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2024年11月23日
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【ツンデレをバスケに誘ったら】
2010年02月26日
体育の授業でバスケすることになったのだが、休んでる生徒がいるのでちょっと数が足りない。
「おいもーおいもー今日のおやつはさつまいもー」
どうしようかと思ってたら、丁度嬉しそうにさつまいもを食べながら体育館の外を歩いてるちっちゃい子供……もとい、大谷先生を見つけた。
「これでいっか」
「はわわわわ!? あ……ありのまま今起こった事を話すです!『先生がおやつを食べていたら、いつのまにかバスケに参加させられていた』……何を言ってるのかわからねーと思うが、先生も何をされたのか分からなかったです! 頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わいました……」
「先生、話が長い」
なんか独り言を喋ってる間に先生に敵方のゼッケンをつけ、準備は終了。
「別府くん、先生は体育の先生じゃないのでバスケに参加するのは変だと思いますよ?」
「先生が大人と言い張ってるよりは変じゃない」
「な、何を言ってるですか! 先生は立派な成人ですよ! ほらほら、めんきょしょーにだってそう書いてむぎゅ」
懐から何か取り出そうとしてた先生の顔にボールがぶち当たり、先生は愉快な声を上げてぶっ倒れた。転がったボールは誰かに奪われたが、今はそれより。
「あー……先生、大丈夫?」
「ぴゃー……ぴゃー……」
先生は目をぐるぐる回したまま、壊れたラジオみたいにぴゃーぴゃー繰り返していた。
「ダメか。次の大谷先生と交換しよう。次のはこんな特殊なのじゃなく、普通の大人だといいなあ」
「交換とかないですっ! 先生はおんりーわんです! あと今でも普通の大人です! ないすぼでーです!」
先生が起きた。
「前半は本当、後半は嘘」
「全部本当ですっ! もー怒りました、先生本気出します! 荒ぶる有袋類の異名を持つ先生の力、とくと見るがいいです! 別府くんなんてほひんほひんにしちゃいますよ!」
「先生、ドアラの中の人?」
俺の問いかけに答える前に、先生はボールを追いかけに行ってしまった。俺も追いかけよう。
「先生にっ! 先生にボールをっ! 別府くんをほひんほひんにするため、先生にボールくださいっ!」
「先生は小学生級の体長のため一般人には見つけづらいのか、ぴょんぴょん飛び跳ねているにも関わらず誰にも相手されていなかった」
「思ってることは心の中に秘めてくださいッ!」
先生が怒ってる間にボールはパスされ、相手ゴール付近まで飛んで行ってしまった。
「もーっ! 別府くん、先生の邪魔しないでくださいっ!」
「邪魔した覚えはない」
「メチャメチャしてるじゃないですかっ! 次邪魔したら、今学期の成績ぜろにします!」
「職権濫用だ」
「うるさいですっ! がーっ!」
先生は大きく口を開けて俺を威嚇し、ボールの元に走っていった。俺も走る。
「あーうーっ! ボールをっ! 先生にボールをぉぉぉぉぉっっ!!」
あまりに必死すぎて哀れみを誘ったのか、俺の味方が先生にボールをパスした。
「……ボール。これで別府くんをはふんはふんに!」
先生は喜び勇んでボールを持って走った。審判の笛が鳴る。
「トラベリング」
「ふぇ?」
俺の味方が先生からボールを取り、コートの外に出た。先生は目を白黒させたまま、その様子をぼーっと見ていた。
「……先生、ボール持ったまま走ったら反則だよ?」
「そっ、そんなの先に言ってくれないと分からないじゃないですか! また別府くんのせいですね! 別府くんのいじわるっ!」
「いや、今回に限っては俺のせいじゃないかと」
「うるさいですっ! 別府くんは黙ってくださいっ! 別府くんの声は耳障りですっ!」
「や、耳障りでもなんでもいいけど、先生、靴……」
「うるさいのですっ! 別府くんは敵ですっ! もー先生に話しかけないでくださいっ!」
先生は肩をいからせ、ボールを奪いに走っていった。
「まぁ、話しかけるなと言うならそうするけど……」
「みぎゃあっ!?」
先生がコケた。
「うう、ううう……痛い、痛いよぅ……」
「先生、靴の紐がほどけてるよ」
「先に言ってくだしゃいっ!」
先生の元に走り寄ってそう告げると、ずるずると鼻をすすりながら先生が怒った。
「いや、話しかけるなと言われたし」
「ううううう……痛いよぅ。もうヤだ、帰りたい……」
先生はさめざめと泣きだしてしまった。どうやら膝をすりむいたようだ。どうしよう。「せっかくだから俺は逃げるぜ!」といきたいところだが、泣きじゃくってる子供を見てると良心がチクチクと。
「ぴゃっ!?」
「えーと。委員長、ちょっと先生保健室連れてくから」
委員長にそう告げて、泣いてる先生を小脇に抱えて体育館を出る。
「……ぐしゅ。先生、ペットじゃないです。こんな持たれ方、屈辱です……」
「あ、そだな。ごめんごめん」
「また別府くんへの恨みがひとつ増えました……」
嫌な事を言う先生を一度地面に降ろし、今度はお姫様抱っこで抱える。
「こっ、これは恥ずかしすぎますっ! いち早く降ろすべきだと提案しますっ!」
「大丈夫大丈夫。授業中だし誰も見てないって」
「グラウンドに生徒いますっ! みんな見てますっ! ニヤニヤしてます! とても!」
「空気感染する笑い病が爆発的に流行ったんだ」
「そっちの方が怖いですっ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ先生を抱いたまま校舎の中に入り、保健室へ向かう。
「先生、軽いなあ。ちゃんと飯食ってるか?」
「ご飯は食べてます。ぱくぱく食べます。ご飯好きです。……またちっちゃいって馬鹿にする気ですね」
「いやいや、馬鹿にはしてないぞ? 先生、思ったんだが俺に対して邪推が過ぎないか?」
「そんなことないです。別府くんは先生にいじわるするのが好きだから絶対に馬鹿にしてます。別府くんなんて大嫌いです。つーん、です」
先生はつーんと言いながら顔をそむけた。見た目だけじゃなく、精神的にも子供な先生に思わず苦笑する。
「あー、それは構わんが、仮にも教師が生徒を選り好みしていいのか?」
「あっ……ひ、秘密ですよ?」
先生は口元に指を一本あて、小さな声で囁いた。嫌いと言った相手に秘密を持ちかける先生に、思わず吹き出してしまう。
「ぷあっ! べ、別府くん、つばがかかりました、つばが! 汚いです!」
「あ、いや、ごめんごめん」
「ぬー……」
先生は俺を睨みながら自分の顔を拭った。
「やー、先生は平和だな」
「よく分からないけど、また馬鹿にされた気がします……恨み帳に書いておきます」
んなの書いてるのか、とか思いながら保健室に入る。
「おお、大谷ちゃん。どうした、別府なんかに抱えられて」
保健室の主である保健医、保田先生が俺と先生を見て疑問符を浮かべていた。
「大谷先生にどうしても抱っこしてくれとせがまれ、仕方なく」
「んなこと言ってないですっ! 真っ赤な嘘です! そんなこと思ったこともないです! 本当です! ほ、本当ですから!」
そんな繰り返さなくても分かってるっつーの。
「ああ、そういえば大谷ちゃん前になにか言ってたな。別府に抱っこされたいとか……」
「ぎゃーぎゃーぎゃーっ! 何も聞こえませんっ! 聞こえませんよっ!」
突然先生が騒ぎ出したため、保田先生が言ってる事をよく聞き取れなかった。
「夜鳴きの時間だ。保田先生、これ頼む」
猫のように先生を持ち、保田先生に渡す。
「今度は赤ちゃん扱いですかっ! 別府くんはもう少し先生を敬う気持ちを持つべきですっ! 先生、怒り心頭ですよ!」
「はいはいはい。保田先生、後は頼むな」
「うむ。任せておけ」
鷹揚にうなずく先生に任せて体育館に戻ろうとしたら、大谷先生に声をかけられた。
「あ、あの……」
「うん?」
「……そ、その。あ、ありがとうございました。……抱っこしてくれて」
「抱っこ?」
「っ! じゃ、じゃなくて! ここまで運んでくれて! せ、先生、大人ですから嫌いな人にもちゃんとお礼言うんです! それだけですからっ!」
「はぁ……」
「い、以上ですっ! 早く出て行ってくださいっ! 別府くんの顔見てたら、吐き気げーげーですっ!」
先生は顔を真っ赤にしてまくし立てた。
「先生、顔赤いけど、どっか悪いんじゃ……」
「ふぇっ!? あああ、赤くなんてないですっ! 別府くんの目がおかしいんですっ!」
「いや、私の目にも赤く見えるな」
「すーちんっ!」
大谷先生が保田先生に怒鳴った。保田→やすだ→すーちん、か。仲いいんだな、この二人。
「いいから早く出て行ってくださいっ!」
「はいはい。じゃな、先生方」
半泣きになっていたので、先生を置いて保健室を出る。
まったく、愉快な先生だ。そう思いながら体育館に走った。
「おいもーおいもー今日のおやつはさつまいもー」
どうしようかと思ってたら、丁度嬉しそうにさつまいもを食べながら体育館の外を歩いてるちっちゃい子供……もとい、大谷先生を見つけた。
「これでいっか」
「はわわわわ!? あ……ありのまま今起こった事を話すです!『先生がおやつを食べていたら、いつのまにかバスケに参加させられていた』……何を言ってるのかわからねーと思うが、先生も何をされたのか分からなかったです! 頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わいました……」
「先生、話が長い」
なんか独り言を喋ってる間に先生に敵方のゼッケンをつけ、準備は終了。
「別府くん、先生は体育の先生じゃないのでバスケに参加するのは変だと思いますよ?」
「先生が大人と言い張ってるよりは変じゃない」
「な、何を言ってるですか! 先生は立派な成人ですよ! ほらほら、めんきょしょーにだってそう書いてむぎゅ」
懐から何か取り出そうとしてた先生の顔にボールがぶち当たり、先生は愉快な声を上げてぶっ倒れた。転がったボールは誰かに奪われたが、今はそれより。
「あー……先生、大丈夫?」
「ぴゃー……ぴゃー……」
先生は目をぐるぐる回したまま、壊れたラジオみたいにぴゃーぴゃー繰り返していた。
「ダメか。次の大谷先生と交換しよう。次のはこんな特殊なのじゃなく、普通の大人だといいなあ」
「交換とかないですっ! 先生はおんりーわんです! あと今でも普通の大人です! ないすぼでーです!」
先生が起きた。
「前半は本当、後半は嘘」
「全部本当ですっ! もー怒りました、先生本気出します! 荒ぶる有袋類の異名を持つ先生の力、とくと見るがいいです! 別府くんなんてほひんほひんにしちゃいますよ!」
「先生、ドアラの中の人?」
俺の問いかけに答える前に、先生はボールを追いかけに行ってしまった。俺も追いかけよう。
「先生にっ! 先生にボールをっ! 別府くんをほひんほひんにするため、先生にボールくださいっ!」
「先生は小学生級の体長のため一般人には見つけづらいのか、ぴょんぴょん飛び跳ねているにも関わらず誰にも相手されていなかった」
「思ってることは心の中に秘めてくださいッ!」
先生が怒ってる間にボールはパスされ、相手ゴール付近まで飛んで行ってしまった。
「もーっ! 別府くん、先生の邪魔しないでくださいっ!」
「邪魔した覚えはない」
「メチャメチャしてるじゃないですかっ! 次邪魔したら、今学期の成績ぜろにします!」
「職権濫用だ」
「うるさいですっ! がーっ!」
先生は大きく口を開けて俺を威嚇し、ボールの元に走っていった。俺も走る。
「あーうーっ! ボールをっ! 先生にボールをぉぉぉぉぉっっ!!」
あまりに必死すぎて哀れみを誘ったのか、俺の味方が先生にボールをパスした。
「……ボール。これで別府くんをはふんはふんに!」
先生は喜び勇んでボールを持って走った。審判の笛が鳴る。
「トラベリング」
「ふぇ?」
俺の味方が先生からボールを取り、コートの外に出た。先生は目を白黒させたまま、その様子をぼーっと見ていた。
「……先生、ボール持ったまま走ったら反則だよ?」
「そっ、そんなの先に言ってくれないと分からないじゃないですか! また別府くんのせいですね! 別府くんのいじわるっ!」
「いや、今回に限っては俺のせいじゃないかと」
「うるさいですっ! 別府くんは黙ってくださいっ! 別府くんの声は耳障りですっ!」
「や、耳障りでもなんでもいいけど、先生、靴……」
「うるさいのですっ! 別府くんは敵ですっ! もー先生に話しかけないでくださいっ!」
先生は肩をいからせ、ボールを奪いに走っていった。
「まぁ、話しかけるなと言うならそうするけど……」
「みぎゃあっ!?」
先生がコケた。
「うう、ううう……痛い、痛いよぅ……」
「先生、靴の紐がほどけてるよ」
「先に言ってくだしゃいっ!」
先生の元に走り寄ってそう告げると、ずるずると鼻をすすりながら先生が怒った。
「いや、話しかけるなと言われたし」
「ううううう……痛いよぅ。もうヤだ、帰りたい……」
先生はさめざめと泣きだしてしまった。どうやら膝をすりむいたようだ。どうしよう。「せっかくだから俺は逃げるぜ!」といきたいところだが、泣きじゃくってる子供を見てると良心がチクチクと。
「ぴゃっ!?」
「えーと。委員長、ちょっと先生保健室連れてくから」
委員長にそう告げて、泣いてる先生を小脇に抱えて体育館を出る。
「……ぐしゅ。先生、ペットじゃないです。こんな持たれ方、屈辱です……」
「あ、そだな。ごめんごめん」
「また別府くんへの恨みがひとつ増えました……」
嫌な事を言う先生を一度地面に降ろし、今度はお姫様抱っこで抱える。
「こっ、これは恥ずかしすぎますっ! いち早く降ろすべきだと提案しますっ!」
「大丈夫大丈夫。授業中だし誰も見てないって」
「グラウンドに生徒いますっ! みんな見てますっ! ニヤニヤしてます! とても!」
「空気感染する笑い病が爆発的に流行ったんだ」
「そっちの方が怖いですっ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ先生を抱いたまま校舎の中に入り、保健室へ向かう。
「先生、軽いなあ。ちゃんと飯食ってるか?」
「ご飯は食べてます。ぱくぱく食べます。ご飯好きです。……またちっちゃいって馬鹿にする気ですね」
「いやいや、馬鹿にはしてないぞ? 先生、思ったんだが俺に対して邪推が過ぎないか?」
「そんなことないです。別府くんは先生にいじわるするのが好きだから絶対に馬鹿にしてます。別府くんなんて大嫌いです。つーん、です」
先生はつーんと言いながら顔をそむけた。見た目だけじゃなく、精神的にも子供な先生に思わず苦笑する。
「あー、それは構わんが、仮にも教師が生徒を選り好みしていいのか?」
「あっ……ひ、秘密ですよ?」
先生は口元に指を一本あて、小さな声で囁いた。嫌いと言った相手に秘密を持ちかける先生に、思わず吹き出してしまう。
「ぷあっ! べ、別府くん、つばがかかりました、つばが! 汚いです!」
「あ、いや、ごめんごめん」
「ぬー……」
先生は俺を睨みながら自分の顔を拭った。
「やー、先生は平和だな」
「よく分からないけど、また馬鹿にされた気がします……恨み帳に書いておきます」
んなの書いてるのか、とか思いながら保健室に入る。
「おお、大谷ちゃん。どうした、別府なんかに抱えられて」
保健室の主である保健医、保田先生が俺と先生を見て疑問符を浮かべていた。
「大谷先生にどうしても抱っこしてくれとせがまれ、仕方なく」
「んなこと言ってないですっ! 真っ赤な嘘です! そんなこと思ったこともないです! 本当です! ほ、本当ですから!」
そんな繰り返さなくても分かってるっつーの。
「ああ、そういえば大谷ちゃん前になにか言ってたな。別府に抱っこされたいとか……」
「ぎゃーぎゃーぎゃーっ! 何も聞こえませんっ! 聞こえませんよっ!」
突然先生が騒ぎ出したため、保田先生が言ってる事をよく聞き取れなかった。
「夜鳴きの時間だ。保田先生、これ頼む」
猫のように先生を持ち、保田先生に渡す。
「今度は赤ちゃん扱いですかっ! 別府くんはもう少し先生を敬う気持ちを持つべきですっ! 先生、怒り心頭ですよ!」
「はいはいはい。保田先生、後は頼むな」
「うむ。任せておけ」
鷹揚にうなずく先生に任せて体育館に戻ろうとしたら、大谷先生に声をかけられた。
「あ、あの……」
「うん?」
「……そ、その。あ、ありがとうございました。……抱っこしてくれて」
「抱っこ?」
「っ! じゃ、じゃなくて! ここまで運んでくれて! せ、先生、大人ですから嫌いな人にもちゃんとお礼言うんです! それだけですからっ!」
「はぁ……」
「い、以上ですっ! 早く出て行ってくださいっ! 別府くんの顔見てたら、吐き気げーげーですっ!」
先生は顔を真っ赤にしてまくし立てた。
「先生、顔赤いけど、どっか悪いんじゃ……」
「ふぇっ!? あああ、赤くなんてないですっ! 別府くんの目がおかしいんですっ!」
「いや、私の目にも赤く見えるな」
「すーちんっ!」
大谷先生が保田先生に怒鳴った。保田→やすだ→すーちん、か。仲いいんだな、この二人。
「いいから早く出て行ってくださいっ!」
「はいはい。じゃな、先生方」
半泣きになっていたので、先生を置いて保健室を出る。
まったく、愉快な先生だ。そう思いながら体育館に走った。
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【ツンツンしたらデレたようです】
2010年02月23日
ふとしたことで遊びに来てた大谷先生を怒らせてしまった。
「もー別府くんなんて知りませんっ! 一人でうにゃうにゃしててください、ばかーっ!」
「待て、うにゃうにゃって具体的にどうすればいいんだ、先生、せんせいーっ!」
俺の悲痛(?)な叫びを無視し、先生は部屋から出て行ってしまった。
……うーん、怒りっぽいなあ先生は。もっとも、からかい過ぎた俺も悪いか。仕方ない、謝ろう。
どうやって謝るか思案しながら家を出て、近所にある先生の家へ。インターホンを押すと、ほどなくして先生が出た。
『……はい』
「あ、俺俺。開けて」
『…………』
先生は無言で切った。よし、ナイス度胸。インターホン連打ぴんぽんぴんぽんぴぽぴぽぴぴぴぴぴ!
『うるさいです近所迷惑です先生迷惑ですっ!』
「開けてくれるまで連打が続く地獄」
『ぐうううう……どうぞ』
玄関を潜り、廊下を抜け、先生が待つ部屋へ。ファンシーなぬいぐるみが訪問者を睨みつける実に居心地の悪い部屋の中心で、先生は座っていた。
「…………」
「このちんまい生物(恐らく幼体)は機嫌を損ねているのか、ご主人様が来たというのにそっぽを向いて座っていた」
「誰に言ってるんですか! ちんまくないですし幼体とか意味分かんないですしなまものって言わないで欲しいですっ! あと、別府くんはご主人様でもなんでもなくてただの生徒ですっ! ……ぜはーぜはー」
「先生、つっこみすぎて息が荒いぞ。ほら、これでも飲んで落ち着け」
テーブルの上に置いてあった牛乳を先生に手渡す。
「あ、ありがとございます。ごくごく……」
「精液」
「ぶはーっ!」
勢いよく先生が牛乳を吐いた。
「ななな、なんてこと言うのですか! ばか、えっち!」
「いや、そうだったらいいなーっていう俺の想念が口からついて出ただけなんだ。雲が綿菓子だったらいいのになーって思うような子供のような純真な心を持ってるんだ。そんな純真な俺を褒めろ」
「純真な心の持ち主は牛乳をせ、せ、……な、なんかそーゆーこと言いません!」
「なんかそーゆーことって?」
「だ、だから……そーゆーことです!」
「だから? 具体的に?」
「う、うう……別府くんのえっち! 先生にえっちなこと言わせたいだけでしょ!」
「なんならえっちなこともしたい。その幼い肢体をもみくちゃにしたい」
「ひええええっ!」
先生は部屋の隅っこに逃げて震えている。……ととっ、いかんいかん。謝りに来たのだった。この先生を見ると、ついついいじめてしまう。
「先生のないすばでーが生徒を籠絡させてしまいました! こ、このままでは先生、貞操の危機です!」
なんか余裕あるっぽい。もうちょっといじろうか。……いやいやいや。終わらないし、とっとと謝って帰ろう。
「や、先生、そうじゃなくて」
「う?」
う、と言いながら先生は稚児のような表情で俺を見上げた。ちょっとクラッとくる。
「ど、どしました? 貧血ですか?」
「や、違う。ちょっと属性の野郎が顔を出しまして」
「ぞくせー?」
「……っ! そ、そう、属性。全く、事あるごとに顔を出しやがる」
「?」
先生はよく分からないのか、ちょこんと首をかしげた。全く、この先生は、計算でやってないのだから質が悪い。俺だからよかったものの、アレな人間だったら今頃調教されてるぞ。
「ところで先生、俺に飼われない?」
「はい?」
しまった、俺はアレな人間だった。必死で脳内の真人間スイッチを入れ、軌道修正する。
「あー、こほん。今のなし。えっとだな、先生。ごめんな」
「はい?」
「だから、その、俺の家での云々」
そう言われて思い出したのか、先生は急にそっぽを向いた。
「許しません。先生、度を越した冗談は嫌いです」
「や、だからその、悪かったって」
「知りません」
先生はそっぽを向いたままほっぺを膨らませてる。困った。何が困ったって、ぷにぷにしたほっぺをつつきたくて仕方がないことだ。
「えい」
ほら見ろ、我慢できずに押しちゃったじゃないか。
「……何のつもりですか」
「ぷにぷに」
「ぷにぷにじゃないです。先生、大人ですからガサガサです」
「いや、大人だからって誰も彼もがガサガサとは限らないと思うが」
「うるさいです。いいからツンツンするのやめてください」
こうして喋ってる間も先生のほっぺをツンツンし続けてる俺の指をどう思うか。家主としては褒めてやりたい気持ちで一杯です。
「先生、教え子にほっぺをつつかれるだなんて思いもしませんでした」
「予想もしないことが起きるから、人生ってのは楽しいもんだ」
「先生、ちっとも楽しくないですが」
「俺は楽しいぞ。よかったな」
「ちっともよくないです! どーして怒られてるのにまるで気にせず私のほっぺをツンツンできるんですか!? 頭おかしいです!」
「いや、気にはしてるんだよ? ただ、先生のほっぺをツンツンするのが楽しすぎて、謝ることに気が回らないんじゃないかな?」
「謝る気、ぜろですよ。うー……」
唸りながらも、先生はほっぺツンツンを止めようとはしなかった。
「先生」
「なんですか」
「口元が笑ってる」
「ふえぇっ!? わ、笑ってません! ちっとも愉快じゃないです! 楽しくもないです! 教え子にツンツンされ、不愉快極まりないです!」
「そうなの?」
「そうなのです!」
そう断言する先生は、俺にほっぺをツンツンされて笑顔をこぼしていた。
そしてその笑顔に我慢できずに抱っこしたら叱られた。
「いくら先生がないすぼでーだからって、いきなり抱っこしたりしたらダメでしょっ!」
「はぁ、すいません。でも、ないすぼでーではないよ。小学生だよ」
「小学生じゃないですっ! よく間違われますが、大人です! そしてないすぼでーです!」
「全部嘘」
「がーっ!」
両手をあげて威嚇する自称大人でないすぼでーの大谷先生だった。
「もー別府くんなんて知りませんっ! 一人でうにゃうにゃしててください、ばかーっ!」
「待て、うにゃうにゃって具体的にどうすればいいんだ、先生、せんせいーっ!」
俺の悲痛(?)な叫びを無視し、先生は部屋から出て行ってしまった。
……うーん、怒りっぽいなあ先生は。もっとも、からかい過ぎた俺も悪いか。仕方ない、謝ろう。
どうやって謝るか思案しながら家を出て、近所にある先生の家へ。インターホンを押すと、ほどなくして先生が出た。
『……はい』
「あ、俺俺。開けて」
『…………』
先生は無言で切った。よし、ナイス度胸。インターホン連打ぴんぽんぴんぽんぴぽぴぽぴぴぴぴぴ!
『うるさいです近所迷惑です先生迷惑ですっ!』
「開けてくれるまで連打が続く地獄」
『ぐうううう……どうぞ』
玄関を潜り、廊下を抜け、先生が待つ部屋へ。ファンシーなぬいぐるみが訪問者を睨みつける実に居心地の悪い部屋の中心で、先生は座っていた。
「…………」
「このちんまい生物(恐らく幼体)は機嫌を損ねているのか、ご主人様が来たというのにそっぽを向いて座っていた」
「誰に言ってるんですか! ちんまくないですし幼体とか意味分かんないですしなまものって言わないで欲しいですっ! あと、別府くんはご主人様でもなんでもなくてただの生徒ですっ! ……ぜはーぜはー」
「先生、つっこみすぎて息が荒いぞ。ほら、これでも飲んで落ち着け」
テーブルの上に置いてあった牛乳を先生に手渡す。
「あ、ありがとございます。ごくごく……」
「精液」
「ぶはーっ!」
勢いよく先生が牛乳を吐いた。
「ななな、なんてこと言うのですか! ばか、えっち!」
「いや、そうだったらいいなーっていう俺の想念が口からついて出ただけなんだ。雲が綿菓子だったらいいのになーって思うような子供のような純真な心を持ってるんだ。そんな純真な俺を褒めろ」
「純真な心の持ち主は牛乳をせ、せ、……な、なんかそーゆーこと言いません!」
「なんかそーゆーことって?」
「だ、だから……そーゆーことです!」
「だから? 具体的に?」
「う、うう……別府くんのえっち! 先生にえっちなこと言わせたいだけでしょ!」
「なんならえっちなこともしたい。その幼い肢体をもみくちゃにしたい」
「ひええええっ!」
先生は部屋の隅っこに逃げて震えている。……ととっ、いかんいかん。謝りに来たのだった。この先生を見ると、ついついいじめてしまう。
「先生のないすばでーが生徒を籠絡させてしまいました! こ、このままでは先生、貞操の危機です!」
なんか余裕あるっぽい。もうちょっといじろうか。……いやいやいや。終わらないし、とっとと謝って帰ろう。
「や、先生、そうじゃなくて」
「う?」
う、と言いながら先生は稚児のような表情で俺を見上げた。ちょっとクラッとくる。
「ど、どしました? 貧血ですか?」
「や、違う。ちょっと属性の野郎が顔を出しまして」
「ぞくせー?」
「……っ! そ、そう、属性。全く、事あるごとに顔を出しやがる」
「?」
先生はよく分からないのか、ちょこんと首をかしげた。全く、この先生は、計算でやってないのだから質が悪い。俺だからよかったものの、アレな人間だったら今頃調教されてるぞ。
「ところで先生、俺に飼われない?」
「はい?」
しまった、俺はアレな人間だった。必死で脳内の真人間スイッチを入れ、軌道修正する。
「あー、こほん。今のなし。えっとだな、先生。ごめんな」
「はい?」
「だから、その、俺の家での云々」
そう言われて思い出したのか、先生は急にそっぽを向いた。
「許しません。先生、度を越した冗談は嫌いです」
「や、だからその、悪かったって」
「知りません」
先生はそっぽを向いたままほっぺを膨らませてる。困った。何が困ったって、ぷにぷにしたほっぺをつつきたくて仕方がないことだ。
「えい」
ほら見ろ、我慢できずに押しちゃったじゃないか。
「……何のつもりですか」
「ぷにぷに」
「ぷにぷにじゃないです。先生、大人ですからガサガサです」
「いや、大人だからって誰も彼もがガサガサとは限らないと思うが」
「うるさいです。いいからツンツンするのやめてください」
こうして喋ってる間も先生のほっぺをツンツンし続けてる俺の指をどう思うか。家主としては褒めてやりたい気持ちで一杯です。
「先生、教え子にほっぺをつつかれるだなんて思いもしませんでした」
「予想もしないことが起きるから、人生ってのは楽しいもんだ」
「先生、ちっとも楽しくないですが」
「俺は楽しいぞ。よかったな」
「ちっともよくないです! どーして怒られてるのにまるで気にせず私のほっぺをツンツンできるんですか!? 頭おかしいです!」
「いや、気にはしてるんだよ? ただ、先生のほっぺをツンツンするのが楽しすぎて、謝ることに気が回らないんじゃないかな?」
「謝る気、ぜろですよ。うー……」
唸りながらも、先生はほっぺツンツンを止めようとはしなかった。
「先生」
「なんですか」
「口元が笑ってる」
「ふえぇっ!? わ、笑ってません! ちっとも愉快じゃないです! 楽しくもないです! 教え子にツンツンされ、不愉快極まりないです!」
「そうなの?」
「そうなのです!」
そう断言する先生は、俺にほっぺをツンツンされて笑顔をこぼしていた。
そしてその笑顔に我慢できずに抱っこしたら叱られた。
「いくら先生がないすぼでーだからって、いきなり抱っこしたりしたらダメでしょっ!」
「はぁ、すいません。でも、ないすぼでーではないよ。小学生だよ」
「小学生じゃないですっ! よく間違われますが、大人です! そしてないすぼでーです!」
「全部嘘」
「がーっ!」
両手をあげて威嚇する自称大人でないすぼでーの大谷先生だった。
【ツンデレに肩を揉んでもらったら】
2010年02月18日
暇なので、自称大人、外見小学生の大谷先生の家に遊びに来た。
「別府くん、こう見えても先生、結構忙しいのですが……」
「年齢工作に?」
「そうそう、先生実は見た目通りの年齢なのでばれちゃったらクビになっちゃうんですよってなんでやねーん」
満面の笑みを浮かべ、ぱひーんと先生が俺にツッコミを入れた。
「…………」
「…………」
「先生、恥ずかしいなら慣れないノリツッコミなんてするなよ」
何も言わずじっと先生の顔を見てたら、どんどん赤くなっていって愉快。
「うっ、うるさいですっ! 先生だってたまにはこんなことしたくなるんですっ! こーゆー時はお情けでも笑うもんですっ!」
「ハッ」
「鼻で笑うんじゃないんです! ううっ、もういいですよぉ……」
「失笑に満足したので、先生一緒に遊びましょう」
「遊びません! さっきも言ったように、先生忙しいんです」
先生は少しだけ間を置き、続けて言った。
「遊ぶんなら、他のコと──クラスのコと遊びなさい。……先生と生徒が遊ぶだなんて、ダメですよ。こうやって遊びに来るのも、慎んだ方がいいです」
先生は、俺を諭すように笑顔で言った。ただ、その笑顔は、なんだか何かを諦めるような、寂しい笑顔のような気がしてならなかった。だから、俺は。
「1000万円くれるならもう来ない」
いつものデタラメで先生を笑わせるよう、努力するのだった。
「とんでもない額の請求が来ましたよ!? さっ、詐欺? これ、なに詐欺?」
しかし、先生は半泣きになるばかりで笑ってくれない。誰かを笑顔にさせるのは難しいね。
「まあ振り込むのは後日でいいからこの話は終わるとして」
「いつ振り込むの決定したんですかっ!?」
「最近さ、肩こりに悩んでるんだよ。先生、ちょっと肩揉んでくれない?」
「あれ、話終わってる……? なんで……?」
なんだか愕然としてる先生だった。
「肩揉んでくれないなら、先生の乳揉む」
「先生、こう見えても肩揉みのエキスパートです! 揉みまくりますから先生のおっぱいに触れるの禁止ですよっ! 先生の大人の魅力にメロメロなのはよく分かりますが!」
「しまった、よく見たら先生には乳および大人の魅力は存在しなかった。交換条件を誤った」
「別府くん超失礼ですよっ! あります、先生にはおっぱいも大人の魅力も両方あります! おっぱいが小さく見えるのは、先生が着やせするタイプだからなんです! 見せませんが!」
「つまり、先生のおっぱいは格納が可能、と?」
「そ、そうです。いざ見せるときになると、がしゃんがしゃんがしゃーんっておっぱいが飛び出るんです! もうちょっと頑張ればおっぱいミサイルも出ます!」
知らない間に先生がスーパーロボットの仲間入りを果たしていた。
「先生すごいな! いつか見せてくれよ!」
「え、あれ、信じた……? なんで……?」
先生が涙目でオロオロしてるが、よく分からない体で。
「いや、楽しみだなぁ! 先生のおっぱいミサイル!」
何故か泣きそうな先生の頭に手を置き、高らかに笑う俺だった。
「ううう……ちょっとした嘘が大変なことになりましたよ……」
「まあそれはそれとして、肩揉んで」
「……揉んだら、おっぱいミサイルのこと忘れてくれますか?」
「忘れるけど、同時に先生の乳を揉む事を思い出す」
「せっ、先生揉みますよ、別府くんの肩をぎうぎう揉みますよー?」
快く了承してもらったので、先生に肩を揉んでもらう。
「ふうふう、もみもみ。別府くん、結構肩こってますね。肩こりさんですね」
「自縛霊に憑りつかれてるんだ」
「霊なんてこの世に存在しませんッ! あと自縛霊に憑りつかれてるなら別府くん動けません!」
「霊がいるのかいないのか、はっきりしろよ……」
「いませんが、仮にいたとしたらの話ですッ! ていうかもうこの話はお終いです!」
「分かった、終わろう。話は変わるが、霊の話をすると霊を呼び寄せるって言うよな」
「話が変わってません、続いてますっ! 嫌なこと言わないでくだたいっ!」
「くだたい……?」
「もうっ! 別府くんは黙っててください! それ以上口を開くと先生怒りますよ! めってしますよ!」
「小さい先生が怒ると幽霊が来るという都市伝説が」
「別府くんっ! めっ! 悪い子! めっ!」
めっめっと繰り返しながら俺のおでこにデコピンする先生は可愛いなあ。
「お返し。えい」
「ぎにゃっ!?」
お返しとばかりにおでこに超デコピンをしたら、奇声をあげて吹っ飛ぶ先生は可愛いなあ。
「別府くん、こう見えても先生、結構忙しいのですが……」
「年齢工作に?」
「そうそう、先生実は見た目通りの年齢なのでばれちゃったらクビになっちゃうんですよってなんでやねーん」
満面の笑みを浮かべ、ぱひーんと先生が俺にツッコミを入れた。
「…………」
「…………」
「先生、恥ずかしいなら慣れないノリツッコミなんてするなよ」
何も言わずじっと先生の顔を見てたら、どんどん赤くなっていって愉快。
「うっ、うるさいですっ! 先生だってたまにはこんなことしたくなるんですっ! こーゆー時はお情けでも笑うもんですっ!」
「ハッ」
「鼻で笑うんじゃないんです! ううっ、もういいですよぉ……」
「失笑に満足したので、先生一緒に遊びましょう」
「遊びません! さっきも言ったように、先生忙しいんです」
先生は少しだけ間を置き、続けて言った。
「遊ぶんなら、他のコと──クラスのコと遊びなさい。……先生と生徒が遊ぶだなんて、ダメですよ。こうやって遊びに来るのも、慎んだ方がいいです」
先生は、俺を諭すように笑顔で言った。ただ、その笑顔は、なんだか何かを諦めるような、寂しい笑顔のような気がしてならなかった。だから、俺は。
「1000万円くれるならもう来ない」
いつものデタラメで先生を笑わせるよう、努力するのだった。
「とんでもない額の請求が来ましたよ!? さっ、詐欺? これ、なに詐欺?」
しかし、先生は半泣きになるばかりで笑ってくれない。誰かを笑顔にさせるのは難しいね。
「まあ振り込むのは後日でいいからこの話は終わるとして」
「いつ振り込むの決定したんですかっ!?」
「最近さ、肩こりに悩んでるんだよ。先生、ちょっと肩揉んでくれない?」
「あれ、話終わってる……? なんで……?」
なんだか愕然としてる先生だった。
「肩揉んでくれないなら、先生の乳揉む」
「先生、こう見えても肩揉みのエキスパートです! 揉みまくりますから先生のおっぱいに触れるの禁止ですよっ! 先生の大人の魅力にメロメロなのはよく分かりますが!」
「しまった、よく見たら先生には乳および大人の魅力は存在しなかった。交換条件を誤った」
「別府くん超失礼ですよっ! あります、先生にはおっぱいも大人の魅力も両方あります! おっぱいが小さく見えるのは、先生が着やせするタイプだからなんです! 見せませんが!」
「つまり、先生のおっぱいは格納が可能、と?」
「そ、そうです。いざ見せるときになると、がしゃんがしゃんがしゃーんっておっぱいが飛び出るんです! もうちょっと頑張ればおっぱいミサイルも出ます!」
知らない間に先生がスーパーロボットの仲間入りを果たしていた。
「先生すごいな! いつか見せてくれよ!」
「え、あれ、信じた……? なんで……?」
先生が涙目でオロオロしてるが、よく分からない体で。
「いや、楽しみだなぁ! 先生のおっぱいミサイル!」
何故か泣きそうな先生の頭に手を置き、高らかに笑う俺だった。
「ううう……ちょっとした嘘が大変なことになりましたよ……」
「まあそれはそれとして、肩揉んで」
「……揉んだら、おっぱいミサイルのこと忘れてくれますか?」
「忘れるけど、同時に先生の乳を揉む事を思い出す」
「せっ、先生揉みますよ、別府くんの肩をぎうぎう揉みますよー?」
快く了承してもらったので、先生に肩を揉んでもらう。
「ふうふう、もみもみ。別府くん、結構肩こってますね。肩こりさんですね」
「自縛霊に憑りつかれてるんだ」
「霊なんてこの世に存在しませんッ! あと自縛霊に憑りつかれてるなら別府くん動けません!」
「霊がいるのかいないのか、はっきりしろよ……」
「いませんが、仮にいたとしたらの話ですッ! ていうかもうこの話はお終いです!」
「分かった、終わろう。話は変わるが、霊の話をすると霊を呼び寄せるって言うよな」
「話が変わってません、続いてますっ! 嫌なこと言わないでくだたいっ!」
「くだたい……?」
「もうっ! 別府くんは黙っててください! それ以上口を開くと先生怒りますよ! めってしますよ!」
「小さい先生が怒ると幽霊が来るという都市伝説が」
「別府くんっ! めっ! 悪い子! めっ!」
めっめっと繰り返しながら俺のおでこにデコピンする先生は可愛いなあ。
「お返し。えい」
「ぎにゃっ!?」
お返しとばかりにおでこに超デコピンをしたら、奇声をあげて吹っ飛ぶ先生は可愛いなあ。
【新兵器「ツンデレーザー」】
2010年02月14日
だらりだらりと授業を受けてたら、校庭から破壊音が響いた。何が起きたのか、視線を窓に移す。
「うあ」
口から妙な声が出た。校庭の真ん中へんで、なんかGP03デンドロビウムみたいになってる先輩がいる。ビーム砲からレーザーがびむびむ出て、ちょっとした阿鼻叫喚。
ものすごく見なかったことにしたかったが、見てしまったからには仕方がない。ざわめく教室をそっと抜け出し、廊下を駆けて校庭に飛び込む。
「何やってんだ先輩!」
先輩に向け叫ぶと、先輩はこっちを向いた。ぽやーっとした視線に、状況を忘れ和みそうになる。
「…………」
「え? 強化ユニットもらった? つけたら暴走した? 早く助けろ馬鹿? ……先輩、色々言いたいが、ばーか」
「……!」
先輩が怒った。レーザーがこっちに飛んできたので慌ててよける。
「あっ、危ないだろ馬鹿! 小さい人間! 小学生未満!」
「……! ……!」
なんかまた怒らせたようで、極太のレーザーが僕のすぐ脇を通り過ぎました。大木が消し飛びましたよ?
「まっ、待て待て待て! 洒落になってねーっての! いいからスイッチ切れ、小学生!」
先輩は小さな小さな声で「小学生じゃないもん」と呟きながらレーザーを連射した。危険が危ないので水飲み場の影に退避。
「ひー……まったく、どうすりゃいいってんだよ、あんな化け物」
「まったく、困ったものです。ぷんぷん」
なんか、隣に先輩と同じくらい小さいのがいる。
「……何やってんの、大谷先生」
「はうわっ!? べべべべべ、別府くん、どうしてここにいるですか!?」
「先生が俺という存在を否定する」
「えええええっ!? し、してないですよ、先生は別府くんを否定なんてしてないですよ!」
「じゃあ俺を肯定してくれ。褒めてくれ。俺の肉奴隷になってくれ」
「もちろんですっ! ……えええええっ、にっ、にく!?」
「よし、言質は取った。今日から先生は俺の性処理用の奴隷だ。嫌というほど頭なでてやる」
「こ、困ります、それとっても困りますよっ! あ、あの、……なでなでは嫌いじゃないですが、その、性処理がどうとかは、とっても困る事態です!」
「先生うるさい。ただの冗談にそんな超反応するない」
「じ、冗談? ……ううううう、生徒が先生をいじめるぅ……」
「別に冗談を本気にしても、俺は一向に構わん」
「先生、冗談が大好きです!」
元気に立ち上がった先生の頭上5cm上くらいを、レーザーが通過した。
「ぴぎゃあ!?」
怪鳥のような声を上げてしゃがみ込む先生。
「先生、むやみに立つと危ないぞ。先生が詐称してる年齢の平均的な身長だと、今頃頭にでかい穴が空いてたぞ。その小学生的身長に感謝しろ」
「詐称なんてしてません! 先生大人です!」
「はいはいはい」
ぐりぐり頭をなでて黙らせる。
「ううう……別府くんが先生を子供扱いします……」
「子供を子供扱いして何が悪い。それより、ここは先輩が暴走してるから危ないぞ。帰って算数のドリルでもしてろ」
「だからっ、先生は子供じゃありませんっ! 算数のドリルとかしませんっ! ほらほら、めんきょしょー!」
コンクリの壁を背にして先輩の様子を覗き見ようとしてる俺の頬に免許証をぐいぐい押し付ける先生。非常に鬱陶しい。
「いーから校舎に入ってろ! 怪我したら大変だろーが!」
「ダメですっ! 先生のせいで大変なことになってるのに、先生だけ安全なところにいられませんっ!」
「……ドユコト?」
「だからぁ、先生が開発したブースターパックをあの生徒さんに使わせたら、暴走しちゃって……その、えへ☆」
えへ☆ だって。片目つぶってウインク。かーわいい。
「……じゃねえよ! なんだ、あのデンドロビウム先生が作ったのか! 何考えてんだ馬鹿! 子供!」
「ば、馬鹿じゃないですし、ましてや子供なんてもってのほかです! あれはですね、ツンデレーザーって言いまして、女の子の素直に表現できない甘くて素敵な乙女心を濃縮し、破壊エネルギーに変換する兵器なのですよ? 規模の小さな軍なら、単機で殲滅できます☆」
とりあえず先生のほっぺを引っ張る。
「痛い痛い痛いです! 千切れます千切れますよ! あっ、千切れました、いま千切れましたよ!? どうしてくれるんですか!」
「千切れてねーよ! お前、んなもん作るな!」
「だってだって、思いついちゃったんですもん! それより先生にお前とか言ってはいけません! もっと尊敬してくださいっ!」
「まあ原因は分かった。先生へのお仕置きは後にするとして、さて……」
「先生、お仕置きされるんですか!? 先生なのに!?」
あれだけばびばびレーザー撃ってるんだ、すぐに弾も尽きるに違いない。……いや待て、なんかさっき乙女心を変換してレーザーにしてるとかなんとかって……。
「先生、あれって撃ち続けたらどうなるの?」
「そりゃー、心を削って撃っているわけですから、心が尽きてそのまま廃人になりますよ。なむー」
両手を合わせて拝んでる先生の頭をとりあえず叩く。
「ぶった! 先生の頭をぶった! 先生なのに叩かれました!」
「うっさい! あーもう、玉砕覚悟で突っ込むか!?」
「ダメですっ、早まってはいけませんっ!」
先生が俺の腕を引っ張り、押し留める。
「先生……。分かった、それじゃ責任者が囮になってる隙に突っ込む」
「頑張れ、別府くん!」
先生が俺の体を押し、水飲み場から追い出そうとする。
「ええい、先生も体を張れ! つーかお前に責任があるんだから囮くらいなれっ!」
「囮なんてヤですっ! あっ、そだ、先生とってもいいこと思いつきました! 自爆装置を作動させればいいんです! うふー、先生ってばやっぱり天才です!」
自信満々に胸を張る先生の頭を叩く。
「また叩きました! またです! 暴力です! 別府くんおーぼーです! 独裁者です!」
「自爆なんてしたら、先輩まで吹き飛ぶだろーが! ちったあ考えて喋れ馬鹿!」
「ば、馬鹿とは何ですか馬鹿とは! 先生、こう見えても天才ですよ!? いっぱい賞とか貰ってますよ!?」
「賞とか関係なくてああもう!」
「…………」
「え? 楽しそうで羨ましい? 先輩、どこをどう見れば楽しそうに……先輩?」
ちっちゃな声に振り向くと、すぐ目の前に先輩がいた。うーん、先生と議論を戦わせている間に近寄られていたんだね。大変だよ。
「べべべべべ別府くんどうにかしてくだたいっ!」
「先生噛んでる。くだたい(笑)」
「うるさいですっ! なんでそんな冷静なんですかっ!?」
「や、慌ててる人見たら逆にこっちは冷静になるなーって体験、あるでしょ?」
「いーから早くどーにかしてくださいっ! あっ、あああっ!?」
先輩に備え付けられた砲頭に、エネルギーの固まりのようなものが集まっている。むぅ、これはとても危険な予感。
「ふふ、死ぬやもしれんな」
「何を笑ってるんですか!? あっ、そだ、えーと、あのエネルギーはあの生徒の思いの結晶です! 別府くん、彼女の思いを受け止めてあげてください! 一人で!」
「無茶言うなっ! 仮に思いだとしても、破壊エネルギーに変換してるんだろーが! そんなもん受け止めたら死ぬわっ!」
「…………」
一瞬、先輩が悲しそうな顔をした。
「……あ、いや、そうだな。やってみるか」
「別府くん?」
「先輩の思い、この俺が受け止めてやる!」
「…………」
いつも無表情な先輩が、少しだけ、ほんの少しだけ微笑んだ。そんな気がした。
「あ、あのー……別府くん? なんか、こんなこと言う俺かっこいーと思ってるようですが、普通に死にますよ?」
だよね。死ぬよね。どうしよう。
「…………」
死ぬのは嫌だなあ、俺の体程度で先生かばえるかなあ、とか思ってたら、砲頭に集まっていたエネルギーが収束をやめ、ゆっくりと拡散していった。
「え、ええっ!?」
そして、先輩に取り付いていた兵器類が一斉にパージされた。
「わっ……ととっ」
その勢いに押された先輩を、慌てて抱き留める。
「な、何がどうなったんだ、先生?」
「えー……と。そ、その、生徒さんの思いを言葉で受け止めたので、その生徒さんが満足し、それを感じ取ったツンデレーザーが自らの意思で解放した……の、かも」
「かも、って……製作者だろ、分かんねーのか」
「だってだって分かんないものは分かんないですもんっ! てきとーに作ったんですし!」
「こんな殺戮兵器てきとーに作んなっ! ……とっ、先輩、大丈夫か? 怪我とかないか?」
先輩を引き剥がし、体を点検しようとしたが、先輩が離れない。
「先輩?」
「……♪」
「いや、♪じゃなくて。離れて」
「…………」(ぷるぷる)
「いや、ぷるぷるじゃなくて。離れるの」
「…………」(ぷるぷるぷる)
「いや、だから」
「…………」
「え、恋人同士は一緒にいて当然? ……あの、恋人って、何を」
「♪♪♪」
「いやいや、いやいやいや! せ、先生、何とか言ってやってくださいよ」
「当然です! そこの貴方! 別府くんが困ってますよ!」
うん、そうだ、その通り。
「別府くんは先生のことが好きで好きでしょうがないんだから離れなさい!」
いや待てそんなこと言ってないし言った覚えもない。
「ていうか別府くんは先生のものなのに、勝手に抱きついたりして……羨ましいじゃないですかっ!」
「…………」
先輩が勝ち誇った顔で俺にすりすりした。顔がにやけるのが止められない。
「もーっ、もーっ、もーっ! ダメーッ!!!」
先生は先輩の隣に取り付き、俺に抱きついた。
「これ先生のっ! 先生のなんですから取ったらダメですっ!」
「…………」
「こ、子供!? 子供って言いましたか!? どっちが子供ですか、どっちが!」
「…………(怒)」
「あーいいですよ、勝負ですよ! 大人の魅力でびゃびゃーんと勝利しますよ!」
「はい。喧嘩終わりー」
二人の頭に手を乗せ、わっしわっしなでる。
「あ、あの、喧嘩なんて別にしてませんよ? ただ、この子が敵視してくるだけで」
「…………」
「先輩も『先生が悪い』とか言うな。喧嘩する奴にはもれなくなでなで禁止令が発令されるぞ」
「しませんしてません喧嘩なんてするものですかっ! ええ、しませんよ、絶対にしませんよ?」
「…………」
「先輩もしないか。ん、じゃあご褒美のなでなで」
二人の頭をなでまくりんぐ。
「はふ……別府くんのなでなでは頭とろけそうです」
「…………」
「だっ、誰が最初から頭とろけてるですか、誰が! やっぱこの子先生に喧嘩売ってますね!? 買いますよ、いっぱい買いますよ!?」
「けんかりょうせいばいー」
再び喧嘩を始めた二人の頭にアイアンクローをしかける。
「あうううううっ!? いっ、痛いっ、別府くん痛いですっ、頭取れそうですっ! あっ、取れました、いま取れましたよ!?」
「……! ……!!」
びったんばったん跳ねる二人の衝撃を体に受けながら、校庭に散乱するツンデレーザーとやらの処置をどうするか、途方に暮れる俺だった。
「うあ」
口から妙な声が出た。校庭の真ん中へんで、なんかGP03デンドロビウムみたいになってる先輩がいる。ビーム砲からレーザーがびむびむ出て、ちょっとした阿鼻叫喚。
ものすごく見なかったことにしたかったが、見てしまったからには仕方がない。ざわめく教室をそっと抜け出し、廊下を駆けて校庭に飛び込む。
「何やってんだ先輩!」
先輩に向け叫ぶと、先輩はこっちを向いた。ぽやーっとした視線に、状況を忘れ和みそうになる。
「…………」
「え? 強化ユニットもらった? つけたら暴走した? 早く助けろ馬鹿? ……先輩、色々言いたいが、ばーか」
「……!」
先輩が怒った。レーザーがこっちに飛んできたので慌ててよける。
「あっ、危ないだろ馬鹿! 小さい人間! 小学生未満!」
「……! ……!」
なんかまた怒らせたようで、極太のレーザーが僕のすぐ脇を通り過ぎました。大木が消し飛びましたよ?
「まっ、待て待て待て! 洒落になってねーっての! いいからスイッチ切れ、小学生!」
先輩は小さな小さな声で「小学生じゃないもん」と呟きながらレーザーを連射した。危険が危ないので水飲み場の影に退避。
「ひー……まったく、どうすりゃいいってんだよ、あんな化け物」
「まったく、困ったものです。ぷんぷん」
なんか、隣に先輩と同じくらい小さいのがいる。
「……何やってんの、大谷先生」
「はうわっ!? べべべべべ、別府くん、どうしてここにいるですか!?」
「先生が俺という存在を否定する」
「えええええっ!? し、してないですよ、先生は別府くんを否定なんてしてないですよ!」
「じゃあ俺を肯定してくれ。褒めてくれ。俺の肉奴隷になってくれ」
「もちろんですっ! ……えええええっ、にっ、にく!?」
「よし、言質は取った。今日から先生は俺の性処理用の奴隷だ。嫌というほど頭なでてやる」
「こ、困ります、それとっても困りますよっ! あ、あの、……なでなでは嫌いじゃないですが、その、性処理がどうとかは、とっても困る事態です!」
「先生うるさい。ただの冗談にそんな超反応するない」
「じ、冗談? ……ううううう、生徒が先生をいじめるぅ……」
「別に冗談を本気にしても、俺は一向に構わん」
「先生、冗談が大好きです!」
元気に立ち上がった先生の頭上5cm上くらいを、レーザーが通過した。
「ぴぎゃあ!?」
怪鳥のような声を上げてしゃがみ込む先生。
「先生、むやみに立つと危ないぞ。先生が詐称してる年齢の平均的な身長だと、今頃頭にでかい穴が空いてたぞ。その小学生的身長に感謝しろ」
「詐称なんてしてません! 先生大人です!」
「はいはいはい」
ぐりぐり頭をなでて黙らせる。
「ううう……別府くんが先生を子供扱いします……」
「子供を子供扱いして何が悪い。それより、ここは先輩が暴走してるから危ないぞ。帰って算数のドリルでもしてろ」
「だからっ、先生は子供じゃありませんっ! 算数のドリルとかしませんっ! ほらほら、めんきょしょー!」
コンクリの壁を背にして先輩の様子を覗き見ようとしてる俺の頬に免許証をぐいぐい押し付ける先生。非常に鬱陶しい。
「いーから校舎に入ってろ! 怪我したら大変だろーが!」
「ダメですっ! 先生のせいで大変なことになってるのに、先生だけ安全なところにいられませんっ!」
「……ドユコト?」
「だからぁ、先生が開発したブースターパックをあの生徒さんに使わせたら、暴走しちゃって……その、えへ☆」
えへ☆ だって。片目つぶってウインク。かーわいい。
「……じゃねえよ! なんだ、あのデンドロビウム先生が作ったのか! 何考えてんだ馬鹿! 子供!」
「ば、馬鹿じゃないですし、ましてや子供なんてもってのほかです! あれはですね、ツンデレーザーって言いまして、女の子の素直に表現できない甘くて素敵な乙女心を濃縮し、破壊エネルギーに変換する兵器なのですよ? 規模の小さな軍なら、単機で殲滅できます☆」
とりあえず先生のほっぺを引っ張る。
「痛い痛い痛いです! 千切れます千切れますよ! あっ、千切れました、いま千切れましたよ!? どうしてくれるんですか!」
「千切れてねーよ! お前、んなもん作るな!」
「だってだって、思いついちゃったんですもん! それより先生にお前とか言ってはいけません! もっと尊敬してくださいっ!」
「まあ原因は分かった。先生へのお仕置きは後にするとして、さて……」
「先生、お仕置きされるんですか!? 先生なのに!?」
あれだけばびばびレーザー撃ってるんだ、すぐに弾も尽きるに違いない。……いや待て、なんかさっき乙女心を変換してレーザーにしてるとかなんとかって……。
「先生、あれって撃ち続けたらどうなるの?」
「そりゃー、心を削って撃っているわけですから、心が尽きてそのまま廃人になりますよ。なむー」
両手を合わせて拝んでる先生の頭をとりあえず叩く。
「ぶった! 先生の頭をぶった! 先生なのに叩かれました!」
「うっさい! あーもう、玉砕覚悟で突っ込むか!?」
「ダメですっ、早まってはいけませんっ!」
先生が俺の腕を引っ張り、押し留める。
「先生……。分かった、それじゃ責任者が囮になってる隙に突っ込む」
「頑張れ、別府くん!」
先生が俺の体を押し、水飲み場から追い出そうとする。
「ええい、先生も体を張れ! つーかお前に責任があるんだから囮くらいなれっ!」
「囮なんてヤですっ! あっ、そだ、先生とってもいいこと思いつきました! 自爆装置を作動させればいいんです! うふー、先生ってばやっぱり天才です!」
自信満々に胸を張る先生の頭を叩く。
「また叩きました! またです! 暴力です! 別府くんおーぼーです! 独裁者です!」
「自爆なんてしたら、先輩まで吹き飛ぶだろーが! ちったあ考えて喋れ馬鹿!」
「ば、馬鹿とは何ですか馬鹿とは! 先生、こう見えても天才ですよ!? いっぱい賞とか貰ってますよ!?」
「賞とか関係なくてああもう!」
「…………」
「え? 楽しそうで羨ましい? 先輩、どこをどう見れば楽しそうに……先輩?」
ちっちゃな声に振り向くと、すぐ目の前に先輩がいた。うーん、先生と議論を戦わせている間に近寄られていたんだね。大変だよ。
「べべべべべ別府くんどうにかしてくだたいっ!」
「先生噛んでる。くだたい(笑)」
「うるさいですっ! なんでそんな冷静なんですかっ!?」
「や、慌ててる人見たら逆にこっちは冷静になるなーって体験、あるでしょ?」
「いーから早くどーにかしてくださいっ! あっ、あああっ!?」
先輩に備え付けられた砲頭に、エネルギーの固まりのようなものが集まっている。むぅ、これはとても危険な予感。
「ふふ、死ぬやもしれんな」
「何を笑ってるんですか!? あっ、そだ、えーと、あのエネルギーはあの生徒の思いの結晶です! 別府くん、彼女の思いを受け止めてあげてください! 一人で!」
「無茶言うなっ! 仮に思いだとしても、破壊エネルギーに変換してるんだろーが! そんなもん受け止めたら死ぬわっ!」
「…………」
一瞬、先輩が悲しそうな顔をした。
「……あ、いや、そうだな。やってみるか」
「別府くん?」
「先輩の思い、この俺が受け止めてやる!」
「…………」
いつも無表情な先輩が、少しだけ、ほんの少しだけ微笑んだ。そんな気がした。
「あ、あのー……別府くん? なんか、こんなこと言う俺かっこいーと思ってるようですが、普通に死にますよ?」
だよね。死ぬよね。どうしよう。
「…………」
死ぬのは嫌だなあ、俺の体程度で先生かばえるかなあ、とか思ってたら、砲頭に集まっていたエネルギーが収束をやめ、ゆっくりと拡散していった。
「え、ええっ!?」
そして、先輩に取り付いていた兵器類が一斉にパージされた。
「わっ……ととっ」
その勢いに押された先輩を、慌てて抱き留める。
「な、何がどうなったんだ、先生?」
「えー……と。そ、その、生徒さんの思いを言葉で受け止めたので、その生徒さんが満足し、それを感じ取ったツンデレーザーが自らの意思で解放した……の、かも」
「かも、って……製作者だろ、分かんねーのか」
「だってだって分かんないものは分かんないですもんっ! てきとーに作ったんですし!」
「こんな殺戮兵器てきとーに作んなっ! ……とっ、先輩、大丈夫か? 怪我とかないか?」
先輩を引き剥がし、体を点検しようとしたが、先輩が離れない。
「先輩?」
「……♪」
「いや、♪じゃなくて。離れて」
「…………」(ぷるぷる)
「いや、ぷるぷるじゃなくて。離れるの」
「…………」(ぷるぷるぷる)
「いや、だから」
「…………」
「え、恋人同士は一緒にいて当然? ……あの、恋人って、何を」
「♪♪♪」
「いやいや、いやいやいや! せ、先生、何とか言ってやってくださいよ」
「当然です! そこの貴方! 別府くんが困ってますよ!」
うん、そうだ、その通り。
「別府くんは先生のことが好きで好きでしょうがないんだから離れなさい!」
いや待てそんなこと言ってないし言った覚えもない。
「ていうか別府くんは先生のものなのに、勝手に抱きついたりして……羨ましいじゃないですかっ!」
「…………」
先輩が勝ち誇った顔で俺にすりすりした。顔がにやけるのが止められない。
「もーっ、もーっ、もーっ! ダメーッ!!!」
先生は先輩の隣に取り付き、俺に抱きついた。
「これ先生のっ! 先生のなんですから取ったらダメですっ!」
「…………」
「こ、子供!? 子供って言いましたか!? どっちが子供ですか、どっちが!」
「…………(怒)」
「あーいいですよ、勝負ですよ! 大人の魅力でびゃびゃーんと勝利しますよ!」
「はい。喧嘩終わりー」
二人の頭に手を乗せ、わっしわっしなでる。
「あ、あの、喧嘩なんて別にしてませんよ? ただ、この子が敵視してくるだけで」
「…………」
「先輩も『先生が悪い』とか言うな。喧嘩する奴にはもれなくなでなで禁止令が発令されるぞ」
「しませんしてません喧嘩なんてするものですかっ! ええ、しませんよ、絶対にしませんよ?」
「…………」
「先輩もしないか。ん、じゃあご褒美のなでなで」
二人の頭をなでまくりんぐ。
「はふ……別府くんのなでなでは頭とろけそうです」
「…………」
「だっ、誰が最初から頭とろけてるですか、誰が! やっぱこの子先生に喧嘩売ってますね!? 買いますよ、いっぱい買いますよ!?」
「けんかりょうせいばいー」
再び喧嘩を始めた二人の頭にアイアンクローをしかける。
「あうううううっ!? いっ、痛いっ、別府くん痛いですっ、頭取れそうですっ! あっ、取れました、いま取れましたよ!?」
「……! ……!!」
びったんばったん跳ねる二人の衝撃を体に受けながら、校庭に散乱するツンデレーザーとやらの処置をどうするか、途方に暮れる俺だった。
【ツンデレと初詣に行ったら】
2010年02月04日
お正月なので家でぐだぐだしてたら、携帯が鳴った。担任の大谷先生からだ。
「あい」
『あ、別府くん。あけましておめでとおございます』
「ん、おめでと。悪いけど、大谷先生に代わってくれるかな、お嬢ちゃん?」
『? 代わるも何も、私が先生ですよ?』
「え、そうなのか? 電話口から舌っ足らずなロリ声が聞こえてきたもんだから、親戚の5歳くらいの子が間違えてかけてきたもんだと」
『正月から失礼ですよっ、別府くん!』
「大丈夫、俺はいついかなる時でも失礼だ」
『何が大丈夫なんですかっ!? ……こほん。まあいいです、先生、大人なので怒ったりしません。あのですね、今から一緒に初詣行きませんか?』
「いいけど、先生の晴れ着を七五三って馬鹿にするから覚悟しておいてくれよな」
『あらかじめ宣言するくらいなら馬鹿にしないでくだたいっ!』
「くだたい?」
『いーから準備して待っててくださいっ! 先生、すぐ行きますから!』
言うだけ言って、通話を切られた。よし、引き続きぐだぐだしよう。
ぐでぐでしてたら、また電話が鳴った。大谷先生だ。
『先生、家の前に着きました! 行きましょー』
「分かった、ひと眠りしたら準備する」
『寝ないでくださいっ! ていうか準備って……まだ準備してなかったんですか?』
「うん」
『もーっ! 準備しててくださいって言ったじゃないですかっ! 先生も手伝ってあげますから、玄関のドア開けてください!』
「鍵かけてないから勝手に入って来い」
『物騒ですねぇ……』
なんかぶちぶち言いながら、通話を切られた。ほどなく、ちっこい生き物が入ってきた。
「なーんにも準備してないです。ほらほら、早く準備して初詣行きましょう?」
「分かったよ。……あれ、先生晴れ着じゃないのか」
折角の正月だというのに、先生は晴れ着ではなく普段着だった。つまらん。
「だって、別府くんが七五三って馬鹿にするって宣言してましたし……」
「ちぇ。先生の晴れ着見たかったなー」
「え? ……あ、あの、馬鹿にするんですよね?」
「するけど、それはそれとして、見たい男心」
「うにゅ……あ、あの、先生、ひとっぱしり家戻って着替えてきましょうか? べっ、別に別府くんに見せるためじゃなくて、急に着たくなっただけですけど!」
「いや、わざわざいいよ。それより、さるルートで手に入れた魔法少女の服があるから、そっちを着ろ」
「絶対嫌ですっ! そんなの、お子様が着る服です! 先生、大人だから着ませんっ! ていうか着れません! ぼんきゅっぼんのせくしーぼでーに魔法少女なんて無理無理ですっ!」
つるーんぺたーんボディの持ち主が何を言ってるのやら。
「じゃあ、残るはスク水かブルマだな。どっちがいい? 今なら特別にオプションでランドセルつけてやる」
「お正月からそんなの着てたら頭おかしいと思われますっ!」
「じゃ、正月過ぎたら着てくれよな」
「それならいいです。……え?」
言質は取った。絶対着てもらう。スク水ランドセル……ふふ、想像するだけで俺の浪漫回路が高速回転を!
「あ、あの別府くん? 先生、そんなの無理……」
「楽しみだなあ! もし嘘だったら即死するくらいショックを受けるけど、そんなわけないから楽しみだ!」
「即死!? あ、あのあの、別府くん、あの……」
なんか先生が涙目で俺の服の裾を引っ張ってるが、気づかない体のまま準備を終える。
「さて! 準備も終わったし、行くか先生?」
「はい……」
来た時のテンションからは考えられないほど落ち込んだ先生と一緒に外へ出る。
先生と一緒に近所の神社へ向かう。小さな神社とはいえやはり正月、普段の静けさから考えられないほど人で溢れている。
「すごい人だな……先生、はぐれるなよ」
先生は小さいので見失いやすく見つけるのも困難なため、迷子対策にあらかじめ手を握っておく。
「ふわ!」
「わあ」
すると、大きい声を出されてびっくりした。
「あ、あの、ごめんなさい。ちょっとびっくりしただけです」
「いや、いいけど……何をびっくりすることが」
「あ、あの、いきなり手をぎゅってされて、びっくりしたんです」
「あ、悪い。これ以降は二度と先生の手なんて触らないから安心しろ」
「なんか感じ悪いです!」
「じゃあ、もうこの人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから」
「ふ、ふえ……!?」
まっすぐに先生の目を見つめて言い切ると、先生の顔が目に見えて赤くなっていって愉快痛快。
「あ、あの、あのあの、せ、先生、こ、困ります、困ります。で、でもそのあの、別に別府くんがどうとかって話じゃなくて、そのですね、生徒と先生がそういうのって、その」
「というキャッチコピーのゲームがありまして。俺はそのゲームが好きなんですよ」
「……げぇむ?」
「うぃ」
先生の目が点になったので、イタリアっぽく返してみる。
「……もーッ! 先生を混乱させるなんて、別府くんはとってもとってもダメな生徒ですっ! 先生怒りますよ、怒りましたよ? 別府くん、めっ!」
先生は背伸びして俺のおでこをぺしっと叩いた。
「さて、そろそろお参りするか」
「先生怒ってるんだから、ちょっとは反省してくださいっ!」
「ほらほら、行くぞ先生」
「ひ、引っ張らないでくださいっ!」
先生の手を握ったまま、人でごったがえしている拝殿へ向かう。
「す、すごい人です、すごい人です! 先生、人で埋まりそうです!」
「きちんと埋葬するから安心しろ」
「その前に助けてくださいっ!」
列に並び、順番を待つ。何を願掛けするか考えてたら、先生に軽く引っ張られた。
「あのですね、別府くん。何をお願いするんですか?」
「先生の身長が縮みますようにって」
「別府くん鬼です悪魔です酷すぎますっ!」
ものすごい嫌がられた。
「で、先生は何を願うんだ?」
「うー……えっとですね、生徒みんなが元気でいられますようにってお願いします。別府くんを除いて」
俺は先生に嫌われているようだ。ムカつくので先生の鼻をつまむ。
「ひゃう!? ひゃ、ひゃへへふははひ、ひゃへへふははひ!」
わたわたする先生を見ながら何をお願いするか考えてたら、俺たちの番になった。先生の鼻から手を離し、賽銭箱に小銭を入れる。
「うー……鼻がひりひりします。別府くんのばか」
隣から聞こえてくる悪口を聞きながら、何を願うか考える。……やっぱアレかな。
隣で目を瞑り、口の中で何かを一生懸命つぶやいてる先生を見て、願い事を固める。
「…………。よしっ、先生行くぞ」
「あっ、もうちょっと、もうちょっと待ってください。すぐですから」
先生は少しだけ何か口の中だけでつぶやくと、賽銭箱の前から離れた。
「それで、別府くんは何をお願いしたんですか?」
拝殿から離れ、境内を散歩してると、先生が尋ねてきた。
「ん? んーと。なんだっけっか。忘れちった。はっはっは」
「…………」
「ど、どした?」
「……ひょっとして、先生のこと、ですか?」
「え? え、いやその、いや、まさか。はっはっは」
「先生が縮むよう、お願いしたんでしょう?」
「いやいや、先生がいつまでも元気でいられますようにってお願いしただけで──」
いかん。先生の顔がにんまりしたものへと変化していく。謀られた。
「別府くんって、素直じゃないですねー♪」
先生はニコニコしたまま俺の手をぎゅっと握った。ええい、ニコニコしおって。
「あのですねっ、あのですねっ。先生、ちょっとだけひいきしました。他の生徒より、別府くんのこと、神様にいっぱいいっぱいお願いしました。……ナイショですよ?」
先生は得意げな顔で指を一本立て、口元に当てた。わざとかどうか知らないが、破壊力がでかすぎる。
「別府くん? どしました、鼻なんてつまんで」
「いや……深い意味はない」
「ぬ? まーいいです、それじゃ帰りましょ? 帰ったら一緒にお勉強です」
「正月から何を言ってるのだろう、この小学生は」
「しょ、小学生じゃないですっ! 立派な大人ですっ! ほらほら、めんきょしょー!」
人の顔に免許証をべしべし当ててくるちっこいのと一緒に家に帰りました。
「あい」
『あ、別府くん。あけましておめでとおございます』
「ん、おめでと。悪いけど、大谷先生に代わってくれるかな、お嬢ちゃん?」
『? 代わるも何も、私が先生ですよ?』
「え、そうなのか? 電話口から舌っ足らずなロリ声が聞こえてきたもんだから、親戚の5歳くらいの子が間違えてかけてきたもんだと」
『正月から失礼ですよっ、別府くん!』
「大丈夫、俺はいついかなる時でも失礼だ」
『何が大丈夫なんですかっ!? ……こほん。まあいいです、先生、大人なので怒ったりしません。あのですね、今から一緒に初詣行きませんか?』
「いいけど、先生の晴れ着を七五三って馬鹿にするから覚悟しておいてくれよな」
『あらかじめ宣言するくらいなら馬鹿にしないでくだたいっ!』
「くだたい?」
『いーから準備して待っててくださいっ! 先生、すぐ行きますから!』
言うだけ言って、通話を切られた。よし、引き続きぐだぐだしよう。
ぐでぐでしてたら、また電話が鳴った。大谷先生だ。
『先生、家の前に着きました! 行きましょー』
「分かった、ひと眠りしたら準備する」
『寝ないでくださいっ! ていうか準備って……まだ準備してなかったんですか?』
「うん」
『もーっ! 準備しててくださいって言ったじゃないですかっ! 先生も手伝ってあげますから、玄関のドア開けてください!』
「鍵かけてないから勝手に入って来い」
『物騒ですねぇ……』
なんかぶちぶち言いながら、通話を切られた。ほどなく、ちっこい生き物が入ってきた。
「なーんにも準備してないです。ほらほら、早く準備して初詣行きましょう?」
「分かったよ。……あれ、先生晴れ着じゃないのか」
折角の正月だというのに、先生は晴れ着ではなく普段着だった。つまらん。
「だって、別府くんが七五三って馬鹿にするって宣言してましたし……」
「ちぇ。先生の晴れ着見たかったなー」
「え? ……あ、あの、馬鹿にするんですよね?」
「するけど、それはそれとして、見たい男心」
「うにゅ……あ、あの、先生、ひとっぱしり家戻って着替えてきましょうか? べっ、別に別府くんに見せるためじゃなくて、急に着たくなっただけですけど!」
「いや、わざわざいいよ。それより、さるルートで手に入れた魔法少女の服があるから、そっちを着ろ」
「絶対嫌ですっ! そんなの、お子様が着る服です! 先生、大人だから着ませんっ! ていうか着れません! ぼんきゅっぼんのせくしーぼでーに魔法少女なんて無理無理ですっ!」
つるーんぺたーんボディの持ち主が何を言ってるのやら。
「じゃあ、残るはスク水かブルマだな。どっちがいい? 今なら特別にオプションでランドセルつけてやる」
「お正月からそんなの着てたら頭おかしいと思われますっ!」
「じゃ、正月過ぎたら着てくれよな」
「それならいいです。……え?」
言質は取った。絶対着てもらう。スク水ランドセル……ふふ、想像するだけで俺の浪漫回路が高速回転を!
「あ、あの別府くん? 先生、そんなの無理……」
「楽しみだなあ! もし嘘だったら即死するくらいショックを受けるけど、そんなわけないから楽しみだ!」
「即死!? あ、あのあの、別府くん、あの……」
なんか先生が涙目で俺の服の裾を引っ張ってるが、気づかない体のまま準備を終える。
「さて! 準備も終わったし、行くか先生?」
「はい……」
来た時のテンションからは考えられないほど落ち込んだ先生と一緒に外へ出る。
先生と一緒に近所の神社へ向かう。小さな神社とはいえやはり正月、普段の静けさから考えられないほど人で溢れている。
「すごい人だな……先生、はぐれるなよ」
先生は小さいので見失いやすく見つけるのも困難なため、迷子対策にあらかじめ手を握っておく。
「ふわ!」
「わあ」
すると、大きい声を出されてびっくりした。
「あ、あの、ごめんなさい。ちょっとびっくりしただけです」
「いや、いいけど……何をびっくりすることが」
「あ、あの、いきなり手をぎゅってされて、びっくりしたんです」
「あ、悪い。これ以降は二度と先生の手なんて触らないから安心しろ」
「なんか感じ悪いです!」
「じゃあ、もうこの人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから」
「ふ、ふえ……!?」
まっすぐに先生の目を見つめて言い切ると、先生の顔が目に見えて赤くなっていって愉快痛快。
「あ、あの、あのあの、せ、先生、こ、困ります、困ります。で、でもそのあの、別に別府くんがどうとかって話じゃなくて、そのですね、生徒と先生がそういうのって、その」
「というキャッチコピーのゲームがありまして。俺はそのゲームが好きなんですよ」
「……げぇむ?」
「うぃ」
先生の目が点になったので、イタリアっぽく返してみる。
「……もーッ! 先生を混乱させるなんて、別府くんはとってもとってもダメな生徒ですっ! 先生怒りますよ、怒りましたよ? 別府くん、めっ!」
先生は背伸びして俺のおでこをぺしっと叩いた。
「さて、そろそろお参りするか」
「先生怒ってるんだから、ちょっとは反省してくださいっ!」
「ほらほら、行くぞ先生」
「ひ、引っ張らないでくださいっ!」
先生の手を握ったまま、人でごったがえしている拝殿へ向かう。
「す、すごい人です、すごい人です! 先生、人で埋まりそうです!」
「きちんと埋葬するから安心しろ」
「その前に助けてくださいっ!」
列に並び、順番を待つ。何を願掛けするか考えてたら、先生に軽く引っ張られた。
「あのですね、別府くん。何をお願いするんですか?」
「先生の身長が縮みますようにって」
「別府くん鬼です悪魔です酷すぎますっ!」
ものすごい嫌がられた。
「で、先生は何を願うんだ?」
「うー……えっとですね、生徒みんなが元気でいられますようにってお願いします。別府くんを除いて」
俺は先生に嫌われているようだ。ムカつくので先生の鼻をつまむ。
「ひゃう!? ひゃ、ひゃへへふははひ、ひゃへへふははひ!」
わたわたする先生を見ながら何をお願いするか考えてたら、俺たちの番になった。先生の鼻から手を離し、賽銭箱に小銭を入れる。
「うー……鼻がひりひりします。別府くんのばか」
隣から聞こえてくる悪口を聞きながら、何を願うか考える。……やっぱアレかな。
隣で目を瞑り、口の中で何かを一生懸命つぶやいてる先生を見て、願い事を固める。
「…………。よしっ、先生行くぞ」
「あっ、もうちょっと、もうちょっと待ってください。すぐですから」
先生は少しだけ何か口の中だけでつぶやくと、賽銭箱の前から離れた。
「それで、別府くんは何をお願いしたんですか?」
拝殿から離れ、境内を散歩してると、先生が尋ねてきた。
「ん? んーと。なんだっけっか。忘れちった。はっはっは」
「…………」
「ど、どした?」
「……ひょっとして、先生のこと、ですか?」
「え? え、いやその、いや、まさか。はっはっは」
「先生が縮むよう、お願いしたんでしょう?」
「いやいや、先生がいつまでも元気でいられますようにってお願いしただけで──」
いかん。先生の顔がにんまりしたものへと変化していく。謀られた。
「別府くんって、素直じゃないですねー♪」
先生はニコニコしたまま俺の手をぎゅっと握った。ええい、ニコニコしおって。
「あのですねっ、あのですねっ。先生、ちょっとだけひいきしました。他の生徒より、別府くんのこと、神様にいっぱいいっぱいお願いしました。……ナイショですよ?」
先生は得意げな顔で指を一本立て、口元に当てた。わざとかどうか知らないが、破壊力がでかすぎる。
「別府くん? どしました、鼻なんてつまんで」
「いや……深い意味はない」
「ぬ? まーいいです、それじゃ帰りましょ? 帰ったら一緒にお勉強です」
「正月から何を言ってるのだろう、この小学生は」
「しょ、小学生じゃないですっ! 立派な大人ですっ! ほらほら、めんきょしょー!」
人の顔に免許証をべしべし当ててくるちっこいのと一緒に家に帰りました。