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2025年05月01日
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【ヤガランテを召喚できる妹ちなみん】

2010年04月02日
「……おにーちゃん、おにーちゃん」
「……兄は今、便所に篭もっています。用件がある方は、便所の外に出てからお願いします」
 トイレの中から機械的な声で妹に返す。
「……大?」
「お願いだから便所くらい静かにさせてください」
 便所の中から妹に懇願する羽目になるとは思いもしなかった。
「……ふぁいと、おにーちゃん」
 応援された。何を頑張れと言うのか。
 しばらく頑張って異物を放出し、すっきりしたので流してからドアを開ける。がんっ、といい音がした。
「……うぅ~」
 ちなみがぺたりと床に座り込み、両手でおでこを押さえていた。
「なんでここにいるんだよ……」
「ぶつけた~……。おにーちゃん、責任取って」
「結婚しよう」
「ヤだ」
 即答されると、それはそれでショック。
「で? 便所の前で何やってんだ?」
「あ、そうそう……えっと、ちなみはヤガランテを召還できるようになりました~」
 嬉しそうにない胸を張るちなみだが、分からないことが幾つかあります。
「ヤガランテとやらが何か分からんし、召還とか無理」
「…………」(ほっぺぷくー)
 機嫌を損ねたようだ。さらに困ったことに、腹も減った。しばらく俺の中で協議した結果、飯を優先。
「ちなみ、昼飯なににする? 作るの面倒だし、ラーメンでいいか?」
「……ヤだ。ちゃんとしたの作って。おにーちゃん特製チャーハンがいい」
「んー、チャーハンならいっか。作るから手伝え、ちなみ」
「……ちなみがヤガランテ召還するの見てくれるなら、手伝う」
 よく分からんが、それでちなみの気が済むならいいだろう。
「分かった分かった。兄が見ててやるから、ちゃっちゃとするがいい」
「……おにーちゃんのくせに偉そう。……あとで嫌がらせしてやる」
「そういうことは俺のいないところで言え」
「おにーちゃん、邪魔しないで。……集中できないじゃない」
 なんか怒られた。
「……なむなむ、……ヤガランテさんヤガランテさん、出て来いはよーん」
 どこかで聞いたことのある極めてやる気を削ぐ言葉を呟き、ちなみは両手を上げた。すると、上げた両手の間からどこからともなく煙が舞い起こった。
「おおっ!?」
「……ふふ、だーいせーいこー」
 煙が収まると、ちなみの前に小さなロボットが鎮座していた。
「……ごー、ヤガランテ。……おにーちゃんを抹殺だ」
 物騒なことを言いながら、ロボットを向けるちなみ。
「なんで殺されるんでしょう」
「……もっとちなみと遊んでくれていれば、死なない未来もあったかも」
 やめて死んだものとみなさないで。まだ生きてます。
 ちなみがヤガランテと呼ぶロボットが一歩一歩俺の方に歩み寄ってくる。……えーと。
「えい」
「ああっ、……でこぴんした」
 ロボットは転んだまま足を動かすだけで、自分では起き上がれないようだ。
「ふっ……この程度で兄を倒そうなどと、十年早い! 出直して来い!」
「……うっ、うう、ううう~……」
「え、えと、ちなみ?」
「……ふぇぇぇぇぇぇん」
 ロボットが倒され悲しくなったのか、ちなみは突然泣き出してしまった。
「あっ、あ~……ごめんな、ちなみ。悪いお兄ちゃんだったな」
 ちなみの頭を撫でながら謝る。
「……うっ、ぐすっ……うん、悪いおにーちゃんだった。……ひっく」
「手伝うからさ、次はお兄ちゃんを殺せるの召還しような?」
 慰めるためとはいえ、なんて台詞だ。
「うっ、うん。……次は、おにーちゃん殺せるの出す。……でも、ちなみと遊んでくれるなら、半殺しで我慢してあげる」
 出来れば半殺しもやめて欲しいなぁと思いながら、俺はちなみを抱っこするのだった。

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【マヨネーズを召還できる姉ちなみん】

2010年04月02日
「……タカくん、タカくん」
 部屋で仰向けになり漫画を読んでると、いつぞやのようにちなねえが俺の腹をつんつん突付いてきた。
「……タカくん、タカくん」
 何度も何度も突付かれるが、面倒事に巻き込まれそうなので放置。
「……ぐすっ、タカくん、タカくん」
「無視されたくらいでいい歳の大人が泣くなッ!」 
 上半身を跳ね起こし、ぐすぐす泣くちなねえを一喝する。
「……だって、タカくん無視するんだもん。……お姉ちゃんは、少し悲しくなりました」
「だからって泣くなよ。子供か……」
「……タカくんはお馬鹿だから知らないだろうけど、お姉ちゃんはタカくんより年上です」
「知ってるよ! 馬鹿じゃねえよ! あーもー、この見た目子供姉がっ!」
「……そんなひどいことを言う弟を懲らしめるため、お姉ちゃんは新しい召還獣を手に入れました」
 また襲われたら敵わないので逃げようとしたら、ちなねえが俺の上に乗ってきた。
「なにすんだよっ!」
「……逃げたらダメー。……なむなむ、マヨネーズさんマヨネーズさん、出て来いはよーん」
 一連の召還の動作を行い、煙から出てきたのは……マヨネーズそのものだった。
「……召還獣?」
「……召還まよねーず。……なんと、通常のまよねーずの三倍くらい栄養たっぷりなのです」
 すごい? とちなねえの瞳が訴えているが放置。
「いや、あのさ、ちなねえ。その、出てけ」
「これでタカくんのマヨネーズ嫌いを克服です。……ささ、ぐぐーっと」
「むあっ!?」
 あろうことか、ちなねえはマヨネーズを俺の口に無理矢理注ぎ入れた。口いっぱいにマヨネーズ味が広がる。
「……ぶああああっ!」
「うわぁ」
 栄養はともかくとてもマズイので思い切り吐き出すと、ちなねえはちっとも驚いているようには聞こえない叫び声をあげた。
「……うー、いっぱいついた」
「う、ちなねえが白濁とした液体まみれに」
 これは……イカンですよ。イケナイ想像をしてしまいそうですよ。
「……まったく。タカくんがいっぱい出すから、顔にまで白いのがついちゃったじゃないですか」
「……ちなねえ、その言い方はヤメテ。なんか、違うこと想像しそう」
「違うことって……あっ! ……た、タカくんはえっちですね」
 ちなねえは不満そうに少し頬を膨らませた。
「と、とにかくもういいだろ? ほら、早くどいてくれよ」
「……まだです。えっちなタカくんには、もっとお仕置きが必要です」
 無理矢理口にマヨネーズを注ぎ入れて、まだお仕置きが必要と言うちなねえ。そこまでエッチは悪なのか?
「……あ、まよねーず、なくなっちゃいました」
 ちなねえの持つマヨネーズは、すでに空になっていた。……すげー勢いで注ぎ込んでたもんな。
「そ、そりゃ残念だな。諦めろ、ちなねえ」
「……まだです。……私の体に、タカくんが吐き出したまよねーずがついてます」
「え……」
「……な、舐め取ってください」
「えええええ!?」
「……うるさいです」
「えっ、いや、ちょ、ちなねえ? 大丈夫? 頭働いてるか? 起きてる?」
「……弟に馬鹿にされて、ちょっとショックです。……いいから、早く舐めるのです。……こんな風に」
 そう言って、ちなねえは俺の頬をぺろりってえええええ!?
「……ほ、ほら、タカくんも私のマネして、ぺろぺろするべきです」
「え、いや、あの」
「……べき、です」
「は、はい」
 怖いから従う。……い、いや、ホントに怖いってだけの理由です。べべ別にちなねえをぺろぺろしたい欲望なんてこれっぽっちも!
「……た、タカくん、舐め方がえっちです」
 ……す、少しくらいはあるかもしれないです。

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【動物とお話できるちなねえ】

2010年04月01日
「……あっ、タカくんタカくん。……お姉ちゃんは、タカくんを探してました」
 ぷらぷらと近所を散歩してると、ちなねえと遭遇した。
「人違いです」
「……お姉ちゃんがタカくんを見間違えるわけないです。……あなたは、タカくんです」
「目の迷いです」
「……お姉ちゃんの目は、迷ってませんよ?」
「ヤギズボンです」
「……タカくん、適当なこと言ってるだけ?」
 コクコク頷くと、ちなねえが怒った。
「……お姉ちゃんに適当なことを言ってはいけません。……まったく、タカくんには困ったものです」
「だって暑いんですもの」
「……そんなタカくんにろーほーです。……なんと、お姉ちゃんは動物とお話ができるようになりました」
 すごい? と眼が雄弁に語っているが無視。
「あー……あのさ、ちなねえ。動物と話できても、暑さは解消されないと思うが」
「……そうですね、そこの猫さんと話してみましょう」
 俺の鋭すぎる疑問を完全無視し、ちなねえは日陰でぐったりしてる猫に近づいた。
「……にゃ、にゃー」
「ちなねえが壊れた」
「……壊れてません。……タカくん、邪魔しないでください」
 俺を叱りつけ、ちなねえは再びにゃーにゃー言い出した。
「……にゃ、にゃー。にゃにゃ」
「……にゃふ~……」
 頑張って見れば、猫と会話しているように見えなくもない。普通に見たら、猫に話しかけてる変な人。
「……ふむふむ、分かりました」
「本当か、20過ぎてにゃーにゃー言ってるちなねえ?」
「…………」
 なんだか不満そうに見られた。
「……にゃーにゃー言うお姉ちゃんが言います。……『暑い』って言ってます」
 皮肉を交えながら、ちなねえは分かりきったことを言った。
「そんなの、このぐったりしてる姿見りゃ聞かなくても分かるだろ……」
 相変わらず暑そうに寝そべってる猫を指すと、ちなねえは小さく頬を膨らませた。
「……だって、そう言ってるんです。……私のせいじゃないです。……タカくんは、お姉ちゃんが頑張ったのに、褒めてくれないんですか?」
 にゃーにゃー言ったのは頑張ったことになるのでしょうか。
「この炎天下の下、よくぞにゃーにゃー言った! 感動した!」
「……褒められてる気がしません」
「まーまー、いいから帰ろうぜ。暑くて脳が溶けそうだ」
「……タカくんが褒めてくれなくて残念ですが、それには賛成です」
 ちなねえを伴い、帰路に着く。
「ところでさ、どうやって動物と話せるようになったんだ?」
「……ふふ、よくぞ聞いてくれました」
 ちなねえの口元が小さく歪む。それを見て、聞くんじゃなかったという後悔の念が俺の中になぜか渦巻いた。
「……えっと、……じゃっじゃ~ん。……これのおかげです」
 そう言ってちなねえが取り出したのは、
「……月刊、お姉ちゃん……」
「……今月号は、なんと動物とお話できるようになる方法が書いてあります」
 表紙に『動物とお話できるお姉ちゃんになり、弟ともっともっと仲良くなろう!』と、大きく書かれていた。
「……魔術書?」
「……趣味の本、です」
 どっかの魔術協会に封印されてもおかしくない本を懐に仕舞い、ちなねえは俺の手を握った。
「……さっ、帰りましょう。……ご飯食べて、その後もう一度猫さんとお話しましょう」
「もーいいよ、家でだらだらしたいよ……」
「……ダメです。タカくんが褒めてくれるまで、お姉ちゃんは猫さんとお話します」
 散歩は堪能したので、今日はもう外に出たくない。だが、褒めると以後延々と獣と会話する姉を見させられてしまう。……別の方向から攻めてみるか。
「ちなねえは可愛いなぁ、一日中ずっとすりすりしていたいくらい可愛いなぁ」
「っ!! ……そ、そういうことを褒めるべきではないです。……ね、猫さんと話せる事を褒めるべきです」
 作戦は失敗に終わった。しゃーない、家でゴロゴロは諦めよう。
「……だ、だけど、……私はお姉ちゃんなので、弟のしたいことはなるべくさせてあげたいです。……で、ですから、……すりすりしても、いいですよ?」
 作戦は変な方向で成功した。ほにゃほにゃだった。

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【白魔法も黒魔法も使えるちなねえ】

2010年04月01日
「……タカくん、タカくん」
 耳慣れた声が聞こえたので、全力で逃げる。
「……えい、ぱららいず~」
「ぐっ」
 ちなねえのやる気のない声を聞いた瞬間、全身が金縛りにあったかのように動かなくなる。慣性の法則により、顔面から床に落ちた。
「……タカくん、お姉ちゃんから逃げてはいけません」
 のんびりやって来たちなねえが、俺の顔の前にしゃがみ込んだ。
「あ、あの、ち、ちなねえ、か、体、ぴりぴり、すんだけ、ど」
 俺の顔の前に座ったため、ちなねえのパンツは全開です。頑張れ網膜、今こそ残された力を解き放ち、脳裏に全て刻み込め!
「……? タカくん、どこ見てるんです?」
「ぱんつ」
 思わず素直に答えると、ちなねえの顔が真っ赤に染まった。
「……た、タカくんのばかばか。……お姉ちゃんのパンツを見るなんて、反則です」
 俺をぽかぽか叩きながら、ちなねえは恥ずかしそうに片手でパンツを隠してしまった。無念。
「そ、そんなことより、しびれを、どうにかして」
「……お姉ちゃんのパンツは、そんなことなんですか……」
 ちなねえが凹んだ。
「い、いいから、今はしびれを……」
「……ちょっと不満ですが、弟の頼みは断れません。……えい、でぃすぱららいず~」
 ちなねえのやる気のない声で、体の痺れが取れた。軽く腕を回し、ちゃんと動くか確認する。
「はぁ……やっと戻った」
 軽く息をついてると、ちなねえが「治したよ? 褒める?」と期待に満ちた目で俺を見ていたので、無視してあげる。
「……タカくん、最近お姉ちゃんに冷たいです」
 ちなねえが拗ねた。
「夏場だから冷たくした方がいいと思って」
「……そんなことされても、嬉しくありません。……はっ。ということは、冬になれば暖かくされるのでしょうか? ……だ、抱っことか?」
「しないよ」
「…………」
 ちなねえは悲しそうに俺を見た。ちょっと犬っぽい。
「そんなことより、ちなねえ俺に何したんだ? 急に痺れたんだけど……」
「……ふふ、よくぞ聞いてくれました」
「あ、やっぱいい」
 嬉しそうにほくそ笑むちなねえに嫌な予感がしたので、慌てて首を横に振る。ちなねえの眉尻が悲しそうに下がった。
「……タカくん、お姉ちゃんのこと、嫌いになっちゃいましたか?」
「じ、冗談だよ、冗談。ごめんな、ちなねえ」
 ちょっと泣きそうになっていたので、慌ててちなねえの頭をなでる。
「……こ、こんなことで喜びませんよ。……お姉ちゃんですから」
 ものすごくニコニコしながら言われた。
「……あ、そうそう。……痺れなんですが、……なんと、お姉ちゃんの新技、黒魔法でタカくんをびりびりさせました」
「それは……えっと、また例の本から学んで?」
「……これですか?」
 そう言って、ちなねえは例の本──月刊お姉ちゃんを取り出した。いつものように奪う。
「『この夏は黒魔法で決まり! 弟を捕縛、魅了、抹殺、なんでもこい』……?」
「かっ、返してください」
 物騒な事が書かれてる本を取られた。抹殺って何だ、抹殺って。
「……まったく、タカくんはすぐ私の本を取ろうとしますね。……そんなにお姉ちゃんの物が欲しいんですか?」
 単に怖いもの見たさで取っただけなのだが、変に解釈された。でもなんか嬉しそうだし、黙っていよう。
「……ど、どうしてもと言うなら、その、……お姉ちゃん、ぱんつあげても……」
「いりません」
 きっぱり断ると、ちなねえは悲しそうに俺を見上げた。姉のパンツ貰って喜ぶって、俺は変態と思われているのだろうか。
 ……いや、まぁ欲しいけど。
「んで、ちなねえ。他にどんなことができるんだ? 胸が大きくなる魔法とかないのか?」
「……ないです」
 自分の薄い胸を見下ろし、ちなねえはとてもとても悲しそうに呟いた。
「……タカくんは、おっきなおっぱいの女性が好みですか?」
「嫌いじゃないが、俺はつるぺたの方が好きだな。子供みたいで可愛いよね」
 ちなねえはまるで花が咲いたように笑った。……が、その後少し難しい顔をした。
「……弟が変態に。……だけど、私の胸はぺたぺた。……むむ、これは難しい問題です」
 難しい顔をして何か悩んでるちなねえだった。

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【エロ本(姉系)をちなねえに見つかった男】

2010年03月31日
 学校帰り、近所の本屋に立ち寄る。
「いらっしゃ……おお、いつもの兄ちゃんじゃないか」
 店内に入ると、顔なじみの店長が人懐っこい笑みを浮かべながら声をかけてきた。
「今日も制服のままエロ本買いに来たのかい? いやぁ、いつものことながらその勇気に惚れ惚れするねぇ」
 人懐っこいのはいいのだが、あまりそういうことは大声で言わないで頂きたい。ほら、店内にいる女生徒らが俺を見てヒソヒソ囁きあってる。ええい、名誉挽回!
「エロ本など、一度たりとも買ったことない! それどころか、エロ本という単語はいま知ったばかりだ!」
「今日はいい本が入ったんだよ。触りだけ読んでみるかい?」
「うん、ぼく見るよ」
 女生徒たちの囁き声が大きくなったが、タダで見れるとあれば些細なことだ。店長に渡された本をパラパラとめくる。
「……おじさん、これって……」
「ああ、姉モノだな。いいぞー、姉モノは」
 今まで色々なジャンルに手を出してきたが、ちなねえの影がちらつくためか、姉系の本はまだ手をつけてない。
 普通のエロ本でも見つかったら怒られるのに、姉系のが見つかったらどうなるか……想像するだに恐ろしい。
「で、どうだ? ぐっとくるだろ、ぐっと」
「む、むぅ……」
 ……恐ろしいが、この本は過去最高にぐっとくる。詳しく言えない場所にある、とある部位がすごく屹立しそうだ。
「……これください」
「毎度っ!」
 風のように家に帰り、速攻で部屋に入り、ちなねえがいないことを確認し、息を吐く。
「……はぁ~。ちなねえ、気がつくとこの部屋にいるもんなぁ……」
「……そんなこと、ないですよ?」
 さっき確認した時にはいなかったはずのちなねえが、俺の隣で小首を傾げていた。
「ちっ、ちち、ちなねえ!?」
「……おかえりなさい、タカくん」
「あ、うん。ただいま、ちなねえ」
 挨拶はきちんとしなさいと昔からちなねえに躾けられているので、条件反射的に挨拶を返す。
「……いいお返事で、お姉ちゃんは大変嬉しいです」
「そ、そう? えへへへへ」
 どうやってこの部屋に侵入したのか聞こうと思ったけど、褒められていい気分なのでどうでもいいや。
「……タカくんが持ってる包みの中身を教えてくれると、お姉ちゃんはもっと嬉しくなります」
 ぴきり、と音を立てて部屋の空気が止まった。気がした。
「ほ、ほほ、本だよ! そ、その、アレだ、ただのマンガ! べべ別にちなねえが気にするような本じゃないよ!?」
「……また、えっちな本を買ってきたんですか?」
 顔は笑っているが、目が笑っていない。夏なのに寒い。
「ち、違うよ? こ、これは、その、ちなねえが表紙見ただけで失神しちゃうくらい怖いマンガなんだ! だ、だから残念だけど見せられないんだ!」
「……私は怖いの、平気です。……むしろ、タカくんの方が苦手ですよね? ……ホラー映画見て、一人で寝れなくなっちゃうくらい」
 人の弱点を嬉々として話す姉。2週間前という太古の話だから、今は平気。のハズ。
「……さ、もういいから貸してください」
「だ、ダメだ! こればっかりはいかにちなねえとは言え、渡すわけには!」
「……逆らうと、お仕置きレベルあっぷの予感」
「どうぞ、お納めください」
 うやうやしくちなねえに包みを渡す。
「……まったく、最初から渡せばいいものを」
 ぶちぶち言いながら、ちなねえは包みを破いた。
「っ! ……こ、これは……」
「ごっ、ごめん、ちなねえ! 気持ち悪いよね。ちなねえがいるのに、そんな本買ったりして……」
 なんだか無性に申し訳なくて、顔を伏せたままちなねえに謝罪する。
 怒られるのはともかく、嫌われたら辛いなぁと考えてたら、肩を軽く叩かれた。恐る恐る顔を上げる。
「……ぐっどです。……べりーべりーぐっどです」
 今までにないほど輝いた笑顔で、ちなねえは親指を立てていた。
「え、あの、……エロ本だよ?」
「……姉と弟の愛を伝える、素晴らしい本です。……お姉ちゃんは感動しました」
「……えーと」
「……それじゃ、私はこれで。……タカくん、頑張ってください」
「何を!?」
 意味深な笑みを残して、ちなねえは出て行った。
 それからと言うもの、気がつけば俺の部屋に見知らぬ姉系のエロ本が増えてます。
 一度ちなねえに訊ねたら、「……し、しし、知りません。知らぬ存ぜぬ、です。……エロ本という単語は、いま知りました」という答えが返って来た。確実に奴の仕業です。

拍手[7回]