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2024年11月23日
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【暇だからーと言っていつも男の傍にいるツンデレ】

2010年03月10日
 たまの休日なので今日は本屋でエロ本を買い、さらにゲーム屋でエロゲを買い、帰りにメイド喫茶に寄るという素敵プランを立てていたのに、友人のかおるが遊びに来たせいで計画が頓挫した。
「あー……暇だ暇だ暇だ! なータカシ、どっか行こーぜ」
「んむ、それはよい考え。映画にでも行って来い。俺は俺でどっか行くから」
 どうにか計画を遂行しようとそう言ったら、かおるは渋い顔をした。
「一緒に行こうって言ってんだよ! なんでオレ一人で行かなきゃいけないんだよ。寂しい奴だと思われるじゃんか」
「実際寂しい奴じゃん。なんか、お前って気づいたらいっつも俺の側にいるし。俺の他に友達いないのきゃ?」
「いるに決まってるきゃ! お前が友達いねーの! 可哀想だから、優しい優しいオレが一緒にいてあげてんの! ……ったく、オレが学校でどれだけ人気あるのか知らねーのか?」
 かおるは口調こそぶっきらぼうだが人情に篤く、さらにさっぱりとした性格で老若男女問わず、特にお年寄りにも美味しくいただけます。
「む、人物紹介のはずが料理番組に」
「またワケの分かんねーことを……あのなぁ、お前もオレがラブレターもらう所見たことあるだろ? ほれ、だいにんきー」
「主に女性からだいにんきー。ラブレターをもらうその比率たるや、男性1に対し女性なんと9! これはもうレズにレズれと神が申しているのか!?」
「申さねえっ! ……あーもーいい。お前と話してると頭痛くなってくるぜ」
 そう言って、かおるは軽く頭を押さえた。
「頭痛が痛いとな。なら、家に帰って療養すべし。ほれ帰れ帰れ帰れ」
「……なんだよ、そんなにオレが邪魔かよ」
 かおるは軽く口をとがらせ、拗ねたような視線を俺に向けた。
「あ、いや、その、ええと、そーゆーわけではないのだけど、その」
「…………」
 いかん。なんか知んないけど、うつむいちゃってますよ。傷つけましたか? 男っぽいとはいえ、女の子を傷つけちゃいましたか?
「や、違うんです。別におまえが嫌いとかそういうのでなくて、その」
「…………」
 かおるは悲しそうな瞳を俺に向けた。ああもう、こんな悲しそうな顔された上で帰れとか言える精神構造してない俺の負けです。
「分かった。帰れなんて言わない。ここにずっといてもいい。なんならここに住んでもいい。一生俺が養ってやる」
「なんでプロポーズしてんだよっ! ……ったく、馬鹿じゃねーのか」
 言葉が過ぎたけど、呆れたような、でも少し嬉しそうな笑顔を見せてくれたので、作戦は成功といえよう。
 そこで、さらに喜ばせるため、エロゲ屋に連れて行って面白いゲームを勧めたら怒られた。
「あ、感動系より陵辱系の方が好きだった? そっちは疎いからなぁ。勉強不足でお恥ずかしい」
「もっと違うところを恥ずかしやがれっ!」
 エロゲ屋にかおるの声が響き渡ったため、店長に二人して怒られた。怒られてる最中、かおるがずっと俺を睨んでて怖くて泣きそうでした。

拍手[8回]

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【ツンデレが男の食器を洗ってあげたら】

2010年03月10日
 ご飯食べてソファに寝転び、げふー。
「おいタカシ、食べ終わったなら食器を洗え。自分の分は自分でするのが我が家のルールだろうが」
 人が折角げふーを堪能しているというのに、姉がみゃーみゃーうるさい。
「うるさいなあ……後でやるよ」
「姉に向かってその口の利き方はなんだっ!」
「ぼく、すぐやるよ!」
 とても怖かったのですぐさま飛び上がり、食器を洗うべく流し台へ。
「うん? 姉貴、スポンジがないよ? 食べた?」
「お前じゃあるまいし、食うか」
 俺も食べた経験はありません。
「ふむ、スポンジ……あ、汚れてたんで捨てたんだ。いま新しいの出すからな」
「あはは、姉貴のドジー」
 流しの下の収納をあさる姉を、軽くからかう。
「ふん、好きに言え。私とて、そういうこともある」
「姉貴のド貧乳」
「好きに言えとは言ったが、好き勝手言えとは言ってない!」
 ド貧乳が俺の口に真新しいスポンジをぽんぽん入れるので、苦しい上にまずい。
「もがもがもが」
「ふぅ……全部詰めてやったぞ」
 そこでなんで満足げなのかちっとも分かりませんが、それはともかく姉弟にのみ伝わるジェスチャーで切迫してますと伝えたら、どうにか救出してもらった。
「あー、死にかけた。どこに罠が潜んでるか分かりゃしねえ」
「お前が余計なこと言わなければ済む話だ。……あ、スポンジが全部お前の涎まみれだ」
 俺の口から取り出したスポンジ全てにぬらりと淫靡なる滴り(俺の涎)が付着しており、俺自身でも触るのが割と嫌っぽい。
「む、名案を思いついたので言う! 姉貴が俺の涎が付着したスポンジをぺろぺろ舐めて、その様子を俺がビデオ撮影すれば大儲けするやも!」
 殴られたので、不許可ということらしい。
「じゃあ、直接俺をぺろぺろしてみてはどうだろう」
 2回殴られたので、論外ということらしい。
「いやいや、舐めるのは俺の口でなく、俺のちん」
 3回殴られたので、この話題は以後封印ということらしい。
「もういい。私が洗うから、お前はそこでじっとしてろ」
 コクコク頷くと、姉は俺の涎まみれのスポンジを持ち、流し台の前に立った。
「あ、姉貴、それ俺の涎まみれのスポンジだよ?」
「そうだが?」
 それが何か問題あるのか、とでも言いたげに姉貴は少し小首を傾げた。……く、姉貴のくせに可愛いじゃねえか。
「や、俺でも触るのちっとためらうのに……姉貴、よく普通に触れるな」
「? 他の奴ならともかく、お前の涎だから別に平気だぞ?」
「それは愛の告白と受け取ってもよろしいか? よろしい! せーのっ、姉貴ーっ!」
「一人で質問して一人で答えて抱きつくなっ!」
 ぴょいんと背中に抱きついたらエルボゥが頭につきささって大変痛い。
「うおお……脳が飛び出そう」
「まったく……姉弟で愛も何もないだろう」
「姉貴姉貴、姉弟愛、という言葉をご存知? ご存知ないなら、馬鹿認定。やーいばーかばーか。あと貧乳」
「いちいち貧乳言うなっ!」
 胃を全力で握られ大変痛い。ストマッククローって。
「ううう、胃が飛び出そう……お部屋で寝るる~。お休み姉貴~」
「子どもか」
 胃がおかしくなったようなので、部屋に移動して寝ることにする。

「まったく。……愛とか、軽々しく言いすぎだぞ、ばか」
 誰もいなくなった台所で、姉はスポンジを軽くなでた。

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【ちゅんでれを妹っぽく扱ってみた】

2010年03月08日
「娘よ、聞いた話によると、9月の6日は何でも妹の日だとか。そこで父は考えた。娘を妹として扱ってみてはどうだろうか。きっと楽しいのではないだろうか」
 最近娘が父である俺を汚物でも見るかのような目で見る。大変辛い。
「はぁ……父よ、末期症状もいいところだな。どうだ、いい病院を紹介してやろうか? ちょっと窓に鉄格子がはまってるのが難点だが、いいところだぞ」
「ふ、父を甘く見るな! そこに入ると出てこれないんだろう? ふふっ、父の頭脳に恐れをなしたならば、疾く妹になるがいい」
「恐れをなすのは非常に難しいが、父よ。戯言を言う前に、今日の日付を大きな声で言ってみるがいい」
 娘が壁にかかってるカレンダーを指したので、言われるがままに言う。
「よし、父の底力を見せてやる! 今日は9月7日! ……7日だと!?」
「そう、父が焦がれ続けた妹の日は既に終了だ。諦めるんだな」
「し、しかし! しかしだ、娘よ! このままでは父の妹欲が満たされない! 一度火がついたからには、父はもう止まらないぞ? そこで、だ! 娘よ、今日だけ妹っぽく振舞ってはどうだろうか」
「はぁ……どうしたら私が嫌がっている事を理解してくれるのだろうか」
「ははっ、これは異な事を。父が娘の嫌がる事を果たしてするだろうか、いやしない。反語」
「現にしているではないか!」
「……?」
「なぜそこで不思議そうな顔をする……」
「急に泣きだしそうな顔になっても変だろう?」
「そういう話ではないっ!」
 娘の話はややこしい。
「あー、もういい。分かった。父と頓痴気なやり取りをするのも疲れた。とにかく、妹っぽく振舞えばいいのだろう?」
「お、ようやっとその気になってくれたか、娘よ。えらいぞ。なでなで」
「む……ええい、子供ではないのだ。なでるでない」
 頭を撫でられ、不服そうな顔をしながらも少しにやける娘だった。
「小学生は子供と認識するのが一般的だと父は思うが」
「うるさい。いいから始めるぞ」
 そう言って、娘はパンと手を打ち鳴らした。
「ふむ……じゃ、そうな。どうだ、兄に耳掃除でもしてくれないか、妹よ」
「断る。そんなもの一人でやれ、兄」
 俺の呼び名が変わっただけで、いつものやりとりとまったく変わらなかった。
「ええい、まったくなってない! いいか、娘よ。妹とは、兄を愛し! 兄のために生き! そして、兄のために自らの人生を捧げし者の総称! そんな冷たい妹なぞ存在せん!」
「父が妹にどれだけ憧憬を抱いてるのか知らないが、そんな気持ち悪い妹なぞ存在せん」
「馬鹿な! し、しかし、しかしだ娘よ! このゲームやこのゲームやこのゲームには、そんな妹が潤沢に揃っているぞ! ふ、これほどの証拠が揃っているのだ……ぐうの音も出まい」
「なぜここまで誇らしげに18歳未満は禁止のゲームを掲げられるのか少々不思議に思わなくもないが、父よ。ゲームはゲーム、フィクション、虚構だ。存在しない」
「がーん!」
「がーん!? 擬音を口に出すほどの衝撃だと!?」
「ええいうるさい! 父は甘えてくる妹が欲しいのだ! 妹いもうとイモウトー!」
「はぁ……まったく、しょうがないな、……お、お兄ちゃんは」
「!!!」
「……きょ、今日だけだぞ、お、……お兄ちゃん」
「兄も妹が大好きだーっ!」
「きょわっ!?」
 感極まって娘──いや、妹を抱きしめたら変な声が出た。
「ち、ち、ち、ち、父? ななな、なにを?」
 目を白黒させて、妹が俺の胸元でわななく。
「否! 今の父は兄であり、父と言われても何のことやら!」
「あ、う……は、走りすぎだぞ、お、お兄ちゃん」
「兄も妹が大好きだーっ!」
「きょわーっ!?」
 気のせいかループしてる気が。

「ちょっと落ち着こう」
 その後、7回くらい繰り返した所で話が進まないことに気づいたので、ちょっと落ち着くことにする。
「私は落ち着いている! 父……あ、いや、お、お兄ちゃんがいちいち抱きついてくるから混乱するのだ」
「兄も妹が大好きだーっ!」
「だから、抱きつくなーっ!」
「うーむ……どうやら、兄は妹の『お兄ちゃん』という響きに反応し、つい抱きついてしまうのだろうね。これは困った事態だと言わざるを得ない。だが、妹の可愛らしさに兄はついつい抱っこしてしまうのだった」
「いいから離れろっ!」
 怒られたので、不承不承離れる。
「ふぅむ……例の言葉で抱きついてしまうのなら、兄と呼ぼう。それでいいな、兄?」
「まぁいいが……普段の父という言葉から兄に代わっただけで、劇的に変化しているとは思えない兄である」
「……態度が変化すればいいだけの話だろう?」
 そう言って、妹はぴょいんと膝の上に乗ってきた。
「膝だと! 娘自ら!?」
「娘でなく、妹、だろう?」
 そう言っていたずらっぽく笑う娘……いや、妹。
「ふふ……あまり自分から乗ることはないが、なかなかどうして、心地よいではないか」
 妹は薄く目をつむり、俺の胸元に頭を寄せた。
 こいつは困った。父性愛とか、それどころの話ではない。なんかもう頭おかしくなりそうなくらい可愛いぞこの娘。
「可愛い! 可愛いすぎだぞ娘よ!」
「きょわーっ!?」
 思考が暴走してまた抱きしめました。

「だから、いちいち抱きしめるでない! なぜ学習しないのだ……」
「はい、すいません」
 そんなわけで、怒られてます。
「それに、私の呼び方が妹から娘に戻っていたぞ。兄が考えた設定なのだ、ちゃんとするがいい」
「あー、それはもういい。充分堪能した。やはり、兄と妹ではなく、父と娘という設定が父にはあっている」
「父と娘は設定ではないだろう。まったく……」
「…………」
「ん? 父、どうした?」
「……いや、なんでもない。やはり、父と娘が性にあってる。妹に手を出したら捕まるけど、娘だと平気だしな」
「娘でも捕まるぞ!? というか、出すのか!?」
「…………」
「どうして何も言わず暗い笑みを浮かべる!?」
「冗談、冗談だ、娘よ。……さて、睡眠薬、睡眠薬と……」
「ああ父は娘である私を性欲の対象として見る。なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうか!」
「どうしていつもいつもその台詞を言う時は窓を全開にし、外に向けて言うのだ、娘よ!」
「ふふ。ただの仕返しだ、父」
 そう言ってにっこり笑う娘だった。

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【ツンデレ姉にお金を借りたら】

2010年03月05日
「姉貴ー、財布忘れたから金貸してー」
 昼休み。姉が教室で友人たちと弁当をつついていると、弟がやって来てそう言った。
「またか。まったく、いつも言っているが家を出る前にちゃんと確認しろ」
「がたがた言わずにとっとと金出せ貧乳」
 姉はにっこり笑って弟を蹴り飛ばした。いつもの光景に、教室にいる者は誰一人注意を払わなかった。
「なんでいちいち怒らせるような事を言うかな、この愚弟は……ほら、立て」
「あいたた……あ、ありがと、姉貴」
 姉は手を貸し、弟を立ち上がらた。
「ほら。500円でいいな?」
「有り金出せ。……いやすいません調子こきましたすいません許してください」
 姉がとても怖い顔で睨むと、途端に弟は土下座する勢いで謝った。その情けない様子に、姉は思わず苦笑した。
「男がすぐ謝るな。まったく、情けない弟だ」
「NASAけない弟よりマシだろ? 説明しよう! NASAけない弟とは、宇宙っぽくない弟であり、俺のことであり、しまった、俺はNASAけない!」
「こんな弟に育ては覚えはないんだがなぁ……」
「あははは。とにかくサンキュな姉貴、愛してるぞっ!」
「ばっ、ばかっ、何を言うかっ! とっととパンでも買って来い、愚弟!」
 簡単に赤くなる姉に手を振って、弟は教室を出て行った。
「……な、なんだ」
 再び弁当をつついていると、友人たちがこちらをじっと見つめていることに気づいた。何か言いたそうなその顔に問いかけると、
「「べっつにー」」
 という、異口同音のそっけない答えが返ってきた。だが、その顔にはニヤニヤとしたからかう気満載の表情が張り付いている。
「よ、用がないならじろじろ見るな」
「いや、用はないんだけどさ、相変わらず仲いいなーって思って。普通、高校くらいになると姉弟仲なんて悪くなるのにさ」
 ショートカットの少女がそう姉にそう言った。
「……べ、別にいいだろう。姉弟仲がよくて何か問題でも?」
「ないよ、なーんにも。でも、邪推する人もいるかもしんないから、注意した方がいいかもだよ?」
 ツインテールの少女が姉に注意を呼びかける。
「好きにすればいい。誰にどう思われようが、関係ない」
「……くーっ、お姉ちゃんかっくいー! あたしが男だったらほっとかないよ、ホント」
「あちしは女だけど、グラグラきそうだよ。きしし」
 そう笑うツインテールの少女から、姉は椅子を離した。
「じょ、冗談だよじょーだん。やだなーお姉ちゃんってば。きししし」
「……まったく」
「でもさー、アンタも弟クンとばっか仲よくてもアレだよね。彼氏でも作ったら?」
「不要だ。男のような惰弱で不埒で卑劣で腑抜けな存在が側にいるなんて、不愉快極まりない」
「いや……弟クンも男だよ? 弟クンもアンタのいうところの、えっと……惰弱でなんたらって存在なの?」
「いや、あいつはただの馬鹿だ」
 何故か誇らしげに言う姉に、友人たちは顔を見合わせて苦笑した。
「こりゃ、深刻なブラコンだねぇ。きししし」
「なっ、何を言うかっ! 私のどこがブラコンだ! 訂正を求める!」
「姉貴ー、パン売り切れてて、セロリサンドしか残ってなかったー。弁当分けてー」
 立ち上がって友人に怒る姉の下へ、弟が再びやって来た。
「こ、この構図は! 姉貴が友人であるツインテールの一見ロリぃ女生徒の胸元を掴んでいる! ここから導き出せる未来予想図は、百合百合ぃに違いない! よし、ここは弟として見守ろう!」
「見守るな、この愚弟! 誰が百合か! 私はちゃんと男に興味がある!」
「男色の気があると?」
 姉は黙って弟を張り飛ばした。
「うう……姉がいじめる。助けて、お姉様」
「あー、よしよし。大変だね、弟クンも」
 すごい怖い顔で睨まれていることに気づかない弟とショートカットの女生徒だった。
「いっそのこと、私の弟になる?」
「おっ、そいつぁ名案だ。姉貴、俺は今よりこのお姉様の弟に……」
「だっ、ダメだ!」
 尋常ならざる速さで、姉は弟をショートカットの女生徒から奪い取って抱きしめた。
「これは私の! 私の弟だ! 誰にもやらん!」
「……え、えーっとね、お姉ちゃん?」
「……冗談、なんだけど……」
 ショートカットの女生徒と弟が困りながらそう言った途端、姉の顔が火を噴いた。
「ちっ、違う違うぞ? 私もその冗談とやらに乗っただけで、決して、そんな風に思っているとは」
「どブラコンだねぇ。きししし」
 姉の顔がさらに赤くなった。
「う、うう、ううううう~……もう知らんッ! 貴様らみんな知らんッ!」
 姉は机に伏せ、顔を隠した。
「あー……あっと、お、俺、帰るな。その、姉貴、ふぁいとっ!」
「うるさい帰ればかっ!」
 不貞寝をするかのように顔を伏せてる姉の背に、友人たちの笑い声が降り注ぐのだった。

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【男の弁当を食べたがるツンデレ】

2010年02月28日
 会長のとある秘密を知ってしまった結果、生徒会入りを果たしてしまった。
 そんなある日の朝、会長が用事があるとかで俺を呼び出した。さては愛のこくふぁくか!? と鼻息荒くばふーと生徒会室に入ったら、違った。
「これを明日の放課後までにやっとけ」
 そう言いながら、会長は長机にうずたかく鎮座ましましている書類の山×3を指した。
「告白だと思ったのに……会長にはガッカリだ!」
「どうしてワシが貴様なんぞに告白なんぞをしなければならん。脳に蛆が湧いとるのかえ?」
「湧いてません。それより、この量は流石にきちーです。授業全部ぶっとばしてやっても不可能と思うますが」
「貴様の力を見込んでのことじゃ」
「褒めて伸ばされそうだ!」
「普通に返事せんか。それで、やるのかえ? やらないのかえ?」
「無理」
「ふむ。……まだ死にたくはなかろう?」
 そう言って、会長はスカートの裾から真っ白なしっぽ(!)をふわりと覗かせた。
 会長の秘密、それは、会長は実は狐の物の怪、ということだ。詳しいことは知らないが、狐耳としっぽが大変にラブリーなので、いつか思う存分触りまくりたいと俺は常々思っている。
「なるほど、このような感じで触らせまくり、俺を悶死させると言うのだな? 負けん、負けんぞ!」(もふもふもふ)
「ひゃうわっ!? ちっ、違うっ、脅しただけじゃっ! そっ、それより誰が触っていいと言った、この愚か者がっ! がぶがぶがぶっ!」
 あまりの誘惑に前後不覚に陥り、思わず会長のしっぽを抱きしめたら怒られたうえ、頭もかじられた。
「痛いです」
「うるさいのじゃ! まったく、ワシのしっぽを触って生きておった奴など、貴様以外におらんぞ?」
「光栄に思えばいいのだろうけど、頭から血が流れ出ていてそれどころでは」
 会長は物の怪だけあって攻撃力が高く、俺程度の防御力では流血を防げない。
「早く治せ、愚か者」
「人間はそんな治癒力高くないのですよ」
「まったく……なんと脆弱な生き物じゃ。ほれ、こっち来い」
 ふらふらと会長の元へ向かうと、会長は俺の頭をなでなでした。
「畜生、幼児扱いだ! しかし頭をなでられいい気分なのも事実! それとも血が足りずにそう感じるだけなのだろうか。それはつまり今まさに死に瀕しているわけであり、死にたくないなあ」
「黙っとれ、治癒しとるだけじゃ。……ほれ、もう止まったぞ」
 頭に手をやると、あれほどぴうぴう出ていた血が止まっていた。
「すごいぞ妖術、やるなあ物の怪!」
「……どうも感謝の念がないように思えるのは、ワシだけじゃろうか」
「大丈夫、俺もそう思ってる」
「がぶがぶがぶっ!」
 会長は怒ると人の頭をかじって元の木阿弥にするのでやめてほしいなあ、と思った。

 翌日。書類を家に持って帰ってばりばりこなしたはいいがまるで終わらないので、昼休みも返上して仕事をこなしてると、急に教室がざわめきだした。
 なんじゃらホイ、と思って顔を上げると、会長が入り口付近できょろきょろしていた。あ、目が合った。と思ったらこっちへまっすぐやって来た。
「何をしとるんじゃ」
「え、いや、会長に言われた仕事をこなしてるのですが」
「……飯は」
「え、あ、いや、まだ」
 会長は苛立たしげに俺を見下ろしている。はて、飯……? あ。
「あ、あー。そうな、そうだったな。いやはや、つい熱中してて。行きませう」
「う、うむ」
 サブバッグを持って会長と一緒に教室を出る。出てから数秒後、怒号が教室から響いた。
「なんじゃ!? あっ……」
「いーから!」
 会長の手を取り、生徒会室へ一目散に退避。
「ふー……」
「な、なんじゃったのじゃ、さっきの叫びは」
「会長……呼びに来てくれるのは大変嬉しいが、もうちょっと自分の人気とか考えた方がいい」
「むう……?」
 よく分かっていないのか、会長は困ったように眉を寄せるだけだった。
「はぁ……まあいいや、可愛いし。んじゃ、飯食うか」
「そ、それはいいが、……い、いつまでワシの手を握っとるんじゃ?」
「え、あ」
 そう言えば、ずっと会長の手を握ったままだった。
「うーん。柔らかい」
「い、いらんことは言わんでいいっ!」
 会長は荒々しく俺の手を振り払い、顔を赤くしながら手をさすさすさすった。
「まったく……それで、弁当はどこじゃ?」
「ああ、これこれ」
 机の上に置いたサブバッグから、弁当箱を取り出す。
「うむ」
 そしてそれを当然のように奪われた。
「さぁてと……おおー! 今日もうまそうじゃ!」
 蓋を取ると、会長は歓声をあげた。そして、両手にそれぞれひとつずつ稲荷寿司を手に取った。
「まぐまぐまぐ! ……むふー、貴様の親が作るおいなりさんは格別じゃのお!」
「喜んでくれて嬉しいが、俺の食う分も残してくれたらもっと嬉しい」
「貴様のことなど知らん。まぐまぐまぐ……にゅふー♪」
 おいしいんだか嬉しいんだか知らないが、狐の耳が出てる。しっぽも出てる。すっげー振ってる。
「会長、しっぽ出てる。耳も」
「む? まあ気にするな、ここにはワシと貴様しかおらんのじゃ」
「いや、まあいいんだけど……」
 もし急に誰かが入ってきたりしたら、色々と面倒くさいことになりそうな。最悪、この学校が滅びそうな。いや、学校どころか日本が……。
「むふー。美味かったのじゃー♪」
 人が色々と不安になってるというのに、会長は人の弁当を空にしてご満悦な様子。今日も俺は飯にありつけそうにない。
「はぁ……」
「なんじゃ、辛気臭い顔して」
「お腹が空いたやら何やらで。……あ、会長。飯粒ついてるぞ」
 会長のほっぺについてた飯粒を取り、ぱくりと食べる。
「……ぬわっ!?」
 ややあって、会長からぼわんと湯気が上がった。
「ほほう」
「な、なんじゃ、ほほうって!」
「や、別に」
「うー……い、いいじゃろが、別に。……ワシはこういうのに慣れてないだけじゃ、愚か者」
 会長は怒ったように明後日の方を向いてしまった。
「やれやれ、怒らせてしまったか。どうにかしたいが、腹が減ったので学食に行って来るな」
 席を立とうと机に手を置くと、その手にしっぽがくるりと巻きついた。会長の方を見るが、依然として明後日の方を見てつーんとしている。
「あの。これでは出れないのですが」
「ぬ? ……ぬ!? な、なぜワシのしっぽが貴様なんぞに巻きついとる!?」
「それは超こっちの台詞だ」
 とりあえずしっぽ巻きつきを解除してもらう。そして立とうとしたら、もう片方の手にしっぽがくるりと巻きついた。
「会長……」
「し、知らん! ワシのしっぽが勝手に動くのじゃ!」
「あー……まあ、一日くらい昼飯抜いても死にはしないか」
 諦めて腰を椅子に落とす。会長のしっぽが嬉しそうに俺の腕をさすさすさすった。
「ちうわけで、巻きつきを解除してもらえますか?」
「……なんじゃ、その目は。わ、ワシは貴様なんぞおらんでも平気じゃからな!」
「何も言ってませんが」
「目が言っておる! 『やーい、こいつ狐の物の怪のくせに俺がいないと寂しいんだー』って!」
 超似てねえ。
「ぬー……何か言わぬか!」
「やーい、こいつ狐の物の怪のくせに俺がいないと寂しいんだー」
「一言一句違わず!?」
 とても驚いてる会長だった。

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