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2025年04月21日
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【雪大好きなツンデレ】

2010年03月24日
 寒いなぁと思ってたら雪が降ってたので喜び勇んで外に出て遊んでると寒くて鼻水出た。
「……何やってんの」
 ティッシュがないので雪で鼻拭いてると、えらく着膨れたかなみと遭遇した。
「雪遊び。一人寂しくかまくら作ってた」
「ふーん。で、そこにあるの何?」
「雪だるま」
「……あのさ。自分で言ってておかしいとか思わないの?」
「確かに。俺一人で寂しく遊んでるというのに、誰も一緒になって遊んでくれないのはおかしい。全部政治のせいだ」
「おかしいのはアンタの頭よ。ったく、こんな寒いのに外で遊ぶなんて……正気を疑うわね」
 そう言って、かなみは小さく身体を震わせた。
「一見すれば羊と間違わんばかりにもこもこのくせに、寒そうだな」
「あら、羊みたいにもこもこで可愛いってこと? タカシもお世辞を覚えたのね」
「可愛いなんて言った覚えもないのに……なんという自尊心、驚くばかりの自画自賛!」
「なんか知んないけどムカつくわね……」
 なんかほっぺ引っ張られた。
「それより俺と一緒に遊びませんか? 今なら俺と一緒にかまくらを作れるびっぐちゃんす!」
「嫌よ。タカシと遊ぶのも嫌なのに、雪で遊ぶなんてもってのほかよ」
「そか、残念」
 無理に勧めるのもなんなので、諦めて引き続き一人で遊ぼう。
「……あ、あのさ、タカシがどうしてもって言うなら、一緒に遊んであげなくもないんだけど……」
 雪を固めていると、足で雪をつつきながらかなみがそんなことを言った。
「や、別にいい」
「……あっそ!」
 そう言って、かなみは俺の作った雪だるまの元に行くと、素晴らしいハイキックを雪だるまの頭部に見舞った。
 雪だるまの頭部は砕け散り、まるでスイカ割りの後のような惨状になってしまった。目の代わりに埋めたみかんが悲しげに俺を見つめている。
「なな、何をする! 俺の親友だるまんを……よくも!」
「雪だるまを親友って……アンタ、結構寂しいわね」
「それに蹴るなら、ちゃんとパンツが俺に見えるように蹴れ! 折角スカート穿いてんだから、パンツを見せる義務があるかとぐべっ」
 力説してたら雪玉が飛んできて俺の口の中に入った。おいしくない。
「このえっち! えっち男! 男えっち!」
「し、失敬な! エッチじゃない! ただかなみのパンツを見たいだけだ! できれば写真に収めたい! いい?」
 連続して雪玉が飛んできた。ダメのようだ。とにかく謝って怒りを治めてもらう。
「まったく、謝るくらいなら最初からバカなこと言わなけりゃいいのに……」
 そもそも俺の雪だるまを壊した奴が悪いのだけど、言うとまたヘソを曲げられるので黙っておく。
「で、かなみさん。雪を投げるくらいなら一緒にかまくら作りません?」
「べ、別にあたしはそんなのしたくもないけど、どうしてもって言うなら別に……」
「じゃあ別に」
「どうしてもって言うなら遊んであげるわよっ!」
 両手を組み、目を吊り上げて射抜くような視線で俺を睨むかなみ。
 ……ああ、ここはドラクエで言うところの「はい」「いいえ」のどっちを選んでも一緒な選択肢なんだなぁ。
「……どうしても、かなみと一緒にかまくら作りたいです」
「そ、そう? まったく、アンタもお子様ねー♪」
 色々言いたかったけど、なんだかすごく楽しそうな笑顔でスコップを取りに行ったので、まぁいいか。

「……ふぅ。結構大変だったわね」
 雑談しながら雪と格闘すること数時間。小さなかまくらが完成した。
「しっかし、狭いわねー。これじゃ一人入るだけで精一杯ね」
「じゃあ俺が」
 もそもそ入ろうとしたら止められた。
「こういう時、普通レディーファーストじゃない?」
「俺は男女平等主義なんだ。だからかなみが俺と一緒に風呂に入ろうと言うなら、喜んでご一緒します。一緒する?」
「しないっ!」
 思い切り頬を引っ張られて痛い痛い。
「とにかく、あたしが先! これは宇宙が出来る前から決まってる事なのよ」
「や、そういう電波話は壁にでも話してもらうとして」
「電波話とか言うな!」
 本人も多少恥ずかしかったのか、ちょっと頬が赤い。
「強度が分からんのでな。一応俺が先に入って調べたいと思うのですよ。突然崩れたらアレだし」
「あ、そうなんだ。……あたしのこと、心配したってコト?」
 まだ恥ずかしさが残ってるのか、かなみの頬に赤みが増す。
「まぁ、かなみが入った途端かまくらが崩れ、そのまま生き埋めになり捜索の甲斐なく春まで見つからない未来も楽しそうだけど」
「こんなちっちゃい場所探すだけで春にならないっ! あーもう、やっぱあたしが先入る! 先入ってアンタが入れないよう、フタする!」
「何っ!? こんな苦労して入れないのは嫌だ! 俺が先だ!」
 かなみと押し合いながら入り口に突進する。
「うぐぐぐ……せ、狭い」
「ちょ、ちょっと、なんでアンタもいるのよ」
 どちらかが弾かれると思ったが、二人してかまくらの中に入ってしまった。しかし、中は非常に狭くてかなみと抱き合うような形で固まってしまった。
「うう、狭い……かなみ、ちょっとでいいから痩せて」
「痩せてるわよっ! この馬鹿、この馬鹿、この馬鹿!」
 狭いというのにかなみの奴は無理やり手を動かし、俺の頭を何度も叩いた。
「動くな、動くと崩れる!」
「アンタなんかと抱き合ってるより、崩した方がいいわよ!」
「し、しかし、折角かなみと共同で作り上げたものを、こうも簡単に崩すのは、その……」
「う……し、しょうがないわね! ……も、もうちょっとだけ我慢してあげるわよ」
 それから数十分、目の前にある真っ赤な顔の持ち主と何も喋らず、ただ黙って抱き合ってた。

「……まぁ、雪ん中いりゃ、風邪ひくわな」
「う、うるさいっ! なんでアンタ風邪ひかないのよ!」
 その後、かなみだけ風邪ひいて、見舞いに行きました。
「健康だけが自慢です」
「あたしが風邪ひいたの、アンタのせいよ! この馬鹿この馬鹿この馬鹿!」
「すげー元気じゃん」
「空元気よっ!」
 自分で言うな。
「とにかく、責任とって……そ、その、……ちゃんと毎日見舞いに来なさいよ。い、いいわねっ!」
「えー、めんどくさい」
「……ど、どうしてもとは言わないけど」(涙目)
「任せろ! 見舞いは俺の十八番さっ!」
 我ながら女性の涙に弱すぎると思った。

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【手を繋いだまま離れなくなったツンデレと男】

2010年03月24日
 誤って接着剤を手に塗布してしまい、さらに不幸な事故が重なり偶然家に遊びに来ていたかなみと手を繋いでしまい、現在そのまま手が離れません。
「なんでアンタなんかと手繋がなくちゃなんないのよ……最悪」
「そう嫌そうな顔するない。俺はむしろ嬉しいぞ」
「え……そ、そうなの?」
「もし何かの拍子にウンコ掴んでたら、俺は一生ウンコと過ごさなくちゃいけなくなってたからな。そう考えるとウンコではなく、かなみを掴んでまだよかった」
「小学生かっ! そう連呼するな、ばかっ!」
「うんこうんこうんこ」
 握られた手に力が込められ潰されそう。
「すいません二度と言わないので潰さないで痛くて泣きそうです」
「最初から言わなきゃいいのに……今回の事といい、本当アンタって馬鹿ねー」
 繋がれた手をひらひらと振り、かなみは呆れたように言った。
「いや、ははは……」
 返す言葉もないので曖昧に笑って誤魔化す。
「……で?」
「はい?」
「だから、これからどうするの? もし夜までこのままだったら、……あ、アンタと一緒に寝なきゃいけないじゃない!」
 よほど嫌なのか、怒りで顔を真っ赤にしてかなみは俺に指を突きつけた。あ、空いてる方の手で、です。
「どうするのどうするのどうするの! あたし、アンタと一緒に寝るなんて嫌よ!」
「大丈夫、俺はそうでもない」
「アンタの考えなんて聞いてないっ!」
「大丈夫、かなみも実はそうでもない」
「か、勝手にあたしの考えを捏造すんなっ!」
 適当言ったらさらに怒りが増したのか、かなみの頬がさらに赤くなった。
「まぁ落ち着け、いま母さんに頼んで剥がし方を調べてもらってる。その間暇なのでしりとりしよう、しりとり。みかん……はっ、しまった!」
「馬鹿」
 などと暇を潰してると、母さんがノックもなしに部屋に入ってきた。
「用件を言え」
 無言で頭に肘を落とされたので黙る。というか、痛すぎて喋れない。
「ごめんね、かなみちゃん。うちのバカが迷惑かけて」
「いえ、いいんです。慣れてますから」
 どっちも失礼だが、事実なので何も言えない。
「でね、調べたんだけど、お湯の中に入れて時間をかけてもみほぐしたらはがれるみたいよ」
「湯! 風呂、風呂だな!? よしかなみ、風呂だ風呂! let's風呂!」
 また肘が落ちてきたので黙る。頭陥没したかも。
「じゃ、洗面器にお湯入れて持ってくるから。ホント、ごめんね」
「い、いえ……あの、タカシ大丈夫ですか? なんかプルプル震えてるんですけど……」
「大丈夫だいじょーぶ。まだコレで死んだことないから」
 当然だ。ていうか判断基準そんな適当ですか、母さん。
 で、母さんが洗面器を持ってきて、また部屋を出て行って。
「……アンタさぁ、なんであたしの手ばっか揉むのよ」
 洗面器に手をつっこんでぐにぐに手を揉んでると、かなみが小さく頬を染め、横目で俺を見ながら言った。
「胸揉んだら怒るだろ?」
「そういうこと言ってるんじゃないっ!」
「何っ!? じゃ、じゃあ揉んでいいと? しかも吸っていいと!? ……テンション上がってきたかも!」
 思い切り頬をつねられたのでテンションダウン。しぼむー。
「じゃなくて、なんで自分の手じゃなくて、あたしの手を揉むのかって話よ」
「そりゃお前、む……」
「同じ話したら引き千切る」
 視線が俺の股間を捉えて離さないので必死で言い訳を考える。
「え、えと、ええと、ええと」
「…………」
 いかん、かなみが俺をじーっと見ているせいか、うまい言い訳がまるで思いつかない!
「ええとええとええとええと」
「……たの?」
「え、田野?」
「……あたしの手、触りたかったの?」
 田野って誰だと思ってると、なんか赤い顔でそんなこと言われたので、どうしよう。
「そ、そういうわけじゃ」
 肯定すると「スケベ!」とか言われて引き千切られそうなのでそう言ったら、
「……あ、そ、そうなんだ。あははは」
 かなみの奴は、少し寂しそうに笑ったので。
「──あ、いや、そうかも。ちゃんと触りたかったのかも」
 思わず本音が口をつき、困った。
「……へ、変態」
 さらに、口では悪態吐きながらかなみの顔がすげー赤くなってるので、もっと困った。
「あ、あはは……あ、はがれた」
 湯の中で俺とかなみの手が離れる。お湯の中にあるはずなのに、なんだか手の平が冷たい。
「……まだ、はがれてない」
 洗面器から手を出す気にならずゆらゆら手を遊ばせてると、俺の手にかなみの手が絡みつき、ついさっきのように手が握られる。
「え、いや、あの」
「は、はがれてないの! まだ! ……まだだから、もうちょっと」
「あ、あー……そ、そだな。まだはがれてないな。……もーちっと揉まないとな」
「あ、あは……タカシは本当にあたしの手を触るの好きねー」
 じゃぶじゃぶと湯をかき混ぜながら、かなみはなんだか嬉しそうに言った。
「否定はしないが……お前もそうじゃないのか?」
「あ、あたしは別にアンタの手なんか触っても何も思わないわよ」
 俺の手をぐにぐに揉みしだきながら、全然説得力のない事を言うかなみ。
「……へへ♪」
「かなみかなみ、顔にやけてる。しまりがなくなってる」
「にっ、にやけてなんかないわよっ! ていうかアンタもにやけてる!」
 なんか幸せな日でした。

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【寝ぼけて階段から落ちたタカシ】

2010年03月21日
 朝は眠いので半分寝たまま階段下りてたら、足を踏み外して落ちた。
「いたたたた……だがそれ以上に眠いので寝る。ぐぅぐぅ」
 尻が非常に痛むが、その痛みをおしてまで寝る俺はかっこいいなあとか思ってたら、ドアが開く音がした。
「まったく、なんであたしが毎日毎日こんな奴起こさないといけない……うっきゃあああ!」
 てっきりいつものようにかなみが入ってきたのだと思ったが、うっきゃあから想像するに、猿が入ってきたのだろう。猿なら挨拶せねばなるまい。
「おはよう猿。英語で言うとグッド猿」
「し、死んで……あ、あれ、生きてる? 猿?」
「家に侵入してきた者は猿ではなく、かなみだった。これほど残念な朝を迎えるのは久しぶりだと言えるだろう」
「なんか分かんないけどムカつくわねッ!」
 朝からアイアンクローを喰らって大変痛むが、目は覚めた。
「よく考えると猿が家にやってくる事なんてないよな。おはよう、かなみ。ところで、手を離さないと後3秒ほどで俺の頭がはじける予感」
「はいはい。で、何やってたの?」
 手を離してもらい、頭をさすってる俺にかなみが呆れた様子で問いかけた。
「寝ぼけてて、階段落ちた。いわば池田屋の階段落ち」
「どこが池田屋の階段落ちよ。第一、池田屋とか知ってるの?」
「無論だ。池や田を商っている店の総称を池田屋と言い、そこで階段から落ち田んぼに転がり落ちて坊ちゃんこんにち……すいません本当は知りません」
 言ってる最中にかなみに睨まれ、すごく怖かったので素直に謝る。
「はぁ……アンタっていっつも適当ね」
「いやあ、照れることしきり」
「褒めてないッ!」
「じゃあ褒めて。褒めないと朝飯作らないぞ」
「朝ごはん作ってやってるの、あたし!」
「知ってる」
「あーもーあーもぉ! ちょっとアンタそこに座りなさい!」
「はい」
 なんか知らんが怒ってるので、逆らわずに廊下に座る。寒い。
「いい? 世の中には礼儀って言葉があってね」
「お腹空いた。かなみ、ごはん」
「…………」
「かなみ? 俺は腹が減りましたよ?」
「あたしは腹が立ってるの!」
「腹が立つ? それはつまり太ったという意味だな。そう言われればちょっと腹のあたりにぷにぷに感が」
 少しだけぷにっとした腹をつついたら20回くらい殴られた。
「かなみちゃんは太ってない。はい、繰り返して」
「か、かなみ様は太ってなどいません。それどころかスーパーモデルも羨むほどのぷろぽうしおんで御座います」
「えー、ホントにー? もー、タカシったらお世辞ばっかりー♪」
「嘘に決まってんだろ、ばーか。もうちっと乳を膨らませてからそういう寝言を言え」
 いらんこと言ったらまた殴られた。
「何か言うことあるでしょ?」
「本当はかなみくらいの貧乳が好きです」
「そっ、そういうことじゃなくて、謝れって言ってんの! ……いや、ちょっと嬉しいケドさ」
 あさっての方向を見ながら、かなみは照れくさそうに自分の頬を指でかいた。
「まぁかなみの乳はともかく、腹が減ったので飯を所望する。今すぐ飯を作らないと泣くぞ!」
「なんでそんな偉そうなくせに情けないのよ……」
「いいからご飯。かなみの飯を食わないと一日が始まった気がしないのだ」
「……はぁ。まったくもう、しょうがない奴ね。作って……あああああ!」
「うるさい」
「じ、時間! 今すぐ出ないと遅刻する!」
 首をめぐらし時計を見ると、なかなか愉快な時間を指していた。
「なるほどこいつぁヤクイな。ところでかなみ、ご飯」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! ほら、行くわよ!」
「え、でもご飯がご飯食べてないご飯」
「ご飯ご飯うるさいッ! 早くッ!」
「でも俺はお腹が空いてまして、ご飯を食いたいという感情が」
「それ以上ご飯って言ったら殴る」
「す、すいません」
 かなみに手を引っ張られ、腹を鳴らしながら半泣きで学校へ駆けて行く哀れな俺でした。

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【ツンデレが「どうしてもって言うなら」って言ったら、男が「嫌々行かせても面白くないからいいよ」とデートを無しにされてしまった】

2010年03月18日
 ということで、デートはなくなったので家に帰ってきたのだけど。
「…………」
 どういうわけか、かなみも俺の家についてきて、何をするわけでもなくベッドに座り、体育座りで俺をじーっと見てて。
「あ、あの、かなみさん、あれほど嫌がっていたでぃとはなくなったし、俺の家にいる必要はないような」
「……何か言った?」
「何も言ってません」
 赤子が見たら子宮に戻りかねない目つきで見られたので、口をつぐむ。ていうか怖い。俺が何をしたというのだ。
 そして、体育座りなんて素敵な座り方をしていたらパンツが丸見えではないか。いいのか。見るぞ。見たぞ。よし、しましま!
「……?」
 もうちょっと深い角度から見たいな……よし、不自然にならない程度に上体を下げ、しましまをもっと! more simasima!
「なに変な動き……って、あっ!!」
 ばれた。3回ほど殴られた。
「この、どエロ!」
「うっさい殴るスキー。あっ、殴るスキー。ロシア系の妖怪。夜な夜な街中をうろつき、ウォッカ片手に道行く通行人を殴りまくるはた迷惑な怪物。普段は内職で糊口を凌いでいるという噂」
 適当な解説をしてたら、もう一発追加された。
「はぁ……殴られるは嫌な視線受けるは、何がそんな不服だというのだ。おまえが嫌で嫌で仕方がないと言っていたデートはなくなったんだぞ?」
「そっ、それはその、言葉のあやというか、その……」
「?」
「……ああもう、不思議そうな顔すんな!」
 何を言わんとしているのか、皆目検討がつかない。そしてなぜまた殴られのか分からない。
「痛くて泣きそうだゼ!」(半泣き)
「はぁ……なんだってこんなのに……」
「たで食う虫も好き好き、と言いますから」
 適当にそんなことを言ってみたら、かなみの顔が赤くなった。
「あっ、アンタ、……気づいてた、の?」
「当然だ!」
 もちろん何の話か分からないが、即答する。
「……う、うう、ううう~」
 すると、かなみの顔がこれ以上赤くなるとヤバイのではないかと思うほど赤くなった。
「か、かなみ? 赤いですよ? ヤクイ感じですよ?」
「赤くないッ!」
 そこを否定されると、もう俺にできることなんて。
「ち、違うのよ? 別にあたしはアンタのことなんてその、……ねぇ?」
「はぁ」
 どうやら俺関係で赤くなっているようで。なんでせうか。かなみが俺に惚れてる? ……いやいや、ないない、それはない。逆ならあるけど。
「そ、そうよ。アンタが勘違いしてるだけで、あたしはアンタなんて何とも思ってないのよ」
「俺は色々思ってるけどな」
 なにせ、日々殴られたり蹴られたりして不満のるつぼですから、と繋げようとしたのに、かなみが俺をじーっと見つめたりするので怖くて言えない。
「……そ、そうなんだ。……ふーん」
 気のせいかもしれないが、かなみの瞳に熱が籠もったような。
「……じゃ、じゃあさ、どうしてもって言うなら……デート、してあげてもいいわよ?」
 なにがどうなってじゃあなのか分からないが、その提案は素敵だね。が、言っておかなくてはならないことが一つだけ。
「嫌々行かせても面白くないからいいよ」
 かなみの目が点になった。
「……アンタ」
「はい?」
「なんでループしてんのよ!? これじゃ、いつになってもデートできないじゃないの!」
「こっ、これは……妖怪、殴るスキーの仕業?」
「そんな存在しない妖怪の仕業なわけないでしょ! アンタのせいよ、アンタの! この馬鹿この馬鹿この馬鹿!」
「これは失礼を。じゃ、なんだ。ええと、かなみ。俺と、その、……水族館でも行きませんか?」
 大変叱られたので、今度はループしないよう細心の注意を払いながらデートに誘いました。
「……ま、まぁ、どうして……あ、これ言ったらまたループするわね。え、えっと……おほん。……ま、まぁ、行ってあげるわよ。おさかな、好きだし」
 そんな感じの返事を貰ったので、今度こそ普通にデートできそうな予感!
「喜ばしい予感!」
「はぁ……なんで普通に喜べないのかね、この子は」
 なんて、優しく微笑みながら俺のほおをつっつくかなみでした。

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【アイドルなツンデレと一般人のタカシ2】

2010年03月15日
 以前のことがあってから、生徒のかなみとちょっと仲がいい感じです。教師としては問題ありだけど、一個人としては大変喜ばしい変化だと言える。
「先生、クッキー焼いたの。よかったら食べて」
「うまいうまいまぐまぐ」
「先生、食べてもないのにうまいとか言わないでよ……ほら、ちゃんと食べて」
「もがもがもが」(クッキーを口に直接流し込まれて呼吸不能)
 とまあ、冷静に思い返してみると本当に仲がいいのかどうか自信がなくなってきたけど、そんな毎日です。
 ある日、かなみがふいに友達を紹介すると言ってきた。
「ちょっと口を滑らしちゃって、家庭教師がいるって言ったら、見てみたいって」
「見たいって……見世物みたいだな。俺なんか見てどうすんだ?」
「別にいいじゃない、減るものじゃなし。ね?」
「んー、でもなぁ、面倒だしなぁ」
「……友達って、可愛い子よ。あたしと同じ年で、アイドルしてるの」
「よし会おう、すぐ会おう、今すぐ会おう」
「…………」
「どした、かなみ。ほれ、さっさとセッティングしろ。ぼさーっとするな」
「分かったわよッ!」
 なんか殴られたけど、会うことになったので問題なし。

 数日後、かなみの家で問題の子と会うことになった。
「あなたが別府さんですか。私、みなかと申します」
 見た目は確かにアイドルというだけあってかなり高ランクの美少女だが、……なんか、誰かを思い出す口調だな。
「はじめまして、別府タカシです。気軽にタカシ、もしくはお兄ちゃんと呼んでくれ」
「冗談だよね、先生?」
 かなみが笑いながらも怒りのオーラをまといだしたので、慌てて訂正する。
「別府、もしくはお兄ちゃんと呼んでくれ」
「そっちに怒ってるんじゃないわよ、このダメ教師!」
 叱られた。
「お兄ちゃん、ですか。……年下が好みなんですか?」
「いや、そういうわけじゃ。ただ、途方もなく妹という存在に恋焦がれているだけなんだ」
「はあ。じゃ、……お兄ちゃん」
「結婚しよう」
 あまりの感激に、気づいたら求婚してた。
「先生を殺してあたしも死ぬッ!」
 するとかなみが激昂して俺の首を締め出したので苦しい。
「修羅場ですね」
 冷静に見てないで助けて。

 どうにかかなみを言いくるめ、奇跡的に助かった。
「やれやれ、死にかけた」
「せ、先生が悪いんだよ? ……あ、あたしがいるのに、その……」
「ごにょごにょ言われても分からん。はっきり言え」
「う……し、初対面の子に結婚申し込む先生が悪いの!」
「すいません」
 まったく反論できないので素直に謝る。
「なるほど、そういう関係なんですね」
 俺たちを見ていたみなかが、無表情にそう言った。
「そっ、そういうって、別にあたしと先生は、た、ただの教え子と先生って関係で……ねぇ?」
「まだほっぺにちゅーしかしてもらってません」
「ぽんぽん言うなッ!」
 かなみは顔を真っ赤にして、思い切り俺を殴った。痛い。
「まったく……みなか、飲み物取ってくるから先生の面倒みてて」
「分かりました」
 みなかが頷くのを見て、かなみは台所に消えて行った。
「ふふ、幼児扱いだ。一番年上なのになあ」
「いじけないでください、別府さん」
 頭をなでられた。どんどん幼児になっていく気分である。
「それにしても、別府さんって姉さんに聞いた通りの人ですね」
「姉さん? 誰、俺の知り合い?」
「私の姉さんは、かなみさんのマネージャーをしてます」
 ……ああ、なるほど。どうりで口調やら見た目やら似てると思った。
「で、俺のことなんて言ってた? いい男って? 股が濡れそぼるほどいい男って?」
「頭がおかしい人、って言ってました。そして、さっきの言葉で深く納得しました」
 姉妹揃って失礼極まりなし。よし、姉の方は後で……えっと、口じゃ勝てないし、ええと、……心の中で悪口言ってやれ。冷血女!
「ふぅ……復讐完了」
「よく分かりませんが、清々しい顔で……」
 突然、みなかの動きが止まった。
「どした? 動作不良でも起こしたか?」
 ゆっくりとした動作で、みなかが指を俺の背後にある壁に向けた。見ると、壁に小さな蛾がとまっていた。全身総毛立つ。
「み、みなか、どっかやって」
 すごい速さでブンブン首を横に振られた。俺だけでなく、みなかも苦手のようだ。
「し、刺激せずにこのまま待って、かなみが戻ってくるの待とうな」
 何も言わずコクコクうなずくみなか。だが、かなみが戻ってくる前に、蛾がこっちに飛んできた。
「!!!!!?」
 みなかは半狂乱で手近にあるもの──俺にしがみついてきた。
「痛い痛い柔らかい怖い!」
 蛾が飛んでくるという恐怖に、思わず手近にあるもの──みなかにしがみつく。
「…………」
 いつの間にかやって来たかなみが何も言わず蛾を空中で掴み、外に捨てた。
「ふひゅー。いや、助かったぞかなみ。生きた心地がしなかったぞ」
「……で、なんで抱き合ってるのか教えてくれない、先生?」
 にっこり微笑むかなみ。不思議なことに、さっきよりも生きた心地がしない。
「……男の人に抱きつかれたの、初めてです」
「先生ッ!」
 みなかがいらんこと言ったので、かなみが鬼に。

「……なるほどね。それなら最初から言えばいいのに」
 殴られる合間を縫って説明すると、かなみはやっと手を止めてくれた。
「ふふ、中学生の教え子に暴力をふるわれる大学生」
「情けないですね」
 誰のせいだという思いを込めてみなかを睨む。
「惚れましたか?」
「先生ッ!」
「違う違う待ってげふっ」
 本来殴られないで済むシーンだったのにまた殴られてもう帰りたい。
「大変ですね」
 誰のせいだという思いを込めてみなかを睨まない。きっと繰り返される。
「……ちっ」
 小さく舌打ちされた。確信犯だった。怖い。
「もう帰れ。これ以上お前がいると、たぶん死ぬ。俺が」
「そうはいきません。傷物にされたので、お嫁にもらってもらいます」
 みなかがしれっとそう言ったら、かなみの顔がちょっと直視できないくらい怖くなった。
「あたしというものがありながら……本当にいい度胸だね、先生♪」
「か、かなみ。君はきっと誤解をしている。人は他の動物と違い、言葉で分かり合うことが出来る。これは素晴らしいことなんだ。みなかが傷物と言っていたが、そもそもそれが間違いで」
「……幸せに、してくださいね」
 必死で説得してるのに、みなかが無表情に三つ指ついて俺に頭を下げた。
「あはっ♪ せんせい、死んで♪」
「言っておくが、誤解だぞ!」
 それだけ言って猿も裸足で逃げ出すほどの手練で逃げる。
「待てこのダメ教師ッ!」
「軽い冗談で、こんな修羅場になるなんて……こんな面白い人、逃がすわけにはいきません」
 般若の如きかなみと、愉快犯なみなかが二人して追ってきた。そんな一日。

拍手[14回]