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2024年11月24日
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【アイドルなツンデレと一般人のタカシ2】

2010年03月15日
 以前のことがあってから、生徒のかなみとちょっと仲がいい感じです。教師としては問題ありだけど、一個人としては大変喜ばしい変化だと言える。
「先生、クッキー焼いたの。よかったら食べて」
「うまいうまいまぐまぐ」
「先生、食べてもないのにうまいとか言わないでよ……ほら、ちゃんと食べて」
「もがもがもが」(クッキーを口に直接流し込まれて呼吸不能)
 とまあ、冷静に思い返してみると本当に仲がいいのかどうか自信がなくなってきたけど、そんな毎日です。
 ある日、かなみがふいに友達を紹介すると言ってきた。
「ちょっと口を滑らしちゃって、家庭教師がいるって言ったら、見てみたいって」
「見たいって……見世物みたいだな。俺なんか見てどうすんだ?」
「別にいいじゃない、減るものじゃなし。ね?」
「んー、でもなぁ、面倒だしなぁ」
「……友達って、可愛い子よ。あたしと同じ年で、アイドルしてるの」
「よし会おう、すぐ会おう、今すぐ会おう」
「…………」
「どした、かなみ。ほれ、さっさとセッティングしろ。ぼさーっとするな」
「分かったわよッ!」
 なんか殴られたけど、会うことになったので問題なし。

 数日後、かなみの家で問題の子と会うことになった。
「あなたが別府さんですか。私、みなかと申します」
 見た目は確かにアイドルというだけあってかなり高ランクの美少女だが、……なんか、誰かを思い出す口調だな。
「はじめまして、別府タカシです。気軽にタカシ、もしくはお兄ちゃんと呼んでくれ」
「冗談だよね、先生?」
 かなみが笑いながらも怒りのオーラをまといだしたので、慌てて訂正する。
「別府、もしくはお兄ちゃんと呼んでくれ」
「そっちに怒ってるんじゃないわよ、このダメ教師!」
 叱られた。
「お兄ちゃん、ですか。……年下が好みなんですか?」
「いや、そういうわけじゃ。ただ、途方もなく妹という存在に恋焦がれているだけなんだ」
「はあ。じゃ、……お兄ちゃん」
「結婚しよう」
 あまりの感激に、気づいたら求婚してた。
「先生を殺してあたしも死ぬッ!」
 するとかなみが激昂して俺の首を締め出したので苦しい。
「修羅場ですね」
 冷静に見てないで助けて。

 どうにかかなみを言いくるめ、奇跡的に助かった。
「やれやれ、死にかけた」
「せ、先生が悪いんだよ? ……あ、あたしがいるのに、その……」
「ごにょごにょ言われても分からん。はっきり言え」
「う……し、初対面の子に結婚申し込む先生が悪いの!」
「すいません」
 まったく反論できないので素直に謝る。
「なるほど、そういう関係なんですね」
 俺たちを見ていたみなかが、無表情にそう言った。
「そっ、そういうって、別にあたしと先生は、た、ただの教え子と先生って関係で……ねぇ?」
「まだほっぺにちゅーしかしてもらってません」
「ぽんぽん言うなッ!」
 かなみは顔を真っ赤にして、思い切り俺を殴った。痛い。
「まったく……みなか、飲み物取ってくるから先生の面倒みてて」
「分かりました」
 みなかが頷くのを見て、かなみは台所に消えて行った。
「ふふ、幼児扱いだ。一番年上なのになあ」
「いじけないでください、別府さん」
 頭をなでられた。どんどん幼児になっていく気分である。
「それにしても、別府さんって姉さんに聞いた通りの人ですね」
「姉さん? 誰、俺の知り合い?」
「私の姉さんは、かなみさんのマネージャーをしてます」
 ……ああ、なるほど。どうりで口調やら見た目やら似てると思った。
「で、俺のことなんて言ってた? いい男って? 股が濡れそぼるほどいい男って?」
「頭がおかしい人、って言ってました。そして、さっきの言葉で深く納得しました」
 姉妹揃って失礼極まりなし。よし、姉の方は後で……えっと、口じゃ勝てないし、ええと、……心の中で悪口言ってやれ。冷血女!
「ふぅ……復讐完了」
「よく分かりませんが、清々しい顔で……」
 突然、みなかの動きが止まった。
「どした? 動作不良でも起こしたか?」
 ゆっくりとした動作で、みなかが指を俺の背後にある壁に向けた。見ると、壁に小さな蛾がとまっていた。全身総毛立つ。
「み、みなか、どっかやって」
 すごい速さでブンブン首を横に振られた。俺だけでなく、みなかも苦手のようだ。
「し、刺激せずにこのまま待って、かなみが戻ってくるの待とうな」
 何も言わずコクコクうなずくみなか。だが、かなみが戻ってくる前に、蛾がこっちに飛んできた。
「!!!!!?」
 みなかは半狂乱で手近にあるもの──俺にしがみついてきた。
「痛い痛い柔らかい怖い!」
 蛾が飛んでくるという恐怖に、思わず手近にあるもの──みなかにしがみつく。
「…………」
 いつの間にかやって来たかなみが何も言わず蛾を空中で掴み、外に捨てた。
「ふひゅー。いや、助かったぞかなみ。生きた心地がしなかったぞ」
「……で、なんで抱き合ってるのか教えてくれない、先生?」
 にっこり微笑むかなみ。不思議なことに、さっきよりも生きた心地がしない。
「……男の人に抱きつかれたの、初めてです」
「先生ッ!」
 みなかがいらんこと言ったので、かなみが鬼に。

「……なるほどね。それなら最初から言えばいいのに」
 殴られる合間を縫って説明すると、かなみはやっと手を止めてくれた。
「ふふ、中学生の教え子に暴力をふるわれる大学生」
「情けないですね」
 誰のせいだという思いを込めてみなかを睨む。
「惚れましたか?」
「先生ッ!」
「違う違う待ってげふっ」
 本来殴られないで済むシーンだったのにまた殴られてもう帰りたい。
「大変ですね」
 誰のせいだという思いを込めてみなかを睨まない。きっと繰り返される。
「……ちっ」
 小さく舌打ちされた。確信犯だった。怖い。
「もう帰れ。これ以上お前がいると、たぶん死ぬ。俺が」
「そうはいきません。傷物にされたので、お嫁にもらってもらいます」
 みなかがしれっとそう言ったら、かなみの顔がちょっと直視できないくらい怖くなった。
「あたしというものがありながら……本当にいい度胸だね、先生♪」
「か、かなみ。君はきっと誤解をしている。人は他の動物と違い、言葉で分かり合うことが出来る。これは素晴らしいことなんだ。みなかが傷物と言っていたが、そもそもそれが間違いで」
「……幸せに、してくださいね」
 必死で説得してるのに、みなかが無表情に三つ指ついて俺に頭を下げた。
「あはっ♪ せんせい、死んで♪」
「言っておくが、誤解だぞ!」
 それだけ言って猿も裸足で逃げ出すほどの手練で逃げる。
「待てこのダメ教師ッ!」
「軽い冗談で、こんな修羅場になるなんて……こんな面白い人、逃がすわけにはいきません」
 般若の如きかなみと、愉快犯なみなかが二人して追ってきた。そんな一日。

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