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2024年11月22日
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【ツンデレから夜中に電話が掛かって来て、今何してるって聞かれたら】

2010年08月20日
 夜は寝るタイプの人間なのでぐっすりすやすや寝てたら、突然携帯の野郎がぷるるるるって! さしもの俺もこれは許せないと思ったので説教したのだが、携帯は物なので叱られても堪えないと気づいたのは数分後。
「でもまあ寝ぼけてたからしょうがないと思わないか?」
『なんの話よッ!』
 とりあえず俺に電話をかけてきた奴に思いの猛りを伝えたら怒られた。
『まあいいわ、アンタが突拍子のない馬鹿ってのはいつものことだし。あのさ、今なにしてるの?』
「寝てた」
『あ、あはは……ま、まあいいわよね? どーせアンタのことだから、昼も寝てるから眠くないだろうし』
「昼は部屋の気温が38度を記録しているので、寝るどころか生命を維持させるだけで精一杯です」
『外より暑いじゃないの! どーいうことよそれ!?』
「俺に怒られても困る。ていうか、どなた?」
 電話の向こうで盛大にこける音が響いた。
「分かった、吉本新喜劇の人だ。ポコポコヘッドやって」
『違わいっ! あたしよ、かなみよ! てか、電話受ける前に確認するでしょ! 普通!』
「寝ぼけてたんで何も見ずに受けたんだ」
『今日もミラクルに馬鹿ね』
「奇跡的な馬鹿なのか、俺」
『そうよ。知らなかったの?』
「なんて残酷な真実なんだ。だがよく教えてくれた、ありがとう。じゃ、おやすみ」
『待って待って待って! 切らないで!』
「なんだ。俺は依然眠いので眠りたいのだが」
『え、えっとね? あたしさ、なんか眠くないのよ。だから、なんか話してよ。アンタお得意の全く中身がないけど、面白い話を』
「ひどい言い様だな。まあいいか、じゃあ猿夢でも」
『それ怖い話でしょ! あたし知ってるもん! ていうか思い出した! べ、別に怖くはないけど、寝るのちょっとアレじゃない! どうしてくれるのよ!?』
「とても可哀想にと思いました」
『超他人事!』
「はっはっは」
『笑うなーっ!』
「かなみは愉快だなあ。じゃ、お休み」
『だからっ、切るなっ! 今切られたら怖……じゃない、な、なんか暇だからあたしが困るじゃない!』
「怖いなら仕方ないな」
『こっ、怖くなんてないわよっ! 子供じゃないんだから!』
「…………」
『な、何よ。ホントよ!?』
「…………」
『な、何か喋りなさいよ。ね、ねえ!』
「……ふう。かなみ、さっき悪夢を見る呪いをかけておいたので、安心して眠ってくれ」
『超余計なことすんな、ばかーっ!』
「いや、怖くないと言っていたので、ならばとささやかな老婆心で」
『嘘だろうケド、嘘に決まってるだろうケド! なんか寝るの嫌になっちゃったじゃない! どーしてくれんのよ、ばかーっ!』
「夜も深いのだからあまり叫ぶな」
『うっさい! 誰が叫ばしてんのよ! もーっ! しかもなんかちょっと眠くなってきちゃったし! もーっ!』
「夢の中で君も猿と一緒にミンチ! ヤッタネ♪」
『嫌なこと言うな、ばかあっ! ……うーっ! 決めた! アンタ、今からあたしの家に来なさい!』
「はい?」
『アンタが余計なこと言ったせいで寝らんなくなっちゃったじゃないの! 責任取りなさいよね!』
「いや、責任と言われても。てか、行った所でどう責任を取るというのだ」
『アンタの馬鹿面見てないと落ち着かないって言ってるの!』
「しかし、俺の顔はいつだって美男子だから、行った所で何の役に立てるのか疑問だぞ?」
『いーから早く来いっ! あ、あと電話は切っちゃダメだからね! 切ったら怒るからね!』
「超めんどくさいです」
『……い、いーわよ。一人でがんばるもん』
「……はぁ。分かったよ、着替えるから少し待ってろ」
 我ながら人が良すぎる。というか、俺のせいで怖がらせてしまったのだから、行くのが当然か。それでもめんどくさいなあ。
『う、うん。で、でも早く来ないとダメだからね!? 怒るからね!』
「怒られるのは嫌だから行くの躊躇するなあ」
『怒らないから早く来いっ!』
「もう既に怒られている気がする」
 文句を言いながらも着替えて家を出る。鼻歌代わりに般若心境を唱えて超怒られてると、かなみの家に着いた。
「着いたぞ。鍵開けて」
『わ、分かった』
 家の中からわずかな物音がする。
「これでドア開けたら俺じゃなくて血まみれの包丁持ったサラリーマンがいたら超怖いよな」
『余計なこと言うなっ! あっ……あ、あと、人を叫ばすな、馬鹿。みんな起きちゃうじゃない』
 それからほどなく、ドアがゆっくりと開いた。そして、その隙間からかなみが恐る恐る顔を出した。きょろきょろと周辺を見回している。
「おす」
「お、おす。……サラリーマン、いない?」
「いるか、馬鹿」
 挨拶代わりにかなみの頭をわしわしなでながら答える。
「馬鹿じゃないわよ。馬鹿じゃないもん。馬鹿はアンタよ」
 言葉だけは怒りながらも、かなみは少しだけ嬉しそうに頭をなでられていた。
「んじゃ、とっとと入れて。早くしないとサラリーマンに追いつかれる」
「嫌な嘘つくなっ、ばかっ!」
 それでもさっきより入念に周辺をきょろきょろしてから、かなみは俺を家にいれてくれた。暗い廊下を抜け、かなみの部屋に辿り着く。
「ふー……」
 落ち着いたように、かなみはベッドに座って深く息を吐いた。
「で、俺は何をしたらいいんでしょうか」
「あたしが寝るまで話し相手してて」
 薄い布団を頭まですっぽりかぶり、かなみはぴょこんと顔だけ出した。
「へへー。怖くない♪」
「…………」
「ん? どしたの、鼻つまんで」
「……いや」
 これが計算だとしたら将来女優になったらいいし、そうじゃないなら俺は頭がおかしくなります。
「かなみ、顔中べろべろ舐めていい?」
「ド変態ッ!」
 ほらみろ、おかしいだろ。
「まったく……変態だし馬鹿だし、アンタ最低よね」
「悲しくなるばかりです」
「あははっ。……あのね、えとね。……あんがとね、わざわざ来てくれて」
 ……びっくりした。よもや歩く傍若無人のかなみが礼を言うだなんて。
「ほ、ほら! ほとんどアンタのせいとはいえ、こんな夜中に文句も言わずに来てくれたし」
「文句は言った覚えがあるのですが」
「そだっけ? へへっ、覚えてないや♪」
 にぱーっと晴れやかな笑顔を見せられては、もう何も言えやしねえ。
「まあ、なんだ。もう夜も遅い、寝ろ」
「……寝てる間にどっか行ったりしない?」
「あー、コンビニくらいは行くかも」
「なんでよ! ずっとあたしのそばにいなさいよ! そうしてくんないと寝ない!」
「お子様か、おまえ」
「う……い、いいじゃない! アンタのせいで寝れなくなったんだから責任取りなさいよね!」
「分かった、結婚しよう」
「そういう責任じゃないっ!」
 かなみの手をとってまっすぐに目を見つめたのに頭突きされた。
「もー。……じゃ、寝るからなんか面白いお話して」
「また無茶ブリを。しょうがない、猿夢でも」
「さっきと一緒! ほら、また怖くなった! どーしてくれんのよっ!」
 かなみは半泣きでがうがう吠えた。
「怖くないんじゃなかったのか」
「うるさいうるさいうるさいっ! どーにかしなさいよねっ!」
「あーもう、お前が一番うるさい。ほれ、こーやってたらちょっとは怖くねーだろ」
「あ……」
 かなみの手を軽く握る。
「嫌かもしれんが、諦めろ。そばに誰かいるって分かってたら、恐怖も薄れるだろ」
「…………」
「かなみ?」
「……え、え!? ち、違うわよ!? こんなの嬉しくともなんともないわよ!?」
「そんなことは聞いてませんが」
「ええっ!? ……ゆ、誘導尋問なんてずるい!」
「そんなこともしてませんが」
「うっ、うるさいっ! と、とにかくアンタはあたしが寝るまで手繋いでないとダメなんだからねっ!」
「途中で尿意を催した場合、想像を絶することになることが容易に想像できるのですが」
「うるさいうるさいうるさいっ! なんでもいーからアンタはずっとあたしと一緒にいないとダメなのっ!」
「一生?」
「一生! ……へ? あ、や、今のは違う、違うのっ!」
 真っ赤な顔でぎゃんぎゃんほえてるかなみと一緒に夜を過ごしました。

「……それでも手を出さなかった俺を誰か褒めろ」
 安心しきった顔ですぴゃすぴゃ寝てるかなみに手を握られたまま、朝日がこぼれる部屋で一人つぶやく俺だった。

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