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2025年05月04日
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【ツンデレが無言で手を繋いできたら】

2010年02月15日
 アニメの影響で剣道部に入ったらとてもしんどい! しかも強くならない! 弱いままだよチクショウ!
「こら別府、遊んでないで練習しろ、練習。ちったあ真面目にやれ」
「ごめんね?」
 口調からは男性と思われがちな先生に怒られた。なんとなく可愛く謝ってみる。
「うわっ、キモ!」
「いわゆるキモカワイイという奴だな」
「違うわ、アホっ! あーもー、お前今日は居残りで練習だ、練習!」
 ちょっとした冗談で面倒なことになってしまった。
「……怒られてる。……ぷぷー」
 そして、そんな俺を笑うちなみん。
「くそう、ちょっと強いからって笑いやがって! ちょっとタマちゃんとキャラ被ってるからって笑いやがって! このタマ、タマちゃんめ!」
「……タマちゃんではなく、ちなみです」
「これはご丁寧に、別府タカシと申します」
 ぺこりとお辞儀しあう俺たち。なんだこれ。
「あー、ちょうどいい。華丹路、お前こいつ指導してやってくれ」
 華丹路とはちなみの苗字であり、かにみちと読み、変な苗字と常々思っている俺の指導をちなみに押し付ける先生。しかし、何故ちなみに任せる?
「……別にいいけど、なんで先生が指導しないんですか?」
 俺と同じような疑問を抱いたのか、ちなみが先生に尋ねた。
「やー、先生今日はデートでな。はっはっは」
「奇特な男性がいるもんだな。ボランティア?」
 思わず口を挟んでしまう。
「ボランティア言うなッ! これでも先生モテモテなんだぞ?」
「猿に?」
「なんでだっ!」
「いや、ピーナッツを常に携帯してそうな顔してるから。いわゆるピーナッツ顔という奴だな」
「どんな顔だっ!」
 ちなみが「また変なこと言ってる」とでも言いたげな表情で俺を見る。悔しいので反撃にとっておきの愉快な顔をしてやる。
「ぶふっ! ……くっ、うぬれー」
 悔しげにうめくちなみ。よし、勝利。
「ええいっ、少しは真面目に練習しろ、別府っ!」
 先生の叫びと同時に部活の終了を知らせるチャイムが鳴った。
「終わりっ! よし、帰るぞちなみ!」
「帰るなっ! 華丹路、せめて足の運びはできる程度まで頼むな」
 ちなみがこっくんと頷くのを見て、先生は部員を集めて解散の号令を出した。三々五々に散って行く部員に紛れて俺も着替えようとしたら、背中を引っ張られた。
「……補習」
 俺より頭二つほど小さい奴が何か言ってる。
「この俺に勝てたらな!」
 不意打ちで襲い掛かったら2秒で負けたので、大人しく練習する。
「……見てて。足。……こーで、こー」
 俺とちなみしかいなくなった道場で、ちなみが足運びを教える。
「ふむふむ、こうだな」
「……全然違う。こう、こー」
「こうか? こうだな? よし、こうだッ!」
「……足運びの練習なのに、どうして踊っているのか。……まったく、タカシは壊滅的に物覚えが悪い」
「ごめんね?」
 申し訳なく思ったので、可愛く謝ってみる。
「……うーん、キモい」
「いわゆるキモカワイイという奴だな」
「……天丼だ」
 驚かれたことに満足したので、しばらく真面目に練習する。
「……ん。まあ、及第点をあげる」
「よし! 疲れた! もう今日はここに泊まる!」
 床に大の字になって寝そべる。代の字になって寝そべるにはバラバラ死体にならないといけないので大変危険です。
「……ほら、馬鹿言ってないで帰る。……早く帰らないと、暗くなる」
「性格が? いや、もうすでに暗いか」
 無言でほっぺを引っ張られたので、だらだらしながら着替えて外に出る。だらだらしすぎたのか、道場から出ると夕日が地平線に隠れそうになっていた。
「……遅い。……遅すぎる。……超遅い」
 そんな夕日を背中に、ほっぺを膨らました生物が俺をなじる。
「着替えてる最中に刺客に襲われ、危機に瀕した俺に前世の記憶が突如蘇り、僕の地球を守らねばという使命感が」
「…………」
「帰りましょう」
 すごい睨まれたので、素直に帰ることにする。

 校門を出てからものの数分もしないうちに、すっかり暗くなってしまった。
「……タカシが早く着替えないから。……そもそも、タカシが居残り命じられなかったら。……まったく」
 ぶちぶち言いながらも、ちなみは少し不安そうに周囲を窺っている。
「暗いの苦手?」
「……ぜ、全然。……子供じゃないんだから、そんなの怖いはずもない。……逆に、タカシが怖いんじゃ」
「うん、お前の後ろから血を流した女生徒がゆっくりついてくるからすごい怖い」
「ぴきゃあっ!?」
 叫びながらちなみは俺に飛びついた。
「という夢を見そうな今日この頃」
 全力で頬をつねられ痛い痛い。
「……怖いこと言うの禁止」
「じゃあ、楽しいことを喋ろう」
 ちなみはほっとしたように頷いた。
「今日は疲れたな。疲れきったので、早く風呂に入って頭でも洗いたいよ。頭洗う時ってなんか視線感じる時あるよな。それとは全然関係ないが、水場って幽霊を呼び込みやすいらしいね」
「……なんで幽霊の話になってるのか!」
 半泣きで睨まれたのでやめる。
「……もう、黙ってて」
 言われた通りしばらく黙って歩いてると、不意にぎゅっと手を握られた。
「……べ、別に怖いとかじゃなくて。……た、タカシが怖がるといけないから、握ってあげてるだけ」
「や、怖くないから大丈夫です」
 まるで言い訳のように早口に並べるちなみに、すげなく返す。
「……そ、そう」
 ちなみはなんだか残念そうに手を離した。それから数分もしないうちに、再び手に感触が。
「……こ、怖くなったでしょ? ……優しい優しい私が、手、握ってあげるよ? ほ、ほら、タカシは女の子に全くもてないダメダメくんだから、こんな機会でもないと手、繋げないよ?」
「霊媒体質の俺になんて優しいんだろう。手を繋ぐとそいつの方に霊が引き寄せられるが、せっかくの好意だ、ありがたく手を繋がせてもらおう」
 ちなみは半泣きで俺の手から逃げた。
「うう……嘘だって分かってるのに、分かってるのに……」
「怖いなら怖いって言えばいいのに……」
「……こ、怖くなんてないもん。お化けとか、いないし」
「そりゃそうだ。ところで、そこの暗がりから視線など感じてないが、急に全力で走りたくなったので走ってもいい?」
 電信柱の死角を指差すと、ちなみが半泣きで俺の手を握り、ぶんぶん頭を振った。
「……怖いこと言うの禁止!」
「分かった、分かったから手を離せ。幽霊が寄ってくるぞ」
「……怖いこと言うの禁止ぃ!」
 なんか目がぐるぐるしだした。これ以上は可哀想か。というか、最初から可哀想だが。
「わーったよ、嘘だよ嘘。手繋いでも幽霊は寄ってこないし、それどころか二人の愛のぱぅわーにより結界が発動、幽霊を寄せ付けません。一ヶ月経ったら効果が切れるのでお取替えください」
「……途中からお薬の説明になってるよ?」
「つっこみどころを間違えてませんか」
「?」
 何のことか分からないのか、ちなみは可愛らしく小首を傾げた。
「いや、ほら、俺が殊更言うのも変だが、その、……愛のぱぅわーってぇところに注目されるかにゃーとか思ってたんだが」
「え、あ、……にゃ、にゃー」
 ちなみは赤くなってうつむき、小さく鳴いた。
「……もーど、ねこちなみん。……ペットと飼い主の関係なので、愛があってもへーき、という噂」
「便利な機能ですね」
「……便利だにゃあ」
「しかし、俺は猫アレルギーなので、猫が近くにいると全力で駆け出したくなるタチなんだ」
 駆け出そうとする俺を全身を使って止めるちなみ。1分ほど揉みあった結果、俺が白旗を揚げることに。
「……タカシはいじわるだ。いじわる、オブ、いじわるだ」
「意地悪オブジョイトイと呼んでくれ」
「……いじわるおぶじょいとい」
 全く嬉しくなかった。
「……じょいとい、早く帰ろう」
「その呼び名は勘弁してください」
「……家に着くまで、手、離さないでくれるなら、……呼ばないであげる」
 薄く微笑むちなみに、俺は苦笑しながらうなずくのだった。

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【大統領ちなみん】

2010年02月14日
 ちなみが大統領になった。
「悪夢だ……」
「……のー悪夢。現実。ふふふ。最大権力げっと。……これで、やりたい放題」
 頭を抱える俺の膝の上に、満足そうに座るちっこい大統領。
「んで、大統領。なんで俺の膝に乗ってるの?」
「……タカシは、大統領のイス。任命。ないす人事」
「ナイスじゃねーよ、馬鹿」
「にゃ」
 ちなみの頭をぺしと叩くと、ドアから窓から天井裏から黒服サングラスの集団がやってきて、俺を取り囲むんですの。手に手に銃を持って、俺に突きつけてるんですの。死ぬんですの?
「……いい。タカシは特別だから」
 ちなみの一言で、再び去る黒服軍団。
「……なに、あれ」
 やっとのことでそれだけ言う。今さら汗が噴き出した。
「……ふぁんくらぶ?」
「んなわけねー! 銃突きつけられたよ、銃! 護衛だろ、護衛! SP!」
「えすぴー……しーくれっと、ぽっぽ?」
「なんだ、秘密のハトって。いや、ハトはぽっぽではなくピジョンですが」
「……秘密ハト。世界の機密を伝える伝書鳩。過酷な訓練に耐えた優秀なハトにのみ与えられる栄誉であり、とてもおいしい」
「食うなッ!」
「……軽い冗談は置いといて、お仕事お仕事。……大統領なので」
 くりんと首をこちらに回し、なにか言いたげにこっちをじっと見る大統領。
「なんですか」
「……大統領なので、お仕事いっぱい。……でも、頑張る大統領」
「そうか」
「……とても頑張っている大統領に、このイスは労いの言葉もかけない。……解雇しようかな」
「そりゃ大助かりだ」
「……解雇されたら、秘密を守るために消される、かも」
「偉いぞ大統領! 頑張れ大統領! いけいけ僕らの大統領!」
「……あまり嬉しくない。もっと、心を込める」
「早く解放してほしいなあ」
「…………」
 しまった、心を込めるあまり本音が出た。眠そうな瞳で、俺をじーっと見つめる大統領たん。また黒服か? 死ぬのか?
「……別に、帰ってもいいし。……寂しくなんてないし。……タカシなんかいなくても、平気だし」(じわーっ)
 ある種、黒服よりも破壊力のある攻撃に出られた。
「どうかお側に置いてください大統領! だから泣かないでお願い!」
 眠そうな瞳の端に涙がたまり始めたので、慌てて頭をなでて労わる。
「……そ、そこまで言うなら置いてあげる。……感謝せよ」
 服の袖で涙を拭きながら、ちなみはぶっきらぼうに言った。
「感謝はともかく、あんま泣くな。心臓に悪い」
「むっ。……泣いてなんてない。……さっきタカシが見たのは、蜃気楼」
「砂漠でしたか」
「……大統領です」
 なにこの会話。
「……じゃ、お仕事開始。……偉い?」
「あー偉い偉い」
 褒めてほしそうな瞳に見つめられたので、なでてやる。
「……イスに元気付けられ、気力充分。頑張る大統領」
 そう言うと、ちなみは机の上に置かれた書類に目を通し、スタンプを押した。
「……ふう。休憩」
「いやいや、いやいやいや! 一枚しかしてないし! 休憩には早すぎるだろ!」
「……うるさい。……大統領が休憩といったら休憩なの」
 ちなみはくるんと180度回転し、こちらに向くと、おもむろに抱きついてきた。
「……このイスはよいイス。むー」
「むーじゃねえ」
「……ぬー?」
「帰っていいですか」
「……イスとしての仕事を放棄すると、黒服が」
「これ、仕事?」
「……仕事。……大統領の英気を養うとかなんとか」
 どうにも信じられないが、大統領がそう言うのであればそうなのだろう。しかし、ゆるゆるの笑顔で俺に抱きつき、すりすりしまくってる姿からは、とても休憩しているようには思えない。
「……ほら、タカシからも抱っこする」
「はいはいはい」
 せがまれるがままにちなみを抱っこする。
「にゅー、んー、にゅー♪」
「大統領の言語が崩壊した」
「……膀胱も崩壊した」
「大統領が漏らした! 衛生兵、えーせーへー!」
「……嘘。大統領は漏らさない」
 確かに、太もも付近から液体の感触は感じられない。
「だが、胸元はべったりしている」
「……なんで? ……あ、よられ出てた」
 気が緩みすぎたのか、ちなみの口元からこぼれ出た涎が俺の胸をべったりと濡らしていた。
「大統領、涎って……」
「……タカシがあるふぁ波出すせいだ。……リラックスしすぎる。……まったく、困ったイスだ」
「α波はリラックスした当人が出るものだし、責任を転嫁させられても困るし、そもそも自分から志願した覚えがない」
「……ふにゅふにゅ」
 俺の話なんてちっとも聞かずに、ちなみは俺に抱きつき、胸元にすりすりした。
「……むー、涎で気持ち悪い。……タカシ、もーちょっと体を下にずらして」
「ん、こうか?」
 腰を前にずらすと、ちなみは自分の体を俺の腹の辺りに落とした。そして、俺の顔を両手で掴んだ。
「……あぐあぐ♪」
 そして、俺のほっぺたをあむあむと甘噛みした。
「大統領、俺はイスであり、食料ではないと思うが」
「……あむあむ、んー♪」
「ダメだこいつ、ちっとも聞いてやしねえ。馬鹿なのだろうか」
「……大統領だもん。馬鹿じゃないもん。……失礼なイスは、食べてしまえー」
 そう言って再び俺を甘噛みする大統領だった。結局、ほぼ一日休憩だけで終わった。
「……明日は、お仕事頑張ろう」
 俺を涎まみれにしたまま決意する大統領だった。

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【ツンをデレに変える能力を手に入れた男】

2010年02月14日
 寝てたら神が降臨し、何でも叶えてやると言ってきたので、ハーレムをくれと言ったら断られた。
 悔し紛れに神のヒゲを引き千切ったら、代わりと言っては何だがとツンをデレに変える能力をくれた。こんなもんもらっても……あ、そうだ、アイツに使ってみよう。
 そんなわけで翌日、試してみようと教室で独り小説を読んでるちなみに近づく。
「……近寄るな」
 こちらを見もせずに、ちなみは冷たく切り捨てた。この娘は子供の頃は割と仲が良かったのだが、中学生に上がるか上がらないかぐらいで急に冷たくなり、冷戦状態が現在まで続いている。
 やはり嫌われるのは気持ちよくないし、なにより昔のような笑顔を見せて欲しい。この能力を使えば、少しは仲良くなれるのだろうか。
「いさてーあばめひなんえとかふぇーなん。ツンデレ変換作業かーいし」
 適当な呪文を唱え、力をちなみに向ける。
「……? 何を……う、あぐ」
 ちなみは胸を押さえ、小さくうずくまった。突然のことに、慌ててちなみの元に駆け寄る。
「ど、どした!? 大丈夫か!?」
 自分でやっておいて大丈夫も何もないが、この力のせいでちなみの体に何かあっては大変だ。神の野郎、ちなみに何かあったら容赦しねえ。
「お、おい、大丈夫か?」
「…………」
 ちなみを軽く揺さぶると、ちなみはゆっくりと体を起こした。だが、目がぼんやりしていて焦点が定まっていない。どうしよう、ちなみに何かあったら……!
「……ちょっと」
「どっ、どした? どっか辛いのか?」
「……いーから」
 そう言いながら、ちなみは手招きした。招かれるままちなみのそばに体を寄せると、ぐいっと引っ張られた。
「……んー」
 そして、俺の頭を抱え込み、愛おしそうにすりすりとほお擦りしてます。なんスか、これ。
「ははあ、夢だな」
「……現実なのら」
「ちなみがなのら口調!? ますますもって夢の可能性が高まっている!」
「……むう。信じれ」
 ちょっと不満そうな顔をして、ちなみが俺の頬を持ち、ふにふにした。この感覚……まさか、現実!?
「……信じた?」
「信じ難いが、信じるしかないようだな」
「……にゅー」
 嬉しそうに微笑み、ちなみは俺の頬に自分のほっぺをこすりつけまくりんぐ。気持ちがよすぐる。そりゃ顔もにやけまくりんぐ。
「見て、別府くんの顔がとろけてるよ」
「華丹路の豹変も驚いたが、別府のにやけ顔にも驚いたな」
 華丹路とはちなみの苗字であり、何故そんな名前を言うのかと思えばそれは周囲から上がる声であって俺に関与できることではないのであり、ここは学校で、そして級友たちにちなみとの痴態を全て見られている。
「やめてちなみやめて! 見てる見てるみんなすげー見てる!」
「……バカップル、爆誕」
「自分で言うなッ!」
 大声をあげると、ちなみは迷惑そうな顔をして両耳を塞いだ。手が離れた、好機!
「とうっ!」
「……えい」
「むぎゅ」
 ぴょいんと飛んで逃げようとしたら足首を掴まれて顔から床に激突。とても痛い。
「……逃げるの、禁止。……寂しい」
 床に寝転び鼻を押さえる俺の横に座り込み、ちなみが俺の手をきゅっと握った。
「いやはや、嬉しいは嬉しいのですが、身が持たない予感がするので解除。えい」
 再び力を使い、ちなみのツン→デレ変換を解除する。元の冷たい状態に戻るのは寂しいが、一時とはいえ以前のように、いやそれ以上の仲になれたのでよかったといえよう。
「…………」
「あ、戻りましたか。いやはや、大変でしたね」
「……~~~~~!!!」
 突然、ちなみの顔が真っ赤になった。何?
「……よ、よくも私に辱めを」
「えええええ!? いや、力を使ったのは俺だけど、すりすりしたのはお前だよ!?」
「……タカシが私によからぬ術をかけ、強制したに違いない。……あ、あんなことしたいなんて、思ってないんだから!」
「なるほどよく分かったからほっぺをつねらないでください」
 さっきからずっとほっぺを捻り続けられていて、とても痛いのです。
「……その言葉、信じてない。……ほ、本当に、したいとか思ってない!」
「痛い痛い痛い! 信じてるから千切れるから離してお願い!」
「……うー、本当なんだから」
「チクショウ、こいつ人の話聞いてねえ! 痛すぐる!」
 うーうー唸るちなみにほっぺを引っ張られ続ける俺だった。

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【何故、自分はかわいいと言われないのか悩むツンデレ(ちなみん以外)】

2010年02月10日
「……私が可愛いと自画自賛しているとでも言うのか」
 登校するなりいきなりちなみが詰め寄ってきたので面食らう。
「何の話か、まず俺に話してみたらどうだろう」
「……断る」
 それではどうしようもない。仕方ないので頭をなでてやりすごす。
「……ん。もっと」
 せがまれたのでさらになでること数分、ようやっと満足したようで、ちなみが口を開いた。
「……そんなことをしている場合ではない。……まったく、タカシときたらすぐに私の頭をなでる。……困ったものだ」
 もっとって言ったの誰だったっけ、という視線を向けるが、まるで堪えた様子がない。すげー面の皮。
「……こんなことがあったのです」
 話を聞くと、寝てると神が降臨し、「お前以外の娘は可愛いと言われなくて悩んでる。お前は可愛いと言われてよかったね。貧乳? 貧乳ぱぅわーか?」と言ったらしい。
「それは神ではなくて、何か別の存在だと思うます。たぶん、俺に近しい存在」
「……そんなのは、どうでもいい。……問題は、私も可愛いと言われずに悩んでいるというのに、神の野郎、私は除外しやがった。……許すまじ」
 おお、ちなみが怒りに燃えている。これは珍しい。
「しかし、本当に悩んでるのか?」
「んんん」
「…………」
 普通に否定しやがった。
「……でも、自分を可愛いと思ってる計算高い女だと思われるのも癪だ。……なので、何故、自分は可愛いと言われないのか悩むグループに、私も入れて欲しい」
「可愛い」
「…………」
「ちなみって可愛い」
「……なんでそんなこと言うか」
 ちなみの眉根が不満そうに寄った。
「こう言うことにより、可愛いと言われず悩む美少女グループに入れなくなるから」
「……タカシは心底いじわるだ。タカシの発言により、可愛いと言われ慣れてる美少女グループに入らざるを得なくなってしまった」
 負けねぇなあ、コイツ。
「……高嶺の花。……私、高嶺の花。……もうタカシには手が届かない」
「届きますが」
 ちなみの両脇に手を入れ、持ち上げる。
「……下ろせ」
 ぷらーんと手足を投げ出し、やる気なさげにちなみが呟く。年寄りの猫みたい。
「お前軽いなー。ちゃんと飯食ってるか?」
「……下ろせ」
「高いたかーい」
 赤ちゃんにするように、ちなみを高く掲げる。
「…………」
 すると、不満そうなオーラがちなみ付近から発生した。目尻がきゅっと上がってる。
「……赤子ではないので、嬉しくない」
「俺も、高い高いしても貧乳ゆえの揺れなさが嬉しくない」
「…………」
 無言で足をばたつかせ、ちなみは俺の腹を蹴った。
「痛い痛い痛い! 蹴るでない!」
「……揺れる。……信じれば、揺れる」
「物理的に無理。痛い痛い蹴るな!」
 あまりに痛いので手を離す。音もなく着地し、ちなみは俺のほっぺを引っ張った。
「……失礼千万丸め」
「船長がやばそうな船の名前ですね」
「……まったく。……失礼なので、私に可愛いと百億万回言うこと。……これ、罰だから」
「馬鹿がよく使う単位ですね」
「……馬鹿に使うから問題ない」
「さては、馬鹿だと思われているな?」
「……いいから、早く言う。……もしくは、なでなで。……1なでなでにつき、10可愛いに換算可能」
「ええと……つまり、10億万回なでなでするのか。お前の頭、磨り減ってなくなりそうだな」
「…………」
 不満そうな目つきで見られたので、とりあえずなでておく。
「んー」
 満足そうに目が細まったのはいいが、俺は一生をかけてこいつをなでなでするのだろうか。

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【勢い余ってぶっ飛んでしまったツンデレ】

2010年02月09日
 下校中、ふと前方を見ると、木に体を隠したちなみを発見してしまった。奴のことだ、俺が通りかかった時に体当たりし、そのまま車道へ吹き飛ばして亡き者にしようとしているに違いない。(被害妄想)
 そうはさせじと警戒しつつ、それを表に出さないままちなみが隠れてる木の前を通る。
「……とー」
 果たして、やる気のない掛け声をあげて俺を殺さんと(被害妄想)ちなみが飛び出してきた。それを華麗にかわす俺。
「……お?」
 不思議そうな声をあげながら、ちなみはそのまま道路……ではなく、反対側の商店の壁にぶつかった。
「ぬがっ」
 その反動でごろんごろん転がり、俺の足元まで転がりついた。こてりと俺の靴を枕に、目が合う。
「ええと……大丈夫か?」
「……よけた」
「うん」
「……痛かった」
「そのようで」
「…………」(じわーっ)
「いやいやだからって泣かれても困りますよいや本当にちょっと待ってほらほら変な顔ー」
 慌ててちなみを抱き起こして埃を払い、そのまま流れるような動きで変な顔をして慰める。
「……こども扱いだ」(じわわーっ)
「変顔度が足りなかった!? 待って泣くな泣かれるともう俺はどうしたらいいか分からないのだ!」
「……うー」
「いやその、ちっとも俺は悪くないんだけどゴメンナサイ」
「……ダメ。許さない」
 なぜ俺が許しを請う側になっているのか。よく考えると俺がちなみと同じ状況になっててもおかしくないのだ。よし、そこのところをびしっと話そうではないか!
「こら、ちなみ!」
「……おっきな声、怖い」(うるるるる)
「ごめんね俺が悪かったですなんでもするから許して泣かないでお願いします!」
 こいつ、自分の武器を熟知してるから嫌い。
「……ふふん。……じゃ、罰」
「四肢をもぐとかでなければ受けよう」
「……あー、それもアリかと」
「なしの方向でひとつ!」
「……ちぇ。……んと、……じゃ、どしよっかな」
「思いつかないのであれば何もしないのはどうだろう」
「きゃっきゃ。……こほん。……却下」
「きゃっきゃ。ちなみ、きゃっきゃ」
「…………」
 ものすげー嫌そうな顔でちなみは俺を見た。とても愉快。
「……不愉快なので、酷い罰の方向で」
 いかん、俺の四肢がとてもピンチ。

「……と、いうわけで、罰」
「罰スか、これ」
「……ん。罰。……恐ろしい。がくがくがく」
 一緒に自宅に帰り、そこで言い渡された罰とは、恐ろしくともなんともなく、ただちなみを後ろから抱っこするだけだった。
「俺にはどこが恐ろしいのかちっとも分からないので、教えてはくれまいか」
「……やれやれ、おばかなタカシに賢い私が教えてやる。……えーと」
「いま考えてませんか」
「気のせい。……えーと、どうしよっかな」
「どうしよっかなって聞こえた」
「……もー、タカシが後ろでぐちゃぐちゃ言うから忘れちゃったじゃない。……罰として、なでなですること」
「めんどい」
「……なでなで、すること」(じわーっ)
「だから、イチイチ泣くなッ! ああもうっ、好きなだけしてやるよっ!」
 ちょっと乱暴にちなみの頭をなでなでする。
「……いつになく乱暴な手つきに、ちょっとドキドキ」
「いらんこと言うなッ!」
「むふー」
 満足そうに鼻息を漏らすちなみの髪をくしゃくしゃにする俺だった。

拍手[11回]