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2024年11月23日
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【寒そうにしてるツンデレの手を取って息を吹きかけてあげたら】
2010年02月28日
今日は朝からとても寒い。震えながら登校してると、中国からの留学生、メイシンと遭遇した。
「おっすメイシン。今日も寒いな」
「……朝から嫌な奴と会ったアル。今日は一日最悪アル」
どうしてか知らないが、メイシンは俺の事を毛嫌いしていた。見知らぬ地で心細くないよう、人が色々心を砕いてやっているというのに。
「例えば、おまいさんが昼飯を食ってる時とかに寂しくないよう、隣で微笑んだり」
「いきなり何の話してるアルかっ! ていうか思い出したヨ、オマエ私がご飯食べてる時に変な顔して、私を噴き出させたネ! 口の中のおかず飛んだヨ!」
どうやら俺の気配りは伝わっていないようだ。
「うう、寒いんだからあまり怒らせないアルよ。……寒いヨ、しばれるヨ。もう嫌だヨ、中国帰りたいアルよ……」
「そんな寒いなら、頭についてるその丸いのを使い、寒冷対策フィールドを展開すればいいじゃん」
「そんな機能ないネ! これはシニョンキャップ言うアル! ちなみに、お気に入りアル」
「あー、可愛いよねシニョンキャップ。中に詰まってるものを考えなければ」
「何言ってるアル! 入ってるの髪の毛ネ! 怖い事言うの禁止アル!」
「え、髪の毛だっけ? 俺の聞いた話によると、なま……いや、気のせいだな」
「怖がらせるのよくないアル! ていうかさっき何言おうとしたアルか!? “なま”って何アル!?」
「ふいい……寒いなあ」
「話を聞くアル! ……まあ、寒いのは認めるアル」
メイシンは両手を合わせ、擦り合わせていた。
「ちょい失礼」
「なっ、何するアル!」
メイシンの両手を取り、その上から暖かい息を吹きかける。
「はーっ、はーっ。……どだ? ちょっとは暖かいだろ?」
「あ、えと……まあ、少しは暖かいアル。オマエみたいなのでも役に立つことがあるアルね」
メイシンは少しだけ嬉しそうに笑った。
「朝から餃子食ってきた甲斐があったよ」
「今すぐ手を離すアルっ! 臭い息が私の手に移るアルっ!」
一瞬で笑顔を消し、メイシンは必死に俺の手から逃れようとした。
「善意からもっと温めてあげようと思った。ということで、はーっ、はーっ、はーっ」
「うっきゃーっ!! 臭いアル臭いアル、餃子臭いアルーっ!」
祖国の匂いに悲しい叫びをあげるメイシンだった。
「おっすメイシン。今日も寒いな」
「……朝から嫌な奴と会ったアル。今日は一日最悪アル」
どうしてか知らないが、メイシンは俺の事を毛嫌いしていた。見知らぬ地で心細くないよう、人が色々心を砕いてやっているというのに。
「例えば、おまいさんが昼飯を食ってる時とかに寂しくないよう、隣で微笑んだり」
「いきなり何の話してるアルかっ! ていうか思い出したヨ、オマエ私がご飯食べてる時に変な顔して、私を噴き出させたネ! 口の中のおかず飛んだヨ!」
どうやら俺の気配りは伝わっていないようだ。
「うう、寒いんだからあまり怒らせないアルよ。……寒いヨ、しばれるヨ。もう嫌だヨ、中国帰りたいアルよ……」
「そんな寒いなら、頭についてるその丸いのを使い、寒冷対策フィールドを展開すればいいじゃん」
「そんな機能ないネ! これはシニョンキャップ言うアル! ちなみに、お気に入りアル」
「あー、可愛いよねシニョンキャップ。中に詰まってるものを考えなければ」
「何言ってるアル! 入ってるの髪の毛ネ! 怖い事言うの禁止アル!」
「え、髪の毛だっけ? 俺の聞いた話によると、なま……いや、気のせいだな」
「怖がらせるのよくないアル! ていうかさっき何言おうとしたアルか!? “なま”って何アル!?」
「ふいい……寒いなあ」
「話を聞くアル! ……まあ、寒いのは認めるアル」
メイシンは両手を合わせ、擦り合わせていた。
「ちょい失礼」
「なっ、何するアル!」
メイシンの両手を取り、その上から暖かい息を吹きかける。
「はーっ、はーっ。……どだ? ちょっとは暖かいだろ?」
「あ、えと……まあ、少しは暖かいアル。オマエみたいなのでも役に立つことがあるアルね」
メイシンは少しだけ嬉しそうに笑った。
「朝から餃子食ってきた甲斐があったよ」
「今すぐ手を離すアルっ! 臭い息が私の手に移るアルっ!」
一瞬で笑顔を消し、メイシンは必死に俺の手から逃れようとした。
「善意からもっと温めてあげようと思った。ということで、はーっ、はーっ、はーっ」
「うっきゃーっ!! 臭いアル臭いアル、餃子臭いアルーっ!」
祖国の匂いに悲しい叫びをあげるメイシンだった。
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【ツンデレに冗談で愛してるって言ったら】
2010年02月25日
「おはようっす、かおる」
「……おー」
今日もタカシの奴が待ち合わせ場所でオレを待ってた。オレはぶっきらぼうに挨拶して、そのまま通り過ぎる。
「テンション低いな」
軽い駆け足でタカシが隣に並ぶ。
「朝っぱらから面倒くさい奴と会っちまったからな」
「そりゃ災難だな」
「おめーのことだよ!」
「はっはっは、ご冗談を」
「はぁ……」
高らかに笑うタカシに、思わずため息。こいつはいっつも冗談ばっかり言ってるので、どこから本気でどこから冗談なのか、正直分かんねえ。
そもそも、なんでこんな口が悪くて女らしくもないオレと好き好んで登校するのか。マゾなのか。……それとも、やっぱ、その、オレのことを……あー、らしくねえ!
「……んだよ」
オレが一人で色々考えてるってのに、タカシの奴はオレを見てニヤニヤしてやがる。なんかムカつく。
「や、かおるの一人百面相を楽しんでいるばかりです。赤くなったり髪をくしゃくしゃしたり、大変楽しゅう御座います」
タカシの言葉に顔がほてるのを感じる。
「み、見てんじゃねーよ変態野郎っ! き、気持ちわりーな!」
「やあ、ごめんね」
「……ったくよー」
そんな毒気のない笑みで謝られたりしたら、なんにも言えねーじゃんか。それに、別にタカシの奴は悪くともなんともねーし。
「しかし、なんだな。かおる見てると楽しいな」
「オレは楽しくねーよ」
「あれかな、恋かな。恋だな。かおる、愛してるよ」
「んなっ!?」
タカシはオレの手を握り、オレの目を真っ直ぐ見て、いきなり、こ、こ、告白なんてしやがった。
「な、な、な、なに考えてやがんだっ! こ、こんな道端で、そんなっ!」
「そこの側溝の中でした方が良かったか?」
「い、いや、そこよりはここの方がいい」
って、何言ってんだ、オレ。いいから落ち着くんだ。深呼吸だぞ。すー、はー。
「かおる臭はいい匂い」
「いらんこと言うなッ!」
タカシの頭をぶったたく。いつものことに、ちこっと落ち着いた。……こ、告白されたら返事しねーとな。
……な、なんて答えりゃいいんだ? 今まで他の連中に告白されても断ってばっかだったし……。つっても、いきなりOK出しても調子に乗るだろうし……いやいやいや! オレは別にこいつのことなんて……。
「?」
ちらりとタカシに視線を向けると、よく分からないのか、タカシは軽く首を傾げた。オレだけドキドキして、告白した本人が平和そうな顔してることに腹が立つ。断ってやろうか。よし、ちょっとシミュレーションしてみよう。
(シミュレーション開始)
「オレ、おまえのことなんてなんとも思ってねーし。勘弁しろよ」
「がーん! 多大なる衝撃を受けた! 非常に残念だが、その気がないのであれば諦めざるを得ない。俺と貴様は以後友達のままだ!」
(シミュレーション終了)
ダメだッ! 千載一遇のチャンスが消えちまう! ……あ、いやいやいや。チャンスとか思ってないし。と、とにかくこれはダメ。こいつのことだ、一度断ったらそのまま諦めちまうに決まってる。
だからって「オレもずっと好きだった」とか言うのは無理。ぜってー無理。そんな女の子女の子したこと無理。……いや、だから! 別に好きじゃねーし! しっかりしろ、オレ!
「あの、かおる……?」
ずーっと考え込んでるオレを不思議に思ったのか、タカシが声をかけてきた。どっ、どうしようっ!?
「あ、あ、あ、あ、あの、あのさ、お、オレ、オレさ……」
「壊れたレディオだ」
「茶化すなっ!」
けど、タカシが茶化してくれたおかげで緊張がちょっとほぐれた。深呼吸して……いざ!
「まあ、冗談だけど」
へ……?
「いや、愛してるってのが。軽い冗談。はっはっは」
「…………」
「あれ? かおるたん? どうしましたか、震えてますよ? そして嫌な予感が止まらない俺ですよ? どこかで死亡フラグ立てちゃった?」
「ふ、ふ、ふふふ……乙女のドキドキを、軽い冗談、ねぇ」
「かおるが乙女と! いかん、今日が世界の終わる日か! こんなことであれば生活費を全てエロ本に回せばよかった!」
「死ねぇぇぇぇぇっ!!!」
「へぶぅっ!?」
オレはタカシに全力コークスクリューをぶちかました。変な声を出してタカシはどっか飛んでった。
オレはほっとしたような、とても残念なような、微妙な心を抱えたまま学校に向かった。
「やあ、ごめんね。そんな怒るとは思わなくて」
「うっせ」
学校に着くと、タカシの奴はなんでもない顔をして普通にいた。どんな体の構造してやがる。手を合わせてオレに謝ってきているが、ぜってー許さねえ。
「いや、違うんですよ。なんか俺の中に住む悪魔? 天使? そのような得体の知れない物体が俺に囁いたんですよ、『イエ……ジョウダンデアイシテルトイエ……!』って」
「なんかこえーよっ!」
「そのような次第であり、決して俺の本意ではないのです」
「ふん」
……それって、オレが好きじゃないってことかよ。
「や、あくまで愛してると言わされたこと、それ自体が本意ではないということであり、俺自身の気持ちはまた別ですよ?」
「あ? どーゆうことだ?」
「んーと、簡潔に言うと、俺はかおるのこと結構好きだよってこと」
「んなっ!? て、テメェ、こんなとこで告白かよっ!」
「側溝の方がよかった?」
「それはもういい」
タカシは少し残念そうだった。ちょっと可愛い。
「や、異性の、いわゆる恋人とかの話でなく、人としての好意の話。その好き」
「う……そ、それなら、その、お、オレも、おめーのこと、す、す、……好きだぜ?」
……う、ううう。ガラじゃねえ。ガラじゃねえとも。なんだってこんな話になってんだ。
「やあ、安心した。つまり、俺たちは両想いと。ラブラブチュッチュと」
「てっ、テメェ! 人としての話なんだろーが、今は!」
「やあ、忘れてた」
ぜってー嘘だ。ニヤニヤ笑いやがって。
……うう、なんで両想いって台詞だけでこんな嬉しいんだよ、オレッ!
「かおる、顔がニヨニヨしてますが、何か異様な病気?」
「異様とか言うなッ!」
「はっはっは。まーなんだ、これからもどうか仲良くお願いしませう」
笑いながらオレの頭に手を乗せるタカシに、オレは笑顔にならないよう必死でふて腐れるフリをするのだった。
「……おー」
今日もタカシの奴が待ち合わせ場所でオレを待ってた。オレはぶっきらぼうに挨拶して、そのまま通り過ぎる。
「テンション低いな」
軽い駆け足でタカシが隣に並ぶ。
「朝っぱらから面倒くさい奴と会っちまったからな」
「そりゃ災難だな」
「おめーのことだよ!」
「はっはっは、ご冗談を」
「はぁ……」
高らかに笑うタカシに、思わずため息。こいつはいっつも冗談ばっかり言ってるので、どこから本気でどこから冗談なのか、正直分かんねえ。
そもそも、なんでこんな口が悪くて女らしくもないオレと好き好んで登校するのか。マゾなのか。……それとも、やっぱ、その、オレのことを……あー、らしくねえ!
「……んだよ」
オレが一人で色々考えてるってのに、タカシの奴はオレを見てニヤニヤしてやがる。なんかムカつく。
「や、かおるの一人百面相を楽しんでいるばかりです。赤くなったり髪をくしゃくしゃしたり、大変楽しゅう御座います」
タカシの言葉に顔がほてるのを感じる。
「み、見てんじゃねーよ変態野郎っ! き、気持ちわりーな!」
「やあ、ごめんね」
「……ったくよー」
そんな毒気のない笑みで謝られたりしたら、なんにも言えねーじゃんか。それに、別にタカシの奴は悪くともなんともねーし。
「しかし、なんだな。かおる見てると楽しいな」
「オレは楽しくねーよ」
「あれかな、恋かな。恋だな。かおる、愛してるよ」
「んなっ!?」
タカシはオレの手を握り、オレの目を真っ直ぐ見て、いきなり、こ、こ、告白なんてしやがった。
「な、な、な、なに考えてやがんだっ! こ、こんな道端で、そんなっ!」
「そこの側溝の中でした方が良かったか?」
「い、いや、そこよりはここの方がいい」
って、何言ってんだ、オレ。いいから落ち着くんだ。深呼吸だぞ。すー、はー。
「かおる臭はいい匂い」
「いらんこと言うなッ!」
タカシの頭をぶったたく。いつものことに、ちこっと落ち着いた。……こ、告白されたら返事しねーとな。
……な、なんて答えりゃいいんだ? 今まで他の連中に告白されても断ってばっかだったし……。つっても、いきなりOK出しても調子に乗るだろうし……いやいやいや! オレは別にこいつのことなんて……。
「?」
ちらりとタカシに視線を向けると、よく分からないのか、タカシは軽く首を傾げた。オレだけドキドキして、告白した本人が平和そうな顔してることに腹が立つ。断ってやろうか。よし、ちょっとシミュレーションしてみよう。
(シミュレーション開始)
「オレ、おまえのことなんてなんとも思ってねーし。勘弁しろよ」
「がーん! 多大なる衝撃を受けた! 非常に残念だが、その気がないのであれば諦めざるを得ない。俺と貴様は以後友達のままだ!」
(シミュレーション終了)
ダメだッ! 千載一遇のチャンスが消えちまう! ……あ、いやいやいや。チャンスとか思ってないし。と、とにかくこれはダメ。こいつのことだ、一度断ったらそのまま諦めちまうに決まってる。
だからって「オレもずっと好きだった」とか言うのは無理。ぜってー無理。そんな女の子女の子したこと無理。……いや、だから! 別に好きじゃねーし! しっかりしろ、オレ!
「あの、かおる……?」
ずーっと考え込んでるオレを不思議に思ったのか、タカシが声をかけてきた。どっ、どうしようっ!?
「あ、あ、あ、あ、あの、あのさ、お、オレ、オレさ……」
「壊れたレディオだ」
「茶化すなっ!」
けど、タカシが茶化してくれたおかげで緊張がちょっとほぐれた。深呼吸して……いざ!
「まあ、冗談だけど」
へ……?
「いや、愛してるってのが。軽い冗談。はっはっは」
「…………」
「あれ? かおるたん? どうしましたか、震えてますよ? そして嫌な予感が止まらない俺ですよ? どこかで死亡フラグ立てちゃった?」
「ふ、ふ、ふふふ……乙女のドキドキを、軽い冗談、ねぇ」
「かおるが乙女と! いかん、今日が世界の終わる日か! こんなことであれば生活費を全てエロ本に回せばよかった!」
「死ねぇぇぇぇぇっ!!!」
「へぶぅっ!?」
オレはタカシに全力コークスクリューをぶちかました。変な声を出してタカシはどっか飛んでった。
オレはほっとしたような、とても残念なような、微妙な心を抱えたまま学校に向かった。
「やあ、ごめんね。そんな怒るとは思わなくて」
「うっせ」
学校に着くと、タカシの奴はなんでもない顔をして普通にいた。どんな体の構造してやがる。手を合わせてオレに謝ってきているが、ぜってー許さねえ。
「いや、違うんですよ。なんか俺の中に住む悪魔? 天使? そのような得体の知れない物体が俺に囁いたんですよ、『イエ……ジョウダンデアイシテルトイエ……!』って」
「なんかこえーよっ!」
「そのような次第であり、決して俺の本意ではないのです」
「ふん」
……それって、オレが好きじゃないってことかよ。
「や、あくまで愛してると言わされたこと、それ自体が本意ではないということであり、俺自身の気持ちはまた別ですよ?」
「あ? どーゆうことだ?」
「んーと、簡潔に言うと、俺はかおるのこと結構好きだよってこと」
「んなっ!? て、テメェ、こんなとこで告白かよっ!」
「側溝の方がよかった?」
「それはもういい」
タカシは少し残念そうだった。ちょっと可愛い。
「や、異性の、いわゆる恋人とかの話でなく、人としての好意の話。その好き」
「う……そ、それなら、その、お、オレも、おめーのこと、す、す、……好きだぜ?」
……う、ううう。ガラじゃねえ。ガラじゃねえとも。なんだってこんな話になってんだ。
「やあ、安心した。つまり、俺たちは両想いと。ラブラブチュッチュと」
「てっ、テメェ! 人としての話なんだろーが、今は!」
「やあ、忘れてた」
ぜってー嘘だ。ニヤニヤ笑いやがって。
……うう、なんで両想いって台詞だけでこんな嬉しいんだよ、オレッ!
「かおる、顔がニヨニヨしてますが、何か異様な病気?」
「異様とか言うなッ!」
「はっはっは。まーなんだ、これからもどうか仲良くお願いしませう」
笑いながらオレの頭に手を乗せるタカシに、オレは笑顔にならないよう必死でふて腐れるフリをするのだった。
【ツンデレは寝不足なようです】
2010年02月25日
先生が子供で困る。いや、精神年齢でなく、実年齢が。特例で先生になったらしい。
「う~……出席取るから席に着け、愚民ども」
そんな先生が目をこすりながら教室に入ってきた。だらだら出席を取った後、先生は大きくあくびをした。
「ふあああああ……ふう。えーと、今日は自習。てけとーに勉強してろ。騒いだら停学だかんな」
そう言って、先生は教室を出て行った。
……なんという横暴だろうか。先生という権力をかさに着て生徒に苦行を布き、自分は寝ると? 許せない、許せるものか! クラスを代表してばにゅーんと言ってやる!
「べ、別府くん? どこ行くの? 自習しないの?」
「決して寝込みを襲おうとか思ってないから安心しろ」
「ものすっごい不安なことを言い残してどこ行くの!? 別府くーん!」
隣の女生徒が何か叫んでた。
教師に見つからないようにしながら、どうにか子供先生が半ば自室にしている化学準備室に到着した。鍵は……む、かかってる。まあ、合鍵あるから平気さ。
鍵穴に鍵をさしこみ、くるりと回す。軽い抵抗があり、鍵が開いた。音を立てないようにドアを開け、素早く室内に入り、静かにドアを閉める。
「……ご、ごごごごごご……ぐおおお~っ」
可愛さの欠片もない寝息を立てる子供がソファーで寝てた。
「声だけだとおっさんだな」
ただ、寝顔は歳相応で可愛かった。いや、俺はロリコンじゃないので欲情はしませんが。本当に。マジで。
なに、信じられないだと! よし分かった、俺がロリコンじゃない事を証明してやる!
大義名分は整ったのでいたづら開始。信じられないと言った幻聴に感謝。まずはほっぺをふにふにするゼ!
「んー……んあ?」
起きた。全くいたづらできなかった。神を呪わずにはいられない。
「んあっ!? ななっ、なんで別府がここにいるんだっ!?」
「許せねえ……絶対殺す」
「ぴきゃあああっ!?」
物凄く怯えられた。
「あ、いや、違うぞ? 俺は神を呪っただけで、先生に言ったんじゃないぞ?」
「だっ、ダメだぞっ! 先生を殺したりしたら警察の人に怒られるんだかんなっ!」
別に先生に限らず、誰かを殺すと捕まります。
「いーから落ち着け」
ほっぺをむにーっとして落ち着かせる。
「は、ははへーっ!(は、はなせー!)」
「落ち着いたか?」
「ほふふふは、ははっ!(落ち着くか、馬鹿!)」
なんだかとってもムカついたので、さらにほっぺを引っ張る。
「ふひゅーっ! ふひふふはふーっ!(訳不能)」
「落ち着いた?」
涙目でコクコク頷かれたので、手を離してあげる。
「うああああ……痛いぃ……」
先生は真っ赤なほっぺをさすった。
「大丈夫、泣き顔の先生も可愛いよ?」
「ぜんっっっぜん嬉しくないっ!」
「というか、そそる」
「へ……変態だーっ!」
「先生、たとえ眠くても授業はちゃんとしたほうがいいと思うぞ」
「変態について何か言及しろっ!」
何を今さら。
「……まあいいや。で、なんでここにいるんだ、別府? 自習してろって言ったじゃんか」
「さっきも言ったように、授業をしろと提言を」
「眠いから嫌だ」
簡単に断られた。なんだこのわがまま先生は。
「あんまりわがまま言うと、怒るぞ」
「別府なんかに怒られても怖くないよーだ」
そう言って、先生はあっかんべーをした。なんだその時代錯誤。つーか、さっきメチャメチャ怯えてたの誰だ。
「俺を怒らせると、おしりぺんぺんという名の尻触りまくり大会が開かれるぞ」
「へ……変態だーっ!」
「ということで、触るぞ」
「だから、変態について言及しろっ! ていうか触んな、ばかっ!」
尻を触ろうとしたらげしげし蹴られた。非常に残念。
「あーもう、いーじゃんちょっとくらい寝ても。昨日寝るの遅かったからねみーんだよ」
「だからあれほど早く寝ろと言ったのに……」
「あーうっさいうっさいうっさい! ぐちぐち言うな! おまえ私のママか!」
「ただの下宿人です」
何の因果か俺はさる事情により、こいつの家に下宿している。
「なんでお前は眠くねーんだ? 朝の3時くらいまで一緒に桃鉄してたのに……」
先生は大きくあくびをした。女の子なんだからちょっとくらい隠せ。
「先生と違い、大人ですから」
「んだよ……私が子供だってばかにしてんのか!」
「いや、子供は大好きなので馬鹿になんて。……大好きと言ったけど、ロリコンじゃないよ?」
「心底信用できねー」
「よし、なら幼女の裸に興奮するかテストだ。舞台は病院、俺が医者で先生が患者な。ちみちみ、診察するので服脱いで」
「ただのお医者さんごっこじゃねーか! やっぱお前ロリコンだ!」
なかなか信用されなかった。
「まぁどうでもいいか。それより授業しろ、授業」
「……あー、ダメだ。やっぱ眠い。起きたら授業してやっから、ちょっとだけ寝かせろ」
先生はソファに寝そべり、目をつむってしまった。こりゃ無理かな。
「しょうがない先生だな……ちょっとだけだぞ?」
先生の隣にこしかけ、さらさらの髪をすくようになでる。
「むー……なんか低い。おい別府、枕になれ」
「はい?」
「だから……こうだよ、こう」
じりじりとにじり寄り、先生は俺の太ももに頭を乗せた。
「これでよし。はふー」
満足したように息を吐く先生だったが、すぐに目を開いた。
「むー……固くて寝にくい」
「じゃあ膝枕やめて、普通に寝ろ」
「それは嫌だ。理由は別府には秘密なのだー」
イタズラっぽく言って、先生は目をつむった。それから一分もしないうちに、先生はまたおっさんのような寝息を立て始めた。
「……あれ、ひょっとして俺戻れないんじゃ?」
涎を垂らし始めた先生の寝顔を見ながら、まあいいかと思う俺だった。
「う~……出席取るから席に着け、愚民ども」
そんな先生が目をこすりながら教室に入ってきた。だらだら出席を取った後、先生は大きくあくびをした。
「ふあああああ……ふう。えーと、今日は自習。てけとーに勉強してろ。騒いだら停学だかんな」
そう言って、先生は教室を出て行った。
……なんという横暴だろうか。先生という権力をかさに着て生徒に苦行を布き、自分は寝ると? 許せない、許せるものか! クラスを代表してばにゅーんと言ってやる!
「べ、別府くん? どこ行くの? 自習しないの?」
「決して寝込みを襲おうとか思ってないから安心しろ」
「ものすっごい不安なことを言い残してどこ行くの!? 別府くーん!」
隣の女生徒が何か叫んでた。
教師に見つからないようにしながら、どうにか子供先生が半ば自室にしている化学準備室に到着した。鍵は……む、かかってる。まあ、合鍵あるから平気さ。
鍵穴に鍵をさしこみ、くるりと回す。軽い抵抗があり、鍵が開いた。音を立てないようにドアを開け、素早く室内に入り、静かにドアを閉める。
「……ご、ごごごごごご……ぐおおお~っ」
可愛さの欠片もない寝息を立てる子供がソファーで寝てた。
「声だけだとおっさんだな」
ただ、寝顔は歳相応で可愛かった。いや、俺はロリコンじゃないので欲情はしませんが。本当に。マジで。
なに、信じられないだと! よし分かった、俺がロリコンじゃない事を証明してやる!
大義名分は整ったのでいたづら開始。信じられないと言った幻聴に感謝。まずはほっぺをふにふにするゼ!
「んー……んあ?」
起きた。全くいたづらできなかった。神を呪わずにはいられない。
「んあっ!? ななっ、なんで別府がここにいるんだっ!?」
「許せねえ……絶対殺す」
「ぴきゃあああっ!?」
物凄く怯えられた。
「あ、いや、違うぞ? 俺は神を呪っただけで、先生に言ったんじゃないぞ?」
「だっ、ダメだぞっ! 先生を殺したりしたら警察の人に怒られるんだかんなっ!」
別に先生に限らず、誰かを殺すと捕まります。
「いーから落ち着け」
ほっぺをむにーっとして落ち着かせる。
「は、ははへーっ!(は、はなせー!)」
「落ち着いたか?」
「ほふふふは、ははっ!(落ち着くか、馬鹿!)」
なんだかとってもムカついたので、さらにほっぺを引っ張る。
「ふひゅーっ! ふひふふはふーっ!(訳不能)」
「落ち着いた?」
涙目でコクコク頷かれたので、手を離してあげる。
「うああああ……痛いぃ……」
先生は真っ赤なほっぺをさすった。
「大丈夫、泣き顔の先生も可愛いよ?」
「ぜんっっっぜん嬉しくないっ!」
「というか、そそる」
「へ……変態だーっ!」
「先生、たとえ眠くても授業はちゃんとしたほうがいいと思うぞ」
「変態について何か言及しろっ!」
何を今さら。
「……まあいいや。で、なんでここにいるんだ、別府? 自習してろって言ったじゃんか」
「さっきも言ったように、授業をしろと提言を」
「眠いから嫌だ」
簡単に断られた。なんだこのわがまま先生は。
「あんまりわがまま言うと、怒るぞ」
「別府なんかに怒られても怖くないよーだ」
そう言って、先生はあっかんべーをした。なんだその時代錯誤。つーか、さっきメチャメチャ怯えてたの誰だ。
「俺を怒らせると、おしりぺんぺんという名の尻触りまくり大会が開かれるぞ」
「へ……変態だーっ!」
「ということで、触るぞ」
「だから、変態について言及しろっ! ていうか触んな、ばかっ!」
尻を触ろうとしたらげしげし蹴られた。非常に残念。
「あーもう、いーじゃんちょっとくらい寝ても。昨日寝るの遅かったからねみーんだよ」
「だからあれほど早く寝ろと言ったのに……」
「あーうっさいうっさいうっさい! ぐちぐち言うな! おまえ私のママか!」
「ただの下宿人です」
何の因果か俺はさる事情により、こいつの家に下宿している。
「なんでお前は眠くねーんだ? 朝の3時くらいまで一緒に桃鉄してたのに……」
先生は大きくあくびをした。女の子なんだからちょっとくらい隠せ。
「先生と違い、大人ですから」
「んだよ……私が子供だってばかにしてんのか!」
「いや、子供は大好きなので馬鹿になんて。……大好きと言ったけど、ロリコンじゃないよ?」
「心底信用できねー」
「よし、なら幼女の裸に興奮するかテストだ。舞台は病院、俺が医者で先生が患者な。ちみちみ、診察するので服脱いで」
「ただのお医者さんごっこじゃねーか! やっぱお前ロリコンだ!」
なかなか信用されなかった。
「まぁどうでもいいか。それより授業しろ、授業」
「……あー、ダメだ。やっぱ眠い。起きたら授業してやっから、ちょっとだけ寝かせろ」
先生はソファに寝そべり、目をつむってしまった。こりゃ無理かな。
「しょうがない先生だな……ちょっとだけだぞ?」
先生の隣にこしかけ、さらさらの髪をすくようになでる。
「むー……なんか低い。おい別府、枕になれ」
「はい?」
「だから……こうだよ、こう」
じりじりとにじり寄り、先生は俺の太ももに頭を乗せた。
「これでよし。はふー」
満足したように息を吐く先生だったが、すぐに目を開いた。
「むー……固くて寝にくい」
「じゃあ膝枕やめて、普通に寝ろ」
「それは嫌だ。理由は別府には秘密なのだー」
イタズラっぽく言って、先生は目をつむった。それから一分もしないうちに、先生はまたおっさんのような寝息を立て始めた。
「……あれ、ひょっとして俺戻れないんじゃ?」
涎を垂らし始めた先生の寝顔を見ながら、まあいいかと思う俺だった。
【成り行きでスク水を着ることになったちゅんでれ】
2010年02月24日
「娘よ、深い意味は全くないが、スク水を着てはどうかな?」
気のせいかもしれないが、近頃小学生の娘が父である俺をまるで犯罪者か何かでも見るかのように見る。
「……父はなぜ捕まらないのだ?」
「警察に知り合いがいるからじゃないか?」
「やはり裏に手を回していたか……現行犯でなければ無理か」
気のせいではなく、娘の中で俺は凶悪犯に仕立て上げられているようだ。
「冗談、冗談だ、娘よ。父に警察官の知り合いはいない。父は善良なる小市民であり、悪行を嫌う正義の人であるからして、捕まっていないのだ」
「しかし、父は娘である私に色々色々卑猥なことをしているだろう」
「し、失敬な! 卑猥な行為など一度たりともしたことない! せいぜい娘が風呂に入ってる所をこそっと覗……げふんげふん、見守ったり、一緒に寝る際、ばれないようにこそっと触っ……げふんげふん、異常はないか触診するだけだ!」
「耳障りのよい言葉にしたところで犯罪は犯罪だぞ、父」
「お、誤魔化されないか? 流石は娘だ、偉いぞ。はっはっは」
笑いながら娘の頭に手を置き、わしわしと撫でる。
「何を笑っているのか、この父は……」
はぁ、と大きく息を吐く娘だった。
「それで、ええとなんだったか……ああそうだ、スクール水着だったな。しかし、随分と季節外れだな、父」
「いや、深い理由はないのだが、強いて言うなら、父はスク水が見たいのだ」
娘は呆れたように頭を振った。
「なら、水着だけ見ればいいだろう。何もわざわざ私が着る必要もあるまい」
「馬鹿者! 水着単品に何の魅力があろうか! スクール水着+つるぺた娘で始めて輝く何かが現れるに決まっているだろう! その程度、父の娘であるなら理解しておけ!」
「こんなことで怒られるのは、私くらいだろうな……」
どこか達観したような顔つきで窓の外に目を向ける娘だった。
「とにかく、父はスク水を装着した娘を見たいのだ。着てくれないと仕事辞めるぞ」
「私の知ったことか。辞めて飢え死にするがいい」
「嫌だあ、飢え死には嫌だあ! できれば腹上死がいい! 説明しよう! 腹上死とは」
「いい。知ってる。喋るな。……まったく、誰か父を介護してくれないものかな」
「はっはっは、なかなか機知に富んだジョークを言うなあ、娘よ」
「私はいつだって本気だが」
冗談だといいなあ。
「まあ冗談はともかく、娘がスク水を着てくれないと仕事がはかどらないのだ。どうか着てはくれまいか?」
スク水を着てくれたら仕事もやる気が出るかと思い、そう言ってみる。
「仕事……? なんだ、仕事に関係があるのか。それなら最初から言え。着てやろう」
「やった! 着て着て!」
踊りながら引き出しを漁り、取り出したスク水を娘に渡す。
「いちいち踊るな、鬱陶しい」
「む、すまない。父は嬉しいと、つい踊ってしまうのだ。喜びが体の外に漏れ出す性質なのだ」
そう言いながらも、父の体は踊るのを止めようとはしなかった。
「だから、踊るなと言っている!」
叱られたので、体育座りで娘が着替えるのをじぃーっと待つ。しかし、いつまでたっても娘は着替える気配を見せなかった。
「うはうは生着替えショーはまだか、娘?」
「出てけ」
部屋から追い出されてしまった。廊下で暗がりをじっと見つめて待つ。数分の後、暗がりが得体の知れない何かに見えてきたところで、娘から声がかかった。
「いいぞ、父」
「む、娘! 暗がりに何かが潜んでいるという想念が父を捕らえて離さないのだ! 助けて!」
ドアを開け、そのまま娘の足元に滑り込み、すべすべの足にすがりつく。
「触るな」
お腹を思い切り踏まれた。痛い。
「いたた……娘よ、手を出すのはよくないことだ。気をつけよ」
「足だ、問題ない」
「娘よ、父が言いたいのは手か足かではなく、暴力全般はよくないと……」
視線を足から上に向けた瞬間、言葉を失ってしまった。
「……父? どうした」
「あー……いや」
一体なんと説明したものだろうか。そこにあるのは確かに娘がスク水を着ただけのモノなのだが、それだけのモノがどうしてこんなにも心惹かれるのか。
やはり乳か? 膨らみは一体どこに消えたかと思わんばかりの平らさを誇る胸部が父の心を惹き付けて離さないのか? それとも……
「や、その、……とてもよく似合うぞ。流石は父の娘だ」
「ふん。褒められたところで、全く嬉しくもない」
そう言いながらも、娘の頬は少しだけひくついていた。
「うん、可愛い可愛い。流石は自慢の娘、どこに出しても恥ずかしくないな」
「まったく、何を言っているのか。親馬鹿にもほどがあるぞ」
「仕方ないだろう、可愛いのだから」
娘の黒髪をすくように、頭をゆっくりなでる。
「む……こ、子供じゃないんだ、こんなことやめよ」
言葉とは反して、娘は満更でもなさそうに目を細め、俺のされるがままに頭をなでられていた。
「いやいや、小学生は立派な子供だと思うが」
「精神的な話だ。私の心は成熟していると思うが」
「成熟、というか、侍みたいな口調だけどな」
「……父のせいだぞ。父がそんな口調だから、私に移ったのだ」
「父はそんな口調じゃないもそよ?」
「父が急に安っぽいキャラづけを!?」
「娘も語尾に“にょ”とかつけるもそ」
「断固断る。父もそれやめよ」
少し残念。
「……それで、いつまで私の頭をなでているのだ?」
「あ」
言われて気づいたが、ずっと娘の頭をなでていた。
「確かに、二人差し向かいで頭なでるのは変だな。よし娘、ここに座れ」
その場にあぐらをかいて座り、膝の上をぽんぽん叩いて娘を促す。
「そ、そういうことではなくて、頭をなでることを……」
「ほれ。な? 座れ?」
「……しょ、しょうがないな、父は。……特別だぞ?」
娘は頬を染め、恐る恐る俺の膝に腰を下ろした。ほにゅんとしたお尻の柔らかさが脳髄を刺激する。ちょっと狂いそう。
「ち、父? どうした? 何か危ない薬に手を出してるのか?」
「だ、出してない、父は出してないぞお……」
父性から誘ったものの、性の欲が顔を出しそうで怖すぎる。こんな時は沈静呪文だ! 俺は父俺は父俺は父。
……よし、大丈夫。もうこれで完全に父モード。
「父、お尻の下に何か固いものがあるのだが……これは何だ?」
ちっとも父モードじゃねえ。最低だ、俺。とにかく、今はこの状況を回避せねば!
「む、娘よ。ちょっとだけどいてはくれないだろうか」
「むぅ……なんだろうな、これは」
何も知らない娘は、俺の膝の上で8の字を書くようにお尻を動かした。
「あー」
そんなことをされたら、もうダメです。
「きゃうっ!? ななっ、何かお尻に挟まった、挟まったぞ!?」
「oh」
「ohじゃないっ! ち、父、なんだこれは、一体何があるのだ?」
お願い、聞かないで。
「熱くて、硬くて、……なんだかドクンドクンと脈打ってるぞ?」
お願い、細かく描写しないで。
「……ん? まさか、……まさかまさか」
お願い、気づかないで。
しかし、俺の願いも届かず、娘は大きく大きく息を吸い込んだ。
「……ああ父は娘である私を性欲の対象として見るッ! なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうかッ!」
部屋が震えるほどの大声で、娘は言い放った。間違いなく隣近所まで届いているだろう。明日、どんな顔をして挨拶すればいいと言うのか。
「む、娘よ、そういったことは大声で言うのはどうかと父は思うな。そ、それにな、父は娘をそんな対象として見てないぞー?」
「じゃあ私のお尻の下にある固いものの説明をせよっ!」
「別次元からテレポートしてきた宇宙熱源棒、もしくは地中から迷い込んできた巨大モグラ」
「……じゃあどいて確認してみよう」
腰を上げようとする娘の肩に手をやり、必死で制止する。今どかれると、何かがぴょこんと持ち上がること請け合い!
「ち、父が悪かった。だから、どくのだけは勘弁願いたい!」
「……新しい靴が欲しいなぁ」
「買う買う、買ってやる」
「それから、パフェ食べたいなぁ」
「分かった。次の休み……あ、締め切りが」
「……さて、そろそろどくか」
「次の休日に食べに行こうなあ! 楽しみだ、ああ楽しみだ楽しみだ!」
半ばヤケクソにそう叫ぶ。うう……今日から徹夜だ。
「……ふう。仕方ない、それで手を打ってやろう。私に感謝するのだな、父」
起こしかけた腰を再び下ろし、娘は俺に体を預けた。そして肩越しに振り向き、にっこり笑った。
その笑顔を堪能している間にも、俺は必死で頭の中で数式を並べ、冷却に全力を尽くしているのだった。
気のせいかもしれないが、近頃小学生の娘が父である俺をまるで犯罪者か何かでも見るかのように見る。
「……父はなぜ捕まらないのだ?」
「警察に知り合いがいるからじゃないか?」
「やはり裏に手を回していたか……現行犯でなければ無理か」
気のせいではなく、娘の中で俺は凶悪犯に仕立て上げられているようだ。
「冗談、冗談だ、娘よ。父に警察官の知り合いはいない。父は善良なる小市民であり、悪行を嫌う正義の人であるからして、捕まっていないのだ」
「しかし、父は娘である私に色々色々卑猥なことをしているだろう」
「し、失敬な! 卑猥な行為など一度たりともしたことない! せいぜい娘が風呂に入ってる所をこそっと覗……げふんげふん、見守ったり、一緒に寝る際、ばれないようにこそっと触っ……げふんげふん、異常はないか触診するだけだ!」
「耳障りのよい言葉にしたところで犯罪は犯罪だぞ、父」
「お、誤魔化されないか? 流石は娘だ、偉いぞ。はっはっは」
笑いながら娘の頭に手を置き、わしわしと撫でる。
「何を笑っているのか、この父は……」
はぁ、と大きく息を吐く娘だった。
「それで、ええとなんだったか……ああそうだ、スクール水着だったな。しかし、随分と季節外れだな、父」
「いや、深い理由はないのだが、強いて言うなら、父はスク水が見たいのだ」
娘は呆れたように頭を振った。
「なら、水着だけ見ればいいだろう。何もわざわざ私が着る必要もあるまい」
「馬鹿者! 水着単品に何の魅力があろうか! スクール水着+つるぺた娘で始めて輝く何かが現れるに決まっているだろう! その程度、父の娘であるなら理解しておけ!」
「こんなことで怒られるのは、私くらいだろうな……」
どこか達観したような顔つきで窓の外に目を向ける娘だった。
「とにかく、父はスク水を装着した娘を見たいのだ。着てくれないと仕事辞めるぞ」
「私の知ったことか。辞めて飢え死にするがいい」
「嫌だあ、飢え死には嫌だあ! できれば腹上死がいい! 説明しよう! 腹上死とは」
「いい。知ってる。喋るな。……まったく、誰か父を介護してくれないものかな」
「はっはっは、なかなか機知に富んだジョークを言うなあ、娘よ」
「私はいつだって本気だが」
冗談だといいなあ。
「まあ冗談はともかく、娘がスク水を着てくれないと仕事がはかどらないのだ。どうか着てはくれまいか?」
スク水を着てくれたら仕事もやる気が出るかと思い、そう言ってみる。
「仕事……? なんだ、仕事に関係があるのか。それなら最初から言え。着てやろう」
「やった! 着て着て!」
踊りながら引き出しを漁り、取り出したスク水を娘に渡す。
「いちいち踊るな、鬱陶しい」
「む、すまない。父は嬉しいと、つい踊ってしまうのだ。喜びが体の外に漏れ出す性質なのだ」
そう言いながらも、父の体は踊るのを止めようとはしなかった。
「だから、踊るなと言っている!」
叱られたので、体育座りで娘が着替えるのをじぃーっと待つ。しかし、いつまでたっても娘は着替える気配を見せなかった。
「うはうは生着替えショーはまだか、娘?」
「出てけ」
部屋から追い出されてしまった。廊下で暗がりをじっと見つめて待つ。数分の後、暗がりが得体の知れない何かに見えてきたところで、娘から声がかかった。
「いいぞ、父」
「む、娘! 暗がりに何かが潜んでいるという想念が父を捕らえて離さないのだ! 助けて!」
ドアを開け、そのまま娘の足元に滑り込み、すべすべの足にすがりつく。
「触るな」
お腹を思い切り踏まれた。痛い。
「いたた……娘よ、手を出すのはよくないことだ。気をつけよ」
「足だ、問題ない」
「娘よ、父が言いたいのは手か足かではなく、暴力全般はよくないと……」
視線を足から上に向けた瞬間、言葉を失ってしまった。
「……父? どうした」
「あー……いや」
一体なんと説明したものだろうか。そこにあるのは確かに娘がスク水を着ただけのモノなのだが、それだけのモノがどうしてこんなにも心惹かれるのか。
やはり乳か? 膨らみは一体どこに消えたかと思わんばかりの平らさを誇る胸部が父の心を惹き付けて離さないのか? それとも……
「や、その、……とてもよく似合うぞ。流石は父の娘だ」
「ふん。褒められたところで、全く嬉しくもない」
そう言いながらも、娘の頬は少しだけひくついていた。
「うん、可愛い可愛い。流石は自慢の娘、どこに出しても恥ずかしくないな」
「まったく、何を言っているのか。親馬鹿にもほどがあるぞ」
「仕方ないだろう、可愛いのだから」
娘の黒髪をすくように、頭をゆっくりなでる。
「む……こ、子供じゃないんだ、こんなことやめよ」
言葉とは反して、娘は満更でもなさそうに目を細め、俺のされるがままに頭をなでられていた。
「いやいや、小学生は立派な子供だと思うが」
「精神的な話だ。私の心は成熟していると思うが」
「成熟、というか、侍みたいな口調だけどな」
「……父のせいだぞ。父がそんな口調だから、私に移ったのだ」
「父はそんな口調じゃないもそよ?」
「父が急に安っぽいキャラづけを!?」
「娘も語尾に“にょ”とかつけるもそ」
「断固断る。父もそれやめよ」
少し残念。
「……それで、いつまで私の頭をなでているのだ?」
「あ」
言われて気づいたが、ずっと娘の頭をなでていた。
「確かに、二人差し向かいで頭なでるのは変だな。よし娘、ここに座れ」
その場にあぐらをかいて座り、膝の上をぽんぽん叩いて娘を促す。
「そ、そういうことではなくて、頭をなでることを……」
「ほれ。な? 座れ?」
「……しょ、しょうがないな、父は。……特別だぞ?」
娘は頬を染め、恐る恐る俺の膝に腰を下ろした。ほにゅんとしたお尻の柔らかさが脳髄を刺激する。ちょっと狂いそう。
「ち、父? どうした? 何か危ない薬に手を出してるのか?」
「だ、出してない、父は出してないぞお……」
父性から誘ったものの、性の欲が顔を出しそうで怖すぎる。こんな時は沈静呪文だ! 俺は父俺は父俺は父。
……よし、大丈夫。もうこれで完全に父モード。
「父、お尻の下に何か固いものがあるのだが……これは何だ?」
ちっとも父モードじゃねえ。最低だ、俺。とにかく、今はこの状況を回避せねば!
「む、娘よ。ちょっとだけどいてはくれないだろうか」
「むぅ……なんだろうな、これは」
何も知らない娘は、俺の膝の上で8の字を書くようにお尻を動かした。
「あー」
そんなことをされたら、もうダメです。
「きゃうっ!? ななっ、何かお尻に挟まった、挟まったぞ!?」
「oh」
「ohじゃないっ! ち、父、なんだこれは、一体何があるのだ?」
お願い、聞かないで。
「熱くて、硬くて、……なんだかドクンドクンと脈打ってるぞ?」
お願い、細かく描写しないで。
「……ん? まさか、……まさかまさか」
お願い、気づかないで。
しかし、俺の願いも届かず、娘は大きく大きく息を吸い込んだ。
「……ああ父は娘である私を性欲の対象として見るッ! なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうかッ!」
部屋が震えるほどの大声で、娘は言い放った。間違いなく隣近所まで届いているだろう。明日、どんな顔をして挨拶すればいいと言うのか。
「む、娘よ、そういったことは大声で言うのはどうかと父は思うな。そ、それにな、父は娘をそんな対象として見てないぞー?」
「じゃあ私のお尻の下にある固いものの説明をせよっ!」
「別次元からテレポートしてきた宇宙熱源棒、もしくは地中から迷い込んできた巨大モグラ」
「……じゃあどいて確認してみよう」
腰を上げようとする娘の肩に手をやり、必死で制止する。今どかれると、何かがぴょこんと持ち上がること請け合い!
「ち、父が悪かった。だから、どくのだけは勘弁願いたい!」
「……新しい靴が欲しいなぁ」
「買う買う、買ってやる」
「それから、パフェ食べたいなぁ」
「分かった。次の休み……あ、締め切りが」
「……さて、そろそろどくか」
「次の休日に食べに行こうなあ! 楽しみだ、ああ楽しみだ楽しみだ!」
半ばヤケクソにそう叫ぶ。うう……今日から徹夜だ。
「……ふう。仕方ない、それで手を打ってやろう。私に感謝するのだな、父」
起こしかけた腰を再び下ろし、娘は俺に体を預けた。そして肩越しに振り向き、にっこり笑った。
その笑顔を堪能している間にも、俺は必死で頭の中で数式を並べ、冷却に全力を尽くしているのだった。
【男を名前で呼ぶのが照れ臭いちゅんでれ】
2010年02月24日
カチ……カチ……
『ヒロユキちゃん、みーつけた』
「……ああ、いいなあ。こんな恋愛したかったなあ。はうう」
「そうか。そう思うのは構わないが、口に出すな。気持ち悪いぞ」
昔のエロゲをこっそりやってたら、いつの間にか小学生の娘が背後にいて酷い言葉を浴びせる。慌ててディスプレイを切り、何事もないような態度をとる。
「ののののののノックくらいしてはどうかな、娘よ?」
「父、動揺が過ぎるぞ。それに、ノックなら何度もした。大方ゲームに集中しており気づかなかったのであろう」
「む。確かに並々ならぬ集中力を発揮していたことは否定できない。……あ、いや。ゲームとはなんのことであろうか? 父は仕事をしていたのだぞ?」
「えい」
「あ」
ディスプレイがつけられてしまった。画面に赤毛の少女が映る。
「これが仕事か。私にはゲームを楽しんでいるようにしか思えないが」
「ははっ、そんなわけないじゃないか。まったく、娘はお馬鹿だなあ。もっとも、馬鹿な子ほど可愛いというし、そんなお馬鹿な娘を父は溺愛しているぞ」
「誰がお馬鹿か! 仕事をしていたと、父が先に言い出したことであろう!」
「たわけ! 無様な言い訳に決まっているだろう!」
「どうしてそこで誇らしげにできるのだ……」
がっくりうな垂れる娘だった。
「まあばれてしまったものは仕方がない。娘よ、画面を見れ。ほーら、あかりちゃんだよー。可愛いねー」
「いかん、父が異様なほど気持ち悪い!」
娘が冷たい。
「というか、私は未成年なのでこのような18禁ゲームを見てはいけないだろう。父が率先して見せてどうするか」
「気にするな。エロいシーンを見なければ済む話だ」
「しかし、父は変態なのでエロいシーンを私に見せ付け、恥ずかしがる私を見ようとするからなあ。そして一人悦に浸るに決まっているからなあ」
娘の中の父親像はとても歪んでいるようだった。
「……しかし、『ヒロユキちゃん』、か。実名でやらないのか?」
「長らく呼ばれていないため、忘れてしまったんだ」
「自分の名前を忘れる奴がいるか!」
「いや、もちろん冗談だ。実名でやるのはなんだか照れ臭くてな。……そうだ! 娘が呼んではくれまいか?」
「わ、私がか!?」
よほど意外だったのか、娘は目を大きく見開いて自分を指した。
「家族が名前を呼び合うなど、普通のことだろう。さ、呼べ」
「む、むぅ……い、いいではないか、今まで通り父と呼べば。な?」
「それでは親子と間違われるぞ?」
「立派な親子だろう! ……いや、父は立派ではないが」
「ふふん、そんなこと当の昔に知っているわ!」
「だから、どうして誇らしげなのだ……」
悲しそうな娘だった。
「さて。それじゃ娘よ、我が名を呼べ!」
「む、むぅ……わ、分かった。そこまで言うなら言ってやる! 覚悟しろ、父!」
娘は両手を握り締め、気合を入れた。
「娘よ、その意気だ! 娘が言ったなら、父も娘を名前で呼んでやろう。名を呼び合うだなんて、まるで恋人同士のようだなあと思った」
「言わん、名前なぞ絶対に言わんぞ!」
余計な事を言ってしまったためか、娘は頑なになってしまった。訂正せねば。
「間違い間違い。名前で呼び合うだなんて、まるで夫婦のようだなあ」
「悪化しているぞっ!?」
「気のせいだろう。さ、娘よ。我が名を呼べ」
「だから、言わんと言ったら言わん!」
「言ったらパフェ」
「む……そ、そのようなものに釣られるほど、私は子供ではないぞ」
言葉の上では断っているが、視線が物欲しそうだ。もう少し引っ張ればいけそうだ。
「ケーキもつける」
「……い、いちごの乗ってるやつか?」
「うむ」
「……うう、ううう……」
娘は頭を抱え、とても懊悩としているようだった。そこまで悩むことでもないと思うが……。
「……わ、分かった。父の言うとおりにしてやる。だ、だが! いちごの乗ってるやつのためだからな! 決して父を喜ばせるために言うのではないからな!」
「いーから早く」
娘は俺の耳元に顔を寄せ、小さく俺の名を言った。
「や、たまにはいいものだな」
「い、言ったぞ! 確かに言ったぞ! ほら、父も約束を果たせ!」
「あい分かった、父に任せろ!」
耳元に顔を寄せ、娘の名を甘く囁く。
「ほひゃやああ!?」
飛ぶように後ろに下がり、娘は真っ赤な顔で耳を押さえた。
「どうだ? たまにはよいものだろう?」
「こ、こ、こんな約束はしてない! いちごの乗ってるやつという話だろう!」
「あれ、そうだったか……? まあいいか。しかし、呼ばれるのもよいが、呼ぶのもよいな。娘よ、もう一度いいか?」
「断固断るッ! 何が楽しくて親子で名を呼び合うか!」
「名前呼ばないで耳に息吹きかけるだけにするから」
「目的がすり変わっているぞ!?」
「いや、思いのほか耳に弱いと知ったのでな。えい、ふー」
「んきゅっ……」
耳に息を吹きかけると、娘は体を身悶えさせた。
「……おのれ。よくも辱めを」
俺を睨んだかと思うと、娘は大きく息を吸い込んだ。いかん。
「あああの娘よあまり大きな声を出すのは近所迷惑かと」
「……ああ父は娘である私を性欲の対象として見るッ! なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうかッ!」
制止するもいつもの台詞が出てしまい、窓がビリビリと震える。遅れて近所の犬が吠え出した。
「ふふ。また近所の人に謝って回らないといけないなあ」
「何を泣いている。自業自得だ、馬鹿め。まったく、世が世なら今頃父は捕まっているぞ」
「耳に息を吹きかけただけで捕まるとは、世も末だな」
「うううるさい! 耳のことは言うな! ほら、そんなのどうでもいいからケーキ屋に行くぞ! 約束は果たさないといけないからな!」
「それは分かるが……寒いし、今度にしないか?」
それに、今出るとご近所の皆さんにどんな目で見られるか分かったもんじゃない。
「何を年寄り臭い事を……ほら、早く支度しろっ!」
尻を蹴飛ばされたので、しぶしぶ支度する俺だった。
「……ふふ、いちごの乗ってるやつ食べるの、久しぶりだな」
……まあ、娘も嬉しそうだし、いっか。
『ヒロユキちゃん、みーつけた』
「……ああ、いいなあ。こんな恋愛したかったなあ。はうう」
「そうか。そう思うのは構わないが、口に出すな。気持ち悪いぞ」
昔のエロゲをこっそりやってたら、いつの間にか小学生の娘が背後にいて酷い言葉を浴びせる。慌ててディスプレイを切り、何事もないような態度をとる。
「ののののののノックくらいしてはどうかな、娘よ?」
「父、動揺が過ぎるぞ。それに、ノックなら何度もした。大方ゲームに集中しており気づかなかったのであろう」
「む。確かに並々ならぬ集中力を発揮していたことは否定できない。……あ、いや。ゲームとはなんのことであろうか? 父は仕事をしていたのだぞ?」
「えい」
「あ」
ディスプレイがつけられてしまった。画面に赤毛の少女が映る。
「これが仕事か。私にはゲームを楽しんでいるようにしか思えないが」
「ははっ、そんなわけないじゃないか。まったく、娘はお馬鹿だなあ。もっとも、馬鹿な子ほど可愛いというし、そんなお馬鹿な娘を父は溺愛しているぞ」
「誰がお馬鹿か! 仕事をしていたと、父が先に言い出したことであろう!」
「たわけ! 無様な言い訳に決まっているだろう!」
「どうしてそこで誇らしげにできるのだ……」
がっくりうな垂れる娘だった。
「まあばれてしまったものは仕方がない。娘よ、画面を見れ。ほーら、あかりちゃんだよー。可愛いねー」
「いかん、父が異様なほど気持ち悪い!」
娘が冷たい。
「というか、私は未成年なのでこのような18禁ゲームを見てはいけないだろう。父が率先して見せてどうするか」
「気にするな。エロいシーンを見なければ済む話だ」
「しかし、父は変態なのでエロいシーンを私に見せ付け、恥ずかしがる私を見ようとするからなあ。そして一人悦に浸るに決まっているからなあ」
娘の中の父親像はとても歪んでいるようだった。
「……しかし、『ヒロユキちゃん』、か。実名でやらないのか?」
「長らく呼ばれていないため、忘れてしまったんだ」
「自分の名前を忘れる奴がいるか!」
「いや、もちろん冗談だ。実名でやるのはなんだか照れ臭くてな。……そうだ! 娘が呼んではくれまいか?」
「わ、私がか!?」
よほど意外だったのか、娘は目を大きく見開いて自分を指した。
「家族が名前を呼び合うなど、普通のことだろう。さ、呼べ」
「む、むぅ……い、いいではないか、今まで通り父と呼べば。な?」
「それでは親子と間違われるぞ?」
「立派な親子だろう! ……いや、父は立派ではないが」
「ふふん、そんなこと当の昔に知っているわ!」
「だから、どうして誇らしげなのだ……」
悲しそうな娘だった。
「さて。それじゃ娘よ、我が名を呼べ!」
「む、むぅ……わ、分かった。そこまで言うなら言ってやる! 覚悟しろ、父!」
娘は両手を握り締め、気合を入れた。
「娘よ、その意気だ! 娘が言ったなら、父も娘を名前で呼んでやろう。名を呼び合うだなんて、まるで恋人同士のようだなあと思った」
「言わん、名前なぞ絶対に言わんぞ!」
余計な事を言ってしまったためか、娘は頑なになってしまった。訂正せねば。
「間違い間違い。名前で呼び合うだなんて、まるで夫婦のようだなあ」
「悪化しているぞっ!?」
「気のせいだろう。さ、娘よ。我が名を呼べ」
「だから、言わんと言ったら言わん!」
「言ったらパフェ」
「む……そ、そのようなものに釣られるほど、私は子供ではないぞ」
言葉の上では断っているが、視線が物欲しそうだ。もう少し引っ張ればいけそうだ。
「ケーキもつける」
「……い、いちごの乗ってるやつか?」
「うむ」
「……うう、ううう……」
娘は頭を抱え、とても懊悩としているようだった。そこまで悩むことでもないと思うが……。
「……わ、分かった。父の言うとおりにしてやる。だ、だが! いちごの乗ってるやつのためだからな! 決して父を喜ばせるために言うのではないからな!」
「いーから早く」
娘は俺の耳元に顔を寄せ、小さく俺の名を言った。
「や、たまにはいいものだな」
「い、言ったぞ! 確かに言ったぞ! ほら、父も約束を果たせ!」
「あい分かった、父に任せろ!」
耳元に顔を寄せ、娘の名を甘く囁く。
「ほひゃやああ!?」
飛ぶように後ろに下がり、娘は真っ赤な顔で耳を押さえた。
「どうだ? たまにはよいものだろう?」
「こ、こ、こんな約束はしてない! いちごの乗ってるやつという話だろう!」
「あれ、そうだったか……? まあいいか。しかし、呼ばれるのもよいが、呼ぶのもよいな。娘よ、もう一度いいか?」
「断固断るッ! 何が楽しくて親子で名を呼び合うか!」
「名前呼ばないで耳に息吹きかけるだけにするから」
「目的がすり変わっているぞ!?」
「いや、思いのほか耳に弱いと知ったのでな。えい、ふー」
「んきゅっ……」
耳に息を吹きかけると、娘は体を身悶えさせた。
「……おのれ。よくも辱めを」
俺を睨んだかと思うと、娘は大きく息を吸い込んだ。いかん。
「あああの娘よあまり大きな声を出すのは近所迷惑かと」
「……ああ父は娘である私を性欲の対象として見るッ! なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうかッ!」
制止するもいつもの台詞が出てしまい、窓がビリビリと震える。遅れて近所の犬が吠え出した。
「ふふ。また近所の人に謝って回らないといけないなあ」
「何を泣いている。自業自得だ、馬鹿め。まったく、世が世なら今頃父は捕まっているぞ」
「耳に息を吹きかけただけで捕まるとは、世も末だな」
「うううるさい! 耳のことは言うな! ほら、そんなのどうでもいいからケーキ屋に行くぞ! 約束は果たさないといけないからな!」
「それは分かるが……寒いし、今度にしないか?」
それに、今出るとご近所の皆さんにどんな目で見られるか分かったもんじゃない。
「何を年寄り臭い事を……ほら、早く支度しろっ!」
尻を蹴飛ばされたので、しぶしぶ支度する俺だった。
「……ふふ、いちごの乗ってるやつ食べるの、久しぶりだな」
……まあ、娘も嬉しそうだし、いっか。