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2024年11月22日
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【バナナの日】

2010年08月07日
 今日はバナナの日らしいのでバナナを買い込んだら部屋がバナナに侵された。このままでは以後の人生に多大なる影響を与えそうだったので、かなみを呼んで事態の収拾を要請したら殴られた。
「痛いですよ?」
「うっさい、ばか! なに考えたら部屋に入れなくなっちゃうくらいバナナ買っちゃうのよ!」
 部屋の入り口から溢れてるバナナを指して、かなみが叫ぶ。
「暑いから頭が動かなかったんだと思う。ほら、夏だし。あと、搬入が超大変だった。だけどそれでも頑張った俺を褒めるか?」
「100回死ね!」
「頭の悪い台詞ですね!」
 無言で頬をぎううううっとつねりあげられたので大変に痛く超泣きそう。
「まだ何か言うことは?」
「今日もかなみ様はお綺麗ですね。だから俺の頬を取り外さないで」
「別に取り外そうとはしてないわよっ! お仕置きしてるだけっ!」
「なんだ」
「なんでこの子はこんな馬鹿なの……?」
 本気で不思議がらないで。
「まあそういうことなんで、バナナの処理をお願いします」
「なんであたしがそんなのやんなきゃいけないのよ。アンタの招いたことなんだから、アンタがやりなさいよね」
「友達が悲劇に見舞われているというのに、なんて酷い奴なんだ。今日はお前を痴漢する妄想をおかずにしてやる」
「著作権の侵害っ!」
 いちいち殴らないで。そりゃ鼻血も出ますよ。
「脳内に著作権は適用されませんよ?」
 鼻血をフキフキしながら訴える。関係ないが、フキフキ、という単語を聞くと無性に興奮する。
「うっさい、馬鹿! 気持ち悪いからあたしをアンタの妄想に登場させるなっ!」
「俺をかなみの妄想に登場させてもいいから」
「しっ、したことないわよっ! 妄想なんて! 一回も!」
「そんな顔を赤くして怒らなくても分かってます」
「うー……し、したことないからね! 本当に! アンタなんか出てきたことなんてないから!」
「ほうほう」(もぐもぐ)
「人の話は真剣に聞けっ!」
 部屋から溢れてるバナナをもぐもぐ食べてたら殴られた。この人は俺をすぐ殴るので酷いと思います。
「あーもうっ、しょうがないからあたしも手伝ってあげるわ。この暑さだし、すぐ傷んじゃうだろうし」
 かなみはバナナを一房取ると、いそいそと皮をむき始めた。
「舌をえろちっくに這わせてくれると嬉しいです」
「…………」
「嬉しいです!」
「睨んでることに気づけ、ばかっ!」
 また殴られた。そろそろ訴えたら勝てるレベルだと思う。
「はぁ……。馬鹿だし変態だし、アンタっていいとこ一個もないわねー。そんなアンタを見捨てずにつきあってあげてるあたしって、ほんっと優しいわねー?」
「優しい人は自分でそう言わないだろうし、何よりすぐ手を出さないと思う」
「手が滑った!」
 全力でバナナの皮を人の口に投げ入れる事を、手が滑ったとは言いません。
「もがもがもが」
「あははっ! ばっかみたーい」
「もがもが……ぺっ。あのな、死ぬから」
「いいじゃない、別に」
「なんて言い様だ。悪魔がここにいる」
「あははっ、ばーかばーかばーか。……うん、お似合い♪」
 かなみは楽しそうに俺の頭にバナナの皮を乗せた。ちっとも嬉しくない。
「アンタって馬鹿な格好よく似合うわよねー」
「そうか? じゃ、夏休みが明けたらこの姿で学校行く」
「来てもいいけど、あたしに近寄らないでよね」
「その時には頭のバナナが腐って異臭を放ってるから?」
「新しいのに取り替えてから来いっ!」
 近寄るなと言った割に新品に取り替えろと忠告してくれるあたり、根っこはいい奴なのだろう。
「ふぅ……。それにしても、食べても食べても減らないわねー」
 くだらない話をしつつも食べているのだが、一向にバナナは減らない。いい加減黄色い山に嫌気を指したのか、うんざりした表情でかなみが呟いた。
「どうしよう。ロケットにくくりつけて宇宙にでも飛ばすか?」
「バイバインは関係ないっ!」
「おお……すぐにそのツッコミを選択するとは。すごいな、かなみ」
「う……べ、別にアンタなんかに褒められても嬉しくなんてないし」
 と言いながらも、かなみはほんのり頬を染めてこっそり笑っていた。
「あー、それにしてもいい加減飽きたな。それに、腹もかなり膨れてきた」
「どうするの? ……言っとくけど、捨てたりしたら許さないからね。食べ物を粗末にする奴は嫌いよ」
「大丈夫、俺もそうだ。……よし、奥の手だ!」
 携帯電話をとりだし、ぴぽぱ。
「大変だ、リナっ! 俺の家がバナナに……バナナに襲われてるんだ! 助けてくれっ!」
 それだけ言って、すぐに通話を切る。電源も落とす。これでよし、と。
「ね、ねぇ、今の……?」
 かなみの問いかけとほぼ同時に、遠くから何かの曲が聞こえてきた。これは……ワルキューレの騎行?
「ほーっほっほっほ! わたくしにお任せ、でーっすわ!」
 馬鹿がヘリコプターでやってきた。
 うちの狭い庭に無理やり着地すると、ヘリからリナが颯爽と出てきた。そして、優雅な所作でうちに入ってきた。
「バナナに襲われたというわけの分からない理由でも、優しい優しいわたくしは助けに……ばっ、バナナが家を蹂躙してますわ!?」
 俺の部屋からあふれ出るバナナを見て、リナが驚いてた。
「こんちゃ、リナ。とりあえずバナナをおっぱいではさんで下さい」
「「下品っ!」」
 ステレオで怒られた。あと、貧乳の方に殴られた。
「まったく……。それで、どうしたんですの、このバナナ?」
「バナナの日だから買い込んだらKONOZAMAだ」
 リナが残念な人を見る目で俺を見るので悲しい。
「ええと、まあそういうわけなんで、おまえんちの巨大冷蔵庫を貸してくれると嬉しい。あと、おっぱいを触らせてもらえるともっと嬉しい」
「胸のことは言わないでくださいますことっ!?」
 リナの胸がぶるんっと震えた。
「……いいなあ」(ぼそり)
「隣で貧乳がうらやましそうに何か言っていた」
「そういうことは心の中で言えっ!」
 貧乳が僕の口にバナナをたくさんつめこみます。
「と、とにかく、このバナナをわたくしの家の冷蔵庫に入れればいいんですのね?」
「もがもが……ぺっ。そう。お願いできるか?」
「……ふふん。どうして貴方なんかの言う事を聞かなければならなくって? お断りよ! おーっほっほっほっほ!」
「あー、これが言いたくてヘリで飛んできたのか。暇だなあ」
「貴方に呼ばれて来たのになんて言い様ですの!?」
「とにかく、頼むよ。もし断るならお前の目の前で全部捨てる」
「捨てる!? ……え、この大量のバナナを、ですの?」
「そう、全部。まだ食えるのに捨てる。完膚なきまでに捨てる」
「……か、考え直しませんこと? もったいないですわよ?」
 このお嬢さんは金持ちのくせに庶民の感性も持っているので、こういった攻撃が割と有効だったりする。
「考え直さない。捨てる。飽食の日本人を体現した存在に俺はなる!」
「……分かった、分かりましたわ! わたくしが全部持って帰ればいいんでしょう!?」
「おお、流石は俺のリナ。そう言ってくれると信じていたぜ」
「だっ、誰が貴方のリナですの!? ふ、不愉快ですわ! ぷんぷんですわ! ぷんぷーんですわ!」
 リナは怒りで顔を真っ赤にして、家から飛び出した。そしてそれと入れ替わりに黒服の連中がぞろぞろと家に入ってきたかと思ったら、手際よくバナナをヘリに詰め込み、そして飛び立って行った。
「すげー……全部なくなった」
 あっという間にバナナは消え、綺麗な俺の部屋が残った。
「…………」
 そして、なんか知らんがぶっすーとしてる貧乳の人。
「え、ええと。ありがとな、かなみ。手伝ってくれて」
「……俺のリナ、って言った」
「え、あ、ああ。こ、言葉のあやでな」
「……ふーん」
 いかん。なんか知らんが俺の背中が冷や汗ダンス。
「……一番に呼んだのあたしなのに、あたしにはそーゆーの言わないんだ。……まあ、言って欲しくもないけど」
「そ、そなんだ」
「…………」(じぃーっ)
 見られてる。超見られてる。何かを期待した目で超見られてる。
「え、ええと……こほん。今日は助かったよ、かなみ。えーと、あー……その、なんだ、なんだろう?」
「……別に、言われなくても平気だし」(涙じわーっ)
「これからもどうか俺のそばにいてください俺のかなみ!?」
「…………」
 ど、どうだ? セーフか? アウトか?
「……そ、それ、言いすぎだし。なんかプロポーズみたいだし。アンタなんかにそんなの言われるの超迷惑だし」
「え、あ、そ、そうだな。悪かった」
「……め、迷惑だけど、もっかい言って。もっかい」
 なんでちょっと頬を赤らめながら上目遣いで俺の服をくいくい引きますか。どんなスタンド攻撃ですか。
「え、えーと。……俺のそばにいてください、俺のかなみ?」
「う、うわぁ、気持ち悪い台詞。……で、でも面白いからもっかい。もっかい」
 なんで引き続き俺の服をくいくい引きますか。そしてなんで言葉とは裏腹に笑顔なんですか。
「もう無理。死にます」
「いいからもっかい! もっかい言うの!」
 わにゃわにゃ言うかなみに服を引っ張り続けられる俺だった。

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