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2024年11月24日
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【お腹が減ったのを我慢してるツンデレ】
2010年02月08日
昼になったので飯をむしゃむしゃ食ってたら、何やら視線がチクチク痛い。元を辿っていくと、羨ましそうな、憎々しそうな目で隣の席から俺を睨んでる依音がいた。
「……欲しいのか?」
「いりません」
そう言って、依音はぷいと視線を逸らした。それならそれでいいやと思い再びむしゃむしゃしてたら、またしてもチクチク視線が。
「や、欲しいのなら別にやるから、そんなじーっと見るねい。気になって落ち着いて食えやしない」
「欲しいなんて一言も言ってません。第一、お腹空いてませんし」
まるでタイミングを見計らったかのように、依音の腹から重低音が響いた。
「これでも空いてないと」
「……空いてません」
心持ち頬が赤いのは、自分でも説得力がないと気づいているからなのだろう。
「んーと。弁当忘れたのか?」
「持ってきてます」
「じゃあ、なんで食わないんだ?」
「うるさいです。どっか行ってください」
「ここ、俺の席」
「奇遇ですね、私の席も残念なことに、ここです」
「…………」
「……なんですか」
「……や、別になんでも。とにかく、落ち着いて食えないからこっち見るな」
「頼まれても見ませんよ」
「そいつは重畳」
再びむしゃむしゃ弁当食ってたら、またまた先の痛みを伴う視線が。
「だーっ! お前の視線はなんか痛いんだよ!」
「見てません」
「見てたっての!」
「……自意識過剰(ぼそり)」
「聞こえたよ!?」
「聞こえるように言いましたから」
「ああもうっ、何でもいいからこっちを見るな。もしくは、俺の弁当を食え。どーせ忘れたんだろ?」
「だから、持ってきてます。ほらこの通り」
そう言って、依音は机の横にかけてあったセカンドバッグから弁当の包みを取り出した。
「んじゃ、食えよ」
「食べません」
そして、再びバッグに戻してしまった。
「……えーと。ひょっとしてダイエット中?」
「超うるさいです。二度とその口を開かないよう提言します。なんでしたら縫いましょうか?」
「超結構です。結構と言っている。言っているのだからソーイングセットを出すなッ!」
「残念です……」
女性の嗜みとしては大変結構なことだが、その技術が俺を苦しめるのであれば話は別だ。
「なんだ、ただのダイエットかよ……」
「うるさいと言ったはずです」
「だから、イチイチ針を取り出すなッ! 怖えよっ!」
「知りません」
「まったく……女ってのは本当ダイエットが好きだな。そんな痩せたいものか?」
「当たり前です。冬は太りやすくて大変なんです。お鍋にお餅にミカンに猫さん。ぷくぷくです」
「猫食うの!? 怖っ、依音怖あっ!」
「食べませんッ! 猫さんがコタツにいるのでコタツから脱出不能になり、ぼんやりミカン食べちゃうんですっ!」
「だよなあ。あー怖かった」
「貴方の想像の方が怖いです。まったく……」
「で、結局ダイエットと」
「あ。……誘導尋問ですね。酷いです。悪魔です。悪魔は塩を口に詰めて縫います」
「だから、故あるごとに俺を縫おうとするなッ!」
針を片手に俺をぬいぐるみにしようとする依音から離れる。
「むー……」
「怒るな。てか、どこが太ってんだ?」
「女性にそんなこと聞く時点で、モテないことが丸わかりです」
「うるせえ」
「とにかく、そういう訳なんでご飯は食べないんです。分かったら一人で食べててください」
言うだけ言って、依音は再び顔を逸らした。
「んー、まあそういうことなら分かったが……けどなあ」
「なんですか。まだ何か用ですか」
面倒くさそうに、依音は視線だけこちらに向けた。
「いやな、お前くらい痩せてて可愛い子でもダイエットしなきゃいけないなんて、女の子ってのは大変だなーって思っただけ」
「っ!? いっ、いきなり何を言ってるんですか、貴方は。頭おかしくなったんですか。なったんですね」
音がしそうな勢いで顔を真っ赤にすると、依音は早口に俺への悪口をまくし立てた。
「…………」
「……な、なんですか」
「依音のそーゆーところ、可愛いよな」
「からかってますね!? からかってるんでしょう! ええそりゃもうからかってるに決まってます! 針です、針の出番です!」
「違う出番じゃないそれは女の子の道具であり武器じゃないっ!」
俺を針山にしようとする依音から離れる。
「うー……」
「怒るな。とにかくさ、俺から見たらダイエットとか必要ないようにしか見えないから、飯食え飯。仮にダイエットするにしても、絶食なんてダメだ」
「……偉そうですね」
「偉いんだ」
「……偉いなら、しょうがないです。お弁当、食べてやります」
「ん」
隣で弁当箱の包みを開けるのを見届け、今度はこちらの弁当を食う。
「……まあ、せっかくなんで一緒に食べてやります」
ずりずりとイスを寄せ、依音が俺の机にやってきた。
「……な、なんですか」
「そーゆーところも可愛いよな」
「針ですッ!」
「混乱したら針を出す癖どうにかしろっ!」
針を片手に暴れる依音を押さえたら、チャイムが鳴った。昼休み終わった。
「……貴方のせいで、ご飯食べれませんでした」
「俺のせい!?」
こっくりうなずく依音の横で、ひたすら驚く俺だった。すげえ責任転嫁。
「……欲しいのか?」
「いりません」
そう言って、依音はぷいと視線を逸らした。それならそれでいいやと思い再びむしゃむしゃしてたら、またしてもチクチク視線が。
「や、欲しいのなら別にやるから、そんなじーっと見るねい。気になって落ち着いて食えやしない」
「欲しいなんて一言も言ってません。第一、お腹空いてませんし」
まるでタイミングを見計らったかのように、依音の腹から重低音が響いた。
「これでも空いてないと」
「……空いてません」
心持ち頬が赤いのは、自分でも説得力がないと気づいているからなのだろう。
「んーと。弁当忘れたのか?」
「持ってきてます」
「じゃあ、なんで食わないんだ?」
「うるさいです。どっか行ってください」
「ここ、俺の席」
「奇遇ですね、私の席も残念なことに、ここです」
「…………」
「……なんですか」
「……や、別になんでも。とにかく、落ち着いて食えないからこっち見るな」
「頼まれても見ませんよ」
「そいつは重畳」
再びむしゃむしゃ弁当食ってたら、またまた先の痛みを伴う視線が。
「だーっ! お前の視線はなんか痛いんだよ!」
「見てません」
「見てたっての!」
「……自意識過剰(ぼそり)」
「聞こえたよ!?」
「聞こえるように言いましたから」
「ああもうっ、何でもいいからこっちを見るな。もしくは、俺の弁当を食え。どーせ忘れたんだろ?」
「だから、持ってきてます。ほらこの通り」
そう言って、依音は机の横にかけてあったセカンドバッグから弁当の包みを取り出した。
「んじゃ、食えよ」
「食べません」
そして、再びバッグに戻してしまった。
「……えーと。ひょっとしてダイエット中?」
「超うるさいです。二度とその口を開かないよう提言します。なんでしたら縫いましょうか?」
「超結構です。結構と言っている。言っているのだからソーイングセットを出すなッ!」
「残念です……」
女性の嗜みとしては大変結構なことだが、その技術が俺を苦しめるのであれば話は別だ。
「なんだ、ただのダイエットかよ……」
「うるさいと言ったはずです」
「だから、イチイチ針を取り出すなッ! 怖えよっ!」
「知りません」
「まったく……女ってのは本当ダイエットが好きだな。そんな痩せたいものか?」
「当たり前です。冬は太りやすくて大変なんです。お鍋にお餅にミカンに猫さん。ぷくぷくです」
「猫食うの!? 怖っ、依音怖あっ!」
「食べませんッ! 猫さんがコタツにいるのでコタツから脱出不能になり、ぼんやりミカン食べちゃうんですっ!」
「だよなあ。あー怖かった」
「貴方の想像の方が怖いです。まったく……」
「で、結局ダイエットと」
「あ。……誘導尋問ですね。酷いです。悪魔です。悪魔は塩を口に詰めて縫います」
「だから、故あるごとに俺を縫おうとするなッ!」
針を片手に俺をぬいぐるみにしようとする依音から離れる。
「むー……」
「怒るな。てか、どこが太ってんだ?」
「女性にそんなこと聞く時点で、モテないことが丸わかりです」
「うるせえ」
「とにかく、そういう訳なんでご飯は食べないんです。分かったら一人で食べててください」
言うだけ言って、依音は再び顔を逸らした。
「んー、まあそういうことなら分かったが……けどなあ」
「なんですか。まだ何か用ですか」
面倒くさそうに、依音は視線だけこちらに向けた。
「いやな、お前くらい痩せてて可愛い子でもダイエットしなきゃいけないなんて、女の子ってのは大変だなーって思っただけ」
「っ!? いっ、いきなり何を言ってるんですか、貴方は。頭おかしくなったんですか。なったんですね」
音がしそうな勢いで顔を真っ赤にすると、依音は早口に俺への悪口をまくし立てた。
「…………」
「……な、なんですか」
「依音のそーゆーところ、可愛いよな」
「からかってますね!? からかってるんでしょう! ええそりゃもうからかってるに決まってます! 針です、針の出番です!」
「違う出番じゃないそれは女の子の道具であり武器じゃないっ!」
俺を針山にしようとする依音から離れる。
「うー……」
「怒るな。とにかくさ、俺から見たらダイエットとか必要ないようにしか見えないから、飯食え飯。仮にダイエットするにしても、絶食なんてダメだ」
「……偉そうですね」
「偉いんだ」
「……偉いなら、しょうがないです。お弁当、食べてやります」
「ん」
隣で弁当箱の包みを開けるのを見届け、今度はこちらの弁当を食う。
「……まあ、せっかくなんで一緒に食べてやります」
ずりずりとイスを寄せ、依音が俺の机にやってきた。
「……な、なんですか」
「そーゆーところも可愛いよな」
「針ですッ!」
「混乱したら針を出す癖どうにかしろっ!」
針を片手に暴れる依音を押さえたら、チャイムが鳴った。昼休み終わった。
「……貴方のせいで、ご飯食べれませんでした」
「俺のせい!?」
こっくりうなずく依音の横で、ひたすら驚く俺だった。すげえ責任転嫁。
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【ツンデレに勝負を挑まれたら】
2010年02月05日
学校から帰宅中に猫と出くわしたので小一時間ほど遊ぼうかとしゃがんだら、その瞬間に逃げられた。
「…………」
「あーっはっはっはっは! すっごいおまぬけな奴はっけーん!」
ちょっと泣きそうになってたら、頭上から声がした。立ち上がって顔を上げると、塀の上から俺を見下ろす影が。最近仲良くなった瑠姫だ。
「何の話だか、俺にはちっとも」
「あたし見てたもんねー。逃げられてやんの。ばーかばーか」
両手で口の両端を引っ張り、瑠姫はべろべろと舌を出して俺を馬鹿にした。
「えい」
「ぎにゃっ!?」
悔しいので非常食のミカンを投げつけてやる。思い切り顔に当たった。愉快痛快。
「ううううう……何すンだ、ばか!」
「おすそ分け」
「おすそ分けられてない! ミカンどっか行った!」
「鈍いなあ……ほれ、も一個やるよ」
ぶつけるのではなく、今度は渡すために瑠姫にミカンを投げる。ミカンは放物線を描き、すっぽりと瑠姫の手の平に収まった。
「最初っからそうやって投げろ、バカ。しゃむしゃむ」
皮のまま食べやがった。化け物か。
「うにゃあああっ! まずい!」
化け物ではなく馬鹿だった。
「皮は剥け」
「騙したなあ!」
「騙してねえ」
塀から飛び降り、瑠姫は怒りに燃える瞳で俺を睨んだ。ちなみに、降りる時にスカートが捲れてパンツが丸見えになったのは内緒だ。しまぱんだった。
「ううううう……こーなったらショーブだ!」
「いや、しまぱんだ」
「っ!? みっ、見たなあ!?」
瑠姫は顔を真っ赤にさせ、スカートをばっと押さえた。恨みがましい目で俺を睨んでいる。
「いや、その、もっと見てえ」
どうして俺はテンパると思ってることが口から出るのでしょう。
「おっ、オマエ、オマエなあッ! もー許さないかンな!」
そう言うと、瑠姫は深く深呼吸した。
「……いーか、今からあたしがこの辺の猫を呼ぶから、一匹でもいーからこの鈴を付けられたらオマエの勝ち、無理だったらあたしの勝ち。いーな!?」
「よくない。勝負する意味が分からないし、勝負の内容も意味不明だし、イカサマする余地がないし」
「イカサマすンなッ! いいな? いくぞ! ……すぅぅぅぅ、にゃーッ!!!」
「にゃー(笑)」
「ばっ、馬鹿にすンなッ! ほら、見てみろ!」
どこにこんないたのか不思議に思うほど、道から塀から路地から猫たちが大挙してやってきた。皆一様に瑠姫に向かってにゃーにゃー鳴いている。
「……ええと、お前って猫の国のお姫様?」
「ま、そのようなモンだ。ほらほら、早くやンないと時間なくなるゾ?」
「え、時間制限アリ?」
「あったりまえダロ! はい、開始ー!」
投げられた鈴を受け取る。しょうがない、やってやるか。ま、これだけいるんだ、一匹くらい鈍い奴がいるだろ。
「……おーい、まだー?」
「まだ!」
「ふぁあああああ……ねむー」
かれこれ20分ほど格闘しているが、捕まえようと前傾姿勢をとった瞬間に、猫たちは警戒しやがるのでちっとも捕まえられない。俊敏……そう、奴らは俊敏だッ!
「なんかもう疲れた。こいついいや」
「にゃ?」
塀の上にのぼり、欠伸してた瑠姫の腕に鈴をつける。
「あたし、猫じゃないゾ!」
「似たようなもんだろ。ほーりほり、ノドくりくり」
「こンなことされてもゴロゴロ言わない!」
「む。なれば、頭なでなで」
瑠姫の頭に手を乗せ、優しく優しくなでる。
「にゃ……べ、別にこンなの、嬉しくないし」
「だよなあ」
「にゃ……」
手をどけると、瑠姫は物足りなさそうな目で俺の手を追いかけた。
「もっとしてほしかったのか?」
「ぜ、全然! ちっとも! と、とにかく、時間切れ! オマエの負け!」
「いやいや、時間ギリギリに鈴つけたぞ」
「あたしについてる! リンリン鳴ってる! 猫についてないから、あたしの勝ち!」
「しかし、俺の見識では瑠姫はかなりの猫力を保持しているので、猫の範疇に入れても問題ないぞ?」
「知るか、バカ! オマエの負け! けってー!」
「ぶーぶー」
「ぶーぶーウルサイ。じゃ、罰ゲームな」
「罰ゲーム? 聞いてないぞ」
「最初に聞かなかったオマエが悪いンだゾ!」
「なんということだ! このままでは罰ゲームという名の処刑が俺に待ち受けている! やられる前にやれ、という格言もある。いっそ……?」
「早とちりすンな、バカ! そンな酷いことしない! え、えとな、罰ゲームは……罰ゲームは……」
そう言ったきり、瑠姫はもじもじするばかりで言葉を続けようとはしなかった。一体なんだと言うんだろう。
……ん? さっきから、俺の手をじっと見てるような……。もしかして。
「なあ、瑠姫。ひょっとしてさ」
「にゃあ!? ちち違うゾ? あたしはなでなでなンてしてほしくないゾ!?」
「俺の手をもぎ取る算段をつけてたの?」
「…………」
「もぎ取るのはとても痛そうなので勘弁してください!」
「……ああ、オマエ、バカだったな。忘れてた」
失敬な。
「……あっ、そだ! ……こほん。じゃ、じゃあ、もぎ取られたくなかったら、あたしをなでなでシロ!」
「…………」
「なっ、なンだその目は! べっ、別になでなでが気持ちよかったンじゃないからな!」
……まあ、いっか。
「じゃ、なでなでするか?」
「うんうん、うんうんうん!」
木に体を預けてなでなで体勢を取ると、瑠姫は目をキラキラと輝かせ、ぶんぶんうなずいた。
「おいで、瑠姫」
「にゃっ♪ ……あっ、い、言っとくケドな、罰ゲームだかンなッ! したくてしてンじゃないからな!」
そっちがもちかけた罰ゲームだろうに、とは思ったが、口には出さず苦笑する。
「分かってるって。それじゃ、なでなでなで」
「にゅ、ふにゅ……」
俺に体を預け、瑠姫は気持ちよさそうに目を細め、ふにゅふにゅ言った。
『ね、見てアレ』
『うわ、すっごいカップルもいたものね』
「ん? ……うあ」
下から聞こえる声に視線をそちらに向けると、歩いてる学生たちが俺たちをじろじろ見まくってた。そういやここは通学路にあるただの塀の上だった。
「る、瑠姫、終わり、終わりだ」
「まだー。もっとー」
ゴロゴロという音が聞こえそうなほど心地よさそうな顔で俺を引き止める瑠姫。きっと周囲の声も耳に入ってないに違いない。
「うう……そういう罰ゲームなのか?」
衆人環視の中、瑠姫が満足するまで抱っこしたままなでなでし続ける俺だった。超恥ずかしかった。
「…………」
「あーっはっはっはっは! すっごいおまぬけな奴はっけーん!」
ちょっと泣きそうになってたら、頭上から声がした。立ち上がって顔を上げると、塀の上から俺を見下ろす影が。最近仲良くなった瑠姫だ。
「何の話だか、俺にはちっとも」
「あたし見てたもんねー。逃げられてやんの。ばーかばーか」
両手で口の両端を引っ張り、瑠姫はべろべろと舌を出して俺を馬鹿にした。
「えい」
「ぎにゃっ!?」
悔しいので非常食のミカンを投げつけてやる。思い切り顔に当たった。愉快痛快。
「ううううう……何すンだ、ばか!」
「おすそ分け」
「おすそ分けられてない! ミカンどっか行った!」
「鈍いなあ……ほれ、も一個やるよ」
ぶつけるのではなく、今度は渡すために瑠姫にミカンを投げる。ミカンは放物線を描き、すっぽりと瑠姫の手の平に収まった。
「最初っからそうやって投げろ、バカ。しゃむしゃむ」
皮のまま食べやがった。化け物か。
「うにゃあああっ! まずい!」
化け物ではなく馬鹿だった。
「皮は剥け」
「騙したなあ!」
「騙してねえ」
塀から飛び降り、瑠姫は怒りに燃える瞳で俺を睨んだ。ちなみに、降りる時にスカートが捲れてパンツが丸見えになったのは内緒だ。しまぱんだった。
「ううううう……こーなったらショーブだ!」
「いや、しまぱんだ」
「っ!? みっ、見たなあ!?」
瑠姫は顔を真っ赤にさせ、スカートをばっと押さえた。恨みがましい目で俺を睨んでいる。
「いや、その、もっと見てえ」
どうして俺はテンパると思ってることが口から出るのでしょう。
「おっ、オマエ、オマエなあッ! もー許さないかンな!」
そう言うと、瑠姫は深く深呼吸した。
「……いーか、今からあたしがこの辺の猫を呼ぶから、一匹でもいーからこの鈴を付けられたらオマエの勝ち、無理だったらあたしの勝ち。いーな!?」
「よくない。勝負する意味が分からないし、勝負の内容も意味不明だし、イカサマする余地がないし」
「イカサマすンなッ! いいな? いくぞ! ……すぅぅぅぅ、にゃーッ!!!」
「にゃー(笑)」
「ばっ、馬鹿にすンなッ! ほら、見てみろ!」
どこにこんないたのか不思議に思うほど、道から塀から路地から猫たちが大挙してやってきた。皆一様に瑠姫に向かってにゃーにゃー鳴いている。
「……ええと、お前って猫の国のお姫様?」
「ま、そのようなモンだ。ほらほら、早くやンないと時間なくなるゾ?」
「え、時間制限アリ?」
「あったりまえダロ! はい、開始ー!」
投げられた鈴を受け取る。しょうがない、やってやるか。ま、これだけいるんだ、一匹くらい鈍い奴がいるだろ。
「……おーい、まだー?」
「まだ!」
「ふぁあああああ……ねむー」
かれこれ20分ほど格闘しているが、捕まえようと前傾姿勢をとった瞬間に、猫たちは警戒しやがるのでちっとも捕まえられない。俊敏……そう、奴らは俊敏だッ!
「なんかもう疲れた。こいついいや」
「にゃ?」
塀の上にのぼり、欠伸してた瑠姫の腕に鈴をつける。
「あたし、猫じゃないゾ!」
「似たようなもんだろ。ほーりほり、ノドくりくり」
「こンなことされてもゴロゴロ言わない!」
「む。なれば、頭なでなで」
瑠姫の頭に手を乗せ、優しく優しくなでる。
「にゃ……べ、別にこンなの、嬉しくないし」
「だよなあ」
「にゃ……」
手をどけると、瑠姫は物足りなさそうな目で俺の手を追いかけた。
「もっとしてほしかったのか?」
「ぜ、全然! ちっとも! と、とにかく、時間切れ! オマエの負け!」
「いやいや、時間ギリギリに鈴つけたぞ」
「あたしについてる! リンリン鳴ってる! 猫についてないから、あたしの勝ち!」
「しかし、俺の見識では瑠姫はかなりの猫力を保持しているので、猫の範疇に入れても問題ないぞ?」
「知るか、バカ! オマエの負け! けってー!」
「ぶーぶー」
「ぶーぶーウルサイ。じゃ、罰ゲームな」
「罰ゲーム? 聞いてないぞ」
「最初に聞かなかったオマエが悪いンだゾ!」
「なんということだ! このままでは罰ゲームという名の処刑が俺に待ち受けている! やられる前にやれ、という格言もある。いっそ……?」
「早とちりすンな、バカ! そンな酷いことしない! え、えとな、罰ゲームは……罰ゲームは……」
そう言ったきり、瑠姫はもじもじするばかりで言葉を続けようとはしなかった。一体なんだと言うんだろう。
……ん? さっきから、俺の手をじっと見てるような……。もしかして。
「なあ、瑠姫。ひょっとしてさ」
「にゃあ!? ちち違うゾ? あたしはなでなでなンてしてほしくないゾ!?」
「俺の手をもぎ取る算段をつけてたの?」
「…………」
「もぎ取るのはとても痛そうなので勘弁してください!」
「……ああ、オマエ、バカだったな。忘れてた」
失敬な。
「……あっ、そだ! ……こほん。じゃ、じゃあ、もぎ取られたくなかったら、あたしをなでなでシロ!」
「…………」
「なっ、なンだその目は! べっ、別になでなでが気持ちよかったンじゃないからな!」
……まあ、いっか。
「じゃ、なでなでするか?」
「うんうん、うんうんうん!」
木に体を預けてなでなで体勢を取ると、瑠姫は目をキラキラと輝かせ、ぶんぶんうなずいた。
「おいで、瑠姫」
「にゃっ♪ ……あっ、い、言っとくケドな、罰ゲームだかンなッ! したくてしてンじゃないからな!」
そっちがもちかけた罰ゲームだろうに、とは思ったが、口には出さず苦笑する。
「分かってるって。それじゃ、なでなでなで」
「にゅ、ふにゅ……」
俺に体を預け、瑠姫は気持ちよさそうに目を細め、ふにゅふにゅ言った。
『ね、見てアレ』
『うわ、すっごいカップルもいたものね』
「ん? ……うあ」
下から聞こえる声に視線をそちらに向けると、歩いてる学生たちが俺たちをじろじろ見まくってた。そういやここは通学路にあるただの塀の上だった。
「る、瑠姫、終わり、終わりだ」
「まだー。もっとー」
ゴロゴロという音が聞こえそうなほど心地よさそうな顔で俺を引き止める瑠姫。きっと周囲の声も耳に入ってないに違いない。
「うう……そういう罰ゲームなのか?」
衆人環視の中、瑠姫が満足するまで抱っこしたままなでなでし続ける俺だった。超恥ずかしかった。
【ツンデレと一緒にホームルームを受けたら】
2010年02月05日
今日のホームルームは文化祭で何をするか、という議題だ。結果、メイド喫茶をすることになった。
「あたし、食べるの専門!」
「早速頭の悪い発言をする奴がいたので誰かと思ったら、想像通り瑠姫だった。何の面白みもない結果に、思わず閉口してしまう」
思ったことを言ったら飛び蹴りが飛んできた。居並ぶ机を吹き飛ばし、ごろんごろん転がる。
「オマエ、シツレーだぞ!」
寝転ぶ俺の前で、瑠姫は仁王立ちした。丁度下から見上げる形になるので、スカートの中が丸見えで大変喜ばしい。
「特にしまぱんがいい。さらに言うなら、しまぱんに刻まれる一筋の線が俺の劣情を加速させる」
「ふにゃっ!? みっ、見るなバカッ!」
げしげし踏まれた。顔を。
「踏むな。その前に蹴るな。でもしまぱんを俺の顔に押し付ける刑罰なら喜んで受けるのでお願いします」
「うっさい! えっちバーカ変態!」
瑠姫は両手で口の両端を引っ張り、舌を出してべろべろした。子供か。
「委員長、こいつは人の顔を何の遠慮もなく踏むような悪漢なので、ケーキの味見役には是非この俺を」
「いいんちょー! こいつはあたしのパンツ覗くような変態だから、ケーキの味見はあたしに!」
「二人とも、廊下にいてね♪」
笑顔の委員長に圧倒され、二人してすごすご廊下に出る。
「うー……オマエのせいで怒られちゃったじゃんか! バーカバーカバーカ!」
瑠姫が俺の顔を両手で交互にチョップするので微妙に痛い。
「俺だけのせいではないと思うが」
「全部オマエのせーだ! オマエが変なこと言わなかったら、あたしがケーキ食べれたのに! うがー!」
チョップだけでは気が済まなかったのか、瑠姫は俺の手をがじがじかじりだした。微妙どころか、かなり痛え。
「俺が何も言わなくても、味見専門の係なんてものは存在しなかったと思うが。そして、俺が変なことを言うことを我慢できるはずがない」
「何をえばってんだ、バカ! うー……ケーキ、食べたかったのにぃ……」
よほど食べたかったのか、瑠姫の口の端から涎がこぼれだした。俺の手をかじってる最中なので、自然と俺の手が涎まみれ。
「瑠姫、涎が大変なことに」
「にゃ? ……うあ、オマエの手、べとべとだ。きちゃない」
瑠姫は嫌そうに口を離した。誰のせいだ、と思いながら、解放された手をべろべろ舐めまくる。
「いにゃあああ!? オマエ何やってんだ!?」
「これって間接キスだよなって言ったら」
「やめれーっ! あたしの涎食べるなっ!」
「ぺろぺろ。なんか甘い」
「感想言うにゃーッ!」
「二人ともうるさいッ!」
教室から出てきた委員長に怒られた。
「だってだっていいんちょー! こいつが変態っぽいことすんだもん!」
「いやいや、違うぞ瑠姫。変態っぽい、ではなく、変態行為そのもの、だッ!」
「余計悪いぃっ!」
格好つけて言ったのに怒られた。
「うー……いいんちょー、こいつ退学にできない?」
「そこまでの権限、残念ながら一学生にないわよ」
「そんにゃー……」
がっくりうなだれる瑠姫。そんな嫌か。
「大丈夫だぞ、瑠姫。そんなこともあろうかと、学業には力を入れている。先生からは優等生と見られているので、多少の悪行には目をつむってもらってるぞ!」
「コイツ最悪だ!」
「二人とも、これ以上騒ぐと千切るわよ♪」
瑠姫は自慢のツインテールを、俺はそけい部の中心をそれぞれ押さえながらコクコクうなずく。
「分かったならいいの。じゃ、この時間終わるまで廊下にいてね」
委員長が教室に入るのを見届け、二人して息を吐く。
「うー……オマエのせいで千切られるところだったじゃんか! バカ! もし千切られたらどーすんだ!」
「いやいや、お前の昆布は千切られても再生するが、俺の素敵棒は代替品がないんだぞ? 恐怖度が段違いだ」
「昆布じゃにゃー! かみ! オマエのなんて千切られちゃえ、ばか!」
「そうなったらオカマとして生きていく羽目になり、日銭を稼ぐため泣く泣くテレビに出演するなり大人気で億万長者になっちまうじゃねえか!」
「いいじゃん」
「ホントだ」
「にひー。切る?」
「勘弁してください」
「まーまーまー。遠慮するな?」
「勘弁しろと言っている!」
嬉しそうにつきまとってくる瑠姫から逃げるように、教室前の廊下をぐるぐる走る。
「バタバタうるさいッ!」
勢いよくドアを開け、委員長が顔を出した。いかん、かなり怒ってらっしゃる。
「瑠姫が抱いてくれってうるさくて」
「言ってないよ!?」
「……二人とも校庭ダッシュ! 10周!」
俺の言い訳が気に食わなかったのか、罰を与えられた。
「ええーっ!? そ、そんなのヤだよ! オマエもなんとか言えよ」
「瑠姫が俺の分までしてくれるらしい」
「言ってないよ!?」
「15周!」
増えた。このまま言い訳をしても増え続けるだけと思い、二人して校庭へ走る。
「ふにゃー……オマエ、絶対許さないかんなー……」
「ふふ、制服でマラソンとか。地獄だ」
へろへろになりながら校庭を走る俺と瑠姫だった。
「あたし、食べるの専門!」
「早速頭の悪い発言をする奴がいたので誰かと思ったら、想像通り瑠姫だった。何の面白みもない結果に、思わず閉口してしまう」
思ったことを言ったら飛び蹴りが飛んできた。居並ぶ机を吹き飛ばし、ごろんごろん転がる。
「オマエ、シツレーだぞ!」
寝転ぶ俺の前で、瑠姫は仁王立ちした。丁度下から見上げる形になるので、スカートの中が丸見えで大変喜ばしい。
「特にしまぱんがいい。さらに言うなら、しまぱんに刻まれる一筋の線が俺の劣情を加速させる」
「ふにゃっ!? みっ、見るなバカッ!」
げしげし踏まれた。顔を。
「踏むな。その前に蹴るな。でもしまぱんを俺の顔に押し付ける刑罰なら喜んで受けるのでお願いします」
「うっさい! えっちバーカ変態!」
瑠姫は両手で口の両端を引っ張り、舌を出してべろべろした。子供か。
「委員長、こいつは人の顔を何の遠慮もなく踏むような悪漢なので、ケーキの味見役には是非この俺を」
「いいんちょー! こいつはあたしのパンツ覗くような変態だから、ケーキの味見はあたしに!」
「二人とも、廊下にいてね♪」
笑顔の委員長に圧倒され、二人してすごすご廊下に出る。
「うー……オマエのせいで怒られちゃったじゃんか! バーカバーカバーカ!」
瑠姫が俺の顔を両手で交互にチョップするので微妙に痛い。
「俺だけのせいではないと思うが」
「全部オマエのせーだ! オマエが変なこと言わなかったら、あたしがケーキ食べれたのに! うがー!」
チョップだけでは気が済まなかったのか、瑠姫は俺の手をがじがじかじりだした。微妙どころか、かなり痛え。
「俺が何も言わなくても、味見専門の係なんてものは存在しなかったと思うが。そして、俺が変なことを言うことを我慢できるはずがない」
「何をえばってんだ、バカ! うー……ケーキ、食べたかったのにぃ……」
よほど食べたかったのか、瑠姫の口の端から涎がこぼれだした。俺の手をかじってる最中なので、自然と俺の手が涎まみれ。
「瑠姫、涎が大変なことに」
「にゃ? ……うあ、オマエの手、べとべとだ。きちゃない」
瑠姫は嫌そうに口を離した。誰のせいだ、と思いながら、解放された手をべろべろ舐めまくる。
「いにゃあああ!? オマエ何やってんだ!?」
「これって間接キスだよなって言ったら」
「やめれーっ! あたしの涎食べるなっ!」
「ぺろぺろ。なんか甘い」
「感想言うにゃーッ!」
「二人ともうるさいッ!」
教室から出てきた委員長に怒られた。
「だってだっていいんちょー! こいつが変態っぽいことすんだもん!」
「いやいや、違うぞ瑠姫。変態っぽい、ではなく、変態行為そのもの、だッ!」
「余計悪いぃっ!」
格好つけて言ったのに怒られた。
「うー……いいんちょー、こいつ退学にできない?」
「そこまでの権限、残念ながら一学生にないわよ」
「そんにゃー……」
がっくりうなだれる瑠姫。そんな嫌か。
「大丈夫だぞ、瑠姫。そんなこともあろうかと、学業には力を入れている。先生からは優等生と見られているので、多少の悪行には目をつむってもらってるぞ!」
「コイツ最悪だ!」
「二人とも、これ以上騒ぐと千切るわよ♪」
瑠姫は自慢のツインテールを、俺はそけい部の中心をそれぞれ押さえながらコクコクうなずく。
「分かったならいいの。じゃ、この時間終わるまで廊下にいてね」
委員長が教室に入るのを見届け、二人して息を吐く。
「うー……オマエのせいで千切られるところだったじゃんか! バカ! もし千切られたらどーすんだ!」
「いやいや、お前の昆布は千切られても再生するが、俺の素敵棒は代替品がないんだぞ? 恐怖度が段違いだ」
「昆布じゃにゃー! かみ! オマエのなんて千切られちゃえ、ばか!」
「そうなったらオカマとして生きていく羽目になり、日銭を稼ぐため泣く泣くテレビに出演するなり大人気で億万長者になっちまうじゃねえか!」
「いいじゃん」
「ホントだ」
「にひー。切る?」
「勘弁してください」
「まーまーまー。遠慮するな?」
「勘弁しろと言っている!」
嬉しそうにつきまとってくる瑠姫から逃げるように、教室前の廊下をぐるぐる走る。
「バタバタうるさいッ!」
勢いよくドアを開け、委員長が顔を出した。いかん、かなり怒ってらっしゃる。
「瑠姫が抱いてくれってうるさくて」
「言ってないよ!?」
「……二人とも校庭ダッシュ! 10周!」
俺の言い訳が気に食わなかったのか、罰を与えられた。
「ええーっ!? そ、そんなのヤだよ! オマエもなんとか言えよ」
「瑠姫が俺の分までしてくれるらしい」
「言ってないよ!?」
「15周!」
増えた。このまま言い訳をしても増え続けるだけと思い、二人して校庭へ走る。
「ふにゃー……オマエ、絶対許さないかんなー……」
「ふふ、制服でマラソンとか。地獄だ」
へろへろになりながら校庭を走る俺と瑠姫だった。
【ツンデレとウェディングケーキ】
2010年01月28日
学校からの帰り道、暑いにゃーと思いながらだらだら歩いてると、見知った後姿を見かけた。
「おす、瑠姫」
「ひにゃーっ!?」
軽く声をかけると、瑠姫は猫っぽい悲鳴を上げた。
「どうしたっ、俺の声に反応して破瓜でもしたかっ!?」
「なんか頭がぬるぬるしゅるー!?」
「なんだ。それは俺が挨拶と共に乗せた昆布だ、安心しろ」
瑠姫は昆布を取ると俺の顔にぶつけた。
「何をする」
顔から昆布を垂らしつつ、文句をぶつける。
「こっちの台詞っ! いきなり昆布乗せる奴なんて聞いたことないっ!」
「だって、既に二つほど昆布を頭から垂らしているし、その方がいいかなーって。ただ、携帯に大変苦労するので次回から乾燥昆布にさせてもらいます。ご了承ください」
「昆布じゃないっ! 髪! ツインテール! 何回言ったら覚えるんだっ! もー乗せるなー!」
「そう怒るなよ、はるぴー」
「るきーっ! もーついてくるな、ばかーっ!」
るきーと言いながら瑠姫はてててっと駆けていった。もちろんついていく。
「来るなって言ってるのにー!」
「ははははは。こんなクソ暑いのに走るとかどんな残虐行為手当てだ」
「うるさいついて……」
突然瑠姫の語気が弱まった。どうしたのかと瑠姫の視線の先を探ると、そこには教会があった。丁度結婚式の最中で、ライスシャワーが行われていた。
「きれー……」
キラキラとした目で幸せそうな夫婦を見つめる瑠姫。
「確かに。だがしかし、あの新婦の乳が育ちすぎているのが少々難点か。もっと平らなのが好みです」
「オマエの好みなんて聞いてにゃー!」
「瑠姫のそれがちょうどベストです」
「すっごく聞いてにゃーっ! だいたい、あたしは将来すっごく大きくなるもんっ! ママはすっごく大きいから、きっとあたしも大きくなるもん!」
「お前のおばさん、太ってるからバストも大きいだけじゃねえか」
「うるしゃー!」
などとやりあってる間に、新婚夫婦は車に乗ってどっかへ行ってしまった。
「もー! ちゃんと見れなかったじゃんか!」
「ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだ。ただ、俺の好みを言っただけなんだ。どういうわけか瑠姫が怒っただけなんだ」
「あたしが悪いみたいにゆーな!」
「そんなつもりは毛頭……ん?」
ふと教会の中を見ると、大きなケーキが見えた。
「瑠姫、でけーケーキがあるぞ。食え」
「ダメに決まってるの! あれはウェディングケーキ! ……まー、おいしそーだけど。食べるなんて無理だろーけどね」
「ふむ。ちょっと待ってろ」
「にゃ?」
瑠姫をその場に置いて、教会の中へ侵入する。中にいた人に事情を過剰に説明する。
「よし。瑠姫、おいで」
教会の表に出て、瑠姫を手招きする。
「にゅー?」
「許可を得た。少しなら食っていいってさ」
「ホントっ!? やたっ!」
言うが早いか、瑠姫は素早く教会の中へ飛び込んだ。飛ぶような動きでケーキの前まで来ると、一目散にかぶりついた。
「あぐあぐあぐ……おいしー! 別府、これおいしーよ!」
「少しだ、少しッ! 誰も全部食っていいとは言ってない!」
「少しだよ?」
「どこがだっ! ケーキに抱きつくな! ああもう、クリームでべとべとじゃねえか……」
「もぎゅもぎゅもぎゅ……んー、おいしー♪」
全身をクリームでべったべたにしながら、瑠姫は幸せそうな顔でケーキをほうばっていた。子供だ、コイツ。
「んー♪ でもさ、どうやって許可得たの?」
「ブレインウォッシュって知ってる?」
「……知んないけど、知らないほうがいい気がする。ま、なんでもいーや、おいしーし。ありがとね、別府♪」
「礼はその幼い肢体で結構です」
丁寧に言ったのに、どういうことかケーキをぶつけられた。
「違う、そうじゃない」
「うるしゃー! ばーかばーか変態!」
猿カニ合戦の猿のごとく、ケーキを俺に投げまくる瑠姫だった。
「おす、瑠姫」
「ひにゃーっ!?」
軽く声をかけると、瑠姫は猫っぽい悲鳴を上げた。
「どうしたっ、俺の声に反応して破瓜でもしたかっ!?」
「なんか頭がぬるぬるしゅるー!?」
「なんだ。それは俺が挨拶と共に乗せた昆布だ、安心しろ」
瑠姫は昆布を取ると俺の顔にぶつけた。
「何をする」
顔から昆布を垂らしつつ、文句をぶつける。
「こっちの台詞っ! いきなり昆布乗せる奴なんて聞いたことないっ!」
「だって、既に二つほど昆布を頭から垂らしているし、その方がいいかなーって。ただ、携帯に大変苦労するので次回から乾燥昆布にさせてもらいます。ご了承ください」
「昆布じゃないっ! 髪! ツインテール! 何回言ったら覚えるんだっ! もー乗せるなー!」
「そう怒るなよ、はるぴー」
「るきーっ! もーついてくるな、ばかーっ!」
るきーと言いながら瑠姫はてててっと駆けていった。もちろんついていく。
「来るなって言ってるのにー!」
「ははははは。こんなクソ暑いのに走るとかどんな残虐行為手当てだ」
「うるさいついて……」
突然瑠姫の語気が弱まった。どうしたのかと瑠姫の視線の先を探ると、そこには教会があった。丁度結婚式の最中で、ライスシャワーが行われていた。
「きれー……」
キラキラとした目で幸せそうな夫婦を見つめる瑠姫。
「確かに。だがしかし、あの新婦の乳が育ちすぎているのが少々難点か。もっと平らなのが好みです」
「オマエの好みなんて聞いてにゃー!」
「瑠姫のそれがちょうどベストです」
「すっごく聞いてにゃーっ! だいたい、あたしは将来すっごく大きくなるもんっ! ママはすっごく大きいから、きっとあたしも大きくなるもん!」
「お前のおばさん、太ってるからバストも大きいだけじゃねえか」
「うるしゃー!」
などとやりあってる間に、新婚夫婦は車に乗ってどっかへ行ってしまった。
「もー! ちゃんと見れなかったじゃんか!」
「ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだ。ただ、俺の好みを言っただけなんだ。どういうわけか瑠姫が怒っただけなんだ」
「あたしが悪いみたいにゆーな!」
「そんなつもりは毛頭……ん?」
ふと教会の中を見ると、大きなケーキが見えた。
「瑠姫、でけーケーキがあるぞ。食え」
「ダメに決まってるの! あれはウェディングケーキ! ……まー、おいしそーだけど。食べるなんて無理だろーけどね」
「ふむ。ちょっと待ってろ」
「にゃ?」
瑠姫をその場に置いて、教会の中へ侵入する。中にいた人に事情を過剰に説明する。
「よし。瑠姫、おいで」
教会の表に出て、瑠姫を手招きする。
「にゅー?」
「許可を得た。少しなら食っていいってさ」
「ホントっ!? やたっ!」
言うが早いか、瑠姫は素早く教会の中へ飛び込んだ。飛ぶような動きでケーキの前まで来ると、一目散にかぶりついた。
「あぐあぐあぐ……おいしー! 別府、これおいしーよ!」
「少しだ、少しッ! 誰も全部食っていいとは言ってない!」
「少しだよ?」
「どこがだっ! ケーキに抱きつくな! ああもう、クリームでべとべとじゃねえか……」
「もぎゅもぎゅもぎゅ……んー、おいしー♪」
全身をクリームでべったべたにしながら、瑠姫は幸せそうな顔でケーキをほうばっていた。子供だ、コイツ。
「んー♪ でもさ、どうやって許可得たの?」
「ブレインウォッシュって知ってる?」
「……知んないけど、知らないほうがいい気がする。ま、なんでもいーや、おいしーし。ありがとね、別府♪」
「礼はその幼い肢体で結構です」
丁寧に言ったのに、どういうことかケーキをぶつけられた。
「違う、そうじゃない」
「うるしゃー! ばーかばーか変態!」
猿カニ合戦の猿のごとく、ケーキを俺に投げまくる瑠姫だった。
【ツンデレとデレデレに「暑いからくっつくな」って言ったら】
2010年01月26日
暑いと汗が出るのは新陳代謝が正常に行われている結果なので問題ない。強いて問題を挙げるならば、体がべとつく事くらいだ。
「そういうわけで、以後俺にくっつくことは禁ずる」
「安心してください、頼まれてもくっつきませんから」
などと酷いことを言って俺を半泣きにする委員長は置いといて、もう一人の答えは少し違っていた。
「ぷに?」
ぷに、などと言いながら小首を傾げるちょっと足りない感じのこの少女は、ぷに国というふざけた名前の国から来た留学生のぷに子(命名:俺)だ。
こちらに来た当初、少しだけ面倒を見ていたのだが、その結果何だか知らないがやけに気に入られて現在に至るわけなのだが。
「だから、俺にくっつくのは禁止なの。分かるだろ?」
「ぷにー☆」
ぷに子はニコニコ笑いながら俺に抱きついた。日本語を喋ることは出来なくても理解はできているはずだから、故意犯に違いない。
「ちょ、ぷにちゃん! こんな奴に抱きついたら伝染りますよ!」
「人を保菌者扱いするない」
「ぷにー」
ぷに子をべりばり引き剥がし、委員長は俺をキッと睨んだ。
「まったく……別府くんはもっと節操を持ってください。こんな小さい子に手出すなんて、犯罪ですよ」
「背が低いだけで、同い年です。手も出してません」
「ぷにー!」
ぷに子も委員長に持たれたまま抗議しているようだ。たぶん。
「まあでも丁度いいや。暑いからくっつかれてもアレだし、こんな感じでこの夏は過ごしましょう」
「そうですね。私も全く異論ないです」
「ぷにー!?」
ぷに子だけありそうな感じだったが、気づかないフリ。
「ぷに、ぷにに……ぷにっ!」
「あっ、ぷにちゃん!」
ぷに子は委員長の拘束を自力で解き、俺に抱きついた。
「人の話聞いてたか、ぷに子?」
「ぷにー♪」
「聞いた上での犯行か! なら仕方ない、許容しよう」
「えっ、そんなズル……っ」
委員長方面から妙な声がした。視線をそちらにやるも、委員長は慌てた様子で首を横に振るだけ。
「な、何でもないですよ?」
「なんだ。てっきり委員長も俺に抱きつきたいのかと思った」
「あ、ありえません。どうして私が別府くんなんかに抱きつかなくちゃいけないんですか。別府くんは自意識過剰というより、もやは病気の域に達してます。病院へ行ってください」
「泣くぞ」
「お好きに」
「チクショウ、どうでもいいと思われている! こんな時はぷに子と遊んで楽しくなろう」
「ぷに?」
ぷに子のほっぺを両手で持って、うにーっと引っ張る。
「ぷ、ぷにー……」
しばらく引っ張った後、ぱっと手を離す。
「ぷにっ! ……ぷー、ぷに、ぷにー!」
「ははははは。や、悪い悪い」
抗議のぷに語をぷに子の顔をうにうにすることにより、やり過ごす。
「……いいなぁ」
てっきりもう俺への興味をなくしていたと思われていた委員長が、俺とぷに子のやりとりを見て羨ましそうな顔をしていた。
「委員長も遊びたいか?」
「えっ!? わっ、私はその、別に別府くんにうにうになんてされたくないですっ! でっ、でも、ぷに子ちゃんが可哀想だから、私が代わりになってあげます!」
「……いや、ぷに子と遊びたいか、って聞いたつもりだったんだけど」
自分の間違いを悟ったのか、委員長の顔がゆっくりと赤くなっていく。
「う、ううううう~……別府くんのばかっ!」
「ええっ、俺のせい!?」
「うるさいですっ! 責任取ってください! たあっ!」
掛け声と共に、委員長が俺に飛びついてきた。
「ほら、抱っこです! 抱っこしてください!」
「え、いや、あの、委員長?」
「なんですかっ!?」
「混乱してる?」
「してますっ!」
じゃあ仕方ない。左手でぷに子を、右手で委員長を抱っこする。
「うー……」
「唸るな」
「ぶにー……」
「お前も」
「気持ちよくなんてないですっ!」
「聞いてない」
「ぷにっ! ぷにぷにっ!」
「対抗するな」
「なでなでなんてしてほしくないですっ!」
「ぷにぷにぷにっ!」
軽くため息をついてから、二人の頭をなでなでなで。
「ふ、うふ……」
「ぷに、ぷにー……」
二人は気持ちよさそうに鼻息を漏らした。ぷに子に至っては涎まで足らしているのでやめてほしい。
「ところでお二人さん、暑いからくっつくのはやめていただきたいと言ったのは覚えてますか」
「混乱してるので覚えてませんー……」
「ぷにー……」
なんて都合のいい状態異常だろう、と思いながら委員長の背中をぽんぽんさする。
「それもいいですけど、ぎゅーってしてほしいです。……違います、してほしくないです」
「ぷに、ぷににー」
「いいんだけど……全員汗まみれだし、そろそろお開きにした方が」
「ぎゅー!」
「ぷにー!」
「はい、すいません」
結局解放されたのはそれから一時間後だった。全員脱水症状になりかけてた。
「頭悪すぎだろ、俺ら……」
「わっ、私は悪くありません! 混乱してたんですっ! 悪いのは私たちをたぶらかした別府くんですっ!」
「ぷにー!」
急遽組まれた女性連合により、一方的に悪役にされる俺だった。
「そういうわけで、以後俺にくっつくことは禁ずる」
「安心してください、頼まれてもくっつきませんから」
などと酷いことを言って俺を半泣きにする委員長は置いといて、もう一人の答えは少し違っていた。
「ぷに?」
ぷに、などと言いながら小首を傾げるちょっと足りない感じのこの少女は、ぷに国というふざけた名前の国から来た留学生のぷに子(命名:俺)だ。
こちらに来た当初、少しだけ面倒を見ていたのだが、その結果何だか知らないがやけに気に入られて現在に至るわけなのだが。
「だから、俺にくっつくのは禁止なの。分かるだろ?」
「ぷにー☆」
ぷに子はニコニコ笑いながら俺に抱きついた。日本語を喋ることは出来なくても理解はできているはずだから、故意犯に違いない。
「ちょ、ぷにちゃん! こんな奴に抱きついたら伝染りますよ!」
「人を保菌者扱いするない」
「ぷにー」
ぷに子をべりばり引き剥がし、委員長は俺をキッと睨んだ。
「まったく……別府くんはもっと節操を持ってください。こんな小さい子に手出すなんて、犯罪ですよ」
「背が低いだけで、同い年です。手も出してません」
「ぷにー!」
ぷに子も委員長に持たれたまま抗議しているようだ。たぶん。
「まあでも丁度いいや。暑いからくっつかれてもアレだし、こんな感じでこの夏は過ごしましょう」
「そうですね。私も全く異論ないです」
「ぷにー!?」
ぷに子だけありそうな感じだったが、気づかないフリ。
「ぷに、ぷにに……ぷにっ!」
「あっ、ぷにちゃん!」
ぷに子は委員長の拘束を自力で解き、俺に抱きついた。
「人の話聞いてたか、ぷに子?」
「ぷにー♪」
「聞いた上での犯行か! なら仕方ない、許容しよう」
「えっ、そんなズル……っ」
委員長方面から妙な声がした。視線をそちらにやるも、委員長は慌てた様子で首を横に振るだけ。
「な、何でもないですよ?」
「なんだ。てっきり委員長も俺に抱きつきたいのかと思った」
「あ、ありえません。どうして私が別府くんなんかに抱きつかなくちゃいけないんですか。別府くんは自意識過剰というより、もやは病気の域に達してます。病院へ行ってください」
「泣くぞ」
「お好きに」
「チクショウ、どうでもいいと思われている! こんな時はぷに子と遊んで楽しくなろう」
「ぷに?」
ぷに子のほっぺを両手で持って、うにーっと引っ張る。
「ぷ、ぷにー……」
しばらく引っ張った後、ぱっと手を離す。
「ぷにっ! ……ぷー、ぷに、ぷにー!」
「ははははは。や、悪い悪い」
抗議のぷに語をぷに子の顔をうにうにすることにより、やり過ごす。
「……いいなぁ」
てっきりもう俺への興味をなくしていたと思われていた委員長が、俺とぷに子のやりとりを見て羨ましそうな顔をしていた。
「委員長も遊びたいか?」
「えっ!? わっ、私はその、別に別府くんにうにうになんてされたくないですっ! でっ、でも、ぷに子ちゃんが可哀想だから、私が代わりになってあげます!」
「……いや、ぷに子と遊びたいか、って聞いたつもりだったんだけど」
自分の間違いを悟ったのか、委員長の顔がゆっくりと赤くなっていく。
「う、ううううう~……別府くんのばかっ!」
「ええっ、俺のせい!?」
「うるさいですっ! 責任取ってください! たあっ!」
掛け声と共に、委員長が俺に飛びついてきた。
「ほら、抱っこです! 抱っこしてください!」
「え、いや、あの、委員長?」
「なんですかっ!?」
「混乱してる?」
「してますっ!」
じゃあ仕方ない。左手でぷに子を、右手で委員長を抱っこする。
「うー……」
「唸るな」
「ぶにー……」
「お前も」
「気持ちよくなんてないですっ!」
「聞いてない」
「ぷにっ! ぷにぷにっ!」
「対抗するな」
「なでなでなんてしてほしくないですっ!」
「ぷにぷにぷにっ!」
軽くため息をついてから、二人の頭をなでなでなで。
「ふ、うふ……」
「ぷに、ぷにー……」
二人は気持ちよさそうに鼻息を漏らした。ぷに子に至っては涎まで足らしているのでやめてほしい。
「ところでお二人さん、暑いからくっつくのはやめていただきたいと言ったのは覚えてますか」
「混乱してるので覚えてませんー……」
「ぷにー……」
なんて都合のいい状態異常だろう、と思いながら委員長の背中をぽんぽんさする。
「それもいいですけど、ぎゅーってしてほしいです。……違います、してほしくないです」
「ぷに、ぷににー」
「いいんだけど……全員汗まみれだし、そろそろお開きにした方が」
「ぎゅー!」
「ぷにー!」
「はい、すいません」
結局解放されたのはそれから一時間後だった。全員脱水症状になりかけてた。
「頭悪すぎだろ、俺ら……」
「わっ、私は悪くありません! 混乱してたんですっ! 悪いのは私たちをたぶらかした別府くんですっ!」
「ぷにー!」
急遽組まれた女性連合により、一方的に悪役にされる俺だった。