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2025年05月04日
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【吸血鬼ちなみん】
2010年02月17日
ちなみが吸血鬼になった、と言い張る。
「……血を吸う系です」
「蚊?」
「……惜しい。……もうちょっと凶悪」
「凶悪な奴は怖いから嫌だなあ」
「……吸血鬼の中でも、あまり凶悪ではないともっぱらの評判。……お子様でも安心の、安全設計」
「そんなヘタレ吸血鬼が、俺に何用ですか」
「……血を」
すすすっと寄って来たので、同じ距離をすすすっと離れる。
「……逃げられると、吸えない」
「トマトジュースで我慢しろ」
「……トマト、嫌い」
吸血鬼の眉間が困ったように狭まった。ていうか好き嫌いだけの問題で、血の代替品になるのか、トマト汁。
「……なので、タカシの血を吸おうかと。……ちくっとするだけで、あまり痛くないと思われます」
「仮に痛くないとしても、嫌です」
「……やれやれ、タカシは贅沢だ。……こんなキュートな吸血鬼が吸血してあげるというのに、何が不満だと言うのだ」
「俺だけ血を吸われるのは嫌だ。だから、代わりに俺もお前から何かを要求する」
「……私の血、吸う?」
「俺は吸血鬼じゃないんだから、そんなのもらっても嬉しくない」
「……じゃあ」
「ちなみさん、これはいったいどういう状況なのか、俺に分かりやすく説明してはくれまいか」
「……さーびす?」
分かりやすくは説明してくれなかったので、俺が説明すると、まず俺が布団の上にあぐらをかいて座り、その上にちなみが座る二重構造となっております。
「サービスと言うが、別段嬉しくはないのだが」
「……抱っこも許可する」
「いや、許可されても」
「……許可する」
なんかどう足掻いてもしないとダメっぽいので、諦めてちなみを後ろから抱っこする。
「……ん。……で、手を」
「ん? 痛っ! 何す……うひゃあああ!?」
指先に鋭い痛みが走った次の瞬間、ぬるりと熱い何かに包まれる。
「……ぺろぺろ、ちうちう」
俺の手を両手で掴み、ちなみはまるで楽しむかのように俺の指に舌をからませていた。
ちゅっちゅとついばむ様に指に口づけすると、ちなみはおもむろに口腔に含み、ゆっくりと血をすすった。背骨を駆け巡る電撃に似た快楽に、思わず身震いする。
「おま、ちょ、ちょっと! 何してんだよ!」
「……ちゅぷ。……血を」
「血を、じゃねーよ! いや、いいんだけど、なんか言ってからしろよ! お兄さんびっくりだよ!」
「……ちゅー、ちゅちゅ、……ちゅ。……ん。余は満足じゃ」
俺の指に数度口づけすると、ちなみは薄く笑って口を離した。
「満足したなら帰ってはいかがかな?」
「……まだ、血の代価のさーびすをしてない。……と、いうことで、なでなでを許可する」
「それは俺に対するサービスなのですか」
「……タカシはなでなで変質狂なので、誰かをなでなでしないとおかしくなる。……私が犠牲になることで、今日も世界は平和だ。……ああ、タカシになでなでされるだなんて、嫌だなあ」
「や、なでなでするの嫌いじゃないが、別にそこまで好きではないのだけど」
「……なでなで」
うるむ瞳でせがまれたので、小さく嘆息してからちなみの頭をなでる。
「……♪」
「いったい誰へのサービスなんだろうな」
「それはもちろん、タカシへのさーびす。……ん?」
突然、黒い塊が部屋の中央に現れた。
「ここに居たか、羅刹姫。……お命、頂く」
それが人だと脳が認識した瞬間、風のように俺たちに襲い掛かってきた。
「……えい」
「ぬおっ!?」
しかし、ちなみの手が軽く振るわれただけで、人影の下半身が霧のように消えた。
「馬鹿な! 新生したばかりの身でありながら、これほどの力を!? ……くっ、一旦引かせて頂こう」
「……ダメ」
「ぬ? ぬ……ぬあああああっ!」
ちなみが俺に理解できない言葉で何かを呟いた瞬間、人影から黒い炎が噴出した。その炎は部屋の家具を燃やすことなく、人影だけを燃やし尽くした。後には、黒い煤だけが残った。
「……まったく。……ほら、続き」
「…………」
「……? どしたの、タカシ? ……続きをご所望ですが」
「いやいや、いやいやいや! 続きどころじゃねーだろ! なんだよ、羅刹姫とか! え、マジに吸血鬼なの?」
「……最初から嘘なんて言ってない。……まあ、細かいことは気にせず、タカシは私をなでなでするといい」
「いや、なでなでとか超後回しだろ! ほら、なんか怖い人来て、今現在消し炭に成り果てて俺の部屋にいますよ!」
「……なでなでは最優先事項かと」
煤を指差しながら叫んだら、ちなみのほっぺが膨れた。
「なんでそんなので怒ってんだ! え、なに、何かに狙われてるの?」
「……なんか、よく知らないけど、いっぱい襲ってくる。……毎回返り討ちしてたら、羅刹姫とかいうあだ名をつけられた。……もっと可愛い名前がいいと思う」
「いやいや、可愛い名前とかどうでもよくて! 襲われるとか、大丈夫なのか? 怪我とかしてないか?」
急に心配になって、ちなみの服をめくって点検する。……うん、目立った外傷はないようだ。一安心。
「……あ、あの、……さすがに照れる」
「ん? ……あ、ああっ! いやその、そういうつもりじゃ!」
慌てて手を離し、元通りにする。無意識とはいえ、堂々と肌を見てしまったな。……そういや、なんかピンクいのも見えたような……き、気のせいだよな、うん。
「……むぅ」
ちなみは頬を染め、小さくうめいた。
「あー、なんだ。とにかく、襲われたりするのは危険なので、なんかあったら俺を呼べ。何ができるか分からんが、できる範囲で助けるから」
「……いい。……これでも私、超強いので。……餌を危険にさらすのは、嫌」
「餌ですか、俺」
「……でも、気持ちは嬉しいと思ったり、思わなかったり、……その、ええと」
「あー、うん。大丈夫、分かってる」
「……むぅ」
ちなみの頭から湯気が出てきたので、ごまかすようにちなみをなでなでする俺だった。
「……血を吸う系です」
「蚊?」
「……惜しい。……もうちょっと凶悪」
「凶悪な奴は怖いから嫌だなあ」
「……吸血鬼の中でも、あまり凶悪ではないともっぱらの評判。……お子様でも安心の、安全設計」
「そんなヘタレ吸血鬼が、俺に何用ですか」
「……血を」
すすすっと寄って来たので、同じ距離をすすすっと離れる。
「……逃げられると、吸えない」
「トマトジュースで我慢しろ」
「……トマト、嫌い」
吸血鬼の眉間が困ったように狭まった。ていうか好き嫌いだけの問題で、血の代替品になるのか、トマト汁。
「……なので、タカシの血を吸おうかと。……ちくっとするだけで、あまり痛くないと思われます」
「仮に痛くないとしても、嫌です」
「……やれやれ、タカシは贅沢だ。……こんなキュートな吸血鬼が吸血してあげるというのに、何が不満だと言うのだ」
「俺だけ血を吸われるのは嫌だ。だから、代わりに俺もお前から何かを要求する」
「……私の血、吸う?」
「俺は吸血鬼じゃないんだから、そんなのもらっても嬉しくない」
「……じゃあ」
「ちなみさん、これはいったいどういう状況なのか、俺に分かりやすく説明してはくれまいか」
「……さーびす?」
分かりやすくは説明してくれなかったので、俺が説明すると、まず俺が布団の上にあぐらをかいて座り、その上にちなみが座る二重構造となっております。
「サービスと言うが、別段嬉しくはないのだが」
「……抱っこも許可する」
「いや、許可されても」
「……許可する」
なんかどう足掻いてもしないとダメっぽいので、諦めてちなみを後ろから抱っこする。
「……ん。……で、手を」
「ん? 痛っ! 何す……うひゃあああ!?」
指先に鋭い痛みが走った次の瞬間、ぬるりと熱い何かに包まれる。
「……ぺろぺろ、ちうちう」
俺の手を両手で掴み、ちなみはまるで楽しむかのように俺の指に舌をからませていた。
ちゅっちゅとついばむ様に指に口づけすると、ちなみはおもむろに口腔に含み、ゆっくりと血をすすった。背骨を駆け巡る電撃に似た快楽に、思わず身震いする。
「おま、ちょ、ちょっと! 何してんだよ!」
「……ちゅぷ。……血を」
「血を、じゃねーよ! いや、いいんだけど、なんか言ってからしろよ! お兄さんびっくりだよ!」
「……ちゅー、ちゅちゅ、……ちゅ。……ん。余は満足じゃ」
俺の指に数度口づけすると、ちなみは薄く笑って口を離した。
「満足したなら帰ってはいかがかな?」
「……まだ、血の代価のさーびすをしてない。……と、いうことで、なでなでを許可する」
「それは俺に対するサービスなのですか」
「……タカシはなでなで変質狂なので、誰かをなでなでしないとおかしくなる。……私が犠牲になることで、今日も世界は平和だ。……ああ、タカシになでなでされるだなんて、嫌だなあ」
「や、なでなでするの嫌いじゃないが、別にそこまで好きではないのだけど」
「……なでなで」
うるむ瞳でせがまれたので、小さく嘆息してからちなみの頭をなでる。
「……♪」
「いったい誰へのサービスなんだろうな」
「それはもちろん、タカシへのさーびす。……ん?」
突然、黒い塊が部屋の中央に現れた。
「ここに居たか、羅刹姫。……お命、頂く」
それが人だと脳が認識した瞬間、風のように俺たちに襲い掛かってきた。
「……えい」
「ぬおっ!?」
しかし、ちなみの手が軽く振るわれただけで、人影の下半身が霧のように消えた。
「馬鹿な! 新生したばかりの身でありながら、これほどの力を!? ……くっ、一旦引かせて頂こう」
「……ダメ」
「ぬ? ぬ……ぬあああああっ!」
ちなみが俺に理解できない言葉で何かを呟いた瞬間、人影から黒い炎が噴出した。その炎は部屋の家具を燃やすことなく、人影だけを燃やし尽くした。後には、黒い煤だけが残った。
「……まったく。……ほら、続き」
「…………」
「……? どしたの、タカシ? ……続きをご所望ですが」
「いやいや、いやいやいや! 続きどころじゃねーだろ! なんだよ、羅刹姫とか! え、マジに吸血鬼なの?」
「……最初から嘘なんて言ってない。……まあ、細かいことは気にせず、タカシは私をなでなでするといい」
「いや、なでなでとか超後回しだろ! ほら、なんか怖い人来て、今現在消し炭に成り果てて俺の部屋にいますよ!」
「……なでなでは最優先事項かと」
煤を指差しながら叫んだら、ちなみのほっぺが膨れた。
「なんでそんなので怒ってんだ! え、なに、何かに狙われてるの?」
「……なんか、よく知らないけど、いっぱい襲ってくる。……毎回返り討ちしてたら、羅刹姫とかいうあだ名をつけられた。……もっと可愛い名前がいいと思う」
「いやいや、可愛い名前とかどうでもよくて! 襲われるとか、大丈夫なのか? 怪我とかしてないか?」
急に心配になって、ちなみの服をめくって点検する。……うん、目立った外傷はないようだ。一安心。
「……あ、あの、……さすがに照れる」
「ん? ……あ、ああっ! いやその、そういうつもりじゃ!」
慌てて手を離し、元通りにする。無意識とはいえ、堂々と肌を見てしまったな。……そういや、なんかピンクいのも見えたような……き、気のせいだよな、うん。
「……むぅ」
ちなみは頬を染め、小さくうめいた。
「あー、なんだ。とにかく、襲われたりするのは危険なので、なんかあったら俺を呼べ。何ができるか分からんが、できる範囲で助けるから」
「……いい。……これでも私、超強いので。……餌を危険にさらすのは、嫌」
「餌ですか、俺」
「……でも、気持ちは嬉しいと思ったり、思わなかったり、……その、ええと」
「あー、うん。大丈夫、分かってる」
「……むぅ」
ちなみの頭から湯気が出てきたので、ごまかすようにちなみをなでなでする俺だった。
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【ツンデレがおはようのちゅーをしようと機会をうかがっています】
2010年02月16日
……カチャ、パタン。
「ぐぉー……ぐぉー……」
「……大口開けて寝てる。……朝だ、起きろ」
ゆさゆさゆさ。
「ん、む……ぐぉーぐぉーぐぉー」
「……ダメか。……ねーくすと。目覚ましどけー」
……ピピピピピピピピ!
「ぐぉーぐぉーぐぉー」
「……あー、もう。うるさい」
ピ。
「……これでも起きない。……ねーくすと。濡れハンカチ……は、前に怒られたからダメ。……まったく、狭量で困る」
「ぐぉーぐぉーぐぉー!」
「……む、寝息で抗議とはナマイキな。……鼻つまんでやれ」
ぎゅっ。
「むぐぐぐっ……ち、ちなみ、やめれ~」
「えっ……た、タカシ、起きてるの?」
「う、うう……うぐぐぐぐ、ぐぅぐぅ」
「……寝言、か。……そ、そか。タカシの夢の中に、私がいるんだ」
「……ん、んう(む? 何やら声が。薄目開けて確認する俺!ちなみ発見!)」
「…………」
「(いつものように半目でぼーっとしてるが、気のせいか頬がほんのり朱に染まっているような。なんでせうか)」
「……ね、寝てる、よね?」
「(ええ、ついさっきまでは。さて、そろそろ起きようか)」
「……ぜ、全然起きないし、……ちゅーしたら、びっくりして起きる……よね」
「ぐーぐーぐー!(超寝てるっゼ!)」
「…………」
「ぐ、ぐーぐー(ど、どうした? 早くちゅーを!)」
「……急に寝息が怪しくなった」
「ぐ(ぎくり)」
「……起きてる?」
「ぐーぐー(寝てます)」
「…………」
「……zzz(英語表記なら、あるいは!)」
「……Zがいっぱい出てきた。……そ、それなら寝てるに違いない」
「zzz(やったぜZ! 流石はZ! いけいけぼくらのZ!)」
「……じゃ、じゃあ、……ちゅ、ちゅーして、起こさないと」
「zzz!(よし! 来い! いざ!)」
「…………」
「zzz!(どうした! こっちの準備は万端だ! 早く!)」
「……口が、タコみたいにうにゅーってなってる」
「!(しまった、キス欲が高まりすぎた!)」
「…………」
「(ばれたか……仕方ない、諦め)」
……ちゅ。
「!」
唇に触れた柔らかな感覚に慌てて目を開ける。
「おっ、おまっ、さっき!」
「……な、何もしてない。……したとしても、寝てたタカシは気づかない」
早口に言うちなみの頬は赤い。
「い、いや、でもお前俺が起きてるって気づいて」
「……な、何の話か、ちっとも。……起きたなら、早く顔洗ってご飯食べる」
ちなみは耳まで赤くしたまま部屋を出ていった。
……全く、どんな顔して顔を合わせればいいのか。
俺はにやける顔をどうにか引き締めようと、無駄な努力をするのだった。
「ぐぉー……ぐぉー……」
「……大口開けて寝てる。……朝だ、起きろ」
ゆさゆさゆさ。
「ん、む……ぐぉーぐぉーぐぉー」
「……ダメか。……ねーくすと。目覚ましどけー」
……ピピピピピピピピ!
「ぐぉーぐぉーぐぉー」
「……あー、もう。うるさい」
ピ。
「……これでも起きない。……ねーくすと。濡れハンカチ……は、前に怒られたからダメ。……まったく、狭量で困る」
「ぐぉーぐぉーぐぉー!」
「……む、寝息で抗議とはナマイキな。……鼻つまんでやれ」
ぎゅっ。
「むぐぐぐっ……ち、ちなみ、やめれ~」
「えっ……た、タカシ、起きてるの?」
「う、うう……うぐぐぐぐ、ぐぅぐぅ」
「……寝言、か。……そ、そか。タカシの夢の中に、私がいるんだ」
「……ん、んう(む? 何やら声が。薄目開けて確認する俺!ちなみ発見!)」
「…………」
「(いつものように半目でぼーっとしてるが、気のせいか頬がほんのり朱に染まっているような。なんでせうか)」
「……ね、寝てる、よね?」
「(ええ、ついさっきまでは。さて、そろそろ起きようか)」
「……ぜ、全然起きないし、……ちゅーしたら、びっくりして起きる……よね」
「ぐーぐーぐー!(超寝てるっゼ!)」
「…………」
「ぐ、ぐーぐー(ど、どうした? 早くちゅーを!)」
「……急に寝息が怪しくなった」
「ぐ(ぎくり)」
「……起きてる?」
「ぐーぐー(寝てます)」
「…………」
「……zzz(英語表記なら、あるいは!)」
「……Zがいっぱい出てきた。……そ、それなら寝てるに違いない」
「zzz(やったぜZ! 流石はZ! いけいけぼくらのZ!)」
「……じゃ、じゃあ、……ちゅ、ちゅーして、起こさないと」
「zzz!(よし! 来い! いざ!)」
「…………」
「zzz!(どうした! こっちの準備は万端だ! 早く!)」
「……口が、タコみたいにうにゅーってなってる」
「!(しまった、キス欲が高まりすぎた!)」
「…………」
「(ばれたか……仕方ない、諦め)」
……ちゅ。
「!」
唇に触れた柔らかな感覚に慌てて目を開ける。
「おっ、おまっ、さっき!」
「……な、何もしてない。……したとしても、寝てたタカシは気づかない」
早口に言うちなみの頬は赤い。
「い、いや、でもお前俺が起きてるって気づいて」
「……な、何の話か、ちっとも。……起きたなら、早く顔洗ってご飯食べる」
ちなみは耳まで赤くしたまま部屋を出ていった。
……全く、どんな顔して顔を合わせればいいのか。
俺はにやける顔をどうにか引き締めようと、無駄な努力をするのだった。
【ツンデレは酷い肩コリのようです】
2010年02月16日
土曜日は半日授業なのでとても楽だ。そんな楽な日にちなみと一緒に帰ってると、突然横の小さいのがぐるぐる肩を回しだした。
「どした? こるほど大層な乳も持ってないくせに肩こりか?」
「……どうしてイチイチ失礼なことを言うかな、キミは」
不満そうな顔でちなみは俺をにらんだ。
「……指摘通り、肩こり。……きっと、胸がおっきくなってる予兆。……ぼいんぼいーんになる予感」
「仮に大きくなるとしても、ぼいんぼいーんという擬音が似合うほどは大きくはならない断言しよう」
「……いちいち不愉快」
不満そうな顔でちなみは俺の頬を引っ張った。
「じゃあ謝罪の意味も含め、肩でも揉んでやろうか? 近所の猫の間ではゴッドフィンガーと大評判だぞ」
「……それ、別に腕がいいからとかじゃなくて、よくエサをやってるから近寄ってくるだけ」
エサをやる代わりにモフらせてもらう俺です。猫最高。ねこだいすき。
「で、本当にどうだ?」
「……まあ、えろいことをしないなら」
「それは約束できない」
「……私の魅惑のぷろぽーしょんが、タカシを性犯罪者に」
「貧乳を魅惑と言うのであれば、確かに魅力的ではある」
またしても頬を引っ張られた。
「……気にしてるんだから、あまり貧乳貧乳言わない」
「とても素敵なのに……」
「うるさい。……とにかく、えろいことしないなら、肩を揉んでもいい」
何やら俺が頼む節になっているが、まあコイツには普段から色々世話になってることだし、肩を揉んでやることにした。
場所は変わって、ちなみの家。おばさんからの「あらあら、昼間から子作り? いわゆる真っ昼間王ね」という頓狂な言葉をチョップで断ち切った後、ちなみの部屋へ向かう。
「いつも思うが、お前のおばさん頭おかしいよな」
「……我が親ながら、全く否定できない。……タカシといい勝負」
俺はあんな変人じゃない。
「……じゃ、肩もんで」
「任せろ」
ちなみの後ろに座り、軽く肩を掴む。
「む、ホントにこってるじゃん。かちこちだ。かっちかちやでー」
「……戦闘メカだ」
「お笑い芸人の方です」
少し服をずらし、露になった肩に手を這わせてゆっくりと揉む。
「……あー、気持ちいい」
「しかし、なんでこんなこってるの?」
「……きょ」
「巨乳になる、というありえない未来予想図以外の理由でお願いします」
「……最近、机に向かってる時間がちょっと長いから」
やや不機嫌そうな声でちなみが答える。
「へぇ、偉いな。俺もちょっとは勉強しないとな」
「……勉強じゃなくて、パソコンで遊んでる」
申し訳なさそうな声に、机を見る。机の上に、パソコンがででんと鎮座していた。
「……ええと。時には遊ぶのも大事だよな」
「……うう、タカシごときに気を使われている」
「ごとき言うな」
肩甲骨の隙間を指で強めに刺激する。
「あっ!」
「あ、痛かったか? ゴメンゴメン」
「……う、ううん。よかった。気持ちよかった」
「コメントがえろい!」
「…………」
「だが、できることならもっと気持ちを込めて言ってくれると助かります」
「…………」
「ええと、ごめんなさい」
凄くにらまれたので謝る。
「……まったく。どうしてタカシはこんなにえろいのか」
「いや、俺の頭の中に比べれば、俺の言葉なんて箸にも棒にもかからないレヴェルだぞ?」
「……いったいどのような惨劇がその頭の中で繰り広げられているのか」
「カッターシャツだけ着たちなみに首輪を」
「……肖像権の侵害」
ちなみは後ろも見ずに器用に俺の頬を引っ張った。
「脳内には適用されないと思いますが」
「……うるさい。変態め」
「変態じゃないよ、ちょっと人より小さな胸が好きな紳士だよ」
「……人、それを変態と呼ぶ」
「紳士なんだけどなあ」
一人ごちながら、ちなみの肩をぐにぐに揉む俺だった。
「ほい、こんなとこかな」
30分ほどたっぷり肩を揉んだ後、軽く肩を叩いて終わりを告げる。
「……はふ~。……ん、だいぶ軽くなった。……ありがと」
くるくると肩を回し、ちなみは調子を確認した後、俺に礼を言った。
「どういたまして。んじゃ、ボチボチ俺は帰るな」
「……待って。ついでだし、泊まっていけばどうか」
「大胆だな、おまいは」
「? ……桃鉄しよ、桃鉄」
「あー……そゆことか」
「?」
「や、折角のお誘いだが、帰る」
「……ももてつ」
袖をきゅっとつかみ、ちなみは俺を見上げた。よし、完全敗北。
「泊まって行こうねー、俺は泊まってちなみと桃鉄をするんだねー」
「……やたっ。……じゃ、お母さんに言ってくる」
ちなみは嬉しそうにパタパタ部屋を出て行った。
コイツは自分の武器を知ってるに違いない。そして俺がその武器に格別に弱いことも知ってるに違いない。畜生。
「……言ってきた。……んじゃ、お昼ご飯作るから、一緒に食べよ?」
けど、嬉しそうなちなみの顔を見てると、弱くてもいいかなーなんて思う俺がいたりして。
「どした? こるほど大層な乳も持ってないくせに肩こりか?」
「……どうしてイチイチ失礼なことを言うかな、キミは」
不満そうな顔でちなみは俺をにらんだ。
「……指摘通り、肩こり。……きっと、胸がおっきくなってる予兆。……ぼいんぼいーんになる予感」
「仮に大きくなるとしても、ぼいんぼいーんという擬音が似合うほどは大きくはならない断言しよう」
「……いちいち不愉快」
不満そうな顔でちなみは俺の頬を引っ張った。
「じゃあ謝罪の意味も含め、肩でも揉んでやろうか? 近所の猫の間ではゴッドフィンガーと大評判だぞ」
「……それ、別に腕がいいからとかじゃなくて、よくエサをやってるから近寄ってくるだけ」
エサをやる代わりにモフらせてもらう俺です。猫最高。ねこだいすき。
「で、本当にどうだ?」
「……まあ、えろいことをしないなら」
「それは約束できない」
「……私の魅惑のぷろぽーしょんが、タカシを性犯罪者に」
「貧乳を魅惑と言うのであれば、確かに魅力的ではある」
またしても頬を引っ張られた。
「……気にしてるんだから、あまり貧乳貧乳言わない」
「とても素敵なのに……」
「うるさい。……とにかく、えろいことしないなら、肩を揉んでもいい」
何やら俺が頼む節になっているが、まあコイツには普段から色々世話になってることだし、肩を揉んでやることにした。
場所は変わって、ちなみの家。おばさんからの「あらあら、昼間から子作り? いわゆる真っ昼間王ね」という頓狂な言葉をチョップで断ち切った後、ちなみの部屋へ向かう。
「いつも思うが、お前のおばさん頭おかしいよな」
「……我が親ながら、全く否定できない。……タカシといい勝負」
俺はあんな変人じゃない。
「……じゃ、肩もんで」
「任せろ」
ちなみの後ろに座り、軽く肩を掴む。
「む、ホントにこってるじゃん。かちこちだ。かっちかちやでー」
「……戦闘メカだ」
「お笑い芸人の方です」
少し服をずらし、露になった肩に手を這わせてゆっくりと揉む。
「……あー、気持ちいい」
「しかし、なんでこんなこってるの?」
「……きょ」
「巨乳になる、というありえない未来予想図以外の理由でお願いします」
「……最近、机に向かってる時間がちょっと長いから」
やや不機嫌そうな声でちなみが答える。
「へぇ、偉いな。俺もちょっとは勉強しないとな」
「……勉強じゃなくて、パソコンで遊んでる」
申し訳なさそうな声に、机を見る。机の上に、パソコンがででんと鎮座していた。
「……ええと。時には遊ぶのも大事だよな」
「……うう、タカシごときに気を使われている」
「ごとき言うな」
肩甲骨の隙間を指で強めに刺激する。
「あっ!」
「あ、痛かったか? ゴメンゴメン」
「……う、ううん。よかった。気持ちよかった」
「コメントがえろい!」
「…………」
「だが、できることならもっと気持ちを込めて言ってくれると助かります」
「…………」
「ええと、ごめんなさい」
凄くにらまれたので謝る。
「……まったく。どうしてタカシはこんなにえろいのか」
「いや、俺の頭の中に比べれば、俺の言葉なんて箸にも棒にもかからないレヴェルだぞ?」
「……いったいどのような惨劇がその頭の中で繰り広げられているのか」
「カッターシャツだけ着たちなみに首輪を」
「……肖像権の侵害」
ちなみは後ろも見ずに器用に俺の頬を引っ張った。
「脳内には適用されないと思いますが」
「……うるさい。変態め」
「変態じゃないよ、ちょっと人より小さな胸が好きな紳士だよ」
「……人、それを変態と呼ぶ」
「紳士なんだけどなあ」
一人ごちながら、ちなみの肩をぐにぐに揉む俺だった。
「ほい、こんなとこかな」
30分ほどたっぷり肩を揉んだ後、軽く肩を叩いて終わりを告げる。
「……はふ~。……ん、だいぶ軽くなった。……ありがと」
くるくると肩を回し、ちなみは調子を確認した後、俺に礼を言った。
「どういたまして。んじゃ、ボチボチ俺は帰るな」
「……待って。ついでだし、泊まっていけばどうか」
「大胆だな、おまいは」
「? ……桃鉄しよ、桃鉄」
「あー……そゆことか」
「?」
「や、折角のお誘いだが、帰る」
「……ももてつ」
袖をきゅっとつかみ、ちなみは俺を見上げた。よし、完全敗北。
「泊まって行こうねー、俺は泊まってちなみと桃鉄をするんだねー」
「……やたっ。……じゃ、お母さんに言ってくる」
ちなみは嬉しそうにパタパタ部屋を出て行った。
コイツは自分の武器を知ってるに違いない。そして俺がその武器に格別に弱いことも知ってるに違いない。畜生。
「……言ってきた。……んじゃ、お昼ご飯作るから、一緒に食べよ?」
けど、嬉しそうなちなみの顔を見てると、弱くてもいいかなーなんて思う俺がいたりして。
【ツンデレにぷにってしてみたら】
2010年02月16日
五時間目の授業中、ふと隣の席を見る。一見眠そうな半目でぼーっとしているだが、実は真面目に授業を受けてるちなみがいる。
しかし、俺は真面目に授業を受ける人ではないので、ちなみで暇つぶし開始。消しゴム爆弾投下。
「……む」
俺の攻撃に気づいたのか、ちなみがこっちを見た。にこやかな笑み&手をフリフリ振って親しみをアッピール。
「……嫌がらせされた。……性的な」
「いやいや、性的な嫌がらせはしてない。ただ、その欲望の焔は常に俺の心を炙り続けている」
先生にばれないよう、小さな声で返事する。
「……タカシのような不真面目、異常者、ロリコンと三拍子揃ったダメ人間と違い、私は真面目に先生の話を聞いてる。邪魔しないで」
そう言って、ちなみは前を向いてしまった。すかさず追加の消しゴム爆弾を生成、投下する。
「…………」
ちなみはちらりとこっちを見た。再び親しみをアッピールする。
「……はぁ」
ため息をついて、ちなみはまた前を向いた。呆れられたか。まあ、ガキがするようなことだしなあ。
次は何で暇を潰そうかと思ってたら、頭に何かが降ってきた。手をやって確認すると、消しゴムのかけら。ちなみの方を見る。
「……ふ」
口元を歪め、ちなみは馬鹿にしたような笑みを浮かべた。野郎、俺と同じように消しゴムを削ってこっちに投げたな。
……いい度胸だ。素早く消しゴムを削り、ちなみに向け爆撃開始!
「……甘い」
「何ィ!?」
ちなみは爆撃を下敷きでガードした。なんたることだ、被害0だと!? くそう、追加爆撃だ!
……あ、しまった。消しゴム尽きた。どうしよう。
「こうなっては……白兵戦だ!」
ずずずっと椅子を寄せ、ちなみに突貫。ちなみの頬をぷにっと押す。
「む」
「ふはははは! やわい、やわいぞ! なんてやわい装甲だ!」
続けざまにちなみの頬をぷにぷにする。最早陥落は時間の問題かと思われたその時、ちなみ砦から反撃の狼煙があがった。
「……くろすかうんたー」
「ぬにぃ!?」
俺の指をかいくぐり、ちなみの指が俺の頬を押す。
「……ふふ、紙のような装甲だ」
馬鹿にしたような笑みに、カツィーンとくる。
「ぐぬぬ……ちなみのくせに我が牙城を脅かすとは、生意気な! 喰らえッ!」
両の手でちなみの頬を両方から攻める。戦争は数だ。ちなみの手をかいくぐり、二つの指がちなみの頬をぷにぷにっと押す。
「……むむっ、二刀流とは」
「ふはははは! 我が秘技、破れるものなら破ってみろ!」
「じゃあそうしますね」
前方からの声に、そちらを向く。黒板の前で一生懸命教鞭を振るっていた大谷先生が、なぜか目の前にいますよ。
「先生も一緒に遊びたいのか。しかし、授業中に遊ぶのは感心しないぞ。どうしてもというのなら、また今度遊んであげるぞ」
「わーい! ……じゃなくて! 今は先生の授業中です! 真面目に授業受けてくださいっ! 先生、めってしますよ! めって!」
「先生は腰に手を当て、俺たちを叱った。しかし、その容姿はどう見ても小学生なので、まるで恐怖を感じなかった。だが、この人が大人であるという事実は俺を心胆寒からせるに充分だった。人間ってスゲー」
「心の声は心の中だけに仕舞っていてくださいっ!」
半泣きで先生が怒った。
「俺はまだこの人が大人であることに半信半疑だが、それを指摘するほど子供でもない。子供は目の前の生き物だけで充分だ」
「もーっ! 別府くんは先生のこと馬鹿にしすぎです! 廊下に立ってなさい!」
馬鹿にしすぎたのか、先生が怒った。
「……ぷぷ、ざまーみろ」
「ちなみちゃんもです! 別府くんと一緒になって遊んでた罰です!」
「え……うう、タカシのせいだ。許すまじ」
先生の言葉に、ちなみが俺をにらんだ。
「先生、ちなみが俺に熱く、蕩けるような視線を送るのだがどうしたらいいのだろうか。愛の言葉を返せばいいのだろうか」
「勝手に返してくだたいっ!」
「くだたい?」
「うきーっ!」
壊れかけているので、ちなみを連れて廊下に退避する。
「……まったく、タカシのせいで私まで罰を受ける羽目に。……迷惑」
隣に立つちなみがぶつぶつ言いながら俺の足を踏む。
「ちなみさん、踏んでますが」
「……気のせいの予感」
「その予感は正しくないと思いますが」
「……まあ、遠慮するな。ほりほり」
ちなみは底意地の悪そうな笑みを浮かべながら俺の足をぐりぐりっと踏みつけた。
「ははは、こやつめ」
負けじとちなみのほっぺを指でぐりぐりっと押す。
「……ふふふ、いい度胸」
「ははは、ナイス度胸だろう?」
お互いの顔に不適な笑みが浮かぶ。
「…………」
「…………」
一瞬の間。そして次の瞬間、俺の指が吸い込まれるようにちなみの頬へ向かう、かと思われた。
「な、何ィ!?」
「……ふふ」
しかし、俺の指が辿り着いた場所は、ちなみの頬ではなく、口だった。ちなみは俺の動きを予測し、顔を動かしたのだ。
なんということだ、このような手段でぷにぷにを防ぐとは……!
「……ふふ、ほう?」
「ふん、見事と言っておこう。だがちなみ、この技には致命的な弱点がある!」
俺の言葉に、ちなみは少なからず衝撃を受けているようだった。
「……は、はへほほほ。ほほははほうふふほふふほ?(訳:ざ、戯言を。ここからどうすると言うの?)」
「この技は、とても気持ちよくて俺が嬉しいのだ! ばばーん!」
「…………」
いかん、呆れられているような。
「……え、えと、……指舐められるの、好き?」
呆れられているかと思ったが、そうでもなかったようで、ちなみは口から指を出し、おずおずと尋ねた。
「好き。とても」
「…………」
しばしの逡巡の後、ちなみは俺の手を両手でぎゅっと握った。
「……え、えと、指をぺろぺろして、タカシをめろめろにする作戦。……だから、ぺろぺろするのも仕方がない」
「否定する要素が全くない! 是非に!」
「……えろやろう」
「ごめんね!」
「……ま、まあ、しょうがない。……じゃあ」
ちなみの小さな口が開き、俺の指がその中に……
「ふ、不純異性交遊の現場を発見しましたよっ!?」
先生が教室から飛び出してきて、甘ったるい雰囲気を完膚なきまでに粉砕しやがった。
「ええいこの子供が! せっかくちなみにぺろぺろしてもらうチャンスを! この子供子供子供!」
「せ、先生は子供じゃないです! 立派な大人ですっ! 子供言わないでくだたいっ!」
「くだたい?」
「むきーっ! もーっ、ちなみちゃん! 別府くんに言ってやって……」
先生がちなみの方を見た途端、真っ赤になってふるふる震えだした。どうしたのかと思い、俺もちなみの方を見る。
「……ちゅぷ、ちゅ……れろれろ、ちゅ……ぷ」
おやおや、とても淫靡な音を響かせて俺の指を舐めていますよ。
「ていうかやめろちなみ! 見てる見てる先生見てるっ!」
「あ、あの、その、……先生だけでなく、みんな見てますよ?」
申し訳なさそうな先生の言葉に、ゆっくりと教室を見る。おやおや、窓という窓が全部開き、そこから級友達が顔を覗かせてえええええ!?
「ちちちなみさん、いや、ちなみ様! ほほほらみんな見てる見てるから今すぐやめた方がいいのではないのでせうか!?」
「……タカシ、気持ちいい?」
「はい! ……いやいやいやそうじゃなくてそうじゃなくて畜生助けてえ!」
陶然とした顔で俺の指を舐めるちなみ。その様子を眺める我がクラス一堂。真っ赤な顔ではわはわ言ってるちびっこ教師。
その中心に、快楽と羞恥に震える俺がいます。明日からどんな顔して登校しろと言うのだ。
しかし、俺は真面目に授業を受ける人ではないので、ちなみで暇つぶし開始。消しゴム爆弾投下。
「……む」
俺の攻撃に気づいたのか、ちなみがこっちを見た。にこやかな笑み&手をフリフリ振って親しみをアッピール。
「……嫌がらせされた。……性的な」
「いやいや、性的な嫌がらせはしてない。ただ、その欲望の焔は常に俺の心を炙り続けている」
先生にばれないよう、小さな声で返事する。
「……タカシのような不真面目、異常者、ロリコンと三拍子揃ったダメ人間と違い、私は真面目に先生の話を聞いてる。邪魔しないで」
そう言って、ちなみは前を向いてしまった。すかさず追加の消しゴム爆弾を生成、投下する。
「…………」
ちなみはちらりとこっちを見た。再び親しみをアッピールする。
「……はぁ」
ため息をついて、ちなみはまた前を向いた。呆れられたか。まあ、ガキがするようなことだしなあ。
次は何で暇を潰そうかと思ってたら、頭に何かが降ってきた。手をやって確認すると、消しゴムのかけら。ちなみの方を見る。
「……ふ」
口元を歪め、ちなみは馬鹿にしたような笑みを浮かべた。野郎、俺と同じように消しゴムを削ってこっちに投げたな。
……いい度胸だ。素早く消しゴムを削り、ちなみに向け爆撃開始!
「……甘い」
「何ィ!?」
ちなみは爆撃を下敷きでガードした。なんたることだ、被害0だと!? くそう、追加爆撃だ!
……あ、しまった。消しゴム尽きた。どうしよう。
「こうなっては……白兵戦だ!」
ずずずっと椅子を寄せ、ちなみに突貫。ちなみの頬をぷにっと押す。
「む」
「ふはははは! やわい、やわいぞ! なんてやわい装甲だ!」
続けざまにちなみの頬をぷにぷにする。最早陥落は時間の問題かと思われたその時、ちなみ砦から反撃の狼煙があがった。
「……くろすかうんたー」
「ぬにぃ!?」
俺の指をかいくぐり、ちなみの指が俺の頬を押す。
「……ふふ、紙のような装甲だ」
馬鹿にしたような笑みに、カツィーンとくる。
「ぐぬぬ……ちなみのくせに我が牙城を脅かすとは、生意気な! 喰らえッ!」
両の手でちなみの頬を両方から攻める。戦争は数だ。ちなみの手をかいくぐり、二つの指がちなみの頬をぷにぷにっと押す。
「……むむっ、二刀流とは」
「ふはははは! 我が秘技、破れるものなら破ってみろ!」
「じゃあそうしますね」
前方からの声に、そちらを向く。黒板の前で一生懸命教鞭を振るっていた大谷先生が、なぜか目の前にいますよ。
「先生も一緒に遊びたいのか。しかし、授業中に遊ぶのは感心しないぞ。どうしてもというのなら、また今度遊んであげるぞ」
「わーい! ……じゃなくて! 今は先生の授業中です! 真面目に授業受けてくださいっ! 先生、めってしますよ! めって!」
「先生は腰に手を当て、俺たちを叱った。しかし、その容姿はどう見ても小学生なので、まるで恐怖を感じなかった。だが、この人が大人であるという事実は俺を心胆寒からせるに充分だった。人間ってスゲー」
「心の声は心の中だけに仕舞っていてくださいっ!」
半泣きで先生が怒った。
「俺はまだこの人が大人であることに半信半疑だが、それを指摘するほど子供でもない。子供は目の前の生き物だけで充分だ」
「もーっ! 別府くんは先生のこと馬鹿にしすぎです! 廊下に立ってなさい!」
馬鹿にしすぎたのか、先生が怒った。
「……ぷぷ、ざまーみろ」
「ちなみちゃんもです! 別府くんと一緒になって遊んでた罰です!」
「え……うう、タカシのせいだ。許すまじ」
先生の言葉に、ちなみが俺をにらんだ。
「先生、ちなみが俺に熱く、蕩けるような視線を送るのだがどうしたらいいのだろうか。愛の言葉を返せばいいのだろうか」
「勝手に返してくだたいっ!」
「くだたい?」
「うきーっ!」
壊れかけているので、ちなみを連れて廊下に退避する。
「……まったく、タカシのせいで私まで罰を受ける羽目に。……迷惑」
隣に立つちなみがぶつぶつ言いながら俺の足を踏む。
「ちなみさん、踏んでますが」
「……気のせいの予感」
「その予感は正しくないと思いますが」
「……まあ、遠慮するな。ほりほり」
ちなみは底意地の悪そうな笑みを浮かべながら俺の足をぐりぐりっと踏みつけた。
「ははは、こやつめ」
負けじとちなみのほっぺを指でぐりぐりっと押す。
「……ふふふ、いい度胸」
「ははは、ナイス度胸だろう?」
お互いの顔に不適な笑みが浮かぶ。
「…………」
「…………」
一瞬の間。そして次の瞬間、俺の指が吸い込まれるようにちなみの頬へ向かう、かと思われた。
「な、何ィ!?」
「……ふふ」
しかし、俺の指が辿り着いた場所は、ちなみの頬ではなく、口だった。ちなみは俺の動きを予測し、顔を動かしたのだ。
なんということだ、このような手段でぷにぷにを防ぐとは……!
「……ふふ、ほう?」
「ふん、見事と言っておこう。だがちなみ、この技には致命的な弱点がある!」
俺の言葉に、ちなみは少なからず衝撃を受けているようだった。
「……は、はへほほほ。ほほははほうふふほふふほ?(訳:ざ、戯言を。ここからどうすると言うの?)」
「この技は、とても気持ちよくて俺が嬉しいのだ! ばばーん!」
「…………」
いかん、呆れられているような。
「……え、えと、……指舐められるの、好き?」
呆れられているかと思ったが、そうでもなかったようで、ちなみは口から指を出し、おずおずと尋ねた。
「好き。とても」
「…………」
しばしの逡巡の後、ちなみは俺の手を両手でぎゅっと握った。
「……え、えと、指をぺろぺろして、タカシをめろめろにする作戦。……だから、ぺろぺろするのも仕方がない」
「否定する要素が全くない! 是非に!」
「……えろやろう」
「ごめんね!」
「……ま、まあ、しょうがない。……じゃあ」
ちなみの小さな口が開き、俺の指がその中に……
「ふ、不純異性交遊の現場を発見しましたよっ!?」
先生が教室から飛び出してきて、甘ったるい雰囲気を完膚なきまでに粉砕しやがった。
「ええいこの子供が! せっかくちなみにぺろぺろしてもらうチャンスを! この子供子供子供!」
「せ、先生は子供じゃないです! 立派な大人ですっ! 子供言わないでくだたいっ!」
「くだたい?」
「むきーっ! もーっ、ちなみちゃん! 別府くんに言ってやって……」
先生がちなみの方を見た途端、真っ赤になってふるふる震えだした。どうしたのかと思い、俺もちなみの方を見る。
「……ちゅぷ、ちゅ……れろれろ、ちゅ……ぷ」
おやおや、とても淫靡な音を響かせて俺の指を舐めていますよ。
「ていうかやめろちなみ! 見てる見てる先生見てるっ!」
「あ、あの、その、……先生だけでなく、みんな見てますよ?」
申し訳なさそうな先生の言葉に、ゆっくりと教室を見る。おやおや、窓という窓が全部開き、そこから級友達が顔を覗かせてえええええ!?
「ちちちなみさん、いや、ちなみ様! ほほほらみんな見てる見てるから今すぐやめた方がいいのではないのでせうか!?」
「……タカシ、気持ちいい?」
「はい! ……いやいやいやそうじゃなくてそうじゃなくて畜生助けてえ!」
陶然とした顔で俺の指を舐めるちなみ。その様子を眺める我がクラス一堂。真っ赤な顔ではわはわ言ってるちびっこ教師。
その中心に、快楽と羞恥に震える俺がいます。明日からどんな顔して登校しろと言うのだ。
【風邪引くとデレだけになるツンデレ】
2010年02月15日
ちなみが風邪をひいたとかひいてないとか裸祭り開催中とかで、放課後、見舞いに来た。
「こんにちは! 裸はどこだ! 隠し立てすると容赦しないぞ!」
「……けほんけほん」
しかし、そこには布団に寝そべり咳をするちなみがいるだけで、裸などどこにも存在しなかった。というか、裸祭りなんてしてるわけねー。どこでノイズが入ったのだ。
「あー、病気なのに騒いだりしてすまん。それで、具合はどうだ?」
ちなみが寝てるベッドの側に椅子を寄せ、その上に腰を下ろす。
「……んー、と。……ちょっち寝て、……ちょっち元気になったような、……そうでもないよな」
ちなみの顔を見る。普段よりやや赤らみ、汗でうっすら濡れてる顔はなんだか色っぽ……いやそうじゃなくて! 落ち着け!
「……どしたの? 顔ぶるんぶるん振って」
「急に俺の顔に小型の知的生命体が住み着いたので、神として地震という試練を与えている最中だ」
「……タカシは熱のある私より熱があるっぽいよね」
微妙に馬鹿にされてる感がある。
「夏風邪という馬鹿しかひかない病気にかかる奴は、言うことが違うな」
ちなみの頬が膨れた。
「むくれんな。……さて、あまり長居しても疲れるだろうし、そろそろ帰るな」
「え……」
思ったより良さそうなちなみの姿に安心したので、とっとと帰ろうとしたら、ちなみの奴が悲しそうな顔をするんですの。眉が八の字になってるんですの。
「……も、もう帰るの?」
そんな顔されたら困るんですの。声を震わせないでほしいんですの。裾を掴まないでほしいんですの。
「帰らない予感」
色々考えた末にそう言って腰を落ち着かせると、ちなみの奴はふにゃっと柔らかい笑みを浮かべた。
「……その予感は、とても好ましい」
「そいつは重畳」
なんとなくちなみの頬に手をやると、ちなみはその手を取り、両手でにぎにぎ握った。
「……タカシの手、おっきい」
「おまいの手が小さいだけだ。というか、病気なんだから寝てろ」
「……昼間寝すぎて、眠くない」
「眠くなくとも、寝るのが病人の仕事だろ」
「……転職する。……今から私はタカシ遊びが仕事」
そう言って、ちなみはがじがじと俺の指を甘噛みした。
「それで金が貰えるなら、俺もその仕事したい」
「ダメ。……これは、私だけの特権」
人の指をがじがじぺろぺろしながら、満足そうに鼻息を漏らすちなみ。
「……まずい」
「勝手に人の指食べておいて、あまつさえまずいと。どこの王様だ」
「……美食王なので」
なんか偉そうなので、舌引っ張ってやる。
「ひゃ、ひゃひー」
困った顔に満足したので離してやる。
「うう……タカシは病人が相手だろうとも手加減ナッシングのドS。……受け止められるのか、私に」
「なんか余裕っぽいので帰ります」
腰を浮かそうとしたら、ちなみが全身を使って俺に抱きついてきたので再び椅子に座る。
「……帰るの、禁止」
「無茶を言うな」
「…………」(じわーっ)
「分かったいるずっと側にいるから泣くな泣かないでごめんなさい!」
ちなみの瞳に涙が貯まり始めたので、慌てて頭をなでなでしながら謝る。どうして俺が謝っているのか。
「…………」
しかし、まだ安心してないのか、ちなみは俺をじーっと見つめたまま離れようとしない。つーか近い。近すぎる。呼気がここまで届きそうだ。
なんだか急に恥ずかしくなって視線を顔から体に移すと、襟ぐりから覗く妙に色っぽい鎖骨が視界に入る。ふらふらと……いやいや、いやいやいや! 病人相手に何しようとしてるか、俺!
「ほ、ほら、ここにいるから。お前が寝てる間にどっか行ったりしないから、もう寝ろ。な?」
できるだけ声が上ずらないよう注意しつつ、ちなみから体を離す。
「……ん」
しばらく逡巡した後、ちなみはこっくりうなずき、ぽふりと布団に寝そべった。
「……おやすみ、タカシ」
「ああ、おやすみ」
眠くないと言っていたが、ちなみは目を瞑るとすぐに寝息を立て始めた。呼吸と共に上下する薄い胸、軽くはだけた服、そこから覗く可愛いヘソ。
ここが生き地獄か、とか思いながら衣服の乱れを必死に直す俺だった。
「こんにちは! 裸はどこだ! 隠し立てすると容赦しないぞ!」
「……けほんけほん」
しかし、そこには布団に寝そべり咳をするちなみがいるだけで、裸などどこにも存在しなかった。というか、裸祭りなんてしてるわけねー。どこでノイズが入ったのだ。
「あー、病気なのに騒いだりしてすまん。それで、具合はどうだ?」
ちなみが寝てるベッドの側に椅子を寄せ、その上に腰を下ろす。
「……んー、と。……ちょっち寝て、……ちょっち元気になったような、……そうでもないよな」
ちなみの顔を見る。普段よりやや赤らみ、汗でうっすら濡れてる顔はなんだか色っぽ……いやそうじゃなくて! 落ち着け!
「……どしたの? 顔ぶるんぶるん振って」
「急に俺の顔に小型の知的生命体が住み着いたので、神として地震という試練を与えている最中だ」
「……タカシは熱のある私より熱があるっぽいよね」
微妙に馬鹿にされてる感がある。
「夏風邪という馬鹿しかひかない病気にかかる奴は、言うことが違うな」
ちなみの頬が膨れた。
「むくれんな。……さて、あまり長居しても疲れるだろうし、そろそろ帰るな」
「え……」
思ったより良さそうなちなみの姿に安心したので、とっとと帰ろうとしたら、ちなみの奴が悲しそうな顔をするんですの。眉が八の字になってるんですの。
「……も、もう帰るの?」
そんな顔されたら困るんですの。声を震わせないでほしいんですの。裾を掴まないでほしいんですの。
「帰らない予感」
色々考えた末にそう言って腰を落ち着かせると、ちなみの奴はふにゃっと柔らかい笑みを浮かべた。
「……その予感は、とても好ましい」
「そいつは重畳」
なんとなくちなみの頬に手をやると、ちなみはその手を取り、両手でにぎにぎ握った。
「……タカシの手、おっきい」
「おまいの手が小さいだけだ。というか、病気なんだから寝てろ」
「……昼間寝すぎて、眠くない」
「眠くなくとも、寝るのが病人の仕事だろ」
「……転職する。……今から私はタカシ遊びが仕事」
そう言って、ちなみはがじがじと俺の指を甘噛みした。
「それで金が貰えるなら、俺もその仕事したい」
「ダメ。……これは、私だけの特権」
人の指をがじがじぺろぺろしながら、満足そうに鼻息を漏らすちなみ。
「……まずい」
「勝手に人の指食べておいて、あまつさえまずいと。どこの王様だ」
「……美食王なので」
なんか偉そうなので、舌引っ張ってやる。
「ひゃ、ひゃひー」
困った顔に満足したので離してやる。
「うう……タカシは病人が相手だろうとも手加減ナッシングのドS。……受け止められるのか、私に」
「なんか余裕っぽいので帰ります」
腰を浮かそうとしたら、ちなみが全身を使って俺に抱きついてきたので再び椅子に座る。
「……帰るの、禁止」
「無茶を言うな」
「…………」(じわーっ)
「分かったいるずっと側にいるから泣くな泣かないでごめんなさい!」
ちなみの瞳に涙が貯まり始めたので、慌てて頭をなでなでしながら謝る。どうして俺が謝っているのか。
「…………」
しかし、まだ安心してないのか、ちなみは俺をじーっと見つめたまま離れようとしない。つーか近い。近すぎる。呼気がここまで届きそうだ。
なんだか急に恥ずかしくなって視線を顔から体に移すと、襟ぐりから覗く妙に色っぽい鎖骨が視界に入る。ふらふらと……いやいや、いやいやいや! 病人相手に何しようとしてるか、俺!
「ほ、ほら、ここにいるから。お前が寝てる間にどっか行ったりしないから、もう寝ろ。な?」
できるだけ声が上ずらないよう注意しつつ、ちなみから体を離す。
「……ん」
しばらく逡巡した後、ちなみはこっくりうなずき、ぽふりと布団に寝そべった。
「……おやすみ、タカシ」
「ああ、おやすみ」
眠くないと言っていたが、ちなみは目を瞑るとすぐに寝息を立て始めた。呼吸と共に上下する薄い胸、軽くはだけた服、そこから覗く可愛いヘソ。
ここが生き地獄か、とか思いながら衣服の乱れを必死に直す俺だった。