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2025年04月20日
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【梓にアホ毛が生えたようです】

2010年04月21日
 寝てると神様が降臨したので、梓にアホ毛を生やしてくれと言った。オッケーだって。
 明けて翌日、学校に行くと梓の頭から寝癖と呼ぶには少々抵抗のある髪の束が飛び出していた。
「おはよ、梓。とんでもないイメチェンだな」
「イメチェンじゃないよ、なんか何回戻してもこうなっちゃうんだよぉ……」
 そう言いながら手で髪を撫で付けているが、何度やってもアホ毛が飛び出していた。
「うう……呪われたのかなぁ」
「いや、祝福されたんだ」
「へ? どういうこと?」
 夢のことについて事細かに説明したら怒られた。
「なんでそういうことすんだよ、ばかぁ! もーちょっといいことお願いしろよ!」
「いや、ボクっ娘にアホ毛が生えたら面白いかな、と。……うん、面白い面白い。わはははは!」
「ううううう~、ばかにすんなぁ! だいたい、タカシにせいなんだからちょっとは責任感じろよぉ!」
「責任……よし、結婚しよう」
「なんでいきなりそうなるんだよぉ!」
 梓は顔を真っ赤にして不満を露にした。
「責任と言うと、それくらいしか思いつかない」
「もー、馬鹿だなぁ。……はぁ、もういいよ。諦めるよ」
 机にうつ伏せになった梓の頭上に、ゆらゆらとアホ毛が揺らめいている。うーん、実に馬鹿っぽい。
「梓、なにか馬鹿っぽいこと言って」
「ヤだよ! ボク、馬鹿じゃないもん」
「言ったら元に戻すから」
 自分で言ったことだが、どうやって戻すのだろう。いかん、早く訂正しないと梓をぬか喜びさせてしまう!
「え! 戻せるの!?」
「ああ、任せろ」
 どうして俺はこうも考えてることと言うことが乖離するのだろう。
「ば、馬鹿っぽいこと……ええと、ええと、どんなこと?」
「ほら、いつもお前が言ってるようなこと言えばいいんだよ。『おちっこ漏れる~』とか」
「そんなこと言ったこともないよ! うーん、うーん、……そうだ!」
 梓は何か閃いたように目を大きく見開いた。
「こほん。……ぼ、ボク、なんにもわかんにゃいにゃー。お兄ちゃん、ボクに色々教えてほしいにゃー」
「任せろ!」
「なんでいきなり服脱ぐんだよ、ばかぁ! こら、ズボン脱ぐな!」
「いや、色々教えようと」
「いいから服着ろ!」
 気がつけばパンツ一丁。うーん、クラスメイツの視線が痛い。
「そ、それでどうかな? 馬鹿っぽかったかな?」
「ああ、それはもう! 思わず全裸になるくらい凄かった。妹+猫+ボクっ娘がこれほどまでの威力とは……。もっかいやって」
「ヤだよッ! 恥ずかしすぎるよ!」
「まぁいいか。充分満足したし」
 まるで俺がそう言ったのを見計らったかのように、梓のアホ毛がしおしおと垂れていった。
「あ……戻った?」
「ようだな。残念なことに」
「よかったぁ……これから先、ずっとこのままかと思ったよ」
「まぁ、それはそれで馬鹿っぽくて素敵だぞ」
「全然ちっともこれっぽっちも素敵じゃないよ!」
 こうして、梓のアホ毛騒動は幕を閉じた。だが、いつまたアホ毛が生えるとも分からない。
「まぁどうでもいいか。おやすみー」
 家に帰ってお昼寝ぐー。すると、神様が。
 明けて翌日。いつものように学校へ。
「また生えたぁぁ……」
 梓が昨日のようにアホ毛を携え、机に突っ伏していた。
「うむ、やるなぁ神」
「またタカシのせいかよぉッ!」
 半泣きで激昂する梓を見ながら、さぁ今日はどうやって遊ぼうと画策する俺だった。

拍手[10回]

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【男が苦手なボクっ娘】

2010年04月21日
「梓さん、よかったら次の休みに映画観にいかない? 今、面白いのやってるよ」
 下校中、公園を通りがかると、ボクっ娘がデートに誘われていた。
 好奇心と、なんだか分からんモヤモヤに誘われ、陰から見守る。
「……あ、その、ぼ、ボク、その、ええっと、……ごっ、ごめんなさいっ」
 梓は震える言葉を残して公園を走って出て行った。後に残された男は、呆然と梓のいた場所を見ていた。
 うむ、青春の一ページって感じだな。さ、見るもん見たし帰ろう。
 ……って思ってるのに、なんで俺、梓追いかけてんだ。しかも、こんな必死に。
 しばらく走ると、梓の後姿を見つけた。すかさず後ろ頭を軽く殴る。
「いたっ! ……あ、タカシ」
「よ、よう、何やってんだ」
 なんで俺、こんなに芝居が下手なんだ。これじゃ一部始終見てたって言ってるも同じじゃねえか。
「……見てたの?」
「や、その、見てない……ような見たような、その、……見ました。ごめん」
 観念して答えると、梓は深く息を吐いた。
「……ボクね、男の人苦手なんだ。なんか、怖くって」
「ボクっ娘が男苦手とは、これはまた異なことを」
「関係ないだろ! ……あーあ、なんでボクこんななんだろ」
「んー……よし。特訓しよう」
「へ? 特訓?」
「俺も男だし、俺で慣れろ。俺が近寄っても平気になれば、他の男も多少は平気だろ」
「……ボク、タカシは平気だよ?」
 そう言って、梓は俺の側にぴたりと寄った。
「ね? 別に怖くないもん」
「む……なんでだ?」
「いっつもひどいことされてるから、耐性がついちゃったのかないてててて!」
「酷いことなど一度もしたことないぞ」
「ほっぺ引っ張ってる! まさに今、ひどいことされてるよぉ!」
「まったく、失礼な奴だ」
 手を放すと、梓は不満そうに俺を半泣きで睨みながらほっぺをさすった。
「うー……とにかく、タカシじゃダメだよ」
「じゃ、誰か友人に頼むか。誰がいいかな……」
「ところで、特訓て何やるの?」
「そりゃ、男に慣れさせるためなんだから、デートだろう。映画行ったり、飯食いに行ったり、だらだら喫茶店で喋ったり」
「うー……男の人とだよね? ……嫌だなぁ」
「男に慣れたいんだろ? 我慢しろ」
「……タカシは平気なの?」
「ん?」
「ボクがタカシの友達とデートして、タカシは平気なの?」
 梓の言葉に、友人と梓がデートしている様子を想像する。楽しそうな梓と、だらしなく頬を緩ます友人の顔に、訳の分からない胸のムカつきを覚える。
「やっぱ特訓なし」
「ええっ!?」
「なんか知らんが、嫌だ。不愉快すぎる」
「……ボクがタカシの友達とデートするの、嫌なんだ」
「まぁ。……なんだよ、その顔」
 男嫌いが治らないというのに、梓はなんだか随分と嬉しそうに破顔した。
「えへへへへっ♪ 嫌なら仕方ないよね、ボク、特訓諦めるよ。あーあ、残念だなぁ♪」
 これっぽっちも残念そうじゃなさそうに、梓は笑顔を振りまいた
「……まぁ梓がいいなら、いいか。じゃ、暇になったことだし、映画でも観にいくか」
「あっ、うん! 行く行く! 今なにやってるの?」
「なんか、なんとかっていうホラー。血ぃドバーの、内臓ドーン! らしいぞ」
「あ、ボク急用思い出した! またね、タカシ!」
 逃げようとする梓の首根っこを掴む。
「きっと(梓の怖がる様が)面白いぞ、一緒に見ような」
「やだやだ、怖いのヤダ! うわ~ん、引っ張んないでよぉ!」
 既に半泣きの梓を引きずり、俺は映画館へ向かうのだった。

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【ネコミミボクっ娘】

2010年04月20日
 寝てると神様がやってきて何でも願いを聞いちゃると言うので、ボクっ娘にネコミミを生やしてくれと懇願した。了承してくれた。
 そんな夢を見た朝、学校に登校すると梓が帽子を被っていた。
「おはよー、梓。俺夢見てなぁ、神様にボクっ娘にネコミミ生やしてくれって頼んだんだよ。生えた?」
「タカシのせいかよぉ!」
 冗談で言ったら、梓は涙を撒き散らしながら俺に怒鳴り、勢いよく帽子を取った。ぴょいん、とネコミミが現れた。
「……マジで生えたの?」
「生えたよ! 取れないよ! 感覚まであるよ!」
 恐る恐る梓のネコミミを触る。暖かく、よく調べるとトクントクンと血が流れているのを感じる。
「んっ……」
 むにむにいじくると、くすぐったそうに梓が身をよじった。
「あ、あんまり触るなよぉ……なんか、くすぐったい」
「う、悪い。けど、凄いなぁ……奇跡だなぁ、リアルネコ属性だな」
「リアルネコ属性ってなんだよ! どうしてくれるんだよぉ!」
「そうだな……とりあえず、イチャイチャするというのはどうだ? ネコミミ娘とイチャイチャするのは長年の夢なんだ」
「タカシの妄想なんてどうだっていいよ! 戻してよ、これ!」
「妄想とか言うない。しかし、よく出来た耳だな」(耳くりくり)
「あっ、耳やぁ、耳ヤダぁ」
「…………」(無言で耳をくりくりくり)
「あぅっ、ヤダよぉ、やめてよぉ」
「う、悪い」
 慌てて手をのけると、梓は悲しそうにネコミミをぺたんと伏せ、俺をじっと見つめた。
「……いじめないでよ、タカシ」
「……梓ぁッ!」
「うわっ、飛びつくな! どこ触ってんだよ、そこおっぱいだよ!」
 梓に飛びつくと、怒られた。
「ごめんなさい、あまりに可愛くてつい」
「かっ、可愛いとか言ってもダメだよ! ぷんぷんだよ! 怒りのあまり変身しそうだよ!」
「何に変身するんだ?」
「え、えと……ねこ?」
 もう変身してます。
「うー……でも、どうしよう。こんな変なのついてたら、みんなに笑われちゃうよぅ……」
「そうでもないぞ」
「え?」
「ほれ、見てみ」
 周囲を見渡すと、男連中が鼻の下を際限なく伸ばしていた。
「な? 男子連中に大人気。ヤッタネ♪」
「よくないよぉ! なんか嫌なオーラ感じるよぉ!?」
「今日のオカズ第一位はネコ梓だな。ヤッタネ!」
「? おかずって……別にボクご飯作ってないよ?」
「…………」
 カマトトぶってる、と言いたいが梓のことだ。マジなんだろう。
「な、なんで無言で頭撫でてるの?」
「いつまでもそのままの君でいてください」
 不思議そうにしてる梓の頭を、俺はいつまでも撫でていた。

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【ツンデレがお見舞いに来てくれたら】

2010年04月19日
 風邪ひいた。鼻は詰まるはノドは痛いは熱は出るはこの世の地獄を一人味わってます。
 んなわけで布団に包まってゲホゴホ言ってると、インターホンが鳴った。受話器を取る。
「うー……はいはい、なんでしょう」
「あ、タカシ? ボク、ボクだよ」
 黙って受話器を置く。瞬間、インターホンの音が連続で鳴り響いた。
「はい」
「なんで黙って切るんだよ! ボクだよ、梓だよ!」
「や、なんとなく。んで、なんか用か? 風邪ひいてしんどいので、用は手短に頼む」
「あ、それなんだけど、とりあえず家に入っていい?」
「んー……まぁ許す。鍵はしてないので勝手に入るがいい」
「なんでそんな偉そうなのかなぁ……」
 程なく、ボクっ娘が制服のまま我が家に侵入してきた。
「こんちは、タカシ」
「お帰りはあちらです」
「なんでだよ! 来たばっかりだよ!」
「あーもう、あんまでかい声出すな。頭に響いて痛い」
「あっ、そうだね、タカシ病人だもんね。ほらほら、ふらふら歩いてないで布団に入ってないと」
 誰のせいでふらふらしてんだと言いたいが、いい加減体もだるいので大人しく誘導されるがまま布団に入る。
「んで、何用だ? ……まさか、調子の悪い時を狙って普段の鬱憤を晴らそうと」
「違うよ! タカシ、今日学校休んだでしょ? お見舞いに来たんだよ」
 そう言って、梓は持ってきた袋から何か取り出した。
「もーもーかーんー♪(青いサイバーなロボネコ風に)」
「超似てねえ」
「うぐっ……か、風邪引いてる時はやっぱりこれだよね♪ いまお皿に出すから、ちょっと待っててね」
 そう言い残して、梓は台所に向かった。
「もーもかん~、もーもかん~♪ かーぜの時は~、桃!」
 微妙に音がずれてる変な歌が聞こえてくる。病状が悪化しそうだ。
「はーい、桃だよ。食べて食べて」
 梓が嬉しそうに桃を入れた皿を持って戻ってきた。
「変な歌が聞こえてきて病状が悪化し、風邪が肺炎にパワーアップした。たぶん数日後に死ぬ」
「死なないよッ! 変な歌じゃないし! いーから食べる」
「うー……食欲ねえんだよ」
「何か食べないとよくならないよ? ほら、一口だけでもいいから食べて。はい、あーん」
「んー……梓が口移ししてくれるなら食う」
「なっ、なに言ってるんだよ、ばかっ! そんなことできるわけないじゃん!」
「じゃあ、このまま枯れ死ぬこととしよう」
「うっ、う~う~……う~、う~!」
「うーうーうるさい。消防車か」
「うう……く、口移ししたら、食べるんだよね?」
「うむ」
 別に口移しでなくとも食べれるんだけど、即答する。
「じゃ……じゃあ、したげるよ。い、言っとくけどね、本当はヤなんだからねッ!?」
「もぐもぐ」
「人が口移ししたげるって言ってるのに一人で食べてる!? もぐもぐって!」
「冗談に決まってるだろ、ばーか」
「ううっ……タカシに馬鹿って言われると、どこまでも落ち込んで行くよ」
 失礼な奴だもぐもぐ。
「うーん……味しないな。梓、醤油取って」
「取らないよッ! 桃に醤油かけるなんて聞いたことないよ!」
「なんか、味しないんだ。ソースでもいいから取って」
「風邪ひいてるからだよ。食べたらぐっすり寝て、早く元気になってよね? タカシが学校来ないと、なんだかつまんないよ」
「じゃあ今から学校行こう。梓、そこの制服取って」
「もう今日は学校終わったから意味ないよッ! ……はぁ、タカシって病気の時でも変なこと言ってるんだね。……いつも熱にうなされてるのかな?」
 梓は真剣な顔をして失礼なことを考えていた。
「ま、とにかく見舞いありがとな。今から寝るし、帰ってもいいぞ」
「そうはいかないよ! タカシ、放ってたら野垂れ死にそうだもん。一度家に帰ってお泊りの準備してきたし、今日は泊まっていくよ」
「え」
 梓は鞄を開き、パジャマやら歯磨きやら取り出した。
「明日は休みだし、いいよね? ボク、一所懸命タカシのお世話するよ!」
「や、その、……俺、男だよ?」
「? 知ってるよ?」
 このお嬢さんは危なすぎる。俺を男と知ってて泊まるとは……。釘を刺したほうがいいな。
「梓、おまえだって一応女の子なんだから、ふらふら男の家に泊まるのはよくないぞ。お兄さん、おまえが変な奴に騙されないか不安で不安で」
「? 他の男の人の家に泊まるわけないじゃん。タカシの家だから泊まるんだよ?」
「……じゃ、じゃあ大丈夫……かな。うん」
 ええい、あっけらかんと恥ずかしいこと言いおって。くそ。
「おばさん達、今日明日と出張って聞いたし……あっ! タカシ、熱上がってるよ! 顔真っ赤だよ! 体温計たいおんけい……」
「あ、いや、これは別に熱とかそんなじゃなくて」
 俺の話なんか聞いちゃいないのか、梓は体温計を探しに部屋から出て行った。
 うう……くそ、梓みたいなつるぺた娘を意識してしまうとは……不覚。
 いや、違う違う違う! 意識なんかしてない、これは熱のせいだ。きっとそうだ。そうに違いない。
「あったよー、タカシ!」
 だから、満面の笑みを浮かべて部屋に飛び込んできた梓を見て、動悸が激しくなったのも熱のせいだ。

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【忙しくて全くツンデレに連絡しなかったら】

2010年04月17日
 春休みはなんだか妙に忙しくて、気がついたら新学期でした。新しいクラスだにゃーと思いながら教室に入ったら、なじみの顔ぶれ。そういや今年は繰り上げで、クラス替えなかったな。
 適当な席に座ってぼーっとしてると、一番馴染みのある顔が教室に入ってきた。なんだか冴えない顔で教室内をきょろきょろしてるなと思ったら、目があった。なんかすっごい笑顔になったあと、顔をぷるぷる振って真顔にした。で、なんかこっち来た。
「どういうことだよっ!」
「うわあっ」
 ずばーんと机を叩かれ、びっくりした。
「なんでずーっと連絡しないんだよっ! 新手のいじめかよ!」
 馴染みのある顔NO.1こと梓は、俺に噛み付かんばかりの勢いでまくしたてた。
「ああ、ちょっと待って。びっくりして心臓が止まってるので」
「タカシが死んだ!? ど、どしたらいいの!? ひっひっふー?」
「それはラマーズ法であり、それでは俺が妊娠していることになってしまうので却下」
「え、えと……じゃあじゃあ、どしたらいいの?」
「こういう時は人工呼吸で蘇生するのがベターではないかと」
「そっ、それだよ! ないすな案だよ! ……でも、それって溺れてる人にするんじゃないの?」
「そうなんだけど、適当言ってちゅーしたかったんだ」
「…………。タカシのばかぁっ!」
「いやいや、ボクっ娘のアレ加減には敵いません」
「アレ加減ってなんだよ!」
 ボクっ娘が怒った。
「そ、そんなのはどうでもいーの! なんで春休みの間、ずーっと連絡してこないんだよ!」
「忙しくて」
「忙しくてもちょこっと連絡する暇くらいあるだろ!」
「ハトの餌を切らしてて」
「今時連絡手段が伝書鳩のみの人なんていないっ!」
「なんだとコンチクショウ!? 分かった、お前がそう言うなら今から残りの人生の全てをかけ、連絡手段がハトのみの人を探してやる! 覚えてやがれ!」
「なんで怒ってるの!?」
「や、なんか目の前の人が怒ってたので、こっちも怒ることで中和できるかなと思ったんだ。できた?」
「できないっ! とにかく、授業終わったら待ってろよな! 一人で帰ったらボク怒るからね!」
「分かった、分身して帰る」
「普通に待ってるの!」
「はい」
 それだけ言って、梓は離れていった。なんかいっぱい怒られたなーと思ってたら、チャイムが鳴って先生が入ってきた。体育館へ行けと命令された。
 今日は初日なので、入学式だけですぐ終わった。分身の術を試したがもう一人俺が現れる気配がなかったので大人しく教室にいると、友人らと挨拶を交わした梓がこちらにやってきた。
「あ、待ってたね。偉い偉い♪」
 頭にやってきた手を素早くかわす。
「なでなでをよけるなよっ!」
「折り紙の要領で折り畳まれるのかと思ったんだ」
「どれだけボク怪力なんだよっ! ……もー、いいから帰ろ?」
「任せろ、得意だ」
「なんで普通に言えないんだろ……?」
 不思議そうな梓と一緒に学校を出る。
「でさ。何がそんな忙しかったの? ……ボクをずーっと無視するくらい忙しいことって、なに?」
「なんか恨まれてやしませんか」
 じとーっとした目つきで見られていると、そんな気がしてならない。
「気のせいだよっ」
「なんだそうか。いやよかったよかったうわははは!」
「気のせいじゃないよっ! 超恨んでるよっ! 春休みはいっぱいいっぱいタカシと遊ぼうって計画がおじゃんだよ! おじゃる丸だよ!」
 何の憂いもない笑いをしたら即意見を翻された。
「色々思うところはありますが、とりあえず。おじゃる丸ではないと思います」
「うっ、うるさいっ! れーせーに否定すんな、ばかっ!」
「あと、俺と遊びたかったのですか」
「う……な、なんだよ。ボクがタカシと遊びたいって思ったらダメなのかよ!」
「ダメではないです。いやね、春休みはバイトしてたんだけど、なんか人手が足りなかったらしく連日入る羽目になり、他の事をする余裕が全くなかったんだ。ごめんな、梓」
「……もーいーよ。あ、てことはさ、いっぱいお金あるってこと?」
「全額寄付したからないんだ」
「タカシが偽善者に成り果てた!?」
「ボクっ娘の台詞が悪意に満ち満ちている」
「だ、だって、そんなのするキャラじゃないじゃんか。あ、なんかすっごく悪いことしちゃって、その罪滅ぼしのために寄付したの?」
「ああ、実は梓の銀行口座の金を全額盗っちゃってな。あまりの罪悪感に耐え切れず、その金を全部寄付した」
「ボクだけが大損してる!?」
「ものすごく感謝されて気持ちよかった」
「タカシ悪魔だよ、悪魔超人だよ!」
「しかし、悪魔超人になる覚悟はなかったので妄想だけでやめておいた。そんな俺は偉いか?」
「……まー半分くらいはそうだと思ってたけど、ちこっとだけ信じちゃったよ。タカシって変なスキル持ってるから」
「ああ、嘘妖怪説明スキルな。就職に役立ちそうだ」
「全然全くちっとも役立たないっ! ……とにかくさ、バイト終わったんだよね? これからは暇なんだよね?」
「うん」
「……へへー」
 なんかニヤニヤしながら梓が寄ってきた。同じ距離だけ梓から離れる。
「離れるなっ!」
「だって、あのままの場所にいたら梓のあまりの可愛さに思わず手を握ってしまい、そうしたら『痴漢。慰謝料100万。明日までに現金で』ってお前に言われるから」
「ボクはそんな悪人じゃないっ! ……て、ていうかさ、可愛いとかゆーなよ」
 怒りながらも、梓は顔を赤くしながらうにゃうにゃ言った。
「ぶさいく」
「ぐーぱんち!」
 ぐーぱんちは大変痛いです。
「お前の望む通り言ったのにこの仕打ち。神はいないのか!」
「誰も悪口言えとはいってない!」
「すいません。平常運転で可愛いです」
「うっ! ……も、もー。タカシって、すぐそーゆーこと言うよね」
 満更でもない表情で、梓は俺の腕を指でうにうにした。
「貧乳ってだけで俺内部で計測される点数が+50されるからな」
「……タカシって、すぐそーゆーこと言うよね」
 先ほどと同じ台詞だが、温度差が尋常ではない。
「機嫌も直ったようだし、今からどこか遊びに行くか」
「ちっとも直ってない! ……な、直ってないけど、行く」
 俺の制服の裾をちょこんと掴み、上目遣いでこっちを見ながら梓はおずおずと言った。
「ははーん。さてはこの生物、俺を萌え殺す気だな?」
「何の話だよっ! ていうか、いきものってゆーなっ!」
 もぎゃもぎゃ言ってる梓と一緒に遊びに行きました。

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