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2025年02月05日
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【スナック菓子を食べていたらツンデレが物欲しそうな顔でこっちを見ていたので、ほれ、と差し出してみたら】
2010年10月28日
部室に菓子を持ち込んでめりもり食っていたのだけど、どうも視線を感じる。
「はぅー……」
探る必要もないくらい欲しいオーラ(&よられ)を出してる小動物が一匹。みことの人だ。
「……欲しいか?」
「くれるのかっ!?」
「聞いただけもしゃもしゃ」
「……っ! ふ、ふん、そういう風にするって、私にはお見通しだ! ちっとも悔しくなんてない!」
言葉だけでもアレだが、目の端に涙とか溜めて言われたらより一層説得力がなくなる。
「…………」
無言でみことの前でひらひらスナック菓子を動かす。
「はぅー……」
それに釣られてみことの顔も動く。菓子を右に動かせばみことの顔も右に、左に動かせば左に。
「面白かったので一つやる」
「ホントかっ!? なんだ、お前って実はいい奴じゃないか!」
「こんな愉快な見世物を、たかが菓子ひとつで見せてくれるみことほど善人ではない」
物凄く不愉快そうな顔をしながらも、みことは菓子を受け取る手を引っ込めようとはしなかった。
「はい」
「さっさと渡せ、阿呆!」
ひったくるように菓子を奪うと、みことは素早く自分の口に放り込んだ。
「……はぅ~」
まぐまぐした途端、みことは心底幸せそうに顔を蕩けさせた。
「菓子ひとつでそこまで幸せそうな顔されたら、もう一個やりたくなる」
「いいのかっ!? お前はすごく嫌な奴だけど、お菓子をくれるならいい奴だな!」
「……お兄さん、時々お前が誘拐されないか心配だよ」
「?」
不思議そうな顔をしてるみことだったが、袋から菓子を取り出すとパッと表情を明るくさせた。
「はい、あーん」
「あーん!」
ものすごく素直にあーんされて、こちらが面食らう。
「? どうした、早くよこせ。……それとも、またいじわるするのか?」
「い、いや、そうじゃない。はい、あーん」
「あーん!」
みことの口中に菓子を放り込む。
「まぐまぐ……うぅ~♪ すごくおいしいぞ!」
「そいつぁ何よりだ」
「褒美だ、稽古つけてやる!」
「う」
みことは見た目こそ子供そのものだが、実は剣道有段者だ。ええと……確か、参段? 一方こちらは、入部して間もない身。
「あの、結構です」
「か、勘違いするなよ、単なる厚意だぞ?」
「超迷惑だと言っている!」
「むぅ~! 私の稽古が嫌なのか!」
「はい!」
「……お前の気持ちはよく分かった。今日はマンツーマンで指導してやる!」
「ふふ、おかしな話だ」
ずるりずるりと剣道場に引っ張られる俺だった。
んで。
「……弱いなあ、お前」
「てめぇ! 初心者相手に全力ってどういうことだ! てめぇ!」
足腰立たなくなるまで練習という名のいじめを受けたので、床に倒れたままお送りしております。
「ぜんぜん全力じゃないぞ?」
なんという。
「……ええい! もっと全力で手加減をしろ!」
最後の力を振り絞り、ぐばーっと起き上がってすかさずみことのほっぺをむにーっと引っ張る。
「あぅーっ!?」
「こちとらつい先日まで帰宅部だったへっぽこ学生なんだ! お前みたいに鬼強い奴は、分からないよう超手加減しろ!」
「すごい……別府くん、全く男らしくないことを全力で言い切ってる……」
近くの部員が何か言ってるような気がするが気のせいだ。
「うーっ! ううーっ!」
「そしてほっぺが柔らかくて気持ちいいなあチクショウ!」
むにーんむにーんみことのほっぺの感触を堪能する。したので手を離す。
「あうっ! ……うう、貴様、よくも私のほっぺをむにむにしたな!」
「されたくなかったら、練習でもっともっと手加減し、俺をいい気持ちにさせることだな! はーっはっはっはっは!」
「お前がもっと上達するよう真面目に練習しろっ!」
「めんどい」
「……まだ余力があるようだな。もっと稽古をつけてやろう」
「おやおや」
大変なルートに入ったので逃げる。が、よく考えるともう全然体力残ってなかったのですぐ力尽きて捕まった。
「んじゃ、とりあえず素振り100まん回!」
「馬鹿の数字だ!」
「……100おくまん回!」
今日は帰れないらしい。
「はぅー……」
探る必要もないくらい欲しいオーラ(&よられ)を出してる小動物が一匹。みことの人だ。
「……欲しいか?」
「くれるのかっ!?」
「聞いただけもしゃもしゃ」
「……っ! ふ、ふん、そういう風にするって、私にはお見通しだ! ちっとも悔しくなんてない!」
言葉だけでもアレだが、目の端に涙とか溜めて言われたらより一層説得力がなくなる。
「…………」
無言でみことの前でひらひらスナック菓子を動かす。
「はぅー……」
それに釣られてみことの顔も動く。菓子を右に動かせばみことの顔も右に、左に動かせば左に。
「面白かったので一つやる」
「ホントかっ!? なんだ、お前って実はいい奴じゃないか!」
「こんな愉快な見世物を、たかが菓子ひとつで見せてくれるみことほど善人ではない」
物凄く不愉快そうな顔をしながらも、みことは菓子を受け取る手を引っ込めようとはしなかった。
「はい」
「さっさと渡せ、阿呆!」
ひったくるように菓子を奪うと、みことは素早く自分の口に放り込んだ。
「……はぅ~」
まぐまぐした途端、みことは心底幸せそうに顔を蕩けさせた。
「菓子ひとつでそこまで幸せそうな顔されたら、もう一個やりたくなる」
「いいのかっ!? お前はすごく嫌な奴だけど、お菓子をくれるならいい奴だな!」
「……お兄さん、時々お前が誘拐されないか心配だよ」
「?」
不思議そうな顔をしてるみことだったが、袋から菓子を取り出すとパッと表情を明るくさせた。
「はい、あーん」
「あーん!」
ものすごく素直にあーんされて、こちらが面食らう。
「? どうした、早くよこせ。……それとも、またいじわるするのか?」
「い、いや、そうじゃない。はい、あーん」
「あーん!」
みことの口中に菓子を放り込む。
「まぐまぐ……うぅ~♪ すごくおいしいぞ!」
「そいつぁ何よりだ」
「褒美だ、稽古つけてやる!」
「う」
みことは見た目こそ子供そのものだが、実は剣道有段者だ。ええと……確か、参段? 一方こちらは、入部して間もない身。
「あの、結構です」
「か、勘違いするなよ、単なる厚意だぞ?」
「超迷惑だと言っている!」
「むぅ~! 私の稽古が嫌なのか!」
「はい!」
「……お前の気持ちはよく分かった。今日はマンツーマンで指導してやる!」
「ふふ、おかしな話だ」
ずるりずるりと剣道場に引っ張られる俺だった。
んで。
「……弱いなあ、お前」
「てめぇ! 初心者相手に全力ってどういうことだ! てめぇ!」
足腰立たなくなるまで練習という名のいじめを受けたので、床に倒れたままお送りしております。
「ぜんぜん全力じゃないぞ?」
なんという。
「……ええい! もっと全力で手加減をしろ!」
最後の力を振り絞り、ぐばーっと起き上がってすかさずみことのほっぺをむにーっと引っ張る。
「あぅーっ!?」
「こちとらつい先日まで帰宅部だったへっぽこ学生なんだ! お前みたいに鬼強い奴は、分からないよう超手加減しろ!」
「すごい……別府くん、全く男らしくないことを全力で言い切ってる……」
近くの部員が何か言ってるような気がするが気のせいだ。
「うーっ! ううーっ!」
「そしてほっぺが柔らかくて気持ちいいなあチクショウ!」
むにーんむにーんみことのほっぺの感触を堪能する。したので手を離す。
「あうっ! ……うう、貴様、よくも私のほっぺをむにむにしたな!」
「されたくなかったら、練習でもっともっと手加減し、俺をいい気持ちにさせることだな! はーっはっはっはっは!」
「お前がもっと上達するよう真面目に練習しろっ!」
「めんどい」
「……まだ余力があるようだな。もっと稽古をつけてやろう」
「おやおや」
大変なルートに入ったので逃げる。が、よく考えるともう全然体力残ってなかったのですぐ力尽きて捕まった。
「んじゃ、とりあえず素振り100まん回!」
「馬鹿の数字だ!」
「……100おくまん回!」
今日は帰れないらしい。
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【ツンデレの定位置が奪われたら】
2010年10月27日
「おーっす! 哀れな凡愚のため、わざわざ遊びに来てやったぞ!」
「おや。こんにちは」
とある休日の昼下がり、自室で猫とぼんやり遊んでたら、みことが突然訊ねてきた。
「……ん? なんだそれ? 猫か? にゃーか?」
「そうだ、にゃーだ。ほれ、まる。挨拶」
俺の膝でぐんにゃり丸まっているまるに挨拶を促すが、軽く耳を動かすだけで、まったく挨拶しようとしない。もっとも、そんな芸仕込んだ覚えがないのでされても困るが。
「ダメだな、このにゃーは」
「全くだ、このにゃーはダメだ」
猫が珍しいのか、みことはくりくりとまる(飼い猫の名前)の耳やら鼻やらあごの下をくすぐっている。まるはそれが心地よいのかどうでもいいのか、まるで反応しない。
「むーっ。こいつ、動かないぞ。死んでるのか?」
「怖いこと言うな。もう結構な歳だから、昼は基本寝てるんだよ」
「なんだ。つまらないな」
そう言って、みことは足を投げ出してその場に座った。そして、まるをいじりながらも、俺をちらちらと見ている。
「ん? どうした?」
「べつにー」
そう言いながらも、まるをいじりながら俺を時々見る、という行為の繰り返し。はて、一体なんだろう、と思いながらまるの背中をなでていると、ピンときた。
「あー、腰痛え」
我ながら少々臭いかな、と思いながらもまるを俺の膝から近くの座布団に移動させ……。
「!」
ようとしたが、みことが目を爛々と輝かせる&まるが「やめろ」とでも言いたげにこちらをじろりと睨むので、元のままにする。
「あっ……。……おい、貴様、わざとか?」
「何の話だか俺には皆目」
「むーっ」
イライラした様子で、みことは俺の頬をぎぅーっと引っ張った。
「痛い」
「うるさいっ! 気づいているくせに! 貴様はいじわるだ!」
「だから、俺には何のことやら」
「貴様を見てる時に一度目が合った! しらばっくれるのも大概にしろ!」
ぎゃーぎゃー言い合っている(というか、一方的に怒られている)俺たちに嫌気が差したのか、まるは大きく欠伸をすると部屋を出て行ってしまった。いかん。
「きゅぴーん」
口で擬音を言いながら、みことは素早く俺の膝の上に乗ってきた。
「猫が人に」
「ふふん。私レベルともなると、人変化も容易いものだ」
適当なことを言いながら、みことは俺に背中を預けた。すかさず頭をなでる。
「なでるな!」
「ここに座るのであれば、俺になでられるのは義務と思え」
「それは断る。貴様のここは座り心地がよいので座るのは好きだが、なでられるのは子供扱いされてるみたいで嫌いだ。だから私をなでるのは禁ずる」
「なでなで」
「私の話を聞いているのかっ!?」
「乳を揉まないだけ俺の自制心を称えて欲しいところだ!」
「何をいばっているのだ貴様は!?」
「はっはっは。みことは可愛いなあ」(なでなで)
「うっ……くっ、き、貴様、……な、なでるな~」
何故か知らないけど半泣きのみことをしばらくなでなでしました。そんな嫌なら降りればいいのに。
「おや。こんにちは」
とある休日の昼下がり、自室で猫とぼんやり遊んでたら、みことが突然訊ねてきた。
「……ん? なんだそれ? 猫か? にゃーか?」
「そうだ、にゃーだ。ほれ、まる。挨拶」
俺の膝でぐんにゃり丸まっているまるに挨拶を促すが、軽く耳を動かすだけで、まったく挨拶しようとしない。もっとも、そんな芸仕込んだ覚えがないのでされても困るが。
「ダメだな、このにゃーは」
「全くだ、このにゃーはダメだ」
猫が珍しいのか、みことはくりくりとまる(飼い猫の名前)の耳やら鼻やらあごの下をくすぐっている。まるはそれが心地よいのかどうでもいいのか、まるで反応しない。
「むーっ。こいつ、動かないぞ。死んでるのか?」
「怖いこと言うな。もう結構な歳だから、昼は基本寝てるんだよ」
「なんだ。つまらないな」
そう言って、みことは足を投げ出してその場に座った。そして、まるをいじりながらも、俺をちらちらと見ている。
「ん? どうした?」
「べつにー」
そう言いながらも、まるをいじりながら俺を時々見る、という行為の繰り返し。はて、一体なんだろう、と思いながらまるの背中をなでていると、ピンときた。
「あー、腰痛え」
我ながら少々臭いかな、と思いながらもまるを俺の膝から近くの座布団に移動させ……。
「!」
ようとしたが、みことが目を爛々と輝かせる&まるが「やめろ」とでも言いたげにこちらをじろりと睨むので、元のままにする。
「あっ……。……おい、貴様、わざとか?」
「何の話だか俺には皆目」
「むーっ」
イライラした様子で、みことは俺の頬をぎぅーっと引っ張った。
「痛い」
「うるさいっ! 気づいているくせに! 貴様はいじわるだ!」
「だから、俺には何のことやら」
「貴様を見てる時に一度目が合った! しらばっくれるのも大概にしろ!」
ぎゃーぎゃー言い合っている(というか、一方的に怒られている)俺たちに嫌気が差したのか、まるは大きく欠伸をすると部屋を出て行ってしまった。いかん。
「きゅぴーん」
口で擬音を言いながら、みことは素早く俺の膝の上に乗ってきた。
「猫が人に」
「ふふん。私レベルともなると、人変化も容易いものだ」
適当なことを言いながら、みことは俺に背中を預けた。すかさず頭をなでる。
「なでるな!」
「ここに座るのであれば、俺になでられるのは義務と思え」
「それは断る。貴様のここは座り心地がよいので座るのは好きだが、なでられるのは子供扱いされてるみたいで嫌いだ。だから私をなでるのは禁ずる」
「なでなで」
「私の話を聞いているのかっ!?」
「乳を揉まないだけ俺の自制心を称えて欲しいところだ!」
「何をいばっているのだ貴様は!?」
「はっはっは。みことは可愛いなあ」(なでなで)
「うっ……くっ、き、貴様、……な、なでるな~」
何故か知らないけど半泣きのみことをしばらくなでなでしました。そんな嫌なら降りればいいのに。
【ツンデレを暖房器具の代わりにしたら】
2010年10月26日
こうも寒いと手がかじかんで仕方がない。ポケットに手を突っ込むが温まる様子もない。
「ううむ、どうしたものか……ん?」
ううむと思案していると、みことが平和そうな顔をしながらてってこ教室に入ってきた。奴は子供なので体温が高い。つまりは好機!
「ううっ、身体が勝手に……」
「ひょああああ!?」
かの英傑、大神隊長も用いたという秘技、身体が勝手にを使い、みことに抱きつき暖を取る。
「き、き、貴様! 朝からみことに痴漢とはいい度胸だ!」
「いや、痴漢じゃないです。ただ暖を取ってるだけです。あと、すなわちグッド度胸」
とても冷静な返事&ナイスな返しのはずなのに、殴られた。
「痛いです」
「うるさい、阿呆! みことで暖を取るのが悪いんだ! 貴様なんて凍えて死ねばいいんだ!」
「そこまで寒くないです。とはいえ、寒いは寒いので子供体温で暖を取ります」
「みことは子供じゃないっ! 貴様と同級生だ! ああこらっ、言いながら抱きつくなっ! みことの頭をなでるなっ! みことが怒ってる最中だぞ!」
みことは日本製なのであらゆる所が大変コンパクトにできており、抱っこしたりなでたりするのに向いている。つまり、俺に最適だ。
「ほふー。いやはや、生まれてよかった」
「貴様と同じ時代に生まれた我が身を恨まずにはいられんっ! ああもうっ、だからなでるなっ! ほっぺを引っ張るにゃー!」
「ははは。餅みてーにうにうに伸びる。うにーって言え」
「うにー! 誰が言うか! うににー!」
「超言ってますが」
「うるさい! にー!」
やはりみことと遊ぶのは大変楽しい。とはいえ、あまりやりすぎて嫌われては元も子もない。時既にお寿司、いや遅し、いややっぱりお寿司という感がなくもないが、とりあえずほっぺから手を離す。
「うにっ! ……うう、よくもやってくれたな。みことはこの屈辱を一生忘れないからな!」
「俺もみことにうにうにほっぺの感触を忘れないよ。ははっ、ふたり共有の思い出ができて素敵だね」
「ちっとも素敵じゃないっ! 何をさわやかな笑顔をしてるかっ! みことは怒ってるんだぞ!」
「それはそうと、急に抱っこの感触を忘れてしまったので再確認」
「いちいち抱きつくなあっ! ああこらっ、だからみことの頭をなでなでするなあっ!」
風のように素早く動き、みことを後ろから抱っこして頭をなでる。至福。
「うう……こんな奴に愛玩動物の如き扱いを受けるとは。屈辱の極みだーっ!」
「愛玩動物……みことを部屋に飾り鑑賞……剥製……ふむ、悪くない」
「途中すっごく物騒な単語が入ってたぞ!? みことは聞き逃さないぞ!」
「ああ、大丈夫。別に内臓を取り除いて中に綿とか入れるという恐怖の行いは省き、ただ服を剥いて部屋に置くだけにするから」
「愛玩動物どころか、何か別の用途に使われる気がすっごくすっごくするぞ!」
「流石だ、みこと! その想像は、恐らくだが当たっているぞ!」
「ふわーん!」
いかん、泣かしてしまった。
「ああ、いやあの、すいません冗談です」
「ぐすぐす……本当か?」
「本当です。でもしたいという欲求は多分にあります!」
「する気だー! ふわーん!」
「いやあのだからしませんってば泣かないでごめんなさい!」
コイツは子供じゃないと言い張るくせにすぐ泣くので、大変困る。
「うう……どっちなんだ? するのか? しないのか?」
「したいけど、すると捕まる&みことが泣くのでしません」
「み、みことは泣かないぞ! 泣いたことなんてないぞ!」
「今さっき泣いてましたが」
「お前の見間違いだ! まったく、これだから頭の悪い人種は困る」
「すごい無理を言いますね」
「う、うるさいっ! それより、いい加減みことを離せ! いつまで抱っこしてる!」
「ん、おお」
そう言えば、ずっとみことを抱っこしたままだった。
「ほら、早く離せ。早くしろ」
「でも、この状態が幸せなので断ります!」
「何を断言しとるか! 離せと言っているのだーっ!」
その後、やって来た先生に叱られたのでしぶしぶ解放した。でも、休み時間になったらまた捕獲した。
「だから、みことを抱っこするなーっ!」
教室にみことの悲しげな叫びが響くのだった。
「ううむ、どうしたものか……ん?」
ううむと思案していると、みことが平和そうな顔をしながらてってこ教室に入ってきた。奴は子供なので体温が高い。つまりは好機!
「ううっ、身体が勝手に……」
「ひょああああ!?」
かの英傑、大神隊長も用いたという秘技、身体が勝手にを使い、みことに抱きつき暖を取る。
「き、き、貴様! 朝からみことに痴漢とはいい度胸だ!」
「いや、痴漢じゃないです。ただ暖を取ってるだけです。あと、すなわちグッド度胸」
とても冷静な返事&ナイスな返しのはずなのに、殴られた。
「痛いです」
「うるさい、阿呆! みことで暖を取るのが悪いんだ! 貴様なんて凍えて死ねばいいんだ!」
「そこまで寒くないです。とはいえ、寒いは寒いので子供体温で暖を取ります」
「みことは子供じゃないっ! 貴様と同級生だ! ああこらっ、言いながら抱きつくなっ! みことの頭をなでるなっ! みことが怒ってる最中だぞ!」
みことは日本製なのであらゆる所が大変コンパクトにできており、抱っこしたりなでたりするのに向いている。つまり、俺に最適だ。
「ほふー。いやはや、生まれてよかった」
「貴様と同じ時代に生まれた我が身を恨まずにはいられんっ! ああもうっ、だからなでるなっ! ほっぺを引っ張るにゃー!」
「ははは。餅みてーにうにうに伸びる。うにーって言え」
「うにー! 誰が言うか! うににー!」
「超言ってますが」
「うるさい! にー!」
やはりみことと遊ぶのは大変楽しい。とはいえ、あまりやりすぎて嫌われては元も子もない。時既にお寿司、いや遅し、いややっぱりお寿司という感がなくもないが、とりあえずほっぺから手を離す。
「うにっ! ……うう、よくもやってくれたな。みことはこの屈辱を一生忘れないからな!」
「俺もみことにうにうにほっぺの感触を忘れないよ。ははっ、ふたり共有の思い出ができて素敵だね」
「ちっとも素敵じゃないっ! 何をさわやかな笑顔をしてるかっ! みことは怒ってるんだぞ!」
「それはそうと、急に抱っこの感触を忘れてしまったので再確認」
「いちいち抱きつくなあっ! ああこらっ、だからみことの頭をなでなでするなあっ!」
風のように素早く動き、みことを後ろから抱っこして頭をなでる。至福。
「うう……こんな奴に愛玩動物の如き扱いを受けるとは。屈辱の極みだーっ!」
「愛玩動物……みことを部屋に飾り鑑賞……剥製……ふむ、悪くない」
「途中すっごく物騒な単語が入ってたぞ!? みことは聞き逃さないぞ!」
「ああ、大丈夫。別に内臓を取り除いて中に綿とか入れるという恐怖の行いは省き、ただ服を剥いて部屋に置くだけにするから」
「愛玩動物どころか、何か別の用途に使われる気がすっごくすっごくするぞ!」
「流石だ、みこと! その想像は、恐らくだが当たっているぞ!」
「ふわーん!」
いかん、泣かしてしまった。
「ああ、いやあの、すいません冗談です」
「ぐすぐす……本当か?」
「本当です。でもしたいという欲求は多分にあります!」
「する気だー! ふわーん!」
「いやあのだからしませんってば泣かないでごめんなさい!」
コイツは子供じゃないと言い張るくせにすぐ泣くので、大変困る。
「うう……どっちなんだ? するのか? しないのか?」
「したいけど、すると捕まる&みことが泣くのでしません」
「み、みことは泣かないぞ! 泣いたことなんてないぞ!」
「今さっき泣いてましたが」
「お前の見間違いだ! まったく、これだから頭の悪い人種は困る」
「すごい無理を言いますね」
「う、うるさいっ! それより、いい加減みことを離せ! いつまで抱っこしてる!」
「ん、おお」
そう言えば、ずっとみことを抱っこしたままだった。
「ほら、早く離せ。早くしろ」
「でも、この状態が幸せなので断ります!」
「何を断言しとるか! 離せと言っているのだーっ!」
その後、やって来た先生に叱られたのでしぶしぶ解放した。でも、休み時間になったらまた捕獲した。
「だから、みことを抱っこするなーっ!」
教室にみことの悲しげな叫びが響くのだった。
【ツインテールが大好きだとツンデレの前で言ってみた】
2010年10月25日
「知ってると思うけど、俺はツインテールが好きなんだ。やって」
「どうして貴様のような愚か者のためにみことがそんなことしなければならない? 冗談は顔だけにしろ」
精一杯の勇気を持ってみことに髪型変更を願い出たら、酷いこと言われたので泣きそう。
「な、何も泣く奴があるか! みことは悪くない、悪くないぞ!」
「し、失敬な、大の大人がこんなことで泣くか! あと、大という文字が並んで気分がよくない」
「知らんッ! 話はそれで終わりか? ならみことはもう行くぞ」
「ああ、待って。ついでにパンツ見せて」
「死ね」
「嫌。もし自信のないパンツであっても俺は全く気にしない。だが、どうしても嫌なら、今日の放課後に一緒に下着買いに行きましょう。俺のお勧めはローレグ」
「本当に死ね……って、き、貴様、何をしてるっ!?」
「いや、気がつけばスカートの中に生息していただけで、決してわざとスカートに頭を突っ込んだのではないです」
「ひゃわわっ!? みっ、みことのお尻に顔を押し付けるな、ばかーっ!」
「ほふー。至福」
「ひゃわわわわっ!? あ、暖かい息を吐くな、ばかーっ!」
「もふもふまふまふ。しまぱん最高」
「揉むな噛むな説明するにゃーっ!」
翌日。べこんぼこんにされ未だ痛む頭を押さえながら教室に入ると、視界に飛び込むツインテール。
「何ィッ!? これは俺の妄想能力が暴走し、とうとう現実にまでフィルターがかかったということか!? 願ってもない能力を手に入れた!」
「違うわ、阿呆っ! みことが実際にしただけだっ!」
「最初はそうかと思ったけど、その可能性は先に挙げた例より低いと思ったんだ」
「まったく……」
憮然とした様子で、みことは腕を組んだ。その上で、ツインテールが風で軽くなびいている。
「いや、しかし……嬉しいなあ。よもやみことが本当にしてくれるとは」
「かっ、勘違いするなよ? みことが偶然そんな気分だっただけで、別に貴様の言うことを聞き入れたわけではないぞ?」
「理由はともかく、結果として俺が大喜びの髪型になったのでどうでもいいやうへへへへ」
「こ、こらっ! なでるなっ!」
「くんくんくん」
「みことの髪の匂いを嗅ぐなーっ!」
「はー……みことの髪はステーキよりいい匂いがするな」
「むぅ……なんだ、その微妙に嬉しいんだかなんだか分からない褒め言葉は」
「俺の語彙を最大限に駆使したが、あまりよい匂いを嗅ぐ機会に恵まれなかったのでKONOZAMAです。あ、でも昨日嗅いだみことのお尻と同じくらいよい香りですよ?」
「そっ、それは忘れろ、阿呆ッ!」
頬をみゅーっと引っ張られた。みゅー。
「やー、それにしてもみことは普段も可愛いが、ツインテールにすると可愛さ5割増しだな」
「む……な、何を言ってる。みことは別に子供じゃないんだから可愛くなんてないぞ」
「はっはっは、何を言っているのか。この生き物は愉快だなあ。ふにー」
「み、みことのほっぺを押すな!」
「ふにふにふに」
「お、押すなと言ってるのにー! たまにはみことの話を聞け!」
「了解、ほっぺは押さない」
「きゅー! だ、だからって鼻をつまめとは言ってないー!」
「あー。もういいや、俺と結婚しろ」
「鼻つまみながらプロポーズなんて聞いたことないぞっ!?」
「だってこんな可愛い生き物相手に求愛しないとか嘘だろう!?」
「何ギレだっ!?」
その時、チャイムが鳴って先生が教室に入ってきた。
「はーい、先生の授業ですよー。皆さん席に着いてくださいねー。別府くん、みことちゃんと遊んでないで座ってください」
「だって先生、みことの奴がプロポーズ受けてくれないんです!」
「学校でプロポーズ!? 最近の学生は進みすぎてて、先生理解不能ですっ!」
「なんでもいいからいい加減みことの鼻から手を離せ、ばかーっ!」
主に俺だけが混乱していた。
「どうして貴様のような愚か者のためにみことがそんなことしなければならない? 冗談は顔だけにしろ」
精一杯の勇気を持ってみことに髪型変更を願い出たら、酷いこと言われたので泣きそう。
「な、何も泣く奴があるか! みことは悪くない、悪くないぞ!」
「し、失敬な、大の大人がこんなことで泣くか! あと、大という文字が並んで気分がよくない」
「知らんッ! 話はそれで終わりか? ならみことはもう行くぞ」
「ああ、待って。ついでにパンツ見せて」
「死ね」
「嫌。もし自信のないパンツであっても俺は全く気にしない。だが、どうしても嫌なら、今日の放課後に一緒に下着買いに行きましょう。俺のお勧めはローレグ」
「本当に死ね……って、き、貴様、何をしてるっ!?」
「いや、気がつけばスカートの中に生息していただけで、決してわざとスカートに頭を突っ込んだのではないです」
「ひゃわわっ!? みっ、みことのお尻に顔を押し付けるな、ばかーっ!」
「ほふー。至福」
「ひゃわわわわっ!? あ、暖かい息を吐くな、ばかーっ!」
「もふもふまふまふ。しまぱん最高」
「揉むな噛むな説明するにゃーっ!」
翌日。べこんぼこんにされ未だ痛む頭を押さえながら教室に入ると、視界に飛び込むツインテール。
「何ィッ!? これは俺の妄想能力が暴走し、とうとう現実にまでフィルターがかかったということか!? 願ってもない能力を手に入れた!」
「違うわ、阿呆っ! みことが実際にしただけだっ!」
「最初はそうかと思ったけど、その可能性は先に挙げた例より低いと思ったんだ」
「まったく……」
憮然とした様子で、みことは腕を組んだ。その上で、ツインテールが風で軽くなびいている。
「いや、しかし……嬉しいなあ。よもやみことが本当にしてくれるとは」
「かっ、勘違いするなよ? みことが偶然そんな気分だっただけで、別に貴様の言うことを聞き入れたわけではないぞ?」
「理由はともかく、結果として俺が大喜びの髪型になったのでどうでもいいやうへへへへ」
「こ、こらっ! なでるなっ!」
「くんくんくん」
「みことの髪の匂いを嗅ぐなーっ!」
「はー……みことの髪はステーキよりいい匂いがするな」
「むぅ……なんだ、その微妙に嬉しいんだかなんだか分からない褒め言葉は」
「俺の語彙を最大限に駆使したが、あまりよい匂いを嗅ぐ機会に恵まれなかったのでKONOZAMAです。あ、でも昨日嗅いだみことのお尻と同じくらいよい香りですよ?」
「そっ、それは忘れろ、阿呆ッ!」
頬をみゅーっと引っ張られた。みゅー。
「やー、それにしてもみことは普段も可愛いが、ツインテールにすると可愛さ5割増しだな」
「む……な、何を言ってる。みことは別に子供じゃないんだから可愛くなんてないぞ」
「はっはっは、何を言っているのか。この生き物は愉快だなあ。ふにー」
「み、みことのほっぺを押すな!」
「ふにふにふに」
「お、押すなと言ってるのにー! たまにはみことの話を聞け!」
「了解、ほっぺは押さない」
「きゅー! だ、だからって鼻をつまめとは言ってないー!」
「あー。もういいや、俺と結婚しろ」
「鼻つまみながらプロポーズなんて聞いたことないぞっ!?」
「だってこんな可愛い生き物相手に求愛しないとか嘘だろう!?」
「何ギレだっ!?」
その時、チャイムが鳴って先生が教室に入ってきた。
「はーい、先生の授業ですよー。皆さん席に着いてくださいねー。別府くん、みことちゃんと遊んでないで座ってください」
「だって先生、みことの奴がプロポーズ受けてくれないんです!」
「学校でプロポーズ!? 最近の学生は進みすぎてて、先生理解不能ですっ!」
「なんでもいいからいい加減みことの鼻から手を離せ、ばかーっ!」
主に俺だけが混乱していた。
【婦警さん】
2010年10月18日
近頃朝方が寒いので布団のありがたみも増し、結果寝坊。こいつは大変にいけないと思いながら自転車を必死に漕いでたら、交差点で何かとぶつかった。
「いたた……こらーっ! 危ないじゃないの!」
「あーっ! おまえはさっきの転校生!」
「違うっ!」
「確かに。順番と職業と年齢を間違えた」
俺がぶつかった相手は同い年の転校生などではなく、青い制服に身を包んだ婦警さんだった。警察学校を出てすぐなのだろうか、俺とそう変わらない歳のように見える。向こうさんも自転車に乗っていたようで、近くで自転車が転がっていた。
「気をつけろ……機嫌を損ねると腰のマグナムが俺の心臓を撃ち抜くに違いねえ!」
「マグナムなんて物騒なもの持ってないわよ! ていうか、そもそも撃たない! キミねえ、あんまり変なこと言ってたら公務執行妨害で逮捕するわよ?」
「うっうっうっ……」
「泣きながら両手を差し出すなッ!」
「どうしろと言うのだ」
「こっちの台詞よ……はぁ、朝から変なのに捕まっちゃったなあ」
婦警さんは疲れたように肩を落とした。
「警官なのに捕まるとは洒落が利いてる。はっはっは」
「うるさいっ! もーいーから行きなさい。キミ、学生でしょ? いいの? 遅刻しちゃうわよ?」
「婦警さんに誘惑されたと言い張って遅刻から免れるから大丈夫だ」
「ちっとも大丈夫じゃないっ! ていうか、そんなので遅刻は免除しないと思うわよ!」
「どんなエロい誘惑をされたか、先生に詳しく説明するから大丈夫だ。なに、こう見えても趣味で小説を書いてる。そういった描写は得意だ」
「誰もそんな心配はしてないっ! あーもーっ、早く行けっ!」
「警察官に追い払われるとは。なかなかに悲しい出来事だ」
「いーから早く行きなさい。まったくもぉ……あ痛っ!」
失意のどん底に落ちながら自転車に乗ろうとしたら、婦警さんが突然声をあげた。
「どしました?」
「な、なんでもないのよ、なんでも。いいからキミは早く学校行きなさい」
婦警さんは俺の目から逃れるように右足を後ろに回した。だが、その程度で俺からは逃れられない!
「ククク……婦警さんもまだまだ甘いようで。この俺様に隙を見せるとはなぁ……」
「な、何よ。何をする気よ!」
「弱って動けない獲物を前に、何をするかだなんて……答える必要もあるまい?」
「ま、まさか……や、やだ、ちょっと、冗談でしょ?」
「それは……自分の身体に聞いてみなッ!」
「き……きゃあああああああッ!」
「痛い痛い痛い痛い」
中二病を存分に発揮しながら婦警さんを抱き上げたら、いっぱい叩かれた。
「ヤだヤだヤだヤだ! おかあさーん!」
「痛い痛い。動くな。せめて殴るな」
殴られながらもずしーんずしーんと移動し、近くの公園へ。
「はい、ちょっとここで大人しくしてろよ」
「ううう……う?」
婦警さんをベンチに下ろし、近くの水道へ。ハンケチを水で濡らし、戻ってくる。
「はい、ちょと痛いヨー」
「痛っ!? ……あ」
ニセ中国人を装いながら、怪我した膝にハンカチをちょんちょんとあてる。砂などが取れたら、もう一度ハンカチを濡らし、膝にあてる。
「ん、これでよし。交番に戻ったらちゃんと手当てしろよ。んじゃ、俺は学校行ってくる」
「え……あ、え?」
「ばーいびー」
そのまま颯爽と自転車にまたがって去れたらそれなりに格好もつくのだろうが、生憎と徒歩で公園まで来たので、てってこ走って公園から逃げる。やれやれ、恥ずかしい。
遅刻した言い訳に嘘エロ小噺を担任にしたら余計に怒られ、放課後、一人で教室の掃除をするよう言いつけられてしまった。
「あー……疲れた」
どうにか終わった頃には、既に5時を回っていた。さて、帰るか。
だらだらと自転車を漕いでると、朝に事故った交差点に出くわした。……まさか朝の婦警、いやしないだろうな。
「……あーっ! き、キミ! そこのキミ!」
「ん? ぐあ」
「……そ、そう。こっち振り向いて今まさに電柱にぶつかったキミ」
「……それはつまり俺のことだな」
朝と同じように地面に転がりながら答える。
「あ、あははー……ごめんね? 私が声かけなかったらぶつからなかったよね?」
「全くだ。あいたた……」
むっくら起き上がり、声の主を確かめる……までもなく、奴だ。朝の婦警だ。
「それで、何用だ? くだらん用件だと殺す」
「おまわりさんだよ!?」
「しまった、図に乗った。……でも、まあ、いいか!」
「よくないっ! ……じゃなかった。え、えっと、えっとね?」
「なんだろうか。やっぱ捕まえるの? 嫌だなあ。まあいいや、はい」
「違うっ! すぐに両手を差し出すなっ! ……え、えっと、これ」
そう言いながら、婦警さんは何やら布っきれを差し出した。なんだろう。なんか見覚えあるな。
「は、ハンカチ。朝、キミが貸してくれたの」
「ああ、そうそう。思い出した。記憶のピースががっちと一致した。ああすっきりした。じゃあ俺はこれで」
「待って待ってまだ話終わってない!」
「なに? 捕まえるの?」
「なんでキミはそう捕まえられたがるかなあ……」
「基本的にビクビクして生きているもので」
「何かの虫みたいだね、キミ」
酷い言われ様だ。
「そ、そうじゃなくてね。あ、あの、え~っと……ほ、ほら! 警察官を助けたで賞を授与しないといけないの!」
「うわ、超頭悪ぃ」
「警察官に酷い暴言を!?」
「しまった。俺って奴はいつもこうだ。はい、どうぞ」
「だから、すぐに両手を差し出すなっ! ホントに逮捕しちゃうぞ!?」
「昔そんなアニメがありましたね。いや全然知らないので踏み込まれると何もできなくなるので気をつけて」
「う~……そんなのはどうでもいいのっ! 朝のお礼をしたいの! で、でも、言っとくけど、好意とかじゃないから勘違いしたらダメだよ? ただの警察官としてのお礼なんだからね?」
「知らん。ていうか、礼とかいいです」
「いくないの! あのね、ちゃんといいことしたんだから、お礼を受けるのは当たり前なんだよ?」
「そんな大層なことをした覚えはないんだが……」
「…………」
「ん? どした、ハトが豆鉄砲を食らったような顔、いわゆるハト豆な顔をして」
「そんないわゆるなんてないよっ! じゃなくてね、……ううん、まあいいや!」
「?」
「いーの! こほん。……え、えっとね。ほ、ほら、私……じゃないや。本官は警察官なので、本官を助けてくれたキミにお礼しないといけないの」
「さっきも言ったけど、礼とかいらないのですが」
「いいの! しないといけないの! キミは黙ってお礼されたらいいの!」
「まあくれるというなら貰うが……一体どんなお礼を?」
「え? え、えーっと……」
……何も考えてなかったな、コイツ。
「ま、待って! すぐ! すぐ考えるから!」
「もういいよ。なんか疲れたし帰る」
「待って待って帰らないで! すぐ思いつくから!」
「いい。帰る」
「待って待って待ってー!」
そのまま回れ右して帰ろうとしたのだが、ありえないことに婦警さんは俺の腕にしがみついて動きを遮った。
「ええい、離せ!」
「お礼するまで離さないー!」
「じゃあもうその乳の感触がお礼ってことにするから離せ」
さっきから腕にほにょんほにょんとそれなりの大きさの乳の感触が踊っていてお兄さん嬉しいです。
「え……え、えっち!」
「ぐがっ」
なんか脳天にすげぇ衝撃。超殴られたっぽい。
「いてて……お、お前なあ、恩人を殴るか?」
「う、うるさい、ばかっ! えっちなこと言うキミが悪いんだからね!」
婦警さんは少し離れた場所から顔を真っ赤にして叫んでいた。
「子供の戯言と流せよ……」
「なんかキミ私より年下とは思えないんだもん! 留年しまくって二十歳超えてたりする?」
「酷い侮辱だ。新聞に投書してやる」
「う、うそ、うそ! 私が幼すぎるだけだよ!」
「知り合って間もないが、よく知ってる」
「冷静に肯定されちゃった……」
なんか打ちひしがれている。
「まあそう落ち込むな。大丈夫、体つきはそれなりに大人だったぞ!」
「嬉しくないっ!」
ずびしっと親指を立ててウインクしてやったというのに、婦警さんときたら先ほどより顔を赤らめるばかり。
「ううう……と、とにかく! お礼するから、ここに住所と名前と電話番号書いて!」
そう言って、婦警さんは懐から手帳を取り出した。
「個人情報保護の観点から断りたいです」
「う、ううう……」
「泣きそうになるなッ! 分かった、書くよ、書きゃーいいんだろっ!」
半泣きの婦警さんから手帳を奪い取り、手早く書く。ほんとに大人か、この人。
「な、泣いてなんかないからねっ! ちょっと悲しくなっちゃっただけなんだから! 大人がこんなすぐ泣くわけないじゃないの!」
「いばるな。ほい、書いた」
手帳を返すと、婦警さんは顔を輝かせた。
「へへ……。じゃあ、思いついたらお礼するから! 忘れないからね! 覚えててね!」
「知らん。ていうか、いいと言ってるのに」
「私の気が済まないの!」
「超面倒臭え」
「面倒臭いとか言わないの! ……あ、ああーっ! もうこんな時間! 大変、先輩にまた怒られる!」
ふと腕時計を見て、婦警さんは素っ頓狂な声をあげた。
「また、って……お前はいっつも怒られているんだなあ」
「……た、たまにだよ? ホントに」
「こんな信頼できない台詞初めてだ」
「ホントに! ホントなの! そんなへっぽこじゃないの!」
「いーから早く行けへっぽこ婦警。早くしないと先輩とやらに怒られるぞ」
「酷いあだ名つけられた!?」
なにやらぶちぶち言いながら、婦警さんは自転車に乗って去っていった。
「あー……なんか超疲れた。……あ」
そういや、ハンカチ貸したままだ。……まあいいか、なんかまたお礼するとか言ってたし、その時で。
「いたた……こらーっ! 危ないじゃないの!」
「あーっ! おまえはさっきの転校生!」
「違うっ!」
「確かに。順番と職業と年齢を間違えた」
俺がぶつかった相手は同い年の転校生などではなく、青い制服に身を包んだ婦警さんだった。警察学校を出てすぐなのだろうか、俺とそう変わらない歳のように見える。向こうさんも自転車に乗っていたようで、近くで自転車が転がっていた。
「気をつけろ……機嫌を損ねると腰のマグナムが俺の心臓を撃ち抜くに違いねえ!」
「マグナムなんて物騒なもの持ってないわよ! ていうか、そもそも撃たない! キミねえ、あんまり変なこと言ってたら公務執行妨害で逮捕するわよ?」
「うっうっうっ……」
「泣きながら両手を差し出すなッ!」
「どうしろと言うのだ」
「こっちの台詞よ……はぁ、朝から変なのに捕まっちゃったなあ」
婦警さんは疲れたように肩を落とした。
「警官なのに捕まるとは洒落が利いてる。はっはっは」
「うるさいっ! もーいーから行きなさい。キミ、学生でしょ? いいの? 遅刻しちゃうわよ?」
「婦警さんに誘惑されたと言い張って遅刻から免れるから大丈夫だ」
「ちっとも大丈夫じゃないっ! ていうか、そんなので遅刻は免除しないと思うわよ!」
「どんなエロい誘惑をされたか、先生に詳しく説明するから大丈夫だ。なに、こう見えても趣味で小説を書いてる。そういった描写は得意だ」
「誰もそんな心配はしてないっ! あーもーっ、早く行けっ!」
「警察官に追い払われるとは。なかなかに悲しい出来事だ」
「いーから早く行きなさい。まったくもぉ……あ痛っ!」
失意のどん底に落ちながら自転車に乗ろうとしたら、婦警さんが突然声をあげた。
「どしました?」
「な、なんでもないのよ、なんでも。いいからキミは早く学校行きなさい」
婦警さんは俺の目から逃れるように右足を後ろに回した。だが、その程度で俺からは逃れられない!
「ククク……婦警さんもまだまだ甘いようで。この俺様に隙を見せるとはなぁ……」
「な、何よ。何をする気よ!」
「弱って動けない獲物を前に、何をするかだなんて……答える必要もあるまい?」
「ま、まさか……や、やだ、ちょっと、冗談でしょ?」
「それは……自分の身体に聞いてみなッ!」
「き……きゃあああああああッ!」
「痛い痛い痛い痛い」
中二病を存分に発揮しながら婦警さんを抱き上げたら、いっぱい叩かれた。
「ヤだヤだヤだヤだ! おかあさーん!」
「痛い痛い。動くな。せめて殴るな」
殴られながらもずしーんずしーんと移動し、近くの公園へ。
「はい、ちょっとここで大人しくしてろよ」
「ううう……う?」
婦警さんをベンチに下ろし、近くの水道へ。ハンケチを水で濡らし、戻ってくる。
「はい、ちょと痛いヨー」
「痛っ!? ……あ」
ニセ中国人を装いながら、怪我した膝にハンカチをちょんちょんとあてる。砂などが取れたら、もう一度ハンカチを濡らし、膝にあてる。
「ん、これでよし。交番に戻ったらちゃんと手当てしろよ。んじゃ、俺は学校行ってくる」
「え……あ、え?」
「ばーいびー」
そのまま颯爽と自転車にまたがって去れたらそれなりに格好もつくのだろうが、生憎と徒歩で公園まで来たので、てってこ走って公園から逃げる。やれやれ、恥ずかしい。
遅刻した言い訳に嘘エロ小噺を担任にしたら余計に怒られ、放課後、一人で教室の掃除をするよう言いつけられてしまった。
「あー……疲れた」
どうにか終わった頃には、既に5時を回っていた。さて、帰るか。
だらだらと自転車を漕いでると、朝に事故った交差点に出くわした。……まさか朝の婦警、いやしないだろうな。
「……あーっ! き、キミ! そこのキミ!」
「ん? ぐあ」
「……そ、そう。こっち振り向いて今まさに電柱にぶつかったキミ」
「……それはつまり俺のことだな」
朝と同じように地面に転がりながら答える。
「あ、あははー……ごめんね? 私が声かけなかったらぶつからなかったよね?」
「全くだ。あいたた……」
むっくら起き上がり、声の主を確かめる……までもなく、奴だ。朝の婦警だ。
「それで、何用だ? くだらん用件だと殺す」
「おまわりさんだよ!?」
「しまった、図に乗った。……でも、まあ、いいか!」
「よくないっ! ……じゃなかった。え、えっと、えっとね?」
「なんだろうか。やっぱ捕まえるの? 嫌だなあ。まあいいや、はい」
「違うっ! すぐに両手を差し出すなっ! ……え、えっと、これ」
そう言いながら、婦警さんは何やら布っきれを差し出した。なんだろう。なんか見覚えあるな。
「は、ハンカチ。朝、キミが貸してくれたの」
「ああ、そうそう。思い出した。記憶のピースががっちと一致した。ああすっきりした。じゃあ俺はこれで」
「待って待ってまだ話終わってない!」
「なに? 捕まえるの?」
「なんでキミはそう捕まえられたがるかなあ……」
「基本的にビクビクして生きているもので」
「何かの虫みたいだね、キミ」
酷い言われ様だ。
「そ、そうじゃなくてね。あ、あの、え~っと……ほ、ほら! 警察官を助けたで賞を授与しないといけないの!」
「うわ、超頭悪ぃ」
「警察官に酷い暴言を!?」
「しまった。俺って奴はいつもこうだ。はい、どうぞ」
「だから、すぐに両手を差し出すなっ! ホントに逮捕しちゃうぞ!?」
「昔そんなアニメがありましたね。いや全然知らないので踏み込まれると何もできなくなるので気をつけて」
「う~……そんなのはどうでもいいのっ! 朝のお礼をしたいの! で、でも、言っとくけど、好意とかじゃないから勘違いしたらダメだよ? ただの警察官としてのお礼なんだからね?」
「知らん。ていうか、礼とかいいです」
「いくないの! あのね、ちゃんといいことしたんだから、お礼を受けるのは当たり前なんだよ?」
「そんな大層なことをした覚えはないんだが……」
「…………」
「ん? どした、ハトが豆鉄砲を食らったような顔、いわゆるハト豆な顔をして」
「そんないわゆるなんてないよっ! じゃなくてね、……ううん、まあいいや!」
「?」
「いーの! こほん。……え、えっとね。ほ、ほら、私……じゃないや。本官は警察官なので、本官を助けてくれたキミにお礼しないといけないの」
「さっきも言ったけど、礼とかいらないのですが」
「いいの! しないといけないの! キミは黙ってお礼されたらいいの!」
「まあくれるというなら貰うが……一体どんなお礼を?」
「え? え、えーっと……」
……何も考えてなかったな、コイツ。
「ま、待って! すぐ! すぐ考えるから!」
「もういいよ。なんか疲れたし帰る」
「待って待って帰らないで! すぐ思いつくから!」
「いい。帰る」
「待って待って待ってー!」
そのまま回れ右して帰ろうとしたのだが、ありえないことに婦警さんは俺の腕にしがみついて動きを遮った。
「ええい、離せ!」
「お礼するまで離さないー!」
「じゃあもうその乳の感触がお礼ってことにするから離せ」
さっきから腕にほにょんほにょんとそれなりの大きさの乳の感触が踊っていてお兄さん嬉しいです。
「え……え、えっち!」
「ぐがっ」
なんか脳天にすげぇ衝撃。超殴られたっぽい。
「いてて……お、お前なあ、恩人を殴るか?」
「う、うるさい、ばかっ! えっちなこと言うキミが悪いんだからね!」
婦警さんは少し離れた場所から顔を真っ赤にして叫んでいた。
「子供の戯言と流せよ……」
「なんかキミ私より年下とは思えないんだもん! 留年しまくって二十歳超えてたりする?」
「酷い侮辱だ。新聞に投書してやる」
「う、うそ、うそ! 私が幼すぎるだけだよ!」
「知り合って間もないが、よく知ってる」
「冷静に肯定されちゃった……」
なんか打ちひしがれている。
「まあそう落ち込むな。大丈夫、体つきはそれなりに大人だったぞ!」
「嬉しくないっ!」
ずびしっと親指を立ててウインクしてやったというのに、婦警さんときたら先ほどより顔を赤らめるばかり。
「ううう……と、とにかく! お礼するから、ここに住所と名前と電話番号書いて!」
そう言って、婦警さんは懐から手帳を取り出した。
「個人情報保護の観点から断りたいです」
「う、ううう……」
「泣きそうになるなッ! 分かった、書くよ、書きゃーいいんだろっ!」
半泣きの婦警さんから手帳を奪い取り、手早く書く。ほんとに大人か、この人。
「な、泣いてなんかないからねっ! ちょっと悲しくなっちゃっただけなんだから! 大人がこんなすぐ泣くわけないじゃないの!」
「いばるな。ほい、書いた」
手帳を返すと、婦警さんは顔を輝かせた。
「へへ……。じゃあ、思いついたらお礼するから! 忘れないからね! 覚えててね!」
「知らん。ていうか、いいと言ってるのに」
「私の気が済まないの!」
「超面倒臭え」
「面倒臭いとか言わないの! ……あ、ああーっ! もうこんな時間! 大変、先輩にまた怒られる!」
ふと腕時計を見て、婦警さんは素っ頓狂な声をあげた。
「また、って……お前はいっつも怒られているんだなあ」
「……た、たまにだよ? ホントに」
「こんな信頼できない台詞初めてだ」
「ホントに! ホントなの! そんなへっぽこじゃないの!」
「いーから早く行けへっぽこ婦警。早くしないと先輩とやらに怒られるぞ」
「酷いあだ名つけられた!?」
なにやらぶちぶち言いながら、婦警さんは自転車に乗って去っていった。
「あー……なんか超疲れた。……あ」
そういや、ハンカチ貸したままだ。……まあいいか、なんかまたお礼するとか言ってたし、その時で。