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2025年04月21日
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【アイドルなツンデレと一般人のタカシ】

2010年03月15日
 近頃お金がないので、家庭教師で糊口を凌ぐ大学生の別府タカシですこんにちは。
 さて、そんなわけで生徒がいるわけなんだが、その生徒は中学生の女の子、とここまではいいんだけど、なんか有名なアイドルらしい。ということで、
「サインくれ、サイン」
「……アンタもそういうのなのね。はぁ、まあいいけ……って、アンタこれ連帯保証人のサインじゃないの!」
「しまった、ばれた」
「ばれた、じゃないでしょうが! ……ったく、変な奴ね」
 そんなわけで、何が気に入られたのか知らないが、割と長い期間生徒──かなみに勉強を教えてる。
「先生さ、あたしのライブ来たくない?」
 そんなある日。数学の授業中に、かなみがそんなことを口にした。
「ライブって……ははっ、まるでアイドルみたいだな」
「立派なアイドルよっ! テレビつけたらよくあたし映ってるでしょうが! 前にも言ったでしょ、Mステ見ろって!」
「タモリを見るとイモリに変身するんだ。奇病、タモリイモリなんだ。モリモリコンビがお送りする家庭教師の時間です」
「もうちょっとマシな言い訳しなさいよね……」
「テレビはあんまり見なくて。基本的にゲームしたりネットしたりエロゲしたり」
「えろげ? なに、それ」
 本当に知らないようなので、ゲームのストーリーやらキャラやらゲーム中に行うことやら体位やらを詳しく詳しく教えると、殴られた。
「なっ、なんで家庭教師が生徒を襲うようなゲームしてんのよっ! この変態変態変態!」
「だいじょぶ、襲わないよう我慢するから」
「我慢とか言うなっ! ……しっかし、典型的なオタクね。やーいオタクオタク」
「ふふ、賛美の声が心地よい。けど、本当は傷つくので、あまりそういうことは言わないで」
「あ、思ったより防御力低い。あははっ、やーいオタクオタク」
「しくしくしく」
「あははっ。……でね、ライブよ、ライブ。来る?」
「タダなら行く」
「……びんぼーにん。しょーがないから、タダであげるわ」
 ということで、ライブに招待された。こういうことは初めてなので、少し楽しみだ。

 当日。てっきり路上ライブか何かだと思ってたんだけど、
「……しっかりした所じゃん」
 立派なコンサートホールの前で、少し驚く。
「……タキシードとか着た方がよかったか?」
 しかし、周りを見てみるとそんな格好をした奴はいないのでほっとすると同時に、その方が面白かったかもという考えが俺を襲ったけど面倒なのでこのまま行こう。モギリにチケットを引き裂かれ、中へ。
「……ん?」
 通路の脇で、人が群がっていた。何があるのか覗いてみると、かなみの顔がプリントされた悪趣味なCDやらウチワやらが売られていた。
「……買うのか、アレを」
 以前、かなみに無理やりCDを渡された時のことを思い出す。一応の礼儀として聞いてはみたものの、その、ええと、……いや、今なら歌唱力も上がってるに違いない! 結構前のことだし、アレ!
 嫌な記憶を思い出してしまったことを後悔しながら、チケットに印刷された席に移動する。割と前の方の席だ。
 ……あ、そういや「挨拶に来ないと殺す」とか言われてたっけ。死ぬのは嫌なので行こう。
 ホールの中をほろほろさまよってると、ここから先は関係者以外禁止ですと警備員に止められた。こいつぁラッキーと思いつつ戻ろうとしたら、警備員の後ろに顔見知りを見かけてしまった。
「あっ、先生っ! 来てくれ……こほんっ。やっぱ来たんだ」
 嬉しそうに駆け寄ってきたが、突然嫌そうな顔をしたかなみが寄ってきた。そして、俺の腕をがっしと掴み、そのまま楽屋へ連れて行かれた。
「いいのか、俺なんかが入っても」
「ホントはダメだけど、あたしのお客さんだからいいの」
「……? かなみ、なんか緊張してないか?」
「あ、あは、分かる? ……何回やっても、ライブの前は、ね」
 小さく震えるかなみの手を、そっと握る。
「せ、先生?」
「あー、なんだ。頑張ってる奴に頑張れって言うの嫌いだから、頑張れとは言わない。適当にやったらいいさ」
 そう言いながら、震えをほぐすようにかなみの手を何度も揉む。
「……せ、先生って無責任。適当なんて、できないよ。みんな、今日のために頑張ったんだから」
「…………。国語の授業を始めます」
「せ、先生? 何を……」
「適当の意味を言いなさい」
「え、えっと……その場をつくろうこと、いい加減なこと、……かな?」
「正解。だけど、それで全部じゃないぞ」
「え?」
「ある状態・目的・要求などにぴったり合っていること。ふさわしいこと。……頑張りすぎず、手を抜きすぎず。適当に、な」
 なんて、偉そうにかなみを励ます。先生と呼ばれるに相応しいなんて思ってないけど、こんな時くらいは先生らしく虚勢を張る。
「……先生って、すごいね。さすがは先生だね」
「意味が分からん」
「いいのいいの。さっ、そろそろ出てって、準備するから」
 かなみに背を押され、そのまま出て行くと見せかけて壁にぶつかって怒られてから、楽屋を出る。
「…………」
 その様子を廊下で待機していたマネージャーのお姉さんに見られてた。大変恥ずかしい。
「妖怪、鼻ぶつけ。出現すると壁という壁に鼻をぶつけまくる特殊な」
「失礼、準備がありますので」
 皆まで言う前にマネージャーさんは楽屋に入っていった。前から思ってるが、この人冷たい。
「……や、別にいいですけど」
 誰に言うでもなくそう呟き、席に戻る。しばらくそのまま待ってると、幕が上がった。始まった。

 ……終わった。いや、思った以上に面白かった。かなみもステージ上でのびのびしてたし、歌も上達してたし。また来たいと思えるライブだった。
 挨拶、してくかな? ……ま、いいか。関係者って訳でもないし、今は内輪だけで盛り上がってるだろ。
 人影もまばらになった客席を出て、休憩所でジュースを買う。
「すいません。別府タカシさん、ですね?」
 取り出し口からジュースを取ってると、黒服に囲まれた。死ぬのか。
「違います。妖怪の里から出てきたばかりの新米妖怪です。特技はネットでエロ画像収集」
「情報通りの適当ぶり……確保!」
 必死に誤魔化そうとするも、瞬く間に拘束され、どっかに運ばれる。
「いやだー、コンクリで海にドボンはいやだー」
「そんなことしません」
 運ばれた先に、見覚えのある顔があった。
「あ、マネージャーさんこんにちは。……はっ、ま、まさかあなたも黒服の一員!? 待て、俺を消す前に俺のパソコンのHDDの破壊してくれ! 決して中は見ないで!」
「あなたの性癖なんて興味ありません。この子が呼んでるんです」
 マネージャーの後ろから、ステージ衣装のままのかなみが顔を出した。
「先生のことだからそうするとは思ってたけど、やっぱ帰ろうとしてたー。頼んでてよかった。みなさん、ありがとうございました」
 かなみが一礼すると、黒服たちは俺の拘束を解き、軽く頷いてどこかへ去っていった。
「ホントにいるんだな、黒服って」
「私が手配したんです。まったく、この忙しいのになんだって……」
 マネージャーさんに睨まれた。なんで俺が睨まれるのか分からないので、最大級の変な顔をしてやる。
「ぶふっ! ……くっ、この私が」
 吹き出した後、マネージャーさんは悔しそうに俺を見た。なんで悔しいんだ。
「先生、海上に急浮上してきた深海魚みたい……」
 よく分からないけど馬鹿にされてるようだ。
「あのさ、先生。これから打ち上げなんだけど、先生も来たいでしょ? どうしてもって言うなら、別に来てもいいわよ」
「いい。居場所なさそうだし」
「当然です。かなみさん、この方は無関係ですし、打ち上げに呼ぶ必要なんてありません」
 マネージャーさんが俺をいらんもの扱いするが、言ってることはもっともなので特に反論しない。しないが、悔しいので別verの変な顔をする。
「ぶふっ! ……くっ、この私が二度までも」
「先生、変な顔しないの!」
「すいません」
 なんか俺が怒られた。
「いいから来るっ! ……その、先生がいたら、打ち上げもちょっとは面白くなるかもしれないからさ」
 ……ひょっとしたら、かなみはあまり打ち上げが好きじゃないのかもしれない。
「行く。行って可愛い子とお知り合いになってうはうは」
「先生ッ!」
「すいません」
 怒られたけど、打ち上げに紛れ込むことに成功。色々な人に誰? と言われたので、その度に
「妖怪、いつの間にか打ち上げに紛れ込みです。特に害はないけど可愛い子がいたら声をかけて知り合いになる。君、俺に電話番号を」
「先生ッ!」
「すいません」
 というやりとりをして怒られた。けど、怒りながらも笑っていたので、俺の役目は果たしたと言えよう。

 色々あって、打ち上げも終わり、マネージャーさんの運転する車で帰途に着く。一人で帰ると言ったのだが、一緒に連行された。
「あー……怒り疲れた」
 隣に座るかなみがぐったりした様子で言った。
「俺は怒られ疲れた」
「怒られるようなことばっかするからでしょうが! ……でも、ありがとね」
「うん?」
「……先生がいたから、今日の打ち上げは楽しかったよ」
「俺は可愛い子とお知り合いになりに行っただけ。感謝される意味が分からん」
「……へへっ、そだね」
 ぽふりとかなみが俺の胸元に倒れこんだ。
「ちょっと、疲れちゃった。……少し寝るから、着いたら起こしてね」
「え、あ、う」
「分かりました。お休みなさい、かなみさん」
 こっちがオロオロしてる間に、マネージャーさんが答えてしまった。
「……貴方は」
 そのまま無言でしばし過ごしてると、ふいにマネージャーさんが口を開いた。
「貴方は、かなみさんのことをどう思ってるんですか?」
「どうって……生徒、ただの生徒だよ」
「それは、本心ですか?」
「……大事な、生徒だよ」
「……なるほど。……かなみさんを泣かせたら、承知しませんよ」
「大丈夫、泣かされてるのは主にこっちだ」
 マネージャーさんが笑う雰囲気がこっちに伝わってきた。
「……んにゅ、せんせ……」
 胸元でかなみが寝言で小さく俺を呼んだ。
「はいはい、俺はここだよ」
 軽くかなみの頭をなでてあげる。
「……うにゅ♪」
 変な鳴き声と共に、かなみがはにかんだ。
「あ、そうそう」
 かなみの変声に微笑んでると、マネージャーさんが思い出したように声を上げた。
「かなみさんは未成年ですから、手を出したらダメですよ」
「…………。任せろ!」
「……なんですか、最初の間は」
「大丈夫、まだ出してない」
「まっ、まだって何ですか、まだって!」
 マネージャーさんの慌て具合が運転にもでたのか、蛇行運転を開始。
「まっ、前見ろ前! バカ、ぶつかる!」
「ばっ、馬鹿とはなんですか、馬鹿とは! 貴方の通ってる三流大学と違い、私は一流大学を出て」
「いいから、まえーっ!」
「んにゅ、もう着いたの……うわわわっ、なになに、ジェットコースター!?」
 あやうく死にかけたが、どうにかかなみの家に辿り着いた。
「先生先生、ちょっとちょっと」
 家の前までかなみを送ってると、かなみが手招きした。
「うん、なんだ?」
「……人影、なし、と。先生、ちょっとかがんで」
 ……これは、アレですか。恋人とかがよくやる、アレですか。
「あ、いや、その、アレですよアレなんですよ、ほら、アイドルに手を出すと色々問題があるしそのいや俺としてはやぶさかでもないんですが」
「早くっ!」
「はい」
 条件反射的にかがむと、かなみの顔が目の前に。
「……ちゅ」
 頬にキスされた。
「……お、お礼。……そ、その、ちゃんとライブに来てくれたことと、励ましてくれたことと、打ち上げに着いてきてくれたことと、えっと、えっと」
「あー……うん。ありがとう」
「ち、違うっ! 感謝するの、あたし!」
 そう言われても、頭が柔らかかったとしか考えてくれないのでよく分からない。
「……うっと、そ、その、……また今度っ!」
 かなみは顔を真っ赤にして、家に飛び込んでいった。
「あ、うん」
 残された俺は俺で、たぶん赤くしているのだろう。
「……ふ、ふふ、手を出すなと言った途端これですか。……いい度胸ですね、貴方」
 そして、車の中にいるはずのマネージャーの声が聞こえてきて、赤いのが青くなってきた。
「すなわちナイス度胸」
 それだけ言って猿も裸足で逃げ出すほどの手練で逃げる。
「あっ、待ちなさい! この、三流大学がーっ!」
 マネージャーが俺に大変嫌なあだ名をつけつつ、追ってきた。そんな一日でした。

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【くまさんぱんつ対いちごぱんつ】

2010年03月14日
「かなみかなみかなみーっ! パンツ買ってきたぞ! はけ!」
「朝から何の話かっ!」
 登校するなり紙袋を携えながらかなみに突進すると、見事なカウンターパンチを決められたので吹っ飛んだ。
「だから、パンツを買ってきたのでかなみにはいて欲しいという話。さ、はけ」
 むっくら起き上がって紙袋をかなみに突きつける。
「なんでもいいから鼻血拭きなさい、鼻血。だらだら垂れてるわよ」
 乱暴にハンカチで鼻を拭われた。痛い。
「はい、綺麗になったわよ」
「む、感謝。じゃ、はいて」
 スカートを捲り上げてパンツを下ろそうとしたのだけど、スカートを捲り上げた時点ですごい殴られたので断念せざるを得なかった。
「何やってんのよっ!」
「パンツ交換。かなみのはいてるくまさんぱんつを、俺の買ってきたいちごぱんつにチェンジする仕事。時給23円」
 かなみの顔が真っ赤になった。
「大丈夫、かなみが年甲斐なくくまさんパンツをはいてても、俺は馬鹿にしないぞ! しかし、くまさんの顔が前面に描いてるパンツって珍しいよね」
「忘れなさいっ! 今すぐ忘れなさいっ!」
 かなみは俺の両肩を掴み、前後にぐわんぐわん揺らした。
「……ちくわって何だっけ。新型ドーナツ?」
「何を忘れてんのよ! あたしの……その、アレを忘れなさいって言ってるの!」
「アレ……ああ、かなみのパンツな、パンツ! くまさん柄の! お前いくつ?」
 かなみは俺の両肩を掴み、前後左右にぐわんぐわんぐわんぐわん揺らした。
「忘れた? ちなみに、忘れてないと脳に電極刺す」
「忘れました」
 実験動物になるのは勘弁なので、くまさんを忘却することにする。
「かなみがどんなパンツをはいてるのかはさて置き、俺の買ってきたいちごぱんつをはいて欲しい」
「なんでそんなのはかなきゃいけないのよ。絶対イヤよ」
「俺の選んだパンツ、これすなわち俺自身の手と言っても過言ではあるまい。かなみには、いつだって俺の手に包まれていてほしいんだ」
「ちょ、ちょっと、こんなところで何言ってんのよ! ……もう」
 む、満更でもない様子! 押せばなんとかなるかも!
「つまり、かなみちゃんは別府くんの手に包まれていたいと……秘部を!」
「秘部とか言うなっ!」
 勝手な聴衆を一喝するかなみ。
「そうだ。俺が包みたいのは秘部だけでなく、尻も包みたいぞ。あ、無論乳も包みたいです。というか揉みたい」
「いらんこと言うなっ!」
 怒られた。
「まったく……これ以上放っておいたらまたいらんこと言いそうだし……分かったわ。受け取ってあげるわよ」
「よし! じゃ、早速」
 スカートを捲り上げてパンツを下ろそうとしたのだけど、スカートを捲り上げた時点ですごい殴られたので断念せざるを得なかった。
「だから、なんでスカートまくるのよ、アンタは! 普通にそのパンツ渡せばいいだけじゃないの!」
「いや、そうした場合どさくさに紛れてかなみのパンツを拝めないし」
「アンタは本当に一度死んだほうがいいわねっ!」
「おはよ……うわわ、かなみちゃんが必殺、ネックハンギングツリーを別府くんに! 登校するなり殺人事件見ちゃったよ! ラッキーなのかな?」
 楽しそうなクラスメイトの声を聞きながら、意識混濁。

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【女性を見て鼻の下を伸ばしているのをツンデレに見つかってしまいます】

2010年03月12日
 かなみが買い物に行くので荷物持ちについて来いと命令してきた。面倒くさいと断ったら殴られたので、従順についていく。
「まったく、最初っから素直についてきなさいよね。手間かけさせないでよ」
「はい、すいません」
 なんで俺が怒られてるんだろうなーと疑問に思いながら街を歩いてると、可愛い子を見かけた。
 (俺の脳に搭載されたロリカウンターが凄まじい数値を叩き出してる! まさか……震えてるのか、この俺が!)
「そ、そうだ。言っとくけどね、これ、デートなんかじゃないわよ。アンタのことだから勘違いするかもしれないけど、絶対にないから」
 (しかし、なんというロリ度だろう。ぱっと見小学生のように見えるが、制服に身を包んでいるに、中学生、下手すれば高校生だろう。……ううむ、どうにかしてお近づきになれないかなあ)
「……ちょっと、聞いてる? さっきから何を見て……」
 (いやはや、可愛いなあちっちゃい子は可愛いなあ。お持ち帰りしたいなあ、はうはう。でも、捕まるしなあ。法律め、いつか俺が変えてみせる! 目指せU-12!)
「いでででで!」
 熱き誓いを心に秘めていると、かなみに耳を引っ張られた。
「いきなり何すんだよ! 耳ちぎれるかと思ったぞ! いや、実際にはちぎれてないけどそう思うほど痛かったと述べているわけでして」
「うるさいっ! あたしの話聞いてないのが悪いのよっ!」
「き、聞いてたぞ? 株式市場の話だよな。ええと、……どの株が好き? 俺はおおきなカブが」
 必死こいて言い訳したのに、頬をぎうーっと引っ張られた。
「いいから早く来なさいっ!」
「あ、いや、ちょっと待って。個人的用事が急遽できたので、ちょっとお暇させて頂きたく」
 うまいこと言ってかなみから離れ、どうにかしてロリ子とお近づきに! そしてあわよくばお持ち帰りはうはう!
「いいから来るッ!」
「ふふ、掴む場所間違えてますよ、かなみさん。このままでは死ぬ可能性が」
 かなみに首を掴まれ、呼吸が停止したまま運ばれました。

「…………」
 どうにかして自己再生した後、買い物を終え、喫茶店で休憩と相成った訳なのですが、どういうわけかずっとかなみたんの機嫌が悪いので大変しんどい。
「あ、あの、かなみたん? いったい何を怒ってるのかにゃー?」
「……別に、怒ってないわよ」
 怒気を撒き散らしながらジュースを音をたてて飲むかなみ。誰が見ても怒りゲージがMAXかと思います。
「……あーあ、つまんないわねー。タカシ、なんか面白い芸しなさいよ」
「いきなり言われてもなあ……んー、なんか道具でもあれば」
 ジャグリングでもしてやろうかと店を見回す。んー、なんか道具なんか……なんかっ!?
「……? どしたの、いきなり目ひんむいて」
 ウェイトレスの娘さんが俺の浪漫回路をぎゅるぎゅる回しまくり! 簡単に言うとロリくて可愛い! よし、声をかけてお近づきに! そしてそして、お持ち帰りはうはう!
「何見て……また、あたし以外の子見てる……」
 よし、小粋なジョークで和ませ、な、名前を聞き出すのだ! 超緊張! ……と、その前にかなみを帰すなり何なりして……え?
「か、かなみぃぃぃぃぃ!? どした!? 大丈夫か!?」
「え? どしたって……別になんともないわよ。アンタの方が大丈夫じゃないっぽいわよ」
「いやいやいや、俺のことなんてどうでもいい! 気づいてないのか? お前、泣いてるぞ!」
「え? ……やだ、なんで」
 自分の目をこすり、困ったように呟くかなみをぎゅっと抱きしめる。
「ちょ、ちょっと、いきなり何すんのよ! 人前、人前よ!」
「ごめんな。寂しい思いさせたな。ダメな彼氏だったな」
 抱きしめたまま、何度も何度もかなみの頭をなでる。なでにくいので、かなみの席に移動。
「……あ、アンタなんか彼氏なんかじゃないわよ。ただ、アンタがあたしのこと好きなだけよ」
「なんでもいい。ごめんな、ごめんな」
「……うー」
 困ったようにうーと鳴くかなみの声を耳元で聞きながら、優しく頭をなでる。

「疲れました」
「疲れてない。もっと」
 一通り撫でた後、今さらここが喫茶店であることに気づき、人が真っ赤になってるってのに、かなみの奴はスイッチが入っちゃったのか、俺の胸にすりすりしながらもっととせがむ。
「……む、なんかエロいぞ。よしかなみ、俺の家でえ、え、エロいことでも」
「うるさい。もっとなでろ」
 却下されたので、お望み通りかなみの頭をなでる。
「はふ~♪」
 などとやってると、ウェイトレスさんがやってきた。
「大変ですねえ」
「彼氏の仕事です」
 かなみをなでながら談笑してると、かなみが突如顔を上げ、ついでにツインテールも上げてウェイトレスさんを威嚇した。
「ぐるるるる……」
「あはっ、威嚇されちゃったんで行きますね。でも、そういうことは家でした方がいいと思いますよ」
「威嚇を!? 威嚇しあうカップル……いかん、仲がいいのか悪いのかまるで見当がつかない」
「あははははっ、そうじゃなくて、イチャイチャすることですよ」
 分かっていたが、はっきり指摘されるとなんというか、照れる。
「いや全くその通りで。つーわけでかなみ、ボチボチ帰ろっか」
「むー」
 精神年齢が一回りほど幼くなった感じのかなみを連れ、かなみ宅へGO。
「あああああ……あたしったら、あんな恥ずかしいこと人前で……」
 そして、スイッチがOFFになったかなみが今頃恥ずかしさに顔を赤くしております。
「かなみは新スキル、露出を覚えた!」
「覚えてないっ! 露出なんてしてないっ! 人前でイチャイチャしちゃったこと後悔してんの! ……そうよ、何もかもアンタが他の女の子見てデレデレするのが悪いのよ! この浮気者!」
「む、ごめん。謝る。次からは男の子見てデレデレする。頑張ってショタに目覚める」
「そういうこと言ってるんじゃないわよっ! ていうかそうなったら縁切る」
「あ、あはは、冗談に決まってるダロ」
 本気の目なので、冗談ということにする。
「まったく、アンタって人は……で、しないの?」
「何を?」
「……き、喫茶店で言ってたじゃない。イチャイチャするのは家で、って」
 それを言ったのはウェイトレスさんのような気もするが、どっちでもいいか。
「や、したいはしたいが、もう結構遅いし、そろそろ帰った方がいいような」
 時計を見ると、6時半を指していた。そろそろお腹がぐーぐーの時間だ。
「ま、まだいいじゃない。なんならウチでご飯食べていったらいいし、お風呂入ってってもいいし、……と、泊まるのはダメだけど」
 かなみの拒絶に、はっきり落胆する。
「ち、違うの! 今日はお父さんもお母さんもいるし! ……い、いや、深い意味はないけどさ」
「深い意味はともかく、そういうことなら了解した。じゃ、イチャイチャするか?」
「あ、あたしは懐が広いからね。タカシがどうしてもって言うなら、別にいいわよ?」
「いや、そこまでは」
「……そ、そう」(涙目)
「──というのはもちろん冗談で、今こそバカップル力を見せつける時! 必殺のなでなでを喰らえっ!」
 大変イチャった。大満足。

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【皆に頼りにされるツンデレ】

2010年03月11日
 文化祭が近づくにつれ、我がクラスで行われるお化け屋敷の準備も徐々に賑わいを見せるようになってきた。
「かなみちゃーん、板足りないんだけど、どうしたらいいー?」
「あー、それは実行委員に言ったら貰えるから、行って貰って来てー」
「りょーかい!」
 敬礼して板を取りに行く女生徒。ふむ、感心なことだ。
「椎水ー、この布どこに取り付けりゃいーんだ?」
「あー、それは板の上に取り付けるから、板来るまで待っててー」
「分かったー」
 そう言って、他の生徒の元へゆく男子生徒。ふむふむ、みんな頑張ってるな。
「かなみかなみ、おっぱい揉みたいんだけど、この劣情をどこに持っていけばいいんでしょうか」
「今ここに持ってきてるでしょうが!」
 他の生徒に混じり、頼ってるフリをしつつ後ろからかなみの乳を揉んだらたくさん蹴られた。
「なっ、何故バレた!? 俺の作戦は完璧だったはず……」
「うるさい変態ッ! いーからアンタも手伝いなさい! どーせ暇でしょうが!」
「手伝いたいのは山々なんだが、家に帰って家事をしないと。先日、相次いで両親を亡くして家事に忙しいんだ」
「幼なじみ相手にそんな嘘が通用するわけないでしょうが! 第一、今日の朝アンタの親に会った! 朝ご飯一緒に食べたでしょうが!」
「間違った。犬のポチが亡くなったんだ」
「アンタんち、飼ってるの猫でしょうが! いいから早く仕事手伝えっ!」
「はい」
 これ以上からかうと殴られそうなので、手伝うことにしよう。さて、誰を手伝うかな……?
「別府くん、私たちを手伝ってー」
「任せろ! 得意中の得意だ」
 後ろにいる女の子から声がかかったのでそっちに向くと、お化けの服の採寸をしている最中だった。
「別府くん、女の子の服の採寸するのが得意中の得意なの……?」
 いかん、このままでは変態野郎の異名が欲しいままになってしまう!
「そうなんだ」
 だがしかし、『肯定した方が面白くなる』と思ったので肯定する。
「別府くんらしいね」
 褒め言葉と見せかけ、貶されてると見た。
「とにかく手伝おう。で、俺はどうすりゃいいの?」
「ココとココ押さえてて。仮縫いだから、すぐほつれちゃうの」
 指された場所はおっぱいです。
「…………。任せろ!」
 色々思ったが、とりあえず優しくおっぱいをぐにゃりと揉む。
「……うう、タカシは女性のおっぱいを何の疑いもなく揉む」
 よくよく見ると、採寸されてる生徒はちなみでした。
「い、いや俺は言われた場所を押さえただけで! 決して乳を揉めて超ラッキーとか思ってない!」
「べ、別府くん、違う違うよ。押さえるのは肩! 胸じゃない!」
 しまった、よく見てなかったので間違った。
「よく考えるとそうだよね。おかしいと思ったんだ」
「……うう、どうでもいいけど、そろそろ揉むのやめて欲しい。……妊娠しそう」
 そして俺の手は、なんでいつまでもちなみのおっぱいを揉んでますか。
「や、これは違くて! 手が、手の野郎が勝手に!」
「タカシー、真面目にやって……」
 最悪のタイミングでかなみが顔を覗かせました。
「や、そ、その、これは、ええと、偶然がいくつも重なり合いまして」
「……どんな偶然が重なると、ちなみの胸をわしづかみするのかしらねぇ?」
「……わしづかみだけでなく、揉まれた」
 ちなみが余計なこと言ったせいで、かなみのこめかみが更にひくついた。恐怖のあまり、手が震える。
「あっ……た、タカシはこんな状況だというのに、まだ私のおっぱいを揉む。……恐るべし、タカシの性欲」
「タカシぃッ!!!」

「ふー、板貰ってきた……わわわ、すっごくリアルなお面だね! ……リアルすぎて、ちょっと怖いよ」
「自前です」
 かなみにべこんぼこんにされた結果、顔がすごいことになっているようで、板を貰ってきた女生徒に怯えられた。

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【ツンデレが犬になりました】

2010年03月09日
 かなみが犬になった。という仮説を立ててみる。犬なので、頭をなでられると喜ぶと仮定。実行。
「なでなでなで」
「ちょ、な、なによいきなり……」
 補習を終え、教室にて友人らと談笑していたかなみの頭をなでると、困惑した表情で俺を見た。さほど嫌がらないことから、やはり犬の可能性が高い。
「かなみ、顔赤いよ?」
「うっさい! ……あ、あの、タカシ? みんな見てるし、こういうことをここでするのは、その……」
 友人がかなみの顔色を指摘しているが、それはともかく、続けて躾けの実験。お手と言ったら、俺の手に自分の手を乗せるだろうか。
「お手」
「だ、だから、そういうプレイは部屋で……」
「プレイだって。常日頃、犬プレイをしていると……恐るべし、かなみ!」
 かなみの失言により、友人らが騒ぎ出し、そしてかなみは顔を真っ赤にして俺を睨んだ。なんで俺を。
「それはともかく、お手」
「……ど、どうしても?」
「お手」
「……わ、わん」
 かなみはしきりに周囲を見ながら、おずおず俺の手に自分の手を乗せた。しかも、わんと鳴きながら。
「ふむ、かなりの犬度。これはもうズバリ犬と言っても過言ではないだろう。努力により、人は犬になれるのだ。頑張れ、人。負けるな、犬……と」
「……あのさ、タカシ。さっきから何書いてるの?」
「え、あ、いやいやいや。これは全然なんでもないことだから。関係ないから。ほんと。全然」
「…………」
 仮説を書いてたメモを無言でひったくられた。そして、無言で蹴られた。
「どういうことよっ!」
「夏休みの自由研究。人は犬になれるか」
「なれないっ! そもそも、自由研究の宿題なんて出てないでしょうがっ! なんでこんなことやんのよっ!」
「いや、急に嫌がらせがしたくなって。できたので満足。むふー」
「もう帰れっ!」
 殴られたけど、からかえて満足。明日もやろう。

拍手[8回]