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2025年04月21日
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【ツンデレに惚れ薬を飲ましたのに効果がないようです】

2010年03月08日
 迷子の爺さんの道案内をしたら、礼に奇妙なカプセルをもらった。
「この薬を飲ませると、どんな娘っ子でもたちまちアンタにほの字じゃて。ひっひっひ」
「ボケ老人の戯言につきあうのも前途ある若者の務めなので、にっこり笑いつつも聞き流そうと思った」
「本当じゃっ! まったく、近頃の若者ときたら……」
 なんかにゃむにゃむ言われたが、それでも一応薬を貰った。研究所に勤めている叔父さんに薬の成分を調べてもらった結果、本当の本当に惚れ薬らしい。
 さて、問題は誰に使うか、だけど……どーすっかな。
 学校への道すがら、そんなことを考えながらカプセルをお手玉してたら、手が滑って前方に大きく弧を描いて飛んでいった。
「ヤクイ! いわゆるヤバイという意味合い! だがしかし“素晴らしい”“おいしい”という意味ではないので要注意!」
 慌てて手を伸ばすが、指に当たって弾かれ、さらにまずいことに曲がり角から人影が!
「うん? タカシじゃない。何やって……んぐっ!?」
 角から現れた人影──かなみは、飛んできたカプセルを飲み込んでしまった。
「あ、あーあー、あー」
「……ぷはぁっ。ちょ、ちょっと、なに、なんなの!? なに飲ませたのよ!」
「精液」
「んなわけあるかぁっ!」
 思わず飲ませたいものを言ったら怒られた。
「いや、実はほ……」
 いや待て。惚れ薬を飲ませた、なんて言ったら……
 ほわん、ほわん、ほわわわ~ん(想像中であることを示す効果音)
「実は、誤って惚れ薬を飲ませちゃったんだ。えへ、ごめりんこ」
「絶対死なすっ!」
 その日の新聞には、俺が惨殺死体で見つかったという記事が載っていたという……。
 ほわん、ほわん、ほわわわ~ん(想像を終えた事を示す効果音)
 いけない、大変いけない! ルナ先生と同じくらいいけない! 真実を教えたら、きっと死ぬ。
「ほ? なによ」
「ほっけが食べたくなる薬」
「んな薬ないっ!」
「いや、液体状のほっけを飲みたくなる薬だから」
 想像したようで、かなみは口元を押さえた。
「……アンタ、悪食はほどほどにした方がいいわよ」
 別に俺が食べたいわけではない。まぁ、無難に風邪薬だということにしておく。
「ふぅん。アンタみたいなのでも、風邪ひくのね」
「俺のような健康優良児でも、ということにしておこう。他の風邪ひかない種類、いわゆる○○とハサミは使いようの○○と同意のモノについては考えない方向で」
「……そこまで言ったら、もう言ってるも同然じゃない」
 そう言ってかなみは苦笑した。
 ……んー、しかし、惚れ薬らしいのに、普段と別段変わりないなあ。てっきり、
『タカシきゅん、ちゅきちゅきー♪ ちゅっちゅしてー♪』
 とかなると思ったのに。いや、別にそうなってほしい訳ではないけど。つーか、想像したら悪寒が。
「ところでさー、今日の授業……あれ、アンタなんか震えてない?」
「気のせいだぞ、かなみたん」
 しまった、想像の余波が俺の言語中枢に。
「かなみたんー? なに、急にあたしのことラブラブな感じで呼びたくなったの?」
 かなみはいやらしい笑みを浮かべ、俺の腕を自分の肘でツンツンつついた。
「うん」
 もちろんそんな訳はないのだけど、仮に惚れ薬の効果が出ているのであれば、きゃっきゃうふふな感じで受け答えするだろう。どうだ?
「はー……最近暑いしねぇ」
 ちっともきゃっきゃうふふじゃない。熱中症患者扱いだ。やっぱ惚れ薬じゃなかったのかなあ。おじさん、使えねー。

 学校の帰り、叔父さんが勤める研究所に寄る。
「おじさん、惚れ薬の効き目ゼロだったぞ。このヤブ医者め!」
「いや、おじさんは医者じゃなくて研究者なんだけど……でも、あの薬は本当に惚れ薬だったんだけどなあ」
 叔父さんはしきりに首を傾げていた。
「うーん……まぁ、薬を飲んだ子が既にタカシ君のことが好きだったら、効果がなくても仕方ないんだけどね」
「それはない」
 即答する俺に、叔父さんは苦笑を浮かべた。
「それくらいしか、効かない理由が浮かばないんだけどね……」
「それは、おじさんがヤブ医者だからだぞ?」
「いや、だからおじさんは医者じゃなくて研究者で……」
 なんかうにゃうにゃ言ってる叔父さんを放って、研究所を出る。
「かなみが俺を、なぁ……いや、ないないない」
「何の話?」
「うあっ!?」
 独り言に答えるように、角からかなみが顔を出したので、びっくりした。
「……なーに驚いてんだか」
「いや、誰だって角から急に頭の両端から昆布垂らした奴が現れたら驚くだろ?」
「昆布違うっ! 髪! ツインテール!」
「そう怒るなよ、はるぴー」
「かなみよっ!」
 すごく怒られた。
「……ったく。ところでさ、風邪、治ったの?」
「?」
「なに不思議そうな顔してんのよ……ま、その顔見たら治ったみたいね」
 風邪……? ……あ、そういや今朝、そんな話したような。
「なんだ、心配してくれたのか?」
「べっ、別にアンタなんかを心配なんて……」
「勘違いしないでよねっ! 心配なんてしてないんだからねっ!」
「どやかましいっ!」
 超怒られた。
「はぁ……で、帰らないの?」
「最近俺んちの近所に頭の両端から昆布垂らしてる変な妖怪が住み着いたようで、帰るの怖いんだ」
「それあたし! 最近じゃなくて昔っから住んでる! 昆布じゃなくて髪! つか変な妖怪言うなっ!」
 いっぱいつっこまれた。
「んじゃ帰るか、かなみ」
「うう……髪型変えよっかな」
「いやいやいや、それダメ! 禁止! 貧乳+ツインテールの黄金コンボを崩すと、かなみの価値なんてあとは八重歯くらいしか残ってないぞ!?」
 無言でさっくり目を突かれたので、きっと気に障ったのだろう。
「うおお……なんか出そう。ビームとか」
「出るかっ! もー怒った、絶対髪型変える!」
「待て待てWait! ダメですダメなのです! そんな可愛いのにもったいないと思う人がちらほら!」
「……例えば、誰?」
「う」
 どこか期待を込めた視線を俺に向けるかなみ。
「う、じゃなくて。誰よ、可愛いって思ってる人」
「や、その、……ほら、分かるだろ? 得意の第六感を駆使してなんとなく、ほら、空気読むとか、な?」
「分かんないわねー。だれ、だれ? ほれ、言ってみ?」
 かなみはにやにやしながら俺の腰を肘でつついた。絶対分かって言ってやがる。
「言わないと、髪形変えちゃうかもねー」
「俺! 俺様! オレサマ オマエ マルカジリ!」
「うっきゃあああああ!?」
 かなみの頭をかじったら悲鳴を上げられた。
「食べるなっ!」
「いや、昆布が……」
「もうそのネタはいいっ! うう……帰ったら頭洗わないと」
「し、失礼な! 俺の口内が汚れていると!? 怒り心頭、オレサマ オマエ マルカジリ!」
「うっきゃああああ!」
 かなみの頭をかじったらまた悲鳴を上げられた。
「だから、食うなっ!」
「これを専門用語で天丼と言います」
「どやかましいっ!」
 怒られたが、かなみの頭をかじることによってうやむやにすることに成功。ふふ、我ながら冴え渡る頭脳に恐怖すら覚えかねない。
「……しっかし、アンタがそんなにツインテール好きとは知らなかったわ。うりうり」
 うやむや失敗。かなみはニヤニヤ笑いながら自分の髪を持ち、髪の先で俺の頬をこしょこしょした。
「うぐぐ、毒がまわる」
「毒なんてないっ! ……あ、そか、照れ隠しね。なに、コレ好きなの?」
「や、そ、そんな好きでは? ない? 感じ?」
「こしょこしょこしょこしょ」
「あ、ああ、あああ……」(恍惚)
「うわ、面白……もっとやろ」
 新しい性癖を目覚めさせられた。

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【ポテチ食べるツンデレ】

2010年03月06日
 昼休みの教室。飯も食ったのでげふーを堪能してると、かなみがポテチを食べてるのに気づいた。
「弁当に加え揚げ芋まで食うとは、冬に備え虎視眈々と肉を溜め込んでますね」
「いきなりヤなこと言うわね……」
 とても迷惑そうな顔で、かなみは俺を見た。
「そこで、少しでもその肉を軽減せしめんと立ち上がる俺であった。てなわけで一枚おくれ」
「なに、欲しいの? そうね……」
 かなみは思案顔でしばらく黙った後、何か思い立ったように顔を輝かせた。
「じゃ、三回まわってワンって言って?」
 素直にまわってワンと鳴く。
「鳴いた。くれ」
「……何の照れもなくされると、つまんないわね」
「ぐうう、よもやかなみにワンと鳴かされるとは。悔しさのあまり血尿が出そうだ」
「明らかに棒読みよっ! それに、悔しくても血尿は出ないっ!」
「間違えた、胆石が出来そうだった」
「アンタは中年のおっさんか!」
「高校生です」
「知ってるわよっ! ……はぁ」
 心底疲れたような息を吐かれた。
「もーいい。あげるから話しかけてこないで。アンタと話してると、頭痛くなってくる」
 くれるというので、ポテチの袋を頂く。
「こら、なにも全部あげるなんて言ってないでしょ!」
「…………」
「ちょっと、なに無視してんのよ。寄越しなさいって言ってるの!」
「…………」
「ね、ねぇ。……あれ、ひょっとして、怒ってる?」
「…………」
「あ、アンタが悪いのよ? 年頃の女の子捕まえて肉を溜め込んでるとか言うから……」
「…………」
「そ、そりゃあたしもちょっと悪かったけどさ。アンタと話してると頭痛くなるとか言っちゃったし。でも、でもさ、それもアンタが……」
「…………」
「……た、タカシ? あの、あたし……」
 困ったような、悲しそうな顔をして、かなみはスカートの裾をぎゅっと掴んだ。
「タイム。大丈夫か?」
「え、あ、……え? タイム?」
「かなみと喋ってはいけないゲームの中断を知らせる言葉です」
「……はぁぁ? なに、アンタあたしが言ったこと律儀に守ってたの?」
「守ってたの。守ってロリポップ」
「……この人騒がせな! ややこしいのよ! なによ、怒ってたんだと思ったじゃないの!」
 かなみは目の端を拭いながら俺にまくし立てた。
「……あの、ひょっとして泣いてる?」
「なっ、泣いてない、泣いてないわよ! なんだってあたしがアンタに無視されただけで泣かなきゃいけないのよ!」
「だよな。強い子良い子のかなみが、そんなので泣くわきゃないわな」
「……なによ、あたしだって泣く時くらいあるわよ」(ぼそり)
「具体例を出すと俺に無視された時と答えそうになった俺だったが、折角小声で言っていたのでここは聞こえないフリをするのが無難であろうと判断した」
「メチャメチャ言ってるじゃないのっ! この馬鹿この馬鹿この馬鹿!」
 かなみは真っ赤な顔で俺の首をぎうぎう絞めるので苦しい。
「ぐげげ、泡が出る出るぶくぶくぶく」
「このカニ! カニがっ!」
「はふー、食堂めっちゃ混んでたー……うわわっ、かなみちゃんが別府くんをカニに!?」
 食堂から戻ってきた女生徒が、トンチキな叫びを教室中に響かせました。

「よう、カニ。宿題やったか?」
「やっ、カニ。次の数学やだねー」
「ねーカニ、あたし次当てられるからここ教えてー」
 響かせた成果は上々なようで、俺のあだ名がカニになりました。
「恨むぜ、かなみ……」
 隣の席のかなみにぼそぼそと囁く。
「あ、あたしは悪くないわよ? アンタが泡出すのが悪いのよ」
「誰だって首絞められたら泡出すだろっ」
「首絞められた経験ないから分かんないわよっ」
「俺はお前にしょっちゅう締められてんだよっ! とても苦しい上カニなんてあだ名がつくのでやめてくださいっ!」
 ヒートアップのあまり、イスから立ち上がる。
「アンタが余計なことしなけりゃ、あたしもやんないわよっ!」
 かなみも熱が篭もったのか、俺と同じようにイスから立ち上がる。
「そこの二人、授業中」
「知ってるわよっ!」
「右に同じだっ!」
 歯を輝かせて教師にサムズアップする。
「お前ら、後で職員室来い」

 二人揃って怒られた。
「指の角度が悪かったのか……?」
「脳のデキが悪いのよ」
「ああ、かなみの」
「なんであたしなのよっ! アンタのが悪いに決まってんでしょうがっ!」
「俺の指の角度が?」
「脳だって言ってるでしょうがっ! アンタの脳みそ、カニ味噌なんじゃないの!?」
「調べた事ないから確証はないが、違うと思う」
「なんで真面目に答えてんのよっ! ……あーもーアンタと話してると疲れる」
「んじゃ、話しかけるのやめようか?」
「……やーらしい笑み。そーゆートコ嫌い」
「こりゃ失礼。じゃ、今日の色々なことについてのお詫びに、パフェでも奢るわ」
「そーゆートコは好き」
「なんとも打算的ですなぁ」
「……まぁ、パフェ自体が目的じゃないんだけど」(ぼそり)
「では、一体何が目的なのですか?」
「なんでアンタはそんなに耳がいいのよっ!」
 真っ赤な顔で首を絞められ、またカニになった。

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【席替えして、男が「かなみと離れてショックだ…」と言ったのが聞こえたツンデレ】

2010年03月05日
 6時間目のHR、先生が席替えしようと言い出した。隣の席のタカシの目が光る。……また何かする気ね。
「じゃあ大谷先生の席と俺の席を交換してくれ」
「えっ、えっ? そ、それ無理……」
 タカシがまた変なこと言って大谷先生を困らせてる。
「大谷先生は生徒の純粋な願いを突っぱねると言うのか? それならそれ相応の価値ある何かをくれ。……そうな、その歳に似つかわしくない、まるで小学生のような幼い肢体を俺にまさぐらせもがもがもが」
「先生、ちゃっちゃとやっちゃってください」
 馬鹿言ってるタカシの口を塞いで話を進めさせる。まったく、タカシがいたらいつまで経っても席替えが終わらない。
「は、はい。えっと、……じゃーん♪ くじを作ってきたので、みんな引いてくださいねー♪」
 可愛らしい効果音をつけながら、大谷先生は小さな箱を取り出し教卓の上に置いた。みんなぞろぞろ教卓に向かう。
「もがもが……かなみ、いーかんげん手離せ」
「大谷先生に酷いこと言わない?」
「言う」
「そんなこと言われて離すわけないじゃないっ! アンタはあたしに口塞がれたままクジ引きさない!」
「もが」
 タカシの口を塞いだまま、一緒に教卓の前へ。
「はい、引いてください」
 にっこり笑って箱を持つ大谷先生のほっぺを、タカシは何の躊躇もなく引っ張った。
「痛い痛い痛いです! ほっぺじゃないです、くじを引くんです!」
「アンタわざとでしょっ! ちっちゃい子をいじめるなっ!」
「ちっちゃくないです、大人です! ないすばでーです!」
「子供は黙ってなさい!」
「こ、子供!? なんてこと言うですかっ! 先生は大人です! かなみちゃんこそ胸は子供じゃないですか!」
「な、なんですって!? それこそ大谷先生に言われたくないわよ、この小学生教師!」
「こらこら子供たち、喧嘩はやめなさい。身長と胸、違いはあるが共に子供なんだ。手に手を取り合ってはどうかな」
 穏やかな顔をしてタカシがあたしたちの仲裁に入った。
「誰のせいで喧嘩してると思ってるのよっ!」
「誰のせいで喧嘩してると思ってるんですかっ!」
 あたしと大谷先生が同時にタカシに怒った。
「やあ、怒られた」
「怒られた、じゃないです! 別府くん、あなたは先生を馬鹿にしすぎです! あとでいっぱい先生が説教するので、放課後職員室に来なさい!」
「嫁に行けない体にされてもいいなら行く」
「う、うわーん! 別府くんが先生の大人の魅力に魅了されて、えっちなことをー!」
 大谷先生が涙目になり、壁まで走ってカーテンの影に隠れた。
「先生を怯えさせるな、ばかっ! ほら、謝って来なさいよ」
 タカシの頭を叩いて先生に謝罪を促す。
「分かったよ……先生、来い来い」
「うー……もう先生のこといじめない?」
 カーテンから頭だけ出して、涙目の先生がタカシに問いかける。
「いじめるよ」
「うわーんっ!!」
「冗談はいい加減にしろっ!」
 タカシの頭をすぱーんとはたく。
「いや、いつだって俺は本気だ」
「なお悪いわっ! 先生、タカシはあたしが抑えてるから、出てきて大丈夫ですよ」
「ほ、ホント……? じゃ、……ひっ!」
 一瞬出ようとした先生だが、あたしの後ろを見た瞬間また戻ってしまった。不思議に思って振り返ると、タカシが邪悪な顔をしてた。
「いらんことばっかすんなっ!」
 思い切りタカシの胃を握り締める。
「痛い痛い痛い! 胃が取れる!」
「あーもう、ホントにHR終わっちゃうじゃない……ちょっとみんな、この馬鹿捕まえてて!」
 あたしの呼び声に、何人かの女子がタカシに群がった。
「おや、ハーレムですね」
「いらんことしたら引き千切る」
 ドスの効いた声でそう言ったらタカシの動きが止まったので、先生の救助にあたる事にする。
「ほら、もう大丈夫ですから」
「うー……」
 怖々とだが、先生はやっとカーテンから出てきてくれた。
「ほら、大丈夫だったー」
「……えへ。ありがとね、かなみちゃん」
 先生と手を繋いで教卓の前へ行き、くじを引く。
「ほらタカシ、アンタの番……」
「別府くんって、なんだか甘やかしたくなるよねー」
「あー分かる分かる。なんか弟っぽいって言うか、弟オーラ出してるよね」
「うちの弟より弟っぽいもん。すりすりー♪」
 女子みんなが膝枕したり頭なでたりすりすりしたりして、タカシを甘やかしていた。
「甘露甘露! ゆくゆくは弟力で世界を掌握するのも悪くは……」
 あたしが見ているのに気づいて、タカシの顔色がゆっくり青くなっていった。
「……何か言い残すことは?」
「誰か助けてください!」
「古いッ!」
 べこんぼこんにした。

「……というわけで、席替えかんりょーです。みなさん、これから一ヶ月その席で頑張ってくださいねー♪」
 動かなくなったタカシに無理矢理くじを引かせ、どうにか席替えが終わった。タカシと席が離れられて、これで面倒見なくていいとちょっと安心。……まぁ、ちょっとつまんないけど。
 しばらく先生の話を聞いてると、タカシが身体を起こした。やっと目を覚ましたみたい。
「……んあ、なんだ。もう終わったのか、ちぇ」
 アイツ、先生の話また聞いてない。注意して……っとと、もう面倒見なくていいんだ。ほっとこう。
「……あれ、かなみ隣じゃないのか。……ふむ、少しショックかもな」
 ……え? え、でも……え? ショックって、それって……そういうこと?
 授業が終わるのを待ち、タカシの席へ向かう。……へ、平常心よ、平常心。
「は、はろー」
「外人だ、逃げろ!」
「なんで普通に受け答えできないのよ、アンタは!」
 逃げようとするタカシの首根っこを掴んで、その場に押しとどめる。
「性分なので。いやしかし、かなみと席離れちゃったなあ」
「そ、そうね。まぁ、あたしは嬉しいけど」
「そっか」
 …………。
「そ、そっかじゃなくて。他に何か言うことないの?」
「最近面白いエロゲ買った?」
「んなこと女性に聞くなっ! じゃなくてさ、ほ、ほら。何か言うことあるでしょ?」
「俺はこの間“ひまわりのチャペルできみと”を買った。面白かったよ」
「アンタのエロゲの近況報告なんて聞きたくないっ!」
「じゃあ残るはアニメとゲームと漫画の話題しかありませんが」
「はぁ……もういい。アンタに期待したあたしが馬鹿だった」
 タカシのことだ、どうせはっきりも言わないだろうし、別にいっか。聞き間違いだったかもしれないし。
「あ、帰るのか、一緒に帰ろうぜ」
「いい。アンタと一緒にいたら恥ずかしい」
「今日は服脱がないから」
「いっつも服着てるでしょ! さもいつも服脱いでるみたいに言うなっ!」
「脱いだ方がいい?」
「そういう話じゃないっ! ……ぜはーぜはー」
 タカシと話してると、いっつも疲れる。……まぁ、退屈はしないけど。
「じゃあ服着てるから、一緒に帰ろうぜ。席離れちゃったし、帰る時くらい一緒にどうでしょうか?」
 あ……。
「ど、どうしてもって言うなら、一緒に帰ってあげてもいいわよ。心優しいあたしに感謝しなさいよね」
「話を要約すると、かなみ教を立ち上げろと? 無茶を言うが、頑張ろう。教団心得1.貧乳は絶対である」
「言ってないっ! どんな要約のしかたよっ! 貧乳言うなっ!」
「言わないので、帰りましょう」
「はぁ……しょうがないわね。一緒に帰ってあげるわよ」
 仕方なく、というフリをしてそう言ったら、タカシはにっこり笑った。
「そか。じゃ、どっか寄ってくか?」
「あ、買い食いはいけないのよ?」
「じゃあ買わない食いをする」
「犯罪よっ!」
 タカシの頭を叩きながら、教室を出た。
 ……うん、席が離れても、関係なく楽しくやれそう。タカシの笑顔を見てたら、そう思えた。

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【朝ご飯を作ってくれるツンデレ】

2010年03月04日
 両親が旅行に出かけた。これで俺の天下だきゃっほーと思って漫画買ったりゲーム買ったりしたら、貰っておいた生活費が尽きた。
 そんなわけで三日ほど何も食わないで腹を鳴らしていたら、見るに見かねたのか、近頃はかなみが飯を作ってくれるようになった。それはいい。とてもありがたい。だがしかし。
「朝はパン食べたいなあ」
「なに言ってんのよ、朝はご飯に決まってるでしょ。パンなんかじゃ力出ないわよ」
 かなみは椀にご飯を盛り、イスに座ってぼやーっとしてる俺に渡した。
「うちは前々から朝はパンなんだ。アンパンマンを崇拝してるんだ。愛と勇気だけが友達なんだ。おまえなんて友達でもなんでもない。帰れ帰れ、田舎者は帰れ!」
「じゃあコレいらないのね?」
「かなみだけが友達さ! どうかこれからもずっと末永くお願いします!」
 おかずの目玉焼きを人質、いや物質に取られたので、一瞬で手の平を返す。
「まったく、調子いいんだから……もうちょっとしたらお味噌汁が出来るから、少し待っててね」
「あい」
 適当に返事をして、かなみの後姿を眺める。
 かなみは学校指定の制服に身を包み、その上からエプロンをしている。機嫌よさそうに鼻歌を口ずさみながら、おたまでくるくると味噌汁をかき混ぜていた。
「……なんか、新婚さんみてえ」
「ん? タカシ、なんか言った?」
 くるりとこちらを向き、かなみは小首を傾げた。遅れてツインテールがふわっと回転する。
「なんか、サンコンさんみてえ」
「どこがよっ! 性別も人種も年齢も全部違うっ!」
 一文字間違ったせいで怒られた。間違わなくても怒られそうだが。
「変な事ばっか言って……まあ、いつものことだけど」
 ぶつぶつ言いながら、かなみは再び味噌汁の調理にかかった。
 ……んー、ここ数日ご飯ばっかで、いやもちろん作ってもらってありがたいんだけど、それでもパンが食べたいな。
 しかし、かなみにそう言っても「パン食う奴はベトコンだ! パン食べてご飯食べる奴は訓練されたベトコンだ! ホント戦場は地獄だぜ! フゥハハハーハァー」とか言うだろうしなあ……。
 どうしたものかと思案しながら視線をさ迷わせていたら、棚の上にスナックパンが置かれているのを見つけた。
 パン! 食いてえ! しかし、かなみに見つかると没収されるに違いない。
 だが、うだうだ考えていたら味噌汁が出来上がり、食う時間もなくなってしまう。どうする、どうする!
 まあいいや、食べよっと。
 手を伸ばしてスナックパンの入った袋を手に取り、封を開ける。一本手に取り、口に入れる。おいしい。
「タカシー、出来たわよ……」
 笑顔でふりむいたかなみが止まった。見つかった。
「……何してるのかしら」
「……ごくん。いや、何もしてないよ?」
「嘘つけっ! さっきごくんって何か飲み込んだでしょっ! ていうかその手に持ってる袋、思いっきり見えてるんだけど!」
 慌てて袋を背中に隠す。
「いや、違うんだ。これは散歩した時に糞を入れる排泄物袋で、パンは入ってないんだ」
「アンタ犬飼ってないでしょっ! いーから寄こしなさいっ!」
「かなみが糞を見たがる」
 とても怖い顔で睨まれたので、袋を渡す。
「ほら、やっぱりパンじゃない! もうっ、こんなの食べたらあたしの料理食べれなくなるでしょっ!」
「甘いものは別腹というし、だいじょぶだいじょぶ」
「もー……残したら承知しないわよ?」
「じゃあ認知はしてくれよな?」
「何の話よっ!」
 それは俺にも分からない。
「とにかく、パンは没収。ご飯食べなさい、ご飯」
「ちぇ。まぁいいや、一本食べたら満足した。飯を食うとします」
「そうしなさい。朝はやっぱりご飯! これで決まりよ」
 にっこり笑いながら、かなみは出来立ての味噌汁をよそってくれた。
「はい。熱いから気をつけなさいよ」
「はははっ、この俺様がそんなイージーミスをするはずがあっちぃっ!」
 受け取って口にした瞬間火傷した。
「言ったそばから……ああもう、子供みたいね、アンタ」
 かなみは俺の味噌汁を取り、ふーふー吹いた。
「はい、冷めたわよ。これでそそっかしいアンタでも大丈夫なはずよ」
「完全に子供扱いですな」
「あははっ、ふくれっ面して。なんならアーンもしてあげましょうか? なーんて」
「それはいい。是非お願いしよう」
「……え?」
「いや嬉しいな、まさかかなみが作ったものを手ずから食べさせてもらえるだなんて。俺はなんて幸せな男なんだろうか」
 無論、そんなもの本心ではない。かなみの退路を断ったまで。限界ギリギリまでいじめ、子供扱いした事を後悔させてやる!
「……あ、あの、そこまで言うなら、……してあげてもいいわよ?」
 かなみは少し頬を赤らめ、おずおずと言った。話がおかしな方向に転がりだした。
「あ、いや、でもほら、こういうのって恋人同士がすることであり、友達同士でするのって変とか思ったりする人がいたりする可能性がなきにしもあらずというか」
「べ、別に深い意味なんてないわよ? そ、その、そこまで言われたらあたしも断れないし」
「いや、でも……」
「あ、それとも……ホントは嫌、だったり?」
 かなみは少し顔を伏せ、声を落とした。
「とんでもない!」
 なんで即答してますか、俺は。
「じゃ、じゃあえっと……は、はい、あーん」
 顔をりんごみたいに真っ赤にして、かなみは震える箸でご飯を掴み、俺の前に差し出した。
「あ、あーん」
 大きく開けた俺の口に、ご飯が投入される。
「ど、どう? おいしい?」
「え、えっと、ご飯だな」
「そ、そっか。ご飯だもんね」
「そ、そうだな、ご飯だな」
 なんだ、この恋人空間。どこからこんな次元に突入してしまったのか。
「じゃ、じゃあ、次は味があるのね。はい、あーん」
 目玉焼きの白身を掴み、再び差し出してくるかなみ。
「あ、いや、もう充分だと思ったり思わなかったり」
「はい、あーん」
「……あーん」
 開けた口に目玉焼きが投入される。
「おいしい?」
「あ、うん。おいしい」
「そ、そっか。えへへっ」
 かなみはへにゃへにゃの笑みを見せた。
「…………」
 えへへっ、て。キャラ変わってますが。
「……な、なによ、その目は」
「いや、すごいなって」
「う、うるさいわねっ! 自分でも、らしくないとは思ってるわよ!」
 自覚してたのか。
「でもなんか知んないけど楽しいのよっ! 悪い!?」
「いや、悪くはないと思うけど……」
「悪くないなら続けるっ! はいっ、あーん!」
「あ、あーん」
「おいしいっ!?」
「お、おいしいです」
「……そ、そう。……えへへ」
 かなみはへにゃへにゃの笑みを見せた。
「…………」
 だから、えへへって。
「だ、だから、イチイチそんな目で見るなっ!」
「幸せそうで何よりです」
「うううっ、うるさいうるさいうるさいっ! 気づいてないかもしれないけどさ、アンタも嬉しそうよっ!」
「え?」
 自分の顔をぺたぺたさわる。なるほど、確かにずっとにやけてやがる。
「気のせいだな」
「笑ってるわよ! ずーっとにやにやしてさ、馬鹿みたい!」
「しっ、失敬な! えへえへ言ってる奴に言われたくない!」
「えへえへなんて言ってないわよっ!」
 遅刻ギリギリまでぎゃーぎゃー言い合ってました。

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【ツンデレのほっぺにクリームが付いてたので取ってあげたら】

2010年03月03日
 かなみが甘いものが食べたいと言うので、近所の喫茶店にやって来た。
「何にしよっかな……チョコパフェかな、クレープもいいわね。ねータカシ、どっちがいいと思う?」
「どちらにしても贅肉の元だと思うが、クレープの方が贅肉への変換率が低い気がする。いや、カンだが」
 そう答えた瞬間、おしぼりが俺の口に突き刺さった。気に食わない答えのようだ。
「お決まりになったで……そっ、それは食べ物じゃありませんっ! 手を拭くものですっ!」
 注文を聞きにきたウェイトレスさんが俺の惨状を見て驚いていた。
「気にしないでいいわよ。えっと、あたしチョコパフェ。この乙女心がちっとも分かってない馬鹿には水だけでいいわよ」
「勝手に決めるねい。コーヒー頂戴」
 口からおしぼりを取ってから、ウェイトレスさんに注文する。
「は、はい……少々お待ちください」
 俺をちらちら見ながら、ウェイトレスさんは去って行った。
「……惚れられたか? ははっ、困ったな」
「アンタみたいな変人に惚れる奴なんて、この地球上にいないわよ」
「目の前にいますが」
「だっ、誰がアンタなんかに惚れてるってのよ! 自惚れてるんじゃないわよ!」
 再び口におしぼりを入れられ困惑してると、さっきのウェイトレスさんが再びやってきた。
「ま、また食べてる……。え、えっと、チョコパフェとコーヒーになります」
 テーブルの上に注文の品を置き、ウェイトレスさんはなにやら怯えながら一礼して去って行った。
「さって、食べるわよー♪」
「贅肉の元を!」
 また俺の口におしぼりを入れ、かなみはパフェを一口食べた。こいつには一度、俺の口はおしぼり入れではないと教えなければならない。
「ん~! たまに食べるとやっぱおいしいわねー♪」
「……ちょっとうまそうだな。俺にも少し」
「あげないわよ」
「…………」
 かなみは俺の事なんてちっとも気にせず、ぱくぱく食べ続けた。
 パフェの中身が半分ほどなくなった頃だろうか、かなみのほっぺにクリームがついていることに気がついた。
「かなみ、ほっぺにクリームついてるぞ。子供みたいでかーわいい。あと、胸も子供みたいでかーわいい」
「うっさい!」
 かなみはクリームがついてるのとは逆のほっぺを拭った。
「こっちだ、こっち」
 手でクリームを拭い取ってやる。
「ちょっ、ちょっと! 何すんのよ!」
「クリームを拭った。俺の手で」
「分かってるわよ! そうじゃなくて……あああああ!」
 拭った手がべたべたするので舐め取ろうとしたら、かなみがとてもうるさくなった。
「なっ、ななななな、何してんのよアンタ!」
「あー……指の掃除?」
「そっ、そうやって舐めたりしたら、その……、間接キスになるじゃない! ばかばか!」
「気にするな」
「するわよっ! なんでアンタみたいなのとそんなのしなきゃいけないのよ!」
「うーむ……む、名案が浮かんだ! 俺が舐めると間接キスになるので、かなみが舐めてくれれば間接キスにならない!」
 言っておいてなんだが、よりやばいような気がする。
「そっ、そうね。……ん?」
 かなみもおかしいと思っているようだが、考える前に行動させてしまおう。ほら、指ちゅぱされたいし!
「ほら早くほら早くほら早く」
「わ、分かったわよ」
 俺の言葉に急かされるように、かなみは小さく口を開けて俺の指を咥えた。
「ん……」
 舌先でちろちろとクリームを舐め取っているようだ。くすぐったくて、なんだかとても気持ちがいい。
「かなみ、なんかえろい」
「ん……え、えろくなんてないわよ。普通よ、普通」
 喋るために出した指をもう一度口に含み、かなみは目をつむって俺の指をしゃぶった。
「あむ……ちゅ、ちゅちゅ……れろ」
 舌がまるで別の生き物のように俺の指を蹂躙する。指の上から下まで、順番にゆっくりと舐め回される。ぞくぞくした刺激が背骨を駆け下りた。
「ちゅー……ちゅ。……はい、綺麗になったわよ」
 最後に一度大きく吸い込み、かなみは俺の指から口を離した。一筋の涎が指と口とを繋いでいた。
「…………」
「な、何よ。何ぼーっとあたしの口見てんのよ」
「かなみはえろいなあ」
「だから、えろくないって言ってるでしょっ! ……ま、とにかくこれで間接キスはなくなったからいいわ」
「あむ」
「っきゃーーーーっ!!! あ、あ、あ、アンタ! 何してんのよっ!」
 おもむろに指を咥えたら、かなみが奇声をあげた。
「へふひ(別に)」
「別に、じゃないっ! なんであたしが口にした指をしゃぶってんのよ! あたしが舐めた意味ないじゃない! こら、口から離しなさい!」
「なんか甘いような気がする」
「いらんこと言うなッッ!!!」
 とても怒られた。
「あと、指をキレイにするには別に舐める必要はなく、おしぼりか何かで拭けばよかったと思う」
「あ……アンタ、気づいてたならもっと早く言いなさいッ! アンタが急かすから、気づかなかったじゃないのっ! この馬鹿この馬鹿この馬鹿!」
「計算の内です」
「絶対殺すっ!」
 ものすごく怒られた。 

 さんざっぱら怒られ殴られた後、会計をするためレジに向かう。
「アンタ、あれだけのことしたんだから、ここ奢りなさいよね」
「断るとひどい目に遭うような気がするので、払います」
「当ったり前じゃない」
 奢りになった途端、かなみの機嫌が目に見えてよくなった。
 レジには、俺たちに接客してくれたウェイトレスさんがいた。何か俺らを見てぼーっとしてるが……。
「はふー……近頃のカップルはすごいですねえ。お姉さん、ちょっとカルチャーショックを受けましたよ」
「カップルじゃないわよっ! ただの友達よ、友達!」
「友達だけど、指ちゅぱをする関係です」
 いらんことを言ったので、また殴られた。
「あはは……あ、1000円になります」
 お姉さんに1000円札を渡し、外に出る。
「いい? 今日のこと、誰にも言ったらダメだからね」
 外に出た途端、かなみが俺にそう言ってきた。
「今日のこと、というと、かなみが突然俺に指ちゅぱしてきたことか?」
「言うなって言ってるでしょうがッ!」
 俺を叱りつけて、かなみは小さく咳払いをした。
「そ、その、……言わないならさ、またやってあげるから。……その、指ちゅぱっての」
 足を地面にぐりぐり擦りつけながら、かなみは恥ずかしそうに言った。
「絶対に言わない! 墓まで持って行く! なんなら念書も書く!」
「そ、そこまでやらなくていいけど……なに、そんなよかったの?」
「死ぬほど。いや、まさかそこまでしてくれるとは……」
「か、勘違いしないでよ? 別にアンタがしてほしそうだからするんじゃなくて、言いふらされないためにするだけなんだから!」
「て、テンプレだーッ!」
「うっさい!」
 怒られた。
「こほん。……で、その、これから……、する?」
 首よもげよ、とばかりに激しく首を縦に振る。
「そ、そう。……じゃ、あたしの家、行こっか?」
 恥ずかしそうな笑みを浮かべるかなみと一緒に、かなみの家へ行きました。で、色々と。

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