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2024年11月24日
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【男の弁当を食べたがるツンデレ】

2010年02月28日
 会長のとある秘密を知ってしまった結果、生徒会入りを果たしてしまった。
 そんなある日の朝、会長が用事があるとかで俺を呼び出した。さては愛のこくふぁくか!? と鼻息荒くばふーと生徒会室に入ったら、違った。
「これを明日の放課後までにやっとけ」
 そう言いながら、会長は長机にうずたかく鎮座ましましている書類の山×3を指した。
「告白だと思ったのに……会長にはガッカリだ!」
「どうしてワシが貴様なんぞに告白なんぞをしなければならん。脳に蛆が湧いとるのかえ?」
「湧いてません。それより、この量は流石にきちーです。授業全部ぶっとばしてやっても不可能と思うますが」
「貴様の力を見込んでのことじゃ」
「褒めて伸ばされそうだ!」
「普通に返事せんか。それで、やるのかえ? やらないのかえ?」
「無理」
「ふむ。……まだ死にたくはなかろう?」
 そう言って、会長はスカートの裾から真っ白なしっぽ(!)をふわりと覗かせた。
 会長の秘密、それは、会長は実は狐の物の怪、ということだ。詳しいことは知らないが、狐耳としっぽが大変にラブリーなので、いつか思う存分触りまくりたいと俺は常々思っている。
「なるほど、このような感じで触らせまくり、俺を悶死させると言うのだな? 負けん、負けんぞ!」(もふもふもふ)
「ひゃうわっ!? ちっ、違うっ、脅しただけじゃっ! そっ、それより誰が触っていいと言った、この愚か者がっ! がぶがぶがぶっ!」
 あまりの誘惑に前後不覚に陥り、思わず会長のしっぽを抱きしめたら怒られたうえ、頭もかじられた。
「痛いです」
「うるさいのじゃ! まったく、ワシのしっぽを触って生きておった奴など、貴様以外におらんぞ?」
「光栄に思えばいいのだろうけど、頭から血が流れ出ていてそれどころでは」
 会長は物の怪だけあって攻撃力が高く、俺程度の防御力では流血を防げない。
「早く治せ、愚か者」
「人間はそんな治癒力高くないのですよ」
「まったく……なんと脆弱な生き物じゃ。ほれ、こっち来い」
 ふらふらと会長の元へ向かうと、会長は俺の頭をなでなでした。
「畜生、幼児扱いだ! しかし頭をなでられいい気分なのも事実! それとも血が足りずにそう感じるだけなのだろうか。それはつまり今まさに死に瀕しているわけであり、死にたくないなあ」
「黙っとれ、治癒しとるだけじゃ。……ほれ、もう止まったぞ」
 頭に手をやると、あれほどぴうぴう出ていた血が止まっていた。
「すごいぞ妖術、やるなあ物の怪!」
「……どうも感謝の念がないように思えるのは、ワシだけじゃろうか」
「大丈夫、俺もそう思ってる」
「がぶがぶがぶっ!」
 会長は怒ると人の頭をかじって元の木阿弥にするのでやめてほしいなあ、と思った。

 翌日。書類を家に持って帰ってばりばりこなしたはいいがまるで終わらないので、昼休みも返上して仕事をこなしてると、急に教室がざわめきだした。
 なんじゃらホイ、と思って顔を上げると、会長が入り口付近できょろきょろしていた。あ、目が合った。と思ったらこっちへまっすぐやって来た。
「何をしとるんじゃ」
「え、いや、会長に言われた仕事をこなしてるのですが」
「……飯は」
「え、あ、いや、まだ」
 会長は苛立たしげに俺を見下ろしている。はて、飯……? あ。
「あ、あー。そうな、そうだったな。いやはや、つい熱中してて。行きませう」
「う、うむ」
 サブバッグを持って会長と一緒に教室を出る。出てから数秒後、怒号が教室から響いた。
「なんじゃ!? あっ……」
「いーから!」
 会長の手を取り、生徒会室へ一目散に退避。
「ふー……」
「な、なんじゃったのじゃ、さっきの叫びは」
「会長……呼びに来てくれるのは大変嬉しいが、もうちょっと自分の人気とか考えた方がいい」
「むう……?」
 よく分かっていないのか、会長は困ったように眉を寄せるだけだった。
「はぁ……まあいいや、可愛いし。んじゃ、飯食うか」
「そ、それはいいが、……い、いつまでワシの手を握っとるんじゃ?」
「え、あ」
 そう言えば、ずっと会長の手を握ったままだった。
「うーん。柔らかい」
「い、いらんことは言わんでいいっ!」
 会長は荒々しく俺の手を振り払い、顔を赤くしながら手をさすさすさすった。
「まったく……それで、弁当はどこじゃ?」
「ああ、これこれ」
 机の上に置いたサブバッグから、弁当箱を取り出す。
「うむ」
 そしてそれを当然のように奪われた。
「さぁてと……おおー! 今日もうまそうじゃ!」
 蓋を取ると、会長は歓声をあげた。そして、両手にそれぞれひとつずつ稲荷寿司を手に取った。
「まぐまぐまぐ! ……むふー、貴様の親が作るおいなりさんは格別じゃのお!」
「喜んでくれて嬉しいが、俺の食う分も残してくれたらもっと嬉しい」
「貴様のことなど知らん。まぐまぐまぐ……にゅふー♪」
 おいしいんだか嬉しいんだか知らないが、狐の耳が出てる。しっぽも出てる。すっげー振ってる。
「会長、しっぽ出てる。耳も」
「む? まあ気にするな、ここにはワシと貴様しかおらんのじゃ」
「いや、まあいいんだけど……」
 もし急に誰かが入ってきたりしたら、色々と面倒くさいことになりそうな。最悪、この学校が滅びそうな。いや、学校どころか日本が……。
「むふー。美味かったのじゃー♪」
 人が色々と不安になってるというのに、会長は人の弁当を空にしてご満悦な様子。今日も俺は飯にありつけそうにない。
「はぁ……」
「なんじゃ、辛気臭い顔して」
「お腹が空いたやら何やらで。……あ、会長。飯粒ついてるぞ」
 会長のほっぺについてた飯粒を取り、ぱくりと食べる。
「……ぬわっ!?」
 ややあって、会長からぼわんと湯気が上がった。
「ほほう」
「な、なんじゃ、ほほうって!」
「や、別に」
「うー……い、いいじゃろが、別に。……ワシはこういうのに慣れてないだけじゃ、愚か者」
 会長は怒ったように明後日の方を向いてしまった。
「やれやれ、怒らせてしまったか。どうにかしたいが、腹が減ったので学食に行って来るな」
 席を立とうと机に手を置くと、その手にしっぽがくるりと巻きついた。会長の方を見るが、依然として明後日の方を見てつーんとしている。
「あの。これでは出れないのですが」
「ぬ? ……ぬ!? な、なぜワシのしっぽが貴様なんぞに巻きついとる!?」
「それは超こっちの台詞だ」
 とりあえずしっぽ巻きつきを解除してもらう。そして立とうとしたら、もう片方の手にしっぽがくるりと巻きついた。
「会長……」
「し、知らん! ワシのしっぽが勝手に動くのじゃ!」
「あー……まあ、一日くらい昼飯抜いても死にはしないか」
 諦めて腰を椅子に落とす。会長のしっぽが嬉しそうに俺の腕をさすさすさすった。
「ちうわけで、巻きつきを解除してもらえますか?」
「……なんじゃ、その目は。わ、ワシは貴様なんぞおらんでも平気じゃからな!」
「何も言ってませんが」
「目が言っておる! 『やーい、こいつ狐の物の怪のくせに俺がいないと寂しいんだー』って!」
 超似てねえ。
「ぬー……何か言わぬか!」
「やーい、こいつ狐の物の怪のくせに俺がいないと寂しいんだー」
「一言一句違わず!?」
 とても驚いてる会長だった。

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