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2025年05月05日
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【ツンデレは夜中に一人でさみしいようです】

2010年02月01日
 夜は眠いので寝ようと布団を掴んで持ち上げたら、どういうことか見知った顔がそこに。
「……寒い。早く布団戻せ」
 あまりの事態にそのまま固まっていたら、布団の中にいた人物が迷惑そうな顔をしたまま体を縮ませた。
「いや、ちょっと落ち着こう。確かに俺は妄想激しい人物ではあるが、現実という器にこうもリアルに映し出すことが出来ようか。いやできない。反語」
「……反語って言いたいだけだ」
「うるさい。まあアレだ、ここから導きだされる結論は、なんで人の布団の中にいますか、ちなみさん」
 本来いるはずのない人物にたずねると、ちなみは面倒くさそうに口を開いた。
「……ここ、私の部屋」
「そんな無茶が通用するか。どこをどう見ても俺の部屋だ」
「……今日から私の部屋」
「コイツ無法者だ!」
「……なわけで、寝る。……早く電気消せ」
「いやいや、いやいやいや。出てけ」
「……こんな可愛らしい女の子を、冷たい風がぴうぴう吹く寒空の下、たった一人出て行けとタカシは言う。……鬼?」
「自分の家に帰れと言っているのです! 隣だろうがっ!」
「……めんどい」
「めんどいって……ていうか、いつの間にここに潜んでたんだ? 全然気づかなかったぞ」
「……タカシがゲームしてる最中に、こっそり」
「こっそりって、お前それ不法侵にゅ……」
 ……待て。ゲームしてる最中に、こっそり?
「……なんで今更ドラクエ3やってるのか知らないけど、仲間に私の名前使うのやめて欲しい。肖像権の侵害だ」
 やっぱり見られてたよチクショウ!
「……なんで二人旅? なんで?」
 にやにやしてるちなみが大変むかつきまする。ていうか恥ずかしすぎまする。
「う、うるさい! どーでもいいだろ、そんなの! いーから帰れ帰れ!」
「……今日、お母さんとお父さんが会社の旅行でいない」
「あー、らしいな」
「…………」
「な、なんだよ、人の顔をじーっと見て」
「……察せ、ばか」
「……? はっ、まさか、エロ展開かッ!?」
 ちなみは布団から這い出ると、俺の元までトコトコ歩み寄り、ゆっくりと俺の頬を引っ張った。
「違いましたか」
「……違います。……タカシとそゆことなんて、ありえない」
 とても悲しい。
「……まあ、現段階では」(ぼそり)
「にゃんと!」
「ち、ちっちゃい声で言ったんだから聞こえるな、ばか! ……うー」
 ちなみは顔を赤くして俺の頬をさらに引っ張り上げた。かなり痛え。
「……と、とにかく。二人が旅行でいないので、私の家はいま私しかいない」
「はぁ。うちは両親揃ってますよ」
 痛む頬をさすさす擦ってたら、ちなみのほっぺが小さく膨らんだ。
「…………」
 そして、何か言いたげに俺をじっと見る。なんとなく察しがついたが、でもなぁ。一応女の子だしなあ。
「えー、と。寒いだろう、とりあえず布団入れ」
 ちなみを布団の方へ促すと、きゅっと腕を掴まれた。
「……ふ、二人の方が、あったかい。……かも」
 うつむいたまま、ちなみは少し早口に言った。
「あー……そだな、一緒の方が暖かいかもな」
 一瞬のうちに色々な考えが頭を駆け巡ったが、何かあっても最悪俺が責任取ればいっかと思い、一緒に布団に入る。
「……いっしょ、いっしょ」
 心なしか嬉しそうな声をあげながら、ちなみは布団の中で俺の手を握った。この笑顔を見れただけでも、一緒に寝る甲斐があるってもんだ。
「嬉しいのは分かるが、とりあえず手を離せ。電気消せない」
「……嬉しくなんか、ないもん」
「なら、手を離せ」
「……ぱっ。離した」
「右手を離した次の瞬間に、左手を繋いだら一緒ではないかと思いますが」
「……右とか左とか、最初に言い出したのは誰なのかしら」
「ときメモだ!」
「……タカシがそーゆーゲームばっかするから、私にまでそーゆー知識がついてしまう。……いい迷惑だ」
 どうかと思う。色々。
「とにかく、明かりを消さないと寝れないので、少しでいいから手を離せ」
「……むぅ。……分かった、タカシのわがままにつきあってあげる。……菩薩のような優しい私に感謝せよ」
「わがまま!?」
「……うるさい」
 色々思ったが、手を離してもらったので布団から這い出て明かりを消す。何も見えない中、勘だけで布団の中に戻る。
「……おかえり」
「ただいま。ただいま?」
 布団に戻ると、ちなみが俺の頬を両手で包み、すりすりして出迎えた。
「……何も見えない。……本当にタカシ?」
「いや、ちなみんなんだ。胸がないー、胸がないー」
「…………」
 すりすりが頬引っ張りに変化したので大変痛い。
「痛い痛い」
「……猛省せよ、ばか」
「するので、引っ張るのをやめてください。割と痛いのですよ」
「……まったく、タカシはいつ何時でもばかで困る」
「へーへー。いーからもう寝るぞ」
「……まくらよこせ」
「ふたつもない。我慢しろ」
「……しょうがない、これで我慢する」
 ちなみは体をよじらせ、俺の胸の上に頭を置いた。
「……これでよし。頭が落ちないよう、一晩中見張ってるように」
「俺も明日学校なのですが」
「……ふぁいと」
「ふぁいとじゃねえ」
 勝手なことを言う娘の頭を優しくなでながら、まどろみに落ちていくのだった。

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【ツンデレは寂しがってるようです】

2010年01月30日
 パソコンが壊れた&中のエロデータバックアップ取ってないという素敵すぐるコンボが炸裂した結果、精神が崩壊したので数日学校を休んだ。
 部屋の隅っこで三角座りをして精神を修復する作業をしていると、ぴんぽーんという音が部屋に鳴り響いた。
 はてこんな昼日中にいったい誰だろう。親は仕事で出ているし……宅配便の人かな? しかし、今出迎えたら誰彼かまわず襲い掛かるであろう精神状態だから無視しよう。
 そんなわけで再び隅っこ座り大戦MXを行っていたら、ピンポーンという音は絶えたが今度はドアをガチャガチャと動かす音が。
 すわ強盗か、と心臓をびっくらさせていたが、鍵はしていたと一安心していたのにガチャッて音が! 開いたよ、ドア!
 見つかったら死ぬのかなあ、とか思いながらガクブルしてると、階段をトントンと軽快に上がってくる闖入者。いやいやいや! 普通居間とか探すだろ!
 ……こ、こうなったらやられる前に殺れ、だ! 手近な物で武器になるもの──き、キンチョールしかねえ!
 などと一人狼狽してたら部屋のドアがガチョリと! ええい頑張れ男の子、気合一閃殺虫剤を構え叫ぶ!
「動くな! 少しで動けばプシューだぞ!」
 闖入者の頭に噴射口を突きつけ、ニヒルに言い放つ。
「……それでどうして動かないと思うのか。やはりタカシの頭はおかしい」
 闖入者は見知らぬ人物ではなく、ちなみだった。
「なんだ……ちなみかよ。てっきり強盗かと思ったじゃねえか」
「……実は強盗。金を出せ」
「少しでも動くとプシューだ!」
 ちなみの顔に噴射口を再び向けると、迷惑そうな顔をされた。
「……そんなのは、いい。……それより、どうして学校に来ないのか」
「ああ、そのことか」
 事細かに登校できない理由を説明したら、どうしたことかちなみの顔が呆れたものに。
「……そんなことで学校に来ないとか。タカシの頭は私の想像以上に進行が進んでいたか」
「人を勝手に病人扱いするない。だいたい、そんなことと言うが、俺にとっては一大事なんだぞ? 数年分のデータが……嗚呼!」
 消えたデータに再び思いを馳せていると、トントンと肩を叩く感触。顔を上げると、ちなみの──
「…………」(にやにや)
 にやけ顔が! チクショウ、馬鹿にしてやがる!
「……とにかく、身体に異常がないのであれば学校に来ること。じゃないと、寂しがる人がいる」
「ほう! 例えば、誰?」
「…………。……?」
「そこで首を傾げられたら俺の心が折れること請け合い!」
「……待って。いま思い出す。うーんうーん」
 腕を組んで考え込まれた。泣きそう。
「……ええと。その、だいじょぶ。人間、一人でも案外へーき」
「チクショウ! 誰一人として検索に引っかからなかった!」
「……まあ、気にしない気にしない。ほら、学校行こ」
「嫌だ。俺はこの鉄の城に一生篭もって将来的にはあしゅら男爵と戦うの?」
「……どうして疑問系」
「恐らくだけど、最初に部屋を鉄の城などと呼称したせいでマジンガーZと勘違いしたため起こった現象だろう」
「……はぁ」
 呆れられた。よく呆れられます。
「……とにかく、一緒に学校行く。じゃないと、つまんない」
「む? それはつまり、俺がいないとちなみんは寂しいと?」
「……そんなことは言ってない。まったく、勝手極まること極まりない」
「極まるな。そんなことよりだな、ちなみさん。もしお前が寂しいと一言告げたなら、俺様学校に行くこと請け合い」
「…………」
「蔑みの視線じゃなくて! 優しくて甘い言葉を!」
「……はぁ。ええと、さみしー」
「そんな棒読みではなくて! もっと感情豊かに!」
「……さしみー」
「刺身!?」
「……ほら、満足したら学校行く」
 何一つとして満足してないのに、無理やり着替えさせられ学校へ。……まあ、いい機会だし、いっか。
 学校では昼休みの最中だった。昼飯など持ってきてないのでぐーぐー腹を鳴らして久々の学校を見物してると、ちなみがちょこちょこ俺の席までやってきた。
「……はい、これ」
 そう言って俺に渡したのは、小さなパンだった。
「ここは手作りの弁当を渡して俺の好感度を上げるチャンスではないのか?」
「…………」
「ちなみの厚意に感謝致します!」
 パンを奪われそうになったので素早く感謝の言葉を言って飯にかぶりつく。やれやれ。
 そうやってもしゃもしゃしてたら、女生徒が寄ってきた。
「あ、別府くん来たんだ。よかったね、ちなみ。アンタずーっと寂しがってたもん」
「ふぇ!?」
 ちなみ方面から変な声が出た。
「ち、ちが、そ、そんな、私ちっとも寂しくなんて!」
「いやー、どうしたものかと困ってたのよ、実際。ずーっと俯いててさ、時々別府くんの席見てはため息ついて。もう休んじゃダメだよ、別府くん?」
 言いたいことだけ言って、女生徒は自分の席へ戻っていった。
「……何」
 ぶすーっとした表情で、しかし顔は赤いままでちなみが不満そうに小さくうめく。
「や、マジで寂しがられていたとは。これからは何があっても毎日来るから安心しろ」
「……あ、安心とか意味分かんない。ずっと来なかったらいいのに。毎日平和だったのに」
「はっはっは。ちなみんは可愛いなあ」
 ぶすーっとしたちなみのほっぺをうにうにつつく。
「……迷惑」
 そう言いながらも、されるがままのちなみだった。

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【ツンデレに怖い話をしてみました】

2010年01月28日
 ↑の結果、ちなみが俺から離れません。
「ちなみさん、ぴたーっとくっついてくれるのは大変に嬉しいのですが、生憎と現在の日本の気候は夏なので暑いから離れろ」
「……離れたいのはやまやまだが、私には私の都合がある。……諦めろ」
「都合って何スか」
「……どっかの馬鹿がとても怖い話をしたので、夜尿症の恐れが」
「いい年して寝小便するなッ!」
「……その危機をタカシになすりつけるために、一緒にいなければならない」
「ぬ」
 どうしよう。それってつまり一緒に寝るってことだよね。それは大変に喜ばしいことだけど、人の布団で寝小便すると公言してる奴と一緒に寝るの?
「うーむむむむむ」
「……何を悩んでいる。今この時を逃せば、タカシに女の子と一緒に寝る機会など訪れるはずがない」
「何気に失礼ですね」
「……ただの事実。……それに、私のような見事なちっちゃなおっぱい、所謂ちっぱいな子とそうなることなど、最早天文学的数字と言えよう」
「自分で言うことにやや萎えはしましたが、確かに。うーむ。うーむむむ。うーむむむむむ」
「……では、そういうことで」
「何も結論を出してないのに勝手に人の布団にいそいそと!? なんたる勝手、恐るべき傍若無人!」
「……早く、こっち来る」
 布団から顔だけ出し、寂しそうに言うちなみ。
「ぬう!? この誘惑には何一つ勝てる要素がないので行きます」
 いそいそとちなみがINしている布団に俺もIN。
「……あ、触ったら殺す」
「馬鹿な!?」
「……でも、頭をなでなでするのは許可する」
「それは、いいです」
「……訂正。強要する」
 何その全然嬉しくないなでなで。
「……早くする」
「あーはいはい」
 言われるがまま、ちなみの頭をなでなでなで。
「……んー」
「目を細めていることから、気持ちよいと判断しましたが、どうなのでしょうか」
「……気持ちよくない。吐き気。げーげー」
 それはいけないので、手を止める。
「……何をしている。早くなでろ」
「気持ち悪いと言っていたので」
「……なでてないと、余計に気持ち悪い。……タカシと一緒の布団とか、考えるだけでおえー」
「俺が大統領なら、死刑にしてるに違いない」
「……だいじょぶ。私が大統領でも、タカシを死刑にしてる。……いっしょ♪」
 何その全然嬉しくないシンクロニシティ。
「……戯言はいいから、早くなでなで」
「しかし、俺から戯言を取ったら美男子しか残らないぞ」
 ものすっごいため息を吐かれた。
「……ものすごい戯言だった。戯言レベルSS」
「流石に泣きそうだぜ」
「……泣きそうなのは、こっち。……まさかアレほど怖……んにゃにゃ、迫力ある話をできるとは思わなかった」
 さっきした怖い話を思い出したのか、ちなみは布団の中で俺の腹辺りの服をきゅっと掴んだ。
「夜中に思い出したらちょっと便所行けないレベルだと自負しております」
「……将来の役に立たない技術ばかりが発達している」
 言い返したいのに何も言えないよパトラッシュ。
「……勉強とか、運動とか、部活とか、他に頑張ることが沢山あるように思える」
「あまりいじめるな。そんなこと言う奴は今から一人で帰ってもらうぞ」
「……無意味な人生もいいよね」
 同調されたはずなのに、本気で泣きそうだよ。
「……ということで、なでなで」
「はいはいはい」
 放置しておくと俺の心をえぐりまくられるので、諦めてちなみの頭をなでなでする。
「……んー」
「いかがですか、お姫様」
「……悪くない。……んじゃ、私が寝付くまでそうしておくこと」
「嫌です」
「……はぅーとか萌え言語言ってやるから頑張れ。はうー。はうー」
 馬鹿にされてる。絶対馬鹿にされてる。
「……はわわの方がよかった?」
「一緒だッ! ええい、馬鹿にしおって! そういうわざとらしいのは萎え萎えなんだよ!」
「はわわ」
「こいつ人の話聞いてねえ!」
「……こんな可愛らしい女の子がはわわと言っているんだから、神と私に感謝したらどうだろう」
「神と自分を同列にするな! あと萌え言語のチョイスが全体的に古い」
「……だって、よく知らないもん」
「じゃあ教えてやるから学べ。lesson1.みゅー」
「み゛ゅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛」
「怖っ、怖ぁっ! どっから出てる、そのデスボイス!」
「……墓の下から萌えキャラ登場」
「んなところからは出てこねえよッ!」
「……チャームポイントは抜け落ちた目玉」
「お前怖いから俺と一緒に寝てるんじゃなかったのかよ!?」
「……タカシと一緒だったら、へっちゃら」
「う」
 突然そんなこと言われたら、照れるじゃないですか。
「……な、何を赤くなってるか。か、勘違いも甚だしい。……や、やれやれだぜー」
「そう言ってるお前も、結構な赤さを保持しているぞ」
「こ、これは……め、酩酊してるだけだもん」
「そっちの方が問題だ、未成年ッ!」
「ごくごく。げぶはー」
「人のジュースを勝手に飲むな!」
 一瞬いい雰囲気になったかと思ったが、やはりちなみ相手だとこんな感じです。

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【寒そうにしてるツンデレの手を握ってみた】

2010年01月25日
 近頃は油断するとそのまま凍死するかもしれないくらい寒いので、登下校が辛すぎる。
 そんなわけでポケットに手をつっこみつつ登校してると、小さい身体をさらに小さく縮めて歩いてる生き物発見。
「うす、ちなみ。あんまり身体を縮ませてると身長も縮むぞ」
「……タカシは別箇所が縮小している」
「しししし失敬な! これは寒いからであり普段はもうちょっとアレですよ!?」
 股間付近をじーっと見られ、いやになるくらい狼狽しながら訂正する。
「……まあ、いい。……おはよう」
「あ、うん。おはよう、ちなみ」
 挨拶と一緒にちなみの頭をうにうになでる。
「……タカシは事ある毎に私の頭をなでる」
「縮めって毎回呪いを込めてるんだ」
「……すなわちグッド度胸」
 ちなみは無表情に俺の頬をうにーっと引っ張った。
「ふははは。しかしなんだな、超寒いな」
「……ん。氷河期に突入したらしい」
 頬引っ張りに満足したのか、ちなみは俺から手を離した。そして、一緒にてくてくと学校へ向かう。
「なるほど。人類はそう遠くない未来に絶滅するな」
「……嘘を普通に受け入れた。……よし、もうちょっと嘘を誇大化しよう」
 なんでもいいが、そういうことは俺に聞こえないように言った方がいいと思う。
「……ええと、氷河期なので、温もりが必要だ」
「ふむ、そうだな」
「……温もりといえば、人肌」
「ほう?」
「……だから、つまり、……えと」
 ちなみの視点を辿る。なるほど、俺の手に行き着くわけなんですが、あいにくとその手はポケットに収納されている。
「こんな感じだろうか」
「わ」
 ポケットから手を抜き、ちなみの手をきゅっと握る。
「うわっ、お前の手超冷てえ!」
「……胸のない人間は冷血だとタカシが誹謗する」
 胸のことは一切言っておりません。
「ていうか、マジでお前の手冷たいな」
 両手でちなみの手を包み込み、さすさすとさする。
「わ、わ、わ」
「どだ? ちっとは温もったか?」
「……ち、ちっとは」
 ちなみはそっぽを向きながら、ぽつぽつと呟いた。まあ、顔も赤くなっているようだし、多少は温くなったようだ。
「……で、でも、もちょっと」
 今度は両手が差し出された。うつむいているので表情はうかがい知れないが、髪から覗く耳が真っ赤なので、まあそれに準じているだろう。
「寒いから仕方ないよね」
「……ま、全くだ。本当はタカシなんかに触られるなんてすごく嫌だけど、寒いから仕方ない。ああ嫌だ嫌だ」
「ひどいことを言う」
 ちなみの両手を包み込み、ゆっくりさする。片手は既に温まっていたが、もう片方は結構な冷え方をしていた。
「お前さ、冬の間だけでも手袋とかした方がいいんじゃないか?」
「……いい」
「いい、って」
「……ま、また、こーやってタカシをこき使う。こき使われるタカシ、哀れ」
「あー」
「あ、あーとか言うな。違う、別にタカシに手繋いで欲しいとか思ってない。迷惑。ぷんぷん」
「さういうことは赤面しないで言うといいと思うます」
「し、してない。錯覚。タカシの錯覚。……て、ていうか、見るな。こっち見るの禁止」
 ちなみは手を振って俺を制止しようとしたが、あいにくとその手は俺に包まれているので、ぶんぶんとシェイクハンドするだけに終わった。
「しかし、両手を温めると言うことはすなわち向き合っているということなので、どうしてもちなみの顔を見ることになるのだが」
「……ふ、ふん。……じゃ、手、繋いでるときだけ、見るの許す。特別。……感謝しろ」
 明後日の方を見ながら、ちなみは真っ赤な顔で呟くのだった。

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【なでなで】

2010年01月25日
 休み時間、教室でぼやーっと過ごしてたら、突如『小さい子を可愛がれ』という天啓が。
 天啓なら仕方ないので、誰かいないかと探してたら、丁度いいところにちっこい娘さんがむすーっとした顔をしてこちらに歩いてきたので、ひっ捕まえてみる。
「……離せ」
 向こうから歩いてきたちなみが俺に両ワキを持たれ、ぷらーんとしたまま偉そうにつぶやく。
「提案があるのです」
「……断る」
「まあ聞いてみるだけ聞いてみろ。突如小さい系の生物を愛でたくなったその折、タイミングよくこっちに来たお前に白羽の矢が立ったという寸法だ」
「……私は小さくない」
「俺に持ち上げられてる時点で小さいとは思わんかね」
「……ふん。……私は別にタカシに愛でられたくない」
「別に挿れたりしないよ?」
「……まあ、既にタカシには嫌と言うほどされているし」
「人聞きの悪いこと言うなッ! してねぇよッ!」
『聞いた? 別府くん、嫌がるちなみちゃんに無理やり……』
『やだ、別府くんエロテロリスト……』
 遠巻きに俺たちを見ていた聴衆がこれ見よがしに嫌なことを言う。ていうかエロテロリストて。懐かしいな。
「あ、あははははー、やだなぁちなみ。俺とちなみの間にそんなことあるはずないだろ?」
「……もう肉棒は嫌だ」
 とりあえずちなみを抱えたまま、キャーとかいう声のあがる教室からダッシュで逃げる。たどり着いた空き教室に入り、鍵をかける。
「はぁはぁ……お前なあ! 無茶苦茶言うなッ!」
「……これでタカシの社会的地位は壊滅的だ」
 嬉しそうなちなみが大変むかちゅく。
「はぁ……なんだって可愛がるだけでこんなことになんだよ」
「……やはり肉棒の餌食か。さよなら、膜」
 ちなみのどたまにチョップを落とす。
「……痛い」
「女の子がそういうこと言うなッ!」
「……やれやれ。いったいどこまで女の子に幻想を見れば気が済むのか」
 とりあえずちなみのほっぺをむにーっと引っ張る。
「……ひはひ」
「はぁ……もういいか。とりあえず、最初の目的だけでも済ますか」
 ほっぺから手を離し、ちなみの頭をなでなでする。
「……?」
 ちなみは視線を俺の手に向け、その後俺の顔に向けた。
「ん、ああ。とりあえずな。可愛がりたかったので、可愛がったのです」
「……なるほど。可愛がられた」
 なでなでを完了したので、手をどける。
「……まあ、そう言わずに」
 どかした手を、ちなみはむんずと掴んで自分の頭に乗せた。
「……もっとなでなでしても、寛大な私は許す予感」
「いや、もう充分ですので」
 手をのけようとするが、すごい力で握られており、動かせない。
「……こんな機会でもなければ、タカシは今後女の子をなでなでする機会なぞあるわけがない。さあ、嫌というほどすればいい」
「いやいや、別にその程度の機会はあるかと」
「……早くしないと、服を脱いで叫ぶこと請け合い」
「いやはや、ちなみは可愛いなあ!」
 脅迫に屈し、半ばヤケクソ気味にちなみの頭をなでる。
「わ、わわ。……困った、告白された」
「してねえ!」
「……もっと優しくなでないと、叫ぶこと請け合い」
「ええい、面倒くせえなあこの姫さんは!」
「……あと、ずっと一緒にいたいなあ、とか、大好きだなあ、とか言え」
「…………」
「な、なに。……べ、別に私がそう思ってるとかじゃなくて。……思ってないし。そんなの。全然」
 ちなみは珍しく早口になりながら、俯いてぶちぶち口の中でつぶやいた。耳が赤え。
「あー……いやはや。うん、やっぱ可愛い」
「……うう。どうして最終的にはタカシが主導を握っているのか。……悔しさのあまり血尿が出そうだ」
「出すなッ!」
 相変わらず耳が赤い生物をしばらくなでなでしてました。

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