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2025年05月01日
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【学校帰りにちなねえと会ったら】
2010年03月31日
最近仲良くなった先輩と一緒に帰ってると、偶然ちなねえの後姿を見かけた。
「ちなねえ!」
「あっ、タカく……」
振り向いた時は微笑んでいた顔が、隣の先輩を見た瞬間に不機嫌そうになった。
「……何か用ですか?」
「え、いや、用っつーかなんつーか、偶然見かけたから声かけただけで、ついでに一緒に帰ろうかなー……なんて」
「……家にいたら嫌でも会うんです。……わざわざ外でも一緒にいる必要なんて、ないです」
俺を一刀両断して、ちなねえは先輩に微笑みかけた。
「……ごめんなさいね。……不肖の弟が迷惑ばっかりかけて」
先輩は無言で首を横に振った。迷惑ではないらしい。
「……そう? ……それじゃ、私は先に帰ります」
先輩は俺にだけ聞こえるくらい小さな声で「全部私にお任せです」と言った。言った瞬間、ちなねえのこめかみが引きつった。
「ち、ちなねえ、……もしかして聞こえた?」
「……な、何を言ってるのかさっぱりです。……全く、変なことばかり言う子です」
それだけ言って、ちなねえは足早に去って行った。
「…………」
「え、任せ代として、喫茶店に連れてけ? ……先輩、ひょっとして、俺のおごりか?」
嬉しそうにコクコク頷く先輩に、軽くため息をついて喫茶店に向かった。
喫茶店で散財した後、先輩と別れ帰宅する。
「はー……やれやれ、先輩食いすぎだよ……」
独りごちながら自室に入る。
「……お帰りなさい、タカくん」
ちなねえが俺の部屋にいた。
「あ、ただいま。ちなねえ」
挨拶を返すと、ちなねえがすすすーっと寄って来た。
「……さっきはごめんなさい。……お姉ちゃん、タカくんを立派な人間にするため、外では厳しくするようにしてるんです」
俺の手を握りながら、謝罪するちなねえ。
「いや、別にいいよ。毎度のことだし」
ちなねえは外で会う度、いつもこうして謝ってくる。俺を想っての行為に喜びこそすれ、どうして怒らなければいけないのか。
「……タカくんが優しい子に育ってくれて、お姉ちゃんはとても嬉しいです」
「よ、よせよちなねえ、優しいとか勘弁しろよ……」
「……そんな優しいタカくんは、当然、隣にいた子のことを教えてくれますよね……?」
「え、いや、別に先輩はちなねえに紹介するような子じゃ」
握られた手に、この小さな体のどこに隠してたんだと思えるほどの力が込められる。
「……教えて、くれますよね?」
「おっ、教える! 教えるからちなねえ、手離して!」
ちなねえの手が離れる。すげー痛かった。
「……最初から言えればいいんです。……それで?」
「いてて……それでもなにも、ただの友達だよ」
「……友達、ですか?」
「それ以外何があるってんだよ」
「……こ、恋人……とか」
「そうだとよかったんだけど、残念ながらただの友達だ」
ちなねえはなんだか心底安心したかのように、深く息を吐いた。
「そうですか。……友達ですか」
「ちなねえがいるのに、恋人なんて作るわけないだろ」
「っ!! そ、それはどういうことですか!? お、お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだから、タカくんの恋人じゃないですよ!?」
「当たり前だろうが。そうじゃなくて、ちなねえの面倒見るのに忙しくて、恋人なんて作ってる暇ないって事だよ」
「あ、ああ……そういうことですか。……あ、タカくんが私の面倒を見てるのではなく、私がタカくんの面倒を見ているんですよ?」
「俺がちなねえに面倒見てもらったことなんて、一度たりともない! ところでちなねえ、今日の晩御飯なに?」
「……言ってるそばから面倒見られまくりです」
呆れたようにため息をつくちなねえ。
「……まったく、困ったものです」
なんて言いながら、ちなねえは嬉しそうに微笑むのだった。
「ちなねえ!」
「あっ、タカく……」
振り向いた時は微笑んでいた顔が、隣の先輩を見た瞬間に不機嫌そうになった。
「……何か用ですか?」
「え、いや、用っつーかなんつーか、偶然見かけたから声かけただけで、ついでに一緒に帰ろうかなー……なんて」
「……家にいたら嫌でも会うんです。……わざわざ外でも一緒にいる必要なんて、ないです」
俺を一刀両断して、ちなねえは先輩に微笑みかけた。
「……ごめんなさいね。……不肖の弟が迷惑ばっかりかけて」
先輩は無言で首を横に振った。迷惑ではないらしい。
「……そう? ……それじゃ、私は先に帰ります」
先輩は俺にだけ聞こえるくらい小さな声で「全部私にお任せです」と言った。言った瞬間、ちなねえのこめかみが引きつった。
「ち、ちなねえ、……もしかして聞こえた?」
「……な、何を言ってるのかさっぱりです。……全く、変なことばかり言う子です」
それだけ言って、ちなねえは足早に去って行った。
「…………」
「え、任せ代として、喫茶店に連れてけ? ……先輩、ひょっとして、俺のおごりか?」
嬉しそうにコクコク頷く先輩に、軽くため息をついて喫茶店に向かった。
喫茶店で散財した後、先輩と別れ帰宅する。
「はー……やれやれ、先輩食いすぎだよ……」
独りごちながら自室に入る。
「……お帰りなさい、タカくん」
ちなねえが俺の部屋にいた。
「あ、ただいま。ちなねえ」
挨拶を返すと、ちなねえがすすすーっと寄って来た。
「……さっきはごめんなさい。……お姉ちゃん、タカくんを立派な人間にするため、外では厳しくするようにしてるんです」
俺の手を握りながら、謝罪するちなねえ。
「いや、別にいいよ。毎度のことだし」
ちなねえは外で会う度、いつもこうして謝ってくる。俺を想っての行為に喜びこそすれ、どうして怒らなければいけないのか。
「……タカくんが優しい子に育ってくれて、お姉ちゃんはとても嬉しいです」
「よ、よせよちなねえ、優しいとか勘弁しろよ……」
「……そんな優しいタカくんは、当然、隣にいた子のことを教えてくれますよね……?」
「え、いや、別に先輩はちなねえに紹介するような子じゃ」
握られた手に、この小さな体のどこに隠してたんだと思えるほどの力が込められる。
「……教えて、くれますよね?」
「おっ、教える! 教えるからちなねえ、手離して!」
ちなねえの手が離れる。すげー痛かった。
「……最初から言えればいいんです。……それで?」
「いてて……それでもなにも、ただの友達だよ」
「……友達、ですか?」
「それ以外何があるってんだよ」
「……こ、恋人……とか」
「そうだとよかったんだけど、残念ながらただの友達だ」
ちなねえはなんだか心底安心したかのように、深く息を吐いた。
「そうですか。……友達ですか」
「ちなねえがいるのに、恋人なんて作るわけないだろ」
「っ!! そ、それはどういうことですか!? お、お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだから、タカくんの恋人じゃないですよ!?」
「当たり前だろうが。そうじゃなくて、ちなねえの面倒見るのに忙しくて、恋人なんて作ってる暇ないって事だよ」
「あ、ああ……そういうことですか。……あ、タカくんが私の面倒を見てるのではなく、私がタカくんの面倒を見ているんですよ?」
「俺がちなねえに面倒見てもらったことなんて、一度たりともない! ところでちなねえ、今日の晩御飯なに?」
「……言ってるそばから面倒見られまくりです」
呆れたようにため息をつくちなねえ。
「……まったく、困ったものです」
なんて言いながら、ちなねえは嬉しそうに微笑むのだった。
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【月刊お姉ちゃんの占いコーナーを一緒に見ようとせがむちなねえ】
2010年03月31日
外から帰ってきて、汗かいた。着替えよう。
「上着分離! ズボン分離! そして……パンツマン参上!」
「…………」
一人でかっこいいポーズを決めてたら、いつの間にか部屋に入ってきていたちなねえに無言で見られてた。
「…………」
固まったまま、ちなねえと見つめあう。
「……タカくんではなく、パンツマンでしたか。……失礼しました」
「いやあああ! 見ないで、俺を見ないで!」
あまりの羞恥にしゃがみ込み、頭を抱える。
「……誰にでも一つや二つ、人に言えない趣味があるものです」
「違う、趣味じゃないです! ちょっと魔が差しただけなんです!」
「……いいんです。……どんな特異な趣味を持ってたとしても、お姉ちゃんはタカくんを見捨てたりしませんから」
いっそ見捨ててくれた方がどれだけ楽か。とにかく、急いで着替える。
「はぁぁぁぁ……。んで、ちなねえ。なんか用か? 俺は今から傷心の旅に出かけるので手短に」
「……今日買ってきた本の占いを、一緒に見ようと思いまして」
「あ~……俺、そういうのあんま信じてないんだよな……」
「……お姉ちゃん、なんだかタカくんのステキな趣味をお友達に教えたくなりました」
「是非見ましょう、いま見ましょう、すぐ見ましょう! ちなねえと一緒に本を見れるなんて幸せだなぁ!」
ちなねえの脅迫にあえなく屈する。
「し、幸せだなんて……タカくんの幸せは簡単ですね」
やけに嬉しそうに俺の背中をばんばん叩くちなねえ。遠慮なしなので結構痛い。
「……さ、さぁ、早く見ましょう」
ちなねえは持ってきた包みを破り、中の雑誌を机の上に広げた。目に痛いほど弟という文字が並ぶ。
「……また月刊お姉ちゃん、スか」
「……家宝に成り得るほど、良い本です。……ええと、占いコーナーは、と……」
ぱらぱらとめくり、目当てのページで止まる。
本来なら『今月の恋愛運』とあるべき場所に、『今月の弟運』とあった。なんだ、弟運って。
「……今月の弟運は最高。……弟と急接近の予感。……ラッキープレイスは、近所の公園」
ちなねえがにやにやしだした。
「……タカくん。お姉ちゃんは、なんだか公園に行きたくなりました。……ただ散歩したいだけで、他の意図は全くありません」
「ちなねえ、嘘下手すぎ」
「…………」
ちなねえがしょんぼりした。なんだか可哀想になったので、つきあってあげることにする。
「というわけで近所の公園ですが、暑いせいか人気があまりないね、ちなねえ」
「……弟と急接近。……どきどき、どきどき」
俺の話を聞かず、ちなねえは口でドキドキ言っていた。
「変な人だ」
「むっ。……お姉ちゃんは変じゃないです。……変の称号は、タカくんにこそ相応しいです」
「はいはい。しかし、あっちーなぁ」
「むむっ。……お姉ちゃんを適当にあしらうとは、許しがたいです。……罰です」
そう言うと、ちなねえは俺の腕に自分の腕を絡ませた。
「ちっ、ちなねえ!?」
「……この暑い中、私とくっつくことで体温を上昇させるという罰です。……熱中症にならないよう、注意が必要です」
もう熱中症になってるんではないだろうかと心配するほど赤い顔のまま呟くちなねえ。
「はぁ……やれやれ」
「……罰ですから、もっとくっついて体温を上昇させます」
そう言って、ちなねえはさらにくっついてきた。控えめな胸の柔らかな感触が腕に伝わる。
「ちっ、ちなねえ! あ、当たってる、当たってるから!」
「……あ、当ててるんです」
「んなこと言ってると打ち切りされるぞ!」
「……? タカくんは今日もよく分からないこと言いますね。……あ」
「ふぎゃっ!?」
いきなりちなねえに押し飛ばされ、顔面から木にぶつかる。
「いつつ……いきなり何すんだよ!」
「あれ、別府くんじゃない。何やってるの?」
ちなねえに文句を言ってると、クラスメイトの梓に声をかけられた。
「あー……木陰で休んでる」
「暑いもんね。えっと……こちらは?」
「……お初にお目にかかります。私、これの姉です」
俺を突き飛ばしたにも関わらず、涼しい顔をしてるちなねえが梓に自己紹介した。
「あ、は、初めまして! ボク、梓って言います! よろしくです!」
「なに緊張してんだよ」
「だ、だって……綺麗な人だし」
俺にしか分からないほど小さく、ちなねえがにやけた。
「ちっこいけどな」
「……弟の度量ほど小さくないです」
「し、失敬な!」
「あはは……それじゃボク行くね。また学校でね、別府くん。お姉さんもサヨナラ」
バイバイと手を振って、梓は公園から出て行った。見えなくなった途端、ちなねえがすすすーっと俺のそばに寄ってきた。
「……タカくん。顔、大丈夫ですか?」
「どっかのちっこいのにいきなり押し飛ばされ木にぶつかったため、大変痛い」
「……ごめんね、タカくん。……悪いお姉ちゃんでした」
そう言ってちなねえは俺のそばにしゃがみ込み、俺の頬を両手で優しく撫でた。
「……痛いの、取れました?」
「あ、うん。……じゃなくて! なんでいきなり突き飛ばすんだよ!」
「……だ、だって、……そ、そうです。……タカくんがお姉ちゃんと一緒にいて、彼女さんと勘違いされないようにしただけです」
少しだけ目を反らし、ちなねえは小さな小さな声で「……腕組んでるの見られて恥ずかしいから、突き飛ばしたんじゃないです」なんて言った。
「……そースか。お気遣いに感謝します」
「そ、そうです。……タカくんは、もっとお姉ちゃんに感謝すべきです。た、例えば、……なでなでして労わる、……とか」
「今年で何歳ですか、なでなでされると喜ぶ人」
ちなねえが泣きそうになった。可哀想なので撫でた。
「……やっぱりあの本の占いは当たります。……的中率ばつぐん、です」
なんて言って、ちなねえは微笑んだ。……ちょっとドキドキした。
「……そ、そうだタカくん。弟と一緒に寝ると、世界平和になると占いに」
「却下」
ちなねえは悲しそうにうつむくのだった。
「上着分離! ズボン分離! そして……パンツマン参上!」
「…………」
一人でかっこいいポーズを決めてたら、いつの間にか部屋に入ってきていたちなねえに無言で見られてた。
「…………」
固まったまま、ちなねえと見つめあう。
「……タカくんではなく、パンツマンでしたか。……失礼しました」
「いやあああ! 見ないで、俺を見ないで!」
あまりの羞恥にしゃがみ込み、頭を抱える。
「……誰にでも一つや二つ、人に言えない趣味があるものです」
「違う、趣味じゃないです! ちょっと魔が差しただけなんです!」
「……いいんです。……どんな特異な趣味を持ってたとしても、お姉ちゃんはタカくんを見捨てたりしませんから」
いっそ見捨ててくれた方がどれだけ楽か。とにかく、急いで着替える。
「はぁぁぁぁ……。んで、ちなねえ。なんか用か? 俺は今から傷心の旅に出かけるので手短に」
「……今日買ってきた本の占いを、一緒に見ようと思いまして」
「あ~……俺、そういうのあんま信じてないんだよな……」
「……お姉ちゃん、なんだかタカくんのステキな趣味をお友達に教えたくなりました」
「是非見ましょう、いま見ましょう、すぐ見ましょう! ちなねえと一緒に本を見れるなんて幸せだなぁ!」
ちなねえの脅迫にあえなく屈する。
「し、幸せだなんて……タカくんの幸せは簡単ですね」
やけに嬉しそうに俺の背中をばんばん叩くちなねえ。遠慮なしなので結構痛い。
「……さ、さぁ、早く見ましょう」
ちなねえは持ってきた包みを破り、中の雑誌を机の上に広げた。目に痛いほど弟という文字が並ぶ。
「……また月刊お姉ちゃん、スか」
「……家宝に成り得るほど、良い本です。……ええと、占いコーナーは、と……」
ぱらぱらとめくり、目当てのページで止まる。
本来なら『今月の恋愛運』とあるべき場所に、『今月の弟運』とあった。なんだ、弟運って。
「……今月の弟運は最高。……弟と急接近の予感。……ラッキープレイスは、近所の公園」
ちなねえがにやにやしだした。
「……タカくん。お姉ちゃんは、なんだか公園に行きたくなりました。……ただ散歩したいだけで、他の意図は全くありません」
「ちなねえ、嘘下手すぎ」
「…………」
ちなねえがしょんぼりした。なんだか可哀想になったので、つきあってあげることにする。
「というわけで近所の公園ですが、暑いせいか人気があまりないね、ちなねえ」
「……弟と急接近。……どきどき、どきどき」
俺の話を聞かず、ちなねえは口でドキドキ言っていた。
「変な人だ」
「むっ。……お姉ちゃんは変じゃないです。……変の称号は、タカくんにこそ相応しいです」
「はいはい。しかし、あっちーなぁ」
「むむっ。……お姉ちゃんを適当にあしらうとは、許しがたいです。……罰です」
そう言うと、ちなねえは俺の腕に自分の腕を絡ませた。
「ちっ、ちなねえ!?」
「……この暑い中、私とくっつくことで体温を上昇させるという罰です。……熱中症にならないよう、注意が必要です」
もう熱中症になってるんではないだろうかと心配するほど赤い顔のまま呟くちなねえ。
「はぁ……やれやれ」
「……罰ですから、もっとくっついて体温を上昇させます」
そう言って、ちなねえはさらにくっついてきた。控えめな胸の柔らかな感触が腕に伝わる。
「ちっ、ちなねえ! あ、当たってる、当たってるから!」
「……あ、当ててるんです」
「んなこと言ってると打ち切りされるぞ!」
「……? タカくんは今日もよく分からないこと言いますね。……あ」
「ふぎゃっ!?」
いきなりちなねえに押し飛ばされ、顔面から木にぶつかる。
「いつつ……いきなり何すんだよ!」
「あれ、別府くんじゃない。何やってるの?」
ちなねえに文句を言ってると、クラスメイトの梓に声をかけられた。
「あー……木陰で休んでる」
「暑いもんね。えっと……こちらは?」
「……お初にお目にかかります。私、これの姉です」
俺を突き飛ばしたにも関わらず、涼しい顔をしてるちなねえが梓に自己紹介した。
「あ、は、初めまして! ボク、梓って言います! よろしくです!」
「なに緊張してんだよ」
「だ、だって……綺麗な人だし」
俺にしか分からないほど小さく、ちなねえがにやけた。
「ちっこいけどな」
「……弟の度量ほど小さくないです」
「し、失敬な!」
「あはは……それじゃボク行くね。また学校でね、別府くん。お姉さんもサヨナラ」
バイバイと手を振って、梓は公園から出て行った。見えなくなった途端、ちなねえがすすすーっと俺のそばに寄ってきた。
「……タカくん。顔、大丈夫ですか?」
「どっかのちっこいのにいきなり押し飛ばされ木にぶつかったため、大変痛い」
「……ごめんね、タカくん。……悪いお姉ちゃんでした」
そう言ってちなねえは俺のそばにしゃがみ込み、俺の頬を両手で優しく撫でた。
「……痛いの、取れました?」
「あ、うん。……じゃなくて! なんでいきなり突き飛ばすんだよ!」
「……だ、だって、……そ、そうです。……タカくんがお姉ちゃんと一緒にいて、彼女さんと勘違いされないようにしただけです」
少しだけ目を反らし、ちなねえは小さな小さな声で「……腕組んでるの見られて恥ずかしいから、突き飛ばしたんじゃないです」なんて言った。
「……そースか。お気遣いに感謝します」
「そ、そうです。……タカくんは、もっとお姉ちゃんに感謝すべきです。た、例えば、……なでなでして労わる、……とか」
「今年で何歳ですか、なでなでされると喜ぶ人」
ちなねえが泣きそうになった。可哀想なので撫でた。
「……やっぱりあの本の占いは当たります。……的中率ばつぐん、です」
なんて言って、ちなねえは微笑んだ。……ちょっとドキドキした。
「……そ、そうだタカくん。弟と一緒に寝ると、世界平和になると占いに」
「却下」
ちなねえは悲しそうにうつむくのだった。
【くまちなみん】
2010年03月26日
ちなみにお呼ばれされたので家まで行ったら、ちなみの奴は熊になった、と言い張るんですの。
「すっぽこすっぽこ」
違う、それはタヌキ。
「……はっ、これはタヌキです。……ぬぬ、タカシめ、私を謀るとはいい度胸です」
いや、何もしてない。勝手に間違えただけ。
「……くまって、なんて鳴くんですか?」
知らん。先に調べておけ。
「……まぁとにかく、くまなんです。……ええっと、がおーがおー」
「困ったらがおがお言うのはどうなんですか?」
「が、がお……」
「おまえはどろり濃厚が好きな可哀想な娘さんか」
「……? ……よく分かりませんが、くまな私に怯えてください。ほら、早く」
「ひゃー」
「……大根なのはともかく、声をあげるだけでぼーっと無表情に突っ立ってるのは、どうなんですか?」
「や、だって怖くないし」
「…………」(涙じわーっ)
「まさかこんなところで熊に遭遇するとは! これは死ぬやも! ひぃ助けて神様!」
「……ふふ、それでいいのです。タカシはやっぱり無様に這いずり回るのがお似合いです」
「…………」
また騙された。畜生。
「……恐怖のあまり、錯乱してますね。……こ、これじゃ、訳が分からなくなって私に抱きついても仕方ないですね、うん」
「や、大丈夫。意識はしっかりしてるし、まったく怖くない」
「……く、くまです。がおーがおー、がおーがおー」
ちなみはがおがお言いながら、少しだけ焦ったように両手を大きく上げた。
「残念ながら、怖くない」
その証拠に肉球をぷにぷにしたり、ちなみのほっぺをぷにぷにする。
「……むー」
ちなみはほっぺをつつかれながら、むーと唸った。
「……怖がってください。怖がってくれないと、後の計画に支障をきたします」
「後の計画って……ふべっ」
なんのことやらと思ってたら、突然ドアが開いて俺の後頭部を強かに打ちつけるので痛い。
「……あ、おねーちゃん」
「……ちなみだけタカくんを可愛がるなんて、ずるいです。……お姉ちゃんも、タカくんで色々したいです」
そう言って、突然現れたちなみの姉、略してちなねえが俺を抱っこした。
「ちなねえ、俺“と”色々するでなく、俺“で”色々するですか?」
「……タカくん、タカくん」
ちなねえは俺の話なんてちっとも聞かずにすりすりほお擦りするので顔がにやけてもう、もう!
「…………」
だけど、目の前ですげー不機嫌そうに俺を睨む熊がいるのであまりにやにやできず顔面つりそう。
「……別に、いいですけど。……私を無視しておねーちゃんとイチャイチャしてもいいですけど。……別に、いいですけど」
別にいいなら睨まないで欲しい。居心地が悪くて仕方ない。
「……タカくん、拗ねてる妹なんてほっといて、お姉ちゃんと遊びましょう。……何か、召還しましょうか?」
ちなねえは常人には計り知れない場所にいるので召還とかもお手の物だが、もうちょっと地に足の着いた特技を身につけて欲しい。
「ちなみのパンツ」
熊が噛み付いてきて痛い痛い。
「……タカシなんか、おねーちゃんの召還したお化けに食べられちゃえばいいんだ」
噛み付くだけ噛み付いて、ちなみはふんふん言いながら部屋の隅っこに座った。本来なら寂しそうに見えるはずだが、クマなのでぬいぐるみみたい。
「……わぁ、ちなみってばぬいぐるみみたい。……かーわいー」
ちなねえも俺と同じ感想を持ったようで、嬉しそうにちなみに抱きついてる。
「わ、わわ、おねーちゃんが姉妹として超えてはならない一線を」
違うと思うが、ちなねえがちなみを抱っこしているスキに逃げようと思いついたので逃げよう。
「……逃げちゃダメー」
ちなねえに捕まった。後ろに目でも付いてない限りバレないはずだったのだが……。
「ちなねえって妖怪の一種?」
「…………」
思い切りほっぺを引っ張られた。
「……お姉ちゃんは、ふつーの人間さんです」
非常に怪しい所だが、口答えすると俺のほっぺが大変危険なので黙っておく。
「……やれやれ、おねーちゃんにも困ったものです」
俺の隣でちなみが首をすくめていた。
「その妹も困ったものだと思うが」
「…………」
ちなねえに引っ張られた所と反対を引っ張られる。
「……あ、楽しそう。……お姉ちゃんもするー」
痛いばかりで、俺はちっとも楽しくなかった。
「お二方、姉妹が楽しいだけでなく、三人で楽しいことをしませんか?」
「……楽しいことって、なに?」
「姉妹丼」
ほっぺ千切れるかと思った。
「すっぽこすっぽこ」
違う、それはタヌキ。
「……はっ、これはタヌキです。……ぬぬ、タカシめ、私を謀るとはいい度胸です」
いや、何もしてない。勝手に間違えただけ。
「……くまって、なんて鳴くんですか?」
知らん。先に調べておけ。
「……まぁとにかく、くまなんです。……ええっと、がおーがおー」
「困ったらがおがお言うのはどうなんですか?」
「が、がお……」
「おまえはどろり濃厚が好きな可哀想な娘さんか」
「……? ……よく分かりませんが、くまな私に怯えてください。ほら、早く」
「ひゃー」
「……大根なのはともかく、声をあげるだけでぼーっと無表情に突っ立ってるのは、どうなんですか?」
「や、だって怖くないし」
「…………」(涙じわーっ)
「まさかこんなところで熊に遭遇するとは! これは死ぬやも! ひぃ助けて神様!」
「……ふふ、それでいいのです。タカシはやっぱり無様に這いずり回るのがお似合いです」
「…………」
また騙された。畜生。
「……恐怖のあまり、錯乱してますね。……こ、これじゃ、訳が分からなくなって私に抱きついても仕方ないですね、うん」
「や、大丈夫。意識はしっかりしてるし、まったく怖くない」
「……く、くまです。がおーがおー、がおーがおー」
ちなみはがおがお言いながら、少しだけ焦ったように両手を大きく上げた。
「残念ながら、怖くない」
その証拠に肉球をぷにぷにしたり、ちなみのほっぺをぷにぷにする。
「……むー」
ちなみはほっぺをつつかれながら、むーと唸った。
「……怖がってください。怖がってくれないと、後の計画に支障をきたします」
「後の計画って……ふべっ」
なんのことやらと思ってたら、突然ドアが開いて俺の後頭部を強かに打ちつけるので痛い。
「……あ、おねーちゃん」
「……ちなみだけタカくんを可愛がるなんて、ずるいです。……お姉ちゃんも、タカくんで色々したいです」
そう言って、突然現れたちなみの姉、略してちなねえが俺を抱っこした。
「ちなねえ、俺“と”色々するでなく、俺“で”色々するですか?」
「……タカくん、タカくん」
ちなねえは俺の話なんてちっとも聞かずにすりすりほお擦りするので顔がにやけてもう、もう!
「…………」
だけど、目の前ですげー不機嫌そうに俺を睨む熊がいるのであまりにやにやできず顔面つりそう。
「……別に、いいですけど。……私を無視しておねーちゃんとイチャイチャしてもいいですけど。……別に、いいですけど」
別にいいなら睨まないで欲しい。居心地が悪くて仕方ない。
「……タカくん、拗ねてる妹なんてほっといて、お姉ちゃんと遊びましょう。……何か、召還しましょうか?」
ちなねえは常人には計り知れない場所にいるので召還とかもお手の物だが、もうちょっと地に足の着いた特技を身につけて欲しい。
「ちなみのパンツ」
熊が噛み付いてきて痛い痛い。
「……タカシなんか、おねーちゃんの召還したお化けに食べられちゃえばいいんだ」
噛み付くだけ噛み付いて、ちなみはふんふん言いながら部屋の隅っこに座った。本来なら寂しそうに見えるはずだが、クマなのでぬいぐるみみたい。
「……わぁ、ちなみってばぬいぐるみみたい。……かーわいー」
ちなねえも俺と同じ感想を持ったようで、嬉しそうにちなみに抱きついてる。
「わ、わわ、おねーちゃんが姉妹として超えてはならない一線を」
違うと思うが、ちなねえがちなみを抱っこしているスキに逃げようと思いついたので逃げよう。
「……逃げちゃダメー」
ちなねえに捕まった。後ろに目でも付いてない限りバレないはずだったのだが……。
「ちなねえって妖怪の一種?」
「…………」
思い切りほっぺを引っ張られた。
「……お姉ちゃんは、ふつーの人間さんです」
非常に怪しい所だが、口答えすると俺のほっぺが大変危険なので黙っておく。
「……やれやれ、おねーちゃんにも困ったものです」
俺の隣でちなみが首をすくめていた。
「その妹も困ったものだと思うが」
「…………」
ちなねえに引っ張られた所と反対を引っ張られる。
「……あ、楽しそう。……お姉ちゃんもするー」
痛いばかりで、俺はちっとも楽しくなかった。
「お二方、姉妹が楽しいだけでなく、三人で楽しいことをしませんか?」
「……楽しいことって、なに?」
「姉妹丼」
ほっぺ千切れるかと思った。
【魔女ちなみんと魔女裁判官なタカシ】
2010年03月26日
偉い人になればえろいことも出来ると聞いたので頑張ったら魔女裁判官になったので凄い!
今日は、そんな凄い俺の初仕事です。さぁ、うまいことやって魔女にえ、え、えろいことを!
「……魔女ちなみんです。……ぽっぷできゅーとな魔法で、あなたもめろめろ」
衛兵に連れて来られた魔女は、ちょっと頭悪そうな娘さんでした。……いや、可愛いんだけどさ。乳が、こう、ぺったぺたというか。
「……むっ、頭悪そうとか、ひんぬーとか思われてます。……許しがたいです。……呪ってやります」
機嫌悪そうに魔女が何かむにむに呟き持っていた杖を掲げた瞬間、俺の視界一杯に薔薇な光景が渦巻いて!?
「いやあああ! そこは出す場所で挿れる場所じゃないですよ!?」
あまりに凄惨な光景に床を転がりまわる。
「……ふふ、魔女の超魔術がひとつ、ホモ地獄です。……効いた?」
「効いた! クリティカル! トラウマになりました! だから許してごめんなさい!」
「……私の下僕になると誓うのなら、許してあげます」
「なる! なりまくり! だから……」
凄い勢いで下僕を誓うと、視界を覆っていた筋肉やら髭やらが消えた。本気で死ぬかと思った。
「……はぁはぁ。まったく、裁判長を呪ってはダメです!」
「……てへり」
まったく表情を変えず、口だけ媚びる魔女。ええい不愉快な、ほっぺつまんでやれ。
「……むにー」
やはり表情を変えないまま、むにーと言う魔女。変な奴。
「……ご主人様をいじめてはダメです」
「誰がご主人様だ! ここ──裁判所では、俺が神! 一番偉い! だからおまえにえ、え、えろいことしてもヘッチャラ!」
「……えい、薔薇地獄」
「いやあああ! やめて来ないで俺はノーマルなのです!」
先刻の恐怖が再び俺を襲う。片手で数えられる程度のトラウマが増えた所で薔薇は消えた。
「……誰がご主人様?」
「貴方様です」
ちっこい魔女に土下座する。ええい、偉い人になればえろいことができるんじゃなかったのか!
「……じゃ、とりあえず、他の人を下がらせて」
「う……わーったよ。みんな、悪いけど下がってくれ」
裁判所に俺の声が響き渡ると、皆しぶしぶ部屋から出て行った。
「これでいいか、ご主人サマ?」
「……ご苦労様です。……やはりロリコン相手だと、私の魅力が通用しまくりです」
「ロリコンじゃねえっ! 俺はこう、ボンっ、キュっ、ボンっな娘さんが好みだっ!」
「……ほう、胸はボンっと破裂しぺたぺたで、腰はキュっと締まったように見えて締まってなくて、お尻は胸と同上、と。……むむ、私のような体型が好みとは、……こ、困ります」
「ずん胴魔女の すごい 解釈」
「……下僕のくせに、馬鹿にしてます。……こうなっては、もう一度ホモ地獄を」
「ぼく、身体に起伏のない魔女様大好きさ! ラブちなみん!」
もう一度アレを喰らったら生ける屍になること請け合い。プライドも何もかも投げ捨て魔女に抱きつく。
「こ、こら、誰も抱きつくことなんて許可してません! は、離れなさい!」
魔女は持っていた杖で俺をぽこぽこ叩いた。痛いので離れる。
「うー……」
頬を赤らめ、何か言いたげな瞳で俺をじっと睨む魔女。
「俺に惚れると火傷するゼ?」
「惚れません」
即答は辛い。“今時その台詞はないだろう”というツッコミがないのもまた。
「ませんが……困りました。下僕がご主人様にめろめろになってしまうとは……これも、魅力が溢れすぎてる私の罪なのですね」
「うっさいずん胴」
「…………」
「お疲れ様で……うわぁっ!?」
裁判所を出ると、衛兵の驚いた声に迎えられた。
「下僕……げふんげふん。裁判長は自信の視野の狭さに気づき、私と一緒に勉強することになりました。……あと、私は魔女じゃないですよ?」
「は、はぁ……しかし、どうして裁判長を引きずってるんですか?」
「……だって、重いんだもん」
色々色々言いたかったが、生ける屍なので何か言う気力さえない。
「え、ええと、お気をつけて」
「……ん」
手を振る衛兵に見送られ、俺はずるずると魔女に引きずられていくのだった。
今日は、そんな凄い俺の初仕事です。さぁ、うまいことやって魔女にえ、え、えろいことを!
「……魔女ちなみんです。……ぽっぷできゅーとな魔法で、あなたもめろめろ」
衛兵に連れて来られた魔女は、ちょっと頭悪そうな娘さんでした。……いや、可愛いんだけどさ。乳が、こう、ぺったぺたというか。
「……むっ、頭悪そうとか、ひんぬーとか思われてます。……許しがたいです。……呪ってやります」
機嫌悪そうに魔女が何かむにむに呟き持っていた杖を掲げた瞬間、俺の視界一杯に薔薇な光景が渦巻いて!?
「いやあああ! そこは出す場所で挿れる場所じゃないですよ!?」
あまりに凄惨な光景に床を転がりまわる。
「……ふふ、魔女の超魔術がひとつ、ホモ地獄です。……効いた?」
「効いた! クリティカル! トラウマになりました! だから許してごめんなさい!」
「……私の下僕になると誓うのなら、許してあげます」
「なる! なりまくり! だから……」
凄い勢いで下僕を誓うと、視界を覆っていた筋肉やら髭やらが消えた。本気で死ぬかと思った。
「……はぁはぁ。まったく、裁判長を呪ってはダメです!」
「……てへり」
まったく表情を変えず、口だけ媚びる魔女。ええい不愉快な、ほっぺつまんでやれ。
「……むにー」
やはり表情を変えないまま、むにーと言う魔女。変な奴。
「……ご主人様をいじめてはダメです」
「誰がご主人様だ! ここ──裁判所では、俺が神! 一番偉い! だからおまえにえ、え、えろいことしてもヘッチャラ!」
「……えい、薔薇地獄」
「いやあああ! やめて来ないで俺はノーマルなのです!」
先刻の恐怖が再び俺を襲う。片手で数えられる程度のトラウマが増えた所で薔薇は消えた。
「……誰がご主人様?」
「貴方様です」
ちっこい魔女に土下座する。ええい、偉い人になればえろいことができるんじゃなかったのか!
「……じゃ、とりあえず、他の人を下がらせて」
「う……わーったよ。みんな、悪いけど下がってくれ」
裁判所に俺の声が響き渡ると、皆しぶしぶ部屋から出て行った。
「これでいいか、ご主人サマ?」
「……ご苦労様です。……やはりロリコン相手だと、私の魅力が通用しまくりです」
「ロリコンじゃねえっ! 俺はこう、ボンっ、キュっ、ボンっな娘さんが好みだっ!」
「……ほう、胸はボンっと破裂しぺたぺたで、腰はキュっと締まったように見えて締まってなくて、お尻は胸と同上、と。……むむ、私のような体型が好みとは、……こ、困ります」
「ずん胴魔女の すごい 解釈」
「……下僕のくせに、馬鹿にしてます。……こうなっては、もう一度ホモ地獄を」
「ぼく、身体に起伏のない魔女様大好きさ! ラブちなみん!」
もう一度アレを喰らったら生ける屍になること請け合い。プライドも何もかも投げ捨て魔女に抱きつく。
「こ、こら、誰も抱きつくことなんて許可してません! は、離れなさい!」
魔女は持っていた杖で俺をぽこぽこ叩いた。痛いので離れる。
「うー……」
頬を赤らめ、何か言いたげな瞳で俺をじっと睨む魔女。
「俺に惚れると火傷するゼ?」
「惚れません」
即答は辛い。“今時その台詞はないだろう”というツッコミがないのもまた。
「ませんが……困りました。下僕がご主人様にめろめろになってしまうとは……これも、魅力が溢れすぎてる私の罪なのですね」
「うっさいずん胴」
「…………」
「お疲れ様で……うわぁっ!?」
裁判所を出ると、衛兵の驚いた声に迎えられた。
「下僕……げふんげふん。裁判長は自信の視野の狭さに気づき、私と一緒に勉強することになりました。……あと、私は魔女じゃないですよ?」
「は、はぁ……しかし、どうして裁判長を引きずってるんですか?」
「……だって、重いんだもん」
色々色々言いたかったが、生ける屍なので何か言う気力さえない。
「え、ええと、お気をつけて」
「……ん」
手を振る衛兵に見送られ、俺はずるずると魔女に引きずられていくのだった。
【ちなみvsちなねえ】
2010年03月23日
暇なのでぶらりとちなみの家に遊びに行くと、なんか変な本読んでる。
「ちなみ、その本……あ、いや、やっぱいい」
「……さすがはタカシ、目の付け所が違います。……これは『月刊いもうと』と言って、それはそれは素晴らしい」
「いい。ごめん。俺が悪かった。どっか遊び行こう、全部俺の奢りだぞ」
「……それは嬉しいですが、どうしてそんなに必死なんですか?」
だって俺の本能がちなみの持つ雑誌に触れるなと、さっきから警鐘を鳴らし続けてるんですもの。
「は、はは、いいからいいから。ほれ行くべ行くべ」
「あっ、そんな急に引っ張ったら……あぅ」
つるりこてんもにゅもにゅがちゃ。
「……タカくんが来てる予感、てきちゅー。……てきちゅーですが、これはどういうことですか?」
ちなみに巻き込まれ一緒に転んでると、ドアを開けてちなみの姉、ちなねえが顔を覗かせた。
「や、はは、これはこれはちなねえ、ご機嫌麗しゅう」
「……麗しゅくないです。……私を差し置いて妹とくんずほぐれず……ぬぬ、ずるいです」
「くんずほぐれずって……いや、別にそんなほぐれてなんて」
なんて軽く笑いながらちなみを見たら、おや顔真っ赤っ赤。
「……うう、どうせ私の胸は触っても気づかないくらいぺたんこです」
何を言ってんだこの娘さんはと思ったけど、よくよく見たら俺の手がちなみの胸を鷲づかみにしている。
「…………」(無言で手をむにむに)
「……うう、ついでとばかりに私の胸がむにむに揉まれてます」
「ああっ、つい! ていうかお前も何を冷静に実況してるか!」
「……実は、あまり冷静ではないです」
ちなみは顔を赤らめたまま、困ったように視線をさまよわせた。
「奇遇だな、俺もだ」(再びむにむに)
「あぅっ……た、タカシは混乱を装って私を襲っています。……このままどさくさで初めてを奪われる予感」
「そこまで鬼畜じゃないっ!」
「……なんだ」
残念なのか。とにかく、いつまでもちなみに覆いかぶさっていては精神衛生上大変よろしくないのでさっさとどく。
「……次は、お姉ちゃんのばんー」
どいたそばからちなねえに捕獲された。後ろから抱きかかえられ、ほっぺをすりすりされる。
「……うーん、やはりタカくんにすりすりするのはいいです。……タカくん、お姉ちゃん専用の抱き枕になりませんか?」
何を言ってんだこの姉は、とか思いながらちなみを見ると、ずいぶんと険しい顔。
「……ぬぬ、お姉ちゃんめ、タカシを抱き枕にするとは許しがたいです。タカシは大事な……えと、ええと、……友達、なのです。……今が雌雄を決する時なのです」
何を一人で盛り上がってんだこの娘さんは、とか思いながらちなねえを見たら、この姉もなんか目が燃えてる。
「……いー度胸です。……すなわちナイス度胸。……胸はナイスではないですが」
ちなみはひくりとこめかみを引きつらせた。
「……マホカンタです。……まったく同じ台詞をお返しします、歳のわりに胸が悲しいお姉ちゃん」
ちなねえのこめかみが二度引きつった。
「あ、あのお二人さん、諍いは何も生み出しませんよ? 同じ地球人類、手に手を取って」
「「うるさい」」
怖いので部屋の隅っこに退避。誰か助けて。
「……お姉ちゃんは、いー大人なんですから、タカシにちょっかいをかけるべきではないです。……タカシは同級生で胸と背が少し小さい、コスプレ好きな女の子が大好きに決まってます」
おおっ、勝手なこと言ってるちなみの背後に、今までちなみがコスプレした姿が浮かんで見える!
「……そんなことはないです。……タカくんはあれで結構ドジなところがあるから、姉さん女房がいいに決まってます。……それも、色々な技術を持ってる、例えば召還術ができる女性がいいに決まってます」
今度はちなねえの背後に……月刊お姉ちゃんが見える。でかでかと『弟を洗脳する百の手段』とか書いてあってもうやだ。
「「……で」」
突然二人がこっちを向いたので失禁しそう。
「「……どっち?」」
「こっち」
そばにあった熊のぬいぐるみを抱きしめたら、二人に頬をぎぅぅぅぅっと引っ張られた。
「……真面目にやるべきです」
「……まったくです。……タカくん、真面目にしないと、すりすりしてあげませんよ?」
別に望んでしているわけでもないんだけどなぁ、とか思ってたらちなみが俺の服の裾をくいくい引っ張った。
「……わ、私を選べば、ねこちなみんが現れる予感。……にゃーにゃーです」
「にゃ、にゃーにゃー?」
「……にゃーにゃー」
なんだか分からないが大変心惹かれる提案に、心揺れる揺れる揺れまくる。
「……お、お姉ちゃんを選べば、なんでも召還しまくりです。……世界征服も滅亡も、お望みのままですよ?」
ちなねえなら本当にやりそうなので、放っておくのは怖い。だがしかし、ちなねえを選べばにゃーにゃーが……!
「……にゃあ」
「こっち!」
気がつくと、小さくにゃあと鳴くちなみに抱きついて頭なでまくってて。
「……うぅ、タカくんがお姉ちゃんを捨てた。……こんな世界、壊しちゃいましょう」
「待って待って違うごめんやめてちなねえ!」
ちなねえが慣れた手つきで空中に怪しげな魔法陣を描き出したので、慌てて止める。……が、慌てすぎたせいか足が滑り、ちなねえを巻き込み転ぶ。
「あいたた……ご、ごめん。大丈夫か、ちなねえ」
「……あ、あの、タカくん、お姉ちゃんの、お姉ちゃんのおっぱい……」
「おっぱい? 大丈夫、小さいよ」
「そ、そうじゃなくて、そうじゃなくて……さ、さわってるの」
なるほど、確かにちなねえのおっぱいを俺の無骨な手がこう、鷲づかみに。
「ちなねえ、これデジャブって奴だよね。なんかつい最近もこんなことがあったような」(むにむに)
「うっ、あうっ……た、タカくん、揉んでる、揉んでるよぉ」
「気のせいだ!」(むにむにむに)
顔を赤く染めるちなねえの言を、強く言い切ることによって封じる。
「ふぅっ……そ、そんなことないよ、そんなことないよぉ」
しかしちなねえもそんなことで誤魔化されるはずもなく、涙目のままイヤイヤと顔を振った。
「ほらアレだ、危機に瀕すると本能がどうにかなってえっちしたくなるってアレってことで一つ」(むにむに、むにむに)
「うぅ、あぅ、……た、タカくん、さわり方がえっちだよぅ」
「ふはははは、気のせいだ!」
「…………」
興奮するあまり、一人放っておかれた子がいたのを忘れてた。その娘さんが絶対零度もあわやと思えるほどの冷気をまとわせた視線を俺に向けてまして。
「じ、冗談はこのくらいにしようね、ちなねえ?」
必死でちなねえに目配せして、話を合わせるようにやってるのに、
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
ちなねえときたら肩で荒く息をするばかりで俺の話なんてちっとも。
「あ、あは……あはは」
「……まったく、タカシの無節操ぶりには、困ったものです」
世界を救ったと思ったら、今度は俺の命が大変ぴんち。
「……タカシは一度、自分の立場というものを確認した方がいいです」
世界でも稀な拷問、猫我慢という奇拷問を受けた。猫まみれだった。
「ちなみ、その本……あ、いや、やっぱいい」
「……さすがはタカシ、目の付け所が違います。……これは『月刊いもうと』と言って、それはそれは素晴らしい」
「いい。ごめん。俺が悪かった。どっか遊び行こう、全部俺の奢りだぞ」
「……それは嬉しいですが、どうしてそんなに必死なんですか?」
だって俺の本能がちなみの持つ雑誌に触れるなと、さっきから警鐘を鳴らし続けてるんですもの。
「は、はは、いいからいいから。ほれ行くべ行くべ」
「あっ、そんな急に引っ張ったら……あぅ」
つるりこてんもにゅもにゅがちゃ。
「……タカくんが来てる予感、てきちゅー。……てきちゅーですが、これはどういうことですか?」
ちなみに巻き込まれ一緒に転んでると、ドアを開けてちなみの姉、ちなねえが顔を覗かせた。
「や、はは、これはこれはちなねえ、ご機嫌麗しゅう」
「……麗しゅくないです。……私を差し置いて妹とくんずほぐれず……ぬぬ、ずるいです」
「くんずほぐれずって……いや、別にそんなほぐれてなんて」
なんて軽く笑いながらちなみを見たら、おや顔真っ赤っ赤。
「……うう、どうせ私の胸は触っても気づかないくらいぺたんこです」
何を言ってんだこの娘さんはと思ったけど、よくよく見たら俺の手がちなみの胸を鷲づかみにしている。
「…………」(無言で手をむにむに)
「……うう、ついでとばかりに私の胸がむにむに揉まれてます」
「ああっ、つい! ていうかお前も何を冷静に実況してるか!」
「……実は、あまり冷静ではないです」
ちなみは顔を赤らめたまま、困ったように視線をさまよわせた。
「奇遇だな、俺もだ」(再びむにむに)
「あぅっ……た、タカシは混乱を装って私を襲っています。……このままどさくさで初めてを奪われる予感」
「そこまで鬼畜じゃないっ!」
「……なんだ」
残念なのか。とにかく、いつまでもちなみに覆いかぶさっていては精神衛生上大変よろしくないのでさっさとどく。
「……次は、お姉ちゃんのばんー」
どいたそばからちなねえに捕獲された。後ろから抱きかかえられ、ほっぺをすりすりされる。
「……うーん、やはりタカくんにすりすりするのはいいです。……タカくん、お姉ちゃん専用の抱き枕になりませんか?」
何を言ってんだこの姉は、とか思いながらちなみを見ると、ずいぶんと険しい顔。
「……ぬぬ、お姉ちゃんめ、タカシを抱き枕にするとは許しがたいです。タカシは大事な……えと、ええと、……友達、なのです。……今が雌雄を決する時なのです」
何を一人で盛り上がってんだこの娘さんは、とか思いながらちなねえを見たら、この姉もなんか目が燃えてる。
「……いー度胸です。……すなわちナイス度胸。……胸はナイスではないですが」
ちなみはひくりとこめかみを引きつらせた。
「……マホカンタです。……まったく同じ台詞をお返しします、歳のわりに胸が悲しいお姉ちゃん」
ちなねえのこめかみが二度引きつった。
「あ、あのお二人さん、諍いは何も生み出しませんよ? 同じ地球人類、手に手を取って」
「「うるさい」」
怖いので部屋の隅っこに退避。誰か助けて。
「……お姉ちゃんは、いー大人なんですから、タカシにちょっかいをかけるべきではないです。……タカシは同級生で胸と背が少し小さい、コスプレ好きな女の子が大好きに決まってます」
おおっ、勝手なこと言ってるちなみの背後に、今までちなみがコスプレした姿が浮かんで見える!
「……そんなことはないです。……タカくんはあれで結構ドジなところがあるから、姉さん女房がいいに決まってます。……それも、色々な技術を持ってる、例えば召還術ができる女性がいいに決まってます」
今度はちなねえの背後に……月刊お姉ちゃんが見える。でかでかと『弟を洗脳する百の手段』とか書いてあってもうやだ。
「「……で」」
突然二人がこっちを向いたので失禁しそう。
「「……どっち?」」
「こっち」
そばにあった熊のぬいぐるみを抱きしめたら、二人に頬をぎぅぅぅぅっと引っ張られた。
「……真面目にやるべきです」
「……まったくです。……タカくん、真面目にしないと、すりすりしてあげませんよ?」
別に望んでしているわけでもないんだけどなぁ、とか思ってたらちなみが俺の服の裾をくいくい引っ張った。
「……わ、私を選べば、ねこちなみんが現れる予感。……にゃーにゃーです」
「にゃ、にゃーにゃー?」
「……にゃーにゃー」
なんだか分からないが大変心惹かれる提案に、心揺れる揺れる揺れまくる。
「……お、お姉ちゃんを選べば、なんでも召還しまくりです。……世界征服も滅亡も、お望みのままですよ?」
ちなねえなら本当にやりそうなので、放っておくのは怖い。だがしかし、ちなねえを選べばにゃーにゃーが……!
「……にゃあ」
「こっち!」
気がつくと、小さくにゃあと鳴くちなみに抱きついて頭なでまくってて。
「……うぅ、タカくんがお姉ちゃんを捨てた。……こんな世界、壊しちゃいましょう」
「待って待って違うごめんやめてちなねえ!」
ちなねえが慣れた手つきで空中に怪しげな魔法陣を描き出したので、慌てて止める。……が、慌てすぎたせいか足が滑り、ちなねえを巻き込み転ぶ。
「あいたた……ご、ごめん。大丈夫か、ちなねえ」
「……あ、あの、タカくん、お姉ちゃんの、お姉ちゃんのおっぱい……」
「おっぱい? 大丈夫、小さいよ」
「そ、そうじゃなくて、そうじゃなくて……さ、さわってるの」
なるほど、確かにちなねえのおっぱいを俺の無骨な手がこう、鷲づかみに。
「ちなねえ、これデジャブって奴だよね。なんかつい最近もこんなことがあったような」(むにむに)
「うっ、あうっ……た、タカくん、揉んでる、揉んでるよぉ」
「気のせいだ!」(むにむにむに)
顔を赤く染めるちなねえの言を、強く言い切ることによって封じる。
「ふぅっ……そ、そんなことないよ、そんなことないよぉ」
しかしちなねえもそんなことで誤魔化されるはずもなく、涙目のままイヤイヤと顔を振った。
「ほらアレだ、危機に瀕すると本能がどうにかなってえっちしたくなるってアレってことで一つ」(むにむに、むにむに)
「うぅ、あぅ、……た、タカくん、さわり方がえっちだよぅ」
「ふはははは、気のせいだ!」
「…………」
興奮するあまり、一人放っておかれた子がいたのを忘れてた。その娘さんが絶対零度もあわやと思えるほどの冷気をまとわせた視線を俺に向けてまして。
「じ、冗談はこのくらいにしようね、ちなねえ?」
必死でちなねえに目配せして、話を合わせるようにやってるのに、
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
ちなねえときたら肩で荒く息をするばかりで俺の話なんてちっとも。
「あ、あは……あはは」
「……まったく、タカシの無節操ぶりには、困ったものです」
世界を救ったと思ったら、今度は俺の命が大変ぴんち。
「……タカシは一度、自分の立場というものを確認した方がいいです」
世界でも稀な拷問、猫我慢という奇拷問を受けた。猫まみれだった。