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2025年04月20日
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【ネコ好きなツンデレ】

2010年04月07日
 放課後、教室に残って友人とだらだらどうでもいい話をしてると5時になってた。
 いい加減飽きたので帰ることにする。友人は部活の友達を待つと言って、図書室に消えた。
 アクビしながら靴を履き替え、外に出る。帰ろうかと一歩踏み出したとき、何か小さな声が聞こえた。声の元を辿っていくと、変な光景に出くわした。
「あははは、あはははは!」
「ぎにゃーーーーー!!!」
 かなみが満面の笑みでネコを振り回していた。
「ネコさん、ネコさーん!」
「ふにゃーーーーー!!!」
 楽しそうで何よりだが、ネコ泣いてる。ネコ超泣いてる。なんだかナディア島編を思い出さずにはいられない光景だった。
「あはは……ていっ!」
 そんな掛け声と共に、かなみの手が放される。ネコは放物線を描き、俺の方に飛んできた。
「ネコが徐々に大きく見える不思議!?」
「ふぎゃーーーーーーーーーーーー!!」
 咄嗟のことに反応できず、ネコと頭と頭でごあいさつ。思ったより硬いぞ、ネコ頭!
「いつつ……」
「あれ、タカシじゃん。なにやってんの?」
 痛みに顔をしかめてると、平和そうな顔してかなみがやってきた。
「ちょっとネコと挨拶をな」
「ふーん。で、どこ行った? こっちに飛んできたと思ったけど」
「飛んだ、っつーか飛ばした、だろ」
「あはは……あっ、いた!」
 かなみの見てる方向に視線を向けると、先ほどのネコが校舎の影に全力で逃げ込もうとしていた。
「よしっ、もっかい!」
「やめれ! おまーはネコに恨みでもあんのか?」
 慌ててかなみの肩を掴む。このままではネコの空中分解ショーを見せられてしまう。
「そんなわけないじゃない。私、ネコ大好きなのに」
 引きとめている間に、ネコはどうにか校舎の影に逃げ込むことができたようだ。今から追いかけても、捕まえられないだろう。
「あーもう、タカシが邪魔するから逃げちゃったじゃないの!」
「そいつはよかった。あのネコも二度とこの学校に近寄らないだろう」
「責任取ってよね!」
「わかった、認知する」
「何の話よっ!」
 責任と言われると、つい認知とか言いがちだよね。言いたくないよ。
「うー……ねこー、ねこー」
「ええいねこねこうるさい! お前はねこねこソフトか! あっ、いまの面白いよ?」
「つまんない」
「…………」
「いーからネコ! 抱っこしたいよー、ふわふわもこもこー」
「なんだ、そうなのか」
 かなみに抱きつく。
「なな、ななな!?」
「うむ、ふわふわのもこもこ。だが、少々胸のボリュームが」
 最後まで言えなかったのは、かなみの手が俺の顔にめり込んだからです。
「いきなり何すんのよ!」
「抱っこって言ったじゃん」
 あふれ出る鼻血をティッシュで拭う。
「ネコを抱っこしたいの! 何が悲しくてアンタを抱っこしないといけないのよ……」
「俺は嬉しいぞ? ただ、やはり胸のボリュームが」
「うっさい! ……はぁ、もういいや。帰ろ、タカシ」
「ウィ」
 道々ネコの素晴らしさを説かれながら、かなみと帰りました。

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【祝日と知らずに学校にきちゃった男】

2010年04月06日
 目が覚める。時計を見る。血の気が引く。
 3秒で着替えて家を出、学校へ超ダッシュ。車に撥ねられそうになりながらも、どうにか遅刻寸前で学校に着く。
「セーフ!?」
 教室に滑り込むも、答えてくれる人は誰もいない。ていうか、誰もいない。どういうことだ?
「……ははぁ、ドッキリだな。全員隠れて、寂しくなった俺を泣かそうという魂胆だろう!」
 だがしかし、俺は大人なので泣きはしない! 逆に隠れてる奴らを探し出し、驚かせて泣かしてやる!
 そう思い立ったので、教室のカーテンを着込み準備完了。教室を出てクラスメイトを探す。
「……何やってんの、タカシ」
 うろうろしてると、体操着姿のかなみに出逢った。よし、驚かせてやれ!
「がおー、おばけだぞー!」
「…………」
「が、がおー、おば、おばけ……」
「…………」
「うぐっ、ひっく、おばけ、おばけなのです……」
「泣くな!」
 あまりの反応のなさに、思わず泣いてしまった。かなみに慰められ、どうにか涙を引っ込める。
「なんで俺だと分かったんだ?」
「こんな馬鹿なことする奴、学校中探してもアンタしかいないわよ」
 カーテンを脱いでる俺を、かなみは呆れた顔で見ていた。
「相変わらず訳分かんないことするわね……ある意味すごいわ」
「えへへぇ」
 褒められたので喜色満面いい気持ち。
「うわっ、気持ち悪っ」
「…………」
 酷く傷ついた。ちょっと泣きそう。
「それより、なんでアンタがここにいるの?」
「失礼な、学生が学校にいるのは当然だろう」
「……平日なら、ね」
 かなみの言葉に、嫌な予感がピキーンと。
「……まさか、今日って休み?」
「今日は祝日。あたしは部活で学校来てるけど、帰宅部のアンタがいる必要はないわね」
「うう……走ってきたのに……朝飯も食ってないのに……なのに休みとはどういう仕打ちだ!?」
「ばーか。じゃ、あたしは部活行ってくるわね」
「このまま帰るのもなんだし、密かにかなみについていって視姦するか」
「すなっ! いい、絶対ついてこないでよね」
「婉曲的に『タカシ様来て来てあたしを見て』と言っているのだな?」
 なんでそんな目で見るんですか。俺が蛙なら彼女は蛇ですか。死ぬほど怖いですよ?
「泣くなッ!」
 怖すぎて泣いてしまった。
「あーもう、アンタ本当にあたしと同い年なの……?」
 呆れ混じりに頭をなでられた。なでられるとすぐ涙が引っ込むのが、我ながらにんともかんとも。
「涙腺が緩いんだ。でも、下が緩いよりかなりマシだよね?」
 なでていた手が俺の頭を締め付ける。もげそう。
「……はぁ。見学するなら部長に言っておくから、余計なことしないでよね」
「いいのか?」
「アンタ、ほっといたら侵入して勝手に見学するでしょ。だったら最初から連れ込んで監視してる方がまだマシよ」
「色々言いたいけど、見学させてくれるなら文句はない」
「そっ。じゃ、行きましょか」
 それから、かなみの所属する部室へ連れて行かれ、見学しました。途中かなみに3回ほど泣かされた。

「あー……いつもの30倍疲れた」
 肩をぐるぐる回すかなみと一緒に帰宅。残念ながらもう制服を着てる。
「もー二度と見学なんてさせない。『ブルマブルマブルマ』って言いながら能面みたいな顔して一年生追っかけて……このバカ!」
「だってブルマだもん! 普通そうなるだろ!?」
「なるわけないじゃない、この変態!」
「し、し、失礼な! ブルマの神に謝れ! あとよかったら俺にも謝ってくれると大変嬉しいです!」
「誰が謝るか、ばーか!」
 いつものようにかなみと喧嘩しながら帰りました。間違えて登校してしまったけど、かなみのブルマ見れたしいいか。

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【デレデレ幼女 VS ツンデレ】

2010年04月06日
 隣の家の両親は共働きで忙しいらしく、帰ってくるまでの間は子供の麻衣を俺の家に預けている。
 で、その麻衣になんでか知らんが随分と気に入られ、“お兄ちゃん”などと呼ばれているわけで。
「えへー、お兄ちゃーん」
 テレビを見てると、麻衣がやってきた。
「お、麻衣か。こんちは」
「えへへっ、こんちちは!」
 変な挨拶をして、麻衣は俺の膝の上に座った。
「お兄ちゃーん、遊ぼ?」
「兄は勉強に忙しいのだ」
「お兄ちゃん、テレビ見てるだけじゃない。ねー、遊ぼ遊ぼ」
「いや、これも勉強なのだ。先日友人に『アンタ、本当に現代人?』と言われてな。流行を調べようと思ってテレビを」
「そんなのいーから遊ぼーよ、ねーねー」
 ぐいぐいと俺の腕を引っ張る麻衣をどうしたものかと思ってると、インターホンが鳴った。
 宅配便かな、と思いながら麻衣をどかせ、玄関に向かう。
「こんちは、タカシ」
「ありゃ、かなみか。どした、迷子か?」
「私は幼子かっ!」
 いつも通り突っ込まれてから用件を問う。
「あー、うん、いやその、ちょっとこの近くを通りかかって、それでその……」
「よく分からんな。とにかく、何もしないからあがっていけ。何もしないから、本当に」
「……なんで手をわきわきさせてんのよ」
「股間をわきわきさせるのは好青年として少々はばかられるものがあるからだ」
「下品ッ!」
 怒鳴られた(+鉄拳制裁)ので、素直に部屋に通す。
「あ、お兄ちゃんお帰りー」
 ドアを開けると、麻衣がとてとてと駆けてきて俺の足にしがみついた。
「誘拐!?」
 その様子を見て、かなみが人聞きの悪いことを叫んだ。
「しまった、ばれた! 麻衣、クロロホルムを!」
「……麻衣、誘拐なんてされてないよ?」
 小首を傾げて、麻衣は俺の小芝居を打ち砕いた。
「ちょっと、タカシ! どういうことなの!?」
 かなみに説明すると、殴られた。
「だったら最初から隣の子を預かってるって言いなさいよ! なんで普通にできないかなぁ……」
「不思議だね」
「なんで他人事みたいに言ってんのよ! あー、頭イタ……」
 頭を押さえるかなみに、俺の腕を握りながら麻衣が口を開いた。
「お姉ちゃん、だれ? お兄ちゃんのともだち?」
「いや、肉奴隷だ」
「アンタ、子供になんてこと教えてんのよ! ち、違うからね、ただの友達よ?」
 俺を殴り飛ばしてから、かなみは麻衣に真実を教えた。
「にくどれい?」
「俺の性欲の全てをその体を使って発散させる便利な道具だ」
「もう喋るな!」
 ノドを突いて俺の言葉を封じ、かなみは麻衣ににっこり笑いかけた。
「き、気にしないでね。このお兄ちゃん、ちょっと頭おかしいから」
「お姉ちゃん、お兄ちゃんをいじめないで……」
 座り込んで咳をする俺をかばうように、麻衣は俺の腕にしがみつき、潤む瞳でかなみを見た。
「い、いじめるとかじゃなくて……ちょっとタカシ、説明してよ!」
「げほげほ……大丈夫だ麻衣、たんなるコミュニケーションだ。ちょっと肉体言語を使いすぎる嫌いがあるけどな」
「誰のせいよ、誰の! ……とにかく、いじめてるわけじゃないのよ、ね?」
 麻衣ににっこり笑いかけると、ようやく警戒が解けたのか麻衣はかなみに笑い返した。
「そっか、えへへっ」
「か、可愛い……た、タカシ、この子ちょうだい!」
 麻衣を抱き上げ、かなみはほお擦りした。
「やらねーよ」
「残念……あーでも、本当に可愛いわね」
「あ、あぅあぅ……うにゅにゅ」
 かなみになでまくられ、目をぐるぐるさせてる麻衣だった。
「それで、何用だ?」
 とりあえず部屋に移動し、麻衣を解放したかなみに問いかける。
「あーいや、大した用はないんだけど、その……」
 何か懊悩としてるかなみをぼーっと見てると、麻衣が俺の膝に乗ってきた。
「えへー♪」
 俺を見上げにっこり笑う麻衣を見てると、こっちまで笑みがこぼれてくる。
「……なんか、ただの仲良しさんに見えないのは私の気のせい?」
「だって麻衣、お兄ちゃんの恋人だもん♪」
 俺も知らない事実が麻衣の口から飛び出た。
「たっ、タカシ、どういうことよ!? まさか本当に!?」
「ちっ、違う! 俺にそんな趣味は……ないと言い切れる自信は欠片もないけど、とにかく違う!」
「えへー♪」
 違うと言ってるのに、麻衣と来たら俺の胸にごしごし顔をこすりつけてお茶目さん♪ 目の前の娘さんに殺されるからやめてお願い。
「……はぁ、麻衣ちゃんも随分奇特な趣味してるわね。こんな奴のどこがいいんだか」
 殺される、と思ったが案外かなみは平然としていた。
「お兄ちゃんはねー、変なこともいっぱい言うけど、すっごい優しいの。えへへへへっ♪」
 相好を崩しまくり、麻衣はほにゃほにゃの笑顔を見せた。
「へぇ……私には、あんまり優しくしてくれないわよね」
「大丈夫、初めての時は優しくする」
「何の話よッ!」
 怒りながらも顔を赤くしている当たり、見当がついているのだろうなぁ。
「……お姉ちゃんも、お兄ちゃんが好きなの?」
「ま、まっさかぁ! なな、なーんでこんな奴に!」
 そういう事を言うときは、顔を赤くしない方がいい。ほら、麻衣も不審がってる。
「うー……あげないからね?」
 麻衣は取られまいと俺の腕をぎゅっと握った。
「そ、そんなのいらないわよ、フン!」
 そう言いながら、かなみはまるでおもちゃを取られた子供のような目で俺を見ていた。

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【デレデレ幼女 VS ツンデレ2】

2010年04月06日
 隣家のちっちゃな娘さん、麻衣は今日も今日とて俺の部屋に入り浸りんぐ。
 それは別に構わないのだけど、男のとある部位を激しく動かす運動ができないのが少し辛い。
「あのねあのねお兄ちゃん、麻衣ね、さっきテレビでやってたのしたい!」
「兄はエレクトしたい」
「えれくと?」
「あ、いや、その、なんでもないぞ麻衣」
 誤魔化すように麻衣の頭をわしわしなでる。
「……なんか、ごまかされてるみたい」
「そ、それでテレビでやってたのって何だ? 兄に話してみるがいい」
「あ、そーそー。あのね、麻衣がポッキーくわえて、もう片っぽをお兄ちゃんがくわえるの」
「…………」
 それは、巷で言う所のポッキーゲームとかいう奴ではないでしょうか。確かにしたいが、相手が麻衣というのは、少しばかり……いや、かなりの抵抗が。
「お兄ちゃん?」
「あ、ええとだな、麻衣。それは恋人同士でなければできない禁じられた遊びなのだ。だから残念ながら……」
「じゃあ大丈夫だね。だって麻衣とお兄ちゃんは恋人同士だもん♪」
 違います。嬉しそうに抱きつかないで。
「それじゃやろっ、お兄ちゃん」
「あ、その……ああそうだ! 残念ながらポッキーがない。これじゃできないなぁ。わはははは!」
「じゃあ買いに行こっ!」
「……まぁ、そうなるわな」
 非常に不本意ながらも、俺は麻衣と一緒におてて繋いでコンビニへ行くことになった。
「ありゃ、タカシじゃないの」
 どうやって切り抜けるか考えながら店内に入ると、偶然かなみと遭遇した。
「よっ、かなみ。何買ってんだ? 避妊具?」
「あっ、麻衣ちゃんも。こんにちは、麻衣ちゃん」
 俺を完膚なきまでにスルーし、かなみは麻衣に笑いかけた。
「こんちちは、お姉ちゃん!」
「ちょっと変な挨拶だけど、元気があって花丸! いい子いい子」
「えへへへへっ♪」
 俺とは対照的に、麻衣はかなみに撫でられ喜色満面だった。
「俺にばかり冷たいのは、屈折した愛情表現と取っていいのだろうか」
「そんなこと、私に言われましても……」
 困惑顔のお姉さんが言うとおり、店員さんに愚痴ても仕方ない。二人の元に戻ると、和気あいあいとお菓子を物色していた。
「これは315キロカロリー、これは445キロカロリー」
「…………」
「ごめんなさい」
 親切心で後ろからカロリーを教えてあげたら、かなみに股間が縮み上がるような視線で射抜かれたのですかさず謝る。
「それで、麻衣ちゃん何買いに来たの?」
「ポッキー! あのね、お姉ちゃん知ってる?」
 そう前置きして、麻衣はかなみにポッキーゲームのことを事細かに説明した。
「ちょっとタカシ、アンタ何考えてるのよ!」
 かなみは俺の胸倉を掴み、がっくんがっくん揺らした。
「ちょ、ちょっとまっ、待てっ! 揺するな!」
「こんなちっちゃい子相手に……いくら同い年の子に相手されないからって、恥を知りなさい!」
「ち、違うんだ! 落ち着け、とりあえず手を放してこのままでは脳が脳が揺れていい感じにうえっぷ」
 なだめすかしたり吐きそうになったりして、どうにか手を放してもらう。
「で、どういうことなの?」
 俺はかなみに事の次第を説明した。
「……というわけで、ポッキーゲームをすることになりました」
「結局するんじゃない!」
 だよね、まだ切り抜ける方法思いついてないし。
「お兄ちゃんお兄ちゃん、何個買う? 10個? 20個?」
 どうすんべかと思ってると、麻衣が両手で抱えきれないほどポッキーを抱えていた。
「そんなに買いません。ていうか、別の買わない? ほらほら、ポテチとかうまいぞ。はよーん」
「……お兄ちゃん、麻衣と一緒にポッキーゲームしたくないの?」
「え、いや、あの」
「……お兄ちゃん、麻衣が嫌いなんだ。だから、ポッキー買わないんだ」
「ま、待て待て麻衣。嫌いとかそういうことじゃなくてだな」
「……麻衣、麻衣、お兄ちゃんに嫌われちゃったよーーーーっ!! うわーーーーーーんっ!!!」
 麻衣が子供の本領を発揮した。
「ちょっとタカシ、おろおろしてないでどうにかしないさいよ!」
「うーんうーん、そうだ! かなみ、ちょっと乳出せ。母乳をすすれば落ち着くんじゃないか?」
「出るかッ!」
 それもそうだ。混乱してるな、俺?
「うわーーーーーーーん!! お兄ちゃんに嫌われちゃったよーーーーーー!!」
「ああ、落ち着け麻衣。俺が麻衣のことを嫌うわけないじゃん、な?」
「う……えぐっ……じゃあ、すき?」
「う……」
「やっぱり……麻衣のこと……」
 麻衣の目の端に涙がじんわりと生産されている! いかん、このままではまた泣かれてしまう!
「お、俺が麻衣を嫌うわけないじゃないか、な?」
 そう言うなり麻衣の頭をなでなでなで。同時に泣き止め電波を麻衣に送信。
「う~……ちゃんと、好きって言って」
「好きだっ!」
「なんであたしに言ってんのよ! 抱きつくな!」
 緊張感に耐え切れず、思わずかなみに抱きつく。
「うわーーーーーーん、お兄ちゃん寝取られたーーーーーーーーーっ!」
 微妙に間違った単語を用いつつ、麻衣は再び泣き出した。
「ち、違うわよ麻衣ちゃん。寝取ってない、お姉ちゃん寝取ってないからねー? この馬鹿が勝手に抱きついてきただけだから」
「そうだぞ麻衣。ちょっとフェロモンに誘われただけで、抱きついた時に“あー柔らけー”とか“小ぶりな乳だけど、それがまた”とか思っただけだぞ」
「うわーーーーん! お兄ちゃんがお姉ちゃんの魅力にたじたじだよーーーーーっ!」
 どうしたことか、より一層泣きが強まったような。
「ちっ、違うぞ麻衣! 俺がかなみなんかにたじたじになるはずないだろ?」
「……それって、あたしに魅力がないってコト?」
 なぜかなみが怒っているのでしょう。
 とにかく、大泣きの麻衣と静かに怒ってるかなみをどうにかしないと。考えろ、考えるんだ!
「なんでいきなり座禅組んでるのよ!」
 考えすぎたようだ。しかし、座禅のおかげかよい案が浮かんだので早速実行する。
「お兄ちゃん、麻衣とポッキーゲームしたいんだけど……泣いてるから無理かなー?」
「うっ、ひぐっ……やる、やるっ!」
 多少泣きながらも、麻衣は根性で涙を止めた。
「…………」
 麻衣が泣き止んだのはいいんだけど、隣から視線がザクザク刺さってくる。
「あ、あの、かなみさん? よろしければ、ご一緒しませんか?」
「するかっ! 何が悲しくてアンタなんかとポッキーゲームしなくちゃいけないのよっ!」
「ご、ごめんなさい」
「……し、しないけど、アンタが麻衣ちゃんに変なことしないよう見張る!」
 信用ゼロだった。
 そんなわけで、店員さんに店を騒がせた謝罪をしてから商品を買い、三人で帰宅する。
「じゃ、じゃあ早くやろうよ、お兄ちゃん!」
 帰宅するなりコンビニ袋からポッキーを取り出し、もう待てない様子で迫ってくる麻衣。
「…………」
 そして、俺を無言の圧力で殺そうとするかなみ。
「テトリスおもしれー」
 全てから逃避してテトリスを始める俺。
「……お兄ちゃん、麻衣とポッキーゲームしたくないの?」
「したいです! だから泣かないで麻衣に泣かれると兄は辛いのだ!」
「じゃあじゃあ……んー♪」
 麻衣はポッキーのビスケット部分をくわえ、俺に差し出した。
「…………」(キスしたら殺す殺す殺す殺す)
 かなみが無言で俺に殺意をぶつけてきた。恐怖のあまり失禁しそう。
「え、えっと……それじゃ」
 そっとチョコ部分をくわえる。
「んー♪」
 満面の笑みで俺を迎える麻衣。
「…………」(それ以上近寄ったら殺す殺す殺す殺す)
 俺にしか通用しないテレパシーで殺意をぶつけてくるかなみ。
「は、はふ、ふ……」
 恐怖のあまり震えが止まらない。その震えが口を伝い、ポッキーが折れてしまった。
「あーっ、折れちゃったー!」
「ざ、残念だな麻衣。折れちゃったな。それじゃこの辺でお開きに」
「じゃ次ね。次はがんばろーね、お兄ちゃん!」
「…………」
 これは、成功するまで無限ループ? しかし、成功したら隣で俺を睨むかなみにきっと殺される。
「矛と盾が俺を苛む」
「ほらほらお兄ちゃん、訳のわかんないこと言ってないで早く早く! はい、んー♪」
 再びポッキーが向けられる。かなみ方面から圧力も向けられる。暑さとは違う種類の汗をかきながら、ポッキーをくわえる。
「…………」(成功したら殺す殺す殺す殺す)
「は、はふ、ふ……」(小動物さながらに震えながら)
 恐怖心を克服できず、またしてもポッキーが折れてしまう。
「あーっ! また失敗した! もーお兄ちゃん、下手すぎ!」
「ご、ごめん」
 隣のお姉ちゃんに命を狙われてるんだとは言えず、素直に謝る。
「あははっ、下手ねータカシ」
「や、隣でじーっと見てる奴がいなけりゃもっと上手にできるんだけどな」
「……へぇ、面白いこと言うのはこの口かしら」
 皮肉を言ったらほっぺを引っ張られた
「もーっ、いいからお兄ちゃんやろーよ! 次はちゃんとやってよ?」
「うーあーうー」(見る人が見れば頷いているように見えなくもないが、基本的にうなっているだけ)
「お兄ちゃん、真面目にやって!」
 麻衣にもほっぺを引っ張られた。もうどうすればいいのやら。
「わ、お兄ちゃんライオンさんみたい。がおー、がおー」
「あ、本当だ。タカシ、ちょっとライオンのマネして」
「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」
「それ、マリーアントワネットだよ?」
 麻衣に素で返された。子供の割に博識だな、麻衣。
「いーから手離して。痛い痛い」
 ようやく頬が元に戻った。やれやれ。
「じゃあ、三度目の正直! んー♪」
 三度ポッキーが向けられる。そして、三度殺意が向けられる。
「…………」(性犯罪者になったら殺す殺す殺す殺す)
「は、はふ、ふ……」(ちょっと泣きながら)
 やっぱり折れてしまった。一緒に心も折れそうです。
「あーっ! まただよ、また! お兄ちゃん!」
「不思議だね」
「不思議じゃないよ! お兄ちゃんがぷるぷるしなかったらできるのに……お兄ちゃん、しっかりやってよ!」
「兄はコンニャクだからぷるぷるを止められないんだ」
「お兄ちゃん人間でしょ!」
「無茶苦茶な言い訳ね……」
 呆れ混じりに呟くかなみだが、誰のせいでこんな苦労してると思ってるんだ。
「もう、もう! お兄ちゃん、もっかい! んー!」
「…………」(とにかく殺す殺す殺す殺す)
 ポッキーをくわえて俺をじっと見る麻衣と、殺意を込めて俺をじっと見るかなみ。
 果たして、俺は明日を無事に迎えることができるだろうか。……衰弱死しそう。

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【ツンデレにお前って料理下手だよなって言ったら】

2010年04月04日
「かなみ、お前って料理下手だよな」
 かなみの手が伸びたかと思うと、俺の首にまとわりついて万力になった。
「下手? 下手って言った?」
「ち、違います違います! 上手、極めて上手と!」
 死の危険を感じたので、慌ててへりくだる。かなみの手が離れたのを確認してから、そっとため息をつく。
「最初っからそう言いなさいよね、もう。せっかくお弁当作ってやったんだからさ」
「や、照れ臭くてね。つい」
「……てっ、照れる必要なんかないわよ! そ、その、おばさんに頼まれたから! 出張でしばらく家を空ける間だけって頼まれたから! それだけだから!」
「もぐもぐ、うーんまずい。特にこのホウレン草が泣けるほどまずい」
「聞いてない上に侮辱を!?」
 ホウレン草の御浸しの味を確かめていたら、なんか頬つねられた。
「……ほっぺ痛い」
「うっさい!」
「もぐもぐもぐ。なーかなみ、お前も不確定ながら女の子なんだから料理の勉強したらどうだ?」
「生まれた時に確定してるわよ! 料理も上手だから勉強する必要なし! ホンット、失礼な奴ねぇ……」
「いや、でもほら、その、ええと、だな。この味を好む人物を探すのは、少しばかり骨が折れる作業かと思ったりなんかしちゃったり」
「……なによ、まずいって言うの?」
「そう、その通ぐげっ」
 本当のことを言うと殴られる。
「……ふん、いいわよいいわよ。どーせまずいわよ。……嘘でもいいから、ちょっとくらい美味しいって言いなさいよ、馬鹿」
「むしゃむしゃ、まずい」
「こんだけ言ってるんだから美味いって言え!」
「こ、怖い」
「美味いよ、うまい! 怖がってどうすんのよ!」
 うふふ、だってかなみさんったら膀胱が破裂しそうなほど怖いんですもの。(半泣き)
「ほら、一言でいいからさ。う・ま・い、って」
「ま・ず・いぃぃぃぃぃ」
 後半言葉が伸びたのは、首を絞められているからです。
「嘘でもいいから褒めろッ!」
「暴力で言葉を強制させるかなみは、とても男らしいです。それはもう惚れ惚れするくらい」
「嬉しくないっ! 料理を褒めるの、りょーり!」
「個性的と言うには、その言葉の範疇に収まりきれないこの料理はどうだ。もはや味の暴力と言っても過言ではないかと」
「うーあーうーっ!」
 両の頬を引っ張られ、かなみが声を上げるたびにどんどん頬が伸びて大変なことに。
「アンタ、馬鹿にしすぎ! 作ってもらっておいてその態度はなによっ!」
「馬鹿にしたつもりはないんだが……あと、弁当作ってくれるのは純粋に感謝してるぞ」
「じゃあちょっとくらい褒めなさいよ。『美味しい』とか『こんな弁当食べれるなんて、俺はなんて幸せ者なんだ』とか『嫁に欲しいくらいだ』とか、とか!」
 最後の台詞にちょっとばかり待ったをかけたいが、なんか自分で言ってて気づいてないようだしスルーで。
「嘘は嫌いなんです」
「ちょっとくらいいいじゃん、ばかー!」
「もぐもぐもぐ。うーん、まずい」
「ううううう……もういいわよ、馬鹿!」
 かなみは俺に背を向けてしまった。
「まぁまぁ。練習すりゃすぐ上手に……うん?」
 かなみを慰めながら口にした玉子焼きに、小さな違和感。……あれ、美味しい?
「かなみーかなみーかなかなみー」
「うるわいわね、何よッ!」
「玉子焼き、うまいぞ。いや、これだけはホントうまい」
 振り向いたかなみに、素直な言葉をぶつける。途端、かなみの顔が綻んだ。
「えっ、ホント? あははっ、それだけは頑張って練習したんだ。よかった、美味しかったんだ」
「うん、おいしい。ところで、なんでこれだけ練習……あ」
 そーいや、玉子焼きって俺の好物だよな。もしかして、それ知ってて練習を……?
「なっ、なに勘違いしてるか知んないけどね、そんなんじゃないからね!」
「じゃあ、どんなんだ?」
「うっ……うるさいっ! 黙って食べろっ!」
 顔を真っ赤にしてうつむいてるかなみを眺めながら、玉子焼きだけがやけに美味い弁当を残らず食べました。

拍手[9回]