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2024年11月23日
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【くまちなみん】

2010年03月26日
 ちなみにお呼ばれされたので家まで行ったら、ちなみの奴は熊になった、と言い張るんですの。
「すっぽこすっぽこ」
 違う、それはタヌキ。
「……はっ、これはタヌキです。……ぬぬ、タカシめ、私を謀るとはいい度胸です」
 いや、何もしてない。勝手に間違えただけ。
「……くまって、なんて鳴くんですか?」
 知らん。先に調べておけ。
「……まぁとにかく、くまなんです。……ええっと、がおーがおー」
「困ったらがおがお言うのはどうなんですか?」
「が、がお……」
「おまえはどろり濃厚が好きな可哀想な娘さんか」
「……? ……よく分かりませんが、くまな私に怯えてください。ほら、早く」
「ひゃー」
「……大根なのはともかく、声をあげるだけでぼーっと無表情に突っ立ってるのは、どうなんですか?」
「や、だって怖くないし」
「…………」(涙じわーっ)
「まさかこんなところで熊に遭遇するとは! これは死ぬやも! ひぃ助けて神様!」
「……ふふ、それでいいのです。タカシはやっぱり無様に這いずり回るのがお似合いです」
「…………」
 また騙された。畜生。
「……恐怖のあまり、錯乱してますね。……こ、これじゃ、訳が分からなくなって私に抱きついても仕方ないですね、うん」
「や、大丈夫。意識はしっかりしてるし、まったく怖くない」
「……く、くまです。がおーがおー、がおーがおー」
 ちなみはがおがお言いながら、少しだけ焦ったように両手を大きく上げた。
「残念ながら、怖くない」
 その証拠に肉球をぷにぷにしたり、ちなみのほっぺをぷにぷにする。
「……むー」
 ちなみはほっぺをつつかれながら、むーと唸った。
「……怖がってください。怖がってくれないと、後の計画に支障をきたします」
「後の計画って……ふべっ」
 なんのことやらと思ってたら、突然ドアが開いて俺の後頭部を強かに打ちつけるので痛い。
「……あ、おねーちゃん」
「……ちなみだけタカくんを可愛がるなんて、ずるいです。……お姉ちゃんも、タカくんで色々したいです」
 そう言って、突然現れたちなみの姉、略してちなねえが俺を抱っこした。
「ちなねえ、俺“と”色々するでなく、俺“で”色々するですか?」
「……タカくん、タカくん」
 ちなねえは俺の話なんてちっとも聞かずにすりすりほお擦りするので顔がにやけてもう、もう!
「…………」
 だけど、目の前ですげー不機嫌そうに俺を睨む熊がいるのであまりにやにやできず顔面つりそう。
「……別に、いいですけど。……私を無視しておねーちゃんとイチャイチャしてもいいですけど。……別に、いいですけど」
 別にいいなら睨まないで欲しい。居心地が悪くて仕方ない。
「……タカくん、拗ねてる妹なんてほっといて、お姉ちゃんと遊びましょう。……何か、召還しましょうか?」
 ちなねえは常人には計り知れない場所にいるので召還とかもお手の物だが、もうちょっと地に足の着いた特技を身につけて欲しい。
「ちなみのパンツ」
 熊が噛み付いてきて痛い痛い。
「……タカシなんか、おねーちゃんの召還したお化けに食べられちゃえばいいんだ」
 噛み付くだけ噛み付いて、ちなみはふんふん言いながら部屋の隅っこに座った。本来なら寂しそうに見えるはずだが、クマなのでぬいぐるみみたい。
「……わぁ、ちなみってばぬいぐるみみたい。……かーわいー」
 ちなねえも俺と同じ感想を持ったようで、嬉しそうにちなみに抱きついてる。
「わ、わわ、おねーちゃんが姉妹として超えてはならない一線を」
 違うと思うが、ちなねえがちなみを抱っこしているスキに逃げようと思いついたので逃げよう。
「……逃げちゃダメー」
 ちなねえに捕まった。後ろに目でも付いてない限りバレないはずだったのだが……。
「ちなねえって妖怪の一種?」
「…………」
 思い切りほっぺを引っ張られた。
「……お姉ちゃんは、ふつーの人間さんです」
 非常に怪しい所だが、口答えすると俺のほっぺが大変危険なので黙っておく。
「……やれやれ、おねーちゃんにも困ったものです」
 俺の隣でちなみが首をすくめていた。
「その妹も困ったものだと思うが」
「…………」
 ちなねえに引っ張られた所と反対を引っ張られる。
「……あ、楽しそう。……お姉ちゃんもするー」
 痛いばかりで、俺はちっとも楽しくなかった。
「お二方、姉妹が楽しいだけでなく、三人で楽しいことをしませんか?」
「……楽しいことって、なに?」
「姉妹丼」
 ほっぺ千切れるかと思った。

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