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2025年02月02日
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【GWをもう一度味わいたいとツンデレに言ったら】
2013年05月12日
「GWと聞きましたが」
「…………」
どういうわけか、ちなみがアホの子を見る目で俺を見る。
「……まだ若いのに、もうボケたか。なむー」
「拝むな」
「……GWはとっくの昔に終わった。残念でした。……分かったら成仏しろ」
「まだ死んでない」
「……むぅ」(不満げ)
「なんでやねん。それはそうと、俺は冷凍保存されていたので連休を過ごした記憶がないので、その旨を担任教師の年齢詐称してる小学生に言ったら、特例で改めて連休をもらえないだろうか」
「…………」
珍しくちなみが目を見開いてる。可愛い。
「……時々、タカシは全力でとんでもない嘘をぶちこんでくるから侮れない」
「いや、大谷先生が小学生というのは周知の事実だと思ったが」
廊下の方から可愛らしいくしゃみが聞こえてきた気がしたが、気のせいだ。
「……それじゃなくて、冷凍保存の方」
「ああ。最近の冷凍食品はすごいね。チャーハンなんて店のと比べても遜色ないレヴェルだよね。チャハハーン」
「……そんな話はしていない」
「なんの話だっけ。サメ?」
「……タカシはすぐにサメの話をしたがる。……正直まるで興味がないくせに、どうしてサメの話をしたがるのか」
「そんなのはどうでもいい。兎に角、俺はもう一度連休を味わいたいんだ」
「……もう、一度?」
ちなみの眉が跳ね上がる。なんという失言を。
「それにしても今日もちなみは可愛いなァ。ちゅーしていい?」
「……もう一度、味わいたいと、言った?」
俺の必死の抵抗を完全に無視し、ちなみはジロリと俺を睨み上げた。
「ああ、もう一度ちなみの唇の感触を味わいたいと言った」
「……そういう気持ち悪い妄言は、また後にしろ」
「はい」
本当に嫌そうな顔をされたので、素直にうなずく。
「……もう一度味わいたい。つまり、一度連休を経験した。……それ即ち、冷凍保存が嘘であったなによりの証左……っ!」
「そりゃそうだろ、ばーか」
探偵が謎の解明編の時とかにする、ズビシと指を突きつけるアレをされたので、馬鹿にする。
「…………」
ちなみがびっくりした。目を見開いて口もポカーンと開いてる。可愛い。
「…………」
ややあって、ちなみは頬を膨らませて不満を分かりやすく表した。可愛い。
「小学生か」ナデナデ
「……背と胸で頻繁に間違われるが、タカシと同級生だ。なでるな、馬鹿」
「いや、今回に関してはそのほっぺぷくーの抗議に関して言ってるのだが」
「…………」(ほっぺぷくー)
「うぅむ。可愛い」ナデナデ
「……怒っているのだけど」ムスー
「騙されたことを?」
「……騙されてなんてない。最初から冷凍されないのは知ってた。なのに、まるで私が信じてたみたいにされたのが非常に不満だ。乗ってあげただけなのに」ムスー
「それは、ほら、俺の方が上手だったということで決着してくださいよ」ナデナデ
「……タカシ如きが私より上手など、片腹大激痛。……あと、なでるな、馬鹿」
「ちっちゃい子をなでるのが途方もなく好きなので諦めてください」
「……ちっちゃくない。他の子が異常に発育がいいだけだ。私は平均的だ」
「無理が過ぎる」
「……道理など、犬にでも食わせてしまえ」
「つるぺたの方が俺に大人気ですよ? ナタデココくらい大人気」
「…………」
非常に微妙な顔をされた。
「ナタ・デ・ココ・ブッタ・ギル。オレサマ・オマエ・マルカジリ!」
「……うるさい」
「カタカナを並べると、どうしてもマルカジリが出てきますよね」
「……いいから黙って滅べ、馬鹿野郎」
「ぎあああ」ナデナデ
「……馬鹿にされた。タカシ如きに馬鹿にされるなど、屈辱の極みだ」
「後学のために聞いておきたいのだけど、ちなみの中で俺の評価ってどのくらいのレベルなんですかね」
「……うーん。……頑張れ鉛筆、負けるな包丁研ぎ器。……の、間くらい?」
「なるほど、わからん」
「……どうでもいいレベル」
「なんと悲しい事実なのか」
「……というか」
「?」
「……連休中、ずっと一緒に遊んでたのに、どうして冷凍保存されていた、などと明らかな嘘をついたのか、理解に苦しむのだけど」
「ちなみと益体もない話をするのが、とても好きなんだ」
「…………」
「?」
「……わ、私はお断りだ。……そ、その。……ば、ばーか」
ほんのり頬を染めてそんなことを言ってくるので、頭をなでました!
「この馬鹿呼ばわりは大変心地よいですね!」ナデナデ
「……う、うるさい。……あんまりなでるな、ばか。……う、うぅー」
小さく口を尖らせ、困った顔で俺をチラチラ見てくるので、興奮しました!
「……うぅ。今日もタカシは変態だ」
しかし、俺の鼻息の荒さから興奮を読み取り、ウンザリした顔をされたので、今回の勝負は引き分けと言っていいだろう。
「…………」
どういうわけか、ちなみがアホの子を見る目で俺を見る。
「……まだ若いのに、もうボケたか。なむー」
「拝むな」
「……GWはとっくの昔に終わった。残念でした。……分かったら成仏しろ」
「まだ死んでない」
「……むぅ」(不満げ)
「なんでやねん。それはそうと、俺は冷凍保存されていたので連休を過ごした記憶がないので、その旨を担任教師の年齢詐称してる小学生に言ったら、特例で改めて連休をもらえないだろうか」
「…………」
珍しくちなみが目を見開いてる。可愛い。
「……時々、タカシは全力でとんでもない嘘をぶちこんでくるから侮れない」
「いや、大谷先生が小学生というのは周知の事実だと思ったが」
廊下の方から可愛らしいくしゃみが聞こえてきた気がしたが、気のせいだ。
「……それじゃなくて、冷凍保存の方」
「ああ。最近の冷凍食品はすごいね。チャーハンなんて店のと比べても遜色ないレヴェルだよね。チャハハーン」
「……そんな話はしていない」
「なんの話だっけ。サメ?」
「……タカシはすぐにサメの話をしたがる。……正直まるで興味がないくせに、どうしてサメの話をしたがるのか」
「そんなのはどうでもいい。兎に角、俺はもう一度連休を味わいたいんだ」
「……もう、一度?」
ちなみの眉が跳ね上がる。なんという失言を。
「それにしても今日もちなみは可愛いなァ。ちゅーしていい?」
「……もう一度、味わいたいと、言った?」
俺の必死の抵抗を完全に無視し、ちなみはジロリと俺を睨み上げた。
「ああ、もう一度ちなみの唇の感触を味わいたいと言った」
「……そういう気持ち悪い妄言は、また後にしろ」
「はい」
本当に嫌そうな顔をされたので、素直にうなずく。
「……もう一度味わいたい。つまり、一度連休を経験した。……それ即ち、冷凍保存が嘘であったなによりの証左……っ!」
「そりゃそうだろ、ばーか」
探偵が謎の解明編の時とかにする、ズビシと指を突きつけるアレをされたので、馬鹿にする。
「…………」
ちなみがびっくりした。目を見開いて口もポカーンと開いてる。可愛い。
「…………」
ややあって、ちなみは頬を膨らませて不満を分かりやすく表した。可愛い。
「小学生か」ナデナデ
「……背と胸で頻繁に間違われるが、タカシと同級生だ。なでるな、馬鹿」
「いや、今回に関してはそのほっぺぷくーの抗議に関して言ってるのだが」
「…………」(ほっぺぷくー)
「うぅむ。可愛い」ナデナデ
「……怒っているのだけど」ムスー
「騙されたことを?」
「……騙されてなんてない。最初から冷凍されないのは知ってた。なのに、まるで私が信じてたみたいにされたのが非常に不満だ。乗ってあげただけなのに」ムスー
「それは、ほら、俺の方が上手だったということで決着してくださいよ」ナデナデ
「……タカシ如きが私より上手など、片腹大激痛。……あと、なでるな、馬鹿」
「ちっちゃい子をなでるのが途方もなく好きなので諦めてください」
「……ちっちゃくない。他の子が異常に発育がいいだけだ。私は平均的だ」
「無理が過ぎる」
「……道理など、犬にでも食わせてしまえ」
「つるぺたの方が俺に大人気ですよ? ナタデココくらい大人気」
「…………」
非常に微妙な顔をされた。
「ナタ・デ・ココ・ブッタ・ギル。オレサマ・オマエ・マルカジリ!」
「……うるさい」
「カタカナを並べると、どうしてもマルカジリが出てきますよね」
「……いいから黙って滅べ、馬鹿野郎」
「ぎあああ」ナデナデ
「……馬鹿にされた。タカシ如きに馬鹿にされるなど、屈辱の極みだ」
「後学のために聞いておきたいのだけど、ちなみの中で俺の評価ってどのくらいのレベルなんですかね」
「……うーん。……頑張れ鉛筆、負けるな包丁研ぎ器。……の、間くらい?」
「なるほど、わからん」
「……どうでもいいレベル」
「なんと悲しい事実なのか」
「……というか」
「?」
「……連休中、ずっと一緒に遊んでたのに、どうして冷凍保存されていた、などと明らかな嘘をついたのか、理解に苦しむのだけど」
「ちなみと益体もない話をするのが、とても好きなんだ」
「…………」
「?」
「……わ、私はお断りだ。……そ、その。……ば、ばーか」
ほんのり頬を染めてそんなことを言ってくるので、頭をなでました!
「この馬鹿呼ばわりは大変心地よいですね!」ナデナデ
「……う、うるさい。……あんまりなでるな、ばか。……う、うぅー」
小さく口を尖らせ、困った顔で俺をチラチラ見てくるので、興奮しました!
「……うぅ。今日もタカシは変態だ」
しかし、俺の鼻息の荒さから興奮を読み取り、ウンザリした顔をされたので、今回の勝負は引き分けと言っていいだろう。
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【放課後になってもツンデレが寝てたら】
2013年05月02日
「zzz……」
授業が終わりほっとしてると、隣からzが聞こえてきた。見ると、アフリカっぽい所からの留学生であるナコが机の上に頭を載せ、すやンすやンと眠っているではないか。
「ンー……バナナン……おいひい……」
口元をもぐもぐさせて、夢の中でバナナンとやらを食している模様。チャムチャムか。
一瞬『ほーら俺様のバナナンを喰らいな』と悪い俺が鎌首をもたげそうになったが、よく考えたら教室で陰部を露出させたら捕まるので、やめた。というかえっちなのはいけないと思います!
さてどうするか。幸か不幸か今日の授業はこれにて閉幕なので先生に怒られる心配はないが、このまま放って帰り、翌日登校してもまだここで寝てられたら、『このままでは寝る子は育ち、この貧乳が巨乳になってしまうやも!』という危惧のあまり、心労がたたって俺が死んでしまうかもしれない。
……くだらないことを考えてないで、とっとと起こそう。ゆっさりゆさゆさ揺すぶってナコを起こす。
「おーい、ナコ。起きろ。授業終わったぞー。いわゆるところの放課後だぞー」
「ン、ン……。ナコ、こーこーせーだゾ……」
「んなこたぁ聞いてない。ほれ、起きれ」
「ンぅ……?」
薄っすらとナコの目が開く。しぱしぱと瞬き、視線が左右に揺れ、最後にゆっくりと俺を捉えた。
「うぃす。おはよ、ナコ」
「ン……ンー」
ナコは目をこしこし擦ると、胡乱な様子で俺に突然抱きついた。……え?
「え、えええええええええと、な、ナコさん?」
「ンー」
「い、いや、んーではなくてですね、え?」
「ンぅ?」
不思議そうな顔で小首をくりって傾けるとか。……というか、あれ、ひょっとしてまだ半分くらい寝てる?
よし、それならとっとと起こしてこの素敵空間からの脱出を図らねば! いや本当はそんなことしたくなくて一生抱きつかれていたい所存ですが、周囲の女生徒があからさまに俺を見ながらヒソヒソしてるので、どうにも今後の学生生活に不都合を感じまして!
「あー、ええとだな、ナコ。これは夢でもなんでもなくて、ただの現実で」
「ぺろぺろ」
「…………」
「にゃー。おいひい」
「…………。なんだ夢か」
「ぺろぺろぺろ」
夢の割にやけに質感がリアルだ。まるで現実のように、温かな舌が俺の顔を舐めているように感じる。
「──よし。現実逃避終わり。ナコ、いい加減目を覚ま」
「ンー」ギュー
「抱っことか!」ムギュー
「ンにゃー」スリスリ
…………。いやいや、いやいやいや。何をしているのだ、俺は。そうではない、そうではないだろう。落ち着いて周囲を見渡してみろ、こちらにスマホを向けて何やら撮影している群れが見えないのか!
「ていうか撮らないで! 記録に残さないで! どうか記憶だけに留めておいてくださいお願いします!」
「うー……。うるしゃー!」ペシペシ
「ぶべらはべら」
「うー。ゆッくり寝てらンないゾ。……ン?」
「おはやう、ナコ」
「お、おはよー。……う?」
「どしました?」
「……ふ、ふにゃあああああッ!!?」
「わぁ」
突然大きな声を出されてびっくりしてたら、ナコは俺を蹴飛ばし、その勢いを使って大きくジャンプし、空中でくるりと回転した後、教室の後ろにあるロッカーの上に飛び乗った。
「な、な、な、なンでナコに抱きついてンだ、オマエ!?」
「ああ悪いが少し待ってくれ。ナコに蹴られて昏倒して倒れ伏しているという大義名分を得、存分に床からの白や青やピンクの布の眺めを堪能している最中なので」
教室に黄色い声が立ち込める。
「ふふふ。ふふふふ」ニヤニヤ
「踏んじゃえ!」ゲシゲシ
「ぶべらはべら」
いい気になってにやけてたら、たくさんの足が俺を踏んだので辛い。俺にM属性があったら、と思うと悔やんでも悔やみきれない。
「ただ、踏まれてる最中も刮目していたので、様々な動きを見せるパンツは俺の脳内HDDに保存済みですので、皆様ご注意を!」
さんざ俺を踏んでいた足の持ち主たちは、キャーキャー言いながら教室を出て行った。
「窮地を機知に富んだジョークで華麗に回避した俺をどう思うか」
「ただの変態だゾ!」
「ああ、そういえばそうだね。我ながら最低だね。ところでナコ、いつまでロッカーの上にいるのだ」
「う……」
「そしていつまで顔を赤くしているのだ」
「み、見るなぁ!」フカーッ
「おや、猫の威嚇ポーズとは。ははーん、さては俺を誘っているな?」ワキワキ
「違う! 怒ッてるの! く、来るなあ!」フカーッ
「ふふふ。ふふふふ」ニマニマ
「にゃああーッ!?」
「三角飛びからの飛び蹴りが来るとは予想だにしなかったよ」プシュー
「うー。ナコは悪くないゾ。うー」
矢のような飛び蹴りを喰らい、床に倒れ伏す。一日に二度も教室の床に口付けするとか、俺の人生を設計した奴出てこい。
「優れた身体能力を保持しているのは分かるが、そうみだりに使うものではない。喰らったのが俺だからいいものの、普通の奴だと一週間は飯を食えないぞ」
「うるさい!」
「まあいいや。あいたた……」
「うー。……痛い?」
「内臓が破裂したか真剣に痛みを探る程度には痛いね。ただ、まあ、回復力に優れた俺なので、しばらくすれば治るだろうから、過剰な心配は不要です」
「だ、誰も心配なンてしてないゾ!」
「なんだそうか。残念」
「……うー」ツンツン
「つつかないで」
ナコは俺の隣にしゃがみ込み、つんつく俺をつついた。
「うー。早く治れ」ツンツン
「じき治りますが、そうもツンツンされると治癒も遅れます」
「むー」
「治った!」ジャーン
「遅い」ムスー
言われた通り既に日は暮れかけており、教室に残るは俺とナコのみ。
「別に待っててくれなくてもよかったのに」ナデナデ
「ま、待ッてたワケじゃないゾ! 苦しむオマエを間近で見てただけだかンな! あと、なでんな!」フカーッ
「嫌です」ナデナデ
「うぅー」
「さて、帰るか」ポムポム
「ナコの頭をポンポンするな!」
「嫌です」ポムポム
「全部断られるぅ……」ションボリ
ションボリしてるナコと一緒に学校を出る。
「いやはや、すっかり遅くなってしまったな」
「全部オマエのせいだ。早く治ンないから」ジトーッ
「そうは言うがな、ナコ。そもそも論で言うなら、お前が授業中に寝なきゃ今日の騒動は起きなかったのではないか?」
「眠いもン」ドキッパリ
「なんという潔い猫魂。素晴らしいね」ナデナデ
「猫じゃない! なでんな!」フカーッ
「いいえいいえ」
「だぶるー……」ションボリ
「とはいえ、寝てもらったおかげで色々と美味しい思いも出来たので、俺としては万々歳ですがね」
「うー。エロ魔人め。みンなのスカート覗きまくッてたもンな。エロ魔人め」ペシペシ
「ふべべ。まあ、それもありますが、どちらかと言えばナコに抱きつかれてぺろぺろされた方が比重は大きいですかねウヘヘヘヘ」
「…………」
「お?」
「……~~~っ」
黙って赤くなられては、その、お兄さんも困ります。
「いや、あの、その」
「……ね、寝ボケてたから! 夢と思ッてたから! ほ、ホントは、オマエなンか嫌いだからな!?」
「そ、そうなんですか」
「……ち、ちょッとだけ嘘だけど。で、でも嫌いだからな!? オマエすぐナコをからかうし! なでるし! 猫扱いするし!」
「お手」
「犬扱いすればいーッて話じゃないッ!」
「難しいね」ナデナデ
「あーッ! ほら、またなでた! もーッ!」
「わはは」ナデナデ
「うー」
不満げな顔をしながらも、振り払うこともなくそのまま俺になでられてるナコだった。
授業が終わりほっとしてると、隣からzが聞こえてきた。見ると、アフリカっぽい所からの留学生であるナコが机の上に頭を載せ、すやンすやンと眠っているではないか。
「ンー……バナナン……おいひい……」
口元をもぐもぐさせて、夢の中でバナナンとやらを食している模様。チャムチャムか。
一瞬『ほーら俺様のバナナンを喰らいな』と悪い俺が鎌首をもたげそうになったが、よく考えたら教室で陰部を露出させたら捕まるので、やめた。というかえっちなのはいけないと思います!
さてどうするか。幸か不幸か今日の授業はこれにて閉幕なので先生に怒られる心配はないが、このまま放って帰り、翌日登校してもまだここで寝てられたら、『このままでは寝る子は育ち、この貧乳が巨乳になってしまうやも!』という危惧のあまり、心労がたたって俺が死んでしまうかもしれない。
……くだらないことを考えてないで、とっとと起こそう。ゆっさりゆさゆさ揺すぶってナコを起こす。
「おーい、ナコ。起きろ。授業終わったぞー。いわゆるところの放課後だぞー」
「ン、ン……。ナコ、こーこーせーだゾ……」
「んなこたぁ聞いてない。ほれ、起きれ」
「ンぅ……?」
薄っすらとナコの目が開く。しぱしぱと瞬き、視線が左右に揺れ、最後にゆっくりと俺を捉えた。
「うぃす。おはよ、ナコ」
「ン……ンー」
ナコは目をこしこし擦ると、胡乱な様子で俺に突然抱きついた。……え?
「え、えええええええええと、な、ナコさん?」
「ンー」
「い、いや、んーではなくてですね、え?」
「ンぅ?」
不思議そうな顔で小首をくりって傾けるとか。……というか、あれ、ひょっとしてまだ半分くらい寝てる?
よし、それならとっとと起こしてこの素敵空間からの脱出を図らねば! いや本当はそんなことしたくなくて一生抱きつかれていたい所存ですが、周囲の女生徒があからさまに俺を見ながらヒソヒソしてるので、どうにも今後の学生生活に不都合を感じまして!
「あー、ええとだな、ナコ。これは夢でもなんでもなくて、ただの現実で」
「ぺろぺろ」
「…………」
「にゃー。おいひい」
「…………。なんだ夢か」
「ぺろぺろぺろ」
夢の割にやけに質感がリアルだ。まるで現実のように、温かな舌が俺の顔を舐めているように感じる。
「──よし。現実逃避終わり。ナコ、いい加減目を覚ま」
「ンー」ギュー
「抱っことか!」ムギュー
「ンにゃー」スリスリ
…………。いやいや、いやいやいや。何をしているのだ、俺は。そうではない、そうではないだろう。落ち着いて周囲を見渡してみろ、こちらにスマホを向けて何やら撮影している群れが見えないのか!
「ていうか撮らないで! 記録に残さないで! どうか記憶だけに留めておいてくださいお願いします!」
「うー……。うるしゃー!」ペシペシ
「ぶべらはべら」
「うー。ゆッくり寝てらンないゾ。……ン?」
「おはやう、ナコ」
「お、おはよー。……う?」
「どしました?」
「……ふ、ふにゃあああああッ!!?」
「わぁ」
突然大きな声を出されてびっくりしてたら、ナコは俺を蹴飛ばし、その勢いを使って大きくジャンプし、空中でくるりと回転した後、教室の後ろにあるロッカーの上に飛び乗った。
「な、な、な、なンでナコに抱きついてンだ、オマエ!?」
「ああ悪いが少し待ってくれ。ナコに蹴られて昏倒して倒れ伏しているという大義名分を得、存分に床からの白や青やピンクの布の眺めを堪能している最中なので」
教室に黄色い声が立ち込める。
「ふふふ。ふふふふ」ニヤニヤ
「踏んじゃえ!」ゲシゲシ
「ぶべらはべら」
いい気になってにやけてたら、たくさんの足が俺を踏んだので辛い。俺にM属性があったら、と思うと悔やんでも悔やみきれない。
「ただ、踏まれてる最中も刮目していたので、様々な動きを見せるパンツは俺の脳内HDDに保存済みですので、皆様ご注意を!」
さんざ俺を踏んでいた足の持ち主たちは、キャーキャー言いながら教室を出て行った。
「窮地を機知に富んだジョークで華麗に回避した俺をどう思うか」
「ただの変態だゾ!」
「ああ、そういえばそうだね。我ながら最低だね。ところでナコ、いつまでロッカーの上にいるのだ」
「う……」
「そしていつまで顔を赤くしているのだ」
「み、見るなぁ!」フカーッ
「おや、猫の威嚇ポーズとは。ははーん、さては俺を誘っているな?」ワキワキ
「違う! 怒ッてるの! く、来るなあ!」フカーッ
「ふふふ。ふふふふ」ニマニマ
「にゃああーッ!?」
「三角飛びからの飛び蹴りが来るとは予想だにしなかったよ」プシュー
「うー。ナコは悪くないゾ。うー」
矢のような飛び蹴りを喰らい、床に倒れ伏す。一日に二度も教室の床に口付けするとか、俺の人生を設計した奴出てこい。
「優れた身体能力を保持しているのは分かるが、そうみだりに使うものではない。喰らったのが俺だからいいものの、普通の奴だと一週間は飯を食えないぞ」
「うるさい!」
「まあいいや。あいたた……」
「うー。……痛い?」
「内臓が破裂したか真剣に痛みを探る程度には痛いね。ただ、まあ、回復力に優れた俺なので、しばらくすれば治るだろうから、過剰な心配は不要です」
「だ、誰も心配なンてしてないゾ!」
「なんだそうか。残念」
「……うー」ツンツン
「つつかないで」
ナコは俺の隣にしゃがみ込み、つんつく俺をつついた。
「うー。早く治れ」ツンツン
「じき治りますが、そうもツンツンされると治癒も遅れます」
「むー」
「治った!」ジャーン
「遅い」ムスー
言われた通り既に日は暮れかけており、教室に残るは俺とナコのみ。
「別に待っててくれなくてもよかったのに」ナデナデ
「ま、待ッてたワケじゃないゾ! 苦しむオマエを間近で見てただけだかンな! あと、なでんな!」フカーッ
「嫌です」ナデナデ
「うぅー」
「さて、帰るか」ポムポム
「ナコの頭をポンポンするな!」
「嫌です」ポムポム
「全部断られるぅ……」ションボリ
ションボリしてるナコと一緒に学校を出る。
「いやはや、すっかり遅くなってしまったな」
「全部オマエのせいだ。早く治ンないから」ジトーッ
「そうは言うがな、ナコ。そもそも論で言うなら、お前が授業中に寝なきゃ今日の騒動は起きなかったのではないか?」
「眠いもン」ドキッパリ
「なんという潔い猫魂。素晴らしいね」ナデナデ
「猫じゃない! なでんな!」フカーッ
「いいえいいえ」
「だぶるー……」ションボリ
「とはいえ、寝てもらったおかげで色々と美味しい思いも出来たので、俺としては万々歳ですがね」
「うー。エロ魔人め。みンなのスカート覗きまくッてたもンな。エロ魔人め」ペシペシ
「ふべべ。まあ、それもありますが、どちらかと言えばナコに抱きつかれてぺろぺろされた方が比重は大きいですかねウヘヘヘヘ」
「…………」
「お?」
「……~~~っ」
黙って赤くなられては、その、お兄さんも困ります。
「いや、あの、その」
「……ね、寝ボケてたから! 夢と思ッてたから! ほ、ホントは、オマエなンか嫌いだからな!?」
「そ、そうなんですか」
「……ち、ちょッとだけ嘘だけど。で、でも嫌いだからな!? オマエすぐナコをからかうし! なでるし! 猫扱いするし!」
「お手」
「犬扱いすればいーッて話じゃないッ!」
「難しいね」ナデナデ
「あーッ! ほら、またなでた! もーッ!」
「わはは」ナデナデ
「うー」
不満げな顔をしながらも、振り払うこともなくそのまま俺になでられてるナコだった。
【男が自分で料理を作っているという話に、そんなのマズいに決まってると言って譲らないツンデレ】
2013年04月11日
最近は親が忙しいのか、夕食時に一人ということが結構あり、そのため一人で適当に飯を作って食ったりしている。
「聞いたよ!」
そんなある日、教室へやってくるなりボクっ娘が突然詰め寄ってきたのでびっくりした。
「いや、そんなことはない」
とりあえずそれを否定して教室の中に入ろうとしたら前を遮られた。
「勝手に嘘にするなっ! そじゃなくて、そじゃなくて! 最近料理作ってるらしーじゃんか」
「ああ、はい。男の料理をつくる俺はかっこいいだろう。なので股を開け」
「朝から今日も下品っ!」
「すいません」
ぺけぺけ叩かれたので、素直に頭を下げる。
「もー……。とりあえず席にいこ?」
「ああ、はい」
入り口でドタバタしても他の人の邪魔になるので、そそくさと移動して席に着席。
「そこボクの席だよっ!」
「ああ本当だ。言われてみれば席がおしっこで濡れててびしょびしょだもんな」
「勝手に人をおもらしにするなっ!」ポカポカ
「わはは」
軽いボケで満足したので、今度こそ自分の席に着席。
「で、なんだっけ。俺の家政婦になるって話だっけ」
「そんな話は存在しないよっ! ボクじゃなくて、タカシの話だよっ!」
「俺に家政婦になれと言うのか」
「た、タカシが執事に……?」
「いや、執事でなく家政婦」
「し、執事……タカシが、執事……」
何やらボクっ娘がアヘ顔ダブルピースで夢見心地になってるので、怖いと思いました。
「……はっ! ぶるぶるぶる。そ、そうじゃないよ!」
「アヘ顔ダブルピースはもういいのですか」
「そんなのしてないよっ! ちょこっとだけぼーっとしてただけだよっ!」
「『ちんぽには勝てなかったよ…』とか言え」
「今日もえっちえっちえっち!」ポカスカ
「わはは」
「うぅー……。あのさ、そじゃなくてさ。料理、作ってるんだよね?」
「ああ、はい。食いたいのか?」
「いいのっ!?」キラキラ
「ものすごい食いつき方だな。そんなに食うに困ってるなら、今日から毎日俺の家に来い。大したものはないが、少なくとも飢えることはないぞ」ナデナデ
「あ、あぅ……ち、違うよ。別にそんなんじゃないよ。……うー、時々優しいから困るよ」
「ただ、お前が食材になる可能性があるので、それだけ気をつけてください」
「と思ったら悪魔だった!」
この娘はリアクションが素晴らしいので話してて飽きないなあ。
「で、いつ来るんだ?」
「ふぇ?」
「や、飯食いに来るんだろ。いつがいい? 今日か? 明日か?」
「わっ、わわっ、話がなんだか進んでる! そ、そじゃないよ!」
「んぅ?」
「え、えと……こほん。えーと、タカシなんかが作る料理なんて、へたっぴに決まってるよ」
「ボクっ娘が突然棒読みに過ぎる声で語り出した」
「ぼ、棒読みなんかじゃないよっ! あと、ボクっ娘ってゆーなっ!」
「はいはい。んで、俺の料理が下手だとしたら、どうなのだ?」
「あ、えっと……ま、まずいだろーけど、タカシは上手と言ってはばからないから、ボクが実際に食べて評価してあげるよ!」
「や、別に自分で上手なんて言ってはいないのだが」
「あ……」
「自分が食うだけだから、適当に作ってるのでお世辞にも美味いとは言い難いし。や、まずくはないとは思うのだけどね」
「う、うぅー!」ポカスカ
「なんか突然殴りかかって来た。とてもびっくりしたが、梓はヘナチョコで力がないのが幸いして、俺へのダメージは0だ!」
「へなちょこじゃない! あと、なんで普段は無駄にえらそーなのに、自分の料理の評価だけまともなんだよっ!」
「無駄に偉そうとか言うない。偉いんだよ、俺様は」
「ほら! そーゆー感じを自分の料理にも出せよなっ!」
「む。では、俺の料理も偉い」
「そーじゃなくてっ! 料理が上手って感じのほう!」
「いやいや、そんなそんな」テレテレ
「謙遜じゃなくて、これは確実に意地悪でやってるよっ!」
「見事な慧眼です」ナデナデ
「け、けーがん?」
「あー……観察力が高い、って感じかな」
「あ、そ、そなんだ。……し、知ってたけど!」
「…………」ナデナデ
「優しい目でなでんなっ!」
「わはは。で? どうする、食いに来るか?」
「え? ……い、いーの?」
「なんか食べたいみたいだからな。それに、一人で飯食うのも正直寂しかったし、お前が来てくれると嬉しい」
「…………」
「どしました」
「……タカシってさ、そーゆーコト、ふつーに言うよね」
「なんだ、そーゆーコトって」
「いーケドさ。……でも、そーゆーコトを誰にでも言うのは、しょーじきどーかと思うケドね、ボクは」
「だから、なんだ。そーゆーコトって」
「……うー」グニー
「人の頬を引っ張るない」
「……はぁっ。まあいいよ。んじゃ、寂しがり屋さんのタカシのために、明日行ってあげるよ♪」
「そか、分かった。じゃあゴム買っておく」
「そーゆーことはやんないっ!」
「学生の内は避妊した方が良いと思うのだけど」
「やんないって言ってるだろっ!」
赤い顔でぺこぽこ叩いてくる梓は可愛いなあと思った。
「聞いたよ!」
そんなある日、教室へやってくるなりボクっ娘が突然詰め寄ってきたのでびっくりした。
「いや、そんなことはない」
とりあえずそれを否定して教室の中に入ろうとしたら前を遮られた。
「勝手に嘘にするなっ! そじゃなくて、そじゃなくて! 最近料理作ってるらしーじゃんか」
「ああ、はい。男の料理をつくる俺はかっこいいだろう。なので股を開け」
「朝から今日も下品っ!」
「すいません」
ぺけぺけ叩かれたので、素直に頭を下げる。
「もー……。とりあえず席にいこ?」
「ああ、はい」
入り口でドタバタしても他の人の邪魔になるので、そそくさと移動して席に着席。
「そこボクの席だよっ!」
「ああ本当だ。言われてみれば席がおしっこで濡れててびしょびしょだもんな」
「勝手に人をおもらしにするなっ!」ポカポカ
「わはは」
軽いボケで満足したので、今度こそ自分の席に着席。
「で、なんだっけ。俺の家政婦になるって話だっけ」
「そんな話は存在しないよっ! ボクじゃなくて、タカシの話だよっ!」
「俺に家政婦になれと言うのか」
「た、タカシが執事に……?」
「いや、執事でなく家政婦」
「し、執事……タカシが、執事……」
何やらボクっ娘がアヘ顔ダブルピースで夢見心地になってるので、怖いと思いました。
「……はっ! ぶるぶるぶる。そ、そうじゃないよ!」
「アヘ顔ダブルピースはもういいのですか」
「そんなのしてないよっ! ちょこっとだけぼーっとしてただけだよっ!」
「『ちんぽには勝てなかったよ…』とか言え」
「今日もえっちえっちえっち!」ポカスカ
「わはは」
「うぅー……。あのさ、そじゃなくてさ。料理、作ってるんだよね?」
「ああ、はい。食いたいのか?」
「いいのっ!?」キラキラ
「ものすごい食いつき方だな。そんなに食うに困ってるなら、今日から毎日俺の家に来い。大したものはないが、少なくとも飢えることはないぞ」ナデナデ
「あ、あぅ……ち、違うよ。別にそんなんじゃないよ。……うー、時々優しいから困るよ」
「ただ、お前が食材になる可能性があるので、それだけ気をつけてください」
「と思ったら悪魔だった!」
この娘はリアクションが素晴らしいので話してて飽きないなあ。
「で、いつ来るんだ?」
「ふぇ?」
「や、飯食いに来るんだろ。いつがいい? 今日か? 明日か?」
「わっ、わわっ、話がなんだか進んでる! そ、そじゃないよ!」
「んぅ?」
「え、えと……こほん。えーと、タカシなんかが作る料理なんて、へたっぴに決まってるよ」
「ボクっ娘が突然棒読みに過ぎる声で語り出した」
「ぼ、棒読みなんかじゃないよっ! あと、ボクっ娘ってゆーなっ!」
「はいはい。んで、俺の料理が下手だとしたら、どうなのだ?」
「あ、えっと……ま、まずいだろーけど、タカシは上手と言ってはばからないから、ボクが実際に食べて評価してあげるよ!」
「や、別に自分で上手なんて言ってはいないのだが」
「あ……」
「自分が食うだけだから、適当に作ってるのでお世辞にも美味いとは言い難いし。や、まずくはないとは思うのだけどね」
「う、うぅー!」ポカスカ
「なんか突然殴りかかって来た。とてもびっくりしたが、梓はヘナチョコで力がないのが幸いして、俺へのダメージは0だ!」
「へなちょこじゃない! あと、なんで普段は無駄にえらそーなのに、自分の料理の評価だけまともなんだよっ!」
「無駄に偉そうとか言うない。偉いんだよ、俺様は」
「ほら! そーゆー感じを自分の料理にも出せよなっ!」
「む。では、俺の料理も偉い」
「そーじゃなくてっ! 料理が上手って感じのほう!」
「いやいや、そんなそんな」テレテレ
「謙遜じゃなくて、これは確実に意地悪でやってるよっ!」
「見事な慧眼です」ナデナデ
「け、けーがん?」
「あー……観察力が高い、って感じかな」
「あ、そ、そなんだ。……し、知ってたけど!」
「…………」ナデナデ
「優しい目でなでんなっ!」
「わはは。で? どうする、食いに来るか?」
「え? ……い、いーの?」
「なんか食べたいみたいだからな。それに、一人で飯食うのも正直寂しかったし、お前が来てくれると嬉しい」
「…………」
「どしました」
「……タカシってさ、そーゆーコト、ふつーに言うよね」
「なんだ、そーゆーコトって」
「いーケドさ。……でも、そーゆーコトを誰にでも言うのは、しょーじきどーかと思うケドね、ボクは」
「だから、なんだ。そーゆーコトって」
「……うー」グニー
「人の頬を引っ張るない」
「……はぁっ。まあいいよ。んじゃ、寂しがり屋さんのタカシのために、明日行ってあげるよ♪」
「そか、分かった。じゃあゴム買っておく」
「そーゆーことはやんないっ!」
「学生の内は避妊した方が良いと思うのだけど」
「やんないって言ってるだろっ!」
赤い顔でぺこぽこ叩いてくる梓は可愛いなあと思った。
【ハナ エイプリルフール】
2013年04月07日
「エイプリルフールという話だが」
「はや」
4月1日、恋人であるところのハナを呼び出した俺は、唐突にそう切り出した。
「なので、騙しますね」
「困ります」
「む。困られては困りますね」
「はや。じゃ、いいです。騙してください、彰人くん」
「なんという心がけ、素晴らしきは善人思想! 将来は天国行き確定ですね!」
「嬉しいです!」ピョンピョン
「そして俺は悪人なので地獄行きが確定しており、悲しい」
「そんなこと言っちゃダメです! 彰人くんはいい人なので、彰人くんも天国行き確定なのです!」
「ヤッタネ! じゃあ今すぐ殺してください」
「嫌です」
「なんてワガママな」
「今日も彰人くんは無茶苦茶です」
「はい。さて、ではエイプリル嘘、いくぞ!」シュバッ
折角なのでかっこいいポーズを決めてみる。残念ながら一人称視点を変更できないので確認できないが、かっこいいに違いない。
「はや……今日も彰人くんのタコのうねうねポーズは素敵です」
素敵と評されたのは嬉しいが、タコのうねうねポーズと評されてしまった俺のかっこいいポーズが可哀想だ。
「まあいいや。えーと、実は俺はハナが嫌いなんだ」
「…………。た、耐えました。先に嘘って聞いてたから耐えられました。偉いですか?」
「…………」
「あ、彰人くん?」クイクイ
「…………」
「あ、あの、彰人くん? 嘘ですよね? 見破りましたよ? あの、あの?」クイクイ
「…………」プイッ
「あ……。あ、あの、ご、ごめんなさい。毎日いっしょだと、さすがに、つ、疲れちゃいますよね? き、今日は帰りますので、また、もしよかったら、メールでいいから、連絡……してくれると、嬉しいです……」
「……はぁ」
「ふぐっ……あ、あの。……そ、それじゃあ、また新学期に」ポロポロ
「うーそー! 嘘だよー! やーい騙されてやんのばーかばーかばーか!」ムギュー
「もっ……もー! もー! もーもーもー!」ムギュギュー
「嘘をつくとあらかじめ言ったのに、どうして泣きますかね」
「あの態度は酷いです! 私だけでなく、古今東西どんな女の子でも泣いちゃいます!」ポロポロ
「ああはいはい。ごめんな。ごめんな」ナデナデ
「ううー。うううー。ううー!」スリスリ
「では、泣かせたお詫びとして、何かひとつだけ願いを叶えてあげましょう」
「……ホントですか?」
「いや、嘘」
「…………」
「エイプリルフール!」ジャーン
「うううううー!」ポカポカ
「わはは。ハナは愉快だなあ」
「ぐすぐす。今日も彰人くんは冴え渡ってて素敵ですが、少しだけ小憎らしいです」
「小僧という言葉に似てるから、しょうがないね」
「そして今日も思考が謎で素敵です」
それは別に素敵ではないと思う。
「冗談はともかく、お詫びに何か願い事を聞くが、何かあるか?」
「本当ですか? またエイプリルフールですか? ジャーンって口で言うのですか?」
「いや、これは本当。エイプリルフールは関係ない。ジャーンは恥ずかしいから言わないで」
「くすくす。それじゃ、ですね……?」
「あの、ハナさんや」
「なんですか、彰人くん?」
「その、散歩なんてわざわざお願いしなくても、言えばいつでも行くのだけど……」
ハナと手をつなぎ、一緒に近所をぷらぷらと歩いているだけなので、これだけではどうにも申し訳ない。
「いいのです。この季節に、一緒に歩きたかったんです。これは、お願いごとのランキングの中でもかなり上位のことです。地球のドラゴンボールでは叶えられないレベルです。ポルンガならいけます」
「しかし、地球のシェンロンは多数の人間を同時に生き返せられるから、一概にどちらのレベルが高いか言えないぞ?」
「はや……その通りです! 今日も彰人くんの頭脳は冴え渡ってるので大好きです」
「では、冴え渡らなくなると大嫌いになるのか。鍛えないとなあ」
「? 大好きですよ?」
不思議そうな顔で俺の手をきゅっと握るハナ。
「つまり、特に理由もなく好きなのか」
「いいえ」
ハナは小さく頭をふって、俺を見つめた。
「彰人くんだから、好きなんですよ?」
「ぐ……」
ストライク出ました。直球です。久々に大当たりです。ええい。ええい!
「……え、えへへー。照れましたか?」
「ああ。照れたね。ハナと同等程度には」
「わ、私は照れてませんよ!? ええ、ええ!」
「じゃあその顔が真っ赤な理由を述べよ。配点:20点」
「はや、高配点です! し、しかし、理由は不明であり以後ずっと不明なので20点は諦めます!」
「残念……ん?」
行く先に、ちらちらと舞い降る何か。桜だ。そうか、春なんだ。
「綺麗……」
舞い散る桜の中で、空を見上げるハナ。その姿に、思わず息を呑む。情景が完全に一枚の絵画だ。この景色を壊したくない。息すら忘れ、ハナを見つめる。
「……ん? 彰人くん、何してるんですか?」
呼吸を止めていることをジェスチャーで伝えてみる。
「なんでなのですかっ!?」
完全に俺のジェスチャーを読み取ったハナが、無理やり俺の口をこじ開けた。
「ぷはあっ。何をする」
「それはこっちのセリフですっ! なんでいきなり死にかけてるんですかっ!?」
「世界は驚きに満ち満ちているね」
「彰人くんといると、本当にそう思います……」
ぐったりしたかと思うと、ハナは楽しそうにクスクスと笑った。
「ふふっ。……本当に、そう思います。驚きと、幸福に満ち満ちています」
「おや、奇遇ですね。偶然にも、俺もそう感じてますよ」
ハナは一瞬目を見開くと、顔いっぱいの笑顔を見せた。
「えへへっ。素敵な、素敵な時間ですっ♪」
「でっかい幸せです」
「隙あらばアニメをぶち込んできますが、この程度で私の幸福はぐらつきもしませんよ?」
「なんという牙城か……!」
それからしばらく近所をぶらついた後、ハナと一緒に帰りました。
「はや」
4月1日、恋人であるところのハナを呼び出した俺は、唐突にそう切り出した。
「なので、騙しますね」
「困ります」
「む。困られては困りますね」
「はや。じゃ、いいです。騙してください、彰人くん」
「なんという心がけ、素晴らしきは善人思想! 将来は天国行き確定ですね!」
「嬉しいです!」ピョンピョン
「そして俺は悪人なので地獄行きが確定しており、悲しい」
「そんなこと言っちゃダメです! 彰人くんはいい人なので、彰人くんも天国行き確定なのです!」
「ヤッタネ! じゃあ今すぐ殺してください」
「嫌です」
「なんてワガママな」
「今日も彰人くんは無茶苦茶です」
「はい。さて、ではエイプリル嘘、いくぞ!」シュバッ
折角なのでかっこいいポーズを決めてみる。残念ながら一人称視点を変更できないので確認できないが、かっこいいに違いない。
「はや……今日も彰人くんのタコのうねうねポーズは素敵です」
素敵と評されたのは嬉しいが、タコのうねうねポーズと評されてしまった俺のかっこいいポーズが可哀想だ。
「まあいいや。えーと、実は俺はハナが嫌いなんだ」
「…………。た、耐えました。先に嘘って聞いてたから耐えられました。偉いですか?」
「…………」
「あ、彰人くん?」クイクイ
「…………」
「あ、あの、彰人くん? 嘘ですよね? 見破りましたよ? あの、あの?」クイクイ
「…………」プイッ
「あ……。あ、あの、ご、ごめんなさい。毎日いっしょだと、さすがに、つ、疲れちゃいますよね? き、今日は帰りますので、また、もしよかったら、メールでいいから、連絡……してくれると、嬉しいです……」
「……はぁ」
「ふぐっ……あ、あの。……そ、それじゃあ、また新学期に」ポロポロ
「うーそー! 嘘だよー! やーい騙されてやんのばーかばーかばーか!」ムギュー
「もっ……もー! もー! もーもーもー!」ムギュギュー
「嘘をつくとあらかじめ言ったのに、どうして泣きますかね」
「あの態度は酷いです! 私だけでなく、古今東西どんな女の子でも泣いちゃいます!」ポロポロ
「ああはいはい。ごめんな。ごめんな」ナデナデ
「ううー。うううー。ううー!」スリスリ
「では、泣かせたお詫びとして、何かひとつだけ願いを叶えてあげましょう」
「……ホントですか?」
「いや、嘘」
「…………」
「エイプリルフール!」ジャーン
「うううううー!」ポカポカ
「わはは。ハナは愉快だなあ」
「ぐすぐす。今日も彰人くんは冴え渡ってて素敵ですが、少しだけ小憎らしいです」
「小僧という言葉に似てるから、しょうがないね」
「そして今日も思考が謎で素敵です」
それは別に素敵ではないと思う。
「冗談はともかく、お詫びに何か願い事を聞くが、何かあるか?」
「本当ですか? またエイプリルフールですか? ジャーンって口で言うのですか?」
「いや、これは本当。エイプリルフールは関係ない。ジャーンは恥ずかしいから言わないで」
「くすくす。それじゃ、ですね……?」
「あの、ハナさんや」
「なんですか、彰人くん?」
「その、散歩なんてわざわざお願いしなくても、言えばいつでも行くのだけど……」
ハナと手をつなぎ、一緒に近所をぷらぷらと歩いているだけなので、これだけではどうにも申し訳ない。
「いいのです。この季節に、一緒に歩きたかったんです。これは、お願いごとのランキングの中でもかなり上位のことです。地球のドラゴンボールでは叶えられないレベルです。ポルンガならいけます」
「しかし、地球のシェンロンは多数の人間を同時に生き返せられるから、一概にどちらのレベルが高いか言えないぞ?」
「はや……その通りです! 今日も彰人くんの頭脳は冴え渡ってるので大好きです」
「では、冴え渡らなくなると大嫌いになるのか。鍛えないとなあ」
「? 大好きですよ?」
不思議そうな顔で俺の手をきゅっと握るハナ。
「つまり、特に理由もなく好きなのか」
「いいえ」
ハナは小さく頭をふって、俺を見つめた。
「彰人くんだから、好きなんですよ?」
「ぐ……」
ストライク出ました。直球です。久々に大当たりです。ええい。ええい!
「……え、えへへー。照れましたか?」
「ああ。照れたね。ハナと同等程度には」
「わ、私は照れてませんよ!? ええ、ええ!」
「じゃあその顔が真っ赤な理由を述べよ。配点:20点」
「はや、高配点です! し、しかし、理由は不明であり以後ずっと不明なので20点は諦めます!」
「残念……ん?」
行く先に、ちらちらと舞い降る何か。桜だ。そうか、春なんだ。
「綺麗……」
舞い散る桜の中で、空を見上げるハナ。その姿に、思わず息を呑む。情景が完全に一枚の絵画だ。この景色を壊したくない。息すら忘れ、ハナを見つめる。
「……ん? 彰人くん、何してるんですか?」
呼吸を止めていることをジェスチャーで伝えてみる。
「なんでなのですかっ!?」
完全に俺のジェスチャーを読み取ったハナが、無理やり俺の口をこじ開けた。
「ぷはあっ。何をする」
「それはこっちのセリフですっ! なんでいきなり死にかけてるんですかっ!?」
「世界は驚きに満ち満ちているね」
「彰人くんといると、本当にそう思います……」
ぐったりしたかと思うと、ハナは楽しそうにクスクスと笑った。
「ふふっ。……本当に、そう思います。驚きと、幸福に満ち満ちています」
「おや、奇遇ですね。偶然にも、俺もそう感じてますよ」
ハナは一瞬目を見開くと、顔いっぱいの笑顔を見せた。
「えへへっ。素敵な、素敵な時間ですっ♪」
「でっかい幸せです」
「隙あらばアニメをぶち込んできますが、この程度で私の幸福はぐらつきもしませんよ?」
「なんという牙城か……!」
それからしばらく近所をぶらついた後、ハナと一緒に帰りました。
【ツンデレを遊びに誘ったら】
2013年03月01日
最近暖かくなってきたので、どうにも眠い。
「くああ……」
そんなわけで、絶賛眠気と戦い中の授業中の中まみれであり、ロン、中のみ(麻雀知識皆無なのですよー)である。
「うーむ……。眠い。これほど眠いのに寝ると怒られるのが理解に苦しむ。いっそ軽く眠ってから授業を受けたほうが効率は上がるのではないだろうか。外国に倣い、シエスタを導入してはどうだろう」
「うるさい。授業中よ。話しかけるな。授業中じゃなくても話しかけるな。そのまま死ね」
眠気を覚ますべく、隣の席のかなみに軽く話しかけたら死ねって言われた。
「いかに親しい仲とはいえ、挨拶代わりに死ねと言うのは如何なものかと思いますがね!」プンスカ
「親しくない。だから話しかけるな。いいから死ね」
「む、また言われた。あと一回くらい言われたら絶望のあまり公衆の面前で死ぬやも。ただ、自棄になって死ぬ前にかなみを襲うやもしれないので、ご注意を」
「…………」
悪霊あたりなら見ただけで消滅しそうな鬼睨みをされた。超怖い。
「はい、分かりました。授業に専念します」
「……分かればいいのよ」
超ドスの聞いた声で俺を脅し、かなみは前を向いた。怖かった。
「といったことがあったんですよ! 軽い雑談で死ねとか、酷いと思いませんか?」
「話しかけるなって言ってるでしょ! ていうかそもそもあたしへの愚痴をあたし本人に言うなッ!」
学校終わって帰り道、かなみがいたので勝手に横に並んで愚痴を言ったら怒られた。
「陰口は嫌いなんです」
「んじゃ愚痴自体言うな!」
「モヤモヤはあるんですよ。そういやモヤモヤさまぁ~ずで大江アナが降板するらしいね。ゴールデン行ってから見たことないけど」
「知らんッ!」
「そりゃそうだ。ところでかなみ、このあと暇だし遊びに行っていい?」
「嫌」
「じゃあ遊びに来るか?」
「嫌」
「ならどこか寄って帰るか?」
「嫌」
「そろそろ心が折れそうだが、今度の休みにどこかへ行かないか?」
「嫌」
「……よし。死ぬから自殺幇助しろ」
「折れるにしても酷すぎるっ!」
「もう無理だよ……俺の手札にはもう何もないよ……」ポロポロ
「泣くなッ! ああもう、情けないわねぇ……」ナデナデ
「でへへぇ」
「うわ、気持ち悪」シッシ
「…………」
立ち直ったら立ち直ったでこの扱い。
「はぁ……で、どこ行くの?」
「へ?」
シッシと追い払われたので、泣き濡れながら家で寝ようと思っていたら、不意にかなみがそんなことを言い出した。
「だ、だから。……次の休み、どっか行くんでしょ?」
「え、いや、断られましたが」
「断ったら死ぬんでしょ?」
「え、死ぬの?」
「さっき言ってたじゃない」
いかん。軽い冗談で知らぬ間に追い詰められていた。選択次第で『ざんねん! わたしのぼうけんはここでおわってしまった!』へ一直線だ。
「で、どこ行くの? 場所によっては行ってあげなくもないわよ?」
「ラブホ」
「絶っっっっっ対に、行かないッッッッッ!!!」
わたしのぼうけんはここでおわってしまった。
「もちろん冗談ですがね」
「分かってたけど、悪趣味よ!」
「そうだね。ごめんね」
「……ったく。で? 本当はどこ?」
「何も考えてねえ」
「…………」
「家で寝ていてえ」
「…………」
「あと、お金持ちになりてえ。ゲームとか漫画とかいっぱい買いたい」
「アンタ、本気であたしとデートする気あんの!?」
「ひぃ」
「あによ、何も考えてないだの家で寝てたいだの、あげくにお金持ちになりたい!? もうデートと全然関係ないじゃないの!」
「い、いやあの、かなみさん」
「あによ!」
「デートなんですか?」
「……へ?」
「いや、その、男女が二人で遊びに行くのをデートと称するのであればデートですが、俺としてはただ友人同士で楽しく遊ぶだけのつもりでしたので、その」
「……~~~~~!!!」
かなみが真っ赤になった。とてもかわいい。
「そっ、そっ、そっ、そんなわけないじゃないの! なにを勝手にデートにしてんのよ! そーよ、遊びに行くだけよ! すぐにデートとか言って、これだから童貞は気持ち悪いのよ!」
「俺は言ってねえ」
「何か言った!!!!?」
「何も言ってません。お願いですから命だけは」ブルブル
悪霊どころか生きた人間まで祓いかねない目をされたので、震えながら許しを請う。
「何が命だけは、よ」
こっちは必死だったが、震える俺を見てかなみは少し落ち着きを取り戻したようだった。
「……で、そ、その。……デートじゃなくて、遊びに行くのはどうなったのよ」
「あ、ああ。行きたいです」
「そっ。……じゃあ、特別に、行ってあげてもいいわよ」
「やったあ! じゃあ近所の本屋でぐだぐだぐでぐで8時間くらい一緒に立ち読みしよう」
「一回だけ考えなおす機会をあげるわ♪」
すげえ。笑顔なのに死ぬ危険を感じる。
「じ、じゃあ、その、ええとですね、か、カラオケとかどうでしょうか!?」ブルブル
「カラオケ、ねぇ……どーも陳腐ねえ」
「チンプイ?」
「陳腐よ、陳腐! 頭腐ってんじゃないの!?」
「発酵食品とか好きだから、あながち間違いではない。ヨーグルトとか」
「間違いよ! ……まあ、アンタって発想が突飛だから、陳腐も何もないわよね。……ま、まあ、そーゆーところも、結構アレだし」ゴニョゴニョ
「何ひとつ聞こえねえ。頭に続き耳が腐ったか」
「な、何も言ってないわよ!!」
「なんだ。ところで、どうしてそんなに顔が赤いのですか。少しばかり心配ですよ?」
「う、うっさい! こっち見るな、ばかっ!」
「心配したのに馬鹿扱い」
「う~……」
どうして睨まれているのだろう。
「まあよく睨まれるし、別にいいか。というわけで、次の休みにカラオケに行きましょう」
「わ、分かったわよ……。あ、そうだ! アンタ、アニソンばっかじゃなくて、ちゃんと普通の歌も仕入れておきなさいよね! 前みたくアンタのアニソンメドレーなんて、御免なんだから!」
「分かった、一見アニソンには聞こえないのを仕入れておく」
「普通の歌を仕入れろって言ってるの!」
「一見なのに聞こえないとはこれいかに」
「うっさい!」
そんなわけで、次の休みにはかなみと遊びに行くことになったので楽しみだという話。
「くああ……」
そんなわけで、絶賛眠気と戦い中の授業中の中まみれであり、ロン、中のみ(麻雀知識皆無なのですよー)である。
「うーむ……。眠い。これほど眠いのに寝ると怒られるのが理解に苦しむ。いっそ軽く眠ってから授業を受けたほうが効率は上がるのではないだろうか。外国に倣い、シエスタを導入してはどうだろう」
「うるさい。授業中よ。話しかけるな。授業中じゃなくても話しかけるな。そのまま死ね」
眠気を覚ますべく、隣の席のかなみに軽く話しかけたら死ねって言われた。
「いかに親しい仲とはいえ、挨拶代わりに死ねと言うのは如何なものかと思いますがね!」プンスカ
「親しくない。だから話しかけるな。いいから死ね」
「む、また言われた。あと一回くらい言われたら絶望のあまり公衆の面前で死ぬやも。ただ、自棄になって死ぬ前にかなみを襲うやもしれないので、ご注意を」
「…………」
悪霊あたりなら見ただけで消滅しそうな鬼睨みをされた。超怖い。
「はい、分かりました。授業に専念します」
「……分かればいいのよ」
超ドスの聞いた声で俺を脅し、かなみは前を向いた。怖かった。
「といったことがあったんですよ! 軽い雑談で死ねとか、酷いと思いませんか?」
「話しかけるなって言ってるでしょ! ていうかそもそもあたしへの愚痴をあたし本人に言うなッ!」
学校終わって帰り道、かなみがいたので勝手に横に並んで愚痴を言ったら怒られた。
「陰口は嫌いなんです」
「んじゃ愚痴自体言うな!」
「モヤモヤはあるんですよ。そういやモヤモヤさまぁ~ずで大江アナが降板するらしいね。ゴールデン行ってから見たことないけど」
「知らんッ!」
「そりゃそうだ。ところでかなみ、このあと暇だし遊びに行っていい?」
「嫌」
「じゃあ遊びに来るか?」
「嫌」
「ならどこか寄って帰るか?」
「嫌」
「そろそろ心が折れそうだが、今度の休みにどこかへ行かないか?」
「嫌」
「……よし。死ぬから自殺幇助しろ」
「折れるにしても酷すぎるっ!」
「もう無理だよ……俺の手札にはもう何もないよ……」ポロポロ
「泣くなッ! ああもう、情けないわねぇ……」ナデナデ
「でへへぇ」
「うわ、気持ち悪」シッシ
「…………」
立ち直ったら立ち直ったでこの扱い。
「はぁ……で、どこ行くの?」
「へ?」
シッシと追い払われたので、泣き濡れながら家で寝ようと思っていたら、不意にかなみがそんなことを言い出した。
「だ、だから。……次の休み、どっか行くんでしょ?」
「え、いや、断られましたが」
「断ったら死ぬんでしょ?」
「え、死ぬの?」
「さっき言ってたじゃない」
いかん。軽い冗談で知らぬ間に追い詰められていた。選択次第で『ざんねん! わたしのぼうけんはここでおわってしまった!』へ一直線だ。
「で、どこ行くの? 場所によっては行ってあげなくもないわよ?」
「ラブホ」
「絶っっっっっ対に、行かないッッッッッ!!!」
わたしのぼうけんはここでおわってしまった。
「もちろん冗談ですがね」
「分かってたけど、悪趣味よ!」
「そうだね。ごめんね」
「……ったく。で? 本当はどこ?」
「何も考えてねえ」
「…………」
「家で寝ていてえ」
「…………」
「あと、お金持ちになりてえ。ゲームとか漫画とかいっぱい買いたい」
「アンタ、本気であたしとデートする気あんの!?」
「ひぃ」
「あによ、何も考えてないだの家で寝てたいだの、あげくにお金持ちになりたい!? もうデートと全然関係ないじゃないの!」
「い、いやあの、かなみさん」
「あによ!」
「デートなんですか?」
「……へ?」
「いや、その、男女が二人で遊びに行くのをデートと称するのであればデートですが、俺としてはただ友人同士で楽しく遊ぶだけのつもりでしたので、その」
「……~~~~~!!!」
かなみが真っ赤になった。とてもかわいい。
「そっ、そっ、そっ、そんなわけないじゃないの! なにを勝手にデートにしてんのよ! そーよ、遊びに行くだけよ! すぐにデートとか言って、これだから童貞は気持ち悪いのよ!」
「俺は言ってねえ」
「何か言った!!!!?」
「何も言ってません。お願いですから命だけは」ブルブル
悪霊どころか生きた人間まで祓いかねない目をされたので、震えながら許しを請う。
「何が命だけは、よ」
こっちは必死だったが、震える俺を見てかなみは少し落ち着きを取り戻したようだった。
「……で、そ、その。……デートじゃなくて、遊びに行くのはどうなったのよ」
「あ、ああ。行きたいです」
「そっ。……じゃあ、特別に、行ってあげてもいいわよ」
「やったあ! じゃあ近所の本屋でぐだぐだぐでぐで8時間くらい一緒に立ち読みしよう」
「一回だけ考えなおす機会をあげるわ♪」
すげえ。笑顔なのに死ぬ危険を感じる。
「じ、じゃあ、その、ええとですね、か、カラオケとかどうでしょうか!?」ブルブル
「カラオケ、ねぇ……どーも陳腐ねえ」
「チンプイ?」
「陳腐よ、陳腐! 頭腐ってんじゃないの!?」
「発酵食品とか好きだから、あながち間違いではない。ヨーグルトとか」
「間違いよ! ……まあ、アンタって発想が突飛だから、陳腐も何もないわよね。……ま、まあ、そーゆーところも、結構アレだし」ゴニョゴニョ
「何ひとつ聞こえねえ。頭に続き耳が腐ったか」
「な、何も言ってないわよ!!」
「なんだ。ところで、どうしてそんなに顔が赤いのですか。少しばかり心配ですよ?」
「う、うっさい! こっち見るな、ばかっ!」
「心配したのに馬鹿扱い」
「う~……」
どうして睨まれているのだろう。
「まあよく睨まれるし、別にいいか。というわけで、次の休みにカラオケに行きましょう」
「わ、分かったわよ……。あ、そうだ! アンタ、アニソンばっかじゃなくて、ちゃんと普通の歌も仕入れておきなさいよね! 前みたくアンタのアニソンメドレーなんて、御免なんだから!」
「分かった、一見アニソンには聞こえないのを仕入れておく」
「普通の歌を仕入れろって言ってるの!」
「一見なのに聞こえないとはこれいかに」
「うっさい!」
そんなわけで、次の休みにはかなみと遊びに行くことになったので楽しみだという話。