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2025年04月20日
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【食虫植物ちなみん】
2010年05月26日
目覚めた瞬間、目の前にちなみっぽいのが。しかも、俺の顔をぺろぺろ舐めてるし。
「ななな、なんだ朝っぱらから!」
「……食虫植物のウツボカズラです。……うっぼー」
植物は鳴かないと思う。鳴くにしても、その鳴き声はあんまりだ。
「……ウツボカズラは、虫を食べます。……でも、ちなみは虫が嫌いです。二律背反です」
「それは困ったな。じゃ、俺学校行くから」
そそくさと部屋から出て行こうとしたら、襟首を掴まれた。
「……虫はダメだから、代わりに嫌いなタカシでも食べてやります」
そう言って、また俺の顔をぺろぺろ舐めだした。
「舐めるな!」
噛みだした。違う、そういうことじゃない。なんで「これならいい?」って顔してるんだ。
……いいよ別に。甘噛みだし。甘噛みするの好きだな、ちなみって。
「はむはむ。……おいしいです。タカシは馬鹿だけど、おいしいので±0です」
「そいつぁよござんした」
なんで朝っぱらから涎まみれにならないといけないんだろう。少し悲しくなった。
「……って、時間! うわ、遅刻するぞ!」
「え、わ」
ちなみを引っつかんで、家を飛び出す。そのまま全力で走り、学校へ。昇降口を抜け、教室へ飛び込む。それとほぼ同時に本鈴が鳴った。
「ぜはーぜはーぜはー……。ぎりぎり間に合った……」
しばらく息を整えてると、周囲の視線がどうも自分の方を向いている気がする。
「ちなみ、着替えて来い。すげー見られてるぞ」
「……たぶん、見られてるのはタカシだと思う」
そう言って、ちなみは教室を出て行った。
なんで俺が見られるんだ、と思っていると担任がやってきた。そして、俺を見て絶句した。
「……別府。なんだ、その格好は」
「格好? 別に普通の制服……」
自分の体を見下ろして、やっと気がついた。パジャマのままじゃねえか、俺。
そのあとは、まぁ、いつも通り説教数時間のパターンで。畜生。
「ななな、なんだ朝っぱらから!」
「……食虫植物のウツボカズラです。……うっぼー」
植物は鳴かないと思う。鳴くにしても、その鳴き声はあんまりだ。
「……ウツボカズラは、虫を食べます。……でも、ちなみは虫が嫌いです。二律背反です」
「それは困ったな。じゃ、俺学校行くから」
そそくさと部屋から出て行こうとしたら、襟首を掴まれた。
「……虫はダメだから、代わりに嫌いなタカシでも食べてやります」
そう言って、また俺の顔をぺろぺろ舐めだした。
「舐めるな!」
噛みだした。違う、そういうことじゃない。なんで「これならいい?」って顔してるんだ。
……いいよ別に。甘噛みだし。甘噛みするの好きだな、ちなみって。
「はむはむ。……おいしいです。タカシは馬鹿だけど、おいしいので±0です」
「そいつぁよござんした」
なんで朝っぱらから涎まみれにならないといけないんだろう。少し悲しくなった。
「……って、時間! うわ、遅刻するぞ!」
「え、わ」
ちなみを引っつかんで、家を飛び出す。そのまま全力で走り、学校へ。昇降口を抜け、教室へ飛び込む。それとほぼ同時に本鈴が鳴った。
「ぜはーぜはーぜはー……。ぎりぎり間に合った……」
しばらく息を整えてると、周囲の視線がどうも自分の方を向いている気がする。
「ちなみ、着替えて来い。すげー見られてるぞ」
「……たぶん、見られてるのはタカシだと思う」
そう言って、ちなみは教室を出て行った。
なんで俺が見られるんだ、と思っていると担任がやってきた。そして、俺を見て絶句した。
「……別府。なんだ、その格好は」
「格好? 別に普通の制服……」
自分の体を見下ろして、やっと気がついた。パジャマのままじゃねえか、俺。
そのあとは、まぁ、いつも通り説教数時間のパターンで。畜生。
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【クモちなみん】
2010年05月25日
今日の昼は学食。早く行かないと席が埋まってしまうので駆け足で学食へ向かう。この角を曲がれば学食だ。急いで角を曲がった途端、何かが俺の体にまとわりついた。
「うわっ! なんだ?」
「……だーいせーいこーう。いえー」
クモっぽいちなみの尻から糸が飛び出て、俺をがんじがらめにしていた。
「テメェちなみ、なんのつもりぐぁっ」
そのままちなみは廊下を駆け出した。頭が床に当たってとても痛い。
「痛い痛い痛い! おまえやめろ痛いごめんなさい許してお願いします!」
たんこぶをたくさん作ってたどり着いたところは、屋上。階段が特に痛かった。
「……実は、クモちなみでしたー。くもくも」
「知ってるよ! 最初に言ったよ! 物凄いたんこぶできたよ!」
「……でー、えっと……どこかな。……あ、あった」
あらかじめ置いてあった鞄をあさり、弁当箱を取り出した。
「……お弁当ー。いえー、はくしゅー」
「拘束されているので、できません」
「……使えないね。じゃ、いただきます」
ちなみは包みをほどき、一人で飯を食いだした。
「えええええ!? 一人で食うの!?」
「むぐむぐ……はんばーぐ、おいし」
ちなみが一人飯を食うのを見て、俺の満腹中枢が空腹を訴える。具体的には腹が鳴る。
「……おなか、空いた?」
「飯を食う前に拉致されたんだよ!」
「……食べる?」
玉子焼きを箸で挟み、俺の前にちらつかせる。今の俺に恥や外聞は存在しない!
「食う!」
「……あとで膝枕させてくれるなら、あげる」
「う……」
さすがに恥ずかしい。一瞬答えに詰まる。
「……嫌ならいいよ。……全部食べちゃうから」
「あー……分かった。分かったから、それくれ」
かなり恥ずかしいが、背に腹は代えられん。俺は笑顔のちなみに玉子焼きを食べさせてもらった。
「……どう?」
「むぐむぐむぐ……ん、うまい。おばさん腕上げたな」
「……実は、私が作った。……えへん」
「と思ったけど後味最悪だな。吐き気を催すほどまずい」
本当はすごい美味いけど、素直に言えるほど人間ができていない。
「……むー」
不機嫌そうに唸るちなみに、ほっぺをつねられる。手が出せないので無抵抗につねられるがままだ。
「いーから次よこせ。腹減ってんだ」
「……全部、自分で作ったんだけど、……いい?」
「吐き気を抑える術は知ってる。大丈夫だ」
再びつねられる。痛い。
「……タカシはいじわるだ。……えい」
ちなみは、俺の頭を自分の太ももに乗せた。……後頭部に感じる柔らかな感触、まさか生足!?
「……次嘘ついたら、ちゅーするからね。……はい、あーん」
ちなみはエビフライを掴み、俺の口を開けるよう要求した。
開けれない。素直に言える自信がなさすぎる。
「…………」
「……口、開けてよ。……ほら、あーん」
「…………」
「……えい」
……ちゅ。
「お! おま! おまえ、いま、いま、何を……むぐむぐ」
「……えへへ、口、開いた。……おいし?」
「まず……あー、いや、その、……悪くない」
ここまでされといて茶化すのは、ちょっと俺にはできない。
ほらな、案の定ちなみの奴めちゃくちゃ嬉しそうに笑うし。直視できないっての。俺の顔までにやけてきやがる。
「うわっ! なんだ?」
「……だーいせーいこーう。いえー」
クモっぽいちなみの尻から糸が飛び出て、俺をがんじがらめにしていた。
「テメェちなみ、なんのつもりぐぁっ」
そのままちなみは廊下を駆け出した。頭が床に当たってとても痛い。
「痛い痛い痛い! おまえやめろ痛いごめんなさい許してお願いします!」
たんこぶをたくさん作ってたどり着いたところは、屋上。階段が特に痛かった。
「……実は、クモちなみでしたー。くもくも」
「知ってるよ! 最初に言ったよ! 物凄いたんこぶできたよ!」
「……でー、えっと……どこかな。……あ、あった」
あらかじめ置いてあった鞄をあさり、弁当箱を取り出した。
「……お弁当ー。いえー、はくしゅー」
「拘束されているので、できません」
「……使えないね。じゃ、いただきます」
ちなみは包みをほどき、一人で飯を食いだした。
「えええええ!? 一人で食うの!?」
「むぐむぐ……はんばーぐ、おいし」
ちなみが一人飯を食うのを見て、俺の満腹中枢が空腹を訴える。具体的には腹が鳴る。
「……おなか、空いた?」
「飯を食う前に拉致されたんだよ!」
「……食べる?」
玉子焼きを箸で挟み、俺の前にちらつかせる。今の俺に恥や外聞は存在しない!
「食う!」
「……あとで膝枕させてくれるなら、あげる」
「う……」
さすがに恥ずかしい。一瞬答えに詰まる。
「……嫌ならいいよ。……全部食べちゃうから」
「あー……分かった。分かったから、それくれ」
かなり恥ずかしいが、背に腹は代えられん。俺は笑顔のちなみに玉子焼きを食べさせてもらった。
「……どう?」
「むぐむぐむぐ……ん、うまい。おばさん腕上げたな」
「……実は、私が作った。……えへん」
「と思ったけど後味最悪だな。吐き気を催すほどまずい」
本当はすごい美味いけど、素直に言えるほど人間ができていない。
「……むー」
不機嫌そうに唸るちなみに、ほっぺをつねられる。手が出せないので無抵抗につねられるがままだ。
「いーから次よこせ。腹減ってんだ」
「……全部、自分で作ったんだけど、……いい?」
「吐き気を抑える術は知ってる。大丈夫だ」
再びつねられる。痛い。
「……タカシはいじわるだ。……えい」
ちなみは、俺の頭を自分の太ももに乗せた。……後頭部に感じる柔らかな感触、まさか生足!?
「……次嘘ついたら、ちゅーするからね。……はい、あーん」
ちなみはエビフライを掴み、俺の口を開けるよう要求した。
開けれない。素直に言える自信がなさすぎる。
「…………」
「……口、開けてよ。……ほら、あーん」
「…………」
「……えい」
……ちゅ。
「お! おま! おまえ、いま、いま、何を……むぐむぐ」
「……えへへ、口、開いた。……おいし?」
「まず……あー、いや、その、……悪くない」
ここまでされといて茶化すのは、ちょっと俺にはできない。
ほらな、案の定ちなみの奴めちゃくちゃ嬉しそうに笑うし。直視できないっての。俺の顔までにやけてきやがる。
【イカちなみん】
2010年05月24日
「……あの、困る。……あの」
あくびしながら登校してると、ちなみの声が聞こえた。
「おーっす、おはよちなみ。何が困る……ん」
イカの格好をしたちなみが、何十匹という猫に取り囲まれていた。にゃーにゃーうるさい。
「……あ、タカシ。……早く助ける」
「……えーっと、何やってんだ?」
「……猫に……からまれた」
そう言ってる今も、猫がイカの足に噛み付いている。
「……困った。……猫、好きなのに」
「しかし、すごいな。十本の足全部に噛みついてんのか? 猫まみれだな」
「……これ、足は本物のイカ使ってる。……猫が食べたら、腰抜かす」
「いや、大丈夫だ。単に消化が悪くて腹壊した猫見て、昔の人が腰を抜かしたと勘違いしたらしいぞ。ただの迷信だ」
「呼んだカ?」
突然、俺の脇からメイシンが現れた。
「うおっ! なんつータイミングで出てくんだよ! メイシン違いだ! ……しかし、おまえまだチャイナ服か。エロいな」
「エロくない! エロい思う方がエロいネ! それより猫、可愛いネ。猫、猫~♪」
「食うなよ」
「食べないネ! 中国人なんでも食べる思たら大間違いネ! 中国で父さん食べてたけど」
メイシンの家には近づかないよう心に誓う。
「……えい」
顔に猫を貼り付けられた。その猫がまた爪を立てるわけで大変痛い。
「なにすんだよ!」
猫をはがしながら怒鳴ると、ちなみは不満そうに口を尖らせた。
「……私のことほっといてメイシンさんとイチャイチャしない。……早く助ける」
「だっ、誰がメイシンなんかとイチャイチャしてるってんだ!」
「そ、そうネ。ワタシ、タカシなんて興味ないネ。ホントホント」
「……ふん。……いいもん。このまま学校行く」
猫を多数引き連れて、ちなみが学校へ向け発進した。
「待て待て待て! そのまま学校行ったら大騒ぎになるぞ!」
そして怒られるのはたぶん俺。畜生。
「しかし、これ猫取り除くの無理だぞ。剥がすそばから取り付いてるし」
「そうネ……ちょと無理ぽいネ」
メイシンと二人してちなみから猫を除去するが、状況は芳しくない。剥がすたびに手噛まれるし。俺だけ。
「もう脱げ。イカ着ぐるみで注意を逸らしてる間に急いで学校へ行くしかない」
「……無理。……この下、水着」
「なんでだよっ!?」
「今日、体育が水泳だからネ。ワタシも着てるよ、ホラ」
メイシンが制服をずらし、水着を見せた。スク水の魔力で一瞬正気を失うが、超頑張って理性を保つ。
「てーかおまえら下に水着着てくるって、小学生か」
ちなみとメイシンからダブルつっこみを受ける。メイシンのつっこみが妙に痛い。謎の中国拳法め。
「いててて……しょうがねえだろ、いいから脱げ!」
ちなみの着ぐるみに手をかけ、無理やり脱がす。
「いーやー、やーめーてー」
「ええい、じたばたすんなこのアマ!」
「助けてー、お母さーん」
「た、タカシやめるね! こんな道端でなんてことするネ! 大変ネ!」
メイシンがどっか行ったけど、それどころじゃない。今はちなみを脱がせるのが最優先だ!
「うう……せめて、優しくして……」
「へっへっ、随分としおらしくなったじゃねぇか。なぁ?」
隣にいる青っぽい制服に身を包んだおっさんに話しかける。
「キミ、ちょっと署まで来てもらおうか」
あれ? 俺、善意でやったんだよ? そこでしたり顔してるメイシンさん、どう思う?
あくびしながら登校してると、ちなみの声が聞こえた。
「おーっす、おはよちなみ。何が困る……ん」
イカの格好をしたちなみが、何十匹という猫に取り囲まれていた。にゃーにゃーうるさい。
「……あ、タカシ。……早く助ける」
「……えーっと、何やってんだ?」
「……猫に……からまれた」
そう言ってる今も、猫がイカの足に噛み付いている。
「……困った。……猫、好きなのに」
「しかし、すごいな。十本の足全部に噛みついてんのか? 猫まみれだな」
「……これ、足は本物のイカ使ってる。……猫が食べたら、腰抜かす」
「いや、大丈夫だ。単に消化が悪くて腹壊した猫見て、昔の人が腰を抜かしたと勘違いしたらしいぞ。ただの迷信だ」
「呼んだカ?」
突然、俺の脇からメイシンが現れた。
「うおっ! なんつータイミングで出てくんだよ! メイシン違いだ! ……しかし、おまえまだチャイナ服か。エロいな」
「エロくない! エロい思う方がエロいネ! それより猫、可愛いネ。猫、猫~♪」
「食うなよ」
「食べないネ! 中国人なんでも食べる思たら大間違いネ! 中国で父さん食べてたけど」
メイシンの家には近づかないよう心に誓う。
「……えい」
顔に猫を貼り付けられた。その猫がまた爪を立てるわけで大変痛い。
「なにすんだよ!」
猫をはがしながら怒鳴ると、ちなみは不満そうに口を尖らせた。
「……私のことほっといてメイシンさんとイチャイチャしない。……早く助ける」
「だっ、誰がメイシンなんかとイチャイチャしてるってんだ!」
「そ、そうネ。ワタシ、タカシなんて興味ないネ。ホントホント」
「……ふん。……いいもん。このまま学校行く」
猫を多数引き連れて、ちなみが学校へ向け発進した。
「待て待て待て! そのまま学校行ったら大騒ぎになるぞ!」
そして怒られるのはたぶん俺。畜生。
「しかし、これ猫取り除くの無理だぞ。剥がすそばから取り付いてるし」
「そうネ……ちょと無理ぽいネ」
メイシンと二人してちなみから猫を除去するが、状況は芳しくない。剥がすたびに手噛まれるし。俺だけ。
「もう脱げ。イカ着ぐるみで注意を逸らしてる間に急いで学校へ行くしかない」
「……無理。……この下、水着」
「なんでだよっ!?」
「今日、体育が水泳だからネ。ワタシも着てるよ、ホラ」
メイシンが制服をずらし、水着を見せた。スク水の魔力で一瞬正気を失うが、超頑張って理性を保つ。
「てーかおまえら下に水着着てくるって、小学生か」
ちなみとメイシンからダブルつっこみを受ける。メイシンのつっこみが妙に痛い。謎の中国拳法め。
「いててて……しょうがねえだろ、いいから脱げ!」
ちなみの着ぐるみに手をかけ、無理やり脱がす。
「いーやー、やーめーてー」
「ええい、じたばたすんなこのアマ!」
「助けてー、お母さーん」
「た、タカシやめるね! こんな道端でなんてことするネ! 大変ネ!」
メイシンがどっか行ったけど、それどころじゃない。今はちなみを脱がせるのが最優先だ!
「うう……せめて、優しくして……」
「へっへっ、随分としおらしくなったじゃねぇか。なぁ?」
隣にいる青っぽい制服に身を包んだおっさんに話しかける。
「キミ、ちょっと署まで来てもらおうか」
あれ? 俺、善意でやったんだよ? そこでしたり顔してるメイシンさん、どう思う?
【ライムグリーンアルビノベルツノガエルちなみん】
2010年05月24日
雨が降る日はうっとうしい。特に、玄関先に蛙っぽいちなみがいるような朝は、格別だ。
「……ライムグリーンアルビノベルツノガエルです。けろけろ」
「長い! 長すぎる! ええい粘液を出すな!」
どこまで凝ってんだ。その無駄な努力を別の場所で生かせ。
「……ライムグリーンアルビノベルツノガエルは、待ち伏せして餌を食べます。……ですので、待ち伏せしてます」
「……分かった。分かったけど、名前長い。もうちょっと短くしろ」
「……ライムたん、とか?」
なんだ、そのそこらのダメ漫画に出てきそうな名前は。あと、たんとか言うな。
「……悪くないです。今日からライムたんです。……つまり、ライムちなみたん?」
「やめて。お願い」
「……けろけろ」
不満そうにちなみは鳴いた。気に入ってたのか。
「もういいから学校行くぞ……」
朝っぱらから疲れ果てた。ちなみの横を通り過ぎて玄関を抜けようとしたら、視界に端に赤い何かが飛び込んできた。
「ん?」
その赤い何かは俺の体に巻きつき、かなりの力でちなみの方へ引っ張った。そして、俺は蛙に食われた。
「な、なんだ? 何が起きた?」
「……捕獲成功、です」
ぎゅっ、とちなみが俺の胸に抱きつく。
「……ライムちなみたんには、舌を高速で射出し、目標を捕獲する機能があるのです」
だから、なんでそんな無駄に凄いんだよ。すりすりしてないで聞いて。
「……この着ぐるみはかなり大きいので、二人入ってもへっちゃらへーです」
「……そっかぁ。へっちゃらへーかぁ。うんうん。馬鹿」
ちなみは、ぷーと頬を膨らませた。
「……馬鹿じゃないです。馬鹿なのはタカシの方です。最近構ってくれないから……ちょっと、つまんないです」
「あー……最近補習ばっかだったからな。でも、昨日で補習も終わったから、今日からまた遊べるぞ」
「……じゃ、放課後どこか遊びに行きましょう。……当然、タカシのおごりで」
財布の中身を思い出し軽く冷や汗が出たが、ちなみを放っておいた罰だと無理やり思い込み、俺は笑ってうなずいた。
「……ライムグリーンアルビノベルツノガエルです。けろけろ」
「長い! 長すぎる! ええい粘液を出すな!」
どこまで凝ってんだ。その無駄な努力を別の場所で生かせ。
「……ライムグリーンアルビノベルツノガエルは、待ち伏せして餌を食べます。……ですので、待ち伏せしてます」
「……分かった。分かったけど、名前長い。もうちょっと短くしろ」
「……ライムたん、とか?」
なんだ、そのそこらのダメ漫画に出てきそうな名前は。あと、たんとか言うな。
「……悪くないです。今日からライムたんです。……つまり、ライムちなみたん?」
「やめて。お願い」
「……けろけろ」
不満そうにちなみは鳴いた。気に入ってたのか。
「もういいから学校行くぞ……」
朝っぱらから疲れ果てた。ちなみの横を通り過ぎて玄関を抜けようとしたら、視界に端に赤い何かが飛び込んできた。
「ん?」
その赤い何かは俺の体に巻きつき、かなりの力でちなみの方へ引っ張った。そして、俺は蛙に食われた。
「な、なんだ? 何が起きた?」
「……捕獲成功、です」
ぎゅっ、とちなみが俺の胸に抱きつく。
「……ライムちなみたんには、舌を高速で射出し、目標を捕獲する機能があるのです」
だから、なんでそんな無駄に凄いんだよ。すりすりしてないで聞いて。
「……この着ぐるみはかなり大きいので、二人入ってもへっちゃらへーです」
「……そっかぁ。へっちゃらへーかぁ。うんうん。馬鹿」
ちなみは、ぷーと頬を膨らませた。
「……馬鹿じゃないです。馬鹿なのはタカシの方です。最近構ってくれないから……ちょっと、つまんないです」
「あー……最近補習ばっかだったからな。でも、昨日で補習も終わったから、今日からまた遊べるぞ」
「……じゃ、放課後どこか遊びに行きましょう。……当然、タカシのおごりで」
財布の中身を思い出し軽く冷や汗が出たが、ちなみを放っておいた罰だと無理やり思い込み、俺は笑ってうなずいた。
【シャケちなみん】
2010年05月23日
今日は待ちに待った水泳だ。この学校は男女混合で体育の授業を行うため、スク水見放題という天国。
なのに、一番スク水姿を見たいちなみはなんでシャケですか。
「……シャケです。しゃーしゃー」
しゃーしゃー言いながら悠々とプールを泳ぐシャケに、ビート板を投げる。ヒット。
「……何するんですか」
ゆるゆるとこっちにやってきたシャケに怒鳴る。
「学校の授業でシャケになるとは何事だ!」
とりあえず怒りの理由は隠しておく。ほら、あんまり変態なのを公表するのもどうかと思うし。
「……スクール水着が見れないからって怒るのは、どうかと思います」
2秒で看破された。
「ち、違うヨ? べ、べべ、別にスク水が見れないから怒ってるんじゃないヨ?」
「……嘘へた。ぷぷー」
殴ろうとしたら潜水された。チクショウ、追いかけてやる! 俺はプールに飛び込んだ。
「……うあ、追ってきた」
「河童の川流れと呼ばれた俺の実力、見せてやるぜ!」
シャケの尻尾を河童クロールで追っていると、突然足がつった。抗いようもなく、水中に沈む。
いかん、溺れる。手をかいても、掴めるのは水だけ。まずい。マジでまずい。
薄れゆく意識の中、ちなみが必死で俺の方に向かっているような気がした。
目が覚めたら、保健室のベッドの上だった。傍らに、目を赤くした制服姿のちなみがいる。
「……馬鹿。ホントに馬鹿」
そう言って、ちなみは俺に抱きついた。
「ち、ちなみ?」
「……死んだらどうするの。怖かったよ。……本当に怖かったよ」
カタカタと小さく震えるちなみの肩に、俺は自分がどれだけ馬鹿なことをしたか今更ながら気づいた。
「……悪かった。心配かけたな」
静かに嗚咽を繰り返すちなみが落ち着くまで、俺はずっとちなみを抱いていた。
……もっとも、俺の様子を見に来た級友たちがこの光景を見て大騒ぎするまでの間だが。
なのに、一番スク水姿を見たいちなみはなんでシャケですか。
「……シャケです。しゃーしゃー」
しゃーしゃー言いながら悠々とプールを泳ぐシャケに、ビート板を投げる。ヒット。
「……何するんですか」
ゆるゆるとこっちにやってきたシャケに怒鳴る。
「学校の授業でシャケになるとは何事だ!」
とりあえず怒りの理由は隠しておく。ほら、あんまり変態なのを公表するのもどうかと思うし。
「……スクール水着が見れないからって怒るのは、どうかと思います」
2秒で看破された。
「ち、違うヨ? べ、べべ、別にスク水が見れないから怒ってるんじゃないヨ?」
「……嘘へた。ぷぷー」
殴ろうとしたら潜水された。チクショウ、追いかけてやる! 俺はプールに飛び込んだ。
「……うあ、追ってきた」
「河童の川流れと呼ばれた俺の実力、見せてやるぜ!」
シャケの尻尾を河童クロールで追っていると、突然足がつった。抗いようもなく、水中に沈む。
いかん、溺れる。手をかいても、掴めるのは水だけ。まずい。マジでまずい。
薄れゆく意識の中、ちなみが必死で俺の方に向かっているような気がした。
目が覚めたら、保健室のベッドの上だった。傍らに、目を赤くした制服姿のちなみがいる。
「……馬鹿。ホントに馬鹿」
そう言って、ちなみは俺に抱きついた。
「ち、ちなみ?」
「……死んだらどうするの。怖かったよ。……本当に怖かったよ」
カタカタと小さく震えるちなみの肩に、俺は自分がどれだけ馬鹿なことをしたか今更ながら気づいた。
「……悪かった。心配かけたな」
静かに嗚咽を繰り返すちなみが落ち着くまで、俺はずっとちなみを抱いていた。
……もっとも、俺の様子を見に来た級友たちがこの光景を見て大騒ぎするまでの間だが。