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2025年02月04日
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【ゆら姉 登校ちゅー】

2012年02月04日
 ゆら姉と一緒に登校している。のだが。
「あの。なんで手を繋いでいるのでしょうか」
「しっ、しょうがないじゃない! 繋いどかないと、お姉ちゃんを置いて行っちゃうでしょ!」
「いや、一度怒られたら流石に置いて行ったりはしないですが」
「そんなことないもん! アキくん性格が曲がりに曲がりくねりまくってるから、絶対にするの!」
「この姉は弟をちっとも信頼してやがらねえ」
「うるさい!」
 そんなわけで、姉弟仲良くお手々繋いで登校している。もう超恥ずかしい。
「……うへへ」
 しかも時折繋いでる手を見ては姉がニヤニヤしているので、恥ずかしいに加え怖い感情まで覚える。一体何が嬉しいのか。アレか、俺を辱められて嬉しいのか。
「……な、何よ」
 ぼうっとゆら姉を見つめていたら、視線に気づいた姉が少し恥ずかしそうにこちらを見た。
「や、俺の姉だけあって歪んでるなあって」
「ち、違うもん! お姉ちゃん歪んでないもん! まだ姉弟愛のレベルだもん!」
「えっ」
「えっ」
 何やら齟齬が起きたので、俺の思う歪みを伝えたら頬をつねられた。
「お姉ちゃんはそんな酷い性格してないもん! 明らかにアキくんのほうが歪んでるもん!」
「それは否定できない」
「なんか堂々と受け入れた!?」
 なにせ、姉に姉弟愛以上の何かの感情を抱いているもので。……ま、ゆら姉に迷惑はかけられないんで、墓まで持っていくつもりなんですけどね。
「ところで、何が姉弟愛のレベルなんですか?」
「よっ、余計なことは覚えてなくていーのっ!」
「いてえ」
 頬をつねられた。……姉の背が低いので、やりやすいよう少しだけ頭を下げているのはナイショだ。
「……も、もちょっとだけ頭下げて」
 そして一瞬でばれている。姉に隠し事なんてできない様子。
「はいはい」
「ん。……ちゅー」
 どうして姉が俺の頬に吸い付いているのか。(狼狽)
「なななな何をしているのかこの弟に簡潔に説明してはどうだろうか!?」(依然狼狽中)
「ちっ、違うもん! ちゅーしたくなったとかじゃないもん! 思わずアキくんのほっぺつねちゃったから、痛いの痛いの飛んでけーってやってるだけだもん!」(負けずに狼狽中)
「いや、これは明らかにちゅーだと思うのだが」
 あわあわしてる姉を見て一瞬で冷静になったので、素直な感想を言ってみる。
「ど、動物もちゅーで怪我治すし! 一緒だもん!」
「いや、動物はちゅーで治すのではなく、舐める際につく唾液で」
「う、うるさい! お姉ちゃんの言うことが間違ってるって言うの!?」
「お姉ちゃんの言うことは絶対で御座います」
 幼い頃からの英才教育により、弟は姉のいうことには逆らえないようプログラミングされています。これは世間のほぼ全ての弟に備えられた仕様です。
「そ、そうだよ。だ、だから、もちょっとだけちゅーしても大丈夫だもん。まだぜーんぜん姉弟愛のレベルだもん。……だ、だよね?」
「た、たぶん」
 何やら小動物チックなおめめで問われたので、「なんとか致命傷で済んだぜ」と言いそうになるのを必死に堪らえて肯定する。
「そ、そだよね。これくらい普通だよね」
 あまり普通の姉弟は登校中にちゅーしたりしないとは思うが、甘い誘惑に抗う術なんて全力で棄てる俺がそれを口にするはずもなく。
「……ちゅっ。ぺろぺろ。ちゅー。ちゅ」
 またしても柔らかな感触やら舌でぺろぺろされる感触やらを頬に受けているわけで。そりゃにやけもしますよ。
「あっ、アキくんにやけすぎ! ……た、ただのおまじないなのに」
「無茶を言うな! あんだけ舐められりゃにやけますよ!」
「な、舐めてないもん! ちょっと、ちょっとだけぺろぺろーってしただけだもん!」
「それを世間一般では舐めると言うのです!」
「お、お姉ちゃんの辞書にはそんなの書いてないもん!」
「ええい、このナポレオンズめ!」
「ちょっと間違ったせいで手品師になっちゃってるよ!?」
 などと学生たちで賑わう通学路で言い合ってるので、今日も俺とゆら姉のシスコン&ブラコンが世間に浸透しています。

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【ゆら姉】

2012年02月04日
 俺には同い年の姉がいる。
「くー……くー……」
 そう。今まさに俺の隣で寝息を立ててる人物がそれだ。一見すると高校生の俺と同級生とは思えないほど小さな体つきをしているが、残念ながら姉だ。よく一緒にいる時に妹と間違われて機嫌が悪くなるが、それでも姉だ。
 なんで隣で寝てるのか疑問だが、とにかく、起きよう。そう思って体を動かそうとしたが、何かに縛られているかのように動かない。
 ここは名状しがたいバールのようなもので呪縛を断ち切るしかないと思ったが、よく自分の体を観察してみると姉が俺に絡まってるだけだった。
「ん……」
 無理に剥がすのも可哀想だし、さてどうしようかと思念をこねていると、姉の目がゆっくりと開いた。
「おはよ、ゆら姉ーッ!?」
 なんか超なんかちゅーされた。ほ、頬にね、頬に。
「……ぷはっ。えへへーっ、アキくんのちゅー、げっとだぜ!」
「もうなんか色々言いたいことがありすぎて、何から言ったらいいのか俺には」
「さて、次はお待ちかねの口に……ん? 夢の中でもアキくんは言い回しが奇妙だね?」
「ところがどっこい……夢じゃありません……! 現実です……! これが現実……!」
「げんじつ……? ……ふにゃ?」
 ゆら姉は指を自分の頬にあて、小首をかしげた。
「ふぅむ。我が姉ながら可愛いですね」
「……──ッ!!?」
 遅まきながら、目が覚めたようです。

「う゛ー……」
 そんなわけで今日の食卓にはうなる姉がいるので一寸怖い。
「お、お姉ちゃんは別にアキくんとちゅーなんてしたくなかったもん。寝ぼけてただけだから仕方ないもん」
 パンをもぐもぐしながら言い訳がましく姉がつぶやく。
「まあ、頬ちゅーなんて数えきれないくらいされてるから別にいいけど。それよりどうして俺の布団に入っていたのか聞きたい弟なのだが」
「……寒かったから」
 思うところがあるのだろう、ゆら姉は赤い顔をうつむかせながらぽしょぽしょ呟いた。
「いや、寒いからって俺の布団に入らなくても」
「い、いーじゃない! 姉弟なんだし! お姉ちゃんの言うこと聞きなさい!」
「姉弟だからこそ問題があるように思えるのは、俺にクンフーが足りないからなのだろうか」
「そ、そだよ。全然足りないよ。あちょーあちょーあ痛っ」
 デタラメカンフーで手を振り回していたら、背後の戸棚に当たった。
「ああもう。ほら、大丈夫か?」
 ゆら姉のところまで行って、手をなでなでしながら『イタイノイタイノトンデイケ』の呪文を唱える。
「お姉ちゃん、子供じゃないのに……」
「誰もそんなこと言ってないだろーが」
「明らかに子供扱いじゃない。ぶー」
 不満そうに頬を膨らませ、足をぷらぷらさせている様子は子供そのものだったが、それを口にすると機嫌がとんでもないことになるので言えません。
 しばらく手をなでて、もう大丈夫であろうと弟の勘(brother's sence)が告げたので手を離す。
「……もちょっと。手握って」
「握る?」
「──じゃじゃじゃなくて! さすって! さするの! まだ痛いから!」
 よほど強く打ったのか、ゆら姉は顔を真っ赤にしながらそう言った。
「……? まあいいが……大丈夫か? 湿布貼るか?」
「う、ううん、だいじょぶ。もちょっとさすってくれたら治る気がするから」
「はぁ……?」

「んじゃ、いってきまーす♪」
 朝の機嫌の悪さはどこへやら、いつの間にか機嫌が直ってるゆら姉と一緒に家を出る。
「ほら、アキくん。ちゃんといってきますって言わないと」
「誰も家に残ってないのに言ってもしょうがないだろ」
 海外赴任だかなんだかで、我が家の両親は家にいない。空き家にいってきますとか言っても詮無いだろう。
「あのね、いってきますっていうのはね、挨拶の他にどこかに行っても再び帰ってくるって意味もあるんだよ? だから、また無事に帰ってくるよって意味も込めて言わなきゃダメなんだよ?」
「なるほど。ゆら姉は博識だなあ」
「そ、そんな褒めても何も出ないよ。……もうっ、もうっ♪」
 ゆら姉が超ご機嫌体質になった。ニッコニコしながら俺の肩をバンバン叩いてくる。
「痛い痛い」
「もー、お姉ちゃんが賢いとか美人とか結婚したいとかー♪ 弟のくせに何言ってるのよ♪」
 姉がおかしい。まあ、いつものことか。
「さて、と。いってきまーす」
「もー、もー♪ ……って、あっ! こらっ、弟のくせにお姉ちゃんを置いてくな!」
 何やら中学生みたいなのがぷりぷりしながらこちらに走り寄ってくる気配がします。

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【ツンデレにマルチを強要したら】

2012年01月22日
「久しぶりに昔のエロゲを引っ張り出してプレイしたところ、マルチが死ぬほど可愛かったので今日から先生はマルチ。決定」
「なんて無茶なことを平然と言うですかっ!? 先生はマルチではなく、先生ですっ! 大人です!」
 なんかもにゃもにゃ言ってる大谷先生(自称大人、見た目小学生)の耳にマルチっぽい自作の付け耳をつける。
「あーっ!? もうっ、全然許可してないのに勝手に変なのつけないでくださいっ!」
「お、普通にくださいって言った」
「へ? ……あーっ! 今回はちゃんと言えました! えへへっ、すごい? すごい?」
「あーすごいすごい」
 ぴょんこぴょんこ跳ねつつ、満面の笑みですごいか生徒に問いかける教師の頭をなでる。
「……なんか知んないけど、馬鹿にされた気分でいっぱいです」
 折角なでてやったというのに、大谷先生は不満気に眉を寄せた。
「そりゃ馬鹿にしているからなあ。そんな気分にもなるだろ」
「やっぱりですっ! 別府くん、先生を馬鹿にしてはいけませんっ!」
「いや、教師という職業を馬鹿にしたんじゃない。大谷先生という一個人を馬鹿にしたんだ。勘違いさせたなら謝る。悪かった」
「謝られたのにより一層不愉快になる魔法をかけられましたっ!」
 ぺこりと頭を下げたのに、先生は涙目で怒った。
「それより先生、折角マルチっぽくなったのだからはわわはわわと言いなさい」
「生徒が教師に要求することじゃないですっ!」
「言ったら大人扱いするから」
 そう言った途端、先生の目が輝きだした。
「ほっ、本当ですかっ!? 先生のこと、尊敬しますかっ!? もー子供だ子供だって馬鹿にしませんか!? 胸が小さいことをいじりませんか!? 執拗に頭をなでませんか!? 意味もなく抱っこしませんか!?」
「質問が多い。一つにしてくれ」
「う……そ、それじゃ、本当に先生のことを大人扱いしてくれますか?」
「任せろ。約束しよう」
「わ、分かりました。それなら先生も我慢して言います。……は、はわわ!」
「…………」
「はわわ! はわわ! はわわ! はぁはぁ……ど、どですか?」
「なんかイマイチ。20点」
「えええええ!?」
「どーも先生にはマルチ感が足りない。ゲーム貸すからマルチシナリオをクリアし、きちんとマルチのキャラを把握すること」
「頑張ったのに! 折角言いたくもないのにはわわって言ったのに、20点って! 先生、非常に不本意です!」
「赤点なので、当然先ほどの約束も反故させていただきます」
「酷いです! 別府くん酷すぎです! 悪魔です! 悪魔超人です! いっそ悪魔将軍です!」
「地獄の断頭台!」
「わ、上手です! ぱちぱちぱち!」
 隠れた特技、一人必殺技を披露したら、普通に感心された。
「……いやいや、違います。必殺技とかどーでもいいんです」
「全く関係ないが、口でぱちぱちって言う奴って馬鹿みたいだよな。いや、全く関係ないが」
「また馬鹿にされた!? もー! 別府くんは! やっぱり悪魔です!」
「人間です」
「うぐぐ……しかも冷静に否定するなんて、なんだか先生の方が子供みたいじゃないですか! どーゆーつもりですかっ!?」
「実際に子供だから、別に変なことじゃないと思う」
「こんなに言ってるのにまだ先生のことを子供扱いしますか!? どういうつもりなのですかっ!」
「だって、先生の幼女感ときたら尋常ではないのだから、仕方ないではないか」
「仕方ないではなくないですっ! 別府くんのばかっ!」
「ややこしい怒り方をするな。まあそういうわけで、引き続き子供扱いするのでそのつもりで」(なでなで)
「ほーら、早速先生の頭をなでなでと! 酷い扱いです! 頭なでないでくだたいっ!」
「お、例のくだたいが出た。さすが先生、自身のキャラをよく分かっていらっしゃる」
「そんなつもりないですっ! 別府くんのばかっ! 先生のこと馬鹿にしてばっかで! だいっきらいですっ!」
「これは悲しいことを。俺は先生のことを大好きなのに」
「はわっ、はわわっ!?」
「ん?」
「は、う、え、そ、そんなこと言われても、こっ、困ります、困りますっ! そ、そりゃ先生も本心では、その、アレですけど、……そ、そーゆーことは卒業してからですねっ!?」
 先生はやたらと顔を赤くしながら、両手をぶんぶんと振った。
「ふむ……」
「……あ、あの、別府くん? ……あ、あの、どしてもって言うならですね、その……あの、えと。……み、みんなに秘密で、そ、その、……て、手とか繋いだりとかなら、ですね?」
「さっきの“はわわ”はなかなかの出来だった。なんだ、やればできるじゃないか!」(なでなで)
「…………」
「もーっ! 別府くんは! もーっ!」
 先生は両手をぐるぐると回転させながらこちらに突撃してきた。
「ひぃ、先生が急遽牛憑きに! なのに乳が依然平らとは、涙を禁じ得ない」
「今日も別府くんはいじわるです! 許しがたいです!」
「あ、ちなみにさっき先生を大好きと言ったけど、異性へのそれではなく、人間としての好意の話ですよ、もちろん」
「さらにいじわるを上乗せ!? 信じられないほどいじわるです! もはやいじわる王のれべるです!」
「王か。最近の俺は黄衣の王とかが好きだなあ。いあ! いあ! はすたあ!」
「ちっとも分からないですしなんだかちょこっと怖いですうわーんっ!」
「ああ今回も先生を泣かしてしまった。はいはい、泣かない泣かない。ごめんな、先生」(なでなで)
「ぐすぐす……今回も泣かされました。今日も別府くんは悪魔の御使いです」
「いあ いあ はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ! あい あい はすたあ!」
「本物っ!? はわっ、はわわわわっ!?」
 ガタガタと震えながらSAN値を減らす大谷先生は可愛いなあと思った。

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【ボクっ娘と一緒に下校したら】

2012年01月20日
 今日の6限は体育だった。超疲れた。
「ふぁ~……」
 俺の隣を歩いてるボクっ娘も同様なのか、あくびなんかしてる。分類上は女のくせにだらしねえな。
「はふー。ね、タカシ。今日は疲れちゃったね?」
「普段ならお前の言うこと全てを否定しているところだが、今回に限って言えば同意せざるを得ない」
「普段も同意してよ! 今日もタカシはヤな感じだよ!」
「いやははは。ところで、今日の女子の体育はマラソンだったようだな」
「あ、うん、そなんだ。もー、ずーっと走りっぱなしで。すっごく疲れちゃったよ」
「さる事情により俺はマラソンしてる女子のおっぱいの揺れ具合をずーっと調べてたんだ。んでその時思ったんだが、お前のおっぱいは一体どこへ旅立ってしまったのだ?」
「ずーっとここに住んでるよ! 永住予定だよっ! 走ろうが何しようがどーせ揺れないよっ! さる事情ってどーせ揺れてるおっぱいが見たかっただけだろっ! 今日も変態っ!」
「ぺたんこが怒った」
「せめて思うだけにしろっ!」
 怒鳴られたので実行しよう。ぺたんこが怒った。
「まったく……疲れてるんだから怒らせるなよな、ばか。ていうか、普通にセクハラだよ?」
「分かった、次から異常なセクハラをする」
「セクハラの方をどうにかしろっ!」
「しまった、異常なセクハラの方法が思いつかない。そも、セクハラが異常なのだから、それをさらに異常にさせるには……一周して、頭なでたりとか?」
「…………」
 どういうことか、梓の視線が何かを期待しだした。しかも、ほんのりと前傾姿勢になっているような。
「なでなで」
「はぅぅ」
 ので、なでたら喜ばれた。
「梓がセクハラを喜ぶ」
「よっ、喜んでないよっ! ちっともだよっ! 言い方があんまりだよっ!」
「なでなで」
「はぅぅ」
「どうにも俺には喜んでいるようにしか見えない」
「あぅぅ……そ、それはともかく、これはセクハラじゃないよ」
「実は俺もそう思ってたんだ」
「じゃあするなっ!」
「梓の頭をなでたくなっちゃったから、適当な理由つけてなでただけなんだ」
「……き、今日もタカシは気持ち悪いね」
 せめて顔の赤さをどうにかしてから言ってください。
「で、でも、ついでだし、もちょっとなでる?」
「いいえ、結構です」
「…………。じゃーいーよっ! 一生ボクの頭なでちゃダメだかんねっ!」
「なでなで」
「って言ってるそばからなでてる!? どんだけ天邪鬼なんだよっ!」
「ふむ。何やら嬉しそうに見えるのは、俺の勘違いなのでしょうか」
「あ、当たり前だよっ! クラッカーだよ! むしろリッツだよ! 不満が満載だよ! あー不幸不幸!」
「そんなそげぶな人みたいなこと言わないでくださいよ」(なでなで)
「……そ、そんなことよりさ。ちょっとだけ、ボクの家来いよな」
 何やらクイクイと俺の服を引っ張りながら、そんなことを目の前の可愛い娘さんが言うんですの。
「うーん。我慢できるだろうか」
「? 何の話?」
「いやね、なんかやけに可愛いので、お前に襲いかからないよう我慢できるだろうか、という話」
「冷静に説明するなっ!」
「うーむ、正直自信ないが……でも、他人事だし、いいか!」
「いくない! そして酷すぎる! ボクの初めてをそんな簡単にあげられるわけないだろっ!」
「じゃあ、難しくもらうから」
「だから、簡単とか難しいとかの問題じゃないのっ!」
「なぞなぞですか?」
「ちーがーうっ!」
 よく分からなかったので、梓の家で改めて聞いてみることにした。ほら、道端で喋ってても寒いし。
「というわけで梓の家にやってきたわけなんですが、室内だというのに寒いですね」
「さっき暖房つけたばっかだもん。ちょっとは時間かかるよ」
「甘いぞ、梓! おまえんちではそうかもしれないが、我が家……というか、俺の部屋には暖房器具は布団のみ! なので、この程度の寒さなど慣れ親しんでいる!」
「……あの、古い電気ストーブでよかったら、あげよっか?」
 純粋に哀れまれた。これは恥ずかしい。
「それはもうパンチラを偶然にも俺に目撃されてしまい、『おにぃたん、見ちゃやー』と初めての羞恥に頬を染めるようじょくらい恥ずかしい」
「意味が分からないけど、本気で病院を奨めそうになる程度にはヤバさが伝わってきたよ」
「俺は少し口に出す言葉を吟味した方がいいかもしれないね」
「その方が周囲の人のためではあるよね」
「ところで梓、寒いので無遠慮に抱きつきたいがいいか?」
「早速吟味無視!? しかもこの寒さに慣れ親しんでいると言ってたのに!?」
「ばか、慣れてても寒いは寒いんだよ。あと、適当言って女体に触れたいんだよ」
「思考がだだ漏れすぎるよっ! パッキン取り替えろっ!」
「分かった、取り替えるから頬ずりさせてください」
「ちょーお断りだよ! どーしてタカシなんかとそんなことしなくちゃいけないんだよっ!」
「くそぅ、断られた。仕方ない、梓のうすぺたいおっぱいに顔を埋めるので我慢するか。あー残念残念」
「要求がぐれーどあっぷしてるよ! 絶対確実らいじんおーってくらいやらせないよっ!」
「さりげなく言うことにより、成功確率が0%から2%くらいに上がると思ったんだ」
「それ上がってもほぼ無理だよ!」
「ところで、なんでライジンオーって言ったの? あれ言う必要ないよね?」
「いっ、一回クッション挟むなっ! ……恥ずかしーじゃんか」
「うーむ、頬を赤らめるボクっ娘はやたら可愛いなあ。よし、頭なでてやれ!」(なでなで)
「……うー」
「不満そうながらも、何か言うとライジンオーについて言及されるので何も言えずにただなでられるボクっ娘萌え」
「全部分かった上での行為!?」
「さらに言うなら、本当はそんな不満でもないと見た」
「ひっ、人の心読むなっ、ばかっ!」
 ぺけぺけとやたら攻撃力の弱い抗議がきた。こんなの逆に喜ばしいですよ。
「はっはっは。かーわいーい」
「あぅぅーっ!?」
 テンションが上がってしまい、わけもなくボクっ娘のほっぺを引っ張る俺だった。

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【病み上がりの男】

2012年01月07日
 風邪を引いてしまい、数日学校を休んだ。しかし、ようやっと体調が戻ってきたので、まだ少しだるいが頑張って登校してみた。
「あら? 貴方、放校処分になったんじゃなかったんですの?」
「登校するなり語尾と頭がおかしい奴にからまれた。なんてついてないんだ」
「いきなり酷すぎですのっ!」
「いや、この場合の頭がおかしいとは髪形のことを指してるから安心しろ」
「このお嬢様然とした髪形のどこがおかしいんですのっ!?」
「ドリル(笑)」
「今すぐ殺しますわッ!!!!!」
「ごめんなさい冗談です。お願いだから殺さないでください」
 あまりの恐怖に震えながら土下座で許しを請う。プライド? そんなものとうの昔に犬にくれてやったわ!
「……貴方、哀れにもほどがありますわね」
 効果は抜群なようで、リナの俺を見る目が虫か何かを見る目になったけど、死なずに済んだようだ。やれやれ。
「それはそうと、おはよう。リナ」
「土下座からの挨拶っ!?」
「それは挨拶じゃないぞ」
「わ、分かってますわ。おはようございますですわ」
「うーん、やっぱ語尾がおかしい」
「貴方失礼にも程がありますわよっ!?」
「や、悪い悪……げほっげほっげほっ」
「……大丈夫ですの? まだ顔が青いですわよ?」
 いい加減土下座させるのも悪いと思ったのか、俺を起こしながらリナは心配そうな顔を覗かせた。
「そういうリナは顔が緑色だぞ。ナメック星人だったっけ? 口から卵産み系?」
「そんな系統ありませんわっ! 全力で人間ですっ! 頭と一緒に目までおかしくなったんですの!?」
「病み上がりだからか、視力もおかしくなっちゃったんですの」
「真似しないでくださいまし!」
「ジャッジメントですの!」
「ドやかましいですわっ!」
 しんどいのに無理してかっこいいポーズを決めたのに、超怒られたんですの。
「全く……。それより、感染されては敵いませんわ。近寄らないでくださいまし」
「そうだな。俺もリナの奇病、頭ドリルが感染ったら嫌だから近寄らないよ」
「これは別に病気じゃありませんわっ! そういう素敵な髪形ですの! ていうか奇病って酷いですの!」
「俺みたいに短髪の奴が感染したら、頭蓋骨がねじられるの? ガン並に致死確率の高そうな病気ですね」
「だから、病気じゃないと言ってるんですのっ! どんだけ失礼なこと言えば気が済むんですの!?」
「分かった分かった、悪かった。とにかく、お前の言う通り二度とリナなんかには近寄らない」
「な、なんか言い方が酷いですわっ!」
「寄るな」
 手でしっしってやったら、半泣きの人にいっぱい叩かれたので土下座して謝る。
「すいませんでした」
「うぅ~……」
「ただ、病み上がりということを加味していただけると何かと助かります。ほら、頭がうまく回らないんですよ」
「……ホントですの? わたくしのこと、嫌いになったとかじゃないんですの?」
「う」
「……っ!? べっ、別に貴方なんかに嫌われても蚊に食われたほども感じませんけど!? 感じませんけども、なんとなく聞いただけですわっ!」
「うーん。熱がぶりかえしたのか、なんかあちい」
「な、何を照れてるんですのっ!? そ、そういうのとは違うんですのっ! 勝手に勘違いしないでくださいましっ!」
「か、勘違いしないでよね、勘違いしただけなんだからねっ!」
「ややこしいですわっ!」
「自分で言っておいてなんだが、俺もよく分からない。しょうがないからサメの話でもしようか」
「なんでそうなるんですの!? しませんわ!」
「リナはお嬢様だけあってワガママだなあ」
「これでワガママって言われたら、世の中の人ほぼ全てがワガママですわ!」
「ところでワガママを英訳するとmy motherなのかな?」
「脈略がなさすぎですわっ! そろそろ殴りますわよ!?」
 お嬢様が暴力を訴えてきたので黙ることにする。
「全く……いつも頭が悪いですが、今日はそれに輪をかけて頭が悪いですわね」
「まだスッキリ治ってなくてね。いつもなら検閲に引っかかるボケも繰り出しちゃってるんだ」
「ものすごい迷惑ですわ……あ、そうですわ!」
「それはどうかな?」
「何がですの!?」
「何か提案されそうだったから、とりあえず煙に巻いてみた」
「……いいからしばらく黙っててくださいまし」
 お願いされたからには黙らざるを得ない。……べ、別に怒りに打ち震えているリナが怖いとかじゃなくてね!?
「こほん。治ってないなら早退すればいいんですの。そのまま退学しちゃえばいいんですの。ついでに人生からも卒業すればいいんですの」
「なるほどそいつぁいいと頷きそうになったが、よく考えたら死ねって言われてるよね?」
「気のせいですわ♪」
「なんだそうか! じゃあ言われた通り人生を卒業しよう! リナ、縄ってどのくらいの値段なのかな?」
「死ぬ気満々ですわっ! ちゃんと否定なさいっ!」
 自分で言っておいて、俺が受け入れると怒る。変な奴。
「あー……しかし、なんかやっぱだるいな。どうしよう、折角登校したけど、無理せず早退するかなあ」
「それがいいですわ。少しでも早く学校を出て、わたくしの視界から出て行ってくださいな」
「んー。そうする」
「ちょ、ちょっとお待ちなさいな! そこは少し言い返してもらわないとわたくしが酷い事を言っただけの悪人になってしまいますわ!」
「ええい、面倒な奴め。えーと、今日もリナは可愛いなあ。抱っことかしてえ」
「は、はいぃ!?」
「あ、いかん。それは今は関係なかった。うーむ、まるで頭が回らん。何の話だっけ? サメ?」
「……べ、別に、その。……も、もう、早く帰ったらいいんですの!」
 なんか知らんが超顔の赤いリナに背を押され、教室から追い出されたんですの。
 その勢いのまま素敵に早退。何しに来たんだか。そんなわけで帰宅。早々にベッドに入る。どうにも力が入らない。やっぱ無理すんじゃなかったと思っていると、急激な眠気が。あっという間に眠りに落ちた。

 そんな感じでfade outした意識だったが、何やらガサゴソ物音がしたことで視界がfade inしてきた。
「そーっと、そーっと。……まだ寝てますわよ、ね?」
 ぼやけた視界に映るは、何やら両手に土鍋を持った女性の姿。
「ヤベェ、知らぬ間に人食い部族が我が家に侵入し、俺を煮込んで食おうとしてる」
「食べませんし人食い部族じゃないし寝起きの台詞じゃありませんわっ!」
「む。聞き覚えのある声。知り合いに人食い趣味の奴はいなかったハズだが」
 視界がはっきりするにつれ、人食い悪魔が侵入したと思っていたことは勘違いと判明した。
「なんだ、カニバリズムな人でなくてリナだったか。おはよう」
「おはようじゃないですわ。どうして人食い部族に間違われなくちゃいけないんですの?」
「だって、鍋持った奴が枕元にいたら誰だってそう思うだろ」
「思わないですわっ! どういう頭の構造してるんですの?」
「ところで、なんで鍋持ってるの?」
「うぐっ」
「うぐ? ……ああ! うぐぅ、な! いや懐かしいな、kanon。超好きだったよ」
「違いますわっ! 言葉に詰まっただけですわっ!」
「なるほど。じゃ、それも踏まえて、どうしてリナがここにいるのか詳しく聞かせてもらいましょうかね」
「べ、別に大したことじゃないですわ。学校も終わったし、暇つぶしに苦しんでる貴方を観察しに来ただけですわ」
「ふむ、看病に来てくれたのか。なんだかんだ優しいな、リナは。ありがとうな」
「か、看病じゃありませんわっ! 観察ですわっ! むしろ嫌がらせに来たんですわっ!」
「はいはい。んで、その鍋は?」
「こっ、これは、そのー……煮えたぎったおでんを貴方の口につっこむ『駝鳥倶楽部的拷問』をしようとしただけですわっ!」
「ほう」
「あっ、ふた取っちゃダメっ!」
 鍋の中身は、ほこほこと小さく湯気を立ててるおかゆだった。上にかかってる玉子がおいしそう。
「……お、おでんがないレベルの貧民だと思わなかったんですの! 冷蔵庫におでんがなかったから、しょうがなくお米を炊いただけですのっ!」
「このおかゆを、食べさせてくれると」
「たっ、食べ!? ど、どうしてわたくしがそこまでしなくちゃいけないんですのっ!?」
「いや、ダチョウ倶楽部のアレをやるんだったら、食べさせなくちゃいけないだろ」
「あ……そ、そっか。……じゃ、じゃあ、食べさせてもいいんですよ……ね?」
「なんで俺に聞いてんだ」
「べ、別に聞いてませんわ! ほ、ほら、口をお開けなさい! 熱々のおかゆで、火傷させますわよ!」
「あー」
「ちょ、ちょっとは抵抗なさいな……もう」
 リナは少し困った顔をすると、おかゆをレンゲで一掬いし、ふーふーと息を吹いて冷ました。
「はい。あーん、ですわ」
「火傷はどこいった」
「あ。……ち、ちょっと間違っただけですわ」
 素だったのか、リナは顔を赤くして照れた。
「と、とにかくこれは食べちゃいなさいな!」
「はいはい。あーんもぐもぐ」
「……ど、どうですの?」
「もぐもぐ。ん、うまいな。リナはお嬢様のくせに料理上手なのな」
「高貴なる者はなんでもできるんですの。料理なんてわたくし専用の厨房があるレベルなんですから、出来て当然ですのよ?」
「ブルジョアは凄いなあ。死ね」
「怖いですわっ!!!」
「や、悪い悪い。俺の妬み根性が出た」
「うぅー……食べさせてもらってる者に言う台詞じゃないですの。酷いですの」
「無意識レベルで金持ちを恨んでるからなあ。諦めろ」
「より一層怖いですわっ!」
「分かった分かった。今回世話になったし、リナは除外しとくよ」
「せ、世話なんてしてませんわ! 拷問してるんですわ!」
「へいへい。それより、もっとくれ。ちょっと食べたら余計に腹減った」
「わ、分かりましたわ。ふーっ、ふーっ。はい、あーん、ですわ」
「あー、もぐもぐ。……いや、俺はありがたいんだが、冷ましていいのか」
「あ。も、もーっ! ごちゃごちゃ言うからすぐ忘れちゃうですの!」
「俺にとっては幸いだな。次もずっと忘れてくれると、とても嬉しい」
「そ、そうはいきませんわ! 次こそ熱々おかゆでアチチ火傷地獄ですわ!」
「そいつぁ怖いな」
「そうですのよ? もー舌が熱い熱いってなって、何も食べられなくなっちゃうんですのよ? それで……お腹空いちゃって……でも舌が痛いから食べられなくて……」
 何やら想像しちゃったのか、リナの目がうるみだした。
「お前が泣いてどーする」
「っ!? なっ、泣いてなんていませんわっ! それとこれはちっとも関係ないですが、諸事情により火傷作戦は中止ですのっ!」
「どんだけ優しいんだ、お前」(なでなで)
「やっ、優しいとか意味分かりませんわっ! 頭なでないでいただけますことっ!?」
「あ、悪い悪い。ついね、つい」
「……べ、別に、どーしてもと言うなら続けても構いませんが……」
「…………」
「しっ、してほしいわけじゃないですわよっ!? ……ほ、ホントに。……ホントですわよ?」
「あー。何やら無性にリナの頭部をこする嫌がらせをしたくなったが、どうだろうか?」
「……あ、貴方はすっごく性格が悪いから、わたくしが嫌がってもするでしょう?」
「いや、俺ほど性格がねじ曲がってると、一周回って逆にしないんだ」
「……本当に、いじわるですの」(半泣き)
「ああ嘘ですごめんなさい俺が悪かったですどうか泣かないで」(なでなで)
「……でも、とっても優しいですわよね?」
「ははーん。嘘泣きだな?」
「何のことか分かりませんわ♪」
「女性ってのは怖いなあ」(なでなで)
 そのような感じで、ニコニコしてるドリル頭の変な奴をしばらくなでてました。

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