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2025年04月30日
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【こたつちなみん】
2010年04月22日
寒いのでコタツに入ると、捕獲された。
「最近のコタツは捕獲機能がついてるのか。安物買って失敗したな」
「……違います。コタツ風ちなみです。……コタツに入って体も心もあったか、です」
コタツだと思っていたのはちなみだった。それはいいけど、足をがっちり捕獲されてるので出れません。
「ちなみさん、出れないのですが」
「……そういう仕様です」
仕様ときたか。それなら仕方ないと納得する他ない。
「……タカシは、冷え性なので暖める必要があります」
「いえ、別に冷え性ではないです」
NOという感じの手を出して断ったら、ちなみは恨みがましく俺を睨んだ。
「……NOという感じの手を出してもダメです。冷え性なのです。このコタツに入ると、誰しも冷え性になります。……そういう仕様です」
とんでもない仕様のコタツだった。欠陥品といえよう。
「……なので、暖めてあげます」
そう言って、ちなみは俺をコタツに引きずり込み、ぎゅっと抱きついてきた。
「ち、ちなみさん?」
「……暖かいですか?」
暖かいけど、なんか、その、俺も男なのでちなみの体の温かさやら柔らかさがダイレクトに伝わってきてええと!
「色々人には言えない箇所まであったかホカホカ!」
「……なによりです。コタツ冥利に尽きると言うものです」
ちなみはそう言って機嫌良さそうに俺の頬をすりすりした。
「いやその、コタツってすりすりする?」
「……無論です。コタツと言えば、ほっぺをすりすりするものです。……世界の常識です」
そんなコタツは今まで生きてきて見たことないですが、ほっぺ気持ちいいしまぁいいや!
「……コタツにすりすりされたら、すりすりし返さないとダメです」
「え、いや、でも」
「…………」
むーっという目つきで睨まれたので、すりすりし返す。
「あ……すりすりされました。タカシはコタツに欲情する変態さんです」
「コタツが俺に欲情してるんだ」
「……違います。タカシがコタツに欲情してるんです。ねこさんもそう言ってます」
近くを通りがかった俺の飼い猫を捕まえ、ちなみはネコを使って腹話術をした。
「……タカシが欲情してるにゃー。間違いないにゃー。……ほら、ねこさんも言ってます」
「いや、めっちゃちなみの口動いてるし。ネコ嫌がってるし」
ちなみがネコを放すと、敵わんとばかりにネコは別の部屋に逃げていった。
「……むー」
「もーいいからテレビでも見ようぜ。つまらん番組見て茶を濁そう」
コタツから抜け出そうとしたら、がっしと腰を抱きしめられた。
「……つまらないテレビを見るより、コタツで寝るほうが気持ちいいです」
「こっ、コタツで寝るって、おまえ」
「え……あ」
自分の言った言葉の意味を今更理解したのか、ちなみの顔がみるみる赤くなっていった。
「そ、そういう意味じゃなくて、あ、あの、たんに一緒に寝たいだけで、その……」
「あ、いや、うん。分かってるから、うん」
変な空気を払いのけるべく、俺はわはははと乾いた笑い声をあげた。
「……で、でも、どうしてもと言うなら、その、そっちの意味でも……」
「さーちなみ極々普通に一緒に寝ような。たまにはコタツで寝るのもいいもんだ」
危うい言葉を言われる前にコタツに潜り込み、ちなみをぎゅっと抱きしめる。
「あぅっ……タカシはずるいです」
「ぐーぐー」
もう面倒なので寝たフリしちまえ。
「……もう寝てます。……つんつん、本当に寝てます、よね?」
しばらくして、ほっぺに柔らかな感触。
「……え、えへへっ、私も寝ます。おやすみ、タカシ」
柔らかな感触を体に感じたまま、俺は本当に眠りに就いた。
で、起きたら母さんが仁王立ちしてて。俺の隣にゃ嬉しそうに俺に抱きついてるちなみがいて。
「え、えっと、その、少し遅いクリスマスプレゼントってサンタが! 白髭の野郎が俺を陥れようと!」
母さんはにっこり笑って、俺の顔を踏んだ。
「最近のコタツは捕獲機能がついてるのか。安物買って失敗したな」
「……違います。コタツ風ちなみです。……コタツに入って体も心もあったか、です」
コタツだと思っていたのはちなみだった。それはいいけど、足をがっちり捕獲されてるので出れません。
「ちなみさん、出れないのですが」
「……そういう仕様です」
仕様ときたか。それなら仕方ないと納得する他ない。
「……タカシは、冷え性なので暖める必要があります」
「いえ、別に冷え性ではないです」
NOという感じの手を出して断ったら、ちなみは恨みがましく俺を睨んだ。
「……NOという感じの手を出してもダメです。冷え性なのです。このコタツに入ると、誰しも冷え性になります。……そういう仕様です」
とんでもない仕様のコタツだった。欠陥品といえよう。
「……なので、暖めてあげます」
そう言って、ちなみは俺をコタツに引きずり込み、ぎゅっと抱きついてきた。
「ち、ちなみさん?」
「……暖かいですか?」
暖かいけど、なんか、その、俺も男なのでちなみの体の温かさやら柔らかさがダイレクトに伝わってきてええと!
「色々人には言えない箇所まであったかホカホカ!」
「……なによりです。コタツ冥利に尽きると言うものです」
ちなみはそう言って機嫌良さそうに俺の頬をすりすりした。
「いやその、コタツってすりすりする?」
「……無論です。コタツと言えば、ほっぺをすりすりするものです。……世界の常識です」
そんなコタツは今まで生きてきて見たことないですが、ほっぺ気持ちいいしまぁいいや!
「……コタツにすりすりされたら、すりすりし返さないとダメです」
「え、いや、でも」
「…………」
むーっという目つきで睨まれたので、すりすりし返す。
「あ……すりすりされました。タカシはコタツに欲情する変態さんです」
「コタツが俺に欲情してるんだ」
「……違います。タカシがコタツに欲情してるんです。ねこさんもそう言ってます」
近くを通りがかった俺の飼い猫を捕まえ、ちなみはネコを使って腹話術をした。
「……タカシが欲情してるにゃー。間違いないにゃー。……ほら、ねこさんも言ってます」
「いや、めっちゃちなみの口動いてるし。ネコ嫌がってるし」
ちなみがネコを放すと、敵わんとばかりにネコは別の部屋に逃げていった。
「……むー」
「もーいいからテレビでも見ようぜ。つまらん番組見て茶を濁そう」
コタツから抜け出そうとしたら、がっしと腰を抱きしめられた。
「……つまらないテレビを見るより、コタツで寝るほうが気持ちいいです」
「こっ、コタツで寝るって、おまえ」
「え……あ」
自分の言った言葉の意味を今更理解したのか、ちなみの顔がみるみる赤くなっていった。
「そ、そういう意味じゃなくて、あ、あの、たんに一緒に寝たいだけで、その……」
「あ、いや、うん。分かってるから、うん」
変な空気を払いのけるべく、俺はわはははと乾いた笑い声をあげた。
「……で、でも、どうしてもと言うなら、その、そっちの意味でも……」
「さーちなみ極々普通に一緒に寝ような。たまにはコタツで寝るのもいいもんだ」
危うい言葉を言われる前にコタツに潜り込み、ちなみをぎゅっと抱きしめる。
「あぅっ……タカシはずるいです」
「ぐーぐー」
もう面倒なので寝たフリしちまえ。
「……もう寝てます。……つんつん、本当に寝てます、よね?」
しばらくして、ほっぺに柔らかな感触。
「……え、えへへっ、私も寝ます。おやすみ、タカシ」
柔らかな感触を体に感じたまま、俺は本当に眠りに就いた。
で、起きたら母さんが仁王立ちしてて。俺の隣にゃ嬉しそうに俺に抱きついてるちなみがいて。
「え、えっと、その、少し遅いクリスマスプレゼントってサンタが! 白髭の野郎が俺を陥れようと!」
母さんはにっこり笑って、俺の顔を踏んだ。
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【ケーキちなみん】
2010年04月18日
そういえば、最近ケーキなんて代物食ってなかったなぁ、と思う。
だけど、別に俺が望んでたモノはこんなのじゃない。
「……ケーキです。ふわふわ、甘くておいしーです」
部屋に入ると、ケーキの格好をしたちなみがベッドの上にちょこんと鎮座していた。
「や、悪い。甘いものは苦手なんだ」
「……おかしいですね。昨日、タカシが喫茶店でパフェを満面の笑みで食べてるところを見たのですが」
知らぬ間に弱みを握られていた。
「今日から貴方様の奴隷です」
「わ、やたっ。……ええと、それじゃ、なでなで……」
ちなみの頭に手をかける。……このまま握りつぶして、秘密を守るか?
「……何か嫌なオーラを感じるので、やっぱいいです。……ケーキとして、食べてください」
「……食えるのか、その着ぐるみ」
「あ、ちょっと待ってください。いま、脱ぎますから」
「え」
ちなみは器用に一人で着ぐるみを脱いだ。そして、その下には──
「お、お、お、おまっ、おまえ、おまえーッ!!!」
「……ちょっとだけ恥ずかしいのは、秘密です」
ちなみは、その、なんというか、……ボディペイントのように、生クリームを全身に塗りたくっていた。
「嫁入り前の娘さんが、なんとはしたない格好を! お兄さんは悲しいぞ!」
「……目を皿のようにして私の胸を見てるのは、気のせいでしょうか」
ちなみは思ったより俺をしっかり見てて困る。
「……まぁ、いちおう水着の上から生クリームを塗ってるので大丈夫です。はしたなくないです。大和撫子です」
大和撫子は男の部屋で生クリームまみれにはならない。
「と、いうわけで。……召し上がれ」
ずい、とちなみが一歩こっちに寄ってきた。思わず一歩後ずさる。
「ざ、残念、スプーンがない。これじゃ食べれないなぁ。は、はは、ははははは」
「……仕方ないです、舐めて食べてください」
墓穴を掘ったようだ。全身から汗がふき出す。
「や、その、舐められたら、ちなみもくすぐったくて大変だろうし、ね?」
「……だいじょぶ」
ちなみは自分の体についたクリームをすくい取り、俺のほっぺにつけた。
「……ぺろっ」
「んなっ!?」
そして、俺のほっぺを舐めた。
「……ほら、くすぐったくないです」
くすぐったいとかそんなのはよく分からんが、心臓がバクバク鳴ってるのだけはよく分かる。
「男は度胸、です。……ふぁいと」
「どどど度胸とかそんなじゃなくて! そ、そうだ! 先日うどん食ってる時に誤って舌を噛み切ったから舐められないんだ」
「……じゃあ、どうやって喋ってるんでしょう」
「二枚舌だから、もう一枚あるんだ」
「……じゃ、舐めれますね」
ちなみは思ったより賢かった。
「タカシが馬鹿なだけです」
ちなみはすぐ俺の思考を読むので勘弁してほしい。
「……心配しなくても、おいしいですよ?」
「おっ、おいしいとかそんなことは心配してなくて! つーかちなみが美味そうなのは見れば分かるわけで!」
「……私が言ってるのは、クリームの話なんですが」
しまった。ていうか、それしかないのにどうして俺はこんなにエロいのか!
「……私、食べられるんでしょうか?」
言葉は不安そうだが、顔が期待に満ち満ちているのはなぜでしょう。
「大丈夫、俺は紳士だから食べたりしない」
「…………」
とても不満そうに睨まれた。どうしろというのだ。
「ここまでして手出さないなんて……まさか、同性愛者なんですか?」
「失礼な! 今もちなみの痴態に死ぬほどドキドキしてるぞ! 必死に理性で押さえ込んでるだけなのら!」
興奮のあまり語尾がおかしくなった。
「……私、おいしいですよ?」
ああ、ダメだ。そんな、小首を傾げられたら、もう。
「い、い、いっただっきまーす!」
いざ、ルパン跳び!
「うるさいわよー、タカシ」
ぴょいんと飛びついた先には、不思議なことに母さんが。
「……はい、そうです。誤解です」
ものっそい殴られた後、正座して事情を説明する。
「つまり、アンタはちなみちゃんを襲うつもりが、誤って母親である私を襲いそうになった、と」
「まさにそう! いやぁ話が早くて助かる。まぁ仮に間違ったとしても、義理だしいいよね? 母さん童顔だし」
「こづかい三ヶ月カット」
事情を説明したのにこの仕打ち。世の中にはまだまだ不思議な事があるもんだ。
だけど、別に俺が望んでたモノはこんなのじゃない。
「……ケーキです。ふわふわ、甘くておいしーです」
部屋に入ると、ケーキの格好をしたちなみがベッドの上にちょこんと鎮座していた。
「や、悪い。甘いものは苦手なんだ」
「……おかしいですね。昨日、タカシが喫茶店でパフェを満面の笑みで食べてるところを見たのですが」
知らぬ間に弱みを握られていた。
「今日から貴方様の奴隷です」
「わ、やたっ。……ええと、それじゃ、なでなで……」
ちなみの頭に手をかける。……このまま握りつぶして、秘密を守るか?
「……何か嫌なオーラを感じるので、やっぱいいです。……ケーキとして、食べてください」
「……食えるのか、その着ぐるみ」
「あ、ちょっと待ってください。いま、脱ぎますから」
「え」
ちなみは器用に一人で着ぐるみを脱いだ。そして、その下には──
「お、お、お、おまっ、おまえ、おまえーッ!!!」
「……ちょっとだけ恥ずかしいのは、秘密です」
ちなみは、その、なんというか、……ボディペイントのように、生クリームを全身に塗りたくっていた。
「嫁入り前の娘さんが、なんとはしたない格好を! お兄さんは悲しいぞ!」
「……目を皿のようにして私の胸を見てるのは、気のせいでしょうか」
ちなみは思ったより俺をしっかり見てて困る。
「……まぁ、いちおう水着の上から生クリームを塗ってるので大丈夫です。はしたなくないです。大和撫子です」
大和撫子は男の部屋で生クリームまみれにはならない。
「と、いうわけで。……召し上がれ」
ずい、とちなみが一歩こっちに寄ってきた。思わず一歩後ずさる。
「ざ、残念、スプーンがない。これじゃ食べれないなぁ。は、はは、ははははは」
「……仕方ないです、舐めて食べてください」
墓穴を掘ったようだ。全身から汗がふき出す。
「や、その、舐められたら、ちなみもくすぐったくて大変だろうし、ね?」
「……だいじょぶ」
ちなみは自分の体についたクリームをすくい取り、俺のほっぺにつけた。
「……ぺろっ」
「んなっ!?」
そして、俺のほっぺを舐めた。
「……ほら、くすぐったくないです」
くすぐったいとかそんなのはよく分からんが、心臓がバクバク鳴ってるのだけはよく分かる。
「男は度胸、です。……ふぁいと」
「どどど度胸とかそんなじゃなくて! そ、そうだ! 先日うどん食ってる時に誤って舌を噛み切ったから舐められないんだ」
「……じゃあ、どうやって喋ってるんでしょう」
「二枚舌だから、もう一枚あるんだ」
「……じゃ、舐めれますね」
ちなみは思ったより賢かった。
「タカシが馬鹿なだけです」
ちなみはすぐ俺の思考を読むので勘弁してほしい。
「……心配しなくても、おいしいですよ?」
「おっ、おいしいとかそんなことは心配してなくて! つーかちなみが美味そうなのは見れば分かるわけで!」
「……私が言ってるのは、クリームの話なんですが」
しまった。ていうか、それしかないのにどうして俺はこんなにエロいのか!
「……私、食べられるんでしょうか?」
言葉は不安そうだが、顔が期待に満ち満ちているのはなぜでしょう。
「大丈夫、俺は紳士だから食べたりしない」
「…………」
とても不満そうに睨まれた。どうしろというのだ。
「ここまでして手出さないなんて……まさか、同性愛者なんですか?」
「失礼な! 今もちなみの痴態に死ぬほどドキドキしてるぞ! 必死に理性で押さえ込んでるだけなのら!」
興奮のあまり語尾がおかしくなった。
「……私、おいしいですよ?」
ああ、ダメだ。そんな、小首を傾げられたら、もう。
「い、い、いっただっきまーす!」
いざ、ルパン跳び!
「うるさいわよー、タカシ」
ぴょいんと飛びついた先には、不思議なことに母さんが。
「……はい、そうです。誤解です」
ものっそい殴られた後、正座して事情を説明する。
「つまり、アンタはちなみちゃんを襲うつもりが、誤って母親である私を襲いそうになった、と」
「まさにそう! いやぁ話が早くて助かる。まぁ仮に間違ったとしても、義理だしいいよね? 母さん童顔だし」
「こづかい三ヶ月カット」
事情を説明したのにこの仕打ち。世の中にはまだまだ不思議な事があるもんだ。
【なすびちなみん】
2010年04月18日
家に帰ると、明らかに変な人物がいた。できるだけ目を逸らしながら着替える。
「……なんでこっち見ないんですか」
変な人が俺の方を見て何か言ってるけど、聞こえない聞こえない。復習しよう、復習。
「……普段勉強なんてしないくせに、なんで勉強してるんでしょう」
変な人が寄ってきた。教科書に影が落ちる。俺は諦めて顔を上げた。
「何やってんだ、ちなみ」
「……なすびです。……実は、なすびは苦手です」
ちなみは少し嫌そうに巨大なすびに身を包んでいた。苦手なら着なけりゃいいのに。
「……苦手なものを克服してこそ、です。……頑張ってる私を見て、惚れ直しました?」
惚れ直してほしいなら、勝手に人の机の上に乗らないでください。踊るな。
「なすびダンスです。……特許、出願中」
今日のちなみは少し足りない。
「……しゃるうぃーだんす?」
「のーせんきゅー」
ちなみは少し残念そうに眉尻を下げた。
「……そんなのはどうでもいいんです。……まったく、タカシと話してるとすぐ脱線するので困ります」
今回に関して言えば、脱線させた覚えは全くない。偉そうに俺の頭叩かないで。
「なすび、と言えば? はい、タカシ」
「ええと……焼きナスとか?」
「ぶぶー。はずれ。ばーか」
「…………」
「正解は、女の子が使うちょっとえっちな小道具……らしいです」
違う。それだけは断じて違う。
「……けど、使い方がよく分からないので、タカシで実験してみようと思うのです」
すかさず部屋を飛び出したけど、捕まった。
「ま、待って! 俺ノーマル! 挿れられるより挿れたいの! おーけー?」
「……入れるのですか? ……分かりました、頑張ります」
「頑張らないでお願い!」
その後、必死に説得して難を逃れた。本当に死ぬかと思った。
「……なんでこっち見ないんですか」
変な人が俺の方を見て何か言ってるけど、聞こえない聞こえない。復習しよう、復習。
「……普段勉強なんてしないくせに、なんで勉強してるんでしょう」
変な人が寄ってきた。教科書に影が落ちる。俺は諦めて顔を上げた。
「何やってんだ、ちなみ」
「……なすびです。……実は、なすびは苦手です」
ちなみは少し嫌そうに巨大なすびに身を包んでいた。苦手なら着なけりゃいいのに。
「……苦手なものを克服してこそ、です。……頑張ってる私を見て、惚れ直しました?」
惚れ直してほしいなら、勝手に人の机の上に乗らないでください。踊るな。
「なすびダンスです。……特許、出願中」
今日のちなみは少し足りない。
「……しゃるうぃーだんす?」
「のーせんきゅー」
ちなみは少し残念そうに眉尻を下げた。
「……そんなのはどうでもいいんです。……まったく、タカシと話してるとすぐ脱線するので困ります」
今回に関して言えば、脱線させた覚えは全くない。偉そうに俺の頭叩かないで。
「なすび、と言えば? はい、タカシ」
「ええと……焼きナスとか?」
「ぶぶー。はずれ。ばーか」
「…………」
「正解は、女の子が使うちょっとえっちな小道具……らしいです」
違う。それだけは断じて違う。
「……けど、使い方がよく分からないので、タカシで実験してみようと思うのです」
すかさず部屋を飛び出したけど、捕まった。
「ま、待って! 俺ノーマル! 挿れられるより挿れたいの! おーけー?」
「……入れるのですか? ……分かりました、頑張ります」
「頑張らないでお願い!」
その後、必死に説得して難を逃れた。本当に死ぬかと思った。
【ツンデレと一緒にコタツでぬくぬく】
2010年04月17日
学校帰りにぶらりとちなみの家に寄り、コタツに入りながらなんとなくテレビを見てる。
「……タカシ、面白い?」
コタツの右隣に入ってるちなみが、さほど興味もなさげに訊ねてきた。
「あんまり面白くない」
「……チャンネル、変える?」
「いや、別にいい。今の時間帯の番組は、どこも似たようなもんだろ」
「……んー」
それだけ言って、ちなみはミカンの皮を剥いて房を口に入れた。
「……う、すっぱい」
「あ、俺にもミカンくれ」
「……すっぱいよ?」
「いーからいーから。……ん、すっぱいな」
「……言ったのに、なんで食べるかな」
ちなみはごろんと横になり、ぼんやりテレビを見ていた。
「……う。背中、寒い」
「毛布かなんか取ってこようか?」
「……いや、いい」
ちなみはコタツに潜り込み、何をするかと思えば俺の股から顔を出した。
「何やってんですか、ちなみさん」
「……寒いから、後ろから抱きしめること」
ちなみはコタツから上半身だけ出して、ころりと横になった。
「え、いや、でも」
「……いーから、早くする。……毛布取りに行くの、めんどいから。……それとも、怖い?」
「むっ。何が怖いか皆目見当がつきませんな!」
あからさまな挑発に簡単に乗ってしまう自分の性質を憎く思うような、喜ばしく思うような。とにかく俺も寝転んで、ちなみを後ろから抱きしめる。
「……ん。背中、ぬくぬく」
「俺はお腹ぬくぬく」
「……ん、ダブルぬくぬく。……至福」
ちなみはこちらに顔を向け、小さく笑った。
「……タカシ、面白い?」
コタツの右隣に入ってるちなみが、さほど興味もなさげに訊ねてきた。
「あんまり面白くない」
「……チャンネル、変える?」
「いや、別にいい。今の時間帯の番組は、どこも似たようなもんだろ」
「……んー」
それだけ言って、ちなみはミカンの皮を剥いて房を口に入れた。
「……う、すっぱい」
「あ、俺にもミカンくれ」
「……すっぱいよ?」
「いーからいーから。……ん、すっぱいな」
「……言ったのに、なんで食べるかな」
ちなみはごろんと横になり、ぼんやりテレビを見ていた。
「……う。背中、寒い」
「毛布かなんか取ってこようか?」
「……いや、いい」
ちなみはコタツに潜り込み、何をするかと思えば俺の股から顔を出した。
「何やってんですか、ちなみさん」
「……寒いから、後ろから抱きしめること」
ちなみはコタツから上半身だけ出して、ころりと横になった。
「え、いや、でも」
「……いーから、早くする。……毛布取りに行くの、めんどいから。……それとも、怖い?」
「むっ。何が怖いか皆目見当がつきませんな!」
あからさまな挑発に簡単に乗ってしまう自分の性質を憎く思うような、喜ばしく思うような。とにかく俺も寝転んで、ちなみを後ろから抱きしめる。
「……ん。背中、ぬくぬく」
「俺はお腹ぬくぬく」
「……ん、ダブルぬくぬく。……至福」
ちなみはこちらに顔を向け、小さく笑った。
【おはようのちゅー】
2010年04月17日
おはようございます。新しい朝です。別段希望はありません。
「……ぐぅぐぅ」
だけど、隣でぐぅぐぅ言ってるちなみを見ると、希望がガンガン湧いてくるからまったく困ったもんです。
「ちなみ、起きれ。朝です朝なのです」
「……ぐぅぐぅ」
「今日は映画行くって昨日言ってたろーが。ほれ、起きれ起きれ」
「……う、うぅん、……ぐぅぐぅ」
なかなか手強い。……うう、可愛い寝顔しやがって畜生め。
しかし、今日こそちなみと映画行きたいので、ここは心を鬼に!
「起きるべし! 起きない場合、俺のちゅーが進呈されるぞ」
ちなみの体がびくりと震えた。そして、とてもわざとらしい寝息が聞こえてきた。
「……起きてる?」
「ぐ、ぐーぐー。ぐーぐーぐー」
寝ている、らしい。
「寝てると、俺のちゅーが進呈されるぞ。いいのか? ほれ、起きれ」
「ぐーぐー! ぐーぐーぐー!」
そんな激しい寝息は聞いたことありません。俺の声より大きいってどういうことだ。
「……よし。んじゃ、起きない娘さんには、俺のちゅーを……」
「……どきどき、どきどき」
「起きてるじゃん」
「はっ! ……うう、タカシは策士だ。……ずるい」
思ったとおり、ちなみは起きていた。口を尖らし、責めるような視線で俺を見つめた。
「何が策士か。ほら、起きたなら顔洗って来い。とっとと準備しないと、映画始まっちまうぞ?」
促したものの、ちなみは一向に動こうとしない。
「どしたんだ? 映画楽しみにしてたろ?」
「……ちゅー、してもらってない」
なんて、ちなみは布団に顔を半分隠しながら照れくさそうに言った。
「え、あ、いや、それはなんてーか、そう言えば起きるかなーって……」
「……タカシは嘘つきだ。……するつもりもないのに、ちゅーするとか言った。……私のこと、飽きちゃったんだ」
「いやいやいや! 飽きるとかそんな訳ないだろ! 今だってそのぷりっとした唇にむしゃぶりつきたいと……」
言ってから、しまったと思った。ちなみの顔がにんまりとした笑顔に変化していく。
「……ちゅー、する?」
「します」
この笑顔には今後も勝てそうにないなと思いながら、俺は嬉しそうに微笑むちなみに口づけした。
「……もうこんな時間。……今から映画行くの、ちょっとしんどい」
ちなみとじゃれあってる内に、夕方になってしまった。近くにあった菓子を摘まんだだけなので、腹減った。
「提案です。休みの前日に泊まりに来るのやめないか? 毎回毎回今日と同じような事態に陥ってるような……」
「いや」
即答だった。
「……寝る前にタカシと一緒の布団で、色々喋る時間、好き。……あの時間なくすの、いや」
「う、うーん……確かに俺もあの時間好きだけどさ、映画観に行けないぞ?」
「……映画も観に行きたいけど、タカシと一緒にイチャイチャしたい。……難しい問題。超難問」
「ま、超難問は置いといて、とりあえず飯でも食いに行くか。どこ行く? 吉野家行くか?」
「……女の子を吉野家に連れて行くのはどうかと思う。……ここは一つ、フランス料理でも」
「ファミレス行こう、ファミレス! 結構うまいよな、ファミレス!」
慌てて口を挟み、財布のピンチを救う。
「……むぅ。……いいけど、別に。……タカシと一緒なら」
「聞き分けよくて素晴らしい。いい子いい子」
頭を撫でると、ちなみは不満そうに口を尖らせた。
「……すぐ子供扱いする。……同い年なのに」
「んじゃ、行くか?」
「……ん、行く」
最後にもう一度頭を撫でると、ちなみは不満そうな、でもどこか嬉しそうに目を細めるのだった。
「……ぐぅぐぅ」
だけど、隣でぐぅぐぅ言ってるちなみを見ると、希望がガンガン湧いてくるからまったく困ったもんです。
「ちなみ、起きれ。朝です朝なのです」
「……ぐぅぐぅ」
「今日は映画行くって昨日言ってたろーが。ほれ、起きれ起きれ」
「……う、うぅん、……ぐぅぐぅ」
なかなか手強い。……うう、可愛い寝顔しやがって畜生め。
しかし、今日こそちなみと映画行きたいので、ここは心を鬼に!
「起きるべし! 起きない場合、俺のちゅーが進呈されるぞ」
ちなみの体がびくりと震えた。そして、とてもわざとらしい寝息が聞こえてきた。
「……起きてる?」
「ぐ、ぐーぐー。ぐーぐーぐー」
寝ている、らしい。
「寝てると、俺のちゅーが進呈されるぞ。いいのか? ほれ、起きれ」
「ぐーぐー! ぐーぐーぐー!」
そんな激しい寝息は聞いたことありません。俺の声より大きいってどういうことだ。
「……よし。んじゃ、起きない娘さんには、俺のちゅーを……」
「……どきどき、どきどき」
「起きてるじゃん」
「はっ! ……うう、タカシは策士だ。……ずるい」
思ったとおり、ちなみは起きていた。口を尖らし、責めるような視線で俺を見つめた。
「何が策士か。ほら、起きたなら顔洗って来い。とっとと準備しないと、映画始まっちまうぞ?」
促したものの、ちなみは一向に動こうとしない。
「どしたんだ? 映画楽しみにしてたろ?」
「……ちゅー、してもらってない」
なんて、ちなみは布団に顔を半分隠しながら照れくさそうに言った。
「え、あ、いや、それはなんてーか、そう言えば起きるかなーって……」
「……タカシは嘘つきだ。……するつもりもないのに、ちゅーするとか言った。……私のこと、飽きちゃったんだ」
「いやいやいや! 飽きるとかそんな訳ないだろ! 今だってそのぷりっとした唇にむしゃぶりつきたいと……」
言ってから、しまったと思った。ちなみの顔がにんまりとした笑顔に変化していく。
「……ちゅー、する?」
「します」
この笑顔には今後も勝てそうにないなと思いながら、俺は嬉しそうに微笑むちなみに口づけした。
「……もうこんな時間。……今から映画行くの、ちょっとしんどい」
ちなみとじゃれあってる内に、夕方になってしまった。近くにあった菓子を摘まんだだけなので、腹減った。
「提案です。休みの前日に泊まりに来るのやめないか? 毎回毎回今日と同じような事態に陥ってるような……」
「いや」
即答だった。
「……寝る前にタカシと一緒の布団で、色々喋る時間、好き。……あの時間なくすの、いや」
「う、うーん……確かに俺もあの時間好きだけどさ、映画観に行けないぞ?」
「……映画も観に行きたいけど、タカシと一緒にイチャイチャしたい。……難しい問題。超難問」
「ま、超難問は置いといて、とりあえず飯でも食いに行くか。どこ行く? 吉野家行くか?」
「……女の子を吉野家に連れて行くのはどうかと思う。……ここは一つ、フランス料理でも」
「ファミレス行こう、ファミレス! 結構うまいよな、ファミレス!」
慌てて口を挟み、財布のピンチを救う。
「……むぅ。……いいけど、別に。……タカシと一緒なら」
「聞き分けよくて素晴らしい。いい子いい子」
頭を撫でると、ちなみは不満そうに口を尖らせた。
「……すぐ子供扱いする。……同い年なのに」
「んじゃ、行くか?」
「……ん、行く」
最後にもう一度頭を撫でると、ちなみは不満そうな、でもどこか嬉しそうに目を細めるのだった。