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2024年11月23日
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【新兵器「ツンデレーザー」】

2010年02月14日
 だらりだらりと授業を受けてたら、校庭から破壊音が響いた。何が起きたのか、視線を窓に移す。
「うあ」
 口から妙な声が出た。校庭の真ん中へんで、なんかGP03デンドロビウムみたいになってる先輩がいる。ビーム砲からレーザーがびむびむ出て、ちょっとした阿鼻叫喚。
 ものすごく見なかったことにしたかったが、見てしまったからには仕方がない。ざわめく教室をそっと抜け出し、廊下を駆けて校庭に飛び込む。
「何やってんだ先輩!」
 先輩に向け叫ぶと、先輩はこっちを向いた。ぽやーっとした視線に、状況を忘れ和みそうになる。
「…………」
「え? 強化ユニットもらった? つけたら暴走した? 早く助けろ馬鹿? ……先輩、色々言いたいが、ばーか」
「……!」
 先輩が怒った。レーザーがこっちに飛んできたので慌ててよける。
「あっ、危ないだろ馬鹿! 小さい人間! 小学生未満!」
「……! ……!」
 なんかまた怒らせたようで、極太のレーザーが僕のすぐ脇を通り過ぎました。大木が消し飛びましたよ?
「まっ、待て待て待て! 洒落になってねーっての! いいからスイッチ切れ、小学生!」
 先輩は小さな小さな声で「小学生じゃないもん」と呟きながらレーザーを連射した。危険が危ないので水飲み場の影に退避。
「ひー……まったく、どうすりゃいいってんだよ、あんな化け物」
「まったく、困ったものです。ぷんぷん」
 なんか、隣に先輩と同じくらい小さいのがいる。
「……何やってんの、大谷先生」
「はうわっ!? べべべべべ、別府くん、どうしてここにいるですか!?」
「先生が俺という存在を否定する」
「えええええっ!? し、してないですよ、先生は別府くんを否定なんてしてないですよ!」
「じゃあ俺を肯定してくれ。褒めてくれ。俺の肉奴隷になってくれ」
「もちろんですっ! ……えええええっ、にっ、にく!?」
「よし、言質は取った。今日から先生は俺の性処理用の奴隷だ。嫌というほど頭なでてやる」
「こ、困ります、それとっても困りますよっ! あ、あの、……なでなでは嫌いじゃないですが、その、性処理がどうとかは、とっても困る事態です!」
「先生うるさい。ただの冗談にそんな超反応するない」
「じ、冗談? ……ううううう、生徒が先生をいじめるぅ……」
「別に冗談を本気にしても、俺は一向に構わん」
「先生、冗談が大好きです!」
 元気に立ち上がった先生の頭上5cm上くらいを、レーザーが通過した。
「ぴぎゃあ!?」
 怪鳥のような声を上げてしゃがみ込む先生。
「先生、むやみに立つと危ないぞ。先生が詐称してる年齢の平均的な身長だと、今頃頭にでかい穴が空いてたぞ。その小学生的身長に感謝しろ」
「詐称なんてしてません! 先生大人です!」
「はいはいはい」
 ぐりぐり頭をなでて黙らせる。
「ううう……別府くんが先生を子供扱いします……」
「子供を子供扱いして何が悪い。それより、ここは先輩が暴走してるから危ないぞ。帰って算数のドリルでもしてろ」
「だからっ、先生は子供じゃありませんっ! 算数のドリルとかしませんっ! ほらほら、めんきょしょー!」
 コンクリの壁を背にして先輩の様子を覗き見ようとしてる俺の頬に免許証をぐいぐい押し付ける先生。非常に鬱陶しい。
「いーから校舎に入ってろ! 怪我したら大変だろーが!」
「ダメですっ! 先生のせいで大変なことになってるのに、先生だけ安全なところにいられませんっ!」
「……ドユコト?」
「だからぁ、先生が開発したブースターパックをあの生徒さんに使わせたら、暴走しちゃって……その、えへ☆」
 えへ☆ だって。片目つぶってウインク。かーわいい。
「……じゃねえよ! なんだ、あのデンドロビウム先生が作ったのか! 何考えてんだ馬鹿! 子供!」
「ば、馬鹿じゃないですし、ましてや子供なんてもってのほかです! あれはですね、ツンデレーザーって言いまして、女の子の素直に表現できない甘くて素敵な乙女心を濃縮し、破壊エネルギーに変換する兵器なのですよ? 規模の小さな軍なら、単機で殲滅できます☆」
 とりあえず先生のほっぺを引っ張る。
「痛い痛い痛いです! 千切れます千切れますよ! あっ、千切れました、いま千切れましたよ!? どうしてくれるんですか!」
「千切れてねーよ! お前、んなもん作るな!」
「だってだって、思いついちゃったんですもん! それより先生にお前とか言ってはいけません! もっと尊敬してくださいっ!」
「まあ原因は分かった。先生へのお仕置きは後にするとして、さて……」
「先生、お仕置きされるんですか!? 先生なのに!?」
 あれだけばびばびレーザー撃ってるんだ、すぐに弾も尽きるに違いない。……いや待て、なんかさっき乙女心を変換してレーザーにしてるとかなんとかって……。
「先生、あれって撃ち続けたらどうなるの?」
「そりゃー、心を削って撃っているわけですから、心が尽きてそのまま廃人になりますよ。なむー」
 両手を合わせて拝んでる先生の頭をとりあえず叩く。
「ぶった! 先生の頭をぶった! 先生なのに叩かれました!」
「うっさい! あーもう、玉砕覚悟で突っ込むか!?」
「ダメですっ、早まってはいけませんっ!」
 先生が俺の腕を引っ張り、押し留める。
「先生……。分かった、それじゃ責任者が囮になってる隙に突っ込む」
「頑張れ、別府くん!」
 先生が俺の体を押し、水飲み場から追い出そうとする。
「ええい、先生も体を張れ! つーかお前に責任があるんだから囮くらいなれっ!」
「囮なんてヤですっ! あっ、そだ、先生とってもいいこと思いつきました! 自爆装置を作動させればいいんです! うふー、先生ってばやっぱり天才です!」
 自信満々に胸を張る先生の頭を叩く。
「また叩きました! またです! 暴力です! 別府くんおーぼーです! 独裁者です!」
「自爆なんてしたら、先輩まで吹き飛ぶだろーが! ちったあ考えて喋れ馬鹿!」
「ば、馬鹿とは何ですか馬鹿とは! 先生、こう見えても天才ですよ!? いっぱい賞とか貰ってますよ!?」
「賞とか関係なくてああもう!」
「…………」
「え? 楽しそうで羨ましい? 先輩、どこをどう見れば楽しそうに……先輩?」
 ちっちゃな声に振り向くと、すぐ目の前に先輩がいた。うーん、先生と議論を戦わせている間に近寄られていたんだね。大変だよ。
「べべべべべ別府くんどうにかしてくだたいっ!」
「先生噛んでる。くだたい(笑)」
「うるさいですっ! なんでそんな冷静なんですかっ!?」
「や、慌ててる人見たら逆にこっちは冷静になるなーって体験、あるでしょ?」
「いーから早くどーにかしてくださいっ! あっ、あああっ!?」
 先輩に備え付けられた砲頭に、エネルギーの固まりのようなものが集まっている。むぅ、これはとても危険な予感。
「ふふ、死ぬやもしれんな」
「何を笑ってるんですか!? あっ、そだ、えーと、あのエネルギーはあの生徒の思いの結晶です! 別府くん、彼女の思いを受け止めてあげてください! 一人で!」
「無茶言うなっ! 仮に思いだとしても、破壊エネルギーに変換してるんだろーが! そんなもん受け止めたら死ぬわっ!」
「…………」
 一瞬、先輩が悲しそうな顔をした。
「……あ、いや、そうだな。やってみるか」
「別府くん?」
「先輩の思い、この俺が受け止めてやる!」
「…………」
 いつも無表情な先輩が、少しだけ、ほんの少しだけ微笑んだ。そんな気がした。
「あ、あのー……別府くん? なんか、こんなこと言う俺かっこいーと思ってるようですが、普通に死にますよ?」
 だよね。死ぬよね。どうしよう。
「…………」
 死ぬのは嫌だなあ、俺の体程度で先生かばえるかなあ、とか思ってたら、砲頭に集まっていたエネルギーが収束をやめ、ゆっくりと拡散していった。
「え、ええっ!?」
 そして、先輩に取り付いていた兵器類が一斉にパージされた。
「わっ……ととっ」
 その勢いに押された先輩を、慌てて抱き留める。
「な、何がどうなったんだ、先生?」
「えー……と。そ、その、生徒さんの思いを言葉で受け止めたので、その生徒さんが満足し、それを感じ取ったツンデレーザーが自らの意思で解放した……の、かも」
「かも、って……製作者だろ、分かんねーのか」
「だってだって分かんないものは分かんないですもんっ! てきとーに作ったんですし!」
「こんな殺戮兵器てきとーに作んなっ! ……とっ、先輩、大丈夫か? 怪我とかないか?」
 先輩を引き剥がし、体を点検しようとしたが、先輩が離れない。
「先輩?」
「……♪」
「いや、♪じゃなくて。離れて」
「…………」(ぷるぷる)
「いや、ぷるぷるじゃなくて。離れるの」
「…………」(ぷるぷるぷる)
「いや、だから」
「…………」
「え、恋人同士は一緒にいて当然? ……あの、恋人って、何を」
「♪♪♪」
「いやいや、いやいやいや! せ、先生、何とか言ってやってくださいよ」
「当然です! そこの貴方! 別府くんが困ってますよ!」
 うん、そうだ、その通り。
「別府くんは先生のことが好きで好きでしょうがないんだから離れなさい!」
 いや待てそんなこと言ってないし言った覚えもない。
「ていうか別府くんは先生のものなのに、勝手に抱きついたりして……羨ましいじゃないですかっ!」
「…………」
 先輩が勝ち誇った顔で俺にすりすりした。顔がにやけるのが止められない。
「もーっ、もーっ、もーっ! ダメーッ!!!」
 先生は先輩の隣に取り付き、俺に抱きついた。
「これ先生のっ! 先生のなんですから取ったらダメですっ!」
「…………」
「こ、子供!? 子供って言いましたか!? どっちが子供ですか、どっちが!」
「…………(怒)」
「あーいいですよ、勝負ですよ! 大人の魅力でびゃびゃーんと勝利しますよ!」
「はい。喧嘩終わりー」
 二人の頭に手を乗せ、わっしわっしなでる。
「あ、あの、喧嘩なんて別にしてませんよ? ただ、この子が敵視してくるだけで」
「…………」
「先輩も『先生が悪い』とか言うな。喧嘩する奴にはもれなくなでなで禁止令が発令されるぞ」
「しませんしてません喧嘩なんてするものですかっ! ええ、しませんよ、絶対にしませんよ?」
「…………」
「先輩もしないか。ん、じゃあご褒美のなでなで」
 二人の頭をなでまくりんぐ。
「はふ……別府くんのなでなでは頭とろけそうです」
「…………」
「だっ、誰が最初から頭とろけてるですか、誰が! やっぱこの子先生に喧嘩売ってますね!? 買いますよ、いっぱい買いますよ!?」
「けんかりょうせいばいー」
 再び喧嘩を始めた二人の頭にアイアンクローをしかける。
「あうううううっ!? いっ、痛いっ、別府くん痛いですっ、頭取れそうですっ! あっ、取れました、いま取れましたよ!?」
「……! ……!!」
 びったんばったん跳ねる二人の衝撃を体に受けながら、校庭に散乱するツンデレーザーとやらの処置をどうするか、途方に暮れる俺だった。

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おおぅ…れーざー…
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