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2024年11月22日
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【お腹が減ったのを我慢してるツンデレ】

2010年02月08日
 昼になったので飯をむしゃむしゃ食ってたら、何やら視線がチクチク痛い。元を辿っていくと、羨ましそうな、憎々しそうな目で隣の席から俺を睨んでる依音がいた。
「……欲しいのか?」
「いりません」
 そう言って、依音はぷいと視線を逸らした。それならそれでいいやと思い再びむしゃむしゃしてたら、またしてもチクチク視線が。
「や、欲しいのなら別にやるから、そんなじーっと見るねい。気になって落ち着いて食えやしない」
「欲しいなんて一言も言ってません。第一、お腹空いてませんし」
 まるでタイミングを見計らったかのように、依音の腹から重低音が響いた。
「これでも空いてないと」
「……空いてません」
 心持ち頬が赤いのは、自分でも説得力がないと気づいているからなのだろう。
「んーと。弁当忘れたのか?」
「持ってきてます」
「じゃあ、なんで食わないんだ?」
「うるさいです。どっか行ってください」
「ここ、俺の席」
「奇遇ですね、私の席も残念なことに、ここです」
「…………」
「……なんですか」
「……や、別になんでも。とにかく、落ち着いて食えないからこっち見るな」
「頼まれても見ませんよ」
「そいつは重畳」
 再びむしゃむしゃ弁当食ってたら、またまた先の痛みを伴う視線が。
「だーっ! お前の視線はなんか痛いんだよ!」
「見てません」
「見てたっての!」
「……自意識過剰(ぼそり)」
「聞こえたよ!?」
「聞こえるように言いましたから」
「ああもうっ、何でもいいからこっちを見るな。もしくは、俺の弁当を食え。どーせ忘れたんだろ?」
「だから、持ってきてます。ほらこの通り」
 そう言って、依音は机の横にかけてあったセカンドバッグから弁当の包みを取り出した。
「んじゃ、食えよ」
「食べません」
 そして、再びバッグに戻してしまった。
「……えーと。ひょっとしてダイエット中?」
「超うるさいです。二度とその口を開かないよう提言します。なんでしたら縫いましょうか?」
「超結構です。結構と言っている。言っているのだからソーイングセットを出すなッ!」
「残念です……」
 女性の嗜みとしては大変結構なことだが、その技術が俺を苦しめるのであれば話は別だ。
「なんだ、ただのダイエットかよ……」
「うるさいと言ったはずです」
「だから、イチイチ針を取り出すなッ! 怖えよっ!」
「知りません」
「まったく……女ってのは本当ダイエットが好きだな。そんな痩せたいものか?」
「当たり前です。冬は太りやすくて大変なんです。お鍋にお餅にミカンに猫さん。ぷくぷくです」
「猫食うの!? 怖っ、依音怖あっ!」
「食べませんッ! 猫さんがコタツにいるのでコタツから脱出不能になり、ぼんやりミカン食べちゃうんですっ!」
「だよなあ。あー怖かった」
「貴方の想像の方が怖いです。まったく……」
「で、結局ダイエットと」
「あ。……誘導尋問ですね。酷いです。悪魔です。悪魔は塩を口に詰めて縫います」
「だから、故あるごとに俺を縫おうとするなッ!」
 針を片手に俺をぬいぐるみにしようとする依音から離れる。
「むー……」
「怒るな。てか、どこが太ってんだ?」
「女性にそんなこと聞く時点で、モテないことが丸わかりです」
「うるせえ」
「とにかく、そういう訳なんでご飯は食べないんです。分かったら一人で食べててください」
 言うだけ言って、依音は再び顔を逸らした。
「んー、まあそういうことなら分かったが……けどなあ」
「なんですか。まだ何か用ですか」
 面倒くさそうに、依音は視線だけこちらに向けた。
「いやな、お前くらい痩せてて可愛い子でもダイエットしなきゃいけないなんて、女の子ってのは大変だなーって思っただけ」
「っ!? いっ、いきなり何を言ってるんですか、貴方は。頭おかしくなったんですか。なったんですね」
 音がしそうな勢いで顔を真っ赤にすると、依音は早口に俺への悪口をまくし立てた。
「…………」
「……な、なんですか」
「依音のそーゆーところ、可愛いよな」
「からかってますね!? からかってるんでしょう! ええそりゃもうからかってるに決まってます! 針です、針の出番です!」
「違う出番じゃないそれは女の子の道具であり武器じゃないっ!」
 俺を針山にしようとする依音から離れる。
「うー……」
「怒るな。とにかくさ、俺から見たらダイエットとか必要ないようにしか見えないから、飯食え飯。仮にダイエットするにしても、絶食なんてダメだ」
「……偉そうですね」
「偉いんだ」
「……偉いなら、しょうがないです。お弁当、食べてやります」
「ん」
 隣で弁当箱の包みを開けるのを見届け、今度はこちらの弁当を食う。
「……まあ、せっかくなんで一緒に食べてやります」
 ずりずりとイスを寄せ、依音が俺の机にやってきた。
「……な、なんですか」
「そーゆーところも可愛いよな」
「針ですッ!」
「混乱したら針を出す癖どうにかしろっ!」
 針を片手に暴れる依音を押さえたら、チャイムが鳴った。昼休み終わった。
「……貴方のせいで、ご飯食べれませんでした」
「俺のせい!?」
 こっくりうなずく依音の横で、ひたすら驚く俺だった。すげえ責任転嫁。

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