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2024年03月29日
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【ゆら姉 登校ちゅー】

2012年02月04日
 ゆら姉と一緒に登校している。のだが。
「あの。なんで手を繋いでいるのでしょうか」
「しっ、しょうがないじゃない! 繋いどかないと、お姉ちゃんを置いて行っちゃうでしょ!」
「いや、一度怒られたら流石に置いて行ったりはしないですが」
「そんなことないもん! アキくん性格が曲がりに曲がりくねりまくってるから、絶対にするの!」
「この姉は弟をちっとも信頼してやがらねえ」
「うるさい!」
 そんなわけで、姉弟仲良くお手々繋いで登校している。もう超恥ずかしい。
「……うへへ」
 しかも時折繋いでる手を見ては姉がニヤニヤしているので、恥ずかしいに加え怖い感情まで覚える。一体何が嬉しいのか。アレか、俺を辱められて嬉しいのか。
「……な、何よ」
 ぼうっとゆら姉を見つめていたら、視線に気づいた姉が少し恥ずかしそうにこちらを見た。
「や、俺の姉だけあって歪んでるなあって」
「ち、違うもん! お姉ちゃん歪んでないもん! まだ姉弟愛のレベルだもん!」
「えっ」
「えっ」
 何やら齟齬が起きたので、俺の思う歪みを伝えたら頬をつねられた。
「お姉ちゃんはそんな酷い性格してないもん! 明らかにアキくんのほうが歪んでるもん!」
「それは否定できない」
「なんか堂々と受け入れた!?」
 なにせ、姉に姉弟愛以上の何かの感情を抱いているもので。……ま、ゆら姉に迷惑はかけられないんで、墓まで持っていくつもりなんですけどね。
「ところで、何が姉弟愛のレベルなんですか?」
「よっ、余計なことは覚えてなくていーのっ!」
「いてえ」
 頬をつねられた。……姉の背が低いので、やりやすいよう少しだけ頭を下げているのはナイショだ。
「……も、もちょっとだけ頭下げて」
 そして一瞬でばれている。姉に隠し事なんてできない様子。
「はいはい」
「ん。……ちゅー」
 どうして姉が俺の頬に吸い付いているのか。(狼狽)
「なななな何をしているのかこの弟に簡潔に説明してはどうだろうか!?」(依然狼狽中)
「ちっ、違うもん! ちゅーしたくなったとかじゃないもん! 思わずアキくんのほっぺつねちゃったから、痛いの痛いの飛んでけーってやってるだけだもん!」(負けずに狼狽中)
「いや、これは明らかにちゅーだと思うのだが」
 あわあわしてる姉を見て一瞬で冷静になったので、素直な感想を言ってみる。
「ど、動物もちゅーで怪我治すし! 一緒だもん!」
「いや、動物はちゅーで治すのではなく、舐める際につく唾液で」
「う、うるさい! お姉ちゃんの言うことが間違ってるって言うの!?」
「お姉ちゃんの言うことは絶対で御座います」
 幼い頃からの英才教育により、弟は姉のいうことには逆らえないようプログラミングされています。これは世間のほぼ全ての弟に備えられた仕様です。
「そ、そうだよ。だ、だから、もちょっとだけちゅーしても大丈夫だもん。まだぜーんぜん姉弟愛のレベルだもん。……だ、だよね?」
「た、たぶん」
 何やら小動物チックなおめめで問われたので、「なんとか致命傷で済んだぜ」と言いそうになるのを必死に堪らえて肯定する。
「そ、そだよね。これくらい普通だよね」
 あまり普通の姉弟は登校中にちゅーしたりしないとは思うが、甘い誘惑に抗う術なんて全力で棄てる俺がそれを口にするはずもなく。
「……ちゅっ。ぺろぺろ。ちゅー。ちゅ」
 またしても柔らかな感触やら舌でぺろぺろされる感触やらを頬に受けているわけで。そりゃにやけもしますよ。
「あっ、アキくんにやけすぎ! ……た、ただのおまじないなのに」
「無茶を言うな! あんだけ舐められりゃにやけますよ!」
「な、舐めてないもん! ちょっと、ちょっとだけぺろぺろーってしただけだもん!」
「それを世間一般では舐めると言うのです!」
「お、お姉ちゃんの辞書にはそんなの書いてないもん!」
「ええい、このナポレオンズめ!」
「ちょっと間違ったせいで手品師になっちゃってるよ!?」
 などと学生たちで賑わう通学路で言い合ってるので、今日も俺とゆら姉のシスコン&ブラコンが世間に浸透しています。

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【ゆら姉】

2012年02月04日
 俺には同い年の姉がいる。
「くー……くー……」
 そう。今まさに俺の隣で寝息を立ててる人物がそれだ。一見すると高校生の俺と同級生とは思えないほど小さな体つきをしているが、残念ながら姉だ。よく一緒にいる時に妹と間違われて機嫌が悪くなるが、それでも姉だ。
 なんで隣で寝てるのか疑問だが、とにかく、起きよう。そう思って体を動かそうとしたが、何かに縛られているかのように動かない。
 ここは名状しがたいバールのようなもので呪縛を断ち切るしかないと思ったが、よく自分の体を観察してみると姉が俺に絡まってるだけだった。
「ん……」
 無理に剥がすのも可哀想だし、さてどうしようかと思念をこねていると、姉の目がゆっくりと開いた。
「おはよ、ゆら姉ーッ!?」
 なんか超なんかちゅーされた。ほ、頬にね、頬に。
「……ぷはっ。えへへーっ、アキくんのちゅー、げっとだぜ!」
「もうなんか色々言いたいことがありすぎて、何から言ったらいいのか俺には」
「さて、次はお待ちかねの口に……ん? 夢の中でもアキくんは言い回しが奇妙だね?」
「ところがどっこい……夢じゃありません……! 現実です……! これが現実……!」
「げんじつ……? ……ふにゃ?」
 ゆら姉は指を自分の頬にあて、小首をかしげた。
「ふぅむ。我が姉ながら可愛いですね」
「……──ッ!!?」
 遅まきながら、目が覚めたようです。

「う゛ー……」
 そんなわけで今日の食卓にはうなる姉がいるので一寸怖い。
「お、お姉ちゃんは別にアキくんとちゅーなんてしたくなかったもん。寝ぼけてただけだから仕方ないもん」
 パンをもぐもぐしながら言い訳がましく姉がつぶやく。
「まあ、頬ちゅーなんて数えきれないくらいされてるから別にいいけど。それよりどうして俺の布団に入っていたのか聞きたい弟なのだが」
「……寒かったから」
 思うところがあるのだろう、ゆら姉は赤い顔をうつむかせながらぽしょぽしょ呟いた。
「いや、寒いからって俺の布団に入らなくても」
「い、いーじゃない! 姉弟なんだし! お姉ちゃんの言うこと聞きなさい!」
「姉弟だからこそ問題があるように思えるのは、俺にクンフーが足りないからなのだろうか」
「そ、そだよ。全然足りないよ。あちょーあちょーあ痛っ」
 デタラメカンフーで手を振り回していたら、背後の戸棚に当たった。
「ああもう。ほら、大丈夫か?」
 ゆら姉のところまで行って、手をなでなでしながら『イタイノイタイノトンデイケ』の呪文を唱える。
「お姉ちゃん、子供じゃないのに……」
「誰もそんなこと言ってないだろーが」
「明らかに子供扱いじゃない。ぶー」
 不満そうに頬を膨らませ、足をぷらぷらさせている様子は子供そのものだったが、それを口にすると機嫌がとんでもないことになるので言えません。
 しばらく手をなでて、もう大丈夫であろうと弟の勘(brother's sence)が告げたので手を離す。
「……もちょっと。手握って」
「握る?」
「──じゃじゃじゃなくて! さすって! さするの! まだ痛いから!」
 よほど強く打ったのか、ゆら姉は顔を真っ赤にしながらそう言った。
「……? まあいいが……大丈夫か? 湿布貼るか?」
「う、ううん、だいじょぶ。もちょっとさすってくれたら治る気がするから」
「はぁ……?」

「んじゃ、いってきまーす♪」
 朝の機嫌の悪さはどこへやら、いつの間にか機嫌が直ってるゆら姉と一緒に家を出る。
「ほら、アキくん。ちゃんといってきますって言わないと」
「誰も家に残ってないのに言ってもしょうがないだろ」
 海外赴任だかなんだかで、我が家の両親は家にいない。空き家にいってきますとか言っても詮無いだろう。
「あのね、いってきますっていうのはね、挨拶の他にどこかに行っても再び帰ってくるって意味もあるんだよ? だから、また無事に帰ってくるよって意味も込めて言わなきゃダメなんだよ?」
「なるほど。ゆら姉は博識だなあ」
「そ、そんな褒めても何も出ないよ。……もうっ、もうっ♪」
 ゆら姉が超ご機嫌体質になった。ニッコニコしながら俺の肩をバンバン叩いてくる。
「痛い痛い」
「もー、お姉ちゃんが賢いとか美人とか結婚したいとかー♪ 弟のくせに何言ってるのよ♪」
 姉がおかしい。まあ、いつものことか。
「さて、と。いってきまーす」
「もー、もー♪ ……って、あっ! こらっ、弟のくせにお姉ちゃんを置いてくな!」
 何やら中学生みたいなのがぷりぷりしながらこちらに走り寄ってくる気配がします。

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