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2024年11月21日
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【ツンデレと遅い初詣に行ったら】

2015年01月20日
「初詣に行こう」
「1月も半ばを過ぎて何言ってんのこの人!?」
 冒頭からボクっ娘が人のことを馬鹿にした風なので大変不愉快です。ぷんぷん!
「まあ待て、俺の話を聞いてからでも遅くはないだろう」
「うわー……死ぬほど興味ないのに離してくれないパターンだー……」
 ボクっ娘の野郎がうんざりした顔で俺を見やがる。ちくしょう。
「実は今年俺は初詣に行ってないんだ」
「そなんだ。ボクは行ったよ」エッヘン
「ヤだ、圧倒的普通なことなのに堂々と胸を張れるボクっ娘に思わず胸キュン」キュン
「馬鹿にすんなぁ! あと胸キュンとか古いよっ! 古すぎて逆に新鮮だよっ!」
「古すぎて逆に新鮮……? どういうことだ? 古いが新鮮な感覚……? 漬物か何かか?」
「だーっ! もう、いいから初詣の話しろよなぁ! どーせ最後まで話すまでボクを離さないつもりだろ!?」
「漬物の話題を出したら漬物の話がしたくなった」
「初詣の話をするのっ!」
「ボクっ娘はわがままだなあ」
「ボクが!? 明らかにタカシがわがままだろっ! あとボクっ娘ってゆーなっ!」
「まだその設定残ってたのかよ……」
「人の嗜好を設定とな!?」
「まあいいや。えーと、初詣行ってないので行きたいんだ。しかし今更行ったら初詣じゃなくただの詣でと勘違いされて『ヤだ、詣でよ詣で』とロリ巫女さんたちにひそひそと揶揄されないだろうか。しかしロリ巫女さんに蔑んだ目で見られるのは結構な確率で興奮すると思うので……あっ! いいじゃん!」
「いくないっ!」ガーッ
「わぁ」
「まず! 詣でってなんだよ! 変な言葉作んなよぉ! つぎ! なんで巫女さんがロリって決めつけてんだよ! あと、こんな時期に行っても巫女さんいないよ! あーゆーのは正月だけバイトで学生がやってるの!」
「最後の言葉で勇気がくじけた。もうこの世界に純正な巫女さんはいないのか」
「いるだろーけど、タカシが期待してるよーな巫女さんはいないと思うよ」
「いやいや、梓は勘違いしている。俺が期待している巫女さんなんて、ごくごく普通の巫女さんだぞ」
「……もー既にフラグ臭いけど、いちおー聞いとくよ。どんなの?」
「丈が非常に短くてチラチラおっぱいが見えそうな装束に身を包んだ小学生と見まごう如き肢体の巫女さん。具体例で言うと咲の薄墨初美。俺にだけお兄ちゃんとなつけば尚Good!」
「思ってた以上にタカシの頭がおかしい!」
「ええっ!? セーブしたのだが……」
「それで!?」
「むぅ……一般人と俺様との溝は深まるばかりだ」
「うう……タカシを侮ってたよ。想像以上に業が深かったよ……。あと何が俺様だよ、ばーか」グリグリ
「ちぃぃ、頭痛がする。偏頭痛に違いない」
「あははっ、ボクが頭ぐりぐりしてるからだよ」グリグリ
「ぐぬぬ。まあ残念ながらロリ巫女は諦めるとして、初詣ぐらいは行っておきたいんだよ。でもひとりで行ったらロリ巫女さんに『今更詣でとかありえないですよー。しかも賽銭が五円とか今時ないですー。ほらほら、いいから有り金置いてってくださいねー?』とカツアゲに遭う可能性も否めないので、一人より二人の方が安心できるんだ」
「無駄な危機回避能力だね……。しかも、ロリ巫女さんいないっていいながらまた登場してるし……」
「最悪の場合梓をロリ巫女に仕立てあげるから安心しろ」
「人を勝手に巫女にすんなっ! そもそも、ボクはロリじゃないからロリ巫女にはなんないもんっ!」
「…………。いや、大丈夫。なれる!」
「ボクの胸を見て言った!? タカシすっごくしつれーだよっ!」プンプン
「待て、落ち着け梓! 胸と背と顔と精神年齢を見て『いける!』と踏んだんだ!」
「もーっ! もーっ! もーっ!」ポカポカ
「悪化した。解せぬ」ブベラハベラ

「はーっ、はーっ……もー、ボクが相手だから許したげるけど、ふつーの人なら許してないよ? ぜっこーされててもおかしくないよ?」
「普通の人はそもそもロリくないから、ロリ巫女にさせられる恐れがないので大丈夫だ」
「やっと怒りが治まった人を即座に怒らせるかな、ふつー……?」プルプル
「ふむ。……ゴメンネ☆」キャハ
「わっ、世界一キモい!」
 満面の笑みとアイドルを思わせるKawaii所作で謝罪を試みると、なかなかの言葉が返ってきた。だが、そんなものは想定内。
「よし。キモさで怒りの矛先を失わせる俺の優れた技が成功した。ふひゅー」
「なんで全部言っちゃうかなぁ……?」
「梓の怒りも鎮まったし、改めて。一緒に初詣行きませんか? ひとりじゃ寂しいんです」
「最初っからそーやって素直に誘ったらいーのに……ん、いーよ。ボクもついたったげる」ニコッ
「……ふっ。簡単なもんだ」ニヤッ
「悪い顔した!? また何かたくらんでるだろ!?」
「…………」スタスタスタ
「あっ、こらっ! 何も言わずに行くなよ、ばかっ!」

「……さて!」
「ひゃっ!」ビクッ
「やってきました近所の神社! 神の社とはうまいこと言うね! 近くの犬も俺たちを歓迎しているよ!」ワンワンワン!
「タカシが急におっきな声出したから威嚇してんだよっ! ここに来るまでずーっと黙ってスタスタしてたからボクもびっくりしたよ!」ドキドキ
「吊り橋効果!」ジャーン
「全然違うよっ!」
「難しいな。まあいいや。さて、手水舎で身を清めるか」
「タカシは身だけじゃなく心を清めたほうがいいよ。あっ、でも清めても全身これ邪悪だから消えちゃうね」キシシシ
「なめくじみたいだな。あ、でも全身から粘液出ないんだけど、なめくじとして今後立派にやれるかな?」
「なんでなめくじとしての今後を考えてんだよっ! ちょっとは言い返せっ!」
「なんか怒られた」
 神聖な境内でしばらく探したのだが、それらしきものが見当たらない。代わりと言っては何だが、水道がひとつある。
「まさかとは思うけど……これ?」
 怪訝な様子で梓が水道を指さす。正直別の神社に行きたいが、もうよそに行くの面倒だ。
「しないよりはマシ、かなぁ……。まあいいや。俺は一応やっとくよ」
「あっ、待って待って。ボクもいちおーやるよ」
 両手と口をすすぎ、梓も俺に倣う。……あんま意味ないような気もするが、こういうのは気の持ちようだ。
「ふー……神様ぱわーが注入されたよ!」
「このように、思い込みが強い奴はただの水道でも得体のしれないエネルギーが注入されるので危ないと思われる」
「得体のしれないってなんだよ! 神様ぱわーだよ、神様ぱわー! は~っ!」
 はーと言いながら梓がこちらに手を差し向けた。おそらく梓の脳内では、手からエネルギー波か何かが出て俺を粉砕していることだろう。
「さらに言うなら、手水舎は身を清めるためにあるもので、別に何かのご利益があるとかはないと思うのだが」
「うっ……タカシは細かいの! いーの、こーゆーのは気分なの、気分!」
「水道で気分を出せるのもひとつの才能だよな」
「また馬鹿にしたなあ!? もー! タカシなんて嫌い嫌い!」
「いやはや。んじゃそろそろ詣でるか」
「むーっ」
 むーっと言いながらむーっとした顔をした梓が俺についてくる。怒りながらもちょこちょこついてくる梓はかわいいなあ。
「あっ!」
「ん?」
 鳥居を潜る時、梓が急に声をあげた。何ごとかと梓の方を振り返る。
「んふーっ。あのね、タカシ知ってる? ボクは知ってるけどね!」エッヘン
「そうか。梓は全知全能だなあ」クルッ
「待って待って最後まで聞いて!」ギューッ
「めんどくせえなあ……なんだ?」
「あのね? 鳥居は真ん中通っちゃダメなんだよ? なぜなら! そこは神様の通り道だから!」ズビシーッ
「ああ。だから端を通ってる」
「あ……」
 俺が立っている場所は鳥居の右端で、神様(と思われるもの)が歩く通り道は踏んでいない。
「しっ、知ってたんだ。ま、まあ、これくらいの知識、あってふつーだけどねっ!」フンッ
「最近知ったのか……」
「ぐーぐるで知った」
「そうか……」
「お菓子のレシピも教えてくれる。昨日はアップルパイの作り方知った。ぐーぐるはいだい」
「なんか金でももらってんのか。あと口調がおかしい。壊れたか」グニーッ
「あぅーっ! ほっへひっはふはーっ!」(訳:ほっぺひっぱるな)
「ん、大丈夫。よかったよかった」ナデナデ
「うー……タカシってすぐボクをなでるよね。……別にいーケド」
「冬場は寒くてよくくしゃみするからな」
「手についたツバをなすりつけられてる!? もーなでんなっ!」
「わはは。さて、着きましたよ梓さん」
 梓とじゃれてる間に拝殿に着いた。奥行きは木々に邪魔されてよく分からんが、一階建ての極々普通の、いや少々みすぼらしい拝殿だ。年季が入っていると言えば聞こえはいいが、実際は何の手入れもされないまま長年放置され、全てが薄汚れて見える。少しくらい掃除したらいいと思うが……ま、それは他人だから言えることか。
「わー……ちょっと、その、アレだね」
「言葉を濁しつつ、梓の表情は明らかに『ドブみたいな臭いがする』と雄弁に語っていた」
「言ってないよっ! ちょっと汚いなーって思っただけだよっ! ……あっ」
「あーあ、言っちゃったー。神様に聞かれたー」
「あっ、あっ、今のナシ! ナシだかんね、神様!」
 拝殿に向かって必死に訴えてる梓。なんというか、もし俺が神様なら許すどころか全身全霊で一生守護する程度には必死さが伝わってくる。
「……ふー。これくらい言えばだいじょぶかな?」
「神様ってくらいだから懐は広いだろ」
「あっ、そだね。あーよかった」ホッ
「ただ、古事記とか読むと良くも悪くも人間臭いから心が狭い神様がいてもおかしくはないな」
「ボクを安心させたいのか不安にさせたいのかどっちなんだよっ!?」
「わはは。大丈夫大丈夫。んーと……あれ? 梓、お前5円玉ある?」ゴソゴソ
 財布を探ったが、残念ながら5円玉が見つからない。……というか、500円玉がひとつしかない。これは、使いたくない……使いたくないんだ!
「はぁ……お参り行くならそれくらい用意しとけよなー。はい、どーせ用意してないと思ってたから、こっちで用意しといたよ」
「おおっ、サンキュ梓。気が利くなあ」
「付き合い長いからねー」
 梓から賽銭を受け取り、賽銭箱に入れる。鈴を鳴らし、……しまった、作法を知らない!
 えーとえーとえーと……そうだ、梓を真似よう! ちらりと横を見る。ばっつり目が合った。
「てめえ! 人の真似をしようだなんていい度胸だ! すなわちグッド度胸!」
「完全完璧にこっちの台詞だよっ! 明らかにボクのマネしよーとしてたろっ! いーからちゃんとした作法教えろっ!」
「ふふん。俺をアカシックレコードか何かと勘違いしているようだが、こちとらただの高校生! 知らないことだって山とあるわ、たわけっ!」
「はぁ……しょーがない。適当にお願いしよ。きちんと心を込めたらちょっとくらいやり方を間違えても神様は聞いてくれるよ。ね?」
「心か。任せろ、得意だ」
「……いちおー言っとくけど、えっちな心を込めたらダメだかんね」
「人間の三大欲求の一つを封印されただと!? くそぅ、もうこうなっては寝ながら大根をかじる夢を願うしか!」
「どんな夢だよっ!」
「三大欲求とか大上段に構えたために、他の欲求に気をとられた結果です。うーん……よく考えたら願い事考えて来なかった」
「ほらほら、もーお賽銭入れたんだから今更うにゃうにゃ考えても仕方ないよ。目つぶったら何か浮かぶよ。それがタカシのお願いごとだよ」
「そういうもんか……?」
「そーゆーものだよっ。ほらほらっ、早くするのっ」
 梓に促され、手を叩いて目をつむる。俺の願い……?
 うーんうーんうーん。浮かばん。
 仕方ないので薄く目を開けて隣を見る。ちっこいのが一生懸命口元で何かつぶやいてた。ずいぶん一生懸命だな。なんだろ。
 ……うん。特に浮かばないし、これでいいか。
 しばらく願い事をして、目を開ける。ほぼ同じタイミングで梓も目を開けた。
「……ふぅ。お願いごと、できた?」
「たぶん」
「たぶん、って……まあいいや。んじゃ帰ろ?」
「あー、そだな」
 踵を返し、拝殿を後にする。……と思ったが、梓が何か拾っていた。
「あっ、えへへ。せっかく来たんだし、あんまり汚れてるからちょこっとだけお掃除ってね。簡単にね」
「はぁ……お前は、なんつーか」
「え、えへへ」
 困ったように笑う梓の元まで戻り、近くの木切れやお菓子のビニールなんかを拾う。
「わっ、いいよいいよ! ボクが勝手にしてることだからタカシまでやんなくても!」
「俺もお前に触発されて勝手にやってるだけだ。両手で持てる程度しかやらんから気にするな」
「……もー」
 小さく笑う梓と一緒に、数分だけゴミ拾いをする。
「……ん、これくらいでいっかな。じゃ、これ捨てよ?」
「そだな」
 近くのゴミ箱にゴミを捨てる。数分のことだが、結構な量になった。
「はー……いいことすると気持ちいいね!」
「ご利益たんまりだな!」
「うわ、そういう気持ちでしたら逆にご利益なさそうだけどね」
「しまった! 今のはごりやく、ゴリ薬、すなわちゴリラ薬がたんまりという危険ドラッグをしてると間違われても仕方ない酩酊した俺の精神が発した謎台詞なのでなかったことに!」
「あははっ。ほらほら、手洗って帰ろ?」
 ゴリ薬ってなんだろうと思いながら手水舎モドキで手を洗う。ちべたい。
「そーいえばさ、タカシは何をお願いしたの?」
 梓から借りたハンカチで手を拭いてると、不意にそんなことを聞かれた。
「梓のおっぱいが成長しますようにって」
「ちょー失礼拳!」パンチパンチパンチ
 なぞの拳法が炸裂した。ただ、謎の拳法伝承者はちびっこだったので全く痛くない。
「むー……そりゃ成長してないけどさ。むー」
「冗談だよ。これがちっとも浮かばなかったんで、なんとなく横見たら必死そうな顔した奴がいたんでな。そいつの願い事が叶うような願い事をしたような、してないような」
「えっ? ……ええっ!?」
「そんな嘘をついたような」
「嘘!? えっ、ホントはどーなの? ねー、ねー!」グイグイ
「まあまあ、俺のはどうでもいいじゃあないですか。梓は何をお願いしたんだ?」
「えっ、ボク!? ……えっ、えっと……」チラチラ
「?」
「……ぼ、ボクのことはどーでもいいじゃん。ねー?」
「なんか顔が赤いが、どうかしましたか」
「どっ、どうかしません。……あっ」
「ん?」
「……さっき、タカシはボクのお願いごとが叶うように願ったって言ったよね? え、じゃあ……?」
「加速度的に顔の赤みが増してますが、本当に大丈夫ですか」ナデナデ
「はぅ」
「梓?」ナデナデ
「……はっ! えっ、えへへ、えへへへ。……あっ、あのねっ!」
 何やら意を決した様子で、梓が声を上げた。
「こ、これからさ。……ぼ、ボクの家に来ない? あのね、アップルパイの作り方知ったから、その。……た、食べてほしいんだ。タカシに」
「ほう、なんたる奉仕精神。将来はナイチンゲールに違いない!」
「そ、そゆんじゃないんだけどね? ……えへへ、でも今はそれでいーや。それで、その。来てくれ……る?」クリッ
 梓は軽く首をかしげた。俺は心を撃ち抜かれた。
「女性の誘いをどうして断れようか!」
「わっ、紳士!」
 ──というのをおどけて誤魔化す。なんたる破壊力だコンチクショウ。
「つーかお菓子大好きだし大喜びで行きます」
「あははっ、そだったね」
「梓の作る菓子はなんでもんまいからな。毎日でも食いたいよ」
「っ!? ……い、いーよ。毎日でも」
「マジかっ!? これは俺が肥え太り将来的に魔女と化した梓に食われるフラグが今立ったか?」
「また適当なこと言ってぇ……」
「ていうかいうかていうかですね、そこまでされるのは気を使うからいいよ。たまに気が向いた時に作ってくれたらそれで十分嬉しいよ」
「別にいいのにぃ……」ムー
「いくねぇ」ナデナデ
「がんこ」ムー
「こっちの台詞だ」ナデナデ
「絶対にタカシががんこだもん。ボクはがんこじゃないもん」ムー
 その後、むーむー鳴る変なのと一緒に帰ってアップルパイをごちそうしてもらいました。

「ねータカシ、おいしー?」
「超おいしい」モグモグ
「えへへ、よかったー♪」ニコニコ
 その頃はもうむーむー鳴らずにニコニコ鳴る生物になってました。たぶん俺は俺でニヤニヤ鳴る奇怪な生物になってたと思う。

拍手[30回]

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Comment
無題

梓最高!!(U^ω^)
無題
新作待ってました!
今年もニヤニヤ出来るお話、楽しみに待ってます
無題
新作ありがとうございます!
今回の梓も可愛いです!
無題
あけ
おめこ
とよろ

やっぱりこの二人の掛け合いはいいねー
No title
破壊力がやばい
無題
新作ありがとうございます!
今回の梓も可愛いです!
無題
とってもとっても癒されました♪
更新気長に待ってた日々の中可愛い梓が見られて嬉しかったです!管理人さんの気の向くままたまぁに更新していただけたら嬉しいです。
あなたの更新でどれだけの人が救われていることか笑
無題
更新してくれー
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