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2024年11月21日
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【スナック菓子を食べていたらツンデレが物欲しそうな顔でこっちを見ていたので、ほれ、と差し出してみたら】

2010年10月28日
 部室に菓子を持ち込んでめりもり食っていたのだけど、どうも視線を感じる。
「はぅー……」
 探る必要もないくらい欲しいオーラ(&よられ)を出してる小動物が一匹。みことの人だ。
「……欲しいか?」
「くれるのかっ!?」
「聞いただけもしゃもしゃ」
「……っ! ふ、ふん、そういう風にするって、私にはお見通しだ! ちっとも悔しくなんてない!」
 言葉だけでもアレだが、目の端に涙とか溜めて言われたらより一層説得力がなくなる。
「…………」
 無言でみことの前でひらひらスナック菓子を動かす。
「はぅー……」
 それに釣られてみことの顔も動く。菓子を右に動かせばみことの顔も右に、左に動かせば左に。
「面白かったので一つやる」
「ホントかっ!? なんだ、お前って実はいい奴じゃないか!」
「こんな愉快な見世物を、たかが菓子ひとつで見せてくれるみことほど善人ではない」
 物凄く不愉快そうな顔をしながらも、みことは菓子を受け取る手を引っ込めようとはしなかった。
「はい」
「さっさと渡せ、阿呆!」
 ひったくるように菓子を奪うと、みことは素早く自分の口に放り込んだ。
「……はぅ~」
 まぐまぐした途端、みことは心底幸せそうに顔を蕩けさせた。
「菓子ひとつでそこまで幸せそうな顔されたら、もう一個やりたくなる」
「いいのかっ!? お前はすごく嫌な奴だけど、お菓子をくれるならいい奴だな!」
「……お兄さん、時々お前が誘拐されないか心配だよ」
「?」
 不思議そうな顔をしてるみことだったが、袋から菓子を取り出すとパッと表情を明るくさせた。
「はい、あーん」
「あーん!」
 ものすごく素直にあーんされて、こちらが面食らう。
「? どうした、早くよこせ。……それとも、またいじわるするのか?」
「い、いや、そうじゃない。はい、あーん」
「あーん!」
 みことの口中に菓子を放り込む。
「まぐまぐ……うぅ~♪ すごくおいしいぞ!」
「そいつぁ何よりだ」
「褒美だ、稽古つけてやる!」
「う」
 みことは見た目こそ子供そのものだが、実は剣道有段者だ。ええと……確か、参段? 一方こちらは、入部して間もない身。
「あの、結構です」
「か、勘違いするなよ、単なる厚意だぞ?」
「超迷惑だと言っている!」
「むぅ~! 私の稽古が嫌なのか!」
「はい!」
「……お前の気持ちはよく分かった。今日はマンツーマンで指導してやる!」
「ふふ、おかしな話だ」
 ずるりずるりと剣道場に引っ張られる俺だった。

 んで。
「……弱いなあ、お前」
「てめぇ! 初心者相手に全力ってどういうことだ! てめぇ!」
 足腰立たなくなるまで練習という名のいじめを受けたので、床に倒れたままお送りしております。
「ぜんぜん全力じゃないぞ?」
 なんという。
「……ええい! もっと全力で手加減をしろ!」
 最後の力を振り絞り、ぐばーっと起き上がってすかさずみことのほっぺをむにーっと引っ張る。
「あぅーっ!?」
「こちとらつい先日まで帰宅部だったへっぽこ学生なんだ! お前みたいに鬼強い奴は、分からないよう超手加減しろ!」
「すごい……別府くん、全く男らしくないことを全力で言い切ってる……」
 近くの部員が何か言ってるような気がするが気のせいだ。
「うーっ! ううーっ!」
「そしてほっぺが柔らかくて気持ちいいなあチクショウ!」
 むにーんむにーんみことのほっぺの感触を堪能する。したので手を離す。
「あうっ! ……うう、貴様、よくも私のほっぺをむにむにしたな!」
「されたくなかったら、練習でもっともっと手加減し、俺をいい気持ちにさせることだな! はーっはっはっはっは!」
「お前がもっと上達するよう真面目に練習しろっ!」
「めんどい」
「……まだ余力があるようだな。もっと稽古をつけてやろう」
「おやおや」
 大変なルートに入ったので逃げる。が、よく考えるともう全然体力残ってなかったのですぐ力尽きて捕まった。
「んじゃ、とりあえず素振り100まん回!」
「馬鹿の数字だ!」
「……100おくまん回!」
 今日は帰れないらしい。

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