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2024年11月24日
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【エロ本(姉系)をちなねえに見つかった男】

2010年03月31日
 学校帰り、近所の本屋に立ち寄る。
「いらっしゃ……おお、いつもの兄ちゃんじゃないか」
 店内に入ると、顔なじみの店長が人懐っこい笑みを浮かべながら声をかけてきた。
「今日も制服のままエロ本買いに来たのかい? いやぁ、いつものことながらその勇気に惚れ惚れするねぇ」
 人懐っこいのはいいのだが、あまりそういうことは大声で言わないで頂きたい。ほら、店内にいる女生徒らが俺を見てヒソヒソ囁きあってる。ええい、名誉挽回!
「エロ本など、一度たりとも買ったことない! それどころか、エロ本という単語はいま知ったばかりだ!」
「今日はいい本が入ったんだよ。触りだけ読んでみるかい?」
「うん、ぼく見るよ」
 女生徒たちの囁き声が大きくなったが、タダで見れるとあれば些細なことだ。店長に渡された本をパラパラとめくる。
「……おじさん、これって……」
「ああ、姉モノだな。いいぞー、姉モノは」
 今まで色々なジャンルに手を出してきたが、ちなねえの影がちらつくためか、姉系の本はまだ手をつけてない。
 普通のエロ本でも見つかったら怒られるのに、姉系のが見つかったらどうなるか……想像するだに恐ろしい。
「で、どうだ? ぐっとくるだろ、ぐっと」
「む、むぅ……」
 ……恐ろしいが、この本は過去最高にぐっとくる。詳しく言えない場所にある、とある部位がすごく屹立しそうだ。
「……これください」
「毎度っ!」
 風のように家に帰り、速攻で部屋に入り、ちなねえがいないことを確認し、息を吐く。
「……はぁ~。ちなねえ、気がつくとこの部屋にいるもんなぁ……」
「……そんなこと、ないですよ?」
 さっき確認した時にはいなかったはずのちなねえが、俺の隣で小首を傾げていた。
「ちっ、ちち、ちなねえ!?」
「……おかえりなさい、タカくん」
「あ、うん。ただいま、ちなねえ」
 挨拶はきちんとしなさいと昔からちなねえに躾けられているので、条件反射的に挨拶を返す。
「……いいお返事で、お姉ちゃんは大変嬉しいです」
「そ、そう? えへへへへ」
 どうやってこの部屋に侵入したのか聞こうと思ったけど、褒められていい気分なのでどうでもいいや。
「……タカくんが持ってる包みの中身を教えてくれると、お姉ちゃんはもっと嬉しくなります」
 ぴきり、と音を立てて部屋の空気が止まった。気がした。
「ほ、ほほ、本だよ! そ、その、アレだ、ただのマンガ! べべ別にちなねえが気にするような本じゃないよ!?」
「……また、えっちな本を買ってきたんですか?」
 顔は笑っているが、目が笑っていない。夏なのに寒い。
「ち、違うよ? こ、これは、その、ちなねえが表紙見ただけで失神しちゃうくらい怖いマンガなんだ! だ、だから残念だけど見せられないんだ!」
「……私は怖いの、平気です。……むしろ、タカくんの方が苦手ですよね? ……ホラー映画見て、一人で寝れなくなっちゃうくらい」
 人の弱点を嬉々として話す姉。2週間前という太古の話だから、今は平気。のハズ。
「……さ、もういいから貸してください」
「だ、ダメだ! こればっかりはいかにちなねえとは言え、渡すわけには!」
「……逆らうと、お仕置きレベルあっぷの予感」
「どうぞ、お納めください」
 うやうやしくちなねえに包みを渡す。
「……まったく、最初から渡せばいいものを」
 ぶちぶち言いながら、ちなねえは包みを破いた。
「っ! ……こ、これは……」
「ごっ、ごめん、ちなねえ! 気持ち悪いよね。ちなねえがいるのに、そんな本買ったりして……」
 なんだか無性に申し訳なくて、顔を伏せたままちなねえに謝罪する。
 怒られるのはともかく、嫌われたら辛いなぁと考えてたら、肩を軽く叩かれた。恐る恐る顔を上げる。
「……ぐっどです。……べりーべりーぐっどです」
 今までにないほど輝いた笑顔で、ちなねえは親指を立てていた。
「え、あの、……エロ本だよ?」
「……姉と弟の愛を伝える、素晴らしい本です。……お姉ちゃんは感動しました」
「……えーと」
「……それじゃ、私はこれで。……タカくん、頑張ってください」
「何を!?」
 意味深な笑みを残して、ちなねえは出て行った。
 それからと言うもの、気がつけば俺の部屋に見知らぬ姉系のエロ本が増えてます。
 一度ちなねえに訊ねたら、「……し、しし、知りません。知らぬ存ぜぬ、です。……エロ本という単語は、いま知りました」という答えが返って来た。確実に奴の仕業です。

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