゃない。
「……えへ」
 ハナもそう感じたのだろうか、俺を見つめて小さく笑った。
「……いかん。眠まってきた」
「一緒に寝るが吉、と出ました」
「ハナが占者に」
「ごごごごごー」
 戦車違いだ、と思いながら、ごごごご言いながら人の身体の上に乗ってきて、嬉しそうに笑ってる恋人をずっと見てた。

拍手[10回]

« 前のページ | HOME |