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2025年02月06日
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【寝てる間に『おはようのちゅー』をしようとする新妻ツンデレ】
2010年08月27日
あっちいので目覚ましが鳴るより早く目が覚めた。ここは一つ近所の子供に混じってラジオ体操でもしつつ子供を視姦したいなあうへへへと思いつつ目を開けたら、なんかすぐ目の前にかなみの顔が。
「……お、おはよう」
とりあえず挨拶してみる。
「なっ、なんで起きてるのよ!?」
すると、なんだか狼狽されたので申し訳ないと思った。よし、ここはひとつ適当言って笑わせてみよう!
「いや、これは全て俺の夢の中での出来事なので、寝るも起きるもないんだ。現実では未だ俺とかなみは結婚はおろか、お互いに嫌い合ってるんだ」
「え……うそ、やだ」
笑うどころか、かなみの顔がみるみる真っ青になっていく。これは大変にいけないと思ったので、ここでネタばらし。
「でもそれも嘘で、本当は学生婚をしていてまだ新婚ほやほやなんだ」
「う……へ、変な嘘つくなっ、ばかっ!」
「げはあっ!?」
朝っぱらから腹に突きは死ぬほど辛いです。衝撃がどこにも逃げないので超痛え。
「……いたい?」
「内臓が口から飛び出るんじゃないかと危惧しちゃう程度には!」
「じゃ、これは夢じゃなくて、ちゃんと結婚してるのよね?」
「そうです」
「そ、そっか。……あーあ、夢だったらよかったのになー。なんでアンタなんかと結婚なんてしちゃったんだろ。うりうり」
かなみは楽しそうに俺の鼻をむいむいと引っ張った。
「やめれ」
「へへー、やめなーい♪」
「やめないとちゅーするぞ」
「う……き、昨日あんなにしたのに、朝からするの? ほ、本当アンタってけだものよね」
「ああ、毛だもの」
「なんかあたしが言ってるのと違う!」
何故分かる。
「毛だもの みつを」
「やっぱそっちか! みつを禁止!」
「そんなぁ! もうパーマンを読めないだなんて!」
「みつお違い! そっちのみつおはどーでもいい!」
「朝からなんの話でしょうか」
「わかんないわよ! わかんないけど……うう、やっぱアンタといると楽しい! どーしてくれんのよ!」
「なんで怒られてるの?」
「悔しいの! アンタなんかと一緒で楽しい自分が!」
「難儀な話だな。ふああ……あー、完全に目が覚めた。ご飯食べよっか。何食いたい?」
「高級フレンチ」
「…………」
「半泣きで貯金通帳を探すなッ! 嘘に決まってるでしょ! いーわよ、パンで」
「いつかは高級ふれんちにでも連れて行ってあげたいが、今はこれで精一杯」
「へ?」
かなみのほっぺにちゅっとキスする。
「…………」
「ふああ……さて、飯食うか。そろそろ宿題しなくちゃなあ……ああ、面倒くさい」
「……こっ、こんなの嬉しくともなんともないんだからねっ! ちょっと、聞いてる!?」
「あーはいはい」
「聞いてない! ちっとも聞いてない! いい!? ちっとも嬉しくなんてないんだからねっ!」
「あーほりゃほりゃ」
「ばっかにしてえ! 違うんだからねっ! わ、笑っちゃってるのは別に嬉しいとかじゃないんだから! なんか顔が戻らないだけなんだからねっ!」
後ろからぎゃーぎゃー文句言ってる嫁を引き連れ、俺は食卓に向かうのだった。
「……お、おはよう」
とりあえず挨拶してみる。
「なっ、なんで起きてるのよ!?」
すると、なんだか狼狽されたので申し訳ないと思った。よし、ここはひとつ適当言って笑わせてみよう!
「いや、これは全て俺の夢の中での出来事なので、寝るも起きるもないんだ。現実では未だ俺とかなみは結婚はおろか、お互いに嫌い合ってるんだ」
「え……うそ、やだ」
笑うどころか、かなみの顔がみるみる真っ青になっていく。これは大変にいけないと思ったので、ここでネタばらし。
「でもそれも嘘で、本当は学生婚をしていてまだ新婚ほやほやなんだ」
「う……へ、変な嘘つくなっ、ばかっ!」
「げはあっ!?」
朝っぱらから腹に突きは死ぬほど辛いです。衝撃がどこにも逃げないので超痛え。
「……いたい?」
「内臓が口から飛び出るんじゃないかと危惧しちゃう程度には!」
「じゃ、これは夢じゃなくて、ちゃんと結婚してるのよね?」
「そうです」
「そ、そっか。……あーあ、夢だったらよかったのになー。なんでアンタなんかと結婚なんてしちゃったんだろ。うりうり」
かなみは楽しそうに俺の鼻をむいむいと引っ張った。
「やめれ」
「へへー、やめなーい♪」
「やめないとちゅーするぞ」
「う……き、昨日あんなにしたのに、朝からするの? ほ、本当アンタってけだものよね」
「ああ、毛だもの」
「なんかあたしが言ってるのと違う!」
何故分かる。
「毛だもの みつを」
「やっぱそっちか! みつを禁止!」
「そんなぁ! もうパーマンを読めないだなんて!」
「みつお違い! そっちのみつおはどーでもいい!」
「朝からなんの話でしょうか」
「わかんないわよ! わかんないけど……うう、やっぱアンタといると楽しい! どーしてくれんのよ!」
「なんで怒られてるの?」
「悔しいの! アンタなんかと一緒で楽しい自分が!」
「難儀な話だな。ふああ……あー、完全に目が覚めた。ご飯食べよっか。何食いたい?」
「高級フレンチ」
「…………」
「半泣きで貯金通帳を探すなッ! 嘘に決まってるでしょ! いーわよ、パンで」
「いつかは高級ふれんちにでも連れて行ってあげたいが、今はこれで精一杯」
「へ?」
かなみのほっぺにちゅっとキスする。
「…………」
「ふああ……さて、飯食うか。そろそろ宿題しなくちゃなあ……ああ、面倒くさい」
「……こっ、こんなの嬉しくともなんともないんだからねっ! ちょっと、聞いてる!?」
「あーはいはい」
「聞いてない! ちっとも聞いてない! いい!? ちっとも嬉しくなんてないんだからねっ!」
「あーほりゃほりゃ」
「ばっかにしてえ! 違うんだからねっ! わ、笑っちゃってるのは別に嬉しいとかじゃないんだから! なんか顔が戻らないだけなんだからねっ!」
後ろからぎゃーぎゃー文句言ってる嫁を引き連れ、俺は食卓に向かうのだった。
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【ツンデレから夜中に電話が掛かって来て、今何してるって聞かれたら】
2010年08月20日
夜は寝るタイプの人間なのでぐっすりすやすや寝てたら、突然携帯の野郎がぷるるるるって! さしもの俺もこれは許せないと思ったので説教したのだが、携帯は物なので叱られても堪えないと気づいたのは数分後。
「でもまあ寝ぼけてたからしょうがないと思わないか?」
『なんの話よッ!』
とりあえず俺に電話をかけてきた奴に思いの猛りを伝えたら怒られた。
『まあいいわ、アンタが突拍子のない馬鹿ってのはいつものことだし。あのさ、今なにしてるの?』
「寝てた」
『あ、あはは……ま、まあいいわよね? どーせアンタのことだから、昼も寝てるから眠くないだろうし』
「昼は部屋の気温が38度を記録しているので、寝るどころか生命を維持させるだけで精一杯です」
『外より暑いじゃないの! どーいうことよそれ!?』
「俺に怒られても困る。ていうか、どなた?」
電話の向こうで盛大にこける音が響いた。
「分かった、吉本新喜劇の人だ。ポコポコヘッドやって」
『違わいっ! あたしよ、かなみよ! てか、電話受ける前に確認するでしょ! 普通!』
「寝ぼけてたんで何も見ずに受けたんだ」
『今日もミラクルに馬鹿ね』
「奇跡的な馬鹿なのか、俺」
『そうよ。知らなかったの?』
「なんて残酷な真実なんだ。だがよく教えてくれた、ありがとう。じゃ、おやすみ」
『待って待って待って! 切らないで!』
「なんだ。俺は依然眠いので眠りたいのだが」
『え、えっとね? あたしさ、なんか眠くないのよ。だから、なんか話してよ。アンタお得意の全く中身がないけど、面白い話を』
「ひどい言い様だな。まあいいか、じゃあ猿夢でも」
『それ怖い話でしょ! あたし知ってるもん! ていうか思い出した! べ、別に怖くはないけど、寝るのちょっとアレじゃない! どうしてくれるのよ!?』
「とても可哀想にと思いました」
『超他人事!』
「はっはっは」
『笑うなーっ!』
「かなみは愉快だなあ。じゃ、お休み」
『だからっ、切るなっ! 今切られたら怖……じゃない、な、なんか暇だからあたしが困るじゃない!』
「怖いなら仕方ないな」
『こっ、怖くなんてないわよっ! 子供じゃないんだから!』
「…………」
『な、何よ。ホントよ!?』
「…………」
『な、何か喋りなさいよ。ね、ねえ!』
「……ふう。かなみ、さっき悪夢を見る呪いをかけておいたので、安心して眠ってくれ」
『超余計なことすんな、ばかーっ!』
「いや、怖くないと言っていたので、ならばとささやかな老婆心で」
『嘘だろうケド、嘘に決まってるだろうケド! なんか寝るの嫌になっちゃったじゃない! どーしてくれんのよ、ばかーっ!』
「夜も深いのだからあまり叫ぶな」
『うっさい! 誰が叫ばしてんのよ! もーっ! しかもなんかちょっと眠くなってきちゃったし! もーっ!』
「夢の中で君も猿と一緒にミンチ! ヤッタネ♪」
『嫌なこと言うな、ばかあっ! ……うーっ! 決めた! アンタ、今からあたしの家に来なさい!』
「はい?」
『アンタが余計なこと言ったせいで寝らんなくなっちゃったじゃないの! 責任取りなさいよね!』
「いや、責任と言われても。てか、行った所でどう責任を取るというのだ」
『アンタの馬鹿面見てないと落ち着かないって言ってるの!』
「しかし、俺の顔はいつだって美男子だから、行った所で何の役に立てるのか疑問だぞ?」
『いーから早く来いっ! あ、あと電話は切っちゃダメだからね! 切ったら怒るからね!』
「超めんどくさいです」
『……い、いーわよ。一人でがんばるもん』
「……はぁ。分かったよ、着替えるから少し待ってろ」
我ながら人が良すぎる。というか、俺のせいで怖がらせてしまったのだから、行くのが当然か。それでもめんどくさいなあ。
『う、うん。で、でも早く来ないとダメだからね!? 怒るからね!』
「怒られるのは嫌だから行くの躊躇するなあ」
『怒らないから早く来いっ!』
「もう既に怒られている気がする」
文句を言いながらも着替えて家を出る。鼻歌代わりに般若心境を唱えて超怒られてると、かなみの家に着いた。
「着いたぞ。鍵開けて」
『わ、分かった』
家の中からわずかな物音がする。
「これでドア開けたら俺じゃなくて血まみれの包丁持ったサラリーマンがいたら超怖いよな」
『余計なこと言うなっ! あっ……あ、あと、人を叫ばすな、馬鹿。みんな起きちゃうじゃない』
それからほどなく、ドアがゆっくりと開いた。そして、その隙間からかなみが恐る恐る顔を出した。きょろきょろと周辺を見回している。
「おす」
「お、おす。……サラリーマン、いない?」
「いるか、馬鹿」
挨拶代わりにかなみの頭をわしわしなでながら答える。
「馬鹿じゃないわよ。馬鹿じゃないもん。馬鹿はアンタよ」
言葉だけは怒りながらも、かなみは少しだけ嬉しそうに頭をなでられていた。
「んじゃ、とっとと入れて。早くしないとサラリーマンに追いつかれる」
「嫌な嘘つくなっ、ばかっ!」
それでもさっきより入念に周辺をきょろきょろしてから、かなみは俺を家にいれてくれた。暗い廊下を抜け、かなみの部屋に辿り着く。
「ふー……」
落ち着いたように、かなみはベッドに座って深く息を吐いた。
「で、俺は何をしたらいいんでしょうか」
「あたしが寝るまで話し相手してて」
薄い布団を頭まですっぽりかぶり、かなみはぴょこんと顔だけ出した。
「へへー。怖くない♪」
「…………」
「ん? どしたの、鼻つまんで」
「……いや」
これが計算だとしたら将来女優になったらいいし、そうじゃないなら俺は頭がおかしくなります。
「かなみ、顔中べろべろ舐めていい?」
「ド変態ッ!」
ほらみろ、おかしいだろ。
「まったく……変態だし馬鹿だし、アンタ最低よね」
「悲しくなるばかりです」
「あははっ。……あのね、えとね。……あんがとね、わざわざ来てくれて」
……びっくりした。よもや歩く傍若無人のかなみが礼を言うだなんて。
「ほ、ほら! ほとんどアンタのせいとはいえ、こんな夜中に文句も言わずに来てくれたし」
「文句は言った覚えがあるのですが」
「そだっけ? へへっ、覚えてないや♪」
にぱーっと晴れやかな笑顔を見せられては、もう何も言えやしねえ。
「まあ、なんだ。もう夜も遅い、寝ろ」
「……寝てる間にどっか行ったりしない?」
「あー、コンビニくらいは行くかも」
「なんでよ! ずっとあたしのそばにいなさいよ! そうしてくんないと寝ない!」
「お子様か、おまえ」
「う……い、いいじゃない! アンタのせいで寝れなくなったんだから責任取りなさいよね!」
「分かった、結婚しよう」
「そういう責任じゃないっ!」
かなみの手をとってまっすぐに目を見つめたのに頭突きされた。
「もー。……じゃ、寝るからなんか面白いお話して」
「また無茶ブリを。しょうがない、猿夢でも」
「さっきと一緒! ほら、また怖くなった! どーしてくれんのよっ!」
かなみは半泣きでがうがう吠えた。
「怖くないんじゃなかったのか」
「うるさいうるさいうるさいっ! どーにかしなさいよねっ!」
「あーもう、お前が一番うるさい。ほれ、こーやってたらちょっとは怖くねーだろ」
「あ……」
かなみの手を軽く握る。
「嫌かもしれんが、諦めろ。そばに誰かいるって分かってたら、恐怖も薄れるだろ」
「…………」
「かなみ?」
「……え、え!? ち、違うわよ!? こんなの嬉しくともなんともないわよ!?」
「そんなことは聞いてませんが」
「ええっ!? ……ゆ、誘導尋問なんてずるい!」
「そんなこともしてませんが」
「うっ、うるさいっ! と、とにかくアンタはあたしが寝るまで手繋いでないとダメなんだからねっ!」
「途中で尿意を催した場合、想像を絶することになることが容易に想像できるのですが」
「うるさいうるさいうるさいっ! なんでもいーからアンタはずっとあたしと一緒にいないとダメなのっ!」
「一生?」
「一生! ……へ? あ、や、今のは違う、違うのっ!」
真っ赤な顔でぎゃんぎゃんほえてるかなみと一緒に夜を過ごしました。
「……それでも手を出さなかった俺を誰か褒めろ」
安心しきった顔ですぴゃすぴゃ寝てるかなみに手を握られたまま、朝日がこぼれる部屋で一人つぶやく俺だった。
「でもまあ寝ぼけてたからしょうがないと思わないか?」
『なんの話よッ!』
とりあえず俺に電話をかけてきた奴に思いの猛りを伝えたら怒られた。
『まあいいわ、アンタが突拍子のない馬鹿ってのはいつものことだし。あのさ、今なにしてるの?』
「寝てた」
『あ、あはは……ま、まあいいわよね? どーせアンタのことだから、昼も寝てるから眠くないだろうし』
「昼は部屋の気温が38度を記録しているので、寝るどころか生命を維持させるだけで精一杯です」
『外より暑いじゃないの! どーいうことよそれ!?』
「俺に怒られても困る。ていうか、どなた?」
電話の向こうで盛大にこける音が響いた。
「分かった、吉本新喜劇の人だ。ポコポコヘッドやって」
『違わいっ! あたしよ、かなみよ! てか、電話受ける前に確認するでしょ! 普通!』
「寝ぼけてたんで何も見ずに受けたんだ」
『今日もミラクルに馬鹿ね』
「奇跡的な馬鹿なのか、俺」
『そうよ。知らなかったの?』
「なんて残酷な真実なんだ。だがよく教えてくれた、ありがとう。じゃ、おやすみ」
『待って待って待って! 切らないで!』
「なんだ。俺は依然眠いので眠りたいのだが」
『え、えっとね? あたしさ、なんか眠くないのよ。だから、なんか話してよ。アンタお得意の全く中身がないけど、面白い話を』
「ひどい言い様だな。まあいいか、じゃあ猿夢でも」
『それ怖い話でしょ! あたし知ってるもん! ていうか思い出した! べ、別に怖くはないけど、寝るのちょっとアレじゃない! どうしてくれるのよ!?』
「とても可哀想にと思いました」
『超他人事!』
「はっはっは」
『笑うなーっ!』
「かなみは愉快だなあ。じゃ、お休み」
『だからっ、切るなっ! 今切られたら怖……じゃない、な、なんか暇だからあたしが困るじゃない!』
「怖いなら仕方ないな」
『こっ、怖くなんてないわよっ! 子供じゃないんだから!』
「…………」
『な、何よ。ホントよ!?』
「…………」
『な、何か喋りなさいよ。ね、ねえ!』
「……ふう。かなみ、さっき悪夢を見る呪いをかけておいたので、安心して眠ってくれ」
『超余計なことすんな、ばかーっ!』
「いや、怖くないと言っていたので、ならばとささやかな老婆心で」
『嘘だろうケド、嘘に決まってるだろうケド! なんか寝るの嫌になっちゃったじゃない! どーしてくれんのよ、ばかーっ!』
「夜も深いのだからあまり叫ぶな」
『うっさい! 誰が叫ばしてんのよ! もーっ! しかもなんかちょっと眠くなってきちゃったし! もーっ!』
「夢の中で君も猿と一緒にミンチ! ヤッタネ♪」
『嫌なこと言うな、ばかあっ! ……うーっ! 決めた! アンタ、今からあたしの家に来なさい!』
「はい?」
『アンタが余計なこと言ったせいで寝らんなくなっちゃったじゃないの! 責任取りなさいよね!』
「いや、責任と言われても。てか、行った所でどう責任を取るというのだ」
『アンタの馬鹿面見てないと落ち着かないって言ってるの!』
「しかし、俺の顔はいつだって美男子だから、行った所で何の役に立てるのか疑問だぞ?」
『いーから早く来いっ! あ、あと電話は切っちゃダメだからね! 切ったら怒るからね!』
「超めんどくさいです」
『……い、いーわよ。一人でがんばるもん』
「……はぁ。分かったよ、着替えるから少し待ってろ」
我ながら人が良すぎる。というか、俺のせいで怖がらせてしまったのだから、行くのが当然か。それでもめんどくさいなあ。
『う、うん。で、でも早く来ないとダメだからね!? 怒るからね!』
「怒られるのは嫌だから行くの躊躇するなあ」
『怒らないから早く来いっ!』
「もう既に怒られている気がする」
文句を言いながらも着替えて家を出る。鼻歌代わりに般若心境を唱えて超怒られてると、かなみの家に着いた。
「着いたぞ。鍵開けて」
『わ、分かった』
家の中からわずかな物音がする。
「これでドア開けたら俺じゃなくて血まみれの包丁持ったサラリーマンがいたら超怖いよな」
『余計なこと言うなっ! あっ……あ、あと、人を叫ばすな、馬鹿。みんな起きちゃうじゃない』
それからほどなく、ドアがゆっくりと開いた。そして、その隙間からかなみが恐る恐る顔を出した。きょろきょろと周辺を見回している。
「おす」
「お、おす。……サラリーマン、いない?」
「いるか、馬鹿」
挨拶代わりにかなみの頭をわしわしなでながら答える。
「馬鹿じゃないわよ。馬鹿じゃないもん。馬鹿はアンタよ」
言葉だけは怒りながらも、かなみは少しだけ嬉しそうに頭をなでられていた。
「んじゃ、とっとと入れて。早くしないとサラリーマンに追いつかれる」
「嫌な嘘つくなっ、ばかっ!」
それでもさっきより入念に周辺をきょろきょろしてから、かなみは俺を家にいれてくれた。暗い廊下を抜け、かなみの部屋に辿り着く。
「ふー……」
落ち着いたように、かなみはベッドに座って深く息を吐いた。
「で、俺は何をしたらいいんでしょうか」
「あたしが寝るまで話し相手してて」
薄い布団を頭まですっぽりかぶり、かなみはぴょこんと顔だけ出した。
「へへー。怖くない♪」
「…………」
「ん? どしたの、鼻つまんで」
「……いや」
これが計算だとしたら将来女優になったらいいし、そうじゃないなら俺は頭がおかしくなります。
「かなみ、顔中べろべろ舐めていい?」
「ド変態ッ!」
ほらみろ、おかしいだろ。
「まったく……変態だし馬鹿だし、アンタ最低よね」
「悲しくなるばかりです」
「あははっ。……あのね、えとね。……あんがとね、わざわざ来てくれて」
……びっくりした。よもや歩く傍若無人のかなみが礼を言うだなんて。
「ほ、ほら! ほとんどアンタのせいとはいえ、こんな夜中に文句も言わずに来てくれたし」
「文句は言った覚えがあるのですが」
「そだっけ? へへっ、覚えてないや♪」
にぱーっと晴れやかな笑顔を見せられては、もう何も言えやしねえ。
「まあ、なんだ。もう夜も遅い、寝ろ」
「……寝てる間にどっか行ったりしない?」
「あー、コンビニくらいは行くかも」
「なんでよ! ずっとあたしのそばにいなさいよ! そうしてくんないと寝ない!」
「お子様か、おまえ」
「う……い、いいじゃない! アンタのせいで寝れなくなったんだから責任取りなさいよね!」
「分かった、結婚しよう」
「そういう責任じゃないっ!」
かなみの手をとってまっすぐに目を見つめたのに頭突きされた。
「もー。……じゃ、寝るからなんか面白いお話して」
「また無茶ブリを。しょうがない、猿夢でも」
「さっきと一緒! ほら、また怖くなった! どーしてくれんのよっ!」
かなみは半泣きでがうがう吠えた。
「怖くないんじゃなかったのか」
「うるさいうるさいうるさいっ! どーにかしなさいよねっ!」
「あーもう、お前が一番うるさい。ほれ、こーやってたらちょっとは怖くねーだろ」
「あ……」
かなみの手を軽く握る。
「嫌かもしれんが、諦めろ。そばに誰かいるって分かってたら、恐怖も薄れるだろ」
「…………」
「かなみ?」
「……え、え!? ち、違うわよ!? こんなの嬉しくともなんともないわよ!?」
「そんなことは聞いてませんが」
「ええっ!? ……ゆ、誘導尋問なんてずるい!」
「そんなこともしてませんが」
「うっ、うるさいっ! と、とにかくアンタはあたしが寝るまで手繋いでないとダメなんだからねっ!」
「途中で尿意を催した場合、想像を絶することになることが容易に想像できるのですが」
「うるさいうるさいうるさいっ! なんでもいーからアンタはずっとあたしと一緒にいないとダメなのっ!」
「一生?」
「一生! ……へ? あ、や、今のは違う、違うのっ!」
真っ赤な顔でぎゃんぎゃんほえてるかなみと一緒に夜を過ごしました。
「……それでも手を出さなかった俺を誰か褒めろ」
安心しきった顔ですぴゃすぴゃ寝てるかなみに手を握られたまま、朝日がこぼれる部屋で一人つぶやく俺だった。
【留美 押しかけにゃー】
2010年08月17日
このところ暑いのでおうちでうんだりしてる毎日なのですが、そんな平穏な日常を脅かす魔の手が俺の元へ忍び寄ろうとしていた。
「暑いっ!」
ていうか早速来た。魔の手が。
「あの。留美さん、いきなりなんの御用でせうか」
「夏休み入ってからずーっと待っ……じゃない、アンタがあたしの家に突然来るかもしんないって思うと落ち着かないから、あたしから来てやったのよ! 感謝しなさいよね!」
この魔の手は留美といい、俺のクラスメートだ。高校に入ってからずっと同じクラスで、俺の自意識過剰でなければそこそこ仲がいいと思う。のだけど。
「あの、留美さん。行かないから。用事とかないから」
「来なさいよっ! 落ち着かないじゃない!」
「行ったら行ったで文句言うだろ」
「言うに決まってるじゃない」
どうしろと言うのだ。
「それより! 折角来てやったんだから、あたしを楽しませなさいよ。アンタあたしの奴隷なんだから、いつ何時でもあたしを楽しませなきゃダメなんだからね?」
「はい?」
「奴隷よ、奴隷! 言っとくけど、永続契約だから解除とかはないからね!」
「何を言ってるのですか。暑いからですか。それとは関係ナシに頭がダメなのですか」
「むーっ!」
むーと言われつつ頬をつねられていると、ふと思い出した。
一年ほど前、こいつと一緒にゲームして遊んでたとき、戯れに賭けをして、勝った奴が負けた奴を奴隷にできる、というゲームをした。そして俺は負け、奴隷になってしまった。で、その契約はまだ継続している、らしい。
「ほら、楽しませなさいよ。アンタ奴隷でしょ?」
「なんてめんどくさい奴だ」
「うるさい! 暇になっちゃったんだから、何かして楽しませなさいよ!」
「ああ、そういうことか。んじゃ、どっか遊び行くか?」
「えっ、そ、それって、デー……ト?」
留美は手をこしょこしょと結び合わせ、上目遣いで俺を見た。
「いや、んな大層なものではないけれども」
「…………。ふ、ふん! それは嬉しい限りね! 誰がアンタなんかと遊びになんて行くもんですか! 調子に乗らないでよね! ばか、ばーか!」
「やっぱデートかも」
「うっ……で、でも、どーしてもあたしと一緒に遊びたいなら、あんまりにもアンタが哀れだから遊んであげなくも」
「いや、やっぱデートではない」
「…………。もーっ! 人で遊ばないの! いーから一緒に遊びなさいっ!」
「いいけど、暑いから外に行くのは嫌だ。おうちで遊ぶならいい」
「え? ……こ、こんな狭い場所で、ふたりっきり?」
留美はほんのり頬を染め、きょろきょろと周囲を窺いつつ確かめた。
「そう。もし嫌ならもうちょっと涼しい日に改めてどこかへ遊びに行きますが」
「ううんっ! ここで! 今日! 一緒に! 遊ぶの!」
「そ、そうか」
あまりの勢いに、少したじろぐ。
「あっ! ……べ、別にアンタと一緒で嬉しいとかじゃないからねっ! そこ、勘違いしたら殺すからねっ!」
「はぁ」
「……で、でもちょこっとだけの勘違いならゆるす」
何がだ。
「そ、それより! 一体何をしてこのあたしを楽しませてくれるって言うの?」
「何も考えていません」
「はぁ? そんなのでよくもまああたしを誘ったものね。何考えてんだか」
「誘ってません。勝手に押しかけられました」
「……そ、それはともかくとして」
ともかくとするな。
「じゃ、じゃあ、あたしの考えた遊び、する?」
「まあ、いいけど」
「……遊び?」
「そ、そうよ。何か変なことでも?」
留美の考えた遊びとは、俺が留美を前から抱っこして時折頭をなでること、らしい。
「遊びではないよね。ていうか、対面座位だよね」
「? なにそれ」
「……いや、なんでもない」
思ったより性の知識がなくてお兄さん安心しました。
「それより、この体勢はどうかと思うぞ。なんちうか、恋人同士が抱き合ってるように見えるような」
「あ、アンタの身勝手な恋人論なんてどうでもいいの! それより、手が空いてるわよ?」
「はぁ」
指摘されたので、とりあえず留美の頭をよしよしなでる。
「もっと」
もうちょっとなでる。
「もっと! もっといっぱい!」
たくさん望まれたのでたくさんなでる。
「そ、そう。そんな感じ。……で、でも、もちょっと」
言われた通りにもっとなでる。なでる合間に頭をごく軽く、ぽんぽん叩いたりとかもしてみる。
「へへ……えへへ。えへへぇ」
「留美の言語野がおかしくなった。しかしこの暑さだ、留美だけを責めるのは酷か」
「おかしくなってないっ! ……そ、それよりさ。アレだったら頭だけじゃなくて、他のとこもなでていーから」
「胸かっ!」
「言うと思ったわよ、変態っ! ……そ、そゆとこじゃなくて、ほっぺたとか、おなかとか」
「お尻とか!」
「今日も変態っ!」
変態扱いされ悲しいので、乳やら尻やらは置いといて、ほっぺをなでたりふにふにしたり両手で挟み込んだりしてみる。
「……あ、アンタってばホントーにあたしを触るの好きよね。ほっぺなでる手つきとか、いやらしーもん」
「あー。お前触ってると気持ちいいからそうなっちゃうのかな」
「……へ、へんたい」
留美は俺をなじりながらも、ほっぺをうにうにされて気持ちよさそうに目を細めていた。
「留美って猫みたいだな。にゃーとか鳴け」
「誰が鳴くもんですか!」
「ほら、にゃーだ。にゃー」
「い、言わないってば」
「にゃーって言って。ほら、留美。にゃー」
「……にゃ、にゃー」
「留美は簡単だな」
「にゃー!」
にゃーぱんちが飛んできて痛い。
「痛いのですが」
「人を馬鹿にした罰よ。ふん、だ」
「いや、人を猫にしたんだ。だから、人を猫にする罰にしろ」
「にゃー!」
再びにゃーぱんちが飛んできてやっぱり痛い。
「一緒なのですが」
「人を猫にするからよ。がうがう」
「食うな」
留美は俺の肩に口をつけ、あむあむ軽く噛んだ。
「あう……なんかしょっぱい」
しかし、すぐに俺から口を離すと、留美は顔をしかめさせながら舌を出した。
「汗かいたからな。それも已む無しだ」
「しゃざいとばいしょーをようきゅーするにだー」
「ふむ。じゃ、今度どっか一緒に出かけたときに何か買ってやるよ。安いの」
「最後に何か変なのついた! 高いのが欲しい!」
「俺と一緒にいる限り、高級品とは縁がないものと思え! ふわーっはっはっは!」
「あぅー……なんて甲斐性のない奴だ。こんなで将来だいじょぶかなあ」
「将来?」
「ん? ……ち、違くて! 別にアンタと一緒の未来なんて想像なんてしてないし! そんなの考えるだけでもおえーって感じだし! 子供は二人くらい欲しいし!」
留美は顔を真っ赤にさせながらあわあわと抗弁した。ていうか、なんか混じってる。混乱しすぎだ。
「そ、そゆことだから。勘違いしたらにゃーだからね!?」
「それは大変に怖いので勘違いしません」
「そ、それならいい。……で、でも、1ミリくらいなら勘違いゆるす」
何をだ、と思いながらぶすーっとしてる留美のほっぺをむにむにする俺だった。
「暑いっ!」
ていうか早速来た。魔の手が。
「あの。留美さん、いきなりなんの御用でせうか」
「夏休み入ってからずーっと待っ……じゃない、アンタがあたしの家に突然来るかもしんないって思うと落ち着かないから、あたしから来てやったのよ! 感謝しなさいよね!」
この魔の手は留美といい、俺のクラスメートだ。高校に入ってからずっと同じクラスで、俺の自意識過剰でなければそこそこ仲がいいと思う。のだけど。
「あの、留美さん。行かないから。用事とかないから」
「来なさいよっ! 落ち着かないじゃない!」
「行ったら行ったで文句言うだろ」
「言うに決まってるじゃない」
どうしろと言うのだ。
「それより! 折角来てやったんだから、あたしを楽しませなさいよ。アンタあたしの奴隷なんだから、いつ何時でもあたしを楽しませなきゃダメなんだからね?」
「はい?」
「奴隷よ、奴隷! 言っとくけど、永続契約だから解除とかはないからね!」
「何を言ってるのですか。暑いからですか。それとは関係ナシに頭がダメなのですか」
「むーっ!」
むーと言われつつ頬をつねられていると、ふと思い出した。
一年ほど前、こいつと一緒にゲームして遊んでたとき、戯れに賭けをして、勝った奴が負けた奴を奴隷にできる、というゲームをした。そして俺は負け、奴隷になってしまった。で、その契約はまだ継続している、らしい。
「ほら、楽しませなさいよ。アンタ奴隷でしょ?」
「なんてめんどくさい奴だ」
「うるさい! 暇になっちゃったんだから、何かして楽しませなさいよ!」
「ああ、そういうことか。んじゃ、どっか遊び行くか?」
「えっ、そ、それって、デー……ト?」
留美は手をこしょこしょと結び合わせ、上目遣いで俺を見た。
「いや、んな大層なものではないけれども」
「…………。ふ、ふん! それは嬉しい限りね! 誰がアンタなんかと遊びになんて行くもんですか! 調子に乗らないでよね! ばか、ばーか!」
「やっぱデートかも」
「うっ……で、でも、どーしてもあたしと一緒に遊びたいなら、あんまりにもアンタが哀れだから遊んであげなくも」
「いや、やっぱデートではない」
「…………。もーっ! 人で遊ばないの! いーから一緒に遊びなさいっ!」
「いいけど、暑いから外に行くのは嫌だ。おうちで遊ぶならいい」
「え? ……こ、こんな狭い場所で、ふたりっきり?」
留美はほんのり頬を染め、きょろきょろと周囲を窺いつつ確かめた。
「そう。もし嫌ならもうちょっと涼しい日に改めてどこかへ遊びに行きますが」
「ううんっ! ここで! 今日! 一緒に! 遊ぶの!」
「そ、そうか」
あまりの勢いに、少したじろぐ。
「あっ! ……べ、別にアンタと一緒で嬉しいとかじゃないからねっ! そこ、勘違いしたら殺すからねっ!」
「はぁ」
「……で、でもちょこっとだけの勘違いならゆるす」
何がだ。
「そ、それより! 一体何をしてこのあたしを楽しませてくれるって言うの?」
「何も考えていません」
「はぁ? そんなのでよくもまああたしを誘ったものね。何考えてんだか」
「誘ってません。勝手に押しかけられました」
「……そ、それはともかくとして」
ともかくとするな。
「じゃ、じゃあ、あたしの考えた遊び、する?」
「まあ、いいけど」
「……遊び?」
「そ、そうよ。何か変なことでも?」
留美の考えた遊びとは、俺が留美を前から抱っこして時折頭をなでること、らしい。
「遊びではないよね。ていうか、対面座位だよね」
「? なにそれ」
「……いや、なんでもない」
思ったより性の知識がなくてお兄さん安心しました。
「それより、この体勢はどうかと思うぞ。なんちうか、恋人同士が抱き合ってるように見えるような」
「あ、アンタの身勝手な恋人論なんてどうでもいいの! それより、手が空いてるわよ?」
「はぁ」
指摘されたので、とりあえず留美の頭をよしよしなでる。
「もっと」
もうちょっとなでる。
「もっと! もっといっぱい!」
たくさん望まれたのでたくさんなでる。
「そ、そう。そんな感じ。……で、でも、もちょっと」
言われた通りにもっとなでる。なでる合間に頭をごく軽く、ぽんぽん叩いたりとかもしてみる。
「へへ……えへへ。えへへぇ」
「留美の言語野がおかしくなった。しかしこの暑さだ、留美だけを責めるのは酷か」
「おかしくなってないっ! ……そ、それよりさ。アレだったら頭だけじゃなくて、他のとこもなでていーから」
「胸かっ!」
「言うと思ったわよ、変態っ! ……そ、そゆとこじゃなくて、ほっぺたとか、おなかとか」
「お尻とか!」
「今日も変態っ!」
変態扱いされ悲しいので、乳やら尻やらは置いといて、ほっぺをなでたりふにふにしたり両手で挟み込んだりしてみる。
「……あ、アンタってばホントーにあたしを触るの好きよね。ほっぺなでる手つきとか、いやらしーもん」
「あー。お前触ってると気持ちいいからそうなっちゃうのかな」
「……へ、へんたい」
留美は俺をなじりながらも、ほっぺをうにうにされて気持ちよさそうに目を細めていた。
「留美って猫みたいだな。にゃーとか鳴け」
「誰が鳴くもんですか!」
「ほら、にゃーだ。にゃー」
「い、言わないってば」
「にゃーって言って。ほら、留美。にゃー」
「……にゃ、にゃー」
「留美は簡単だな」
「にゃー!」
にゃーぱんちが飛んできて痛い。
「痛いのですが」
「人を馬鹿にした罰よ。ふん、だ」
「いや、人を猫にしたんだ。だから、人を猫にする罰にしろ」
「にゃー!」
再びにゃーぱんちが飛んできてやっぱり痛い。
「一緒なのですが」
「人を猫にするからよ。がうがう」
「食うな」
留美は俺の肩に口をつけ、あむあむ軽く噛んだ。
「あう……なんかしょっぱい」
しかし、すぐに俺から口を離すと、留美は顔をしかめさせながら舌を出した。
「汗かいたからな。それも已む無しだ」
「しゃざいとばいしょーをようきゅーするにだー」
「ふむ。じゃ、今度どっか一緒に出かけたときに何か買ってやるよ。安いの」
「最後に何か変なのついた! 高いのが欲しい!」
「俺と一緒にいる限り、高級品とは縁がないものと思え! ふわーっはっはっは!」
「あぅー……なんて甲斐性のない奴だ。こんなで将来だいじょぶかなあ」
「将来?」
「ん? ……ち、違くて! 別にアンタと一緒の未来なんて想像なんてしてないし! そんなの考えるだけでもおえーって感じだし! 子供は二人くらい欲しいし!」
留美は顔を真っ赤にさせながらあわあわと抗弁した。ていうか、なんか混じってる。混乱しすぎだ。
「そ、そゆことだから。勘違いしたらにゃーだからね!?」
「それは大変に怖いので勘違いしません」
「そ、それならいい。……で、でも、1ミリくらいなら勘違いゆるす」
何をだ、と思いながらぶすーっとしてる留美のほっぺをむにむにする俺だった。
【バナナの日】
2010年08月07日
今日はバナナの日らしいのでバナナを買い込んだら部屋がバナナに侵された。このままでは以後の人生に多大なる影響を与えそうだったので、かなみを呼んで事態の収拾を要請したら殴られた。
「痛いですよ?」
「うっさい、ばか! なに考えたら部屋に入れなくなっちゃうくらいバナナ買っちゃうのよ!」
部屋の入り口から溢れてるバナナを指して、かなみが叫ぶ。
「暑いから頭が動かなかったんだと思う。ほら、夏だし。あと、搬入が超大変だった。だけどそれでも頑張った俺を褒めるか?」
「100回死ね!」
「頭の悪い台詞ですね!」
無言で頬をぎううううっとつねりあげられたので大変に痛く超泣きそう。
「まだ何か言うことは?」
「今日もかなみ様はお綺麗ですね。だから俺の頬を取り外さないで」
「別に取り外そうとはしてないわよっ! お仕置きしてるだけっ!」
「なんだ」
「なんでこの子はこんな馬鹿なの……?」
本気で不思議がらないで。
「まあそういうことなんで、バナナの処理をお願いします」
「なんであたしがそんなのやんなきゃいけないのよ。アンタの招いたことなんだから、アンタがやりなさいよね」
「友達が悲劇に見舞われているというのに、なんて酷い奴なんだ。今日はお前を痴漢する妄想をおかずにしてやる」
「著作権の侵害っ!」
いちいち殴らないで。そりゃ鼻血も出ますよ。
「脳内に著作権は適用されませんよ?」
鼻血をフキフキしながら訴える。関係ないが、フキフキ、という単語を聞くと無性に興奮する。
「うっさい、馬鹿! 気持ち悪いからあたしをアンタの妄想に登場させるなっ!」
「俺をかなみの妄想に登場させてもいいから」
「しっ、したことないわよっ! 妄想なんて! 一回も!」
「そんな顔を赤くして怒らなくても分かってます」
「うー……し、したことないからね! 本当に! アンタなんか出てきたことなんてないから!」
「ほうほう」(もぐもぐ)
「人の話は真剣に聞けっ!」
部屋から溢れてるバナナをもぐもぐ食べてたら殴られた。この人は俺をすぐ殴るので酷いと思います。
「あーもうっ、しょうがないからあたしも手伝ってあげるわ。この暑さだし、すぐ傷んじゃうだろうし」
かなみはバナナを一房取ると、いそいそと皮をむき始めた。
「舌をえろちっくに這わせてくれると嬉しいです」
「…………」
「嬉しいです!」
「睨んでることに気づけ、ばかっ!」
また殴られた。そろそろ訴えたら勝てるレベルだと思う。
「はぁ……。馬鹿だし変態だし、アンタっていいとこ一個もないわねー。そんなアンタを見捨てずにつきあってあげてるあたしって、ほんっと優しいわねー?」
「優しい人は自分でそう言わないだろうし、何よりすぐ手を出さないと思う」
「手が滑った!」
全力でバナナの皮を人の口に投げ入れる事を、手が滑ったとは言いません。
「もがもがもが」
「あははっ! ばっかみたーい」
「もがもが……ぺっ。あのな、死ぬから」
「いいじゃない、別に」
「なんて言い様だ。悪魔がここにいる」
「あははっ、ばーかばーかばーか。……うん、お似合い♪」
かなみは楽しそうに俺の頭にバナナの皮を乗せた。ちっとも嬉しくない。
「アンタって馬鹿な格好よく似合うわよねー」
「そうか? じゃ、夏休みが明けたらこの姿で学校行く」
「来てもいいけど、あたしに近寄らないでよね」
「その時には頭のバナナが腐って異臭を放ってるから?」
「新しいのに取り替えてから来いっ!」
近寄るなと言った割に新品に取り替えろと忠告してくれるあたり、根っこはいい奴なのだろう。
「ふぅ……。それにしても、食べても食べても減らないわねー」
くだらない話をしつつも食べているのだが、一向にバナナは減らない。いい加減黄色い山に嫌気を指したのか、うんざりした表情でかなみが呟いた。
「どうしよう。ロケットにくくりつけて宇宙にでも飛ばすか?」
「バイバインは関係ないっ!」
「おお……すぐにそのツッコミを選択するとは。すごいな、かなみ」
「う……べ、別にアンタなんかに褒められても嬉しくなんてないし」
と言いながらも、かなみはほんのり頬を染めてこっそり笑っていた。
「あー、それにしてもいい加減飽きたな。それに、腹もかなり膨れてきた」
「どうするの? ……言っとくけど、捨てたりしたら許さないからね。食べ物を粗末にする奴は嫌いよ」
「大丈夫、俺もそうだ。……よし、奥の手だ!」
携帯電話をとりだし、ぴぽぱ。
「大変だ、リナっ! 俺の家がバナナに……バナナに襲われてるんだ! 助けてくれっ!」
それだけ言って、すぐに通話を切る。電源も落とす。これでよし、と。
「ね、ねぇ、今の……?」
かなみの問いかけとほぼ同時に、遠くから何かの曲が聞こえてきた。これは……ワルキューレの騎行?
「ほーっほっほっほ! わたくしにお任せ、でーっすわ!」
馬鹿がヘリコプターでやってきた。
うちの狭い庭に無理やり着地すると、ヘリからリナが颯爽と出てきた。そして、優雅な所作でうちに入ってきた。
「バナナに襲われたというわけの分からない理由でも、優しい優しいわたくしは助けに……ばっ、バナナが家を蹂躙してますわ!?」
俺の部屋からあふれ出るバナナを見て、リナが驚いてた。
「こんちゃ、リナ。とりあえずバナナをおっぱいではさんで下さい」
「「下品っ!」」
ステレオで怒られた。あと、貧乳の方に殴られた。
「まったく……。それで、どうしたんですの、このバナナ?」
「バナナの日だから買い込んだらKONOZAMAだ」
リナが残念な人を見る目で俺を見るので悲しい。
「ええと、まあそういうわけなんで、おまえんちの巨大冷蔵庫を貸してくれると嬉しい。あと、おっぱいを触らせてもらえるともっと嬉しい」
「胸のことは言わないでくださいますことっ!?」
リナの胸がぶるんっと震えた。
「……いいなあ」(ぼそり)
「隣で貧乳がうらやましそうに何か言っていた」
「そういうことは心の中で言えっ!」
貧乳が僕の口にバナナをたくさんつめこみます。
「と、とにかく、このバナナをわたくしの家の冷蔵庫に入れればいいんですのね?」
「もがもが……ぺっ。そう。お願いできるか?」
「……ふふん。どうして貴方なんかの言う事を聞かなければならなくって? お断りよ! おーっほっほっほっほ!」
「あー、これが言いたくてヘリで飛んできたのか。暇だなあ」
「貴方に呼ばれて来たのになんて言い様ですの!?」
「とにかく、頼むよ。もし断るならお前の目の前で全部捨てる」
「捨てる!? ……え、この大量のバナナを、ですの?」
「そう、全部。まだ食えるのに捨てる。完膚なきまでに捨てる」
「……か、考え直しませんこと? もったいないですわよ?」
このお嬢さんは金持ちのくせに庶民の感性も持っているので、こういった攻撃が割と有効だったりする。
「考え直さない。捨てる。飽食の日本人を体現した存在に俺はなる!」
「……分かった、分かりましたわ! わたくしが全部持って帰ればいいんでしょう!?」
「おお、流石は俺のリナ。そう言ってくれると信じていたぜ」
「だっ、誰が貴方のリナですの!? ふ、不愉快ですわ! ぷんぷんですわ! ぷんぷーんですわ!」
リナは怒りで顔を真っ赤にして、家から飛び出した。そしてそれと入れ替わりに黒服の連中がぞろぞろと家に入ってきたかと思ったら、手際よくバナナをヘリに詰め込み、そして飛び立って行った。
「すげー……全部なくなった」
あっという間にバナナは消え、綺麗な俺の部屋が残った。
「…………」
そして、なんか知らんがぶっすーとしてる貧乳の人。
「え、ええと。ありがとな、かなみ。手伝ってくれて」
「……俺のリナ、って言った」
「え、あ、ああ。こ、言葉のあやでな」
「……ふーん」
いかん。なんか知らんが俺の背中が冷や汗ダンス。
「……一番に呼んだのあたしなのに、あたしにはそーゆーの言わないんだ。……まあ、言って欲しくもないけど」
「そ、そなんだ」
「…………」(じぃーっ)
見られてる。超見られてる。何かを期待した目で超見られてる。
「え、ええと……こほん。今日は助かったよ、かなみ。えーと、あー……その、なんだ、なんだろう?」
「……別に、言われなくても平気だし」(涙じわーっ)
「これからもどうか俺のそばにいてください俺のかなみ!?」
「…………」
ど、どうだ? セーフか? アウトか?
「……そ、それ、言いすぎだし。なんかプロポーズみたいだし。アンタなんかにそんなの言われるの超迷惑だし」
「え、あ、そ、そうだな。悪かった」
「……め、迷惑だけど、もっかい言って。もっかい」
なんでちょっと頬を赤らめながら上目遣いで俺の服をくいくい引きますか。どんなスタンド攻撃ですか。
「え、えーと。……俺のそばにいてください、俺のかなみ?」
「う、うわぁ、気持ち悪い台詞。……で、でも面白いからもっかい。もっかい」
なんで引き続き俺の服をくいくい引きますか。そしてなんで言葉とは裏腹に笑顔なんですか。
「もう無理。死にます」
「いいからもっかい! もっかい言うの!」
わにゃわにゃ言うかなみに服を引っ張り続けられる俺だった。
「痛いですよ?」
「うっさい、ばか! なに考えたら部屋に入れなくなっちゃうくらいバナナ買っちゃうのよ!」
部屋の入り口から溢れてるバナナを指して、かなみが叫ぶ。
「暑いから頭が動かなかったんだと思う。ほら、夏だし。あと、搬入が超大変だった。だけどそれでも頑張った俺を褒めるか?」
「100回死ね!」
「頭の悪い台詞ですね!」
無言で頬をぎううううっとつねりあげられたので大変に痛く超泣きそう。
「まだ何か言うことは?」
「今日もかなみ様はお綺麗ですね。だから俺の頬を取り外さないで」
「別に取り外そうとはしてないわよっ! お仕置きしてるだけっ!」
「なんだ」
「なんでこの子はこんな馬鹿なの……?」
本気で不思議がらないで。
「まあそういうことなんで、バナナの処理をお願いします」
「なんであたしがそんなのやんなきゃいけないのよ。アンタの招いたことなんだから、アンタがやりなさいよね」
「友達が悲劇に見舞われているというのに、なんて酷い奴なんだ。今日はお前を痴漢する妄想をおかずにしてやる」
「著作権の侵害っ!」
いちいち殴らないで。そりゃ鼻血も出ますよ。
「脳内に著作権は適用されませんよ?」
鼻血をフキフキしながら訴える。関係ないが、フキフキ、という単語を聞くと無性に興奮する。
「うっさい、馬鹿! 気持ち悪いからあたしをアンタの妄想に登場させるなっ!」
「俺をかなみの妄想に登場させてもいいから」
「しっ、したことないわよっ! 妄想なんて! 一回も!」
「そんな顔を赤くして怒らなくても分かってます」
「うー……し、したことないからね! 本当に! アンタなんか出てきたことなんてないから!」
「ほうほう」(もぐもぐ)
「人の話は真剣に聞けっ!」
部屋から溢れてるバナナをもぐもぐ食べてたら殴られた。この人は俺をすぐ殴るので酷いと思います。
「あーもうっ、しょうがないからあたしも手伝ってあげるわ。この暑さだし、すぐ傷んじゃうだろうし」
かなみはバナナを一房取ると、いそいそと皮をむき始めた。
「舌をえろちっくに這わせてくれると嬉しいです」
「…………」
「嬉しいです!」
「睨んでることに気づけ、ばかっ!」
また殴られた。そろそろ訴えたら勝てるレベルだと思う。
「はぁ……。馬鹿だし変態だし、アンタっていいとこ一個もないわねー。そんなアンタを見捨てずにつきあってあげてるあたしって、ほんっと優しいわねー?」
「優しい人は自分でそう言わないだろうし、何よりすぐ手を出さないと思う」
「手が滑った!」
全力でバナナの皮を人の口に投げ入れる事を、手が滑ったとは言いません。
「もがもがもが」
「あははっ! ばっかみたーい」
「もがもが……ぺっ。あのな、死ぬから」
「いいじゃない、別に」
「なんて言い様だ。悪魔がここにいる」
「あははっ、ばーかばーかばーか。……うん、お似合い♪」
かなみは楽しそうに俺の頭にバナナの皮を乗せた。ちっとも嬉しくない。
「アンタって馬鹿な格好よく似合うわよねー」
「そうか? じゃ、夏休みが明けたらこの姿で学校行く」
「来てもいいけど、あたしに近寄らないでよね」
「その時には頭のバナナが腐って異臭を放ってるから?」
「新しいのに取り替えてから来いっ!」
近寄るなと言った割に新品に取り替えろと忠告してくれるあたり、根っこはいい奴なのだろう。
「ふぅ……。それにしても、食べても食べても減らないわねー」
くだらない話をしつつも食べているのだが、一向にバナナは減らない。いい加減黄色い山に嫌気を指したのか、うんざりした表情でかなみが呟いた。
「どうしよう。ロケットにくくりつけて宇宙にでも飛ばすか?」
「バイバインは関係ないっ!」
「おお……すぐにそのツッコミを選択するとは。すごいな、かなみ」
「う……べ、別にアンタなんかに褒められても嬉しくなんてないし」
と言いながらも、かなみはほんのり頬を染めてこっそり笑っていた。
「あー、それにしてもいい加減飽きたな。それに、腹もかなり膨れてきた」
「どうするの? ……言っとくけど、捨てたりしたら許さないからね。食べ物を粗末にする奴は嫌いよ」
「大丈夫、俺もそうだ。……よし、奥の手だ!」
携帯電話をとりだし、ぴぽぱ。
「大変だ、リナっ! 俺の家がバナナに……バナナに襲われてるんだ! 助けてくれっ!」
それだけ言って、すぐに通話を切る。電源も落とす。これでよし、と。
「ね、ねぇ、今の……?」
かなみの問いかけとほぼ同時に、遠くから何かの曲が聞こえてきた。これは……ワルキューレの騎行?
「ほーっほっほっほ! わたくしにお任せ、でーっすわ!」
馬鹿がヘリコプターでやってきた。
うちの狭い庭に無理やり着地すると、ヘリからリナが颯爽と出てきた。そして、優雅な所作でうちに入ってきた。
「バナナに襲われたというわけの分からない理由でも、優しい優しいわたくしは助けに……ばっ、バナナが家を蹂躙してますわ!?」
俺の部屋からあふれ出るバナナを見て、リナが驚いてた。
「こんちゃ、リナ。とりあえずバナナをおっぱいではさんで下さい」
「「下品っ!」」
ステレオで怒られた。あと、貧乳の方に殴られた。
「まったく……。それで、どうしたんですの、このバナナ?」
「バナナの日だから買い込んだらKONOZAMAだ」
リナが残念な人を見る目で俺を見るので悲しい。
「ええと、まあそういうわけなんで、おまえんちの巨大冷蔵庫を貸してくれると嬉しい。あと、おっぱいを触らせてもらえるともっと嬉しい」
「胸のことは言わないでくださいますことっ!?」
リナの胸がぶるんっと震えた。
「……いいなあ」(ぼそり)
「隣で貧乳がうらやましそうに何か言っていた」
「そういうことは心の中で言えっ!」
貧乳が僕の口にバナナをたくさんつめこみます。
「と、とにかく、このバナナをわたくしの家の冷蔵庫に入れればいいんですのね?」
「もがもが……ぺっ。そう。お願いできるか?」
「……ふふん。どうして貴方なんかの言う事を聞かなければならなくって? お断りよ! おーっほっほっほっほ!」
「あー、これが言いたくてヘリで飛んできたのか。暇だなあ」
「貴方に呼ばれて来たのになんて言い様ですの!?」
「とにかく、頼むよ。もし断るならお前の目の前で全部捨てる」
「捨てる!? ……え、この大量のバナナを、ですの?」
「そう、全部。まだ食えるのに捨てる。完膚なきまでに捨てる」
「……か、考え直しませんこと? もったいないですわよ?」
このお嬢さんは金持ちのくせに庶民の感性も持っているので、こういった攻撃が割と有効だったりする。
「考え直さない。捨てる。飽食の日本人を体現した存在に俺はなる!」
「……分かった、分かりましたわ! わたくしが全部持って帰ればいいんでしょう!?」
「おお、流石は俺のリナ。そう言ってくれると信じていたぜ」
「だっ、誰が貴方のリナですの!? ふ、不愉快ですわ! ぷんぷんですわ! ぷんぷーんですわ!」
リナは怒りで顔を真っ赤にして、家から飛び出した。そしてそれと入れ替わりに黒服の連中がぞろぞろと家に入ってきたかと思ったら、手際よくバナナをヘリに詰め込み、そして飛び立って行った。
「すげー……全部なくなった」
あっという間にバナナは消え、綺麗な俺の部屋が残った。
「…………」
そして、なんか知らんがぶっすーとしてる貧乳の人。
「え、ええと。ありがとな、かなみ。手伝ってくれて」
「……俺のリナ、って言った」
「え、あ、ああ。こ、言葉のあやでな」
「……ふーん」
いかん。なんか知らんが俺の背中が冷や汗ダンス。
「……一番に呼んだのあたしなのに、あたしにはそーゆーの言わないんだ。……まあ、言って欲しくもないけど」
「そ、そなんだ」
「…………」(じぃーっ)
見られてる。超見られてる。何かを期待した目で超見られてる。
「え、ええと……こほん。今日は助かったよ、かなみ。えーと、あー……その、なんだ、なんだろう?」
「……別に、言われなくても平気だし」(涙じわーっ)
「これからもどうか俺のそばにいてください俺のかなみ!?」
「…………」
ど、どうだ? セーフか? アウトか?
「……そ、それ、言いすぎだし。なんかプロポーズみたいだし。アンタなんかにそんなの言われるの超迷惑だし」
「え、あ、そ、そうだな。悪かった」
「……め、迷惑だけど、もっかい言って。もっかい」
なんでちょっと頬を赤らめながら上目遣いで俺の服をくいくい引きますか。どんなスタンド攻撃ですか。
「え、えーと。……俺のそばにいてください、俺のかなみ?」
「う、うわぁ、気持ち悪い台詞。……で、でも面白いからもっかい。もっかい」
なんで引き続き俺の服をくいくい引きますか。そしてなんで言葉とは裏腹に笑顔なんですか。
「もう無理。死にます」
「いいからもっかい! もっかい言うの!」
わにゃわにゃ言うかなみに服を引っ張り続けられる俺だった。
【ツンデレの幸せな時間】
2010年08月03日
暑いのでお隣のちなみの家に侵入。
「……また来た。なんという迷惑、恐るべき厚顔無恥」
何かの本を読んでたちなみが、嫌そうな顔で俺を出迎えた。
「あちいのです。お部屋にクーラー欲しいのです。ガチで熱中症の心配をして対策法をググる俺なんです」
「……水風呂に入って、身体あんまり拭かなくて、扇風機の前で涼んで、そのまま外に出て逮捕されればいい?」
「途中までは素敵な提案だったのに、最後が獄中エンドなので却下します」
「……なんて贅沢な。……まあ、いい。好きなだけ涼んでいったらいい」
「いつもありがとうございます」
感謝の言葉を述べてから、ちなみのベッドにぽふりと座る。そよそよと部屋を循環する冷気が気持ちいい。
「あー、本当にここはいいな。涼しくて落ち着く」
「……勝手に落ち着かれては困る。ここは私の部屋で、タカシの部屋ではない」
「そうなんだけどさ。夏だけは許してくれ。暑くて自分の部屋での生活が困難なんだ」
「……そう言っておきながら、冬は寒いから暖めろと言って来るし、春は眠いからここで寝させろと言って来るし、秋は暇だから構えと言って用もないのに来るし」
「ちなみといると楽しいからしょうがないんだ」
「……これは困った。告白された」
「そんなつもりはないのに」
「……やれやれ、もててもてて困る」
「コイツ今日も俺の話を聞いてやがらねえ」
ちなみの頭をぺちぺち叩いてから、本棚を探る。今日は何にするか指差し確認しながら眺めてると、面白そうな本を発見した。
「折角だから俺は久々にこれを読むぜ!」
「……らんま1/2。名作。ぱちぱちぱち」
なんだか拍手をされたので意味もなくかっこいいポーズをしてみる。
「……おおぅ、今日もタカシは精神科医が見たら新しい病名を思いつきそうなかっこいいポーズをしている」
どうしても褒められている気がしない。
「まあいいや。んじゃ、読ませてもらうな」
「……ん」
適当に床に転がり、仰向けで漫画を読む。何度も読んだはずなのに、毎回面白い。
しばらくそのまま読んでると、腹にかすかな圧迫感。
「何をしている」
「……これはびっくり。枕が喋った」
「有機物です」
いつの間にかちなみが俺の腹に頭を乗せ、寝そべって漫画を読んでいた。
「……居場所を提供してやっているのだから、枕くらいにはなるべき」
「まあ、いいけど。あ、そこの枕取ろうか?」
「……いい」
ベッドの上の枕を指したが、あっさり断られた。
「……どーもあの枕とは相性がよくなくて。……この腹枕は私に絶妙にマッチする」
「褒められているのに嬉しくないpart2だぜ」
「……このだらしのないぷよぷよした腹が、私の頭を優しく包み込む」
「今日から毎日腹筋してやる」
「……なむなむ。……三日坊主の呪いをかけた。これでもし腹筋をしたら、深夜、タカシの部屋を三日坊主が覗きに来る。毎日」
「怖っ、怖あっ! 三日坊主の呪い怖あっ!」
「……それが嫌なら今後も怠惰な生活を続け、私にぷよぷよお腹を提供するがいい」
「なんて酷い奴だ。ていうか、そんな俺の腹ぷよぷよか?」
「……ぷよぷよ。……ぱよえーんってくらいぷよぷよ」
「例えを出されたら余計に分からなくなったよ」
「……まあ、ぷよぷよだけど、そんな過剰に太ってなので気にしなくていい。……今後も私の枕として精進したまえ」
「なんて役柄だ。ていうか、ぷよぷよ言ってるが、お前のほっぺも結構なぷよぷよ加減だぞ」
手を伸ばし、ちなみのほっぺを触る。相も変わらずぷよぷよしてて気持ちいい。
「……可憐な女性のほっぺを無造作に触るだなんて、今日もタカシは悪辣だ」
「なんて言われようだ。ていうか、可憐な女性は人を枕になんてしないと思うが」
「……貧乳はコンクリを枕にしろ、とタカシは言う」
「言ってねえ。……はぁ、まあいいか」
ちなみを腹に乗せたまま、漫画を読み続ける。時折なんとなくちなみの頭をぽふぽふ触る。
「……?」
視線だけで「何か用か」と聞いてきたので、こちらも「別に」と視線で返す。返しながらも、片手でちなみのほっぺをうにうにしているが。
「……やれやれ」
軽く嘆息して、ちなみは俺にほっぺをいじられたまま再び漫画を読み始めた。
「……ん~っ!」
10巻ほど読み、いい加減疲れたので今日はこれでお仕舞い。軽く伸びをしてると、ちなみがじーっとこちらを見てるのに気づいた。
「……終わり?」
「うぃ」
「……そう。……んじゃ、ちょっと」
ちなみは俺を立ち上がらせると、ベッドの上に誘導し、寝ろと指で示した。
「はぁ。まあ、いいけど」
言われたとおりにすると、ちなみも俺の隣に寝そべり、俺にべそっと抱きついた。
「ほほう」
「……眠くなった。隣に抱き枕的な何かが必要なのに、それに該当するのがタカシしかいないという悲しい現実が私を襲う」
「失礼な。紳士機能が付属しているので、寝ている時にちなみにいたづらしたりしないお買い得品なのだぞ?」
「……タカシに付属してるのは類似品の変態紳士機能なので、間違いなくいたづらされる」
「あー、まあ、頭なでたり背中さすったり抱っこしたりはするな」
「……ちゅーとかもされる予感」
「しません」
「…………」
なんで不満げに睨む。
「……この変態紳士は嘘までつく欠陥品だ。返品希望」
「しねえっての」
「……貧乳にキスすると青紫色に変色する、とタカシは言う」
「言ってねえ。ていうか、なんでデンプンのヨウ素液反応が俺に起こるのだ」
「……ぐぅぐぅ」
「コイツ今日も人の話聞いてやがらねえ」
狸寝入りするちなみの頭を数度なでる。
「……ん。もっとしてもいい。……優しい私が特別に許可してやる」
「これ以上なでると青紫色に変色するが、いいか?」
「ヨウ素液返しだ」
そんな言葉はありません、と思いながらちなみの頭をなでる。
「……ん」
コクコクうなずくちなみをなでながら、二人して寝るのだった。
「……また来た。なんという迷惑、恐るべき厚顔無恥」
何かの本を読んでたちなみが、嫌そうな顔で俺を出迎えた。
「あちいのです。お部屋にクーラー欲しいのです。ガチで熱中症の心配をして対策法をググる俺なんです」
「……水風呂に入って、身体あんまり拭かなくて、扇風機の前で涼んで、そのまま外に出て逮捕されればいい?」
「途中までは素敵な提案だったのに、最後が獄中エンドなので却下します」
「……なんて贅沢な。……まあ、いい。好きなだけ涼んでいったらいい」
「いつもありがとうございます」
感謝の言葉を述べてから、ちなみのベッドにぽふりと座る。そよそよと部屋を循環する冷気が気持ちいい。
「あー、本当にここはいいな。涼しくて落ち着く」
「……勝手に落ち着かれては困る。ここは私の部屋で、タカシの部屋ではない」
「そうなんだけどさ。夏だけは許してくれ。暑くて自分の部屋での生活が困難なんだ」
「……そう言っておきながら、冬は寒いから暖めろと言って来るし、春は眠いからここで寝させろと言って来るし、秋は暇だから構えと言って用もないのに来るし」
「ちなみといると楽しいからしょうがないんだ」
「……これは困った。告白された」
「そんなつもりはないのに」
「……やれやれ、もててもてて困る」
「コイツ今日も俺の話を聞いてやがらねえ」
ちなみの頭をぺちぺち叩いてから、本棚を探る。今日は何にするか指差し確認しながら眺めてると、面白そうな本を発見した。
「折角だから俺は久々にこれを読むぜ!」
「……らんま1/2。名作。ぱちぱちぱち」
なんだか拍手をされたので意味もなくかっこいいポーズをしてみる。
「……おおぅ、今日もタカシは精神科医が見たら新しい病名を思いつきそうなかっこいいポーズをしている」
どうしても褒められている気がしない。
「まあいいや。んじゃ、読ませてもらうな」
「……ん」
適当に床に転がり、仰向けで漫画を読む。何度も読んだはずなのに、毎回面白い。
しばらくそのまま読んでると、腹にかすかな圧迫感。
「何をしている」
「……これはびっくり。枕が喋った」
「有機物です」
いつの間にかちなみが俺の腹に頭を乗せ、寝そべって漫画を読んでいた。
「……居場所を提供してやっているのだから、枕くらいにはなるべき」
「まあ、いいけど。あ、そこの枕取ろうか?」
「……いい」
ベッドの上の枕を指したが、あっさり断られた。
「……どーもあの枕とは相性がよくなくて。……この腹枕は私に絶妙にマッチする」
「褒められているのに嬉しくないpart2だぜ」
「……このだらしのないぷよぷよした腹が、私の頭を優しく包み込む」
「今日から毎日腹筋してやる」
「……なむなむ。……三日坊主の呪いをかけた。これでもし腹筋をしたら、深夜、タカシの部屋を三日坊主が覗きに来る。毎日」
「怖っ、怖あっ! 三日坊主の呪い怖あっ!」
「……それが嫌なら今後も怠惰な生活を続け、私にぷよぷよお腹を提供するがいい」
「なんて酷い奴だ。ていうか、そんな俺の腹ぷよぷよか?」
「……ぷよぷよ。……ぱよえーんってくらいぷよぷよ」
「例えを出されたら余計に分からなくなったよ」
「……まあ、ぷよぷよだけど、そんな過剰に太ってなので気にしなくていい。……今後も私の枕として精進したまえ」
「なんて役柄だ。ていうか、ぷよぷよ言ってるが、お前のほっぺも結構なぷよぷよ加減だぞ」
手を伸ばし、ちなみのほっぺを触る。相も変わらずぷよぷよしてて気持ちいい。
「……可憐な女性のほっぺを無造作に触るだなんて、今日もタカシは悪辣だ」
「なんて言われようだ。ていうか、可憐な女性は人を枕になんてしないと思うが」
「……貧乳はコンクリを枕にしろ、とタカシは言う」
「言ってねえ。……はぁ、まあいいか」
ちなみを腹に乗せたまま、漫画を読み続ける。時折なんとなくちなみの頭をぽふぽふ触る。
「……?」
視線だけで「何か用か」と聞いてきたので、こちらも「別に」と視線で返す。返しながらも、片手でちなみのほっぺをうにうにしているが。
「……やれやれ」
軽く嘆息して、ちなみは俺にほっぺをいじられたまま再び漫画を読み始めた。
「……ん~っ!」
10巻ほど読み、いい加減疲れたので今日はこれでお仕舞い。軽く伸びをしてると、ちなみがじーっとこちらを見てるのに気づいた。
「……終わり?」
「うぃ」
「……そう。……んじゃ、ちょっと」
ちなみは俺を立ち上がらせると、ベッドの上に誘導し、寝ろと指で示した。
「はぁ。まあ、いいけど」
言われたとおりにすると、ちなみも俺の隣に寝そべり、俺にべそっと抱きついた。
「ほほう」
「……眠くなった。隣に抱き枕的な何かが必要なのに、それに該当するのがタカシしかいないという悲しい現実が私を襲う」
「失礼な。紳士機能が付属しているので、寝ている時にちなみにいたづらしたりしないお買い得品なのだぞ?」
「……タカシに付属してるのは類似品の変態紳士機能なので、間違いなくいたづらされる」
「あー、まあ、頭なでたり背中さすったり抱っこしたりはするな」
「……ちゅーとかもされる予感」
「しません」
「…………」
なんで不満げに睨む。
「……この変態紳士は嘘までつく欠陥品だ。返品希望」
「しねえっての」
「……貧乳にキスすると青紫色に変色する、とタカシは言う」
「言ってねえ。ていうか、なんでデンプンのヨウ素液反応が俺に起こるのだ」
「……ぐぅぐぅ」
「コイツ今日も人の話聞いてやがらねえ」
狸寝入りするちなみの頭を数度なでる。
「……ん。もっとしてもいい。……優しい私が特別に許可してやる」
「これ以上なでると青紫色に変色するが、いいか?」
「ヨウ素液返しだ」
そんな言葉はありません、と思いながらちなみの頭をなでる。
「……ん」
コクコクうなずくちなみをなでながら、二人して寝るのだった。